特別支援学校における教師の専門性向上を目指した職員研修の展開
-授業研究へのオンサイト研修(テレビ会議)の導入-
冲中紀男
*
1・道家田鶴
*
1・渡邉智美
*
1
伊藤陽子
*
1・神谷加代子
*
2・坂本 裕
*
3
特別支援学校教員の専門性向上のために不可欠な職員研修がより充実したものとなるよう,テレビ会議シ
ステムを使用して単元構想段階から外部講師の助言を受けることができるオンサイト研修を研究授業の事前
検討に導入した.このことで,どの学年もこれまでにない単元の捉え方を知り,ダイナミックな構成や環境
設定を早い段階から考えることができるようになった.さらに,授業研究会当日は,その取組に応えるよう
に積極的な質疑応答,協議を重ねることができ,充実した職員研修を展開することができた.
〈キーワード〉 特別支援学校,オンサイト研修,職員研修,授業研究,専門性向上
Ⅰ はじめに
我が国においては
2007年度からの特別支援教育の
本格実施が決まり,これまでの特殊教育以上に,障害
のある子どもたち一人一人の教育的ニーズに応じたき
め細やかな特別な教育的支援が求められている.この
ことを具現 化 していくた め には多くの 課 題が指摘さ
れているが , そのひとつ と して教師の よ り一層の専
門 性 の 向 上 が あ る
(中央教育審議会,2006).教師が
その教育職 と しての専門 性 を高めるた め の方法はさ
まざまある が ,自校にお け る授業研究 が 最も効果的
であり,そ の 充実を求め る ことの必要 性 が強く訴え
られている(千葉大学教育学部附属養護学校,2004,
2005,2006).さらに,石塚(2003)は実りある授業
研究を実現するためには,事前の授業計画や授業準備
の段階における十分な検討が必要であるとしている.
本稿においては,特別支援学校における教師の 専
門性向上を目指し,職員研修がより充実したものとな
るよう,テレビ会議システムを使用して単元構想段階
から外部講師の助言を受けることができるオンサイト
研修を事前検討に導入し,小・中学部の全学年が授業
研究に取り組んだ経過を報告する.
Ⅱ 方法
1 対象校
岐阜県立大垣養護学校
2 期間
2006年6月~2月
3 方法
授業研究会で従来から行ってきた各研究授業担 当
者での 事前 検 討に加 え, 岐 阜県特 別支 援 教育Web研
修システム
(坂本ら,2006)を使用したテレビ会議をも
ちいて大学教員が随時参加する.
Ⅲ 結果
1 テレビ会議を導入した事前検討
小学部6回,中学部3回の研究授業を実施したが,
それに向けて実施したテレビ会議をもちいた事前検討
は表1のように延べ
26回実施した.
2 研究授業
小学部6回,中学部3回の研究授業を実施した.そ
のうち,年度最終の研究授業として2月に全校授業研
究会として行った小学部4年生の生活単元学習「『あ
つあつおかし』でうでだめし」と中学部1年生の生活
単元学習「3年生を送る会をしよう」の学習支援案を
資料1,2に示したが,いずれの単元も従来の取組と
岐阜大学カリキュラム開発研究
2007.6,Vol.25,No.1,25-33
*1 岐阜県立大垣特別支援学校 *3 教育学部特別支援教育講座
26
表1 テレビ会議システムを使っての外部講師との研究授業の事前検討
月日 参 加 者 内 容
5/26
小学部2年担当者3名
研究係1名 ○単元構成(大まかな流れや内容について) ○場の設定
・泥遊びと水遊びの部分を分離
・真ん中にみんなが意識を向けられるような配置
・大きな滑り台の設置
○単元名(子どもたちが口ずさみやすいように)
5/29
中学部3年担当者2名
研究係3名
○単元の設定、展開の検討
・生徒の気持ちに添った設定
・作業量・作業内容
・作業の必然性
5/31 中学部3年担当者2名 研究係2名 ○単元計画 ・交流活動を活用した作業
・終日作業日の設定 等
6/12
中学部3年担当者2名
研究係1名
○学習支援案
・前文の書き方
・単元をたてるに当たっての部分を願いとの連動 等
6/14
小学部2年担当者1名
研究係1名 ○学習支援案 ・前文の書き方
・単元の願い,単元をたてるに当たっての検討
・遊具の名称(子どもたちが口ずさみやすいよう)
小学部2年担当者1名
研究係1名 ○学習支援案 ・展開の検討
6/21
中学部3年担当者2名
研究担当1名 ○支援方法 ・作業の実際の状況を具体的な支援
8/24
小学部3年担当者3名
研究係等5名
○単元構成
・単元の構成
・遊びの工夫
8/25
中学部2年7名
研究係等3名
○作業学習
・作業種目
○単元構成
中学部2年8名
研究係等6名
○単元構成
・単元名
・全校での取り組み
・販売活動
○授業展開
・教師の役割
・工程の組み方、流れ
・「導入-展開-まとめ」のあり方
中学部1年担当者4名
研究係2名
○単元構成(2月全校研)
・テーマ設定
小学部3年6名
研究係等5名 ○単元展開 ・校外学習
・グルーピングの仕方
・みんなで遊ぶ場の確保
・生活のテーマ(屋外で思う存分遊ぶ生活)
小学部1年5名
研究係等5名
○単元構成
・生活のテーマ(ようごフェスタのテーマにちなんだ遊び)
9/21
小学部4年担当者3名
研究係2名
○単元構成(2月全校研)
・テーマ設定
小学部1年生5名
研究係2名 ○単元展開 ・ストーリー性
中学部1年生7名
研究係1名
○単元構成
・大単元と小単元の設定
9/27
研究係2名 ○2月全校研究会のもち方
10/2
小学部3年生6名
研究係2名
○学習支援案
・単元の願い
・場所のネーミング
・本時の手立
12/6 小学部4年生6名 研究係3名 ○単元構成 ・組み方(小単元として組む 等)
・活動(お菓子作り)
12/11
小学部5年生3名
研究係3名
○単元展開
・場の設定の仕方
・自分でできる状況作りについて
・教師の役割
12/19 小学部5年生3名
研究係2名
○学習支援案
小学部4年生5名
研究係2名
○学習支援案
・各学級の流れ
12/22
研究係3名 ・全校研究会の流れについて
・研究のまとめについて
1/10
小学部4年生6名
研究係3名 ○学習支援案 ・児童の様子と単元のねがい、本時のねがいのつながり
・具体的な手だてについて
1/12 中学部1年7名
研究係1名 ○学習支援案
・個々のねがい・手立て
1/16
小学部4年生6名
研究係3名
○学習支援案
・展開
・場の配置 等
資料1(一部抜粋)
小学部4年l ̄生活単元学習」学習支援案
活動となるよう、『あつあつおかし』づくりにじっくり取り組んでいくこと けをみんなで美味しくいただくこともあった。そんな経験から笑顔で楽しい
にする。
そこでまず初日に、お菓子づくりが得意なお母さん方に「お菓子づくり名
人」として、学校に来てもらい児童の目の前でお菓子をつくってもらうよう
にした。そのお手前を見せてもらったり、作りたてのあつあつのお菓子を食
べることで「おいしいね」「もっと食べたいね」「自分たちでもつくってみよ
う」「みんなに食べてもらいたいね」という気分を大いに盛り上げていく。
あつあつがいっぱいの日々に
限られた調理時間の中で、手軽にたくさんつくれるよう、ホットプレート
・トースターなどを使って『あつあつおかし』づくりに取り組む。作るお菓
子はクラスごとに相談して、餃子の皮を使ったり、たこ焼き機を使ったりす
るなど調理方法を工夫しながら、ワッフルやカステラ・ピザなどに挑戦する。
子どもたちとクラスごとのメニューに名前を付け、楽しみながらつくりたい。
そして、どの子も楽しく自分から取り組めるように、混ぜる・切る・焼く・
包むなどの子どもたちそれぞれが好きな作業を毎日担当して進めるようにす
る。また、トッピングや味付けも子どもたちと相談しながら、よりおいしく
なるように工夫していく。
できたてあつあつで腕試し
お菓子をつくったらできたてあつあつをまずはクラスで試食し、美味しか
ったら同じ学年どうしで食べ比べをする。そして、最終チェックを主事先生
にしてもらい、ここでOKが出たら腕試しを開始する。小学部の他の学年の
友だちや先生の笑顔を期待し、たくさんの『あつあつおかし』をつくり、お
糖分けをしながら腕前をあげていく。そして単元半ばには授業参観でいらっ
しヤるお父さんやお母さんに腕試しをする。お父さんやお母さんの意見で、
さらに改良し、また友だちや先生にお裾分けをする。そして最終日は他学部
の先年にも障試しをする。ここでたくさんの笑顔と,美味しいねの一言がも
らえたら免許皆伝。次は休日に自分の家でも腕試しへと,子ども遠が大好き
な料理づくりに一層取り組んでくれるようにと願っている。
3 単元におけるねがい
・一人一人が自分からお菓子づくりに楽しく取り組んでほしいっ
・それぞれが自分の担当の調理活動に取り組み、みんなであつあつおかし
をつくりあげてほしい。
日 時;平成19年2月 2日10:00へ11:30
場 所;調理室
授業者;栢木美和(Tl)奥田恵子(T2)杉野繁和(T3)
川瀬真幸(T4)安楊玲子(T5)粟野みどり(T6)
1単元名 「『あつあつおかし』でうでだめし」
2 単元について
本単元は、4年生の子どもたち15名、先生6名みんなお菓子づくりに毎
日取り組み、腕自慢の『あつあつおかし』をお父さんやお母さん、他学年や
他学部の友だちや先生に食べていただこうとするものである。
あつあつ料理大好き
4年生の子どもたちは,これまで一年F凱 合宿や校外学習などのたびに,
サンドイッチやカレーライス、お弁当、蒸しパンなどの手作り料理にみんな
で楽しく取り組んできた。調理がある日は家を出る時からその日つくるメニ
ューを何度も親に、学校に着いても教師に確認するなど、とても楽しみにし、
作るのを待ちきれない姿が見られた。実際に調理に取りかかると、自分から
野菜の皮むきをしたり、材料を包丁で切ったりと、いつも以上に張り切って
取り組む姿も見られるようになった。そして、自分たちでつくった料理を笑
顔でおいしそうに食べる姿も見られた。さらに、学校で調理に取り組んだこ
とがきっかけになり、家庭でも母親が料理をしている様子を楽しげに眺めた
り、自分も手伝いたいと調理に取り組むような姿も見ることができるように
なってきた。そんな調理大好きの子どもたちと教師で、腕試しも兼ねて、お
父さんヤお母さん、そし.て、いつも一緒に活動している小学部の友だちや先
生、さらには、他学部の先生にも自分たちで手作りしたできたてのあつあつ
のものを食べていただくことにした。
rあつあつおかし』づくりに挑戦
学校での調理活動はお昼ご飯などの自分たちで食べるものの調理が中心で
あったが、本単元では、多くの人たちにあつあつを気軽に食べてもらえるも
のを考え、お菓子づくりに取り組むことにした。子どもたちの中にはお菓子
づくりを腕自慢のお母さんと家庭でやっている子もおり、時々はそのお糖分
4 単元の計画
○単元を立てるにあたって
○単元計画
月/■日 曜 主な活動 関連する?告動
1/■19 金 お菓子名人に『あつあつおかし』を
つくってもらおう
22 月 つくってたべよう
23 火 つくってたべよう
24 水 つくってたべよう ポスター・案内状
∼主事先生を招待しよう∼ づくり
25 木 つくってくぼろう ポスター配る
へ5年生におすそわけ、
26 金 つくってくぼろう ポスター配る
∼1年生におすそわけ∼
27 土 つくってたべよう
∼お父さんやお母さんにあげよう∼
30 火 つくってくぼろう
∼3年生におすそわけ∼
31 水 つくってくばろう
∼6年生におすそわけ∼
2ノ′′1 木 つくってくぼろう
∼2早生におすそわけへ
本時lつくっておきやくさんに 1 2 金
あげよう
(1)自分からお菓子づくりに取り組めるように
調理にスムーズに取りかかることができるように、三角巾やエプロン
の結び目をゴムにする等着用しやすい物を用意する。
『あつあつおかL』づくりをより楽しみにして学校に来ることができ
るよう、自分の好きなトッピングや材料を家から持ってくるようにす
る。
手順を覚え、できるだけ一人で取り組めるように、一人一人に合わせ
た材料や調理器具の配置の工夫をする。
自分からお菓子づくりに取り組めるように、材料や使う道具を一定の
場所に準備し、使いやすいように小分けする。
安全に一人で取り組めるように、子ども用包丁、子ども用泡立て器な
どの使いやすい道具を用意する。
(2)みんなでお菓子づくりを楽しむた捌こ
「もっと食べたい」「つくってみたい」「みんなに食べてもらいたい」
という気分を盛り上げるために、お菓子名人のお母さんたちに『あつ
あつおかし』を目の前でつくってもらい、それをみんなで食べる。
みんなでつくる楽しさを共有するために、他のクラスの友だちの様子
を感じながら、調理室でみんなで取り組む。
いつもお世話になっている先生や、他の学年の友だちにつくったもの
をお糖分けし、感想をもらうことで、つくる楽しさをより感じ、次の
調理への意欲へつなげる。
見た目もきれいでしかもおいしいものになるよう、トッピングや味付
けを変えるなどの工夫も取り入れる。
学校生活全体がお菓子づくりでまとまるように、お裾分けを知らせる
ポスターを作ったり、友だちや先生・保護者に案内状を作ったりする。
日々お菜干づくりを楽Lみにできるように、お裾分けの予定表や、お
菓子のレシピを教室や廊下に掲示する。