Title
果汁の肝機能保護作用に関する研究( 内容の要旨(Summary)
)
Author(s)
赤地, 利幸
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第540号
Issue Date
2010-03-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/33681
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(国)籍) 主 指 導 教 員 名 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 会 赤 地 利 幸 (岐阜県) 静岡大学 教授 杉 山 公 男 博士(農学) 農博甲第540号 平成22年3月15日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 静岡大学 果汁の肝機能保護作用に関する研究 主査 静岡大学 教 授 森 副査 静岡大学・教 授 杉 副査 岐阜大学
教姦
早 副査 信州大学 教 授 南 也・男 志 夫 達 公 享 峰 田 山 川 論 文 の 内 容 の 要 旨 本学位論文は、果汁の肝機能保護作用について検討したものである。果汁飲料は果実の栄 養成分を摂取できる手軽な手段として広く利用されているが、果汁の栄養生理機能について は必ずしも明確ではない。そこで本研究では果汁と肝機能との関係に注目し、比較的新しく 登場した果汁を用い、肝障害抑制効呆を有する果汁が存在するのかどうか、もし肝障害抑制 効果が見られるならばどのような成分が関与しているのかを明らかにしようとした。 第1章では、12種類の果汁(アセロラ、ブラックカラント、ブルーベリー、カムカム、ク ランベリー、ドラゴンフルーツ、ライチ、パッションフルーツ、ザクロ、サジー、シイクワ シヤー、スターフルーツ)を用いて肝障害抑制効果を有する果汁をスクリーニングしようと した。各果汁を凍結乾燥し、標準食に10%添加してラットに1週間与えたのち、D-ガラクト サミン(GalN)注射により人為的に肝障害を発症させ肝障害抑制効呆を調べた。肝障害の発 症程度の指標として血嫌中のalanineaminotransferase活性とaspartateaminotransferase 活性を測定した。有意な肝障害抑制効果が見られたのはカムカム(ルrcJ8rゴ∂血ムゴa)だけで あったが、シイクワシヤー(CJけUざd印reぶ∫8)なども抑制する傾向が見ちれた。肝障害抑制 効果が見られたカムカムと抑制傾向を示したシイクワシヤーについて、活性強度の確認や活 性物質の単離・同定を試みることにした。 第2章では、カムカムの肝障害抑制効果について詳しい検討を行なうとともに、活性成分 の単離を試みた。活性物質単離のための一次分画としてカムカム果汁を溶媒抽出し、4画分 (Fr.Ⅰ∼ⅠⅤ;酢酸エチル可溶性画分、β-ブタノール可溶性画分、70%エタノール可溶性画分, 70%エタノール不溶性画分)に分けた。各画分を激縮、乾燥し、果汁10%添加相当の比率で食餌に添加してラットに1週間摂取させたところ、Fr.ⅠとFr.ⅠⅠⅠの画分で有意な肝障害 抑制効果が見られた。このうち、特に抑制効果の強かったFr.Ⅰ(酢酸エチル可溶性画分) について、さらに二次分画を行った。酢酸エチル画分をシリカゲルカラムクロマトグラフイ ・-で分画し、Fr.ト1∼Fr.卜5を得た。各画分を濃縮、乾燥し、果汁10%相当の比率で食餌 に添加してラットに1週間摂取させたところ、Fr∴ト2に有意な肝障害抑制効果が見られた。 Fr.I-2をさらに精製し、化合物1と2を得た。化合物1と2を500mg/kg B.W.でラットに 単回経口投与し肝障害抑制効果を調べたところ、化合物2のみが有意な肝障害抑制効果を示 した。化合物2を用量を変化させて(125、250、500、1,000mg/kgB.W.)ラットに単回経口 投与し肝障害抑制効果を確認したところ、250mg/kgB.軋以上で有意な抑制効果が見られた。 LH-NMRおよびESトMSを用いて化合物の同構造解析を行ったところ、肝障害抑制効果を示した 化合物2はリンゴ酸トメチル、また、化合物1はリンゴ酸1,4-ジメチルと同定された。リン ゴ酸ならびに果汁に含まれる代表的な有機酸としてクエン酸や酒石酸の肝障害抑制効果も検 討したが、これらに肝障害抑制効果は見られなかった。以上の結果から、カムカムの肝障害 抑制効果に関わる活性物質の一つはリンゴ酸トメチルであること、また、この活性はリンゴ 酸を含む他の有機酸には活性が見られないことからリンゴ酸トメチルにかなり特異的である ことが分かった。 第3章では、シイクワシヤーの肝障害抑制効果について詳しい検討を行なうとともに、活 性成分の単離を試みた。活性物質単離のための一次分画としてシイクワシヤー果汁を溶媒抽 出し、3画分(Fr.Ⅰ∼ⅠⅠⅠ;ヘキサン可溶性画分、酢酸エチル可溶性画分、水溶性画分)に 分けた。各画分を濃縮、乾燥し、果汁10%添加相当の比率で食餌に添加してラットに1週間 摂取させたところ、Fr.Ⅰ(ヘキサン可溶性画分)で有意な肝障害抑制効果が見られた。Fr.Ⅰ をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、量的に多い化合物1∼5を得た。化合物1 ∼5を300mg/kgB.W.でラットに単回経口投与し肝障害抑制効果を検討したところ、化合物 2∼4が有意な抑制効果を示した。1H-NMRおよびESI-MSを用いて構造解析を行ったところ、 化合物2はシトロミチン(citromitin)、化合物3はタンゲレチン(tangeretin)、化合物 4はノビレチン(nobiletin)と同定された。これらは柑橘類などに含まれるポリメトキシフ ラボノイドである。このうち最も強い効果が見られたノビレチンについて、投与土を変化さ せて(25、50、100、200mg/kgB.W.)ラットに単回経口投与し肝障害抑制効果を調べたとこ ろ、100mg/kgB.W.以上で有意な抑制効果が見られた。また、ノビレチンの効果が他の肝障 害モデルでも見られるかどうかを検討するため、アセトアミノフェン投与、四塩化炭素投与、 リボポリサッカライド(.LPS)/GalNによる各肝障害モデルでノビLレチン(100mg/kgB.W.) の効果を調べた。その結果、いずれの肝障害モデルでもノビレチンの投与により有意な肝障 害抑制効果が見られた。また、LPS/GalNによる肝障害モデルにおいては、腫瘍壊死因子(TNF) -αの産生抑制、NO産生の抑制、肝臓iNOSmRNAの発現抑制、DNA断片化の抑制などが観察さ れ、これらがノビレチンの肝障害抑制効果のメカニズムに関与しているものと考えられた。 本学位論文の結輸として、カムカム果汁やシイクワシヤー果汁およびその活性成分である リンゴ酸トメチルやノビレチンなどが新たな機能性(肝機能保護作用)食品素材として利用 できる可能性が強く示唆された。
-72-審 査 結 果 の 要 旨 本学位輸文の概要は以下の通りである。 本学位姶文は、果汁の肝機能保護作用について検討したものである。果汁飲料は果 実の栄養成分を摂取できる手軽な手段として広く利用されているが、果汁の栄養生理 機能については必ずしも明確ではない。そこで本研究では果汁と肝機能との関係に注 目し、比較的新しく登場した果汁を用い、肝障害抑制効果を有する果汁が存在するの かどうか、もし肝障害抑制効果が見られるならばどのような成分が関与しているのか を明らかにしようとした。 第1章では、12種類の果汁(アセロラ、ブラックカラント、ブルーベリー、カム カム、クランベリー、ドラゴンフルーツ、ライチ、パッションフルーツ、ザクロ、サ ジー、シイクワシヤー、スターフルーツ)を用いて肝障害抑制効果を有する果汁をス クリーニングしようとした。各果汁を凍結乾燥し、標準食に10%添加してラットに1 週間与えたのち、D-ガラクトサミン(GalN)注射により人為的に肝障害を発症させ肝 障害抑制効果を調べた。肝障害の発症程度の指標として血嫌中のalanine aminotransferase活性とaspartateaminotransferase活性を測定した。有意な肝障 害抑制効果が見られたのはカムカム(めTCゴ∂rJ∂d血ね)だけであったが、シイクワ シヤー(C上古ru∫d印re∫∫∂)なども抑制する傾向が見られた。肝障害抑制効果が見ら
れたカムカムと抑制傾向を示したシイクワシヤーについて、活性強度の確終や活性物
質の単離・同定を試みることにした。 第2章では、カムカムの肝障害抑制効果について詳しい検討を行なうとともに、活 性成分の単離を試みた。活性物質単離のための一次分画としてカムカム果汁を溶媒抽 出し、4画分(Fr.Ⅰ∼ⅠⅤ)に分けた。各画分を果汁10%添加相当の比率で食餌に添 加してラットに1週間摂取させたところ、Fr.ⅠとFr.ⅠⅠⅠの画分に有意な肝障害抑 制効果が見られた。特に抑制効果の強かったFr.Ⅰについて、さらに二次分画を行っ たd シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、Fr.ト1∼Fr.ト5を得た。各 画分を食餌に添加してラットに1週間摂取させたところ、Fr.Ⅰ-2に有意な肝障害抑 制効果が見られた。Fr.ト2をさらに精製し、化合物1と2を得た。化合物1と2を 500mg/kgB.W.でラットに単回経口投与し肝障害抑制効果を調べたところ、化合物2 のみが有意な肝障害抑制効果を示した。化合物2の用量を変化させてラットに単回経 口投与し肝障害抑制効呆を確認したところ、250mg/kgB.W.以上で有意な抑制効臭が 見られた。1上卜醐RおよびESトMSを用いて化合物の同構造解析を行ったところ、肝障 害抑制効果を示した化合物2はリンゴ酸1一メチル、また、化合物1はリンゴ酸1,4-ジメチルと同定された。リンゴ酸ならびに果汁に含まれる代表的な有機酸としてクエ ン酸や酒石酸の肝障害抑制効果も検討したが、これらに肝障害抑制効果は見られなか った。以上の結呆から、カムカムの肝障害抑制効果に関わる活性物質の一つはリンゴ 酸1-メチルであること、また、この活性はリンゴ酸を含む他の有機酸には活性が見 られないことからリンゴ酸トメチルにかなり特異的であることが分かった。 第3章では、シイクワシヤーの肝障害抑制効果について詳しい検討を行なうととも に、活性成分の単離を試みた。活性物質単離のための一次分画としてシイクワシヤー 果汁を溶媒抽出し、3画分一(Fr.Ⅰ∼ⅠⅠⅠ)に分けた。各画分を果汁10%添加相当の 比率で食餌に添加してラットに1週間摂取させたところ、Fr.Ⅰに有意な肝障害抑制 効果が見られた。Fr.Ⅰをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、畳的に多 い化合物1∼5を得た。化合物1∼5を300mg/kg B.W.でラットに単回経口投与し肝 障害抑制効果を検討したところ、化合物2∼4が有意な抑制効果を示した。1H-Ⅲ躇お よびESトMSを用いて構造解析を行ったところ、化合物2はシトロミチン (citromitin)、化合物3はタンゲレチン(tangeretin)、化合物4はノビレチン (nobiletin)と同定された。これらは柑橘類などに含まれるポリメトキシフラボノイドである。このうち最も強い効果が見られたノビレチンの用量を変化させてラット に単回経口投与し肝障害抑制効果を調べたところ、100mg/kgB.W.以上で有意な抑制. 効果が見られた。また、ノビレチンの効果が他の肝障害モデルでも見られるかどうか を検討するため、アセトアミノフェン投与、四塩化炭素投与、リボポリサッカライド (LPS)/GalNによる各肝障害モデルでノビレチン(100ng/kg B.W.)の効果を調べ た。その結果、いずれの肝障害モデルでもノビレチンの投与により有意な肝障害抑制 効果が見られた。また、LPS/GalNによる肝障害モデルにおいては、腫砧壊死因子(TNF) -αの産生抑制、NO産生の抑制、肝臓iNOS mRNAの発現抑制、DNA断片化の抑制など が観察され、これらがノビレチンの肝障害抑制効果のメカニズムに関与しているもの と考えられた。 結胎として、カムカム果汁やシイクワシヤー果汁およびその活性成分であるリンゴ 酸トメチルやノビレチンなどが新たな機能性(肝機能保護作用)食品素材として利 用できる可能性が強く示唆された。 以上について,審査委鼻全員一敦で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位 論文として十分価値あるもの・と認めた。 <基礎となる学術、論文> 1.TbshiyukiAkachi,%suyukiShiina,YayoiOhishi,TaknmiKawaguchi, HiroknzuKawagishi,TatsuyaMorita,MakotoMori,andKimioSugiyama: HepatoprotectiveEffectsofFlavonoidsfromShekwasha(αtTuSd印mSSa) againstD-Galactosamine・InducedLiverInjuryinRats・J・Nutr・Sci・ Ⅵtaminol.,56,inpress(2010). 2.TbshiyukiAkachi,%suyukiShiina,TaknmiKawaguchi,HirokazuKawaLgishi, TatsuyaMorita,andKimioSugiyama:1・MethylmalatefromCamu-Camu (伽ariadubia)SuppressesD・Galactosamine・InducedLiverInjuryinRats・ Biosci.Biotechnol.Biochem.,74,inpre$S(2010),