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日本語母音の緊張性とフォルマント移動の相関 ―母音「イー」「イイ」のフォルマント周波数の時間依存性に注目して―

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(1)

日本語母音の緊張性とフォルマント移動の相関 ―

母音「イー」「イイ」のフォルマント周波数の時間

依存性に注目して―

著者

石崎 達也

雑誌名

東北大学言語学論集

27

ページ

69-80

発行年

2018-12-01

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130478

(2)

日本語母音の緊張性とフオルマント移動の相関

一母音「イーJ

r

イイ

j

のフオルマント周波数の時間依存性に注目してー

石 崎 達 也

キーワード: 緊張性、フオルマント移動、フオルマント周波数、母音 要旨 従来、日本語母音に関する研究においては、その音質には時間依存性がなくほぼ一 定であると捉えられることが多かった。フォルマント移動(時間依存性を持つフオル マント周波数の変化)についての研究は管見の限りほとんど行われていない。一方、 英語を含む多くの言語の母音に関してはフォルマント移動の研究が盛んに行われて いる。本稿では、日本語の長母音「イーJ及び連母音「イイ」のフォルマント移動を 確認し、英語の緊張母音/i:/及び弛緩母音/I/の同特'性を参照し考察を行なった。その結 果、日本語母音においてもフォルマント移動が存在し、さらに固有の方向性を示し、 日英語の第1フォルマント移動の方向性に共通点があることが見られた。これは緊張 性の時間依存を示唆している可能性があり、日本語母音の緊張性を議論する際には第 lフォルマント移動のような動的な音響的特性に基づいて議論するということも一つ の方法になり得ると考えられる。 1 .はじめに 日本語音声学の研究においては、母音の音質はほぼ一定であると考えられることが多く、 長母音は短母音と長音音素尽/からなるもの、または短母音を繰り返したものと捉えられてい る。日本語の短母音及び長母音の音質を論じる際の前提は、その音質には時間依存性がない というものである。そのため、時間依存性を持つ母音の音質変化即ちフオルマント移動に関 する研究はこれまでにほとんど行われてこなかった。 一方、英語を含む多くの言語における母音のフォルマント移動については、音響的な特性 (Hillenbrand et al.1995)、 人 間 に よ る 母 音 の 認 識 ( Iversonand Evans 2007

Watson and Haπington 1999)、機械による母音の認識システム (Wredeet al.2000)、方言差(Jacewiczand Fox 2013)、個人・年齢差 (McDougalland Nolan 2007

Yang and Fox 2013

2017)、発音教育 (Schwartz 2015,石崎 2016)、辞書アクセスのモデル検討 (Slifka2003) などのような、非常に多くの分 野において研究が行われている。例えばAssmannand Katz (2000) が主張する「近いフォル マント周波数を持つ2つの母音は、反対方向のベクトルを持つフォルマント周波数を示す傾 向にあること」のように、非常に興味深い事実が明らかになってきている。また、フォルマ ント移動は母音の識別を行う上で重要な要素のーっとなっていることを、 Iversonand Evans (2007) などの複数の研究者が主張している。このように、フォルマント移動は音声学にお いて重要な研究対象のーっとなっている。 2. 研究巨的 本稿においては、未だ十分な研究が行われてきているとは言えない日本語の母音が持つフ オルマント移動の音響的な特性を明らかにすることを研究目的とする。特に、持続時聞が比 較的長めで狭母音、前舌母音と分類される日本語の長母音「イーj及び連母音「イイ」に焦

(3)

点をあてる。持続時間が長めの母音を研究対象としたのは、フォルマン ト移動の観測可能性 をより高めるためである。また、すでに緊張性が明らかになっている英語の長母音/i:1と短母 音II/の特性を参照し、その緊張性とフオルマント移動との相関を議論する為に、近い開口度 や舌の位置で発音される狭母音、前舌母音を選択した。 3.音響的な特性と先行研究 3. 1 フオルマント移動 母音の音質に関する研究において使用される音響的特性としてまず挙げられるものは、フ オノレマント周波数と持続時間である。近年、この研究分野において新しい音響的特性に関す る研究が行われてきている。その音響的特性はフオノレマン ト移動であり英語母音に関する研 究は多い。一方、日本語母音のフォルマント移動に関しては石崎 (2016)が教育分野への応 用の可能性について言及しているが、管見の限り他の研究はほとんど行われていない。 英語母音の研究において使用されている音響的特性を図 lに示す。縦軸はフオルマント周 波数、横軸は時間を表す。時間 onsetから offsetの聞に母音が発せられた場合を示しており、 この時間差は持続時間 (duration) と呼ばれるものである。時間 onsetから offsetにおける比 較的変動の少ない安定した共鳴周波数を、母音の持つフオノレマント周波数 (formantfrequency) とみなし解析を行うのが一般的である。母音の示す共鳴周波数は時間の経過とともに変動す るが、これはフォルマント移動 (formantmovement)と呼ばれるものである。母音前後に子音 がある単語を用いて研究を行う際には、隣接する子音による母音の音質への影響 (formant transition)を取り除くために、時間 33%から 66%の聞における音質変化をフオルマン ト移動 と定義し解析するといった手法をとることが多い。

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図1 英籍母音の音質を研究する際に使用される音響的特性(筆者作成) 持続時間 33%から 66%の聞におけるフォルマント移動 (rormantmovement) を示す 一方、日本語母音の研究において使用されている音響的特性を図 2に示す。持続時間、フ オノレマント周波数に関する研究は非常に多くなされているが、フォルマント移動については あまり注目されていなし、。本稿では日本語母音のフオルマント移動に焦点をあて、その挙動 に注目していく。

(4)

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日本語母音の音質を研究する際に使用される音響的特性(筆者作成) 図2 図 3は、米国在住の成人男性が発音する英語母音のフォルマント移動の挙動であり、 Assrnannand Kats(2000)が示したデータを基に筆者が作成したものである。解析においては 時間33%から 66%の聞における音質変化をフオノレマント移動と定義している。図中の矢印は フオノレマント移動を示し、矢印の始点から終点へ向かうように音質変化があることを意味し ている。それぞれの母音には、フオノレマン ト周波数の固有の遷移が見られることがわかる。 Assmann andKatz (2000)は、時間onsetにおけるフオノレマン ト周波数が近い値を持つ2つ

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フ ォ ル マ ン ト 周 波 数F2(Hz) 米国英裕務者が発音する英詩母音のフオノレマント移動 (Assmann and Kats(2000) を基に筆者作成) 図3

(5)

の母音について、反対方向のベクトルを持つフォルマント移動を示す傾向にある、と主張し ている。このようなベクトノレの方向性の相違が存在する理由はあるのか、また様々な言語に おける普遍的な特性なのか、についてまだ明らかになっていないが非常に興味深い事象であ ることは確かである。 “Vowels whose onsets are close together (such as /e/ and /E/) tend to display vector movement in opposing directions. This suggests that formant movement provides greater benefits in crowded regions ofthe vowel space."

(Assmann and Katz, 2000:1865)

Hi1lenbrand et al.(1995)は、米国英語のフオルマント移動の測定実験を行なった。 12個の 母音 (/i

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3

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0/) についての調査を行う上で音節 /hVd/を被験者に発音さ せて録音したもので、被験者は男性 45名、女性 48名、子供 46名の計 139名で、あった。また、 録音音声の聴取実験も行い、録音した音声ゐVd/にどの母音が含まれていると判断されるか 確認を行った。この実験は、 Petersonand Barney (1952)の測定実験で得られたフオルマント 周波数のデータが時間軸上の一点において抽出したものであり、フオルマント移動のデータ が存在しないことから行われた。解析においては時間 20%から 80%の聞における音質変化を フォルマント移動と定義している。その結果、 Fl・F2空間上で近接する母音の分布は大きく 重なり合っていた。また、それぞれの母音は固有の方向性を持つフォルマント移動を示し、 母音の認識率は高かった。判別分析により、それぞれの母音がどの程度個別の群に属すると 言えるのかを調査した結果、安定状態におけるフォルマント周波数のデータを使用した場合 は 68.2%、母音の持続時間における 20%と 80%時点のフオルマント周波数(フォルマント移 動)のデータを使用した場合は 87.9%であった。正確な母音識別を行う上で、フォルマント 移動の情報が重要で、あることを示唆した。 上述の通り英語母音の研究においては、時間軸上の一点すなわちフォルマント周波数を研 究対象とするのでは十分で、なく、さらにその時間依存性であるフオルマント移動に注目する 必要があると考えられてきている。一方、日本語母音についてはフオルマント移動の研究が これまでにほとんど実施されていない。これは、日本語母音の音質がほぼ一定のものである という前提のもとに研究が行われているためであると考えられる。また、母音の発せられる 持続時間は非常に短いため、母音に何らかの音質の変動が存在したとしても音声学的または 音韻論的に特に重要な意味を持ち得ないと考えられてきた可能性がある。 3. 2 緊張と弛緩 調音器官の筋肉の緊張と弛緩は、母音の特徴を論じる際に使用されるパラメータである。 音声学においては、この緊張は「テンス」、弛緩は「ラックス」と呼ばれることもある。比較 的長い持続時間を持つ長母音

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a:)と二重母音 (er

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r)は、緊張母音として 知られている。一方、持続時間が短い短母音 (r

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a

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A)は、弛緩母音と捉えられている。 このように英語母音においては、母音の持続時間と緊張性に関係性があるように見える。長 母音を発音する際には調音器官の筋肉に緊張が生じ、短母音を発音する際にはその筋肉は弛 緩している状態であると言える。しかし、母音の緊張性については管見の限り明確な定義は ない 英語母音を発音する際の調音器官の筋肉のこのような緊張性には、音響的な特性との相関

(6)

72-が見られるという指摘が、下記の通り Lindau(1978) によってなされている。 Lindau(1978) は、緊張母音と弛緩母音の違いは、狭母音と広母音の違いと同じではないと主張している。 さらに、狭母音と広母音は第1フォルマントの違いとして区別できるが、緊張母音と弛緩母 音は「周辺ー中央」の違いとして区別できる、とも述べている。すなわち、緊張母音と弛緩 母音は、特性「周辺」という考え方により最も適した分類が可能であるという主張である。 Lindau (1978) は、緊張母音を特性「周辺」において[+peripheral]、弛緩母音を[-peripheral]と 分類している。 “Itis worth noting here that,合oman acoustic point of view, the difference between the so司calledtense and lax vowels is not the same as the difference between [expanded] and [constricted] vowels." “The tense-lax vowels differ on a peripheral-central axis

while the [expanded] and [constricted] vowels differ on a vertical axis ofthe frrst formant." “The difference between tense and lax vowels is best labeled by a feature Peripheralア (Lindau, 1978: 558) また Lindau (1978) は、特性「周辺j というものは他の言語において何らかの対照性を説 明するものとして知られているわけではないが、完全な音声学的記述を行う上で必要なもの である、と述べている。

“...,peripheral is not known to be independently contrastive in any language; however, it is required for complete phonetic descriptionプ (Lindau, 1978:558) 一方Slifka(2003) は、緊張母音の産出の際に前方舌根性 (ATR)及び調音音響空間上の位 置が極端に促進されるとの仮説をたてた。第lフオノレマント周波数の時間依存即ち第 1フォ ルマント移動を測定することにより、緊張・弛緩母音の区別が可能であるか調査し、その仮 説の妥当'性について検証した。その結果、第 1フォルマント移動が下降傾向にあるのは緊張 母音の88.9%、第 lフオノレマント移動が上昇傾向にあるのは弛緩母音の 91.7%であった。緊張 母音においては調音器官が極端な位置へ、弛緩母音においては中間の位置へ向かつて移動す るという仮説を裏付けた。 “The lax vowels have a rising slope in 91.7% ofthe cases, and the tense vowels have a falling slope in 88.9% of the cases. These results agree with the assumption that changes in F 1 occur across these vowels as the articulators either move toward an extreme position (tense vowels) or possibly toward a neu仕alposition(lax vowels)." (Slifka

2003・922・923) 4.研究方法 日本語の長母音「イーjと連母音「イイ」のフオルマント移動を観測し、緊張性とフオル マント移動の相関性について考察を行う。考察を行う上で、英語の緊張母音/i:/及び弛緩母音 /r/の同特性を参照する。

(7)

日本語の音声データとして使用したものは、三省堂の「新明解国語辞典 第七版」を収録 した電子辞書アプリケーションに付属している音声デー夕、東京大学大学院のオンライン日 本語アクセント辞書 (OJAD) と OxfordAcoustic Phonetic Databas巴(OAPD)である。新明解国

語辞典においては、すべての見出し語にアクセントが表示され女性 l名(青年層)の音声デ ータが収録されている。東京語を基礎とする標準的なアクセントを採用するように努めたも のとされている。 OJAD は国立国語研究所・共同研究プロジェクト「日本語教育のためのコ ーパスを利用したオンライン日本語アクセント辞書の開発jの成果物である。約 9,000の名 詞、約 3,500の用言(動詞,い形容詞,な形容詞)について男女各 1名(青年層)の音声デ ータ(東京方言アクセント)が収められている。 OAPD はオクスフォード大学で作成された 音声資源で、日本語やフランス語などの9ヶ国語の単語の音声を調べることが可能である。 約 500の名詞、用言について男女各 4名 (26-31歳)の音声データが収められている。日本 語母音「イー」及び「イイ Jのフォルマント移動を調査する上で使用したのは計 125音声デ ータであり、内訳は女性 1名計 66音声データ(新明解)、男女各 1名計 33音声データ (OJAD)、 男女各 4名計 26音声データ (OAPD) である。調査する単語のアクセントパターンについて は HL,LH, (田-I, LL)の 3つで、データ数は 43,42,40である。隣接する子音や母音による観測 対象の母音の音質への影響を取り除くために、観測対象の母音の持続時間 33%時点から 66% 時点の聞における音質変化をフォルマント移動と定義し解析を行った。単語からの母音の抽 出には、音声解析ツール Praat (version 6.0.21)を使用した。 英語母音のフオルマント移動のデータとしては、 Assmannand Katz (2000)によるフオルマ ント移動の挙動に関する研究結果を使用した。これは、米国在住の成人男性が発音する英語 母音についてのフオルマント移動に関する研究結果である。 以下、日本語母音については適宜「イー」をliRl、「イイjをli

ν

と表記する。 5.結果

5.

1 日本語母音 liRI(アクセント HL,H H, LL)の フ オ ル マ ン ト 周 波 数 最初に発音される「イjと次に発音される長音符号「ーjに対応する音で構成される母音 「イーjについての結果 (OJAD) を表1.1、表1.2に示す。男性の日本語話者の場合、持続 時間 33%及び 66%時点における第 lフオノレマント周波数 F1は約 270-400Hz付近、第 2フオ ルマント周波数日は約 2210-2530Hz付近に分布している。女性の日本語話者が発音する場 合では F1は約 390-550Hz付近、 F2は約 2860-3160Hz付近に分布している。

5. 2

日本語母音 /iil(アクセント LH) の フ オ ル マ ン ト 周 波 数 最初に発音される「イ」と次に発音される「イ」のアクセントパターンが、「低高J となる 母音「イイ」についての結果 (OJAD) を表 2.1、表 2.2に示す。男性の日本語話者の場合、 liil (LH)の持続時間 33%及び 66%時点における F1は約 260-370Hz付近、 F2は約 2270-2540Hz 付近に分布している。女性の日本語話者の場合、 F1は約 410-540Hz付近、 F2は約 2770-3180Hz付近に分布している。母音liil(LH)のフォルマント周波数の分布は、上述の母音liRl とほぼ同様であった。

(8)

-74-表1.1日本語母音 /iRl(HL

H H

LL) の第 1フ オ ル マ ン ト 周 波 数 (OJAD) 母音 母音 単語(発話者 Fl) アクセント Fl(33%) Fl(66%) F 1(66%)-F 1(33%) 前 後 [Hz] 胆z] [Hz] [p] [s] コピーする LL (語中) 515.2 428.3 -86.9

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[tc] スピーチする HL (語中) 486.6 419.2 -67.4 [r] [z] フリーズする HL (語中) 388.3 395.7 7.4 ド] [z] フリーズする HH (語中) 485.7 474.7 -11.0 か] [k] ユニークな HL (言吾中) 550.4 506.0 -44.4 母音 母音 単語(発話者 Ml) アクセント Fl(33%) Fl(66%) Fl(66%)・Fl(33%) 目U 後 [Hz] 胆斗 [Hz] [P] [s] コピーする LL (語中) 312.6 281.4 -31.2 匝] [tc] スピーチする HL (語中) 276.6 284.4 7.8 [r] [z] フリーズする HL (語中) 288.0 273.6 -14.4 [r] [z] フリーズする HH (語中) 356.2 320.6 -35.6 fp] [k] ユニークな HL (語中) 404.1 388.8 -15.3 表1.2日本語母音 /iRl(HL

H H

LL) の第2フ オ ル マ ン ト 周 波 数 (OJAD) 母音 母音 単語(発話者 Fl) アクセント F2(33%) F2(66%) F2(66%)・F2(33%) 前 後 胆z] 恒z] 胆z] [p] [s] コピーする LL (語中) 2880.9 2988.4 107.5 [p] [tc] スピーチする HL(言吾中) 3025.0 2913.1 -111.9 [r] [z] フリーズする 庇(語中) 2860.8 2937.8 77.0 [r] [z] フリーズする HH (語中) 2967.0 2939.2 -27.8 か] [勾 ユニークな 且(語中) 3005.1 3160.5 155.4 母音 母音 単語(発話者 Ml) アクセント F2(33%) F2(66%) F2(66%)・F2(33%) 前 後 胆z] [Hz] [Hz] [p] [s] コピーする LL (語中) 2234.0 2208.7 -25.3 [p] [tc] スピーチする HL(語中) 2270.7 2534.2 263.5 ド] [z] フリーズする HL(語中) 2285.9 2340.7 54.8 ド] [z] フリーズする HH (語中) 2337.5 2366.9 29.4 fp] [k] ユニークな HL(語中) 2466.1 2506.7 40.6 表2.1日本語母音 /iil(LH) の第1フ オ ル マ ン ト 周 波 数 (OJAD) 母音 母音 単語(発話者 Fl) アクセント Fl(33%) Fl(66%) Fl(66%)-Fl(33%) 目IJ 後 伊z] [Hz] [Hz] [m] 百います LH (語頭) 458.3 458.6 0.3 [k] ド] 聞いた LH (語頭) 480.8 459.8 -21.0 [j;] ド] 敷いた LH (語頭) 448.0 505.1 57.1 [k] 言い聞かせる LH (語頭) 408.3 449.3 41.0 [k] いい加減な LH (語頭) 482.8 536.0 53.2 母音 母音 単語(発話者 Ml) アクセント Fl(33%) Fl(66%) Fl(66%)ーFl(33%) 前 後 胆z] 胆z] 伊斗 [k] 問 聞いた LH (語頭) 268.4 282.1 13.7 [j;] 問 敷いた LH (語頭) 292.7 301.3 8.6 [m] 百い間違える LH (語頭) 265.9 327.4 61.5 [a] 言い表す LH (語頭) 261.6 273.1 11.5 [k] 言い聞かせる LH (語頭) 272.2 372.2 100.0 [k] いい加減な LH (語頭) 272.6 357.8 85.2

(9)

表 2.2日 本 語 母 音 /iiJ(LH)の 第 2フオノレマント周波数 (OJAD) 母音 母音 単語(発話者Fl) アクセント F2(33%) F2(66%) F2(66%)・F2(33%) 前 後 何z] [Hz] 胆z] [mJ 百います LH (語頭) 2989.8 3181.4 191.6 [ 吋

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聞いた LH (語頭) 3022.3 3117.5 95.2 ~ [!] 敷いた LH (語頭) 2767.4 2912.9 145.5 (k] 言い聞かせる LH (語頭) 2763.6 2914.4 150.8 [!9 いい加減な LH (語頭) 2847.9 2929.6 81.7 母音 母音 単語(発話者Ml) アクセント F2(33%) F2(66%) F2(66%)-F2(33%) 品目Ij 後 仰z] [Hz] [Hz] [k] [t] 聞いた LH (語頭) 2361.0 2380.8 19.8 ~ [!] 敷いた LH (語頭) 2274.2 2398.3 124.1 ~ 冨い間違える LH (語頭) 2368.0 2381.6 13.6 [a] 百い表す LH (語頭) 2374.0 2536.2 162.2 [!9 言い聞かせる LH (語頭) 2337.0 2349.4 12.4 (k] いい加減な LH (語頭) 2296.7 2348.8 52.1 他の結果については記載を省略する。以下の考察では、顕著な音質変動を確認できたOJAD データを使用する。アクセント表記については適宜省略する。 6.考 察 6. 1 日 本 語 母 音/iRlと英悟母音/i:/、/./のフオルマント移動 日本語母音/iR/の持続時間33%、66%時点、におけるフオルマント周波数は図4において矢印 の始点と終点で表されており、同ーの値 を 取 ら ず 異 なっていることが 分 かる。これは/iR/の持 続 時 間33%時 点から 66%時点、において、その音質は一定ではなくある方向性を持って変動し て い る こ と を 示 し て い る。従 っ て 、 こ の 母 音 は 例 え ば 日 本 語 の 短 母 音

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を 長 く 伸 ば し て 発 音

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250

300

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450

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3500

図4 F E , FFM"MM M m " F S F F " " " U 叫叫吋叫叫町町川叫川町叫叫叫叫同同 S U H M " " H u n M H U H M H u n M H U n u n u " u n M H U " " " 、 E ' ' s

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日本語母音liR/のフオノレマント移動

(10)

-76-されるような単純な音ではないことを意味している。第 lフオルマント移動は下降を示し、 第 2フオルマント移動は不明瞭ではあるが若干上昇を示す傾向が見られる。 図中に示す/i:/ (E)は、 Assmannand Katz (2000)により示された米国在住の成人男性が発 音する英語母音/i:/のフォルマント移動である。この英語母音/i:/は、成人男性の日本語母語話 者が発音する日本語母音/iRlと類似したフォルマント周波数の分布を示している。フォルマン ト移動についてもFl下降F2上昇であり同様の傾向を示している。 日本語母音/iRlと英語母音/i:/について、持続時間の長短、開口度、緊張性、特性「周辺」及 びフォルマント移動の傾向をまとめたものを表 3に示す。 表3日本語母音/iRlと英語母音/i:人 /11の 特 性 比 較 母音 長短 開口度 緊張性 周辺 フォルマント移動 Fl F2 方向性

!

i

Rl (

長母音 狭母音 不明

+

下降 上昇(不明瞭) 中央今周辺 /i:/ (E) 長母音 狭母音 緊張 十 下降 上昇 中央今周辺 /ν(E) 短母音 広めの 弛緩 上昇 下降 周辺今中央 狭母音 (E)は英語母音、(J)は日本語母音を示す。 英語母音/i:/は長母音と分類され、調音音声学的には狭母音という位置付けで、さらに緊張 母音として知られている。Lindau(1978)は特性「周辺 Jを導入する上で緊張母音を[+peripheral]、 弛緩母音を[-peripheral]と分類している。 /i:/は緊張母音で、あるので、[+peripheral]と分類される (表中では+と表記)。 一方、日本語母音

!

i

Rlは長母音、狭母音と分類され、緊張性については不明である。日本語 母音

!

i

Rlの特性「周辺」については、緊張母音である英語母音/i:/と類似したフオノレマント周波 数の分布を持つことから[+peripheral]どしている。長母音、狭母音、 Fl下降、 F2上昇、さら にフォルマント移動は Fl・F2空間における中央から周辺への方向性を持つという点で、日本 語母音

!

i

Rlと英語母音/i:/は非常に類似した動的な音響的特性を持っている可能性がある。 一方、図中に示す!I/(E)は、 Assmannand Katz (2000)により示された米国在住の成人男 性が発音する英語母音

ν

/

のフオルマント移動であるが、日本語母音

!

i

Rlとは方向性が逆である。

6. 2

日本語母音/iilと英語母音/i:/、/./のフオルマント移動 日本語母音/iν(LH)の持続時間 33%、66%時点におけるフォルマント周波数は図 5におい て矢印の始点と終点で表されており、日本語母音

!

i

Rlと同様に同一の値を取らず異なっている ことが分かる。これは/iν(LH)の持続時間 33%時点から 66%時点における音質は一定ではな くある方向性を持って変動していることを示している。第 Iフォルマント移動、第2フォル マント移動共に上昇の傾向を示している。 図中に示す/i:/ (E)、!rI(E)は、 Assmannand Katz (2000)により示された米国在住の成人 男性が発音する英語母音/i:/、!rIのフォルマント移動である。英語母音/i:/は、成人男性の日本 語母語話者が発音する日本語母音/ii/(LH)とほぼ同じ値のフォルマント周波数を示している。 フォルマント移動については英語母音/i:/はFl下降F2上昇、英語母音!I/はFl上昇F2下降で あるのに対し、日本語母音/iν(LH)はFl上昇F2上昇でありそれぞれ異なる傾向を示してい る。

(11)

200

250

300

守 350

z

.

.

.

.

.

.

400

r

.

z

.

.

450

500

550

600

3500

3000

2500

F2 [

H

z

]

.Jl首/11/1"聞いた,(LlI]M "6;%ρtlln聞いた(UIJ.¥I

33哨/11/1"虫色、た(LI1]M 線引 悦/11/1

4置いた(lHjM -J]明 州/In聞いたt凶JF

6");/11/1"聞いt:J!-I!lr

33%/1νM冒い間遣えi.(lII]r a日明1II/In't、iVl.え晶(Llljf 省 33~"/1 げ 1" 曹い間違え ~(LH]" • 6''}~J liげho置い間這え晶(LII]" ・Jl帆I"/In偉いた(Utl)' ・67%/1ν1".いtqW]f

33%/11/ho置いaT【LH]~I

61哨lll/ln置い禽ず(LIl).¥I "33%,11ν M曹い.す(L川T P悦/1νM冒ぃ

a

す[l川v z:u柚l"/ln圃います(Lttjf

6'・日/1ν1"冒い草す(LH]r φ3J% /11/1"曹い奮す(LH]" .日噛/OI/ln置います(LI!),¥1 ・3J%111/1"冒い聞かせ ~(L川、1 .日.,.~,Ili/ltl置い固かぜ晶(l川 同 " lJ判lUl畑 町 い聞かtt晶(Uljf・

67悦/11/1"冒い聞かせる{札H]r .日鴨川I/lnいい加.(>(LIIJ向

2000

日明/川畑いい加盟.f~(LIIl.\I 33% lll,ll"いい細誠司.(LH]r 司W,,'!l/lnいい掴国lafll-fl•. 図5 日本語母音/u/(LH)のフオ/レマント移動 上記3つの母音について、持続時間の長短、開口度、緊張性、特性「周辺J及びフオノレマ ント移動の傾向をまとめたものを表4に示す。日本語母音liν(LH) の特性「周辺Jについて は 、 緊 張 母 音 で あ る 英 語 母 音li:1と 類 似 し た フ ォ ル マ ン ト 周 波 数 の 分 布 を 持 つ こ と か ら [ +peripheral]としている(表中では+と表記)。連母音、狭母音、 FI上昇、 F2上昇、さらにフ オノレマント移動はFI-F2空間における中央から周辺への方向性を持つ日本語母音liil(LH)は、 英語母音li:1や

/

ν

と異なる動的な音響的特性を示している。 表4日本語母音liiI(LB) と 英 語 母 音li:人 IJ!の 特 性 比 較 母音 長 短 開口度 緊張性 周辺 フオノレマント移動 FI F2 方向性 liν(LH) (乃 連母音 狭母音 不明

+

上昇 上昇 中央今周辺 li:1 (E) 長母音 狭母音 緊張

+

下降 上昇 中央今周辺 IJ!(E) 短母音 広めの 弛緩 上昇 下降 周辺今中央 狭母音 (E)は英語母音、(乃は日本語母音を示す。 Assmann and Katz(2000) は時間 onsetにおけるフオルマント周波数が近い値を持つ母音に ついて、反対方向のベクトノレを持つフォルマント移動を示す傾向にあるということを主張し ている。図4、5から日本語母音liRJとliν(LH)はほぼ同じフオルマント周波数の分布を示し、 ほぽ反対方向のベクトノレを持つフオノレマント移動を示しているように見える。従って、 Assmann and Katz (2000) の英語母音についての主張は日本語母音liRJとliν(LH) のフオノレマ

(12)

-78-ント移動の挙動においても適用できる可能性があると考えられる。 7.

まとめ

従来、日本語母音に関する研究においては、その音質には時間依存性がなくほぼ一定であ ると捉えられることが多かった。そのため、フォルマント移動(時間依存性を持つフォルマ ント周波数の変化)についてはこれまでにほとんど研究されてこなかった。本稿では、日本 語の長母音「イー」及び連母音「イイ Jのフォルマント移動を確認し、英語の緊張母音/i:/及 び弛緩母音/I1の同特性を参照し考察を行なった。その結果、日本語母音においてもフオルマ ント移動が存在し、さらに固有の方向性を示し、日英語の第 1フォルマント移動の方向性に 共通点があることが見られた。これは緊張性の時間依存を示唆している可能性があり、日本 語母音の緊張性を議論する際には第 lフオルマント移動のような動的な音響的特性に基づい て議論するということも一つの方法になり得ると考えられる。 Slifka (2003)は英語母音の第 1フオルマント移動と緊張性には関連性があることを主張し ている。これは、緊張性を議論する際に母音の音質の時間依存性を考慮できることを示して いる。本稿で研究対象とした日英語の母音は、共に逆の第 lフォルマント移動の方向性を示 した。第 lフオルマント周波数は母音産出時の開口度と関係があることは周知であるが、こ のような方向性の相違は緊張性の時間依存性が逆であることを示唆している可能性があると 推測できる。すなわち、日本語母音/iRlと英語母音/i:/の示す緊張性の時間依存性

T

1は共通で、 あり、日本語母音/ii/ (LH) と英語母音

ν

/

の示す緊張性の時間依存性 T2は共通であり、 T1と もは逆であるということである。 Lindau (1978)は母音の特性「周辺」を導入し、緊張母音を[+peripheral]、弛緩母音を[-peripheral] と分類している。英語母音/i:/は緊張母音で、あるので、[+peripheral]、英語母音/νは弛緩母音であ るので[-peripheral]と分類される。この考え方によると、日本語母音/iR人 /iν(LH)のフオル マント周波数は英語母音/i:/とほぼ同様な値を示すことから、票張母音とみなすことができる。 しかし、フオルマント周波数は閉じ母音で、あっても大きな個人差や地域差などの不確定要素 を持ち、さらに時間依存性も示すことからフォルマント周波数の比較だけで日本語母音の緊 張性を議論することは難しい。そこで日本語母音の緊張性を議論する際には、第 lフオルマ ント移動のような動的な音響的特性に基づいて議論するということも一つの方法になり得る と考える。 本稿においては、 Assmannand Katz (2000)が英語母音について主張した「時間 onsetにお けるフオルマント周波数が近い値を持つ母音について、反対方向のベクトルを持つフオルマ ント移動を示す傾向」を、日本語母音/iRlと /iν(LH) において確認した。従って、 Assmannand Katz (2000)の示した音響音声学的特性は日英語において共に現れ得る可能性がある。 日本語母音のフォルマント移動の音響的特性についてはまだ不明な部分が多い。今後、更 なる研究によりその全体像を明らかにする必要があるが、その際に緊張性とフォルマント移 動の相関性を議論することも重要であると考える。

(13)

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表 2 . 2 日 本 語 母 音 / i i J (LH) の 第 2 フオノレマント周波数 (OJAD) 母音 母音 単語(発話者 F l ) アクセント F2(33%)  F2(66%)  F2(66%) ・ F2(33%) 前 後 何z ] [H z ]  胆 z ] [ m J  百います LH  (語頭) 2989

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