宮沢賢治『貝の火』論(二〇〇九年度卒業論文要旨集)
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(2) 宮沢賢治﹁貝の火﹄論. 近代文学研究室 六四三人 小林 千紘. 村上春樹﹃ノルウェイの森﹄論. 近代文学研究室 六四六二 高橋. は自分の意思が伝わらない、言葉に無力感を感じている、と論. 本作品は、これまで、登場人物たちが言葉での意思の伝達で じられてきた。. 宮沢賢治の ﹃貝の火﹄ は、未定稿の作品である。未定稿ゆえ に、賢治の思考に近いであろうと思われる解釈を、推測するこ. しかし、登場人物たちは、他者とつながりを求め、言葉で積. とが可能である。本研究では、従来の研究では論じられていな い、物語の新たな解釈の提示をねらいとする。また、﹁月の火﹂. そこで本研究では、登場人物たちの言葉による悪思の伝達の. 極的に意思を伝えようとしている。. 到. さらに、言葉以外の意思の伝達の手段として、多くの描写があっ. あり方について考察し、新たな解釈をすることを目的とした。. 物語の解釈においては、﹁貝の火﹂の変化の理由を疑問点とし、. の正体の解明も試みたい。 それに対するいくつかの答えを示し、整理する。そして、賢治. 癒そうとしていた。癒すことに成功する者もいれば、失敗する. ﹁直子﹂、﹁僕﹂、﹁緑﹂は、言葉による意思の伝達で、自分を. 感じているということはいえない、ということが分かった。. 問題について見ていくことで、登場人物たちが言葉に無力感を. 主要な登場人物である﹁直子﹂、﹁僕﹂、﹁緑﹂の発言や言葉の. た性行為・セックスについても注目し、考察した。. の他作品に見られる思想を手掛かりとして、最も根拠のある論 を導き出していく。また、賢治が興味を持っていたとされる、 鉱物や仏教思想に関する知識を踏まえた考察も進め、作品理解 に努める。 賢治の、宝殊に対する価値観を手掛かりとすることで、﹁貝 る姿に変化するものである、という答えを導き出した。このこ. 者もいた。だが、全員共通して、言葉での意思の伝達を積極的. の火﹂ の焔は﹁︵魔︶ の焔﹂ であり、﹁貝の火﹂は燃える姿や曇. とから、本作品が ︵本当の美しさ︶ を訴えようとしている作品. がわかった。. 思の伝達、コミュニケーションの手段だといえる、ということ. また、セックス以外の性行為は、言葉と同様に、他者との意. に行っていた。言葉に頼っていたのである。. い ︵日︶ をもつことが﹁さいわい﹂ である、という賢治の想い. である、と解釈することも可能となった。見た目にとらわれな. ﹁貝の火﹂という、賢治が独自に作り上げた﹁宝珠﹂には、. を読み取ることができる。 賢治が興味を持っていた様々なもののイメージが詰まってい. る。. 61.
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