Title
『准介護福祉士』制度に関する一考察−准看護師制度と
の比較を通して−
Author(s)
髙木, 博史
Citation
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of
Humanities and Social Sciences(12): 61-70
Issue Date
2010-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6268
沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010
『
准介護福祉 士』制度 に関す る一考察
一准看護師制度 との比較 を通
して-高 木
博 史
要
約
2007年末に、「社会福祉 士及び介護福祉 士法 Jが制定 され て以来、初 めての改正 が行 われ たO特 に介護福祉 士 に関す る改正で、「准介護福祉士」の規定 が盛 り込 まれた こ とは、日本 の介 護 労働事情 に大 きな影響 を及 ぼす ことにな る。 なぜ な らば、 「准介護福祉 士」」資格 は 「介護福 祉士」 との関係 において 「下位資格」 に当た るものであ り、一般的 に も低待遇 が課題 となって い る介護現場 において、 さらに 「低賃金 ・低待遇」の条件下での労働 を強 い られ ることにな る のではないか とい う懸念 が生 じるか らである。 そ こで、「介護福祉 士」 と 「准介護福祉士」 と同様 の関係性 を持つ と考 え られ る 「看護 師」 と 「准看講 師」 の関係 を比較材料 とし、その実態 を明 らかにす るこ とで 「准介護福祉 士」 の再考 を促す問題提起 としたい。 キー ワー ド :准介護福祉士 、准看譲 師 、業務独 占、名称独 占 は じめに 1987年 に 「社会福祉 士及 び介護福祉 士法」が成 立 し、これ らは、わが国の社会福祉 専門職 の 国家資格 として20年余 りを経 た。 しか し、果た して 「専門職」の名 に見合 う待遇 がな され て き たのか とい うことには疑問が残 り、 さらに 「措置」 か ら 「契約 」- と移行 した社会福祉 の分野 は、これまで以上 に 「介護 の質」 が問われ るよ うになってきた とい う時代 に突入 した とい って も良いだろ う。 こ うした中で、2007年末 に制定以来 、初 めての大幅 な改正 が行 われ た 「社会福祉 士及び介護 福祉士法」は、今後 の介護 ・社会福祉 人材 の雇用状況 に も大 き く影響 を与 えるもの となった。 とくに、 これ まで養成施設 を卒業すれ ば、実質 的には、ほぼ 自動的 に資格 が取得 できていた 「介護福祉士」について2011年度 か ら国家試験 を課 し、合格者 に対 し資格 を付与す る とい う変 更点は今回の改正の最 も大 きな 目的であった。介護福祉 士の 「質 」を確保 す る とい う意 味では、 こ うした変更は、「契約」に よってサー ビスが選択 できるよ うになった時代 の流れ の一つ ともい えるか もしれないが、一方 で、 この改正 に ともない 「准介護福祉 士」 とい う制度 を創設 した こ とが、劣悪 といわれて きた介護 現場 の労働環境 に大 きな影響 を与 えるこ とにな るのではないか とい う懸念 は払拭 できないであろ う. 本稿 は、新 しく創設 され る 「准介護福祉 士」制度 について、同様 に 「准」 の称号 を冠す る と い う意味で類似性 を持つ准看護 師制度 との比較検討 を通 し、この制度 の持つ課題 を明 らかに し、 そのあ り方 について再考 を問題提起す るこ とを 目的 としてい る。-61-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 Ⅰ
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「准介護福祉士」鯛設 の背景 1. 深刻 な介護人材 不足 今 日、わが国は、高齢化率 が21%を超 え、「超 高齢社会」 といわれ るよ うになってきた。 「団 塊 の世代」 と呼 ばれ た人 々の大量退職 時代 を前 に、退職 後 の人生 を ど う生 きるのか とい うこと が社会 問題 として クローズア ップ され て くるこ との一方で、「介護 」を誰 が担 ってい くのか とい う現実問題 に直面 してきてい る。 そ して、 こ うした介護 人材 の将来 に どの よ うな展望 を見出 し てい くのか とい うこ とを真剣 に論議 していかなけれ ばな らない時代 になってきているのではな か ろ うか。 しか し、介護 の現場 には必ず しも明 るい展望 が拓 けてい るわ けではない。若干の地域差 はあ るが、都心部 では、い くら求人 を出 して も介護 の担 い手が集 ま らない とい う深刻 な人材 不足の 事態 に陥 ってきてい る。 こ うした状況 を作 り出 してきた最 も大 きい要因が、その劣悪 な待遇 に あるこ とは、指摘 は されつつ も放置 され てきた とい う状態 に近 い ものであった。 そ もそ も、介護 は 「家事 の延長」 とい う社会的認識 が強 く表れ てい る職種である。家事 には 基本的 に報酬 が支払 われ て こなかったため、介護 もいわゆる 「不払 い労働」 と認識 されていた 時代 がひ じょうに長 く存在 していた。 そ して、それ らは、 「家庭 の問題 」 として 「嫁」や 「娘」 といった立場 にあった 「女性」 に押 し付 け られ てきた ともい えるだろ う。介護 を職業 としてい る人 々は、 こ うした、社会的 、歴 史的 な背景か ら、 「偉 いですね」 「大変 ですね」 と声はかけ ら れ て もそれ が報酬 として具体的 に反 映 され てきた ものではなかった。 しか し、著 しいス ピー ド で高齢化 が進 み、 もはや介護 は 「家庭 の問題 」 として解決 してい くこ とが困難 な ことが明 らか にな り、 「介護 の社会化」 とい うス ローガ ンの下に2000年 の介護保 険の導入 に踏み切 ったので あ る。 この介護保 険は、事業者 と利用者 の 「契約」 を基本 とし、実態が ともなってい るか どう か とい うことについては留保 したい部分 もあるが、「サー ビスを 自分 で選択 できる」とい うこと が最大の特徴 とされ 、営利企業 の参入 も認 め られ るよ うになったため、介護事業者 は著 しく増 加 した とい って良いだ ろ う。 それ に ともなって、一時 は、福祉 ・介護 系の課程 を作 ることが、 学生募集 の切 り札的 な勢い を見せ てお り、こ うした人材養成 を行 う教育機 関 も著 しく増加 した。 一方 で介護 に携 わ る人 々の労働環境 についてはそれ ほ ど改善 され てきてお らず 、その結果、今 日では、介護福祉 士養成校 の定員割 れ とい う事態 も生 じてきてい る。 加 えて、相次 ぐ介護 報酬 単価 の切 り下 げな ど、介護保 険 に よる収入 を主 とす る中小の事業所 は、経営 を維持す るために最 も効果的な方法 として人件費の削減 に動 か ざるを得 ない実態 を抱 えてい る。 しか し、職 員 を非正規化 ・パー ト化す るこ とは、低賃金化 に直結 し、 よ り良い人材 を求 めよ うとす るこ とに支障 をきた して しま うとい う悪循環 に陥 ってお り、人材不足 は、ます ます深刻化 してい る。 こ うした状況 を危倶 して2009年4月 よ り介護 労働者 の貸金 ア ップを念頭 に置いて初 めての介 護 報酬 ア ップ改定 がな され た。当初 、約2万 円ほ どの貸金 ア ップをめ ざしていた といわれ るが、 実際 にはほ とん ど効果 がな く深刻 な人材 不足の状況が継続 してい る とい えるだろ う。 しか し、 本 当に 「人材不足」 なのであろ うか。 多 くの介護福祉士養成校 が定員割れや 閉校 が現実の もの となってい る今 日、介護福祉 士制度 はある意味で正念場 を迎 えてい る とい うこともできる。 こ うした状況 の中、 「准介護福祉 士」 とい う資格の位置づ けが改 めて問われてきてい る。高木
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『准介護福祉 士』制度 に関す る一・考察2
, 介護福祉士資格 の あ り方 と r准介護福祉士」鋼度 こ うした人材不足 を背景 に、介護 人材 の 「質」の確保 とい うこ とを 目的 に2007年末 に 「社会 福祉 士及び介護福祉 士法」 が制定以来初 とな る改正 が行 われ たO とくに これ まで養成校 を卒業 すれ ば、実質的 にほぼ 自動的 に付与 され ていた介護福祉 士 は、養成校 によって もその 「質」 に ひ じようにば らつ きがあ り、専門職 としてふ さわ しい知識や能力 を身 につけてい る とは言 い難 い場合 もあ り、 こ うした事態 を打開 してい くために資格取得 を希望す る者すべ てに国家試 験 を 課 し、合格者 に対 し資格 を付与す る とい う改革 を行 った こ とが今 回の改正 にお ける最大の特徴 である。 一方 で、試験 に不合格 だった者 に対 し 「准介護福祉 士」 の称 号 を付与す ることと した ものが 「准介護福祉 士」制度 であ る。 この措置 は、介護保 険導入後 、著 しく増加 した介護福祉 士養成校 に対す る配慮 ではないか と いわれていた。確 かに、 これ まで学校 内部 で到達度 を図 る試験 は実施 していた として も実質 的 には、卒業 さえすれ ば 「無試験」 で取得 できる資格 を看板 に して きた養成校 として突然 の制度 変更に戸惑いが隠せ ないであろ う。 学生が試 験 に合格 で きなかった場合 、あるいは、極端 に合 格率が低 かった場合 な ど学校側 としては、その存在意義 さえも問われ 、経営 に直結す ることと なる。学生 に とって も、従来 は、単位 を取得すれ ば、「無試 験」での資格取得 ができていたか ら こそ一定の 「魅力」 を感 じていた部分があったのではないだ ろ うか。 も し、それ がな くなって しまえば、 もはや、介護福祉士養成校-の入学 を志望す る動機 のひ とつがな くなって しま うこ とにもな りかねない。 こ うした、介護福祉士養成校 -の配慮措置 と して 「准介護福祉 士」 を創 設 し、国側 には、混乱 を最小限に とどめたかった とい う意 図があった といえる。 この よ うに、今後 の介護福祉 士のあ り方 をめ ぐ り、資格制度 の仕組 みか ら変革 させ てい こ う とした国側 の対応 が果 た して どの よ うな反応 を巻 き起 こ したのかについて次章で検証 してい き たい。 Ⅱ.r
准介護福祉士_J事l鹿 をめ ぐる各方面の反応 と同題点 1, 専門職 団休の反応 まず、介護福祉士 の職能 団体 として組織 され てい る 日本介護福祉 士会 の反応 は ど うで あった ろ うか。次 に示す ものは、 日本介護福祉 士会 のホー ムペー ジにて公 開 され ていた参議厚生労働 委員会での発言趣 旨 1)では基本的 に 「反対」の姿勢 を示 してい る とい えよ う。た とえば、「介護 が魅力 ある職業 としての輝 きを失い、介護福祉 士 の待遇 面の低 下や社会的評価 の低下 につ なが り、人材確保 に も大きな影響 を及 ぼ しかねない とい う危 倶」があ るこ とを表 明 してい る。 しか しなが ら、同会 は 「准介護福祉士」を創設す る場合、「フィ リピンな どの外国人 にだ け、准介護 福祉 士を適用す るな どしていただき、国内法 では 日本人の准介護福祉 士が誕 生できない仕組 み にす るな どの配慮 もご検討 していただきたい」 とも述べ てい る。 つま り、基本的 には 「反 対」 であるが、一定の措置 が講 じられれ ば容認せ ざるを得 ない とい う見解 であ る。 しか し、こ うした見解 には、筆者 は、疑問 を抱 か ざるを得 ない。なぜ な らば、「准介護福祉 士」 の業務 内容 は 「介護福祉士」 と大 きな差異がないか、あるいは、全 く同 じである と想定 され て いる。 そ うした中で、外 国人介護 労働者 の資格 として r准介護 福祉 士」 を導入 した場合 、経営 的な視点か ら人件費が安 く抑 え られ る 「准介護福祉 士」 -外 国人介護 労働者 とい う事業所 が多 数出て くるであ ろ う。外国人介護 労働者 の受 け入れ には、労働 条件 以外の事柄 、た とえば、 コ - 63-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 ミュニケ- シ ョンな どの問題 について も練題 は多いが、r質」は ともか くとしても、提供できる 業務 (サー ビス)内容にほ とん ど影響 がない とす るな らば、 日本人の介護 労働者 よ り低賃金で雇 うこ とのできる 「准介護福祉士」の雇用 を積極的 に行 ってい くとい うことになって くるのでは ないだ ろ うか。 こ うした事態 が現実 の もの となれ ば、介護福祉 士の雇用 は激減 し、介護産業が 主 として 「准介護福祉士」 に よって 占め られ るこ ととなった とき、産業 としての労働条件 の低 下を もた らすおそれがあ るこ とが容易 に予想 で きるはずである。 専 門職 団体 として、そ うした予想 され る結果 に対 し、果た して どの よ うな責任 を負 ってい く のかが今後 、問われて くるのではなかろ うか. 2.介護福祉士養成攻 の反応 次 に、介護福祉 士養成校 -福祉新 聞社 が 409校 の事務職員 、教員 、経営者 を対象 に 2007年 3 月 に実施 したア ンケー トの結果 も興味深 い2)o 回答者 539人の約 7割 に当た る 377人が先の見 えない 「准介護福祉士」について反対 を表 明 してい る。 とくに、教員 457人 中 334人 (73.1%) が反 対 を表明 してお り、介護福祉士養成 に直接 、携 わ る者 と介護福祉 士の 「質の確保 」 を した い国側 の思惑が必ず しも一致 していない ことが示唆 され ているo全体的に主な反対理 由 として 最 も多い ものは、5つ選択肢 か らの複数 回答で 「介護福祉 士の質 を下げ る」が 330人であった。 つ ま り、「介護福祉 士の質」を確保 しよ うとす る動 きが皮 肉に も 「准介護福祉 士」の創設 が介護 とい う職業全体 の質 を下げて しま うのではないか とい う懸念 が もたれ てい る といって良いだろ
う。
また、養成校 に とっては経 営的 な観 点か ら、 どうして も資格 を取得す る上 で卒業すれ ば 「実 質無試験」 とい うもの も大 きな魅力 であ り、養成校 に対す る 「配慮措置」 として生まれた 「准 介護福祉 士」 は、 こ うした点か らも必ず しも歓 迎 されてい る とはい えない状況であ り、国側 と の思惑 の違 いが明 らかになった とい えるだ ろ う。Ⅱ. r
准介轟福祉士JtI度 と准看謙麻鋼鹿 との比較検討 1. 「准看離繭」 とは何か 「准介護福祉 士」制度 の創 設 にあた り、資格名 の前 に 「准」 とい う言葉 を冠す る 「准看講 師」 の存在 は、今後の制度 の行方 を見定 める上 で欠 かせ ない こ とであろ う。つま り、「看護 師一准看 護 師」の関係性 が どの よ うな形 で展 開 され てきたのか とい うことを見てい くこ とは、「准介護福 祉 士」制度 に とって もか な り、 リア リテ ィのあるモデル ケース として とらえてい くこ とができ るのではないだろ うか。そ こで、ここでは、この 「看護 師 一准看謹 師」の関係性 の実態か ら 「准 介護福祉 士」 の問題 点 を明 らかに したい。 准看護 師制度 は、戦後復興 に ともない 医療機 関の増加 によって看護 要員 の不足 を補 うために 「看護婦 (当時)を補助す る要員」 と して 1951年 に制定 され た。 しか し、発足 当初 か ら、「看護 婦 の補助要員」としての位置 づ けであ るに もかかわ らず 、実質的 には、わが国の看護要員の相 当部分 を担 ってきた こ とや 「看護 婦」にな るためのスムーズな移行教育 がな され て こなかった こ とな どが要因で 「看護 の質 」 を どの よ うに確保 してい くのか とい う視 点 か ら資格誕生後 5 年 を経ず に見直 し論議 が巻 き起 こってい る。また、1970年代後半か ら 1990年代 にかけては 「准 看護鱒 (当時)」 の廃止論議 が活発 に行 われ るよ うになった。 しか し、既 に医療現場 に定着 し、高木 :『准介護福祉 士』制度 に関す る一考秦 相 当数 に上 る准看講 師 を廃止 す る こ とは、医療 現場 の混 乱 を招 くこ とな どが予想 され 、また 、 日本 医師会 の強 い反 対 もあ り、結 局 は、まだ廃 止 にはな ってお らず先 送 りされ てい る状況 で あ るo しか しなが ら、 この准看護 師制度 はや は り、多 くの課題 を含 んでい るの は明 らかで あ る。
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准看離鯵」 の労嶋環境 「准介護福祉 士」 の創設 で最 も懸念 され る部分 は、や は り、今後 、わが国の介護 労働 環境 が どの よ うな変化 を遂 げてい くか とい うこ とで あ る。類似 の制度 ととらえ られ る准看 護 師 の労働 実態 につ いて留意 してお くこ とが必要 不可欠 で あ ろ う。 そ うした意 味 で、全 国の 医療 従 事者 で 組織 され てい る 日本 医療 労働組 合連 合会 がホー ムペ ー ジで公 開 され てい る資料 で あ る「2004年 度 貸金 ・労働 時 間等 実態調査」 3)は興 味深 い。 この資料 では、看護 師 ・准看護 師 のモデル ポイ ン ト貸金 は表 1) の よ うにな る。 表 1. モデル ポイ ン ト貸金 (単位 :円). 「2004年度 貸金 労働 ・労働 時 間実態調 査報 告書 (PDF公 開版 )」 よ り筆者 が作成 . 平均 初任給 35歳 50歳 看護 師 198,287 290,311 378,167 (日本 医療 労働組合連合会調 査政策 局) い うまで もな く 「准看護 師」が 「看護 師」 よ りも貸金 が低 い こ とが明 らか であ り、2-3万 円 前後 の開 きがあ る。 そ して、 これ は、あ くまで もモデル ポイ ン ト賃金 であ り、実際 には もっ と 開 きがあって もお か しくない。また、介護 職 の場合 、実際 には月額30万 円以上 の賃金 が支給 さ れ てい るこ とは稀 で あ り、も し、「准介護 福祉 士」制度 が導入 されれ ば当然 、こ うした賃金格 差 に加 えて、貸金 が最 高 で も30万 円前後 で頭 打 ち とな る現状 よ り良 くな るこ とはあ り得 ないであ ろ う。 また、「准看護 師」 には、賃金面 ばか りで はな く資格 の性格 に も大 きな特徴 が あ る。 「保 健 師 助産師看護 師法」 4)に よる と看護 師 と准看講 師 の業務 につい ては次 の よ うに規 定 され てい るo 第五粂 この法律 にお いて 「看護 師」 とは、厚 生 労働 大 臣の免許 を受 けて、傷病者若 しくは 第六条 この法律 において 「准看護 師」 とは、都 道府 県知事 の免許 を受 けて、医師 、歯科 医師又 は看護 師の指示 を受 けて、前条 に規 定す るこ とを行 うこ とを業 とす る者 を 法律 的 な規 定 にお いては、看護 師 と准看護 師 は免許付 与者 が厚 生労働 大 臣で あ るか県知事 で あ るか とい う違 い と 「医師 、歯科 医師又 は医師 、歯科 医師又 は看護 師の指示 を受 けて」 とい う 文言 が入 るか入 らないか とい うところの違 い はあ るが、実質 的 には業務 内容 にほ とん ど差異 は ない。 む しろ、介護 老人福祉施設 な どで は、准看諌 師 が看護 業務 の主力 を担 ってい た りす るこ -65-沖縄 大学人文学部紀要 第12号 2010 とがあ り、重 大 な責任 を担わ され てい る場合 もある。 こ うした労働 実態 にもかわ らず、いわゆ る 「正看護 師」 と比較 した場合 、明 らかに労働 条件や人事面等 において著 しく差別 され てい る とい える。 とくに、 この職場 にお ける 「差別」の問題 は、構造的 な問題 を抱 えてお り、劣悪な 労働 条件 を定着化 させ る要因の一つ ともい える。 しか しなが ら、一方 で、准看講 師は絶対的 な看護 師不足 とい う歴史的背景 によって誕 生 した ものの劣悪 な労働条件 に さらされ なが らも医療現場 において主要 な戦力 として必要 とされ てお り、 こ うした待遇 が固定化 、定着化 してい る とい えるだ ろ う。 3.
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准介護福祉 士」 と r准看護師Jの共通点 と相違点 ここでは、 「准介護福祉 士」 と 「准看護 師」 の共通点 と相違点 を踏 まえなが ら、 「准介護福祉 士」制度 が創設 され た場合 、予想 され る事態 について考察 を行 いたい。 「准介護福祉 士」 と 「准看護 師」の共通点 は、それぞれの資格 の下位 資格 となるこ とが共通 してい る。下位 資格 とな ることで賃金面 では確 実 に低位 の水準 に置 かれ ることとなるであろ う。 また、 どち らも実質的 には業務 内容 に大 きな違 いがな く、経験 をつ めば 自動的 に昇格す るもの で もないため、両者 の間での様 々な形 での差別 (た とえば人事面)な ども顕著 に表れ て くるこ と も考 え られ るだ ろ う。 一方 、大 き く違 う点では 「看護 業務」 は 「業務独 占」であるが 「介護 業務」 は 「名称独 占」 であ る ところである。 つま り 「准看護 師」 であって も実質的 な看護業務 は可能 なため とくに就 労 につ いての問題 は、名称独 占である 「准介護福祉 士」 よ りも起 こ りに くい と想定できる。 ま た、看護職員 については、実態 として遵守 され てい るか ど うか とい うことについては留保 した いが、 「看護 師」 と 「准看講 師」 の配置割合 が存在 してい る。 「准介護福祉士」 については、そ もそ も、そ うした もの も検討 され るのか ど うか不 明であるO む しろ、介護福祉 士 自体 が 「名称 独 占」資格 であるために、その下位 資格 と位 置づ け られ る 「准介護福祉 士」 は、きわめて唆味 な性格 を残 してお り、その資格 の存在 意義 さえ も問われ て くるの も時間の問題 であるのではな いだ ろ うか。 そ うした意味では、ほ とんど
「業務独 占」 に近 い 「准看護 師」で さえ、既 に見て きた よ うに、ひ じょ うに厳 しい労働条件 が示 され てい るが、 「准介護福祉士」の場合 は、「准介 護福祉 士」 であ る必然性 がないために相対的 には さらに厳 しい労働条件 を強い られ るおそれ も あ る。 つ ま り、「准看護 師」制度 と 「准介護福祉 士」制度 は共通点 もあるが、資格の性格 を決定す る 重要 な部分 であ る 「業務独 占」か 「名称独 占」か とい うところに、重大な相違点があ り、「准看 護 師」制度 で さえも、その 「差別 的な労働 条件」や 「看護 の質 の確保」 とい う観点か ら明 らか に不合理 であ るか ら廃止せ よ とい う論議 が展 開 され る中で、「准介護福祉 士」を創設 が果た して 本 当に望 まれ てい るのか とい うことが改 めて問われ てい る。 Ⅳ.r
准介腰福祉士j軸鹿の再考 を 1. 「准介護福祉 士」 よ り労鴨環境の向上 を これ まで述べて きた よ うに、「准介護福祉 士」制度 の創設 には、それ ほ ど、大 きなメ リッ トは 存在 していない。む しろ、国家試 験不合格者 として 「准介護福祉 士」として働 くことになれ ば、 実質 的には、介護福祉 士 と何 ら変 わ りのない業務 を要求 され た うえに、冷遇 に耐 えなけれ ばな高木
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『准介護福祉士』制度に関する一考察 らない状況 さえも生 じさせ る様相 である。 こ うした状況の中で働 か ざるを得 ない 「准介護福祉 士」は介護 の職場 に どれ ほ どの魅力 を感 じる とい うのであろ うか。介護現場 の人材 不足 は、「愛」「自己犠牲」「奉仕 」 とい った美 しい言 葉 の下に、ボランテ ィアや家族介護 といったイ ンフォーマル な社会資源 に過剰 に期待 しす ぎ、 積極的 に労働政策 を展 開 して こなかった ことにあるのではなかろ うか0 また、「准介護福祉 士」は直接的 には人材 不足解 消のために創設 され た ものではな く 「介護 の 質」 を確保す る上 で介護福祉士 に国家試 験 を課 した時 に、その副産物 としての性格 を持 ってい るのは確 かである。 しか し、医師国家試 験 に 「准 医師」 とい うものはない。合格 で きなけれ ば 「医師」にはなれ ない。本 当に 「介護 の質」 を確保 したけれ ば、や は りそ こまでの覚悟 も必要 になって くるのではなか ろ うか。「准介護福祉士」とい う中途半端 な資格 の位 置づ けが介護産業 に及 ぼす影響 はきわめて重大 である。 実際 に、介護福祉 士資格取得 に国家試験 が課 され るのは 2011年 であるが、それ までに、も う一度 この施策 を再考 し、介護 労働者全体 の労働環境 を整 え てい くことが求 め られてい る。2
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キ ャ リアア ップの仕組みの必要性 介護現場 は、一般的 には、それ ほ ど多 くの役職 はないC管理者 とそれ を補佐す る者 ぐらいで あ とは職員 として同等の立場 にあ ることが多 い といえるだ ろ う。 ところが、 この 「准介護福祉 士」が誕生す る とこ うした職場衆境 にも大 きな影響 を与 えるであろ うa 「准介護福祉 士」制度 が、「介護福祉 士」の下位 資格 として位置づ け られ るこ との問題 点 につ いては既 に明 らかであるが、「介護 の質 の確保 」とい う観 点 を考慮す るな らば、キ ャ リアア ップ の仕組み を整 えることが優先 され るべ きであろ う。 た とえば、数年 間の実務経験 の後 に研修 を 受 けれ ば、その研修 を修 了 した もの に対 し、何 らかの認 定資格 を交付す るな どといった仕組み である。 現在 、「専 門介護福祉 士」構想 も検討 され てい るよ うであるが、 「准介護福祉 士」 の よ うな下 位 資格 の創設 と決定的に違 うところは、それ がプ ラスアル ファの資格 であ る とい うところであ る。基礎資格 として 「介護福祉 士」があるこ とを要件 にす る場合 は、「介護福祉 士」 自体 が 「国 家資格」 とい う位置づけであ るために、 これ を取得 してい るこ と自体 がある種 の専 門性 を担保 してい るもの ととらえることができるが、「専門介護福祉士」が 「上積 み」の資格 と して位置付 け られれば、キャ リアア ップに もつ なが り、それ を 目指 そ うとい う動機付 けに もつ なが る とい える。 そ うした意味で、「専門介護福祉士」構想 の よ うにプラスアル ファの部分 が充実 し、確 実 に労 働条件 に反映 され る環境 を作 り上 げてい くことこそが、最 も優先 され るべ きではなか ろ うか。 そ うでなけれ ば、ますます介護 とい う仕事 に展望 が見出せず転職 してい く人材 をつなぎ とめて 置いた り、魅力 ある職業 としての位置づ けを確 固た るものに してい くこ とはできないであろ う。 「准介護福祉 士」資格の早急 な導入 よ り前 に、わが国の介護 労働事情 を省みれ ば今 なすべ きこ とが何 であるか とい うのは明 らかではなか ろ うか。 おわ りに 「准介護福祉士」 とい うまだ実際 には、まだ、誕生 していない資格 で あ り、実質 的 に誕 生 さ せ ない方 向 も議論 され てい るよ うであ るが、法律 に規定 され た以上 、誕 生 しない前提 だけで議ー
67-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 論 を進 め、存在 自体 を否定す るわけにはいかないであろ う。 本稿 は、今 、ま さに推 し進 め られ よ うとしてい るわが国の介護産業 にきわめて重要な影響 を 与 えるであろ う 「准介護福祉 士」制度 を既 に存在 してい る類似 の資格 である准看護 師制度 との 比較検討 を通 して、問題 点 を明 らかにす るこ とで この施策 の再考-向けての ささやかな問題提 起 としたいO また、人材 不足が叫ばれ てい る介護 ・社会福祉分野 で潜在 的な介護系有資格者 は多数 にのぼ るであろ うが、介護 の現場 を 「本 当に働 きたい職場」 に してい くためにキャ リアア ップの可能 性 な どを十分 に考慮 した資格制度 のあ り方 について検討す る必要性 が課題 として残 され てい る。 付記 本稿 は2007年 に開催 され た 日本社会福祉 学会第 55回大会 で発表 した 「『准介護福祉士』制度 に関す る一考察」の基づ き、今 日的状況 を鑑 み加 筆修正 を行 った ものである。 注 1)「社会福祉 士及び介護福祉 士一部改正法案 に関す る発言趣 旨」として 日本介護福祉士会 の 「准 介護福祉 士」創設 に対す る見解 が当会 のホー ムペー ジにPDFファイル によって公 開 され てい る。 URL http.//wwwjaccw.or.jp/news_lmP/20070426_Sangin.pdf (2009年 12月現在) 2)「准介護福祉 士」創設 に関す る介護福祉 士養成校- の福祉新 聞社 の調査結果 が2007年 4月 2 日付 の福祉新 聞 に詳 しく報告 されてい る。 ここでは、その結果 の一部 を引用。 3) わが国の看護 労働 運動 に も影響 を与 えて きた 日本 医療 労働組合連合会の 「2004年度 貸金 労働 ・労働 時間実態調査報告」がホームペー ジにPDf-ファイル にて公開 され てい る。表 1は、 これ らの資料 を基 に筆者 が 「看護 師 一准看護 師」 の貸金 関係 を見やす くす るために簡素化 し た もの を作成 したc
URL http://W ,irouren.or.jp/jpnltml/menu6/pdn2004tingintyosa.pdf (2009年 12月末現在)
4)助産 師保健 師看護 師法 h托p二//lawe-gov.go.jp/btmldata/S23/S23710203.html (2009年 12月現 在) 奮考文献 ・責料 朝 日新 聞 2007年 6月 26日付朝刊 福祉新聞 2007年3月12日付 同 2007年3月26日付 同 2007年4月2日付 同 2007年4月9日付 同 2007年4月16日付 同 2007年4月23日付 同 2007年5月7日付 同 2007年5月14日付 同 2007年5月21日付 同 2007年8月20日付
高木
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『准介護 福祉 士』制 度 に関す る一考 察 同 2007年 S月27日付 全国老人問題福祉研 究会編集 (2007)「特集 どう変わ るか介護福祉 士 一 社会福祉 士お よび介 護福祉士法のゆ くえ」
『月刊 ゆたかな くらし 7月号』本の泉社 川島み どり編 (2000)『看護 はひ とつ 准看護婦の看護婦- の移行教育のめ ざす もの』看護 の科 学社 木 下安子 監修 中島幸江著 (1995)『改訂新版 拝啓厚 生大 臣殿 准看護 婦 の "准"ってなあに』 桐書房 鈴木俊作 (1980)『職業 としての准看護婦』三一書房 高木博 史 (2008)『介護 労働者 問題 はなぜ語 られ なかったのか』本 の泉社-69-Consideration on the system of assistant care workers:
Comparison with the system of assistant nurses
Hiroshi Takagi
Abstract
At the end of 2007, the first revision of The Law tor Social Workers and Care Workers was done
since it had been established. Especially, the rule of assistant care worker was included in the Low for
Care Workers. This might give big influences to Japanese nursing labors' circumstances because there
is a concern that the assistant care workers will be forced to their labors under lower wage and service
than those of the care workers. Therefore, I compared the actual situation of nurse-assistant nurse
relationships with that of care worker-assistant care worker relationships, and I would like to take this opportunity to suggest reconsidering the assistant care workers.