≪もてなし研究会≫
まちづくり+クリエイティブ
-市民参加の方法論、風の人からの提言- NPO 法人プラス・アーツ 理事長 デザイン・クリエイティブセンター神戸 副センター長永 田 宏 和
今回は企画、プロデュースの仕事の紹介をする。簡単に一言で言うとまちを元気に する活動である。 その中でも地域で活動するにあたり重要な考え方について示したい。 地域豊穣化における「風」「水」「土」、正確にはさらに「種」を加えた話である。 今までは「地域を活性化しろ」と言われ続けてきた。人口を増やせ、賑わいを作れ ということである。しかし、今はそんな時代ではない。人口減少時代である。神戸市 では 2060 年、今から 40 年後には、人口が 154 万人から 110 万人に減ると言われてお り、現在市内に 10 区あるが、2 区分程度の人口が減ることになる。東京も人口はそれ ほど増えなくなる。そんな時代に活性化と言い続けても意味がない。むしろ、人口を 増やす、賑わいを作るということではなく、住んでいる人たちが豊かに暮らせるまち、 つまり、お互い仲良く、生き生き、元気に暮らせるまちになることを目指す。それは 「活性化」という言葉では当てはまらないので、地域を「豊穣化」しましょうと言っ ている。豊かさというのは、数を増やすということではなく、生活の質を高めるとい うことである。 その「豊穣化」を実現しようとすると、どういう役割の人間が必要か、実現するた めの方策が必要である。 その時に 3 つの役割が必要となる。「風の人」「水の人」「土の人」という 3 つの役割 があり、それぞれの作法がある。 1. 風の人、水の人、土の人、それぞれの作法 まちづくりにおいて関わる「人」の「作法」の考え方として、「風の人」「水の人」 「土の人」という考え方を用いている。 まず「土の人」とは土着という言葉通り、そこに暮らし続けている地域住民の人た ちのことを言う。そこに居続ける存在、しっかり根を張り、活動し続ける存在であり、 市民や地域住民などの地縁的で土着的な人々のことになる。 高度成長期前や明治、江戸とさかのぼっていくと、「土」は、豊か、芳醇で、肥料や水分もたっぷり含み、肥沃であった。肥沃とはどういうことかというと、現在豊穣化 をまちづくりのテーマに掲げているが、地域が豊穣化している状態とも言い換えられ る。つまり、「土の人」たちは、みんな仲が良く、交流があり、良いコミュニティがあ った。そうすると、掃除イベント、お祭り、防災の訓練など、地域でどんな活動を行 っても人が出てきて集まり、自分たちで自立、自走できていた。どんな種を植えても 芽を出し、すくすく育ち、果実を実らせ、また種を落として、芽を出して育つ、それ を繰り返していけた。一番社会が良い状態であったとも言える。ところが今の時代は どうか。挨拶もせず、隣にどんな人が住んでいるのかもわからない。祭りは業者が来 て行う。どんどんコミュニティが希薄な時代となっている。崩壊している。それは土 の状態でいうと、水分も肥料もなくからからに枯れている状態。枯れた土にどんな種 を植えても芽は出ない。つまりコミュニティが崩壊しているところでどんな今までの やり方のイベントをやってもだれも出てこない、うまくいかない。そこでどうするか。 土を肥沃にするのは時間も掛かりなかなか難しい。まず、すぐにできることは、種を 変えることである。種を品種改良すればよい。枯れた土地に植えても育つような“強 い”種をつくる。つまり、防災訓練をして人が来ないのであれば、防災訓練のやり方 を変える。祭りがつまらなければ参加するだけでなく、自分が参加して面白いものに する。ところが今の人たちは自分たちが関わってやろうという気概がない。また、チャ ンスがない。これまで通り、土が乾いていて種を植えても芽が出ないのに同じことを やり続けている時代が今である。今やらなければいけないのは、種を変えなければい けないということである。しかし、種は「土の人」には変えられない。伝統やしきた りの類に縛られている、長老の目が気になる、変えると怒られる。そもそも新しい画 期的なアイデアが思いつかない…、こういった理由から変えることができない。誰が 変えるのかというと、外にいる専門家が変えなければならない。まちづくりの世界で は「よそ者」とも称される、外部にいる種を作るスペシャリストが品種改良した“強 い”種を持って運んでくる。これが「風の人」である。 「風の人」とはその土地に種を運ぶ、刺激を与える存在である。しかし、「風の人」 は強い種を作って、持ってきて、植えるところまではできるが、そこに住んでいない ので去らなければならない。いなくなってしまう。つまり育てることはできないので ある。 「風の人」が運んだ強い種を植えただけでは、土の状態も良くないので育たない。 水を与えて世話をしなければいけない。その役割が「水の人」である。その土地に寄 り添い、種に水をやり続ける、中間支援的な存在であり、NPO や行政が担い手になり やすい。「水の人」は少ないわけではない。今でもいるのだが、なかなかまちは変わら ない。それは種を作ることができないからである。 「風の人」が足りない。日本中で「風の人」欠乏症である。 「風」のスキルを身に着けてほしい。種を作るチカラ、つまり企画力である。プロ
水分もたっぷり含み、肥沃であった。肥沃とはどういうことかというと、現在豊穣化 をまちづくりのテーマに掲げているが、地域が豊穣化している状態とも言い換えられ る。つまり、「土の人」たちは、みんな仲が良く、交流があり、良いコミュニティがあ った。そうすると、掃除イベント、お祭り、防災の訓練など、地域でどんな活動を行 っても人が出てきて集まり、自分たちで自立、自走できていた。どんな種を植えても 芽を出し、すくすく育ち、果実を実らせ、また種を落として、芽を出して育つ、それ を繰り返していけた。一番社会が良い状態であったとも言える。ところが今の時代は どうか。挨拶もせず、隣にどんな人が住んでいるのかもわからない。祭りは業者が来 て行う。どんどんコミュニティが希薄な時代となっている。崩壊している。それは土 の状態でいうと、水分も肥料もなくからからに枯れている状態。枯れた土にどんな種 を植えても芽は出ない。つまりコミュニティが崩壊しているところでどんな今までの やり方のイベントをやってもだれも出てこない、うまくいかない。そこでどうするか。 土を肥沃にするのは時間も掛かりなかなか難しい。まず、すぐにできることは、種を 変えることである。種を品種改良すればよい。枯れた土地に植えても育つような“強 い”種をつくる。つまり、防災訓練をして人が来ないのであれば、防災訓練のやり方 を変える。祭りがつまらなければ参加するだけでなく、自分が参加して面白いものに する。ところが今の人たちは自分たちが関わってやろうという気概がない。また、チャ ンスがない。これまで通り、土が乾いていて種を植えても芽が出ないのに同じことを やり続けている時代が今である。今やらなければいけないのは、種を変えなければい けないということである。しかし、種は「土の人」には変えられない。伝統やしきた りの類に縛られている、長老の目が気になる、変えると怒られる。そもそも新しい画 期的なアイデアが思いつかない…、こういった理由から変えることができない。誰が 変えるのかというと、外にいる専門家が変えなければならない。まちづくりの世界で は「よそ者」とも称される、外部にいる種を作るスペシャリストが品種改良した“強 い”種を持って運んでくる。これが「風の人」である。 「風の人」とはその土地に種を運ぶ、刺激を与える存在である。しかし、「風の人」 は強い種を作って、持ってきて、植えるところまではできるが、そこに住んでいない ので去らなければならない。いなくなってしまう。つまり育てることはできないので ある。 「風の人」が運んだ強い種を植えただけでは、土の状態も良くないので育たない。 水を与えて世話をしなければいけない。その役割が「水の人」である。その土地に寄 り添い、種に水をやり続ける、中間支援的な存在であり、NPO や行政が担い手になり やすい。「水の人」は少ないわけではない。今でもいるのだが、なかなかまちは変わら ない。それは種を作ることができないからである。 「風の人」が足りない。日本中で「風の人」欠乏症である。 「風」のスキルを身に着けてほしい。種を作るチカラ、つまり企画力である。プロ グラムを作る力が必要である。直接「土の人」から感謝されることの多い「水の人」 になりたい若い人が多いが、だとしても「水の人」も「風」のスキルを身に付けてい るほうがよい。圧倒的に「風の人」が足りていないし、「風」のスキルがあると、「水 の人」として活動していても地域のニーズや課題に対応することができる。単なる「水 の人」とは全然違う貢献ができるようになる。 以下では、「風の人」としての関わり方、そしてこれまでに展開してきたプロジェク トについて紹介する。まずは、“強い”種を作る際のセオリーを2つ紹介する。 1-1. 不完全プランニング まず、セオリーの一つ目は種を不完全な状態にしておくことである。地域の人たち の主体的な参加を生み出さなければならない。地域の人たちの積極的な参加や交流を 促すには、プログラムにあらかじめ関わってもらうための余地を作っておく必要があ る、関わり代があるかどうかということが重要である。その種(=プログラム)を作 るプロセスに参加できる余地があるかどうかである。最近の地域イベントには入り込 む余地がなく、住民を観客にしてしまっているものが多い。観客をたくさん作っても、 次またイベントをやったとしてもその人たちは主体的に参加してくれない。色々な人 に手伝いたいと思わせる、手伝い代をたくさん作れるかどうかが大事である。観客を どんなに増やしても地域の活動は次につながらない。一緒に作る主体的な人をどれだ け増やせるかを心がけることが、仕掛けるほうの責任、ポイントである。関われる余 地のある「不完全」な状態が、住民が主体的に参加する状況を生み出し、やがてそれ は住民自身のものとなっていくのである。 1-2. +クリエイティブ 二つ目は、「+クリエイティブ」。興味関心を持ってもらうための手法のことである。 つまらないものを持ち込んでも誰も興味を持ってくれない。何に興味関心を抱くかと いうとそれはプログラム自体の「魅力」である。面白そうだから手伝いたい、参加し たい、子供に体験させたい。興味関心をいかに生み出せるか。何によって魅力を作り 出せるかというと、それがクリエイティブの力である。 クリエイティブには「創造的な」という意味があり、語源には「既存のものを壊す」 という意味がある。つまり、クリエイティブを「今あるものを壊し、焼き直し、新し い何かを作り出すこと」であると考えると、これまでの事業やプログラムを根本から 見直し、既成概念にとらわれず、広い視野で、違う角度から、情熱と愛情を持って、 考えてみることが大切になってくる。そしてそこに、アイディアや工夫、デザインや アートを注入して、より伝わりやすく、プログラムの新しい形を生み出すということ が「+クリエイティブ」の本質的な意味である。 「+クリエイティブ」の事例をひとつ紹介する。アメリカの事例で、GE ヘルスケア
の MRI スキャナーに関する事例である。MRI はとても大きな機械音がする。子ども病 院で大きな問題が起こった。子どもの患者たちが大きな音におびえてしまったのだ。 そのため麻酔を使っていた。手術をするわけでもなく麻酔を使うのは良くない、危険 である。どうすれば良いか。単純に考えると音におびえているので音を小さくする、 音を消す方法を考える。静音タイプを作る、技術革新である。しかし、これには莫大 な予算がかかりとても難しい。どうすればよいか、MRI の体験を設計し直すのである。 何もないところからはアイディアは生まれない。リサーチが必要である。このプロジ ェクトチームは託児所の幼いこどもたちの観察、チャイルドスペシャリストにヒアリ ング、こども博物館の専門家にインタビュー、これらのことを行いどんな企画を立て たか。MRI の検査一式を子どもたちの冒険体験へと変えた。MRI スキャナーにカラフル なイラストを施し、台本まで作り、冒険の旅に出るというシナリオを作った。病気を 検査されるというイメージから冒険の旅にでるというストーリー展開にした。すると、 子どもたちは「明日も乗れるの?」とおびえることなく検査を行えるようになった。 これこそがクリエイティブな発想である。 2. プラス・アーツの活動 プラス・アーツは防災教育を専門とする NPO 法人であり、クリエイティブな防災教 育を継続的に行っている。被災者の方たちに体験談を聞き、正確な情報、被災地で本 当に使える知識や技を教えていただき、それらを、こどもたちを中心にたくさんの人 に伝えていく活動を行っている。例えば、災害時の防災グッズとして懐中電灯が一般 的に広まっているが、実際に被災者に聞いてみると誰も懐中電灯をすすめない。ヘッ ドライトだと言う。懐中電灯だと手がふさがり作業が行えない。両手を開けておかな ければ被災地では役に立たない。このように流通している情報と本当の情報にずれが あることがたくさんある。 インタビューをしながらプログラムを作っていった。被災者の方から本当に有益な 情報を教えてもらえたことがとても大きかった。それをどう伝えるか。ここに「+ク リエイティブ」な発想を加える。これまでの「防災」のイメージは仰々しい、堅苦し くてしんどそう、つまらなさそう。このようなイメージでは人が来てくれない。人を 集めるためにどうすればいいか。+クリエイティブなアイディアはこれを楽しいもの に変える。一言で言うと楽しい防災訓練を作った。どのようなプログラムか詳しく紹 介していく。 2-1. イザ!カエルキャラバン! 2005 年に兵庫県と神戸市に依頼され開発したプログラムであり、これまでの参加者 の少ない地域の防災訓練とは違い、防災訓練の中でカエルをモチーフにした道具を使
の MRI スキャナーに関する事例である。MRI はとても大きな機械音がする。子ども病 院で大きな問題が起こった。子どもの患者たちが大きな音におびえてしまったのだ。 そのため麻酔を使っていた。手術をするわけでもなく麻酔を使うのは良くない、危険 である。どうすれば良いか。単純に考えると音におびえているので音を小さくする、 音を消す方法を考える。静音タイプを作る、技術革新である。しかし、これには莫大 な予算がかかりとても難しい。どうすればよいか、MRI の体験を設計し直すのである。 何もないところからはアイディアは生まれない。リサーチが必要である。このプロジ ェクトチームは託児所の幼いこどもたちの観察、チャイルドスペシャリストにヒアリ ング、こども博物館の専門家にインタビュー、これらのことを行いどんな企画を立て たか。MRI の検査一式を子どもたちの冒険体験へと変えた。MRI スキャナーにカラフル なイラストを施し、台本まで作り、冒険の旅に出るというシナリオを作った。病気を 検査されるというイメージから冒険の旅にでるというストーリー展開にした。すると、 子どもたちは「明日も乗れるの?」とおびえることなく検査を行えるようになった。 これこそがクリエイティブな発想である。 2. プラス・アーツの活動 プラス・アーツは防災教育を専門とする NPO 法人であり、クリエイティブな防災教 育を継続的に行っている。被災者の方たちに体験談を聞き、正確な情報、被災地で本 当に使える知識や技を教えていただき、それらを、こどもたちを中心にたくさんの人 に伝えていく活動を行っている。例えば、災害時の防災グッズとして懐中電灯が一般 的に広まっているが、実際に被災者に聞いてみると誰も懐中電灯をすすめない。ヘッ ドライトだと言う。懐中電灯だと手がふさがり作業が行えない。両手を開けておかな ければ被災地では役に立たない。このように流通している情報と本当の情報にずれが あることがたくさんある。 インタビューをしながらプログラムを作っていった。被災者の方から本当に有益な 情報を教えてもらえたことがとても大きかった。それをどう伝えるか。ここに「+ク リエイティブ」な発想を加える。これまでの「防災」のイメージは仰々しい、堅苦し くてしんどそう、つまらなさそう。このようなイメージでは人が来てくれない。人を 集めるためにどうすればいいか。+クリエイティブなアイディアはこれを楽しいもの に変える。一言で言うと楽しい防災訓練を作った。どのようなプログラムか詳しく紹 介していく。 2-1. イザ!カエルキャラバン! 2005 年に兵庫県と神戸市に依頼され開発したプログラムであり、これまでの参加者 の少ない地域の防災訓練とは違い、防災訓練の中でカエルをモチーフにした道具を使 いながら、楽しみながら学べる新しい形の防災訓練としてたくさんの住民が参加する 仕組みを提案している。 〇防災訓練+「かえっこバザール」 これまでの防災訓練では、若いファミリー層の参加が少ないという問題があったこ とに対して、「かえっこバザール」というプログラムを組み込んだ。これによりファミ リー層が多く参加し、リピーターも増えた。楽しいイベントと組み合わせることで、 新しい形の防災訓練を提案し、「地域の祭り」や「学校行事」の中に、組み込まれるよ うになった。 「かえっこバザール」とは、子どもにいらないおもちゃを持ってきてもらい、それ をポイントと交換し、そのポイントを使ってほかのおもちゃを買う「仕組み」である。 防災プログラムに参加しても、ポイントをもらえる仕組みになっているため、子ども たちは積極的に様々な防災プログラムに参加することになる。イベントの最後に人気 のおもちゃのオークションを行うことで、ポイントをためるために防災プログラムに 参加すること、最後まで帰らずにイベントに参加することを実現している。 〇調査に基づくプログラムとツール この防災訓練イベントが実施されるにあたって 1995 年の阪神淡路大震災における 「防災の教訓」に関する調査を行った。インターネットや震災体験手記などから様々 な記録を調べていくのと同時に、実際に震災を体験された方々から話を聞くことで、 被災時にどのような知識や技が必要になるかを徹底的に調査した。それらの調査から、 これまでの防災訓練をもう一度見直し、新しいプログラムやツールを考案した。 これまでに防災訓練で行っていたプログラムや、調査から挙がった新しいプログラ ムに対して、より楽しんで参加してもらう「+クリエイティブ」な視点を導入するた めに、地域の人たちだけでプログラムを作るのではなく、若い大学生たちから新しい 発想を求め、アーティストやグラフィックデザイナーや家具職人たちに、それぞれの プログラムで使うツールの制作を依頼するなど、多様なステークホルダーと共同でプ ログラムを開発した。 〇まちに溶け込ませる仕組み 基本的には、PTA や地域の自治会などから依頼を受けて、講習会の開催やワークシ ョップで使うツールの貸し出しという形で支援を行っている。講習会の後、開催まで の期間を掛けて地域の人が主体となってイベントのプログラムやワークショップを運 営できるよう準備したり、自分たち仕様につくり変えたりする。 ほとんどのプログラムを住民が改変できるようにすることで、各地で独自のプログ ラムやツールができて、住民主体のイベントになっていく。
アジア圏を中心とした世界各国でも様々な形でこの新しい防災訓練が行われている。 インドネシアでは小鹿、フィリピンは兄妹の猿、イランは亀、といったシンボルキャ ラクターやプログラムもその国や地域ごとに独自に作られているが、楽しく防災を学 ばせるという基本的な考え方は、一貫して広がっている。 〇ローカライズ化 神戸から始まった「イザ!カエルキャラバン!」はそれぞれの地域で工夫され、発 展しており、様々な支援の形を経て地域特有の行事になっている。 手芸や日曜大工などの特技を生かしたオリジナルツールの作成や、カエルのキャラ クターの代わりに地域で人気のキャラクターを用いたり、地域の資材や人材を活用し て制作するなどの工夫がみられる。ほかにも、アイディアを出し合って独自に開発さ れたプログラムを行う事例が日本各地で見られる。地域に馴染み、地域の人たちがど んどん参加し、続いていく中で自分たちでプログラムを作り出し、継続していく。 東京オリンピックの影響もあり、防災とスポーツを組み合わせた「防リーグ」とい うプログラムも今人気である。地域の人たちがカスタマイズできること、これが一番 重要であるが、何で惹きつけるのか。色々要素はあるが、このキャラクターがかわい いから、このバッジがおしゃれだから、そういったデザインでも強度を作ることがで きる。惹きつける力、魅力化。デザインを有名な人に頼んだからといって伝わる、成 功するものでもない。そのプロジェクトに合ったデザイナーを選ばなければならない。 正しい強度で伝えるためにどのようなテイストのイラストやデザインが必要なのか。 そのセレクトとチョイスが必要である。そのためにはたくさんのデザイナーを知って いなければならない。日頃から情報の引き出しを多く持っておくことが重要である。 2-2. 高齢者福祉+クリエイティブ ふれあいオープン喫茶 元々、高齢者の孤独死などの解消のために行われていた「ふれあい喫茶」を「ふれ あいオープン喫茶」として、地域に開くことで、地域の既存の人材や団体などのリソ ースに関わってもらい、地域の多様な世代、団体が一堂に会するプラットフォームを 形成することを目的とした活動である。 〇関わり方 支援ツールとして、ロゴマークをグラフィックデザイナーに、カフェのツールとし てエプロンやテーブルクロスを地元の芸術大学の講師と共同で制作するなど、質の高 いツールを準備した。このようなツールの貸し出しや、今後自分たちで制作できるノ ウハウを教えるなどの支援を行う。このような支援の仕方でも、子どもや高齢者が喜
アジア圏を中心とした世界各国でも様々な形でこの新しい防災訓練が行われている。 インドネシアでは小鹿、フィリピンは兄妹の猿、イランは亀、といったシンボルキャ ラクターやプログラムもその国や地域ごとに独自に作られているが、楽しく防災を学 ばせるという基本的な考え方は、一貫して広がっている。 〇ローカライズ化 神戸から始まった「イザ!カエルキャラバン!」はそれぞれの地域で工夫され、発 展しており、様々な支援の形を経て地域特有の行事になっている。 手芸や日曜大工などの特技を生かしたオリジナルツールの作成や、カエルのキャラ クターの代わりに地域で人気のキャラクターを用いたり、地域の資材や人材を活用し て制作するなどの工夫がみられる。ほかにも、アイディアを出し合って独自に開発さ れたプログラムを行う事例が日本各地で見られる。地域に馴染み、地域の人たちがど んどん参加し、続いていく中で自分たちでプログラムを作り出し、継続していく。 東京オリンピックの影響もあり、防災とスポーツを組み合わせた「防リーグ」とい うプログラムも今人気である。地域の人たちがカスタマイズできること、これが一番 重要であるが、何で惹きつけるのか。色々要素はあるが、このキャラクターがかわい いから、このバッジがおしゃれだから、そういったデザインでも強度を作ることがで きる。惹きつける力、魅力化。デザインを有名な人に頼んだからといって伝わる、成 功するものでもない。そのプロジェクトに合ったデザイナーを選ばなければならない。 正しい強度で伝えるためにどのようなテイストのイラストやデザインが必要なのか。 そのセレクトとチョイスが必要である。そのためにはたくさんのデザイナーを知って いなければならない。日頃から情報の引き出しを多く持っておくことが重要である。 2-2. 高齢者福祉+クリエイティブ ふれあいオープン喫茶 元々、高齢者の孤独死などの解消のために行われていた「ふれあい喫茶」を「ふれ あいオープン喫茶」として、地域に開くことで、地域の既存の人材や団体などのリソ ースに関わってもらい、地域の多様な世代、団体が一堂に会するプラットフォームを 形成することを目的とした活動である。 〇関わり方 支援ツールとして、ロゴマークをグラフィックデザイナーに、カフェのツールとし てエプロンやテーブルクロスを地元の芸術大学の講師と共同で制作するなど、質の高 いツールを準備した。このようなツールの貸し出しや、今後自分たちで制作できるノ ウハウを教えるなどの支援を行う。このような支援の仕方でも、子どもや高齢者が喜 んで参加するようになり、人が集まる重要な仕掛けとなる。 〇準備 実際には、「ふれあいオープン喫茶」開催のための準備はほとんどが地域住民の手で 行われた。普段から行っている「ふれあい喫茶」や学童保育などでは告知も兼ねて紙 食器を作るワークショップを行い、それが呼び水となって集まった子どもたちと、会 場となったまちの集会場で飾り付けを行った。 〇当日とその後の展開 当日はカフェ店員を子どもたちが担当することで、お客として来店した高齢者と交 流が生まれた。「ふれあいオープン喫茶」は高齢者が子どもたちと関わるきっかけを作 る良い機会を生み出した。子どもが関わると、その親世代にも関わりが生まれ、プロ グラムが様々な地域の団体を巻き込んでいくことができる。そして多世代交流のプラ ットフォームとなったこのプログラムから地域の様々な活動への展開が可能になる。 2-3. デザイン・クリエイティブセンター神戸 デザイン・クリエイティブセンター神戸(以下 KIITO)は、神戸で暮らす様々な世代、 職業の人々が交流し、自分たちのまちや生活に新たなデザインを創造できる場であり、 そこから生まれるアイディアは実際にまちに還元されていく仕組みを持っている。神 戸港近くにある元生糸検査所が拠点で、デザインやアートにまつわるゼミ、レクチャ ー、展示、イベントを開催するほか、貸しホール、貸しギャラリー、貸し会議室、ク リエイティブラボ(オフィス入居)スペースなどがある。 KIITO という名前は、建物の歴史由来の「生糸」から、糸と糸を紡いで布を作るよ うに、色々な人と人をつなげて、プロジェクトを起こしていくというイメージで名付 けられた。神戸市はユネスコに認定されたデザイン都市の一つであり、デザイン都市 の拠点として、KIITO が整備された。スローガンは子どもから高齢者まで「みんなが クリエイティブになる。そんな時代の中心になる。」KIITO は「風の人」のスペシャリ ストになる。あらゆる社会分野を扱っている。観光、まちづくり、高齢者福祉、障害 者福祉、環境。どんな社会課題にも取り組んでいる。違う目線で見る時に、専門分野 ではない人と関わることも一つの重要なポイントである。コンセプトは社会課題+ク リエイティブである。 現在、最も力を入れているプロジェクトをいくつか紹介する。 「BE KOBE」 市民が神戸市民であることを誇りに思う「シビックプライド」の取り組みである。
震災復興から立ち上がった神戸の魅力は人、人間力である。それを広めるためにオブ ジェを作ったり、神戸で活動している魅力的な人にインフルエンサーになってもらっ たりした。こういった人たちから活動を広めてもらってワークショップを行い、皆で 「BE KOBE」を広めるためにアイディアを出し合った。プロモーションのリーフレッ トを作ったり、神戸市の職員はピンバッジをつけたり、神戸の魅力的な人を紹介する 本を出したりしている。そして、一番有名なオブジェは第二弾、第三弾が神戸市内で つくられている。また、ロゴを誰でも自由に使えるようにしたことで、大丸や JR の駅 で使われたりと、大変広まっている。新成人の集いで学生の実行委員会が「BE KOBE」 をスローガンに掲げるということもあった。最前線の話としては、寄付できる人には 寄付をしてもらい、その寄付金を子どもの未来の活動を支援しようという活動が生ま れている。 「ちびっこうべ」 「子どもたちに学校では学べない創造教育を!」というスローガンを掲げ、シェフ、 建築家、デザイナーの 3 つの職業に分かれて、神戸の子どもたちと、各分野のクリエ イターが、食をテーマに店づくりやまちづくりを行う体験型プログラムである。プロ の仕事に実際に触れ、専門家から直接教わりながら、自ら考え、自分の手で子どもし か入ることのできない夢のまちを作り上げる。夢のような話だが、企画が立ち上がる 前から手伝いたいというクリエイターたちが殺到していた。2012 年から 2 年に一度開 催しているが、まちが回を重なるごとに成長している。このプログラムこそ不完全で あり、余地がたくさんある。 「パンじぃプロジェクト」 「男・本気のパン教室」と銘打った、通称「パンじぃプロジェクト」というものが ある。こどもだけでなく、高齢者に目を向けたものである。現状家で寝ながらテレビ を観ているだけの生活であることが多いおじいちゃん世代の方々に、どうやって地域 で元気にわくわく活動してもらうかを考えたプログラムである。そこでリサーチをし て出た案が、パン作りである。誰かに振舞って、喜んでもらえて自慢できる料理の技 を身に付けてもらえれば、どんどん地域で活躍できるのではないかという仮説から始 まった。ちびっこうべでパン屋さんのシェフたちが協力してくれているので相談して みると、みんな「面白いんじゃないか」という話になり、試しにやってみると、おじ いちゃんたちは持て余すほどの時間があるのでたっぷり自主練習をすることもでき、 すぐに上達する。しかし、パンを焼けるようになっただけでは、地縁がないのでうま く地域活動に繋がらない。そこで、KIITO が繋ぎ手となる。大丸で「ちびっこうべカ フェ」のイベントを行い、子どもと高齢者との交流も生まれ、大成功であった。地域 のコミュニティカフェでも同様のスタイルで実施している。他地域での活動も増えて
震災復興から立ち上がった神戸の魅力は人、人間力である。それを広めるためにオブ ジェを作ったり、神戸で活動している魅力的な人にインフルエンサーになってもらっ たりした。こういった人たちから活動を広めてもらってワークショップを行い、皆で 「BE KOBE」を広めるためにアイディアを出し合った。プロモーションのリーフレッ トを作ったり、神戸市の職員はピンバッジをつけたり、神戸の魅力的な人を紹介する 本を出したりしている。そして、一番有名なオブジェは第二弾、第三弾が神戸市内で つくられている。また、ロゴを誰でも自由に使えるようにしたことで、大丸や JR の駅 で使われたりと、大変広まっている。新成人の集いで学生の実行委員会が「BE KOBE」 をスローガンに掲げるということもあった。最前線の話としては、寄付できる人には 寄付をしてもらい、その寄付金を子どもの未来の活動を支援しようという活動が生ま れている。 「ちびっこうべ」 「子どもたちに学校では学べない創造教育を!」というスローガンを掲げ、シェフ、 建築家、デザイナーの 3 つの職業に分かれて、神戸の子どもたちと、各分野のクリエ イターが、食をテーマに店づくりやまちづくりを行う体験型プログラムである。プロ の仕事に実際に触れ、専門家から直接教わりながら、自ら考え、自分の手で子どもし か入ることのできない夢のまちを作り上げる。夢のような話だが、企画が立ち上がる 前から手伝いたいというクリエイターたちが殺到していた。2012 年から 2 年に一度開 催しているが、まちが回を重なるごとに成長している。このプログラムこそ不完全で あり、余地がたくさんある。 「パンじぃプロジェクト」 「男・本気のパン教室」と銘打った、通称「パンじぃプロジェクト」というものが ある。こどもだけでなく、高齢者に目を向けたものである。現状家で寝ながらテレビ を観ているだけの生活であることが多いおじいちゃん世代の方々に、どうやって地域 で元気にわくわく活動してもらうかを考えたプログラムである。そこでリサーチをし て出た案が、パン作りである。誰かに振舞って、喜んでもらえて自慢できる料理の技 を身に付けてもらえれば、どんどん地域で活躍できるのではないかという仮説から始 まった。ちびっこうべでパン屋さんのシェフたちが協力してくれているので相談して みると、みんな「面白いんじゃないか」という話になり、試しにやってみると、おじ いちゃんたちは持て余すほどの時間があるのでたっぷり自主練習をすることもでき、 すぐに上達する。しかし、パンを焼けるようになっただけでは、地縁がないのでうま く地域活動に繋がらない。そこで、KIITO が繋ぎ手となる。大丸で「ちびっこうべカ フェ」のイベントを行い、子どもと高齢者との交流も生まれ、大成功であった。地域 のコミュニティカフェでも同様のスタイルで実施している。他地域での活動も増えて いる。さらにパンだけでなく、カレーじぃ、スイーツじぃ、コーヒーじぃというプロ グラムにも着手し、それぞれ技を身に付けた高齢者たちが活躍し始めている。 〇事業化を目指す実践的なゼミ KIITO では、実際に社会課題(問題提起は行政や企業)に対して、デザイン思考を 活用した解決をテーマにした教育プログラムとして、「+クリエイティブ・ゼミ」を継 続的に開講している。参加者は、その社会課題に対して興味のある市民で、世代も職 業もばらばらである。ゼミ生をチームに分けて、課題に対して調査、議論を行い、各 チームが課題解決に向けた企画を立案する。そして、最後には課題提供者に企画を提 案し、評価を得れば事業化を目指して実際にプロジェクトが始動するプログラムになっ ている。 〇「オールドタウン化問題」について考えるゼミ 神戸須磨区役所、神戸市都市計画総局とタイアップして神戸市内で典型的なオール ドタウン化問題を抱える「高尾台」地区を対象に、約 3 か月に渡ってこの課題に対し て解決につながるような新たな発展や企画を考えるゼミを行った。参加者は 4 チーム に分かれ実際にまちを歩き、居住者に話を聞くなど、地域と深く関わりながら企画に ついて議論した。 最終発表には、地区の居住者にも参加してもらい各チームの企画や提案を発表し、 議論を行った。その後、地区ではゼミ生の発表を元に自分たちにできることを見つけ て、KIITO のスタッフやゼミ生有志たちによるプロジェクトチームの支援を受けなが ら実施に向けて準備を進め、実際に複数のプログラムがまちの中で実施された。 まとめ 防災や超高齢化などの社会課題を「風の人」として「+クリエイティブ」をコンセ プトに解決してきた事例について紹介した。全てに通ずるのは「風の人」としての「作 法」(その土地に「種」を運び刺激を与える存在)である。「風の人」として、限定され た期間の中で強度を持った関わり方をするために、デザインやアートを注入した様々 な支援の形を有しており、その形を生み出すために期間限定ではあるものの地域と徹 底的に関わり、調査を行う姿勢を貫いている。それが「水の人」を発掘し、「土の人」 を元気にする「風の人」の「作法」である。 (2019 年 6 月 4 日生活美学研究所本年度もてなし研究会講演に基づく) コーディネーター 武庫川女子大学生活環境学部准教授