方向転換走と直線走および垂直跳びの関係 -重回帰分析を用いた検討-
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(2) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 144. ると示唆された. キーワード:方向転換走,直線走,垂直跳び,重回帰分析,パフォーマンス. Abstract The purpose of this study was to investigate the straight sprint and counter-movement jump related to running with changes of direction using correlational analysis and multiple regression analysis. One hundred and seventy-five male collegiate soccer players, who belonged to the team between the seasons in 2005 to 2010, participated in this study. Different changes of direction tests were conducted every two years. Sprint test and counter-movement jump test were conducted throughout all seasons. Each running with changes of direction was statistically correlated with all sprint times and counter-movement jump. Through multi-regression analysis, however, each running with changes of direction was significantly correlated with different sprint time or counter-movement jump each other. Therefore, it was considered that straight sprint and counter-movement jump related to running with changes of direction, while individual physical factors determining to different running with changes of direction performance would be exist. Key words : running with changes of direction, straight sprint, counter-movement jump, multiple regression analysis, performance. とされていない.. Ⅰ.緒言. 実際のスポーツ現場においては,トレーニング指標に サッカーやバスケットボールなど多くのフィールドス. 役立てる要素を分析するために様々なフィールドテスト. ポーツでは,直線的な動きのみならず,走動作の中で素. が行われている.フィールドテストは簡潔かつ継続的に. 早く方向転換する能力が要求される.これまでにも,. 行われる必要があり 23),指導者が評価したい運動能力に. フィールドスポーツでは 1 試合あたり 1 人約 50 回の方向. 応じて様々なテストプログラムが選択される.方向転換. 転換を行っていること 20) や,合計 700 回以上の方向転換. 走は敏捷性能力を評価するためのテスト項目として一般. 1). が行われていること が報告されている.方向転換の能. 的に用いられており 14),動く距離や方向転換の角度・回. 力はフィールドスポーツのパフォーマンスを決定づける. 数などの組み合わせにより多数のテストが考案され実施. 要因となり 16),現代のフィールドスポーツにおいては必. されている.つまり,動く距離や方向転換の角度・回数. 2). 要不可欠な能力の一つである ことが考えられる.. により,必要とされる要素が異なることは推測される.. スポーツ現場において,この方向転換を伴った運動は. しかしながら,異なる方向転換走に対してどのような要. 方向転換走として様々なトレーニングや体力評価に取り. 素が関与しているかということについて詳細な検討はさ. 入れられている.方向転換走に関係する要素として,. れていない.現場の指導者がテスト同士の関係や特性を. 21). は「直線走」 , 「下肢筋機能」および「技. 把握して体力測定を実施することは,選手個人の問題点. 術」からなるモデル決定図を提唱している.また,これ. を抽出し,その後のトレーニング指導に活用する点にお. までにも方向転換走と直線走の関係 6,. いて非常に重要な役割を果たすことが考えられる.. Young et al.. 9, 17, 19). 5, 8, 10, 11, 12, 21). や,方向転. が数多く報告. 本論文では,6 年間にわたり同一チームから蓄積した. されている.しかしながらこれまでの研究は,1 変数同. フィールドテストのデータをスポーツ現場での実践研究と. 士の相関分析や一定期間におけるトレーニング実験がほ. してまとめたので報告する.本研究は,方向転換走に関. とんどであり,方向転換走に対して直線走と下肢筋機能. 係する直線走および垂直跳びについて検討することを目. の組み合わせがどのように関係しているかは未だ明らか. 的とした.そこで,3 種類の方向転換走と直線走および垂. 換走と下肢筋力・パワーの関係.
(3) 方向転換走と直線走および垂直跳びの関係. 直跳びの関係性について相関分析を用いて検証した.さ. 145. な休息時間を設けた.. らに,方向転換走に影響を与える複数の要素の関係性 を分析するために,重回帰分析を用いた検証を行った.. 1.方向転換走(図 1) 方向転換走は,以下 3 種類の方向転換走から得られた タイムを用いて評価した.スタートとゴールに赤外線セ. Ⅱ.方法. ンサーを利用した自動計測タイマー(Brower timing. A.対象者. gate, Brower Timing Systems, USA)を約 1m の高さ. 対象は,2005 年から 2010 年の期間に関東大学サッ. で設置し,対象者はセンサーの間を全力で走向した.ス. カー 1 部リーグ登録の W 大学サッカー部に所属していた. タートはスタンディングスタートを用い,対象者が自身. 男子サッカー選手 175 名とした.そのうち,2005 年度か. のタイミングでスタートした時点でタイマーをスタート. ら 2006 年度に所属していた対象者は 103 名,2007 年度. させた.. から 2008 年度に所属していた対象者は 96 名,2009 年度. 1)Pro-agility test(2005 年度− 2006 年度). から 2010 年度に所属していた対象者は 88 名であった.. 5m の間隔で 3 本のコーンを設置し,中央のコーンを. 対象者の身体特性は表 1 に示すとおりである.なお,対. スタートおよびゴールとした.走行距離が合計 20m. 象者は測定を全力で行うことに支障をきたす傷害を負っ. (5m + 10m + 5m)となる試技フィールドで,180 度の. ていない者に限定した.. 方向転換を 2 回行った.. 対象者にはあらかじめ実験内容および実験により起こ りうる危険性について十分に説明したうえで参加の同意. 2)10m agility shuttle test(2007 年度− 2008 年度) 10m の間隔で 2 本のコーンを設置し,一方のコーンを. を得た.また,本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,. スタートおよびゴールとした.走行距離が合計 20m. 早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員. (10m + 10m)となる試技フィールドで,180 度の方向. 会」の承認を得て実施した.. 転換を 1 回行った. 3)Zigzag agility test(2009 年度− 2010 年度). B.測定項目と測定方法. 5m の間隔で 3 本のフラッグを設置し,両端のコーン. 被験者はサッカースパイクを着用し,十分なウォーミ. をスタートおよびゴールとした.走行距離が合計 20m. ングアップの後,人工芝サッカーグラウンドにて方向転. (5m + 5m + 5m + 5m)となる試技フィールドで,90. 換走,直線走および垂直跳びを実施した.2005 年から. 度の方向転換を 3 回行った.. 2010 年の期間のうち,方向転換走は 2 年ごとに異なるテ ストを実施した.また,直線走および垂直跳びは全ての 期間中,共通の測定項目として実施した.. 2.直線走 直線走は,20m 直線走から得られたタイムを用いて評. 各測定は十分な動作確認の後,最大努力で 2 回ずつ行. 価した.測定方法は JFA フィジカル測定ガイドライン 23). い,より優れた方を各テストにおける計測値として採用. を参考とし,光電管を用いて 20m を全力で駆け抜ける. した.なお,各測定試技の順番はランダムに決定し,測. 試技のタイムを計測した.. 定による疲労の影響を除外するため,各試技間には十分 表1. 赤外線センサーを利用した自動計測タイマー(Brower. 対象者の身体特性 2005-2010 (n=175). total year. 2005-2006. 2007-2008. 2009-2010. (number of subjects). (n = 103). (n = 96). (n = 88). age (yrs). 20.4 ± 1.3. 20.9 ± 1.2. 20.5 ± 1.2. height (m). 1.74 ± 0.05. 1.75 ± 0.06. 1.75 ± 0.06. weight (kg). 67.4 ± 5.9. 68.2 ± 6.2. 67.5 ± 5.8.
(4) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 146. (a) Pro-agility test. (b) 10m agility shuttle test. (c) Zigzag agility test. Fi. ni. sh. 5m. 5m. 5m 10m. Finish Start. 5m. 5m. 5m. Start Finish : Brower timing gate. : Cone. : Flag. St. ar. t. : Change of direction. 図 1 方向転換走に用いた 3 種類の試技.(a) Pro-agility test,(b) 10m agility shuttle test, (c) Zigzag agility test を示す.. timing gate, Brower Timing Systems, USA)を 0m. C.統計処理. (スタート),5m,10m,20m(ゴール)地点にそれぞ. 測定結果は,平均値(mean)± 標準偏差(SD)で. れ約 1m の高さで設置し,対象者はセンサーの間を全力. 表示し,統計的検定量の算出には PASW statistics. で走向した.スタートはスタンディングスタートを用い,. (ver.18.0 for Windows)を用いた.方向転換走,直線. 対象者が自身のタイミングでスタートした時点でタイ. 走および垂直跳びの関係を検討するために,Pearson の. マーをスタートさせた.スタートから 5m(5m sprint),. 積率相関係数を求めた.また,各方向転換走に関係する. 10m(10m sprint),20m(20m sprint)の通過タイム. 要素について検討するため,方向転換走を従属変数とし,. に加えて,10m 地点から 20m 地点までの通過タイムを. 直線走(5m sprint,10m sprint,20m sprint,Flying. Flying 10m sprint として評価した.. 10m sprint)および垂直跳び(CMJ)を独立変数とした ステップワイズ法による重回帰分析を行った.統計学的. 3.垂直跳び. 有意水準は 5%未満とした.. 垂直跳びは,反動(腕ふり)ありのカウンタームーブ メントジャンプ(counter-movement jump : CMJ)を. Ⅲ.結果. 用いて評価した.測定方法は JFA フィジカル測定ガイ ドライン 23) を参考とし,立った状態から手を自由にして. 表 2 に 2 年ごとの直線走,垂直跳びおよび方向転換走. 行う垂直跳びを実施した.垂直跳びの跳躍高はジャンプ. の記録,表 3 に各測定値間の相関係数を示した.それぞ. メーター(Jump MD,竹井機器工業,日本)を用いて. れの方向転換走は,全ての測定項目との間に有意な相関. 計測した.. 関係を認めた(p < 0.05)..
(5) 方向転換走と直線走および垂直跳びの関係. 表2. 147. 直線走,垂直跳びおよび方向転換走の記録. year. 2005-2006. (number of subjects). 2007-2008. 2009-2010. (n = 103). (n = 96). (n = 88). 5m sprint (sec). 0.98 ± 0.06. 1.01 ± 0.06. 1.06 ± 0.08. 10m sprint (sec). 1.71 ± 0.07. 1.75 ± 0.09. 1.79 ± 0.09. 20m sprint (sec). 2.98 ± 0.11. 3.04 ± 0.12. 3.07 ± 0.14. Flying 10m sprint (sec). 1.27 ± 0.05. 1.28 ± 0.05. 1.28 ± 0.06. Counter-movement jump (cm). 60.8 ± 5.3. 62.9 ± 5.1. 62.2 ± 6.3. Pro-agility test (sec). 5.08 ± 0.15. -. -. 10m agility shuttle test (sec). -. 4.12 ± 0.13. -. Zigzag agility test (sec). -. -. 5.65 ± 0.23. 表 3 直線走,垂直跳びおよび方向転換走の記録間における相関係数. (上)Pro-agility test, (中)10m agility shuttle test,(下)Zigzag agility test を方向転換走としたときの結果を示す. 5m. 10m. 20m. Flying 10m. CMJ. Pro-agility. 5m sprint. 1.000. 10m sprint. 0.847. 1.000. 20m sprint. 0.842. 0.943. 1.000. Flying 10m sprint. 0.680. 0.693. 0.894. 1.000. -0.458. -0.522. -0.514. -0.411. 1.000. 0.463. 0.502. 0.499. 0.403. -0.436. 1.000. 10m. 20m. Flying 10m. CMJ. 10m shuttle. CMJ Pro-agility test. * All correlations are significant (p < 0.05) Note : CMJ=counter-movement jump. 5m 5m sprint. 1.000. 10m sprint. 0.873. 1.000. 20m sprint. 0.864. 0.927. 1.000. Flying 10m sprint. 0.484. 0.401. 0.715. 1.000. -0.207. -0.312. -0.360. -0.298. 1.000. 0.340. 0.379. 0.413. 0.302. -0.392. 1.000. 10m. 20m. Flying 10m. CMJ. Zigzag agility. CMJ 10m shuttle test. * All correlations are significant (p < 0.05) Note : CMJ=counter-movement jump. 5m 5m sprint. 1.000. 10m sprint. 0.928. 1.000. 20m sprint. 0.884. 0.943. 1.000. Flying 10m sprint. 0.608. 0.631. 0.854. 1.000. -0.345. -0.358. -0.459. -0.508. 1.000. 0.464. 0.418. 0.501. 0.513. -0.289. CMJ Zigzag agility test. * All correlations are significant (p < 0.05) Note : CMJ=counter-movement jump. 1.000.
(6) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 148. また,ステップワイズ法を用いた重回帰分析を行った. Ⅳ.考察. 結果,Pro-agility test に関係する要素として 10m sprint と CMJ の 2 項目( p < 0.01, p < 0.05),10m agility. 本研究は,方向転換走に関係する要素について検討す. shuttle test に関係する要素として 20m sprint と CMJ. ることを目的とし,直線走および垂直跳びのフィールド. の 2 項目(p < 0.01, p < 0.01),Zigzag-agility test に関. テストデータを分析した.そのために,従来の研究で用. 係する要素として Flying 10m sprint と 5m sprint の 2. いられてきた相関分析に加えて重回帰分析を用い,方向. 項目(p < 0.01, p < 0.05)の標準偏回帰係数に有意性が. 転換走に対して直線走および垂直跳びがどのように関係. 認められた(表 4) .重回帰分析から作成される重回帰式. しているか検討を行った.. は, 「Pro-agility test = 0.805 × 10m sprint − 0.006 ×. 本研究で用いた方向転換走は,これまでにも様々な競. CMJ + 4.099 (R2 = 0.280, p < 0.01)」,「10m agility. 技や対象者に対して行われている代表的なアジリティテ. shuttle test = 0.331 × 20m sprint − 0.007 × CMJ +. ストを採用した.Pro-agility test はアメリカンフット. 3.544 (R2 = 0.222, p < 0.01)」,「Zigzag agility test =. ボールのトライアウトにも採用されており,加速・減. 1.405 × Flying 10m sprint + 0.688 × 5m sprint + 3.144. 速・方向転換を簡便に評価できるテストとして様々な競. 2. 技において実施されている 7,. (R = 0.283, p < 0.01)」であった.. 19). .10m agility shuttle. test は 10m × 5 シャトルラン 14,. 23). で用いられているテ. 表 4 それぞれの方向転換走を従属変数,直線走および垂直跳びを独立変数としたときの重回帰分析の結果.(上) Pro-agility test, (中)10m agility shuttle test, (下)Zigzag agility test を従属変数としたときの結果を示す. 従属変数: Pro-agility test (R2 = 0.280) 偏回帰係数. 独立変数. B. 標準偏回帰係数 β. 4.099. 定数 10m sprint CMJ. p 0.000. 0.805. 0.377. 0.000. -0.006. -0.240. 0.017. 2. R = 自由度調整済決定係数 Note : CMJ=counter-movement jump. 従属変数: 10m agility shuttle test (R2 = 0.222) 独立変数. 偏回帰係数 B. 標準偏回帰係数 β. p. 定数. 3.544. 20m sprint. 0.331. 0.312. 0.002. -0.007. -0.279. 0.005. CMJ. 0.000. 2. R = 自由度調整済決定係数 Note : CMJ=counter-movement jump. 従属変数: Zigzag agility test (R2 = 0.283) 独立変数. 偏回帰係数 B. 標準偏回帰係数 β. p. 定数. 3.144. Flying 10m sprint. 1.405. 0.366. 0.002. 5m sprint. 0.668. 0.242. 0.038. R2 = 自由度調整済決定係数. 0.000.
(7) 方向転換走と直線走および垂直跳びの関係. 149. ストを改良し,より加速した状態での方向転換を評価で. test は方向転換の前後で 10m の区間をより速く移動する. きるテストとして採用した.Zigzag agility test は,. 運動である.スプリント動作はスタート,加速,最大ス. サッカーなどフィールドスポーツのパフォーマンスを評. ピードなど,走区間によりいくつかの期に分けられる 22).. 価するのに効果的であり,より試合に近い動作の中で方. そのため,Pro-agility test ではスタートから 10m という. 向転換を評価できるテストとして用いられている 4, 9) .. 短い距離でのスプリントが方向転換走の記録に関係し,. また,本研究では,直線走を 5m sprint,10m sprint,. 10m agility shuttle test ではスタートから加速に移行す. 20m sprint,Flying 10m sprint の 4 項目,垂直跳びを. るまでの 20m というより長い距離でのスプリントが方. 反動ありの CMJ を用いて評価した.. 向転換走の記録に関係していると考えられる.一方,. 3 種類の方向転換走と直線走および垂直跳びの関係を. Zigzag agility test に対しては Flying 10m sprint と 5m. 表 3 に示した.それぞれの方向転換走は,全ての直線走. sprint が強い関係性を示していた.Little et al.9) は本研. の項目(5m sprint,10m sprint,20m sprint,Flying. 究と類似した Zigzag test を用い,スタートからの加速,. 10m sprint)および CMJ との間に有意な相関関係を認. 最大スピードおよびアジリティはそれぞれ独立した性質. めた(p < 0.05).直線走の要素は「ダッシュ,最高ス. であることを報告している.鈴木ら 18) は,走スピードを. ピード」が必要とされる場面でのパフォーマンスとして. 維持したまま方向転換を行うことが,走方向転換動作. 発揮され,垂直跳びの要素は「下肢筋力,ジャンプ力」. の技術的側面において重要であることを述べている.. が必要とされる場面でのパフォーマンスとして発揮され. Flying 10m sprint はスタートからの 10m を除外した局. 23). る .これまでにも,男子大学サッカー選手を対象とし. 面であり,より加速した状態でのスピードを評価する. た研究において,方向転換走と直線走の間には有意な相. ことができる.そのため,Zigzag agility test ではより. 関関係があること 9,. 加速したスピードの中で方向転換できる能力が必要で. 13). や,方向転換走と垂直跳びの間に 17). が報告されている.また. あると考えられる.また,Zigzag agility test は 5m と. Vescovi et al. は,大学女子サッカー選手におけるアジ. いう非常に短い区間の中で加速・減速を繰り返す運動で. リティ,スプリント,ジャンプの関係を調べており,全. ある.そのため,スタートから 5m というより短い距離. ての項目間に有意な相関関係があることを報告してい. でのスプリントが Zigzag agility test の結果に関係して. る.本研究は,これらの報告を支持する結果であった.. いると考えられる.さらに,Zigzag agility test は 90 度の. 方向転換走は,走動作と方向転換動作を組み合わせた運. 方向転換をする際にバランスコントロールを必要とする. 動である.これらのことから,直線走および垂直跳びは. ため 9),Pro-agility test や 10m agility shuttle test での. 方向転換走に関係する要素であることが考えられた.. 180 度方向転換に必要とされる下肢筋パワーとは異なる. は有意な相関関係があること 19). そこで,ステップワイズ法を用いた重回帰分析を行っ. 要素が必要であると考えられる.Brughelli et al.2) は,. た結果,それぞれの方向転換走では異なる項目の標準偏. 方向転換には CMJ のような鉛直方向への移動能力だけ. 回帰係数に有意性が認められた( p < 0.05)(表 4).. でなく,Lateral Jump のような水平方向への移動能力. Pro-agility test に対しては 10m sprint と CMJ,10m. が必要であることを述べている.これらのことから,. agility shuttle test に対しては 20m sprint と CMJ が強. Zigzag agility test では CMJ を用いたジャンプよりも,. い関係性を示していた.Pro-agility test および 10m. Flying 10m sprint と 5m sprint が方向転換走の記録に. agility shuttle test は,それぞれ 180 度の方向転換動作. より強く関係していると考えられる.. が含まれるテストである.垂直跳びは下肢筋パワーを間 接的に評価する指標として用いられており 3,. 19). しかしながら,本研究の重回帰分析から得られた各方. ,素早く. 向転換走の決定係数は 0.22 < R2 < 0.29 であり,非常に. 180 度方向転換する局面において下肢筋パワーが関係し. 高い予測力をもつモデルとはならなかった.計測結果を. ていると考えられる.また,Pro-agility test および 10m. 個別に見てみると,直線走や垂直跳びは同等の記録で. agility shuttle test は,方向転換までの走行距離が異な. あっても,方向転換走の記録が優れた対象者と劣った対. る.Pro-agility test は 5m および 10m の区間で加速・減. 象者が存在する.つまり,直線走と垂直跳びだけで方向. 速を繰り返す運動であるのに対し,10m agility shuttle. 転換走に関係する要素を全て説明することは出来ない..
(8) 150. トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 方向転換走には,「直線走」や「下肢筋機能」だけでな. フィールドテストを採用し,方向転換後に 10m 以上の. く方向転換の「技術」が必要である 16,. .Young et. スプリントを必要とする競技種目では 10m agility. al.21) は方向転換の技術として身体傾斜・姿勢,減速・. shuttle test のようなフィールドテストを採用すべきで. 加速での適切なストライド,足部位置をあげている.. あると考える.Zigzag agility test で反映された Flying. Sasaki et al.15) は方向転換走と体幹運動の関係を検討し. 10m sprint と 5m sprint は,共にスタートから短い距. ており,方向転換走には適切な姿勢制御やボディーバラ. 離でより速く加速することが必要な要素である.この. ンスコントロールが重要であることを述べている.方向. ことから,5m 程度の急激な加速を必要とする競技種目. 転換走は様々な要素を含む複合的な運動であるため,運. では Zigzag agility test のようなフィールドテストが大. 動の要素をより細分化して分析していく必要がある.こ. 変重要であると考えられる.. 18, 21). れらのことから,方向転換走に対してのより高い予測モ. 以上のように方向転換走に必要な要素を分解して考え. デルを作るためには,方向転換走に必要とされる多数の. ることは,フィールドテストを選択する際の指標となる. 要素を組み合わせたより多角的なアプローチが必要であ. だけでなく,強化したいポイントにターゲットを絞った. ると考えられる.. トレーニングの指標づくりに役立てることができる.ま. 本研究で取り扱ったようなフィールドテストは,多人. た,個人やチームの長所・短所に合わせた効果的なト. 数を短時間に測定することができ,実施者の工夫ひとつ. レーニングプログラムを作成する際にも非常に有用であ. で実際の競技動作を反映した測定種目の実施が可能で. り,トレーニング効果や日々のコンディションを把握す. ある.その反面,測定条件や手順を統一しなければ測定. る際にも非常に役立つと考えられる.. 14). データの正確性・再現性が欠けてしまう .6 年間にわ. 本研究より,直線走および垂直跳びは方向転換走に関. たり蓄積した本研究データは全く同一の環境下で得られ. 係する一方で,方向転換走の種類によって必要とされる. たものではなく,また,方向転換走に関係する要素も. 要素は異なることが示唆された.しかしながら本研究の. 簡便に計測できる直線走と垂直跳びしか取り上げてい. 限界として,方向転換走ごとに対象者が異なるという点. ない.しかしながら,直線走および垂直跳びだけでも. が考えられる.また,同一の対象者が異なる方向転換走. 3 種類の方向転換走において異なる要素が抽出されたこ. を実施している年度もあり,全て異なる対象者を扱った. とは,実際の競技動作や種目特性を反映したフィールド. データとしての比較はできない.今後は,実施の時期と. テストを選択するための基礎研究になると考えられる.. 対象者を統一した上で異なる方向転換走を実施し,それ. 垂直跳びの要素は,9 0 度の方向転換を含む Z i g z a g. ぞれに関与する因子についてより詳細な検討を行う必要. agility test よりも 180 度の方向転換を含む Pro-agility. がある.. test や 10m agility shuttle test において強い関係性を示 した.このことから,垂直跳びの要素を必要とする競技. Ⅴ.結論. 種目では,Pro-agility test や 10m agility shuttle test の ようなフィールドテストを採用すべきであると考える.. 本研究は,3 種類の方向転換走と直線走および垂直跳. また,方向転換を行う前後に設定されている直線走の距. びとの関係について,相関分析および重回帰分析を用い. 離は,フィールドテストの結果と非常に関係する.Pro-. て検討した.主な結果は以下の通りである.. agility test では 10m sprint との関係性が抽出されたこ. 1 .それぞれの方向転換走は,全ての直線走の項目. とから,2 回の方向転換の間に設定されている 10m 区. (5m sprint,10m sprint,20m sprint,Flying 10m. 間の移動スピードがより重要となる.一方で 10m agility shuttle test においては,方向転換の後に設定し た全力でゴールを駆け抜ける移動スピードが反映され たため,20m sprint との関係性が抽出されたと考える. これらのことから,10m 程度の距離で方向転換を繰り 返すような競技種目では Pro-agility test のような. sprint)および CMJ との間に有意な相関関係を認めた. 2 .Pro-agility test に対して,10m sprint と CMJ の標 準偏回帰係数に有意性が認められた. 3 .10m agility shuttle test に対して,20m sprint と CMJ の標準偏回帰係数に有意性が認められた. 4 .Zigzag agility test に対して,Flying 10m sprint と.
(9) 方向転換走と直線走および垂直跳びの関係. 5m sprint の標準偏回帰係数に有意性が認められた. 5 .直線走および CMJ を用いた重回帰分析から得られ 2. た各方向転換走の決定係数は 0.22 < R < 0.29 であっ. 151. 9 ) Little, T. and Williams, A.G. : Specificity of acceleration, maximum speed, and agility in professional soccer players, J. Strength Cond. Res., 19(1): 76-78, 2005. 10) McBride, J.M., Triplett-McBride, T., Davie, A. and Newton, R.U. : The effect of heavy-vs. light-load jump. た.. squats on the development of strength, power, and. 以上のことから,方向転換走には直線走および垂直跳. speed, J. Strength Cond. Res., 16(1): 75-82, 2002.. びが関係する一方で,方向転換走の種類によりパフォー. 11) Markovic, G., Jukic, I., Milanovic, D. and Metikos, D. :. マンスに影響する個別の要素が存在すると示唆された.. function and athletic performance, J. Strength Cond. Res.,. Effects of sprint and plyometric training on muscle 21(2): 543-549, 2007. 12) Markovic, G. : Poor relationship between strength and. 謝辞. power qualities and agility performance, J. Sports Med. Phys. Fitness., 47: 276-283, 2007.. 本研究は,早稲田大学スポーツ科学研究科グローバ. 13) 中山忠彦, 伊藤章 : サッカー選手の方向転換を伴う疾走能 力, サッカー医科学研究, 19: 60-64, 1999.. ル COE プログラム「アクティヴ・ライフを創出するス. 14) 加賀谷善教, 松田直樹 : 機能評価に基づくアスレティック. ポーツ科学」の研究事業の一環として実施され,助成を. リハビリテーションおよびコンディショニングプログラム. 受けている.. び協調性の検査測定の目的と意義および具体的手法,. の目標設定とプログラミングの立案, 小粥智浩: 敏捷性およ JASA-AT 専門科目テキスト⑤. 初版, 公認アスレティック トレーナー専門科目テキスト編集班編, 財団法人日本体育. 参考文献. 協会, 東京, pp8-19, 69-73, 2007. 15) Sasaki, S., Nagano, Y., Kaneko, S., Sakurai, T. and. 1 ) Bloomfield, J., Polman, R. and O’ Donoghue, P. : Physical. Fukubayashi, T.: The relationship between performance. demands of different positions in FA Premier League. and trunk movement during change of direction, J.. soccer, J. Sports Sci. Med., 6: 63-70, 2007.. Sports Sci. Med., 10(1): 112-118, 2011.. 2 ) Brughelli, M., Cronin, J., Levin, G. and Chaouachi, A. :. 16) Sheppard, J.M. and Young, W.B. : Agility literature. Understanding change of direction ability in sport: a. review: Classification, training and testing, J. Sports Sci.,. review of resistance training studies, Sports Med., 38(12): 1045-1063, 2008. 3 ) Canvan, P.K. and Vescovi, J.D. : Evaluation of power prediction equations: peak vertical jumping power in women, Med. Sci. Sports Exerc., 36(9): 1589-1593, 2004. 4 ) Carling, C., Reilly, T. and Williams, M.A.: Anaerobic and musculoskeletal performance, Performance assessment for field sports. 1st edition, Routledge, Oxford, pp133-169, 2009. 5 ) Davis, D.S., Barnette, B.J., Kiger, J.T., Mirasola, J.J. and. 24(9): 919-932, 2006. 17) 塩川勝行, 井上尚武, 杉本陽一 : サッカー選手における方向 転換能力に関する研究−マットスイッチシステムを用い て−, サッカー医科学研究, 18: 175-179, 1998. 18) 鈴木雄太, 阿江通良, 榎本靖士 : サイドステップおよびクロ スステップによる走方向転換動作のキネマティクス的研 究, 体育学研究, 55: 81-95, 2010. 19) Vescovi, J.D. and McGuigan, M.R.: Relationships between sprinting, agility, and jump ability in female athletes, J. Sports Sci., 26(1): 97-107, 2008.. Young, S.M. : Physical characteristic that predict. 20) Withers, R.T., Maricic, Z., Wasilewski, S. and Kelly, L. :. functional performance in division 1 college football. Match analysis of Australian professional soccer players,. players, J. Strength Cond. Res., 18(1): 115-120, 2004.. J. Hum. Mov. Stud., 8: 159-176, 1982.. 6 ) Draper, J.A. and Lancaster, M.G.: The 505 test: A test for. 21) Young, W.B., James, R. and Montgomery, I. : Is muscle. agility in the horizontal plane, Aust. J. Sci. Med. Sport.,. power related to running speed with change direction? J.. 17(1): 15-18, 2005.. Sports Med. Phys. Fitness, 42: 282-288, 2002.. 7 ) Green, J.J., McGuine, T.A., Leverson, G. and Best, T.M. :. 22) Young, W.B., McLean, B. and James, R. : Relationship. Anthropometric and performance measures for high. between strength and qualities and sprinting. school basketball players, J. Athl. Train., 33(3): 229-232, 1998.. performance, J. Sports Med. Phys. Fitness, 35: 13-19, 1995. 23) 財団法人日本サッカー協会技術委員会フィジカルフィット. 8 ) Hoffman, J.R., Ratamess, N.A., Klatt, M., Faigenbaum,. ネスプロジェクト : 第 4 章−全国で同じ指標を持つ,JFA. A.D. and Kang, J.: Do bilateral power deficits influence. フィジカル測定ガイドライン 2006 年度版, 財団法人日本. direction-specific movement patterns? Res. Sports Med.,. サッカー協会編, 財団法人日本サッカー協会, 東京, pp26-. 15(2): 125-132, 2007.. 29, 2006..
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