Vol. 8, pp. 1–7, 2009
小型科学衛星のための柔軟な標準バスのコンセプト
∗
1Concept Study on a Flexible Standard Bus
for Small Scientific Satellites
福 田 盛 介∗2・澤 井 秀 次 郎∗2・坂 井 真 一 郎∗2・齋 藤 宏 文∗2・
Seisuke Fukuda, Shujiro Sawai, Shin-ichiro Sakai, Hirobumi Saito, 遠 間 孝 之∗3・高 橋 純 子∗4・鳥 海 強∗3・北 出 賢 二∗3
Takayuki Tohma, Junko Takahashi, Tsuyoshi Toriumi and Kenji Kitade Key Words : Small Scientific Satellite, Standard Bus, Product Platform, SpaceWire
Abstract : In this paper, a new standard bus system for a series of small scientific satellites in the Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency (ISAS/JAXA) is described. Since each mission proposed for the series has a wide variety of requirements, a lot of efforts are needed to enhance flexibility of the standard bus. Some concepts from different viewpoints are proposed. First, standardization layers concerning satellite configuration, instruments, interfaces, and design methods are defined respectively. Methods of product platform engineering, which classify specifications of the bus system into a core platform, alternative variants, and selectable variants, are also in-vestigated in order to realize a semi-custom-made bus. Furthermore, a tradeoff between integration and modularization architecture is fully considered.
1. は じ め に 現在,宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究本部 (ISAS)では,従来の中型科学衛星の補完的な位置づけとし て,特徴ある宇宙科学ミッションを迅速かつ高い頻度で実 現することを目的に,小型科学衛星シリーズを立ち上げて いる.これは,重量250 ∼ 400kg程度のいわゆるミニサッ トクラスの衛星を,5年間で3 ∼ 5機程度打ち上げること を目指した枠組みである.このようなシリーズ化衛星を低 コストで短期間に打ち上げるためには,個々の衛星目的に 特有なミッション部と,これを支えるバス部を明確に切り 分け,バス部に標準化の概念を導入する必要がある.すな わち,ミッション部が嵌合するバスを極力標準化し,その 適合性を確認するためのシミュレータやツールを充実させ ることで,検証プロセスの中から噛み合わせ試験を排する など,様々な工夫により並行開発を促進するねらいである. これまでに内外で標準バスに関する数多くの試みが行わ れてきたが,一部の通信衛星の寡少なケースを除き,成功 例は乏しいものであった.しかし,昨今,各種のインター フェース規格の整備や,モジュール化及びプラグアンド プレイ技術の進歩を背景に,仏CNESのMyriade1)や米
国ORS(Operationally Responsive Space)計画における
∗1 2009 日本航空宇宙学会C 平成 20 年 8 月 1 日原稿受理 ∗2宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部 ∗3日本電気 (株) ∗4 NEC 航空宇宙システム (株) TacSatシリーズ2)など,野心的な標準バスの開発が進めら れている. 宇宙科学コミュニティが提案する小型衛星は,三軸姿勢 安定の近地球天文衛星,磁気圏プラズマを長楕円軌道から 観測するスピン衛星,先進的な航行システムや月惑星探査 技術を事前実証する工学実験衛星,など多岐にわたる.当 然,バスに対するミッション要求は極めて多様なものとなっ ており,通信衛星にみられるような従来型の「固い」標準 バスでは対応不能である.そこで,筆者らのグループでは, 「柔軟な」標準バスという一種矛盾した概念を導入し,多く のミッションに広く適応可能な構成を確立するよう検討を 進めている.以下,本稿では,「柔軟な」標準バスに向けて 採用する三つのコンセプト • 階層的標準化コンセプト • プロダクトプラットホームコンセプト • 統合/分散アーキテクチャのトレードオフコンセプト について,実際の概念設計の例を交えつつ述べる. 2. 階層的標準化コンセプト 一般的な「標準バス」を考える場合,その絵姿はかなり 固定的で,ある特定のミッション(例えば通信衛星)にのみ 適応可能な共通部,という見方がされる傾向にある.この 場合,特定ミッションの衛星数が十分に大きいならば,標 準化のメリットを見込むことは可能であり,またある程度 ミッション要求に幅がある場合には,自動車生産にみられ るように,複数のカテゴリの標準バスを用意することも考
えられる.しかしながら,これまでの宇宙関係の産業構造 を鑑みるに,衛星の数自体がこの種の議論を行うには圧倒 的に不足しており,標準バスの試みは失敗に終わるケース が少なくなかった.結果として,衛星開発は一品生産的な 色彩が強まり,そのことがさらに関係分野を狭めていくと いう,負のスパイラルに陥っている. 前述したように,科学衛星のミッションは,実用衛星と 比してより要求が多様で,バスの標準化と容易には相容れ ない.したがって,従来のISASの中型科学衛星は,得ら れる科学成果を最大化するように,衛星毎に徹底的な設計 の最適化を図りつつ開発されていた.しかしながら,この ような方式は,ミッションの難易度が高くなるにつれ,コ ストの増大や開発の長期化を招くことは避けられない.こ れに対し,小型科学衛星は,その補完的な役割を担うべく 立ち上げられたシリーズとして位置づけられる. 筆者らは,第1図に示すような,標準化の階層を定義す ることで,小型科学衛星シリーズに必要とされる柔軟な標 準バスを具現化するよう検討を行っている.本図において は,標準化レベル(I ∼ IV)の値が大きくなるほど,狭義 の標準バスと類似の概念になっている.すなわち,衛星形 態そのものを標準化する階層IVは,従来の標準バスと同 様に,外見の構造様式の同一性を要求している.これによ り,バスの製造過程から,熱構造モデル(STM)を用いた 試験を省略することができるなど,コストメリットを見込 める. 一方,例えば,ある種の工学実験衛星/探査機において, 大規模な推進系を要するなどの理由で,バス部とミッショ ン部の構造的分離が困難で,ミッション部の個性がバス部 の構造を左右し,その標準化を妨げるような場合にも,計 算機やコンポーネントなどを号機間で共通的に使用する発 想が階層IIIである.これは,いわば,サブシステムレベ ルの標準化とみなすこともできる.複数機にわたって共通 の機器を採用することは,部品のまとめ買いなどでミニマ ムバイの問題を回避する効果もある. 階層III以上の標準化を成立させるためには,電気・熱・機 械系の各種のインターフェースを標準化しておく必要があ り,第1図では,これを階層IIと位置づけている.例えば, 本小型科学衛星シリーズでは,データ処理系の標準インター フェースとして,高速シリアルリンクの国際規格(ECSS)で あるSpaceWire3)を採用する予定である.SpaceWireは, 信号レベルにおいて,IEEE 1355で規定されたデータ・ス
トローブ(DS)符号化に,LVDS(Low Voltage Differential Signaling)を組み合わせた方式である.物理レベルはケー ブルやコネクタの仕様を含めて規格化されており,EMC 特性に優れた通信環境を,10mのノード間距離まで保証す る.現在から将来にかけての衛星計画に対し,ほぼあらゆ るミッション要求を満足し得る高速性(∼ 200 Mbps)を備 えたシンプルな規格であり,欧州のみならず米国でも非常 に関心が高まっている.また,上位レイヤのプロトコルで あるRMAP(Remote Memory Access Protocol)4)と組み
合わせることにより,ネットワーク越しに他ノードのメモ 第 1 図 標準化階層の定義 リやレジスタに簡便にアクセスすることが可能となり,ソ フトウェア開発が効率化する.総合試験時の不具合に際し ても,衛星を分解することなく,SpaceWireルータに備え た地上系用のポートから,各機器にRMAPアクセスをか けることができ,調査に要する期間・工数を劇的に低減で きる. 第1図では,最下層の階層Iに,設計開発手法の標準化を 定義している.これは,昨今諸分野で推進されている,モ デルベース開発に類似した着想である.衛星を機能まで含 めてモデル化した上で,標準フォーマットのデータベース に格納し,そのデータベースへのアクセスライブラリを共 通的に準備することで,試験・運用装置の再利用性を高め る5).また,試験手順や文書管理の標準化も重要であり,号 機間で共通化を図ることにより,関連するツール整備の促 進が期待できる. 3. プロダクトプラットホームコンセプト 前述したように,科学ミッションのバスへの要求は多様 であり,衛星形態を共通化する標準化階層IVの中において も,対応可能な仕様のウィングをできるだけ拡げておくべ きである.つまり,比喩を用いるならば,従来の中型科学 衛星を「オーダーメイド」,一般的な標準バスを「既製品」 とすれば,本小型科学衛星シリーズでは「セミオーダーメ イド」的なバスの開発を目指す必要がある. このような場合,非宇宙分野のシリーズ製品の開発にお ける,プロダクトプラットホーム(product platform)6∼ 8) の考え方が非常に参考になる.プロダクトプラットホーム の肝は,共通性(commonality)の周到な分析にあり,深い 思慮なしに前世代の製品機能をリユースしたり,将来の匿 名的な要求に無制限に対応しようとする姿勢を排している. 分析の結果,製品間で共通性の高い機能要素をプラットホー ム(platform),個別の製品で付加・選択すべき機能要素をバ リアント(variant)と呼んで仕分ける.プロダクトプラット ホームに関する代表的な書籍6)の定義では,プラットホーム はインターフェースや製造プロセスをも含むとされており, 2.で提案した標準化階層のコンセプトとも合致している. プロダクトプラットホームの手法に習い,「セミオーダー
第 2 図 ミッション要求マトリックス メイド」的なバス仕様を検討するにあたっては,第2図の ようなミッション要求マトリックスを作成する.これは,各 ミッションが必要とする衛星機能を示したものである.ミッ ション要求マトリックスを基に,プラットホームとバリア ントの峻別を行う.例えば,機能AやBは,ほとんど全て のミッションが要求するものであり,コアのプラットホー ムとして仕様に組み入れられる.プラットホームを構成す る機能群は,シリーズ衛星において標準的に具備され,完 全な形で再使用される.一方,個別要求に対応するための バリアント機能は、さらに二種類に分類される.まず,機能 C1とC2のように,ミッション毎に選択的に採用されるも のは,選択型バリアント(alternative variant)と位置づけ る.選択的バリアントの候補となる要素のうち,最も標準 的とみなされるものをベースライン機能とする(第2図の 例ではC2).これに対し,少数のミッションのみが要求す るDやEのような機能は,追加型バリアント(selectable variant)として扱う. バリアント機能の考え方は,一見従来の「作り込み」を 連想させるが,未来に生じる新たなミッション要求をトリ ガとした後手後手の対応ではなく,要求マトリックスの分 析から,まさに「セミオーダーメイド」品のカタログやメ ニューのごとく,事前に識別されている点が大きく異なる. とはいえ,バリアント機能,及びその中の選択肢の数は,や はりコストに大きく関係するものであり,やみくもに対応 可能な範囲を広くとることは,小型衛星の本来目的からし て得策ではない. プラットホーム仕様,あるいはバリアントの拾い上げ方 に関しては,その機能を要求するミッションの数のみなら ず,小型衛星としての戦略を勘案して決められる場合もあ る.例えば,推進系の搭載については,仮に一定数以上の ミッションが要求しようとも,小型衛星開発の簡便性との関 係で慎重に考える必要があり,現在の小型科学衛星シリー ズの標準バスでは,プラットホーム仕様とはみなしていな い(追加型バリアントの扱い).民生分野のプロダクトプ ラットホーム的な製品開発においても,技術革新に伴った プラットホームの進化は,シリーズ製品の陳腐化を避ける ために重要視されるところであり,上記の例では,小型衛 星に適した無毒推進系の技術が成熟したあかつきには,プ ラットホーム仕様として組み入れられると考えられる. 現在までの概念設計の結果,本小型科学衛星シリーズの 標準バスのバリアント機能としては,以下のようなものが 抽出されている. • 選択型バリアント(下線はベースライン機能) – 太陽電池パネル数 [片翼あたり1, 2, 3枚] – リチウムイオン電池容量 [35, 50 W] – 姿勢センサ(スタートトラッカやIRUなど) [精度要求に応じて複数の候補から選択可能] – リアクションホイールのサイズ [擾乱要求等に応じて複数の候補から選択可能] • 追加型バリアント – パドル回転機構(SADA) – GPS受信機 – Xバンド送信機 – 1液式推進系 – EMC対応設計 一方,コアとなるプラットホーム部分としては,キューブ 状(1 × 1 × 1 m3 )の衛星構体,±Y面(太陽電池パドル取 付面)を主放熱面とする熱制御系,Sバンド通信系(ダウ ンリンク∼ 2 Mbps,アップリンク∼ 256 Kbps),中核と なる高速計算機(SMU: 4.の第5図を参照),SpaceWire を用いたネットワーク型のデータインターフェース,など が各衛星で共通的に使用される.また,対放射線性につい ては,各々LEOに対して3年,GTOに対して1.5年にお いて,100Krad以下の内部環境となるよう,アルミハニカ ム構体の厚みを設計している. 以下,上述したプロダクトプラットホームコンセプトに より実現される衛星を,三例紹介する(第3図は外観イメー ジ).まず,第3図(a)は,小型科学衛星シリーズの1号 機に選定された,極端紫外域での惑星分光観測衛星である. 観測上,複数の惑星を指向する必要があるため,慣性空間 固定の三軸姿勢制御を行うが,本標準バスのプラットホー ム仕様の制御精度が1分角程度であるのに対し,観測要求 はP-Pで5秒角となっている.これについては,選択的 バリアントとして高精度のIRUを使用し,またミッション 部に搭載する視野ガイドカメラからのオフセット誤差量を, 制御ループに導入することにより,ミッション要求を達成 することを考えている.太陽電池パネルに関しては,ベー スラインである片翼あたり2枚の構成で成立するが,任意 の方向を指向するため,追加型バリアントであるSADAに より,パドル回転の自由度を備えておく必要がある.なお, 推進系は搭載しない方向で検討を進めている. 第3図(b)は,X線天文衛星の例であり,小型科学衛星 シリーズとしては限界的な質量(ミッション部∼ 200 kg), 及び電力(ミッション部∼ 300 W)リソースの要求が特徴 的である.全衛星で共通的に使用するバス構造については,
(a) (b) (c) 第 3 図 プロダクトプラットホームコンセプトにより実現される衛星の例(外観イメージ) 本ミッション部の支持を強度的な評定として設計している. また,電力に関しては,片翼あたり3枚構成の太陽電池パ ネルをバリアントとして選択することにより,上記要求を 成立させる.一方,本ミッションも三軸制御で任意方向を 指向するものであるが,太陽角を制限し得るため,SADA の搭載は不要である. 第3図(c)は,長楕円軌道を飛行する磁気圏プラズマ観 測衛星の例であり,(a)や(b)の望遠鏡衛星と比較してユ ニークな外観を有しており,衛星形態を共通にする標準化 階層IVの中でも,最外縁に位置するミッションであると いえる.スピン衛星であることから,姿勢制御用センサの 換装はもとより,アンテナパターンをドーナツ形状化する など,選択・追加型バリアントを存分に駆使した衛星構成 となっている.また,搭載する観測機器の性格上,非常に 厳しいEMC要求を有しており,追加型バリアントとして 対応する必要がある.なお,本衛星では,スピン軸の太陽 追尾制御,すなわち,公転運動により1日に約1◦ずつずれ ていく太陽角をマヌーバにより補正するため,推進系の搭 載が必須である. プロダクトプラットホームのコンセプトを衛星開発に導 入する試みは,その重要性に比して,内外を通じてわずか な例に留まっているが9,10),例えば文献10)には,通信衛 星用のプロダクトプラットホームの設計を,個々の衛星の 性能とシリーズとしての共通性を,同時に最大化する最適 化問題として捉え,遺伝的アルゴリズムを適用した結果が 示されている.このような最適化手法は非常に野心的で, 基盤として衛星機能の徹底的なモデル化5)を必要とするが, 将来的には小型科学衛星シリーズにおいても,是非とも取 り組むべきテーマである. 4. 統合/分散アーキテクチャのトレードオフコンセプト 昨今,衛星設計のアーキテクチャに関する議論において は,統合化,あるいはモジュール化の利害得失が,しきりに 取り上げられる.本小型科学衛星シリーズの標準バスの検 討に際しても,これらのトレードオフが重要な課題となっ ており,本章ではその内容について詳述する. 第4図は,アーキテクチャのトレードオフのコンセプト を,模式的に示したものある.色をつけた丸や四角などの 記号が,各々,衛星の機能を表しており,これらを囲んだ 箱(グレー色の線)が機器の単位に相当する.第4図(a) のように,アーキテクチャの概念を伴わない設計において は,同一の機能が異なる機器に無秩序に分散し,かつ機器 間のインターフェースが標準化されていない.これに対し, (b)では,複数の機能が単一の機器に集約されている.こ のような統合化のトレンドには,現在の衛星開発において, 部材費や単体試験費が大きな割合を占め,機器の個数がコ ストに直接影響するという背景がある11).また,現状の宇 宙用エレクトロニクスの技術レベルを鑑みるに,マイクロ サット級以下の衛星については,主に搭載スペースの制約 から,計算機をはじめとした機器の統合化を検討せざるを 得ない状況にある. 一方で,第4図(c)は,各機能をモジュール的に再分配し た,分散アーキテクチャの例である.可能な限り標準的な 機能配分を行うことで,衛星内/衛星間の機器の再利用性 を高めている.その反面,統合化アーキテクチャと比較し て,各種リソース的にはリッチな構成となる.ここで,何よ り重要なことは,図中にピンク色の線で示した,インター フェースの標準化である.標準インターフェースを採用す ることにより,その時点での技術の進歩に応じて,統合化 とモジュール化をコストやリソース,試験容易性,再利用性 などの観点から総合的にトレードオフすることができ,第 4図の(b)と(c)の間を,適宜様々なレベルで遷移するこ とが可能となる.すなわち,2.で,インターフェースの統 一を標準化階層IIと定義したことと,密接に関連するもの である. 上記のトレードオフコンセプトの例として,第5図に,現 在検討を進めている小型科学衛星バス部のシステムブロック ダイアグラムを示す.まず,第5図(a)は,検討のベースライ ンとして,機能統合を大胆に推し進めた案であり,第4図に おける(b)に相当する.データ処理,姿勢制御,熱制御,通信 などに係るほぼ全ての演算機能が,SMU(Satellite Manage-ment Unit)と呼ばれる計算機に集約されている.SMUは, 近々にJAXAの小型実証衛星(SDS: Small Demonstra-tion Satellite)の1号機で軌道上実証される計算機(Space
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(a) Conventional (b) Integration (c) Modularization 第 4 図 統合/分散アーキテクチャのトレードオフのコンセプト Cube 212))をベースとして,開発するものである.また, 本案では,磁気トルカやヒータなどをドライブする機能は, DRU(Drive Unit)と称する単一の機器に統合されている. 第5図(a)の統合化案は,機器個数の削減による低コス ト化という面では合理的であるが,例えば,姿勢系コンポー ネントのインターフェース部がSMUに内蔵されており,号 機間でこれらの換装を行う場合には,SMUについても一部 再製作を強いられる.これに対し,機器至近で標準インター フェースへと変換することを考じ13),SMUの再利用性の向 上を図った案が,第5図(b)である.検討の結果,SMUか ら外出しされたインターフェース変換部ACIM(Avionics
Control Interface Module)は,A6サイズ程度で実現でき, また小型科学衛星シリーズで想定する姿勢制御機器(バリ アント扱いのものを含む)のラインナップに対し,約10種 類のACIMを準備しておくことで対応可能である,との目 途を得ている.本案では,DRUに統合されていたドライ ブ機能群も,ACIMの枠組みの中で分散化されている.ま た,熱制御に係る温度センサのインターフェースやヒータ のドライブ機能は,µHCEと呼ばれるモジュール性の高い 小規模機器に再配分され,適宜構体パネルの各箇所に配置 される. 前述したように,概念設計の中で,第5図の(a)と(b)な どを,抵抗なくトレードオフするために最も鍵となるのは, インターフェースの標準化であり,ここではSpaceWireの 採用がこれにあたる.第5図においては,青色や赤紫色を付 した線が,全てSpaceWireネットワークである.世界的に みても,これほどまでに,バス部全体にわたってSpaceWire を張り巡らせた例はなく,非常に先進的な構成となってい る.別の側面のメリットとしては,衛星内/衛星間で標準 化されたSpaceWire関連部品が多数回再利用されるため, 「バグ」の枯れが速く,安全性が向上することが挙げられる. バス系,特に姿勢制御系において,SpaceWireを使用す るにあたっては,その信頼性に留意する必要がある.これ に対し,SpaceWire関連規格についての国際的な作業グ ループ(SpaceWire WG)では, SpaceWire-RT(Reliable-Timely)と称される新たなプロトコルの制定を進めてお り14),著者らもWG会合に参加して,ドラフト仕様の議 論を行っている.SpaceWire-RTはプロトコルスタック上, オリジナルのSpaceWireの直上に位置するもので,アプ リケーションソフトウェアに対し,再送の実施とレイテン シの保証に応じた複数レベルのQoS(Quality of Service) サービスを実現する.レイテンシについては,例えば一般 的に十分速い衛星姿勢制御系のサンプリング周期を仮定 すると(64Hz程度),SMU-ACIM間の通信時間として 100∼200µs以内という制約が生じるが,本アーキテクチャ の検討における予備的な見積りでは,48MHzのリンク速 度で256Byteのデータを約130µsで読み出せるという結 果を得ている15). また,現在,さらに,第5図(b)において,姿勢系機器 が接続されるSpaceWireルータを,SMUから外に出す案 を検討している.これにより,SMUを純粋な計算機へと帰 着させることができ,さらなる再利用性の向上を見込める と同時に,開発や試験の複雑さを考慮し,統合化への敷居 が高い姿勢制御演算部分を別計算機に分割する構成も,視 野に入ってくる.いずれにせよ,今後,各案について,コ ストやリソース,開発期間(開発容易性)などを俯瞰的に 精査し,最終的なシステムアーキテクチャを決定する.
5. む す び JAXA宇宙科学研究本部が新たに立ち上げている,小型 科学衛星シリーズに供する標準バスのコンセプトをまとめ た.多様な要求を有する宇宙科学ミッションに,柔軟に対 応できる標準バスを仕立てるべく,階層的標準化,プロダ クトプラットホームなどのコンセプトを導入し,また,統 合化やモジュール化のアーキテクチャをトレードオフした. 小型科学衛星シリーズの1号機は,まもなく基本設計 フェーズに移行し,標準バスの開発を開始する予定である. 2号機以降の衛星については,バス–ミッション間のイン ターフェースの確定から,2年以内に打ち上げるサイクル を目指している.コストについても,同規模のバスと比較 し,国際的にも競争力を有しており,将来的には,科学用 途のみならず,地球観測や災害監視など多方面のミッショ ンへの応用が期待される. モジュールアーキテクチャや衛星モデル化について貴重 なご指導を賜ったISAS/JAXAの高橋忠幸教授,山田隆弘 教授に感謝申し上げる.SpaceWire技術については,日本 SpaceWireユーザー会の関係各位に深謝する.また,標準 バスの検討にご参加頂いている小型科学衛星プロジェクト チームの皆様,日本電気(株)及びNEC東芝スペースシス テム(株)の関係の方々,さらには小型科学衛星の各ワーキ ンググループ関係者に謝意を表する. 参 考 文 献
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(a) 機能統合を図った検討ベースライン
(b) 再利用性向上のためのモジュール化