ロバートD. ハーマン,リチャードD. ヘイモービックス『非営利組織における経営者リーダーシップ -- エグゼクティブと理事会のダイナミックス形成の新戦略 --』 ジョセイ・バス,1991年,
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(2) 第44巻. 第 3号. 理制度の導人による業績評価制度の導入などが好例である。. たしかに, 基礎となる経営管. 理の概念と現実の経営管理の過程(計画策定・組織編成・指揮活動 ・ 統制活動と活性化) はどのような単位組織においても目的達成の協働努力に不可欠の本質であるが,. この管理. 活動が遂行されるそのあり方とその方法においては. 営利企業と非営利組織の間には大き な差異が存在するはずである。 したがって, まず問題は,. 非営利組織は営利企業には有用である経営管理の概念と方法. が, 非営利組織のもつ特性からどのようにして不適切かつ不的確になるのかを問うことで ある。. そのためには, 非営利組織の経営管理論は, 第1 に,. その経営の特質論から始めな. ければならない。 いずれの時期に, これを明らかにするつもりである。 ただ, ここで一般 的に言えば, 非営利組織の経営管理に強く作用を及ぼす特質は.「利益の尺度が業績の目標 にもその測定にもその評価にも有効に働かない」「提供するサ ー ビスは有形ではないので その測定が困難であり,. この困難は複数のサ ー ビス目的が存在しうることによってさらに. 増大する」「資源の提供者や貢献者が内部の日常経営管理に干渉し,経営のガバナンスが不 透明となる」「専門家ないしは思想的な指導者による管理集団が形成される」「報酬制度や 制裁制度を管理用具として利用することができない」などであると指摘することができ る。 要するに,. 資源ーガバナンスー 組織の目的(使命)一有効性の間の連鎖を確保するこ. とが困難であるということである。 第2には,. これらの経営管理活動を制約する特質は, どのように現実の非営利組織の経. 営管理に影響を及ぼし, ない。. どのような独自の管理活動を生み出すのかが問われなければなら モチベ ー ショ ンと統制活動の各管理過. おそらくそれは, 計画の策定, 組織の編成.. 程のすべてに及ぶことであろう。 私の次の課題である。 本書は,非営利組織経営の特殊性のうちの「経営管理者層におけるガバナンスの特殊性」 に焦点の基礎をおいて, 非営利組織の経営管理活動のリ デル化し,. ー. ダ ー シップの特殊なあり方をモ. 非営利組織が成功するためには, どのような特殊なリー ダ ー シップが必要であ. るかを示し,. 非営利組織の実務家や将来の人材に対してそのためにはどうあるべきかの具. 体的な指針を提供しようとしたものである。. 1.. 著. 者. 紹. 介. ロバート . D. ハ ー マンは, カンザスシティ・ ミズ ー リ大学における組織行動論および コミュ. ニ. ティ心理学の教授で, 彼はそこでヘンリ. ー. -116 (452)-. ·W · プロッホ. ・. ビジネス ・ 行政ス.
(3) 「非営利組織における経営者リ. ー. ダ ー シップ」(堀田). ク ー ル, クッキングハム公務研究所の非営利組織経営プログラムの教鞭をとっている。 1968年にカンザス州立大学において経済学の学士号, コ ー ネル大学において組織行動論で 1971年に修士号, 1976年に博士号を取得している。 ハ ー マンの研究テ ー マは,. 自発的行動や非営利組織であり, その中でも特にエグゼク. ティプのリ ー ダ ー シップ, ガバナンス, 有効性に関心の中心をおいている。 ジョ ン. ・. ヴァ. ンーティルと共にNonprofit Boards of Directors: Analysis and Applications (1989) の編者となっている。 彼は40篇以上の論文を公刊している。 最近の論文では, 以下の各誌 に掲載されたものがある。 Journal of Voluntary Action Research Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly Journal of Sociology and Social Welfare American Review of Public Administration Nonprofit Management and Leadership 彼は自発的活動学会(現在の非営利組織. ・. 自発的活動学会)の会長も務めており(1988. -1990), 非営利の慈善組織の会長や, その他の非営利組織の理事も歴任している。 ド. ・. プロッホ. ・. リチャ W. ・. ー. D· ヘイモ ビジネス. ・. ー. ビックスは, カンザスシティ. ・. ミズ ー リ大学のヘンリ ー. ・. 行政 スク ー ル, クッキングハム公務研究所の組織行動の教授. で, 経営, 行政, 非営利組織経営などの専攻の学生を受け持っている。 1963年にダ ー トマ ス大学において史学で学士号を, 1969年にカンザスシティ で修士号, 1975年にカンザス大学においてヒュ. ー. ・. ミズ ー リ大学において行政学. マンリレ ー ショ ンズおよびコミュ. ニ. ケー. ショ ン論で博士号を取得している。 ヘイモ ー ビックスの近年の研究活動は, 非営利組織におけるリ ー ダ ー シップと経営を中 心としている。 彼はまた, 作業集団のパフォ. ー. マンスと組織変革, 公共部門の経営, 公共. サ ー ビスのための教育, 大学における研究開発などに関する研究も行っている。 彼には2つの共編, 45篇の公刊された論文があり,2つの学術誌の編集委員を務めてい る。 彼の研究は以下の各誌に報告されている。 Journal of Voluntary Action Research Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly Southern Review of Public Administration Midwest Review of Public Administration American Review of Public Administration -117(453)-.
(4) 第44巻. 第3号. Educational Administration Quarterly ヘイモー ビックスは全米行政学会の会長も務めており(1986-1987), 公的管理学界にお ける非営利組織研究の推進に尽力した。 本書は, この権威ある二人の共著であ る。 他にもこの二人は, 『非営利組織の理事会 (Nonprofit Boards of Directors)』, 『非営利組織のリー ダ ー シップと経営ハンドプック (Handbook of Nonprofit Leadership and Management)』等の論文集の編者にもなっ ている。 彼らの研究活動は, さらに現在も非常に活発であり, 1996年にはこの分野の最高の賞で あるビ ー ター ·F ・ドラッカ. ー. 賞(『非営利組織の経営とリー ダ ー シップ誌(Nonprofit. Manegement & Leadership)』1995年中最優秀学術論文賞). を受けている。. その後も,. 『非営利組織の経営とリー ダ ー シップ誌』, 『非営利組織· 自発的活動セクター 誌(Non profit and VoluntarySector Quarterly』, 『ボランタス(Voluntas)』など, この分野の 主要学術誌に論文を掲載している。. 2. 第1章. 本書の内容. 非営利組織の経営管理者に課せられる新たな挑戦. 財源の発掘 ボランティアの理事会とチ ー フエグゼクティプの間の責任の明確化 非営利組織の政治的・ 社会的環境の変化に対する処置 市場競争 慈善・ フィランソロビ ー 団体との協働. 第2章. 非営利組織とその環境. 非営利組織の定義に対するオ ー プン・ システム ・ アプロー チ オ ー プン・ システムのなかの経営管理の不安定性 営利事業との比較 政府との比較 コミュ. 第3章. ニ. ティの多元的価値の遵守と組織使命の維持. 理事会一経営者の関係を理解する -118 (454)-.
(5) r非営利組織における経営者リ ー ダ ー シップ」(堀田) 非営利組織の伝統的な視点 伝統的モデルはどこが間違っているのか 非営利組織の 「管理されたシステム」モデルの規範的基準 理事会リー ダー シップに関する伝統的モデルの基準が不的確である事例 代替モデルの登場 非営利組織における効果的なリー ダー シップ 非営利組織の代替モデルの規範的某準 代替モデルにおける経営の意思決定とチ ー フエグゼクティプの業績評価の再検討. 第4章. 非営利組織における経営者の主要なリ. ー. ダ ー シップ戟略. 総合的機能の必要性 対外関係に時間を割く インフォ. ー. マルな情報ネット ワ. ー. クの開発. 自分のアジェンダを知る 即決する;多元的・部分的な解決策を受け入れる 強力な理事会を開発する "政治的戦略. 第5章. ”. の開発. 理事会を引き込み啓発する. 理事会の動きを理解する 組織の使命の明確化 理事の役割期待 派閥の処理 役割期待と理事会のパフォ. ー. マンスについて理事会と話し合う. 理事の採用 新しい理事戦のオ リエンテー ショ ン. 第6章 理事会中心リ. ー. ダ ー シップの技能の習得:チ ー フエグゼクティプヘの指針. 経営者リー ダー シップ成功の理論と実践 さらに技能を高める学習 成功する経営者はどのようにして理事会中心となるよう学習しているか -119(455)-.
(6) 第44巻. 第 3号. 理事会中心のチ ー フエグゼクティプ 理事会中心のチ ー フエグゼクティプの6 つの必須技能 あとがき 資料. 3. 第1 章. 本書の概要. 非営利組織の経営者の新たな課題. 本書の前半の3章では, 非営利組織の独特な環境を俯徽する。 そしてその独特の環境が, 非営利組織とそのリー ダー シップの性質にどのように影響を与えるかを考察する。 特にこの第l章では,. 非営利組織が活動する環境の複雑性を検討 する。 現実の非営利組. 織に対する調査をふ まえて, いくつかの事例を組み合わせて「北西部隣人センター 」「ニ ー ルソンホ ー ム」の2 つのケ ー スを組み上げて,. この10年間の間の非営利組織を取り巻く環. 境の変化とその影響とその環境の複雑性を説明する。 こうした非営利組織の独特で複雑な環境の中で, 資金源を開拓すること, 理事会と経営 者の関係を制御することの2点が,. 非営利組織を指導する上で重要な課題であることを明. らかにしている。 非営利組織は外部の多数の多様な利害関係者に制約ないしは支配される資源と資金に特 殊な形で依存している。 連邦政府・州政府・その他の地方政府を含む政府の直接資金と助 成金,. 個人・企業の個別寄付金,. 財団• 基金などのフィランソロピ ー 団体の援助金, 自ら. が提供する製品・サ ー ビスの市場 における販売収益などがその財源である。 したがって, 資金の調達はその源泉が多元であり多様であることからきわめて複雑で特殊なものとな る。 政府諸機関から資金を獲得するためには. 交渉能力(政治的技能)が問われるし.. 非営利組織の指導者には政治という市場 での. 特に近時の政府関係の資金の減少とその政策の優. 先順位の頻繁な変更に適応できる優れたリー ダー シップが必要である。 さらに, 得のためには. コミュ し,. ニ. 資金の獲. ティやフィランソロピ ー 財団の支持の得られるプログラムを編成. 関係者の同意と支持を確保する必要がある。 また.. 事業と比較 して. 法的規制や行政指導.. 市場 の営業活動に関しても,. 営利. 非関連事業参入の制限など特殊な状況の中で収益. 活動が許されるから. ここにも特殊なリー ダー シップが求められる。 ところがさらに. このような特殊な経営管理の意思決定を行う場 合に. -120 (456)-. 非営利組織に特.
(7) 「非営利組織における経営者リ. ー. ダ ー シップ」(堀田). 有なガバナンスのあり方_理事会と執行経営者(特にチ ー フエグゼクティプ)の奇妙な この意思決定のリー ダ ー シップが複雑になる。. 回路ともつれた関係—ー から, の管理機構の特有なあり方は,. 非営利組織. 主として理事会の特殊性から生じる。 理事会が共通の目的. と関心事を持つことはないからである。 さらには, 理事の参加の程度も関与の程度も種々 であり, また情報の質量に大きな差異がある点も理事会の特殊性を生む要因である。 このような特殊な文脈の中で, 非営利組織の指導者は経営内部の管理システムを効率的 に運営すること, て政治的スキ ル プには,. を発揮することが期待される。. そこでは,. ー. 非営利組織のリ ダ. かなり特殊な一 連の専門家としての技能が求められる。 したがって,. ダ ー シップの中心は,. 第2章. 主とし. 多くの境界と交渉・調整• 影響のいわば外部環境との調整力. ーー. ー. シッ. そのリー. チ ー フエグゼクティプに求められるべきものである。. 非営利組織とその環境. 非営利組織の環境の特性とその環境の複雑性が, 非営利組織にどのような影響を及ぼす かを考察している。 非営利組織は, 企業組織と比較 して,. その環境に対してきわめてオ ー プンであるので.. そのためにその環境に影響を受けやす<. 他方で, 利組織を指導して行くためには, を取り巻く諸条件に適合して.. 外部資源に依存しているために,. 企業家的かつ政治的な技能が必要であり,. 非営. なおかつ組織. 不断の相互作用を展開することが必要となると指摘する。. 非営利組織は他の組織に比較 して. 透過性の高い境界をもち.. すぐに変化する政治的・. 社会的・経済的な複雑な環境要因の中で存在するオ ー プン・ システムである。. このような. オ ー プンな組織においては. 有効なリー ダ ー シップを発揮することは困難でかつ不安定な 峨務となる。 まず. 第1 章 で述べたように. 財源に限っても ら吸収するから.. 多数で多様なインプット か. これらの多様な源泉との取引は. 政府との政治的取引, 利用者・クライ. アント との商業的取引, 寄付企業· 寄付財団とのある種の交換取引など多様であり. ぞれに応接できる能力が求められる。 さらに. 組織はそれだけ不安定を免れない。 リ 適応力をもって,. ー. 組織がきわめてオ ー プンであることから.. ダ ー シップには, 機会を的確にとらえて. 柔軟に. さらには共通の価値体系と使命の共有を維持する確固たる主義や思想を. もって意思決定をすることが求められる。 組織がオ ー プンあることは.. 多数の多様な関係. 者の関心と期待の変化に適応して行く常に再生される組織であるということであり, は不断の組織化を意味するが, られる。. それ. それ. 非営利組織ではこの作業が経営者のリー ダ ー シップに求め. それには組織の境界を越えて活動することが必要であり. -121 (457)-. そのためには. 競争市.
(8) 第44巻. 第3号. 場 の中において経営の存続を図る企業家的能力はもちろん. 政府事業の経営とは異なっ た, 公共に対する責任と自律性の維持 ー一組織の使命の達成—―ー のバランスを保ちなが ら, 組織の使命とは別の多元的な価値を支持 し. 力が期待される。. このように.. その間の対立の調整ができる政治的交渉. 非営利組織の経営リ. ー. ダ ー シップは. 複雑でしばしば対立. する複数の価値と利害の期待を解決しなければならないのである。. 第3 章. 理事会と経営者の関係. 権限, 責任, リ. ー. ダ ー シップに関する複雑な問題を取り扱う。 まず, 非営利組織に関す. る従来の概念である「管理されたシステム・モデル」を検討 する。 この伝統的モデルは, 理事会に階層の頂点とリ. ー. ダ ー シップの中心をおいているが, このような視座は不完全で. あり, 多くの非営利組織のリ. ー. ダ ー シップが低迷している原因であるとする。. これに代わるべき新しいモデルは,2 つの調査結果に基づいて作成された。 経営者がリ. ー. その内容は,. ダ ー シップの中心的役割を期待されており, 現実に, 成功している非営利組. 織ではそうであること, さらに, 成功している非営利組織の経営者は, この中心的なリ ダ ー シップの位置と理事会リ る。 リ. ー. ー. ー. ダ ー シップを結び つける高度な技能をもっていることであ. ダ ー シップと経営管理に関するあるべき基準として, この代替モデルはどのよう. な意義を持 つのかを考察している。 まず,「管理されたシステム」の理論から導かれる非営利組織の伝統的なモデルが, 理事 会を権限階層のト ップと位置づけ, 経営リ 会のパフォ. ー. ー. ダ ー シップの責任の中心であると考え, 理事. マンスに関する一 連の 「英雄」 の諸基準を作り上げていると説明した上で,. これに対する多くの研究者の批判を紹介しながら, このモデルが非営利組織に適用された 場 合の問題点を指摘する。. すなわち, 非営利組織においては, 組織の目標 は単一でもなく. 共通でもなく, 多元的でもなく, 誰かの意思の帰結であるとする現代組織論のパワ ー ダ イ ナミックスの理論がむしろ適用すること, 組織は統一的・合理的な行為者ではなく, 戦能 の分化に伴ってコンフリ クト を常態として統合的で水平的な構造を形成しているから, む しろ政治的対立と妥協という政治的交渉の場 であること, 組織の階層は普遍的であるとし ても, 専門的な知識と技能が支配し, したがっ て高度な情報も専門家に集中している状況 では, 理事会と経営者の間の政策立案と執行管理の戟務分担や目的設定と手段の選択の分 離というステレオ タイプは適用できないし, とくに現実に直面している諸問題, 事業・資 金調達の機会, 資金源の政策・行動の変化という状況の下では, 政策ーー管理, 目的_ 手段の役割と貢任の分担などは区別することができない。 -122 (458)-. そこで, 理事会に階層のト ップ.
(9) 『非営利組織における経営者リ. ー. ダ ー シップ」 (堀田). の位置を認め理事会にリ ー ダ ー シップの中心をお く 伝統的な理事会の英雄像と非営利組織 の現実との間には相 当な ギャ ップが存在する。 持続的な資源確保の活動を指導する こ とが リ ー ダ ー シップの本質であるとするな ら , チ ー フエグゼ ク ティプがリ ー ダ ー シップの中心 にある こ とは真実であり,. こ の点は多 く の非営利組織の研究者が それ ぞ れのアプ ロ. よって確認 し ている こ とである。 例 え ば, ヤ ング, スミス, フ ェ ッフ ァ. ー. ー. ド ラッカ ー , グロ ンジャ. チに. ー. ク,. が そ う である。. し か し , それでも,. こ の伝統的なモ デルがいぜ んと し て有力なのは, 現に理事会に法的. な責任がある こ と, 非営利組織の行動の基本的基準と し て,. 自 発的組織を代表する理事会. が組織の管理主体である こ とが必要である こ と, 伝統的モ デルが不的確である点を指摘す る こ とは容 易であるが,. こ れ に替 わ るモ デルを提示する こ と が 困難である こ とに起因す. る。 こ の困難な代替モ デルとは, チ ー フエグゼ ク ティプを非営利組織のリ ー ダ ー シップの 責任の中心にお き , る。 ただ し ,. こ の経営者が理事会中心リ ー ダ ー シップに携 わ るとするモ デ ルであ. こ のモ デルは, 理事会の役割と責任を軽視するのではな く , む し ろ その決定. 的な重要性を確認するのである。 理事会は, たんなるf鬼儡ではな く また監視戦能に限定される存在ではない。 非営利組織 の効果的なリ ー ダ ー シップとは, チ ー フエグゼ ク ティプが 一般ス タ ッフに対するリ ー ダ ー シップとは別の理事会に対するリ ー ダ ー シップの責任を果たす こ とによって, リ ー ダ ー シップを理事会と共有 し , 理事会 が 自 己の役割と責任を全 う するよ う 支 え る こ とで非営利 組織の活動に協働させる作用である。 こ の場合のリ ー ダ ー シップの共有とは, 両者の非営 利組織の意思決定への参加であり, 合意の形成過程への参加である。 後の 3 つの章では,. こ の代替モ デルを具体的 • 実践的に適用する場合のその意味と具体. 的 ・ 実践的な指針が示さ れる。 本稿では, 第 3 章までの理論的検討が甫要であるので, そ の理論の内容に限って詳 し く 紹介 し たが, 他は概説するだけに止めたい。. 第4章. 非営利組織の経営者の主要な リ. ー. ダー シ ッ プ戦略. 後半の 3 つの章では, リ ー ダ ー シップに関する代替モ デルの実践的な意味が考察され る。 こ れ ら の章では, 経営者がど う すれ ば組織の直面する諸問題に対 し てより有効に対処 で き るかを示唆 し ている。 こ の う ち 第 4 章では, 外部環境を理解 し , かつそれに影響を及ぽすための具体的な行動 指針が示さ れる。 存続のための資源を外部に依存する度合いが高い非営利組織では, 経営 者の創造的な境界連結活動が重要である こ とを指摘する。 - 12 3 ( 4 5 9 )-.
(10) 第44巻. 第3号. そうした創 造的な境界連結活動のためには, 「 統合的機能を果たすこと」「対外関係に時 間を割くこと」「インフォ. ー. マルな情報ネッ ト ワ ー クを築 くこと」 「自己 のアジェ ンダを知. ること」「多 元的・部分的な解決を受け入れること」「パ ワ 治的戦略 を開発 すること」 が必要であるとして, ここでは要するに,. のある理事会を創 ること」「 政. それぞれに言 及 している。. チ ー フエグゼクテ ィプが,. 心するのは必要不可欠であるが,. ー. その組織の内部の運営の効率性にまず専. それだけでは十 分ではない。 有能なチ ー フエグゼクテ ィ. プは, 組織を取り巻く境界を越 えて, 多 くの関係者やシステ ムに影響を及ば す必要がある。 その広 い接触 の範囲 は, 力なグルー プ に及ぶ。. 政府機関, 審 査機関,. 実業組合, 同類 の非 営利組織,. チ ー フエグゼクテ ィプが,. 境界の交叉 する世 界で働く時間を多 く使. うにしたがって, 交渉, コンフリ クト 解消 , 権限委譲 , 信頼 の確立, ワ. ー. その他の有. 情報の取得,. ネッ ト. ク構築 の多 くの技能が霞 要となる。 彼には, 異種の境界にいる人たち ー一 報道 関係者,. 議員 , 企業経営者, コ ミ ュ. ニ. らない。 また, 理事の欲 求,. テ ィの有力者など一―ー の性向 や動機を理解していなければな 関心, 資質, 参加に関して深 い理解を持ち ,. その組織の諸利. 益をどのように全体として高めるかを考えるような理事会を啓発 する技能も持たね ばなら ない。 つまり, 非 営利組織のチ ー フエグゼクテ ィプは, あり, 維持者として機能することである。. 理事会の統合者であり, 啓発 者で. そのためには, 次の第5 章の多 くの技能が必要. である。. 第 5 章 理事会を引き込み啓発する 理事会との共同活 動をより効率的に遂行したいと考えているチ ー フエグゼクテ ィプに対 して, 詳細 な手 引きを提供 している。 不適切 な理事会の運営を診 断する必要と,. 執行経営. 者と理事会が互いの有効性を高めるように協働する技能に習 熟 する必要を強調している。 有能な理事会を開発 するための基盤 としての使命の重要性と交換過程の重要性に対して特 に留 意をしており, 新しい理事の採用や指導に役立つ方法を提供 している。 具体的• 実践 的な技能に関して, 「 理事会の動きを理解する」「組織の使命を明確にする」 「理事の役割期 待に対応する」 「派閥を処 理する」 「新しい理事識 の採用に参加しその オ リ エ ンテ ー ショ ンをする」 などの指針を与えている。. 第6 章. 理事会中心 リ ー ダー シップの技能の習得. 有能なチ ー フエグゼクテ ィプというのは,. 変化する環境の中に組織の位置を定め, 理事. 会と共にまた理事会を通して活動するなかで, 資金源を開拓し, -124 (460 )-. 経営者と理事会の関係を.
(11) 「非営利組織における経営者リ. ダ ー シップ」 ( 堀田). ー. 制御するという課題に対応していることを明らかにしている。 ここでは, 「 理事会内部の諸 関係の相互作用を促進すること」 「理事会メ ンバー ヘ の配慮 と敬 意を示すこと」 「理事会と 共に変革 とイノ ベ ー ショ ンの青写真 を描 く こと」 「 理事会の能 力と生産性 を増進すること」 「理事会が機能 できる体制を創 り, 供すること」 の6 つの理事会リ. ー. その体制を持続させること」 「 理事会に役立つ情報を提 ダ ー シッ プ 技能 を解説し, こうした理事会中心 リ. ー. ダー. シッ プ を経営者が実行している範囲 を評価する方法を提供している。. あ. と が. き. 非営利組織の活動の現実は.. 伝統的かつ階層的なモ デ ルが示してきたよりも. ダ イナ. ミッ クである。 「奇妙な回路ともつれた関係」 という表 現が理事会とチ ー フエグゼ クテ ィ プ の間のより現実的な関係を表 している。 実際 には, 通常はリ. ー. ダ ー シッ プ は熟練 したチ ー. フエグゼ クテ ィプから始動し, 理事会に向 けられるものである。 非営利組織とそれが奉仕 する公共的機能 を成功させるためには,. この執行経営者によって活性 化された理事会が決. 定 的に重要なのであると結論する。 したがって,. チ ー フエグゼ クテ ィプがリ. ー. ダ ー シッ プ. の中心 を担うべきであるという挑戦 を彼ら自身 が受け入れるよう勧奨 しているのである。 なお. 資料 の中では. 理事の引退 やそれに類 する状況において, と理事会がリ. ー. チ ー フエグゼ クテ ィ プ. ダ ー シッ プ の機能 について忌憚 のない議 論を交 わ したり, 互いが協働する. ことをいかに求めるべきかを明らかにする指針とそれに関する質問票 が用意されている。 この点は,. ド ラッ カー の 「非営利組織の自己 評価手 法」[P. F. Drucker, The Drucker. Foundation self-Assessment Tool ForNonprofit Organization, 1993. (田 中弥生訳. ダ イヤ モ ンド 社, 1995. )] と比較 するのも興 味深 い。 以 上. 本書は次のように要約することができる。 これまで,. 非営利組織においては, 理事会に最高の権威と責任があり,. 織を指導するリ. ー. したがって, 組. ダ ー シッ プ も. 理事会が中心 であるという既 成の伝統的な観念が支配的. であって. 現実にも多く の非営利組織の経営者もそのような観念に束縛 されてきた。 しかし, 成功している非営利組織を研究 調査してみれば. 事会リ. ー. ダ ー シッ プ 概念とは別の経営者リ. ー. この種のいわ ゆ る伝統的な理. ダ ー シッ プ のあり方とその概念が浮 かび 上. がってく る。 現実に, 成功している非営利組織の経営者は,. 組織のト ッ プ にある理事会の. 権限と責任を明確にしながら, 自己 の職 務と理事会のそれを調整• 制御しながら,. さらに. 経営者自らが理事会の役割 を剌激 し向 上させる意識と実行能 力を保有しているのであっ た。 組織を指導して行く には. 理事会とチ ー フエグゼ クテ ィプが互いの役割 と責任の分担 - 1 25 ( 461 )-.
(12) 第44巻. を明確に理解し た上で, し て組織を動かし ,. 第 3号. チ ー フエグゼクティプが理事 会と共に機能し ,. そし て理事会を通. 組織の使命の達成 を推進し て行くのである。 この非営利組織のリ. ー. ダ ー シップのあり方が, 本書で提唱 する 「伝統的管理モデル」 に替わる新し い 「 代替モデ ル」 であり,. 非営利組織のリ. ー. ダ ー シップのあるべき姿 である。. このようなモデルを具現 し た主とし て本書が研究対象 とし たチ ー フエグゼクティプが, 現実にどのような非営利組織の複雑で特殊な環境— 外部依存 性が高いため によりオ ー プ ンシステムである環境— の中で, どのように理事会と協働する過程 を構築 し ながら, ど のように自己 のリ. ー. ダ ー シップを発 揮し て外部環境の変化に適応 し ,. 特に資金源の確保と. 理事会一経 営者の関係の統御という現今 の重要な課題をどのように解決するかについて, 理論的にモデルをもって説明し ,. あわせて,. そのため の具体的· 実践 的なマニ ュ アルと指. 針を示 し ているのである。. お. わ. り. に. アメ リ カにおける非営利組織の研究では. これまでサ ラモンらのジ ョ ンズ ホ プキンズ 大 学を中心とする国 際 比較 研究, Profit Organizations). セクター 論,. エー ル大学を中心とするPONPO (Program On Non. が日本でも知られているが, それらはどちらかと言えば制度論,. あるいは経済学の理論を用いた分析 で.. 経営学的分析 やマネジ メ ント の研究. については. あまり紹介されていない。 し かし 実際 には.. 非営利組織の経営についての研. 究は, それらの経済学的研究を凌駕 するほ どに蓄積 されている。 会計, 税 務. マー ケ ティング,. 資金調達などの実務的なものも含め るならば.. 非営利組. 織の経営に関するものは. 単 行本だけでもすぐに500 程度の書名 が検索 できるし , 研究成 果 発表 の中心である学術誌でも, 来年で10周 年を迎 える経営専門の 『非営利組織の経営と リ. ー. , 『ボランタス 』さら ダ ー シップ誌』をはじめ, 『非営利組織• 自発的活動セクター 誌』. : ョ ン ・ レヒ ュ に は 『パプ リ ッ ク ・ ア ド ミ ニ ス ト レー ノ Review) ,』 『ハ ー バー ド. ・. ビジ ネス・ レビュ. ーj. ー. (Public Administration. , PONPO のワ ー キングペ ー パー ! リ. ー. ズ. でも非営利組織の経営についての論文が多数に見 られる。 その内容 についても,. ハ. ウ ツ ー の実務書から組織科 学の最先端 を行くものまで幅広 く,. それぞれが充 実し ている。 本書は, こうし たアメ リ カにおける非営利組織の経営研究の充 実ぶりを如 実に示 すものである。 例えば, 著 者達の長年の調査や現場 経験 から. いくつか の事例を合成し たという 「北西部隣人センター 」 のケ ー スなどはあくまで平易 に描 かれて -12 6 ( 4 62) -.
(13) 『非営利組織における経営者 リ いるが ,. ー. ダ ー シップ」(堀田). それを材料 に展開される議 論には数々 の組織理論の成果が盛 り込 まれている。. 引. 用されている研究者の名 前 だけで も組織均衡 論, コンティンジェ ンシー 理論, 資源依存 モ デル,. パ. ワ. ー. 理論.. 組織間関係論.. 管 理者行動論.. そして多元目的モデル等 々 が盛 り込 ま. れていることが 理解で きよう。 また,. そうしたどちらかといえば営利企業を対象 に展 開された既存 の組織理論だけで な. < . 非 営利組織を対象 に展開された種々 の研究の成果も盛 り込 まれている。 一般 の組織論 で のフェ ファ. ー. やミ ンツ バー グのようには有名 で はないが . ミ ド ルト ン, ヤ ング, ゾ ー ル. ドなど非営利組織の分野 で著名 な研究者 達の研究成果も紹介されているし. 最初 に紹介し た著者 達自 身 の重要な諸研究の成果も含まれている。 とりわけ, 「ガバナンス」の点で は非 営利組織と営利企業で は所 有構造も管 理構造も異なり.. それが 非営利組織の経営に独特の. 課 題を生 じ させ るという認識 から, 著者達はチ ー フエグゼ クティプ と理事 会との関係に関 しては. 本書 に至 るまで にかなりの調査 研究を重ね てきている。 本書はそうした多くの理 論 の成果を土台 にした上で. 新たな非営利組織のリー ダ ー シップモデルを提 示するという 野心的な研究書で あるが , 同 時に,. 非営利組織の経営者と専門家や将来この道 を志 す学生. を対象 にして平易 に書 かれた啓蒙 書で もある。 こうした本書の性 質はまた, アメ リカにおける非営利組織経営の教育 事情にも関連して いる。 つまり本書は. 大学 や大 学院 で の 「非 営利組織経営」 の講座 のテキ スト のニ ー ズ に 応 えるという目的を持っ ているので ある。. 日本で は教育 , 福祉 , 医療 , 芸 術など, 特定の. 領域 ご との経営の講 座はあっても, 非営利組織経営の講座 はまだほ とんど見 られないし. ましてやその学位 などは出 されていないが .. アメ リ カで はすで に修士号 を出す教育 機関も. かなり存 在している。 例えば, 先 の 『 非営利組織の経営とリ. ー. ダ ー シップ誌』 を発行して. いるケ ー スウ ェ スタンリ ザー プ大学 の Master of Nonprofit Organizations , サ ンフラ ンシ スコ大 学の Master of Nonprofit Adm in is trations , レジス大 学の Master of Nonp rofit Manegement は,. エー ル大学.. ハー. をはじ めとし, その他非 営利組織関連のコー スを持つ大学院. バー ド大学 .. ジョ ンズ ホ プキ ンズ大学, コロンビア大学等 , 全米で. 約75 を数えるといわれる。 日 本に比 べるとアメ リカで は,. もちろんボランティアの数もはるかに多いが ,. に戦業 として非営利組織に携 わりまたは関与する人々 の数も多い。. それ以上. そうしたいわばプロ. フェ ショ ナルの養 成機関として, 非 営利組織のマスター コー スが ビジネススクー ルと同 じ 位置 で設 けられているので ある。. このような養 成機関で は. 即戦力 を身 につけさせ るため. に. いきおいより貝体的なケ ー スを題材にして分析 力, 判断力を培 わせ 理論化を修 得させ -127 (4 63)-.
(14) 第44巻. 第3 号. るとい う実践 教育 が主流 となる。 本書 は, まさに そうした意図と方向 に おい て組み立てら れた輿 味深 い 研究書で あり同時に恰 好の啓蒙書 で ある。 「 経済学」学. 「経営学」学と椰楡 されるほ ど学説や 理論の研究を志向 する日本の経済学. 経営学の世 界で は. 現実の経済,. 経営のことよりも, 一部の古典 を聖典 とし, その中 の特. 定部分の解釈 をめぐ って議 論したり. ような方法が評価されてきた。 織リ. ー. 隣接科 学や 時に は自然科 学の視点や 概念を応用する. しかし. 他方で.. 本書 のような事例研究を基礎として, 組. ダ ー シップとい う重要な経営管理の問題を理論的に そしてまた実践 的に 巧 みに 織り. 上 げた文献もそろそろ大い に 評価されてしかるべきで ある。. - 128 ( 464)-.
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