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中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編

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(1)中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編. 市川 英一 【前注・解説】.  本稿は,2002年12月23日に,中国の立法機i関である全国人民代表大会に上 程された中華人民共和国民法〔草案〕第8編「不法行為責任編」の全訳である。 本稿では,関連法律・法規等との異同・比較を注記しつつ,紹介していきたい。.  不法行為法の領域は,社会主義イデオロギーから比較的自由でいられるため か,中国においても独自の発展が見られる。.  中国で不法行為法の立法が本格化したのは改革・開放以降のことである1>。 1979年に最高人民法院により採択された司法解釈2)「民事政策・法律を徹底的. に施行することに関する意見」(全2章17ヶ条・失効)にその萌芽が見られ,. その後1984年に同じく最高人民法院により採択された「民事政策・法律の徹 底的な施行に係る若干の問題に関する意見」(全9章81ヶ条)3)を経て,1986. 年に制定・公布(翌87年施行)された「中華人民共和国民法通則」(全9章 156ヶ条)により,体系化された4)。同法の第6章(民事責任)の第3節(不法. 行為に関する民事責任)に合計17ヶ条の不法行為規定が置かれた。いずれも 素朴な原則的規定ではあるが,人格権侵害(第120条),製造物責任(第122条),. 高度危険作業責任(第123条),環境汚染責任(第124条)等,本草案の不法行 為規定の原点となる規定が設けられている。ただ,「民法通則」においては,. 不法行為責任は,同責任と違約責任と包含する「民事責任」という上位概念の.                                 111.

(2)  横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月). 下に,位置付けられていた5)。.  その後,80年代末から90年代にかけて,これらの原則的規定を具体化する 個別立法が相次いで制定された。89年に公布・施行された「中華人民共和国 環境保護i法」(全6章47条)を皮切りに6),「中華人民共和国製造物品質法(原. 語:産品質量法)」(1993年公布施行・2000年改正,全6章74ヶ条)7),中華人 民共和国消費者権利利益保護法(原語:消費者権益保護i法)」(1993年公布・. 94年施行,全8章55ヶ条)8),「医療事故処理条例」(2002年公布・施行,全7 章63ヶ条),「交通事故処理手続規定」(2004年発布・施行,全10章75ヶ条). 等の法律・行政法規が相次いで制定され,不法行為責任に関する個別規定が整. 備されていった。特筆すべきは1994年に制定・公布(翌95年施行)された 「中華人民共和国国家賠償法」(全6章35ヶ条)であり,同法により国家機関お よび同機関の業務要員による公民・法人等への不法行為に対する国家賠償の道 が開かれた。さらに2003年には,最高人民法院による司法解釈であるが,「人. 身損害賠償案件の審理に適用される法律に係る若干の問題についての解釈」 (全36ヶ条)が採択され(翌2004年施行),安全配慮義務に係る責任を含む12 の不法行為類型に関する責任規定が設けられ,人身損害賠償に係る詳細な規定. が設けられたのみならず,これまで地方法規のレベルで認められてきた慰謝料 (同解釈では「精神損害撫慰金」という言葉が用い・られている)が,国レベル の法規範で初めて法文化された9>。.  こうした立法および法実務の蓄積,および1998年から開始された学者グル ープによる民法典私案起草を経て制定されたのが本不法行為責任章案である が,本草案には次のような特色が認められる。.  第一に,不法行為法が債権法から切り離され,独立した編を設けて規定され たこζが挙げられる。この点は,本草案の叩き台となった学者グループ起草に よる私案を巡る議論でも争われたところであるが,本草案の起草者は,不法行 為法を債権法から切り離し,さらに人格権法を分離させるという道を選んだ10)。. それに応じて,民事責任という概念と決別し,不法行為責任という概念に統一 112.

(3)                   中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編 した。.  第二に,法律の構造上,すべての不法行為を概括する一般条項を規定した上 で詳細な不法行為類型を定めるという米国流を採用せず,不法行為の一般条項 を用いて一般の不法行為について規定し,特別な条文規定を設けて特殊な不法 行為について規定するという独仏流を採用した点である。この点についても, 学者起草による私案段階から争われてきたが,最終的に本草案起草者は後者の’ 道を選んだ11)。.  ただ,特殊の不法行為として本草案に規定されている不法行為類型を見ると,. 「民法通則」に規定された不法行為類型の枠内に留まっており,既存法律との. 継続性に意を用いすぎるきらいがある点に不満が残る。本草案では安全配慮義 務に関する規定も散見されるが,最近中国では生産に係る事故が多発し社会問 題化していることにかんがみれば,安全配慮義務に関するより踏み込んだ規定 を設けてもよかったように思われる。同じく社会問題化している役人による不 法な土地収用等政府機関要員による公民に対する不法行為についても,公民の. 権利保護の観点から規定が設けられることが望まれる。学者グループによる私 案では規定されていた使用者責任に関する規定が、本草案では完全に脱落して いるのは、いかなる理由によるのであろうか?特別法では規定しにくい第三者 による債権侵害に関する規定も盛り込んで欲しかったが,議論が進んでいない ためか,見送られている12)。学者グループによる私案では専門家の責任に関す. る規定,懲罰的損害賠償に関する規定なども設けられていたが,これらについ ても見送られている。.  なお,不法行為責任編は,物権編同様,不法行為法という個別の法律として 先行立法化することがすでに決定されており,本年度の立法計画にも組み込ま れているが,肝心の物権法の制定が難航しているため,不法行為法の審議が進 んでいないのが現状である13)。. (2006年10月6日脱稿) 113.

(4) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月).      中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編14)      (全国人民代表大会法制工作委員会2002年10月起草). 第1章 一般規定 第2章 損害賠償 第3章 違法性阻却事由. 第4章 自動車事故責任 第5章 環境汚染責任 第6章 製造物責任 第7章 高度危険作業責任 第8章 動物による人への侵害についての責任 第9章 物による人への侵害についての責任 第10章 不法行為責任の主体に関する特別規定. 第1章 一般規定  第1条(不法行為の基本規定).  1 故意又は過失により他人の人身または財産に損害を及ぼす者は,不法行 為責任を負わなければならない。.  2 法律の規定に従い,不法行為者に故意又は過失があることが推定される ときは,被害者は不法行為者の故意又は過失を証明することを要しない。不法 行為者は,自らに故意又は過失がないことを証明したときは,不法行為責任を 免れる。. :第2条(法律の規定による例外).  故意又は過失がない場合においても,法律の規定により不法行為責任を負う ことを要するときは,不法行為責任を負わなければならない。  第3条(共同不法行為) 114.

(5)                   中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編.  二人以上の者炉共同で不法行為を行い他人に損害を及ぼすときは,連帯して 責任を負わなければならない。.  第4条(不法行為責任の負担方法!ヒ.  1不法行為責任の負担方法には,主として以下のものがある。  (1)侵害の停止  (2)妨害の排除  (3)危険の除去  (4)財産の返還  (5)原状回復  (6)修理,作り直し及び交i換.  (7)損害賠償  (8)影響の除去及び名誉の回復  (9)謝罪.  2 以上の不法行為責任負担方法については,そのいずれかを適用すること, 及び複数を同時に適用することができる。  第5条(因果関係).  1被害者は,侵害行為と損害との間に因果関係が存在することを証明しな ければならない。.  2 法律の規定に従い,不法行為者が因果関係の不存在の証明を要する場合 において,不法行為者がこれを証明できないときは,因果関係は存在するもの とみなす。.  第6条(権利主体).  被害者が死亡したときは,被害者の配偶者,父母及び子は,不法行為者に対 し,不法行為責任を負うことを要求する権利を有する。被害者に配偶者若しく は子がないとき,又は配偶者,父母若しくは子が死亡したときは,・被害者の兄. 弟姉妹,外祖父母,孫及び外孫は,不法行為者に対し,不法行為責任を負うこ とを要求する権利を有する。.                                  115.

(6) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月).  第7条(特別法の適用).  不法行為に関する内容,責任負担方法,免責事由等について,製造物品質法, 環境保護法等の法律に別段の規定がある場合は,その規定に従う。. 第2章損害賠償  第8条(損害賠償の基本規定).  不法行為者は,他人の人身又は財産に損害を及ぼしたときは,損害を賠償し なければならない。.  第9条(救済行為).  他人の人身又は財産が侵害されるのを防止又は制止しために救済者が損害を. 被ったときは,不法行為者がその損害を賠償する責任を負うものとする。受益 者も適当な補償をすることができる。  第10条(賠償すべき損害の範囲).  他人の人身を侵害して傷害を負わせた者は,医療費・休業損害等の合理的な. 費用を賠償しなければならない。被害者に障害が残ったときは,身障者用装 具・器具購入費および後遺障害逸失利益が同時に賠償されなければならない。. 被害者が死亡したときは,葬儀費用及び死亡逸失利益が同時に賠償されなけれ ばならない。.  第11条(休業損害等の算定基準).  休業損害,後遺障害逸失利益及び死亡逸失利益は,被害者の労働能力喪失状 況,、年齢,学歴,職業,収入等の要素に基づき,これを定めなければならな い。.  第12条(後続損害).  被害者が賠償を受けた後に新たに発病し又は健康が著しく悪化し,賠償額で は損害を填補できないことが明らかな場合において,不法行為者の行為との因 果関係が証明されたときは,被害者は;賠償費用の増額を請求する権利を有す 116.

(7)                  中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編 るQ.  第13条(人格的利益の侵害).  不法行為者は,他人の氏名権,名誉権,肖像権,プライバシー権等を侵害し たときは,これにより獲得した利益に応じて賠償しなければならない。不法行 為者は,被害者の損害額に応じて賠償することもできる。不法行為者が獲得し た利益又は被害者の損害額を確定できないときは,不法行為の情状に応じて, 10万元以下の賠償がなされなければならない。  第14条(財産権の侵害).  1他人の財産が横領されたときは,当該財産が返還されなければならない。 財産の返還が不能なときは,価格賠償されなければならない。.  2他人の財産が損壊されたときは,原状回復または価格賠償されなければ ならない。.  3 被害者が財産侵害によりそれ以外の重大な損害を被ったときは,不法行 為者は,その損害も賠償しなければならない。  第15条(物権行使の侵害).  不法行為者は,他人による物権の行使を妨害して損害を及ぼしたときは,損 害を賠償しなければならない。.  第16条(慰謝料の賠償).  被害者は,人格権を侵害されたとき又は人格の象徴的意義を有する特定の物 品を殿損されたときは,慰謝料(原語:精神損害賠償)を請求する権利を有す る。.  第17条(慰謝料の算定方法).  慰謝料の具体的金額は,以下の要素に基づきこれを定めなければならない。  (1)不法行為者の故意・過失の程度  (2)侵害の手段,態様,行為方式等の具体的情状  (3)不法行為により生じた結果  (4)不法行為者の利益獲得状況.                                 117.

(8) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月).  (5)責任を負担する不法行為者の経済力  (6)受訴裁判所の所在地の平均的生活水準  第18条(損害賠償費の支払方法).  損害賠償費は,一括してこれを支払わなければならない。一括払いがどうし ても困難なときは,定期的にこれを支払うことができる。  第19条(損益相殺).  同一の不法行為により損害を被ると同時に,被害者も利益を受けるときは, 関連する法律の規定に従い,賠償額の中から控除を要する利益が控除されなけ ればならない。.  第20条(損害の公平な分担).  生じた損害について当事者に故意又は過失がないときは,実際の状況に基づ き,当事者が損害を分担することができる。. 第3章違法性阻却事由  第21条(正当防衛).  正当防衛により損害を及ぼした者は,不法行為責任を免れる。必要な限度を. 超えて正当防衛を行い,回避可能な損害を及ぼした者は,応分の不法行為責任 を負わなければならない。.  第22条(緊急避難).  緊急避難により損害が生じたときは,危険な状況を発生させた者が不法行為 責任を負うものとする。危険が自然的原因により生じたときは,緊急避難者は,. 不法行為責任を免れ,又は応分の不法行為責任を負うものとする。緊急避難者 は,緊急避難により講じた措置が不当なため又は必要な限度を超えたため,回. 避可能な損害を及ぼしたときは,応分の不法行為責任を負わなければならな い。.  第23条(自力救済) 118.

(9)                  中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編.  1 自らの合法的な権利利益が不法に侵害され,関係部門による介入の請求 が間に合わない場合において,措置を講じないと自らの合法的権利利益を保護 することが困難なときは,権利者は,合法的な自力救済措置を講じ,不法行為 者の人身に必要な制限を加えること又は不法行為者の財産を差し押さえること ができる。但し,遅滞なく,関係部門にこれを通知しなければならない。.  2 錯誤により自力救済行為を行ったため又は講じた自力救済措置が不当な ため損害を及ぼした者は,不法行為責任を負わなければならない。  第24条(過失相殺).  損害の発生について被害者にも故意又は過失があるときは,不法行為者の不 法行為責任を軽減することができる。. 第4章 自動車事故責任15)  第25条(自動車対非自動車・人による事故の責任).  1 運行中の自動車が自動車以外の車両又は通行人に損害を及ぼした場合に おいて,すでにその自動車に第三者強制責任保険16)が付保されているときは,. 保険会社が保険金額の範囲内でこれを賠償するものとする。損害額が付保金額 を超える部分については,自動車の保有者が損害賠償責任を負うものとする。 但し,自らが高度の注意義務を尽くしたことを加害自動車の保有者が証明した. ときは,その保有者の損害賠償責任を軽減し又はこれを免除することができ る。.  2 運行中の自動車が自動車以外の車両又は通行人に損害を及ぼした場合に おいて,その自動車に第三者強制責任保険が付保されていないときは,自動車 の保有者は損害賠償責任を負わなければならない。但し,自らが高度の注意義. 務を尽くしたことを加害自動車の保有者が証明したときは,その保有者の損害 賠償責任を軽減し又はこれを免除することができる。. (第二案:封鎖されている道路を運行中の自動車が他人に損害を及ぼした場合.                                 119.

(10) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月). において,自動車の保有者に故意又は過失があるときは,その保有者は損害賠. 償責任を負わなければならない。封鎖されていない道路を運行中の自動車が他 人に損害を及ぼした場合において,自らに故意又は過失がないことを自動車の 保有者が証明できないときは,その保有者は損害賠償責任を負わなければなら ない。).  第26条(自動車対自動車による事故の責任).  1 自動車間の衝突により他人が損害を被った場合において,自動車に第三 者強制責任保険が付保されているときは,保険会社が保険金額の範囲内でこれ を賠償するものとする。損害額が三保金額を超えている部分については,故意 又は過失のある一方の自動車の保有者が損害賠償責任を負うものとする。.  2 自動車間の衝突により他人が損害を被らた場合において,自動車に第三 者強制責任保険が付保されていないときは,故意又は過失のある一方の自動車 の保有者が損害賠償責任を負うものとする。.  第27条(賃貸借・ファイナンスリースにより賃借された自動車による事故 の責任).  1 賃貸借または使用貸借されている自動車が運行中に他人に損害を及ぼし たときは,自動車の保有者と賃借人言は借用者が連帯して責任を負うものとす る。自動車の保有者は,損害の発生について故意又は過失がないときは,被害 者に賠償した後,賃借人又は借用者に求償することができる。.  2賃借人は,ファイナンスリースを使用して賃借した自動車を運行中に他 人に損害を及ぼしたときは,不法行為責任を負うものとする。  第28条(窃取された自動車による事故の責任).  窃取者は,窃取した自動車の運行中に他人に損害を及ぼしたときは,不法行 為責任を負わなければならない。但し,自動車の管理につきその保有者に過失 があったときは,保有者が填補賠償責任を負わなければならない。  第29条(修理・寄託・質入期間中の事故の責任).  自動車の修理,寄託または質入期間中に,修理業者,受寄者又は質権者が無 120.

(11)                  中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編. 断でこれを運転して他人に損害を及ぼしたときは,これらの者は不法行為責任 を負わなければならない。.  第30条(分割払いによる自動車売買における占有移転後の事故の責任)  分割払いにより売買された自動車の占有が買主に移転した後に,運行中の自 動車が他人に損害を及ぼしたときは,買主が不法行為責任を負うものとする。. 第5章 環境汚染責任17)  第31条(環:境汚染による人身・財産損害責任).  環境汚染により他人の人身又は財産が侵害されたときは,関係単位18>又は個. 人は,不法行為責任を負わなければならない。但し,法律の規定に免責事由の 定めがあるときは,その規定に従う。  第32条(汚染物排出者の無過失責任).  関係単位又は個人は,汚染物の排出が所定の基準を満たしている場合でも,. それにより他人に明らかな損害を及ぼしたときは,不法行為責任を負わなけれ ばならない。.  第33条(因果関係のみなし規定).  汚染を引き起こした単位又は個人が汚染行為と損害との間に因果関係が存在 しないことを証明できないときは,因果関係が存在するものとみなす。  第34条(汚染源不明の場合の責任).  環境汚染により他人が損害を被った場合において,実際の加害者を特定でき ないときは,損害とかかわりのある汚染物排出単位又は個人が排出量の割合に 応じて,応分の不法行為責任を負うものとする。. 第6章 製造物責任19) 第35条(製造物責任・免責事由) 121.

(12) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月).  1 製品に欠陥が存在するために他人の人身又は財産に損害が生じたときは, その生産者は不法行為責任を負わなければならない。.  2 生産者は,次の各号に掲げる事項が存在することを証明したときは,不 法行為責任を免れる。.  (1)製品を流通に投入していないこと。.  (2)製品の流通投入時には,損害を引き起こした欠陥がいまだ存在してい    なかったこと。.  (3)製品の流通投入時の科学技術水準では,欠陥の存在をいまだ認識でき    なかったこと。  第36条(販売者の責任).  1 販売者は,自らの故意又は過失により製品に欠陥が生じたため,他人の. 人身又は財産に損害を及ぼしたときは,不法行為責任を負わなければならな い0.  2 販売者は,欠陥製品の生産者及び同製品の供給者を特定できないときは, 損害賠償責任を負わなければならない。  第37条(損害賠償請求権の行使・求償関係).  1 製品に存在する欠陥により他人の人身又は財産に損害が生じたときは, 被害者は,製品の生産者及びその販売者に賠償を請求することができる。.  2 製品の欠陥が生産者により引き起こされた場合において,販売者が賠償 したときは,販売者は,賠償後,生産者に求償する権利を有する。.  3 販売者の故意又は過失により製品に欠陥が生じた場合において,生産者 が賠償したときは,生産者は,賠償後,販売者に求償する権利を有する。  第38条(説明責任).  製品の説明に誤りがあったために他人の人身又は財産に損害が生じたとき は,製品の生産者及び販売者は,連帯して不法行為責任を負わなければならな い。但し,人身又は財産損害が被害者の不当な使用等の原因に起因する場合は, この限りではない。 122.

(13)                   中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編.  第39条(危険責任).  製品の欠陥によりその使用者又は第三者の人身又は財産の安全が著しく脅か されたときは,その使用者又は第三者は,その生産者又は販売者に対し,危険 の除去,妨害の排除等の不法行為責任を負うことを要求する権利を有する。.  第40条(製品に欠陥を生じさせた第三者と生産者・販売者との求償関係)  運送人,受寄者等の第三者の故意又は過失により製品に欠陥が生じたため,. 他人の人身又は財産が損害を被ったときは,製品の生産者又は販売者は,賠償 後,当該第三者に求償する権利を有する。. 第7章 高度危険作業責任  第41条(高度危険作業責任).  高所・高圧での作業,可燃物・起爆物・猛毒物・放射性物質取扱作業等周囲 の環境に高度な危険を生じさせる作業により他人に損害を及ぼした者は,不法 行為責任を負わなければならない。但し,損害が被害者の故意又は不可抗力に より生じたことが証明された場合は,この限りではない。  第42条(スペースシャトル・航空機の運行責任).  スペースシャトル又は航空機の運航中に他人が損害を被ったときは,スペー. スシャトル又は航空機の作業員は,不法行為責任を負わなければならないd但 し,損害が被害者の故意により生じたものであることをスペースシャトル又は 航空機の作業員が証明した場合は,この限りではない。  第43条(核物質の所有者・事業者責任).  核施設中の又は核施設への輸送中の核燃料,核廃棄物その他の核物質の放射 性,猛毒性,起爆性その他の危険1生により他人が損害を被ったときは,核施設 の所有者又は国から授権された事業者は,不法行為責任を負わなければならな い。但し,損害が被害者の故意により生じたものであることを核施設の所有者 又は国から授権された事業者が証明した場合は,この限りではない。.                                  123.

(14)  横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月).  第44条(高圧エネルギーの所有者・占有者・管理人の責任)  高圧で製造・貯蔵・輸送された電力・液体・ガス・蒸気等の高圧作用により. 他人が損害を被ったときは,それらの所有者,占有者又は管理人は,不法行為 責任を負わなければならない。但し,、損害が被害者の故意又は不可抗力により. 生じたものであることをこれらの者が証明した場合は,この限りではない。  第45条(高度危険物の所有者・占有者・管理人の無過失責任).  製造,加工,使用され又は利用中の可燃物,起爆物,猛毒物,放射性物質等 の高度危険物の物的危険性により他人が損害を被ったときは,高度危険物の所. 有者,占有者又は管理人は,不法行為責任を負わなければならない。但し,損 害が被害者め故意又は不可抗力により生じたものであることをこれらの者が証 明した場合は,この限りではない。.  第46条(高度危険物輸送中の事故の責任).  1 所有者,占有者又は管理人の間で輸送される可燃物,起爆物,猛毒物, 放射性物質等の高度危険物の物的危険性により他人が損害を被ったときは,高 度危険物の所有者,占有者又は管理人は,被害者に対し,連帯して不法行為責 任を負わなければならない。この場合,実際に責任を負った一方は,契約法の 責任の帰属に関する規定20)に従い,相手方に求償することができる。.  2 輸送中の高度危険物の危険性により損害が生じた場合において,運送人 が損害の発生について自らに故意又は過失がないことを証明できないときは, 運送人は連帯して不法行為責任を負わなければならない。.  第47条(高度危険物の所有者等による抗弁の禁止・損害惹起物不明の場合 の責任).  1 可燃物,起爆物,猛毒物,放射性物質等の高度危険物の危険性により他 人が損害を被ったときは,高度危険物の所有者は,自らは占有しているだけ使 用していない場合であっても,不法行為責任を負わなければならない。.  2 貯蔵されている可燃物,起爆物,猛毒物,放射性物質等の高度危険物を 他人に引き渡した場合において,その危険性により他人が損害を被ったときは, 124.

(15)                   中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編. 高度危険物の所有者及び貯蔵者は,自らは使用していない場合であっても,連 帯して不法行為責任を負わなければならない。.  3 一括して貯蔵されている所有者の異なる高度危険物の危険性により他人 が損害を被った場合において,損害が自らの所有物により生じたものではない ことを証明できないときは,受寄者と各所有者が連帯して責任を負うものとす る。.  第48条(列車の運行者の責任).  列車の運行中に他人が損害を被ったときは,列車の作業員は不法行為責任を 負わなければならない。但し,損害が被害者の故意又は不可抗力により生じた ものであることが証明された場合は,この限りではない。損害の発生につき被 害者に過失があったことを列車の作業員が証明したときは,その不法行為責任 を軽減しなければならない。.  第49条(高度危険作業者と同作業を惹起した者との求償関係)  第三者の故意又は過失により生じた高度危険作業により他人が損害を被った 場合において,高度危険作業員が賠償したときは,その作業員は,賠償後,当 該第三者に求償する権利を有する。.  第50条(遺失・放棄された高度危険物の所有者等の責任).  1 遺失した高度危険物の危険性により他人が損害を被ったときは,その所 有者又は遺失者が不法行為責任を負うものとする。.  2 放棄された高度危険物の危険性により他人が損害を被ったときは,その 原所有者又は放棄した者が不法行為責任を負うものとする。  第51条(高度危険物の不法占有者の責任).  不法に占有されている高度危険物により他人が損害を被ったときは,不法占 有者が不法行為責任を負うものとする。当該危険物の所有者は,他人による高. 度危険物の不法占有の防止について自らが高度の注意義務を尽くしたことを証 明できないときは,填補賠償責任を負わなければならない。.  第52条(高度危険活動区域内への無許可侵入者に対する責任)                                   125.

(16) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月).  法の定めるところにより画定された高度危険活動区域内又は高度危険物保存 区域内において,他人が許可を受けることなくその区域に侵入して損害を被っ た場合において,高度危険作業員が十分な安全措置を講じ,十分な警告・保護 義務を尽くしたときは,同作業員は,被害者が当該区域内で被った損害につい て,不法行為責任を免れる。. 第8章 動物による人への侵害についての責任  第53条(動物の飼育者・管理人の責任).  飼育されている動物が他人に損害を及ぼしたときは,動物の飼育者又は管理 人は,不法行為責任を負わなければならない。但し,損害が被害者の故意又は 過失により生じたことを動物の飼育面出は管理人が証明した場合は,この限り ではない。第三者は,自らの故意又は過失により損害を及ぼしたときは,不法 行為責任を負わなければならない。.  第54条(自然保護区域内の野生動物管理単位の責任)  自然保護区内の野生動物が他人に損害を及ぼしたときは,、その管理単位が賠. 償責任を負うものとする。但し,損害が被害者の故意又は過失により生じたこ とを管理単位が証明した場合は,この限りではない。第三者は,自らの故意又 は過失により損害を及ぼしたときは,不法行為責任を負わなければならない。. 曳. 126.

(17) 中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編. 第9章 物による人への侵害についての責任  第55条(建物工作物所有者・管理人の責任).  建物その他の施設,又は建物上の放置物又は掲揚物の倒壊,脱落,墜落によ り他人が損害を被ったときは,その所有者又は管理人は,不法行為責任を負わ なければならない。但し,自らに故意又は過失がないことを証明した場合は, この限りではない。.  第56条(建物工作物占有者の責任).  建物の中から放1鄭された二又は建物から脱落若しくは墜落した物により人に. 損害が生じた場合において,実際の不法行為者を特定できないときは,その建 物の使:用者全員が不法行為責任を負うものとする。但し,自らが実際の不法行 為者ではないことを使用者が証明した場合は,この限りではない。  第57条(積載物積載者の責任).  積荷が倒壊して他人が損害を被った場合において,積載時に自ら合理的な注 意義務を尽くしたこと又は積荷について管理義務を果たしたことを積載者が証 明できないときは,積載者は不法行為責任を負わなければならない。  第58条(公共道路上の障害物設置者の責任).  公共道路上に通行を妨害する障害物が設置されたため他人が損害を被ったと きは,その設置者は不法行為責任を負わなければならない。.  第59条(林木・果樹の所有者・管理人の責任).  林木の切断又は果実の落下により他人が損害を被った場合において,林木又 は果実の所有者又は管理人が自らに故意又は過失がないことを証明できないと きは,その所有者又は管理人は不法行為責任を負わなければならない。.  第60条(営造物の施工者・地下施設の管理人の責任).  1公共施設,道端又は道路上に掘穴,改修,地下施設の設置等が行われた 場合において,人目につく標識が設置されず,安全措置が講じられていないた め,他人が損害を被ったときは,施工者は不法行為責任を負わなければならな.                                 127.

(18) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月). いQ.  2 地下室等の地下施設により他人が損害を被った場合において,地下施設 の管理人が自ら管理義務を尽くしたことを証明できないときは,管理人は不法 行為責任を負わなければならない。. 第10章 不法行為責任の主体に関する特別規定  第61条(民事行為無能力者・制限民事行為能力者の責任能力,後見人の責任).  1 民事行為無能力者又は制限民事行為能力者の行為により他人が損害を被 ったときは,その後見人が不法行為責任を負うものとする。.  2 財産を有する民事行為無能力者又は制限民事行為能力者の行為により他 人が損害を被ったときは,行為者本人の財産の中から賠償費用を支払うものと する。不足部分については,後見人がこれを賠償する。  第62条(法人の責任).  1法人の業務要員によ・る職務執行により他人の人身又は財産が侵害された ときは,法人は不法行為責任を負わなければならない。.  2 法人は,賠償後,損害を引き起こした故意又は過失のある業務要員に対 し,求償することができる。.  第63条(ウェブサイト経営者の責任 その1).  ウェブサイトの経営者が同サイトのユーザーによる同サイトを通じた不法行 為の存在を明らかに知っているにもかかわらず,又は権利者から警告を受けた にもかかわらず,なおも権利侵害内容の削除等不法行為による効果を除去しな いときは,ウェブサイトの経営者と当該ユーザーが連帯して責任を負うものと する。.  第64条(ウェブサイト経営者の責任 その2)  ウェブサイトを通じて不法行為を行ρたユーザーの登録データの提供を権利 者が要求する場合において,同サイトの経営者が正当な理由なく提供を拒絶す 128.

(19)                   中華人民共和国民法〔草案〕・層不法行為責任編. るときは,その経営者は,応分の不法行為責任を負わなければならない。.  第65条(旅館・銀行・列車の所有者・経営者の責任).  1 旅館若しくは銀行の利用者又は列車の乗客が旅館,銀行又は列車内で他 人に侵害されたときは,不法行為者が不法行為責任を負わなければならない。.  2 不法行為者を特定できない場合又は不法行為者に賠償責任負担能力がな い場合において,旅館,銀行又は列車の所有者又は経営者が保護義務を尽くし たときは,これらの者は賠償責任を免れる。保護義務を尽くさなかったときは, 賠償填補責任を負わなければならない。  第66条(不法行為の教唆者の責任).  1 他人を教唆して不法行為を行わせた者は,共同不法行為者であり,連帯 して不法行為責任を負わなければならない。.  2 制限民事行為能力者を教唆して不法行為を行わせた者は,共同不法行為 者であり,主要な責任を負わなければならず,制限民事行為能力者の後見人と 連帯して,不法行為責任を負わなければならない。.  3 民事行為無能力者を教唆して不法行為を行わせた者は,共同不法行為者 であり,不法行為責任を負わなければならない。.  第67条(加害者の特定可否の場合における共同不法行為者の責任)  二人以上が同時に同種の危険行為を行い,そのうちの一人又は数人の行為に より他人が損害を被った場合において,行為者が実際の不法行為者を証明した ときは,その不法行為者が不法行為責任を負うものとする。行為者が実際の不 法行為者を証明できないときは,行為者は連帯して不法行為責任を負うものと する。.  第68条(複数加害による同一損害発生の場合における各不法行為者の責任)  二人以上の個別行為により同一の損害が生じた場合において,責任の大小を. 特定できるときは,各自が応分の不法行為責任を負わなければならない。責任 の大小を特定できないときは,等分の不法行為責任を負わなければならない。. 129.

(20) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月) 1). 改革開放前期における中国不法行為法の動向について論じたものとして,段匡「中国不法行 為法に関する若干の考察一日本との比較(1)∼(4・完)」東京都立大学法学会雑誌第32巻. 第2号,第33巻第1号,第33巻第2号,第34巻第1号が,またその後の中国社会の動向と関 連付けながら中国の不法行為法について論じたものとして,其木提「中国社会の変容と不法 行為法:過渡期におけるその多元性(1)∼(4・完)」北大法学論集第51巻第5号,第6号,. 第52巻第1号,第2号を挙げる。 2). 三権分立を否定して民主集中制を採用する中国では,複数の法規範定立のチャンネルが存在 する。法律制定権限を有する立法機関である全国人民代表大会および同常務委員会のほかに,. 行政法規制定権限を有する行政機関である国務院およびその各部門,さらには地方法規制定 権限を有する地方人民代表大会および同常務委員会,自治条例・単行条例制定権限を有する 少数民族自治区人民代表大会が存在する(自治条例・単行条例については,芒病夫(マン・ ライフ)「民族自治地方の立法自治権の現状と課題一内モンゴル自治区牽中心に一」一橋法. 学第5巻第3号に掲載予定が詳しい。同論文には人民代表大会と同常務委員会との関係につ いても考慮されており,示唆に富む)。. これらの法規範相互の序列については,2000年に公布・施行された「中i華人民共和国立法法」. に規定が設けられているが,この枠外にある司法機関の頂点に立つ中国最高人民法院(日本 の最高裁に相当)により公布される司法解釈も,「有権解釈(権限を有する解釈)」と呼ばれ. て法規範性を有しており,事実上の法創造が行われているp 3). 全81ヶ条中10ヶ条が不法行為に当てられている。. 4). 「民法通則」の邦訳は多いが,ここでは中国研究所編『中国基本法令集』(日本評論社〔東 京〕・.1988年)所収を挙げる。同書は,今では改廃された80年代の各種中国法令訳が掲載 されているのみならず,専門家による解説が付されており,貴重な資料集である。. 5). 1988年には全200ヶ条から成る司法解釈「『中華人民共和国民法通則』の徹底的な施行に係 る若干の問題に関する意見(試行)」が最高人民法院により採択され,「民法通則」の不法行 為規定がさらに具体化された。. 6). 中国環境法関連の文献は枚挙に暇がないが,比較的最近のものとして,片岡直樹「中国にお. ける環境汚染被害に対する民事責任の理論状況について」東京経済大学・現代法学第3号所 収を挙げる。 7). 同法は中国における製造物責任法であるが,ただし中国では製造物責任法は民法の特別法で はなく「経済法」に分類される。ここでいう「経済法」は,日本でいうところの経済法とは 似て非なるものである。すなわち,中国の経済法は,「社会全体の利益に立って国が市場に 関与し統御することから生じた社会経済関係を規律する法規範の総称」である(『岩波現代 中国事典』[館谷知史教授執筆部分])。この両者はこれまでしばしば混同されてきたが,そ. の点について,清水誠『時代に挑む法律学一市民法学の試み一』(日本評論社〔東京〕・ 1992年)27頁参照。. なお,中国の製造物責任については,包括的研究として,歯舌明「中国製造物責任の研究 (1)∼(7・完)」名古屋大学法政論集第180号,第181号,第184号,第185号,第187号,. 第188号,第189号所収が,無過失責任の内実からアプローチしたものとして,崔光B「中 130.

(21) 中華人民共和国民法〔草案〕・不法行為責任編 国製造物責任法における無過失責任の受容と変容(1)∼(3・完)」北大法学論集第54巻第. 5号,第6号,第55巻第2号がある。 なお,2000年改正法の邦訳として,清河雅孝「改正中国製造物責任法.:資料中国法(45)」. 産大法学第34巻第4号所収がある。 8). 同法は人格権侵害に関する損害賠償規定を法文化したものとして,特筆される。なお,関連 法規を織り込みつつ同法を紹介したものとして,拙稿「国家法,行政法規からみた中国消費 者法の発展」本誌第11巻第2号所収がある。. .9). 地方法規レベルでの慰謝料規定の変遷について紹介したものとして,拙稿「上海における先 進的消費者保護法の制定(上)」国際商事法務第31巻第10号1437頁参照。 なお,中国における慰謝料(精神的損害賠償)について詳細に論じたものとして,宇田川幸 則「中国における精神損害に対する金銭賠償をめぐる法と実務(1)∼(3・完)」北大法学. 論集第47巻第4号,第5号,第48巻第2号所収がある。また,学位論文ではあるが,日本法 と比較しつつ論じた中国人実務家による論稿として,学位論文ではあるが,王麗麗「慰謝料 制度に関する比較研究一日・中両国を中心に,比較法的観点から一」(横浜国立大学国際経 済法学修士学位論文)がよく整理されている。 10). 人格権編については,次回本誌上で紹介する予定である。. 11). 楊立新「進展与問題一命頭大常面会第一次審議的《民法典草案》 “侵権責任法”」同『民. 法判解研究与適用 第7集』(人民法院出版社〔北京〕・2004年)40頁以下。同著者による. 中国の不法行為法史に関する論稿「中国侵送行為法的百年歴史及点在新世紀的発展」 (www。ccelaws.com/int/artpage/2/art_1189.htm)も参考になる。 12). 中国における第三者による債権侵害について,日本法・アメリカ法との比較を踏まえ,判例 分析を織り込んだすぐれた中国人実務家による論稿として,学位論文ではあるが,許更「第 三者による債権侵害法理の研究」(横浜国立大学国際経済法学博:士学位論文)’がある。. 13). 本草案の叩き台となった学者グループ起:草私案の不法行為編担当者による日本での講演録と. して,幽遠「中国民法・不法行為法の起草について(講演)」早稲田大学・比較法学士36巻 第2号所収がある。 14). 本草案の原文の出典は「法律思想網」(www.law−th量nkercom)である。なお,訳文中の1,2,. 3は第1項,第2項,第3項を指す 15). 本草案の叩き台となった学者グループによる私案「中華人民共和国民法建議稿」の責任者で ある梁慧星先生は,かつて私に,「日本の『自動車損害賠償保障法』はとても良い法律だと. 思っています。中国でもこのような法律を是非作りたい」と語って下さったことがある (1998年10月中国社会科学院法学研究所民法研究室にて聴取)。. 梁慧星先生の思いが本草案の自動車保有者の無過失責任規定に結実しているように思われる が,自動車の保有者と使用者が異なる場合の効果,自動車保有者責任の前提となる運行供用 者責任の認定等,詰めるべき問題は少なくないように思われる。 16). 日本の自賠責保険(強制保険)に相当する。なお,本年(2006年)3月1日に「自動車交通 事故責任保険条例」(全5章46ヶ条)が行政法規として制定・公布され,7月1日より施行さ れている。. 131.

(22) 横浜国際経済法学第15巻第2号(2006年12月) 17) 本章の諸規定は「中華人民共和国環境保護法」には設けられていないものであるが,中国で   は同法以外にも,「中華人民共和国水質汚染事前防止・事後処理法(原語:水汚染防治法)」   (1984年公布施行・96年改正),「中華人民共和国大気汚染事前防止・事後処理法(原語:大.   気汚染防治法)」(1987年公布・88年施行・95年改正・2000年再改正)等の環境関連の特別   法が整備されている以上,それらの法律の改正によるべきであり,一般法である民法の不法   行為(責任)編でこれらの規定を設ける実益は乏しいように思われる。 18) “単位”は中国の都市部住民の所属組織を意味する言葉であり,典型的には国有企業がそれ.   に該当するが,それが果たす役割は,日本の地方都市の企業城下町における中核企業のそれ   とは比べるべくもなく,住民の政治生活(共産党の政策の学習等)・経済生活(仕事等)・   社会生活(地域活動等)・プライベートライフ(結婚等)等の横の関係に加えて,社会福利   の給付・受益等の縦の関係をも包含する自己完結的な世界である。この特殊性ゆえに,アメ   リカでは,日本の“砂osεゴs砺40”(行政指導)同様,(unitではなく)“面πω6歪”と,“単位”.   の耕音名(ローマ字表記)がイタリック表記されている。.   現在では,この“単位”制度は崩壊しつつあると言われているが,この制度が完全に崩壊す   るのを見極めるまでは,拙訳では原文通り“単位”と訳出することにする。. 19) 本章第38条ないし第40条の規定は「中華人民共和国製造物品質法」には設けられていない.   ものであるが,全74ヶ条から成る体系的な特別法がある以上,同法の改正によるべきであ   り,一般法である民法の不法行為(責任)編でこれらの規定を設ける実益は乏しいように思   われる。 20) 原文は“風険負担”(危険負担)という言葉を用いているが,ここでいう危険負担は同語の   通常の意味内容とは異なるので,「責任の帰属」と意訳した。   なお,「中華人民共和国契約法」第311条には,次のような規定が設けられている。「輸送過   程における貨物の段損又は滅失については,運送人が損害賠償責任を負うものとする。但し,.   貨物の殿損又は滅失が不可抗力,貨物そのものの自然的性質若しくは合理的な損耗,又は荷   送人若しくは荷受人の故意若しくは過失により生じたものであることを運送人が証明した場   合は,この限りではない。」. 132.

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