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アミノ基転移反応によるクエンチ抗体の調製

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Academic year: 2021

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69 生物工学 第96巻 第2号(2018) 本論文は,抗原が結合することで蛍光強度が増大する 蛍光標識抗体断片,クエンチ抗体(Quenchbodyまたは Q-body)の新たな構築法に関するものである.Q-body は,これを抗原サンプルと混ぜてしばらく置き,その蛍 光強度を測定するだけで各種の抗原濃度を決定できるこ とから,簡便迅速な免疫測定ツールとしての利用が期待 されている1).率直に言って,本賞の半分はQ-body原 理の発見に与えられたように感じており,以前の記事と やや被るが以下に少しだけその説明をさせていただく. Q-bodyにおいては,抗原不在時にはその蛍光がクエ ンチ(消光)され,抗原を添加するとそれが解除されそ の蛍光増加量から抗原定量が可能になる(図1a).このた めQ-bodyでは抗体の抗原結合部位(可変領域)の相補 性決定部位(超可変部位)近傍に,部位特異的に蛍光色 素を導入する.これにより,可変領域内のトリプトファ ン残基(Trp)と色素が(複数色素を修飾した場合は蛍 光色素間でも)相互作用し,クエンチする.しかし,抗 原結合により色素が抗体外に移動することで2),蛍光強 度が数倍以上増加し,抗原定量のみならず,たとえば, 洗浄なしでのがん細胞表面抗原イメージングも可能と なる3). しかしこれまで,Q-body構築のためには抗体遺伝子 をクローン化し,その5’末端に色素修飾用のシステイ ンやUAG(アンバー)コドンを含むタグを付加し,大 腸菌や無細胞タンパク質合成系で発現させ修飾精製する などの多数のステップを踏む必要があった.そのため, たとえば蛍光応答を最適化するための試行錯誤にはかな りの時間と手間がかかっていた. そこで今回,このようなタグを持たないFab断片を材 料として,最近報告されたタンパク質のN末端特異的修 飾法4)を用いた蛍光標識を試みた.具体的にはアミノ基 転移反応により抗体タンパク質のN末端アミノ基を特異 的にケトン化し,受託合成などで比較的容易に入手可能 なヒドロキシアミンあるいはヒドラジドを持つ蛍光色素 TAMRAで修飾した(図1b).また(半分偶然見いだされ たことではあるが)この際,N末端近傍のアミノ酸配列 によりケトン化効率が異なることから,あらかじめ短い 配列を付加することでH鎖が選択的にラベルされ,蛍光 応答を最適化することができた.以上の結果,この方法 で作製したFab型Q-bodyを用いて,従来法に近い感度 での抗原オステオカルシンペプチドの検出に成功した. 本法では抗体のフォールディングに悪影響を及ぼすシ ステイン残基を修飾に用いないため,多くの抗体におい てその収量増加が期待できる.本法の条件検討,さらに は類似の可変領域特異的蛍光修飾法5)を用いることで, 近い将来,たとえば,市販の天然抗体を迅速にQ-body 化する方法が確立できれば,より多くの方にこの手法を 気軽に利用いただけるようになるのでは,と期待してい るところである. 1) 上田 宏ら:生物工学,94, 489 (2016).

2) Ohashi, H. et al.: Bioconjugate. Chem., 27, 2248 (2016). 3) Jeong, H. J. and Kawamura, T. et al.: Anal. Chem., 89,

10783 (2017).

4) Witus, L. S. et al.: J. Am. Chem. Soc., 135, 17223 (2013). 5) Jeong, H. J. et al.: Chem. Commun., 53, 10200 (2017). 6) Wendeler, M. et al.: Bioconjugate Chem., 25, 93 (2014).

Preparation of Quenchbodies

by protein transamination reaction

アミノ基転移反応によるクエンチ抗体の調製

(JBB, Vol. 122, No. 1, 125–130, 2016)

董 

金華

1,2

・鄭 

熙陳

1

・上田 

1

*

*著者紹介1東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所(教授) E-mail: ueda@res.titech.ac.jp

2Weifang Medical University, Shandong, China

図1.Q-bodyの 動 作 原 理(a) と, 本 論 文 で の 作 製 法(b).

参照

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