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政党システムと労働者政党 : 社会的クリーヴィッジ論と関連させて

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(1)政党システムと労働者政党 -社会的ク1)-ゲィッジ論と関連させて 成 Social. Cleav喝eS,. 田. Party Hiroyuki. 目. 博 Systems,. 之. and. Worker's. Party. NARITA. 次. Ⅰ. 社会的クリ-ゲィッジと政党システム. Ⅱ. 社会的クリ-ゲィッジ論の検討. Ⅲ. 社会的クリ-ヴィッジ論と労働者政党. 本稿ほ,労働者階級に基盤をおく西欧諸国の諸政党の形成と発展,その歴史的問題性の′ 一端を,社会的クリーゲィッジ論と政党システム論という視角から論じてみようとするも のである。その際,日本を含む先進諸国の社会党や共産党などの労働者政党が,かかえて いる現実的諸問題も念頭においていることはいうまでもない。これらの政党の議会や選挙 との関連,勢力の停滞,市民運動との関連,単一争点運動-の対応,エコロジー問題-の対応, 保守政治の巻き返し,低成長時代の福祉,強権的国家の台頭など。これらの問題をいくら かでも解明するために,政党論をいわば基礎から考えてみようというのが,本稿の問題関 心なのである.それにしても,扱う対象がおそろしく多様で複雑であり,論点も多岐にわ たるo. まず,例えば,労働者階級に基盤をおく政党といっても社会民主党から共産党,い. や全体主義的政党さえ扱わなくてはならない。また,その歴史や思想や組織などいずれを とってみても,到底短いスペースで論じ尽せるものではない.そもそも,. 「労働者階級と. は何ぞや」という定義からして,一冊の本にもなろうかという問題をはらむ.ここでは, 労働者政党というのは,広い意味での産業労働者を支持基盤として,その利益やイデオロ ギーを実現しようとして活動する政党をさす。労働者階級を基盤とする限り,そのイデオ ロギーや活動方針において,マルクス主義や労働組合主義やもっと別の主義,主菜を掲げ ていても,それらをすべて含む総称として,労働者政党という名称を用いている。また, 労働者階級についても,今日,その存在形態は大きく変りつつあるが,ここでは一応,近 代プロレタリアートという意味内容と同じものとする。また,分析視角についていうなら ば政治思想論から政党組織論,選挙行動論から公共政策論など,いろいろありうる。 したがって,本稿の対象も分析視角も,もっと限定しなくてほならないが,社会的グリ ーヴィッジ論という視角に限定して,その角度から西欧諸国の労働者政党に迫ってみたい と思う。西欧諸国というと,従来はともすれば,イギリスやフランスやドイツなど大国の.

(2) 成. 22. 田. 博. 之. みに考察が集中し,中小諸国が軽視されたり,あるいは両者が切り離されたまま論じられ ることが多かった。こうした見方は,北欧諸国の労働者政党が示した政党としての統治能 力の高さや政治思想への寄与(例えば,スウェーデン社会民主党)を考えるとき,大きな. 欠点を含むものである。′時期としてほ労働者政党が形成される19世紀後半から現代までを 含むことになる。これでもまだ,地域的にも時代的にも,広すぎて限定したことにほなら. ないであろう。しかし,広領域にわたって事例を比較しうる変数を設定し,長期におよぶ 時代区分をとり,各国共通に働く要素や長期的動向をつかみ出す試みも必要であろう。そ の一つが,. S.リブセットとS.ロッカソがその共同論文で展開した社会的クリ-ゲィッジ. 論と政党システム論なのである。筆者ほまず,この論文で展開されている議論を要約的に 紹介し,新しい問題に迫るための準備作業として,それを検討することにする. この論文は「クリ-ヴィッジ構造,政党システムおよび選挙民編成:序論」と題され, この二人によって編集され, 1967年に出版された『政党システムと選挙民編成』という本の 序論として収録されたものである(1)。社会的クリ-ヴィッジ論に依拠するにせよ,あるい はそれを批判するにせよ,今日もなおこの論文は取りあげられ,論議されることが多い(2). ここで本稿のおおまかな構成について,のべておこう。まず,先の論文を労働者政党の 台頭と政党システムという視点から,再構成しながら要約的に紹介する。次に,この論文 の問題点に簡単にふれる.さらに,労働者政党の変化,動向を社会的クリ-ゲィッジ論か ら,どのように分析しうるか考えたい。最後に,労働者政党が,政党システムの一員とな ることによって,どのような変化を蒙ったかを,検討したい。以上の問題を論じるにあた ってほ,国家の統治システムとか選挙システム,また,労働運動や社会運動の影響など考 慮しなければならない要素は多いが,筆者の力不足からここでは触れられなかった。さら に,労働者政党の場合,政党組織論の視角ほ欠かせないが,この点ほ別箇に考察した方が よいと考え,これにも触れなかった。. 工. 社会的クリ-ヴィッジと政党システム. 本章で紹介するのほ,先にあげた「クリ-ヴィッジ構造,政党システムおよび選挙民の 編成」という論文であるo. ロッカンにほ,この論文を一部削除した上,もう一つ別の論文. と-諸にした「国民形成,クリ-ゲィッジ形成および大衆政治の構造化」(3)と題する論文 もあるのでこれも見ていく.さらにこれと関連するテーマを扱った「国家形成の諸次元と 国民形成-ヨーロッパ内のバリエーション研究のための可能なパラダイム」(4)という論文 も必要に応じて参照することにする。紹介するにあたって,いちいち出典を明記するのは,. かえってわずらわしいので省略した。 (1】社会的クリ-ヴィッジの形成. 1)プセット-ロッカ1/にとって,社会的クリ-ヴィッジとは,社会内の様々な紛争,対 立のうちでも,人や集団を非常に深く分つもので,場合によっては社会を分極化させるほ. どのカをもった境界,亀裂なのである。つまり,社会の基底的な対立,紛争要因なのであ る。さらに,これは政治レヴェルへの要求や圧力となって現われ,政治をも分極化させ,. 緊張や衝突を惹き起す危険性をもつ。そこで彼等は,社会で何が基本的クリ-ヴィッジで.

(3) 政党システムと労働者政党. 23. 図1. あるのか,その歴史と形態を探る。もちろん,社会的クリ. 外面的一即時充足的 中央エスタブリシュ・エリート内村杭. -ヴィッジがそのまま政治に反映されるわけでほなく,そ の媒介者,担い手が存在するわけで,その一つが政党なの. g. ー. である。政党は,社会的クリ-ヴィッジの忠実な反映老,. わたしをするもので,統合者,調停者としての面をあわせも. 内面的-即時充足的 イデオロギ-的対抗. まとめたり,抑圧したり解決したり,クリ-ヴィッジの橋. 個別的刺青対抗 外面的-手投的. 担い手という面ばかりでなく,紛争や対立を一定の要求に. 中央. a. 周 縁 軸. I. つo従って,社会的クリ-ヴィッジの歴史や分析ほ,政党や 政党システムの歴史や分析にもつながっている。言いかえ. l. 地方・地域対抗 内面的一手段的. ると,社会的クリ-ヴィッジが,どのように政党システムに. Lipset. 転換されていくのか,また政党ほクリ-ヴィッジからどん. Rokkan;Clea-. and. p. 10. Structures.. vage. な影響をこうむり,また,クリ-ヴィッジにどう働きかけ. ていくのか,その双方向のプロセスや塑が明らかにできれば,政党システムの動態も明ら かになる,と考えるのである。特に,大衆の政治的動員組織が整い,競争的政治が本格化 すると,社会的クリ-ヴィッジほ一層強く政治に反映されるから,その考察は重要となる. T.パーソン. リプセット-ロッカンほ,社会的クリ-ヴィッジを分析するにあたって, ズのA・G・. Ⅰ. ・L図式を一部修正して用いているoそれが第1図であるo. 西欧社会における社会的ク7). -ゲィッジの形成と定着ほ,国民国家の形成とその構造に. 深く結びついているとみる。まず,近代国家の誕生時において,中央官僚機構やそのエリ. ート支配の確立などの国家装置の完成と平行して,教育や文化や宗教などの分野で全国的 これにたいし,地方や周縁の共同体の人々ほ,自分達の 言語や宗教,エスニシティなどを拠りどころにして,地方の分離,独立を含む抵抗運動を な統合化や規準化が強行されるo 起すo. ここに中央一周経という地理的な軸に沿った,地域的文化的な紛争が生じ 属的文化vs.支配的文化というクリ-ヴィッジが成立する,ととらえる(第2図参照)。ま. まず従. た,新たに生れてきた中央集権的国家は,多くの特権と財産を有し,宗教活動を通して民 衆を掌握していた教会組織と衝突し,特に初等教育のコントロールをめく小って両者ほ対立 する。これが,教会vs.政府という二番目のクリ-ヴィッジなのである。. これら二つのクリ-ヴィッジが,地域軸に沿ったものであるのにたいし,次の二つは, これを横断する職能軸に沿って形成される,とみる。近代国家の発展-資本主義の確立過 程で,まず農業を中心とする地主などの土地利益と新たに成長してきたブルジョア利益と の対立が生じる.三番目の第一次経済と第二次経済という. 図2. g. クリ-ヴィッジである。次に,労働者が労働条件や労働契 約の改善,疎外の廃絶などを求め,所有者と対立する。こ れが労働者vs.雇用者,所有者というクリ-ヴィッジであ る。これらを図示したのが図2である。. 著者たちによれば,近代ヨーロッパの大きな革命が,こ れらのグリーグィッジを生み出したわけである。つまり,. 国民革命が①と②を,産業革命が③と④を,である。した. 政治体. 労働者 幸三・H. <. VS. 雇用者 所有者 第二次経済. 従属文化. ③算=V&済′支蒜化① 地方・家族. Lipset idide.n,. and. Rokkan;. p. 14.

(4) 24. 成. 田. 博. 之. がって,それぞれの革命のあり方ばかりでなく,両方の革命のタイミングや相互関係が, クリ-ヴィッジのあらわれ方を左右する。だから,それぞれの国の紛争や対立の様相も異 ってくるわけである。 (2)政党配置のバリューショソ. 著者たちが,さしあたり議論の対象としている時期ほ,議会や選挙権が民主化される以 前である。したがって政党配置に関わりをもつのほ,最初の三つのクリ-ヴィッジであっ て,. ④のクリ-ゲィッジほ除かれる。なかでも著者たちが重視するのは,クリ-ゲィッジ. の①と②の中央政府の国民形成(Nation-Builder)エリート(Nと略記する。以下同じ) である。次に,このエリート集団と連携したり,対抗する勢力として,七つの社会的集団 が取りあげられている.すなわち, 教会-R,. (2)超国家的カトリック. (3)国教会にもカトリック教会にも所属しない宗教的対立者-D, (5)第二次産業の都市商工業者-U,. の土地所有者-L, -P,. (1)7oロテスタソト国教会-C,. (4)第一次産業. (6】中央に従属する周縁の抵抗運動. (7俳宗教的国民-Sである.. まず,国民形成エリートが,宗教と経済の領域でそれぞれ,どの集団勢力と連携するか, それによって対抗する側の連携関係も決ってくるわけである。著者たちは,八つの連携一 対抗′くターンを設定して,各国をそのどれかにふりわけている.例えば,イギリスは,. (N-C-L). vs.. (P-D-U)という対抗関係をもつわけであるo. この八つのパターンが,. 民主化以前の各国にほぼ共通する政党配置とみなし得るもので,労働者政党は,この中に 参入していくことになる。. 著者達は,これら七つの集団のうち,. (1ト(3)の宗教勢力を重視する。つまり宗教ほどの連. 携,対抗パターンにあっても大きなウエートを占めるもので,民主化の時代に入り,労働 者政党や労働運動が,これと,協力するにせよ,敵対するにせよ無視しえない存在となっ てくるからである。事実,著者たちは,アンシャン・レジームに反対する対抗勢力の同盟 にほ二つのパターンがあると指摘する.一つは南欧や中欧で現われた国民的一急進的一世 俗的(national-radical-secular)なタイプ,もう一つほ,北西ヨーロッパやイギリス,スカ ンディナビア諸国にあらわれたタイプで,周縁地方や新興の都市階層内の新しく選挙権を 得た異議申立て人や非国教徒や原理主義者(dissenter,. non-conformist,. fundamentalist). からなる同盟である.この二つは,いわば「左翼」連合の先がけをなすものであってその. 後の大衆選挙時代の政治理解にとって根本的に重要である,と指摘している。 次に,新しい政治勢力が公式の政治の場に進もうとする際,四つの「敷居」 を通過しなければならない,という命題を提示する。すなわち,. (threshold). (1)正当性(1egitimation). (2腐入(incorporation)の敷居一参政権と自分達 の敷居一転抗,反対運動の権利の保障, (4)執行 の代表を選出する権利, (3)代表(representation)の敷居一立法府への代表選出, 権(executive. power)の敷居-執行府の政策決定への参加,以上の四つである.著者た. ちによれば,大衆の競争的政治が促がされるのほ,. (1)と(2)の敷居を越えてからである.大. 衆の政治進出にとって,. (3)の敷居ほ大きな障害となっていたが,その引き下げは,大衆運 動の圧力の結果というよりも,名望家勢力内の分裂によるところが大きく,政党システム の基本的配置ほ,この時期に確立されたことが指摘される。その含意についてほ,労働者.

(5) 政党システムと労働者政党. 25. 政党の登場と関連して後で再び考えてみたい。. (3)労働者政党の登場と政党システム 西欧で労働者政党あるいは社会主義政党が誕生するのは,大体,. 1B80-1890年代にかけて. である(表1参照)oこれらの政党が,形成される条件,環境は国ごとに異るから,その社会 経済構造や労働運動の発展度,反体制運動の伝統や政治的潮流など多くの要素を詳しく検 討しなければならないだろうoが,リプセットエロッカンの議論に即して見るならば,産業. 革命によってもたらされた労働者-所有者というクリ-ゲィッジを労働者政党登場の共通 要因として認めることができるoしかし,社会で所有者と対抗する位置を占めても,この政. 党が政治の場に進出するためにほ,上述した四つの「敷居」のうち,最初の三つを突破しな ければならないoこれが(3)の敷居を越えるのと労働者階級-の選挙権の拡大とその大衆的. な組織化ほ平行していた。選挙権がいつ頃,どの階級にまで拡げられたかは,国によって異 なるが,大体1880年代から第一次大戦前くらいまでの時期であったo男子普通選挙権が飛躍 表1社会主義政党の選挙-の参加時期と選挙法改正の時期 国. 名. (1) ア. オーストリ ベ. デ フ. マ. ン. フ. ラ. ド. リ. オ. ラ. ン. ノ ス ス ス. ノレ. ウ. 1907 1894. 45. 7. 1948. 38. 4. 22. 2. 1878a. 18 8 4. 1849. 28.. 1915. 24.6. 23. 9. 1899. 19 07. 1906. 22. 0. 1906. ス. 1879. 18 93. 1876. 36. 5c. 1946. 33. 9. 24.. ツ. 1867. 1 87 1. 1871. 25. 5. 1919. 34. 2d. 34.Od. ア. 1892a. 27. 7. 28. 8. デ イ. 35. 0. 37. 0. 1945 1917. 1887. 1903. 1898. 1879. 1910. 1907. ン. 1889. 1896. 1907. ス. 1887. 1897. 1848. 1893a. 1892e. 1918. イ. 1b. 1917. 1888. ェイ. 1919. 1913. 1878. ぺ. ウ. (7). 97. ダーソ. タ. (6). 1. イ. イ. (5). 18 9 4. ーク. ン. (4). 1885a. ー. ンランド. ィ. CO. (3). 1889. ギ. ル. (2). 34. 1. 1913. 22. 0. 1933 28. 9. 1921. 1928. 注1・最上欄の番号は下記の事項を示す。. (1)社会主義政党が結成された年 (2)社会主義政党の候補者が議会に初当選した年 (3)男子普通選挙法. (4)男子普通選挙法施行後の最初の選挙において労働者が有権者に占める割合 (5)普通選挙法. (6)女性-の選挙権拡大以前の最後の選挙において労働者が有権者に占める割合 (7)普通選挙法施行後の最初の選挙で労働者が有権者に占める割合 注. 2・(a)主要労働者政党ほ,この年以前に存在したが,解散ないし弾圧されるo (b) 1884年頃 (c) 1902年 (d)国境が変更 (e) K.--ディの当選年 A・. Przeworski. and. J. Sprague;. Paperstones,. 9. 1986,. p. 36.

(6) 田. 成. 26. 博. 之. 的に拡大されてゆくのは第一次大戦後であり,女性の参政権ほさらに遅れる(表1参照)0 それは,労働者政党の成立,発展と,. ・軌を一にしていた.また,大衆の組織化について. みるなら,議会に代表を送るべく大衆が選挙活動を展開し,議会に初めて代表を当選させ. たのもほぼ同じ時期なのである(表1参照)。こうして,労働者政党は,その代表の数ほ少 ないが,全国的な政党システムの一画を占めることになったo この点に関する著者たちの 衰2 重. 発展系譜の図式:西欧における革命,争点,クリ-ヴィッジおよび政党システム. 大 危 枚. 重. 大. 争. 点. 全国的政党システムの形成に おける各クリ-ヴィジの比重. ク1)-ゲィッジ. (西欧の小民主主義国家のみ) プロテス タ. Ⅰ. 宗教改革:. 領域国家. エストファリ. (territoriaトstate ). ア条約(1648 年)および19. の固定化. ソ. ト. 混. 合. カトリック. 1.周縁vs.中央: 中央支配に抗す る従属エスニシ ティ-ズないし. 従属言語グルー. -20世紀にお ける分離. プ. 2.中央文化をモラ ル的ないし宗教. 的に拒絶 Ⅱ. 国民革命:. ナポレオン後 Ⅲ. 地域の標準化メデ. 教会vs.世俗国家. ィアのコントロー. の国民形成. ル:初等民衆教育. 産業革命: 1850年代以降. 1.第一次経済:保. 護vs.現代化 (関税問題) 2.第二次経済:企 業の自由vs.国 家コントロール 所有者ないし雇用. 1.農村・農業利益 vs.都市・産業 利益. 2.労働者一所有者 クリ-ヴィッジ. 者の権利vs.労働 者ないし被雇用者 の権利 Ⅳ. 国際的革命 非特権階層の国民 (International 共同社会-の釈合 Revolution) (Integration of ロシア革命お. よびそれ以後. under・privileged in strata national. community) 注1.. 1.共産主義vs.社 会主義. 2.平和的中立主義 vs.国家ないし より大きな単位 の支持. すく,.には予測できず. ×××-クリ-ヴィッジの一つが,永続的な全国政党選択妓にそのまま転換 ×. ×一短命な政党あるいは特定地域政党に転換. ×-より広範囲な統合過程に重要な要素として組みこまれる。 注2.西欧の小民主主義国家とは,次の11ヶ国である。 デンマーク,スウェーデン,ノルウェー,フィンランド,アイスランド,オランダ,スイス, オーストリア,ベルギー,ルクセンブルク,アイルランド S. Rokkan;. Nation-Building,. p. 133.

(7) 政党システムと労働者政党. 27. 主衷のひとつは,労働者政党が,このシステムに加わる以前に,政党システムの基本的骨 格ができあがっており,このときには各国間の政党システムに相違性はなかった,という ものである.労働者階級の参入ほ,確かに国内での選挙の投票結果に影響をおよぼしたけ れども政党システムの全体的構成には変化を生ぜしめなかった,という。いやそれどころ か労働者政党ほ,政治的競争場において対決することになる諸政党のイデオロギーや運動. や組織などの配置関係から決定的な影響を蒙ることになった,と指摘する.どんな影響か については,ふれられていないが,この点についてほ改めて検討したい。なお,これまで. みてきた,西欧の社会的クリ-ヴィッジの形成,およびその争点,そして政党システムの 関連についてほ表2を参照してほしい。 次にロシア革命の影響についてである。この点に閲し,共同論文とロッカンの単独論文 との問に(もっと正確に言うと,ロッカン論文自体の中に)くい違いがみられる。まず,. 共同論文でほ,この革命によって生じたクリ-ゲィッジほ,所有者一労働者であり,その 中心的争点ほ,国家体制への統合vs.国際的革命運動への支持であった。これにたいし, ロッカンの単独論文でほ,クリ-ヴィッジは,. (1)共産主義vs.社会主義, (2)平和主義的中 立主義vs・国家ないしより大きな組織への支持-変っている。また中心的争点も,非特権 階層の国家社会-の統合,に変っている.ここでほ,くい違いを指摘するにとどめ,一応 ロッカン単独論文の図式にのっとって議論を進める(表2参照)。まず,二つのグリーグィ ッジのうち前者ほ,労働運動や大衆組織などとならんで,政党システムレダニル自体に最 初から生じた点が,従来のクリ-ヴィッジ進展のプロセスと異っている。ただ,労働者階. 級内に発生したこのグリーグィッジほ,既に第一次世界大戦前にその指導層の間で生じて いて,ロシア革命はそれを顧在化させたにすぎない,とも述べられている。なお後者のク リ-ゲィッジについてほ,そのように指摘されているのみで何ら具体的な論議が展開され ていないので,ふれず,前者に関して,もう少し考えてみよう。西欧の労働者政党全体に およんだ分裂!対立も,各国によって,その深度が異っていた。著者たちはそれを二つの 表3. S. Rokkan,. ididem,. p. 138.

(8) 成. 28. 田. 博. 之. グループに分類し,その理由を探るのである.一つほ,統一性も高く「馴致された」. (`do-. mesticated')労働運動が展開されている国のグループと,もう一つは,深い分裂をかかえ た国のグループである(表3参照)。前者にはプロテスタント系諸国とそれにカトリックが 混在している国が該当するが,早期に国民国家の形成を終えたデンマークやスウェーデソ, イギ1)スは統一性が高く,独立が遅いノルウェーやフィンランド,アイスランドほ分裂が 激しく,共産党の勢力が強かった。ノルウェーの場合,. 1920年代でこの状態ほ終っている。. カトリックの国家の場合,統一と分裂とを分つ要因として,ロッカソほ教会と国家が連携 したか,対立したかを取りあげ, 「穏健」な労働運動をもつオーストリア,ベルギー,ル クセンブルク,アイスランドと深い対立関係をかかえるフランス,イタリア,スペインに. 分けている。このうち,教会一国家関係は,これまで見たように近代国家の形成と密接に からんでいることを考慮するならば,労働運動の対立や統一も,やはり国民国家の歴史構 造そのものの問題である,ということになる。ロッカンほ,最初にあげた国家形成論文で,. このテーマを本格的に展開し,その後もー賞して,その精教化に努めた. 著者たちは,労働者政党の対立状況をロシア革命がもたらしたクリ-ゲィッジの面から の分析に加え,「社会の開放性」という視点からも検討している。すなわち社会の身分的障. 壁が高く,社会的移動性が低く,エリートの行動様式が権威主義的である場合,労働者階 級ほ周囲の環境から孤立しがちで,政党も「ゲットー政党」と化し,反体制的(anti-sys・ ten)な方針や行動をとる,と。他方,反対に社会が平等主義的・融和的で,社会的移動 性も高く,エリート層の行動様式がプラグマテックな場合,労働者勢力は社会と協調的関 係を保ち得るo. しかし,政治勢力としてはまとまりにくく,自己の代表を政治に送りにく. い上,他の保守政党などにくいこまれる結果をもたらすと分析している。なお,この「開 放性」の概念に関して,論文の共著者1)プセットは別の論文でさらに敷街している`5'彼o は「開放性」. 「閉鎖性」の決め手ほ,その社会が封建制を経験しているか否かにあるという。. 封建制を有していた社会は,資本主義に発展しても身分的境界線が残り,労働者階級ほ独 自の共同社会の中で,自分達の生活様式や社会的義務・結びつきを保っている。経済的な 意味での階級性を有すると同時に独自の身分をも構成していて,経済的緊張,対立が強ま ると身分的意識が重りあい,他の国よりも顕著な階級政治を現出せしめる,そして急進的. 労働者政党が生れやすい,と.また,政党や労働組合などの組織を国家や支配階層が早く から認めるか,認めず弾圧するかで,労働組合,政党が革命的になるかどうかが分れると, 述べている。 「開放性」にせよ,身分制的社会にせよ,第二次大戦後,社会・文化構造が 大きく変り,この概念を労働者世界にそのままあてほめることはできないだろうが,形を 変えて政治文化に影響が残っているとも考えられ,なお検討を要しよう。. さて,最後に社会的クリ-ヴィッジと政党システムについて総括的に考察しておこうo 第一次世界大戦,ロシア革命と労働者階級を取りまく状況はあらゆる領域で大きく変化し た。さらに第二次大戦以後著者たちがこの論文を発表した60年代にかけては,世界は以前 を上回る変動にみまわれていた。しかし,それにもかかわらず,リプセッとロッカンは, ロシア革命クリ-ゲィッジに続くクリ-ヴィッジを提示していない.その後に起った諸々 の紛争,対立などは従来のクリ-ヴィッジの枠内で説明されると考えたのだろうか。そも.

(9) 政党システムと労働者政党 そもクリ-ヴィッジにほ何の変化も起きていないのだろうかo彼等ほ,. 29. 60年代の「高度消. 費社会」を眼前に見ていた。特に若い階層を中心とする新しい生活スタイルや政治への動 向などに着目していた。高度に組織化された社会にたいする挫折,疎外,抗議の行動を見 落してほいない。また政治への高い要求の故に,政府ほ統治能力を喪失しか枠ているとも. 述べている。新左翼の政党も生れ,既成の政党システムは崩れかけていた。しかし古い政 党システムをつき破るほどの衝撃力をもってほいなかった。彼等のクリ-ゲィッジ論ほ維 持されていた。彼等ほこの論文で有名な命題を掲げた。即ち,. 1960年代の政党システムほ 1920年代のグリーグィッジ構造を映している,と。なぜそういえるのか。 20年代ほ,これ までの議論でふれたように,ロシア革命の後の新しいクリ-ヴィッジにともない,新しい. 共産党を含めて労働者政党ほさらに大きな勢力となって政治に進出していたし,男子普通 選挙法も,西欧のほとんどの国で導入されていた。労働者政党に対抗すべく,リベラル政 党,保守政党も1880年代から大衆の組織化にとり組んでいた。そして, 政党がいわば政治的「支持市場」. 1920年代頃までに. -の参入を完了しており,有権者の開拓,獲得のため競. 争を展開していた。/そして支持者を動員しつくした後に,新しい政党がこの「市場」に入 りこもうとしても,もほやその余地ほ残されていなかった。したがって,この時期に確固. たる地位を固めた政党は,その後のナチズムや第二次大戦などの激動期をくく。りぬけて生 き残った。政党システムの継続性の高さが証明された。彼等の言葉でいうと「凍結」. (freezing)された状態が続いている.さて,現在,この政党システムは,どのような状態 にあるのだろうか。. 70年代,. 80年代の労働者政党ほ,いかなる変化を示しているのか。そ. れを探るにほ,社会経済構造におけるクリ-ヴィッジが旧来のまま維持されているのかそ れとも大きな変化が起り,新しいクリ-ヴィッジが生じているのか,生じているとすれば,. それが政党システムにどのように反映されていくのかを見なくてはならない。以下では, これらの問題にいくらかでも迫ってみたい。しかし,その前に,社会的クリ-ヴィッジ論. に対する批判について簡単に検討しておきたい。 Ⅱ. 社会的クリ-ヴィッジ論の検討. 前章で紹介した共同論文の著者の一人, -. ・. pホテン(Uuter. Lofoten)で生れ,. S.ロッカンほ1921年に北ノルウェーのウ一夕. 1979年に死去した国際的に著名な比較政治学者で. あった。彼は故国ノルウェーの研究を土台に徐々にその関心を北欧諸国,ヨーロッパ全域. -とひろげ,さらに全世界を視野におさめた政治発展のモデルを構想していたが,その研 究半ばで死去したのだった(6)o彼の理論的業績は,非常に多岐にわたり,社会的クリ-ゲ. ィッジ論や政党システム論ほ,その一領域にすぎなかった。彼の研究の全体的検討ほ,今 後,本格的になされるであろうから,その中でクリ-ゲィッジ論を位置づける必要があろ うo ここでは,これまで社会的グリーグィッジ論にたいしてなされた批判の一部を中心に, その問題点の一端を考えることにしよう(7)0 リブセットエロッカンの社会的グリーグィッジ論のみならず,クリ-ゲィッジ論全体に たいし,多くの批判が加えられている。そのうちここで取りあげるのほ前者についてであ る。批判点は,大きく三つにまとめられよう。.

(10) 30. 成. ①. 田. 博. 之. 社会的グリーグィッジ論の紛争,対立把撞の単純さにたいする批判である。現代社. 会の紛争や対立は,非常に種類も多く,その性質も複雑化している.にもかかわらずク1) -ヴィッジ論でほ,そのごく一部,しかも,古くからの紛争ばかりが扱かわれており紛争 の複雑性・多次元性への立ち入った検討がなされていないというものである。しかし,こ の批判にたいしてほ,現代の紛争のいわば,主要なものにのみ限定しているのであって,. 紛争全般を扱かっているのではないという反論ができそうであるo古い紛争は解決が難し く,今日でさえ,その影響を脱し得ていないものなのである。また,宗教的紛争や地域を めく小る問題は,現在,国民国家の枠組みそのものを問いなおそうという研究動向の中心に おかれており,それを先どりしていたともいえよう。ロッカンほ,特に中央一周縁問題に. 深い関心を抱き,その研究も多数発表している。その点は評価しなければならない。しか し,現代の社会・経済構造は大きく変化しており,第一次産業vs.第二次産業というグリ. ーグィッジほ,やほり,修正される必要があるのではなかろうか。労働者一所有老という クリ-ヴィッジにしても,その重要性ほ今日も変らないであろうが,しかし,労働者と政 「消費者」と 府という対抗関係や,労働者という属性を離れ,例えば「市民」と政治体, 政治体という対抗関係を設定できるのではないか。従って問題は,このモデルを使って, 改めて現代の紛争対立と政党システムをどう連関させて解明していくか,ということにな るであろう.. ②. 社会的クリ-ヴィッジによる政党や集団の一方的拘束という問題に関するものであ. る。クリ-ゲィッジー政党という側面に力点がおかれ,道の側面が見落されているとし,. 政党からクリ-ゲィッジへの働きかけをも検討する必要がああるという指摘が,第二の批 判である。確かに政党ほ,社会的クリ-ゲィッジの登録磯ではなく,社会の重要な活動主 体である。したがって,この面の検討は忘れられてはならないだろう。 ③. ロッカンの社会的クリ-ゲィッジの形成過程など,その歴史的説明の方法について. の批判である.彼の事象問の説明ほ,単なる説明のための準拠枠にすぎないのか,それと ち,因果関係の説明なのかが不明である,という疑問である。因果関係の説明としては疑. わしい,ということもさることながら,原因と結果が時間的に距離があきすぎていて,結 果から原因を類推的に説明する誤りをおかしがちである,という。. 「遺すぎる原因」. 「遺す. ぎる結果」というわけである(8).因果関係と準拠枠には,根本的な断絶があると考えなく ともよいのではなかろうか,彼の説明には一定の因果関係的な命題を含んでいる,という. 擁護論も出されている`9)o確かにロッカンほ壮大な図式を提示しており,その解釈に苦し む場合も多い。しかし;モデルの当否ほ,使う側がどれだけヒュ-リステックに適用する かにかかっている。ロッカソの責任というよりも,使う側の責任だといってよい(10)0 Ⅱ. 社会的クリ-ヴィッジ論と労働者政党. 第一章と第二章で,社会的グリーヴィッジ論と政党システム論の基本的枠組みとその問 題点についてみたo近代国家の基本的クリ-ゲィッジとして,中央一周蘇,教会一政風. 土地一産業,労働者-所有者(ロッカンは,共産主義と社会主義,および平和主義的中立 主義と国家への支持を加えた。)の四つを彼らは取り出した。それに対応する形で政党シ.

(11) 2. 2 1 I.. ウ山. 0 2. 4 0. 2. 5. 2. 'The. Europeon. Left. since. World. WarI. 9. (1983). 82・. 2. S. Baltolini;. 0. 4. p.lil. 42. 38 消. A▲2. 40. 30. 43. 39. 38. 37. 12. 12. 33. 2. 42. 40. 33. 46. 41. 24. 36. 31. 36. 50. 49. 44. 39. 47. 51. 49. 27 7. 28. 28 川. 36 11. 31. 31. 月.8.3. 8. 73・ 93・ 5o・ 24・. 4 8. 2. 45. 45. 35. 23. 1. 5∽9・. 2.. 11. 4.. 25. 1.. 17. 〔o. 37. ce.4.5.0.5.5.8. 2.. 11. 1. 4. %.5.2.4.5.4.2.0.4.5.4.9.2.4.2. 5te.. 20. 38. %e7.5.6.7.3.1.2.0.7.4.1.5.7.2.3. o3.. 4. 40. %.5.1.7. o. 3. 22・ 64・ 27・ 23・ 46・ 9一3・. %2・. %.. 3. 36. 〔0.

(12) 成. 32. 図3. 左襲得票率平均の変化,. 1917. 博. 田. ている(12).表4と図3を参照してほしい。. 彼は,これらの統計数字から,次の二点を引き出. -43年と1944-78年の対比. している。 SvedefL Nory暮y I-. 之. 1I■l■. -. ■--. Avsl血 h)xefTlbou FS Firthnd/DeNT)art UT)ited J(由&don FlanC6 I(4Iy. W. CcLTn叫y Netherbnd1 8叫itLn. -. (1)左翼ほ,戦問期に大幅な勢力の上昇を. 示し,第二次大戦直後頃にそのピークに達している。 しかし,その後はドイツとイタリアを除いて,微増 にとどまっている。. (2)全期間を通じて,得票率が50. %を越えたのは,ノルウェー,スウェーデソ,デン マーク,フィンランド,オーストリア,ルクセンブ. tcehrld. ルクの6ヶ国であり,しかも,それを確実に越えて SytlzerhJd. いるのほ,ノルウェーとスウェーデンのみであった,. 以上の二点である。この結果をどう評価するか,意 見が分れるであろうが,左翼勢力を全部合わせても 得票率で50%を越えることが非常に難しいことだけ ほ確かである。社会党なり,共産党なりが単独だと,. TECb nd. l昨・・・-・・・・. これを下回るわけであり,しかも,議席率をみれば,. 比例代表制をとっていない国の場合,不利に働くで あろうから,立法府で過半数を制することは一層難 J9I7-43. 1944_78. しい。 S, Baltolini,. ibidem,. p. 158. (多数代表制をとっている国,例えばイギリ. スの場合には不利に働くとほ必ずしもいえない)第. 一章でふれた四つの「敷居」論の最後の「執行府」という敷居を越えることが難事である ことほ間違いない。ただ,他の政党および他の陣営の勢力との相対的な比較で,単独少数 政権や連合政権の可能性もある.ヨーロッパの場合,それらほ決して珍しいことではない から, 50%という数字にこだわるべきではないだろう.しかし,バルト1)-ニも述べてい るように,50%ほ単に選挙の投票結果の半分という意味にとどまらない.. 「左翼対右翼」と. いう場合の左翼ほ,社会の多数派を基盤としているはずであるのに,それが一体,なぜ, 政治的多数派として50%を越えられないのか,という意味において論議されるからである。 これは古くて新しい問題でもあり,また後の議論とも関連するので,少し歴史をさかのぽ ってみておこう。 社会主義着たちは,. 1880年代から90年代頃にかけて,選挙に参加した段階から,議会や 普通選挙権の位置づけ,社会主義の実現方法などをめく..って論争していたo選挙に閲し, エンゲルスは,普通選挙権がプロレタリアートのまったく新しい闘争方法であって,選挙. 結果が反乱よりもブルジョアにとって恐しいであろう,と明言している(13)。また,議会 民主政は,単なる戦略目標でほなく,将来の社会主義社会の欠かせない要素として,とら えかえされてもいたとされる(14).さらに,社会主義の見通しについては,資本主義の発展 一国民のプロレタリア化一大多数の国民が社会主義-の意思表明,という図式から,選挙に 勝って社会主義ほ実現される,と社会主義著は確信していた。しかし,この見通しほあた らなかった。まず,この時期,プロレタリアートほ有権者の多数派でほなかった,といわ れている。その基盤が少数派であること,および議会における多数決のルールを遵守する.

(13) 政党システムと労働者政党. 33. こと,という二つの条件を前に,労働者政党にとって選択肢は二つあった.一つほ,選挙 でもっばら自分たちの階級のみを相手にして,敗北を興するか,もう一つは,選挙の勝利 のため,自分たち以外の階級の支持獲得の努力をするかであった。後者の場合,他階級の 有権者から選挙で社会主義支持をとりつけ,政治的多数派を創りあげられるかどうか,そ して,勝利のために訴えかけや政策方針の階級的性格を和らげるべきか香かが,ポイント であった。 1890年代に中産階級の支持の必要性については,ふれられていたという`15)。こ の選挙一議会をめぐる論議の歴史にはまだ論点も多いが,この課題はこの時期以降,今日 に至るまで形をかえて,労働者政党を悩ませることになった。 さて,また現代に立ち返って,先の問題を追ってみよう。社会的多数派-政治的多数派と. いう楽観的見通しを立て得たのは,第二次大戦後の左巽の上昇ムードによるところがあっ たと,指摘した上で,バルトリーニは,その後の左翼が微増にとどまった原因をいろいろな 仮説を立てて,検討している。そのなかで,社会的クリ-ヴィッジ論と関連させて,掛ま 次のような仮説を立てている。左翼勢力は,産業革命の労働者一所有老という社会的クリヴィッジに沿った政治的対抗関係の中で,選挙などの活動を展開する。その際,選挙市場 がこのグリーヴィッジによって完全に支配されていれば,労働者一所有者という対抗関係 が中心となって,労働者がEE倒的優位に立てるか否かはともかく,そのクリ-ゲィヅジの レヴェルで他の勢力と競争していればよいわけである。しかし,現実にそういう結果にな らないのは,産業革命クリ-ヴィッジ以外のクリ-ヴィッジが強く残っていて,階級的ク 1)-ヴィッジの全面化を妨抗. それに交錯するかたちで干渉するからであるoつまり,社. 会・経済的規準でほなく,文化や宗教や地域などの規準によって投票がなされている,と. みるのであるo社会主義老の中産階級への支持や訴えか桝i,このこととも関連する.中 間層は純然たる社会・経済的関係としてのみ存在するわけではなく,むしろ文化や宗教と いうクリ-ゲィッジと結びついている可能性が高いわけである(バルトリーニは,この中 間層のことにはふれていないが)。したがって,左翼が支持を増やすにほ,社会・経済的グ リーヴィッジを政治的競争の主要な次元に据えることができるかどうかにかかってくる, というのが,自分の仮説から引き出した彼の結論であったく16)0 しかし,問題はさらに残る.社会・経済的構造は,戦後,急変貌をとげているo特に70年 代80年代にはそれが一層著しい.この主要次元の変化を,旧来の労働者一所有者クリ-ヴ ィッジ論で説明しきれるかどうか,そこに新しいクリ-ヴィッジが生じている可能性はな いのか,あるとすれば,それほどんなもので!政治的システムにどんな影響を及ぼしてい. るのかなど,先の非産業革命クリ-ヴィッジとのつながりを含めて説明されねはならない。 社会的クリ-ヴィ.,ジ論ほ,社会・経済的構造から政党システムの変化を説明しようと する。そこでまず,. 60年代末から80年代にかけて,その構造の変化をみておこう。この時. 期の社会経済構造をトータルにとらえる理論ほ,いくつかあるが,ここでは本論のテーマ ポスト. に関連した現象・論点をより鮮明にうち出している理論として「脱産業社会論」に依拠す. る。この選択は,あくまでも本立論にかかわる限りのものであり,他の理論を誤りとして 斥けたわけではない.この理論の主張は次のようなものである.この段階に入った社会で 紘,産業の生産的部分へ労働力を大量に組み入れることや大工場の拡大ほ,終了する,坐.

(14) 34. 成. 田. 之. 博. 産的職業より第三次産業のサービス業などが急激に拡大する,肉体労働の比率が低下する, ホワイト・カラーや科学・技術職や専門職やサービス職などが増加する,科学・技術革命 によって教育費科学や知的活動の重要性が一層高ま坤,これに従事する人々が急速に伸び ていく,という(17)o. 脱産業社会で大幅に増えた諸階級・階層を中心として,価値観や行動様式に大きな変化 が生じる,とみる政治学老ほ多い。この事象を最も明確に概念化したのが,イングル-トの「脱物質主義」的価値概念であろう`18'-& これを産業社会における「物質主義」的価 値と簡単に対比してみよう。産業社会の伝統的階級が抱いている価値「重厚な」経済, 経済成長,高度な生活水準,安定した家族生活,犯罪防止,秩序維持など一にたいし,節 しい階層の価値一自己実現の欲求,より非人間的ではない(less. impersonal),よりクリー. ンな,より文化的な社会,より自由な個人生活,政治的活動と共同社会生活の一層の民主 化など-が対比される(19).. こうした価値観の違いが,何を政治的争点として取りあげ,また,どのような解決方法 をとるか,の違いをもたらす。産業社会における争点の多くが,国有化や富・収入の再配 分などの経済的領域にかかわるものであったのにたいし,脱産業社会においては,非経済. 的社会的な争点が多い。即ち.,環境保護や核エネルギー反対,平和運動,婦人運動,成長 抑止,などである(20'。これら二つの争点区分のうち,前者ほ階級的クリ-ゲィッジに沿 っているのだが,後者ほ,それに対応せず,脱物質主義的価値という次元のクリ-ゲィッ ジを反映している。したがって,階級を基準とした左一右の尺度と重ならない。このこと. は,政党,特に労働者政党の側からみると,これら新しい争点を前者の争点やその支持基 盤と整合的に結びつけるのが発しい,ということを意味する.伝統的支持基盤は,学歴が それほど高くなく,それほどコスモポリタン的でなく,それほど豊かでもなく,それはど 図4. 欧米四ヶ国の階級投票率の懐向(1948-83) (階級投票のアルフォード指標). 安全でもない労働者であった。後 者の争点を支持するのはもちろん, 新しく台頭してきた階層を中心に,. 60 55. 学歴の高い人や学生,高等研究教. 50 45. 育磯開閉係老,ジャーナリスト,. 40. 専門家,公務員などである(2】).彼. 35. 等は,伝統的に右翼を支持してき. 30. た,いわばめぐまれた階層の出身 者も多く,これら争点への共感な. 25 20. どから労働者政党を支持してい. 15. 10. る(22)o労働者政党は二つの異った 集団・争点群から構成されること. 5. 0. 年. 48505254565860626466687072747678. 8082. になろう。だから両勢力,争点を 結びつけられれば,その政治勢力. 495153555759616365676971737577798183 R.. Inglehart,. PoILitical Clevages p.30. 'The in. changing Western. Structure. of. Society'(1985),. ほ増加するはずであろう。しかし, そうはならない,というo一つの.

(15) 政党システムと労働者政党. 理由は,伝統的労働者階級が,戦後の経済成長の過程で,経済的地位や生活水準を向上さ せ,いわゆる「中産階級」化し,. 「ブルジョア」化し,階級-の帰属意識を弱め,階級投. 票率を下げる(23)(図4を参照)。新しく労働者政党を支持する人は,もともと政党への忠. 誠心をもっていたわけでほなく,また問題解決方法としての「単一争点運動」にみられる ように特定集団へ自由に参加するなど弱い政党支持勢力にとどまる(24)。労働者政党を支 持する伝統的階級の人々の中にほ,新しい争点-の反発や伝統的価値の故に右よりの政党 に移る人も出る.労働者政党にほ「統合という大変に荷の重い課題」(25)が残される。また, 新しい争点をめく小る対立は,伝統的な宗教的価値を守っている側を刺激し,右翼政党との 連携を強める結果をもたらしかねない(26)。労働者政党ほ,価値観,争点,支持基盤いず でれの面も,変化にさらされており,その対応に迫られている。しかし,労働者政党への 支持を減らすこのような要因のみが強調される傾向には注意しなければならない。階級投 票の低下という結果を招来するであろうこれらの要因と先に紹介した戦後左翼勢力の現状 維持ないし微増という事実ほ,どう関連するのであろうか。脱物質主義は,これまで無視 ないし軽視されてきた多くの争点を政治的アリーナ軒こひき出し,生活の質とt;、-・9論点の見 直しを迫った。これは大変なメリットがあった。しかし,それが極端になれば,自己破滅. に陥るであろう。つまり,その反産業主義ほ,脱物質主義的価値が依存している経済的基 礎を無視することにつながるからであるo物質主義と脱物質主義との総合こそ必要だ(2T), とイングル--トほ述べているが,労働者政党にとってもそれほ,大きな課題であろうo 西欧の政党システムに大きなインパクトを与え,変動をもたらし,新しいクリ-ヴィッジ. として定着するかにみえた脱物質主義という「静かな革命」は,結局,既存の政党システ ムを根本から揺がすまでには至らなかった。 現代西欧の労働者政党を中心に,社会的クリ-ヴィッジと政党システムの理論的枠組み の紹介とその問題点を指摘した。ここで取り上げた側面に限ってもなお残された問題点は 多く,また理論的検討も一層深められねばならないだろうo最後に,いくつか明らかにな った課題を指摘し,今後の政党論の見通しをのべて,結びとしたい。 西欧政治社会の構造-クリ-ヴィッジー争点のいずれの角度からみても変化が現実に生 じているにもかかわらず,政党システムには大きな変動が起っていない。これをどうとら えたらよいか,という問題がある。変化が生じている,といっても,その変化の幅ほ小さ. く,その内容も新しい性質を含んでおらず,システムの再編をもたらすほどのものでほな い,ということなのであろうか.この点について,レイプ-ルトの政党論は参考になる(28). 彼は,西欧諸国十六ヶ国と日本やアメリカ,インドなど非西欧諸国の民主政国家十ニヶ国,. 計二十八ヶ国の政党システムにおけるイデオロギーレゲエルのク1)-ヴィッジ構造を検討 している.彼ほこれを社会的クリ-ゲィッジと結びつけて論じているわけでほないが,そ. ①社会・経済, ②宗教, ③文化・エスニック, ⑤レジーム支持, ⑥対外政策, ⑦脱物質主義,である。各国の政党システ. れと重複する次の七点を取りあげている。 ④都市・農村,. ムに,これらのクリ-ヴィッジのどれが含まれているかを調べ,彼は,次のような結論を 下している。即ち,二十八ヶ国のすべてにわたり,社会・経済的クリ-ヴィッジが認めら れること,また,宗教的クリ-ゲィッジほ,それについで重要性をもっていること,さら. 35.

(16) 成. 36. 田. 博. 之. に,脱物質主義ク1)-ヴィッジは,ヨーロッパの三ヶ国(ノルウェー,スウェーデン,オ ランダ)で認められるが,そのヨーロッパにおける支持者は,. 70年代を通じて, -割強に. とどまり,政党システム-の影響は限られた範囲にとどまったことなどを,彼は指摘して いるく29)0. 労働者政党にとって重要と思われる点ほ,. ①のほか,とりわけ⑤と⑥のクリ-ヴィッジ. である.特に,共産党が大きな勢力をほこる国に,このクリ-ヴィッジがあてはまり,ユ ーロ・コミュニズム台頭以後も,大きな論点として残っている,とみている。この問題は,. サルト-リの反体制政党(anti-system party)(30)という概念とも関連するが,ここでほ, これ以上ふれない。ところで, ①のクリ-ゲィッジの具体的な争点として,彼ほ, (i)生産 手段の政府所有か私的所有か,. (ii凝済計画における政府の役割の大小,. (iH)所得再分配の是. 非, (iv)政府の社会福祉プ.=グラムの拡大・抑止,の巨乱如こまとめているが,これらはいず. れも,労働者政党が長年,取組んできた課題でもある.このようにみてくると,社会一経 済的クリ-ゲィッジにかかわる争点が,現代においても依然として大きな比重を占めてい ること,政党システムが,そして労働者政党が直面しているクリ-ゲィッジほ基本的に変 もちろん,その具体的争点や解決のための指針, っていないことが,改めて確認されようo 政策などほ,国ごとに,また時期ごとに変化しているわけで,政党の側がそれにどう対応 しているかが次の問題となろう。. 政党の環境への順応性,あるいは適応性という側面について,社会的クリ-ヴィッジ論 は,ともすれば,その主体的活動面を軽視しがちであった。レイプル-トほ,先の政党論 の中で,マクロ経済的政策遂行の最も重要な決定困ほ,統治政党が,左一右のスペクトル のどこに位置しているか,ということであり,このイデオロギー上の位置が政策結果に大 きな違いをもたらす,と述べている(31).政党,特に統治政党の主体的側面の重要性は, この指摘からも明らかであろう。政党は,自己に有利なクリ-ゲィッジを政治化したり, 逆に不利なそれを脱政治化したり,. 「戦略的な選択」を行う(32)o. また,争点についても, 政治的な論議事項(agenda)をコントロールする(33).とすれば,政党システムを構成する 政党が,これらの活動をどのように展開してきたか,特に労働者政党ほどのように自覚的 に対応してきたか,が検討されねばならないだろう。本論でほ,政党システムの内的連関. やそれの労働者政党への影響について,ふれられなかったが,これは今後の課題としたい。 社会的クリ-ゲィッジ論ほ,政党論の一つの分析視角にすぎず,これによってとらえら れる領域ほ,ごく限られている。政党論の大きな枠組みからみて,社会-政党という関係 の一部を扱っているにすぎず,他に,例えば,有権者の投票行動の研究などもここに含ま. れることを考えれば,その部分性は明らかであろう.政党一社会という反対の関係や政党 内の構造,政党システム,政党-政府・国家,政府・国家-政党の領域など,未開拓な分 野が政党論には残されている。政党論は,これまでともすれば,政治システムのいわば 「入力」面から論議される傾向が強かった。今後ほその「出力」面にかかわる研究が,一 層進められなければならないだろう。その点からみて,連合政府論(34)や政党の公共政策 請(35)などほ,こうした動向の現われとみてよいであろうo. 最近,現実の政治における政党の「衰退」や「後退」現象が指摘され(36',政党がかつての.

(17) 政党システムと労働者政党. 37. 政治システムの主役の座から降りた感がある。確かに,今日でも選挙投票日・開票日には, 国民注視の的となり,主役を務めてほいる。しかし,選挙における票数ではなく,それ以 外の多様な1)ソースをより大きく動員できる集団が,政府の政策決定過程を左右すること になれば(3ア),国民の関心が政党から離れ,政党が脇役にまわるのも無理からぬことかもし れない。このことがデモクラシーにとって,どういう意味をもつのか,また問題をはらん でいるのか,つきつめて論じられなければならない。そうでなければデモクラシーの樗来 に大きな症を残すことになるのではなかろうか。現実面ばかりでなく,理論面でも政党へ の関心が低下し,議論・検討される度合が低くなれば,このことが現実の政党政治への関 心を更に弱めるという悪循環を産み出さないとも限らない。これを避けるためにも,新し い政治動向に注意をはらい,それを取りこみながら,政党論を新たな角度から再構成する 試みが繰り返しなされるべきであろう(38).. (i). S. M.. in. S.M.. Lipset Lipset. Perspectives,. Party. Continuity. `Adaptation. Systems. Control:. and. H. Daalder. Voter. and. Voter. and. Alignments',. Alignment:. Cross・National. Towards. P. Mair. and. Understanding. an. (eds.),Western. Party. of Party. European. and. Systems;. 1983,. Change,. and. Systems,. Party. pp.ト64. Change'in. System. Structures,. (eds.),Party. S. Rokkan. and 1967,. P. Mair,. (2)例えば,. Lcleavage. S. Rokkan,. and. pp.405-431,川田潤一「社会的クリ-ゲィッジと政党システム 1986, 89-148ページ の変化」,西川知∵編『比較政治の分析枠組』ミネルヴァ書房, 'Nation. (3) S. Rokkan, in. S. Rokknn,. Processes. (4). Development,. of. for Research. (5). Western. in. `Radicalism. S. Lipset,. M.. Europe,. Lipset,. pp.. within. Europe'in. C. Tilly. (ed.), The. Sources. of. Condict,. pean. `stein. Valen,. Peripberiy 1981,. (7). G・. Political. of. Rokkan. The. 1985, H.. Nation. `stein. vol. 7. intellectual Nation. and. Study. of. the. A. Building:. Possible. Paradigm. Formation. of. National. Class. Politics.'. in. Memoir'.. Euro・. Working. S.. pp. 219-252. Daalder,. Research,. An. :. Structures. Politics',. pp. 562-600. Reformism:. (6) S.ロッカソの人と業績について, Journal. Comparative. the. and. 1975,. and. to. Mass. of. 72-144. Formation. or. Consensus. Structuring. the. and. Approaches. of State. Variations. on. Formation. Parties,. 1970,. `Dimensions. S. Rokkan,. States. Cleavage. Building,. Citi2:enS Elections. Per. pro丘Ie'in. Building. A. :. Rokkan. 192ト1979. (1979),. 4. no.. in. E.. pp.337-355,. Allardt. Ce‡1ter-. of Stein. commemoration. H.. and. (ed.), Mobilization,. To工SVik. volume. : A. Rokkan,. pp.ll-38,を参照。 Sartori,. Organization. `Tbe. Sociology. and. the. Emerging. Political. 'political. Cleavages. Alford. and. R.. of Parties,. Politics. Cleavages,'in Party. and. Friedland and. A. Theoletical. Conceptual. (1975). and. pp.23ト248,およびA. Tbeo工etical. lntroduction',. of. Otto. Society,. vol. Critical. (1974),pp.. Analysis'British Zuckerman,. Comparative. Political. Otto. 1968,. Politics,. pp.. 271-306,. Journal `New. A. Studies,. どの論文をこついては,今回ほふれることができなかったo. 66-76,なお, A. of. Studies, Political. to no.. P. H.. of. and. Merkl, R.R. Political. `political Cleavage. Political. vol. 15,. `past. pp.469-485,. Critique. Zucker皿an. Approaches. (ed.), Party. E. Allardt,. (1969). vol.21. Participation:. and. Stammer. pp.1-25,. (ed.),ibidem,. World. Parties, 1. Review'in. Masses,. Stammer. Svstems'. LNations,. Socio王ogy', Theory. A New. the. 2. (1982). vol.5,. :. no.2. Cleavage, pp. 13ト144,な. A.

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