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常葉大学教育学部新入生における自己意識の変化

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Academic year: 2021

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常葉大学教育学部新入生における自己意識の変化

吉 田 哲 也,伊 東 明 子

Changes…in…Self-Awareness…Among…First-Year…Students…in…

Tokoha…University's…Faculty…of…Education.

Tetsuya…YOSHIDA,…Akiko…ITO

2014 年 11 月 26 日受理 【問題と目的】  文部科学省(2014)による平成 24 年度の大学中退者・休学者状況の調査によ ると、中退者の 4.4%、休学者の 3.0%が「学校生活不適応」によって中退・休 学している。全体の割合からみると必ずしも大きな割合を占めているわけではな いが、国立・公立・私立別の割合を比較すると、学校生活不適応を理由とする 私立大学学部生の中退者率(5.1%)・休学者率(3.9%)は全体の平均より高く、 国立・公立と比較して割合が大きい。また、中退・休学理由としてあげられてい る選択肢の中で、「学校生活不適応」の問題は、「学業不振」と並んで大学におけ る学生支援(学生生活支援)体制や学内における学生を取り巻く環境整備、学生 に対する働きかけが有効に機能することが期待できる要因であり、一人でも多く の学生が大学生活に適応するよう支援することが必要であることは言うまでもな いだろう。  一方、本学学生における大学適応に関わる要因は何か、また関係する要因モデ ルについては明確な解は得られていない。仮にスクリーニングによって不適応傾 向の学生に早い段階から支援を行うことを企図するとしても、なにを指標とすれ ばよいかは現時点ではよくわからない。そこで、本研究ではその指標として自己 意識に焦点をあてることとする。たとえば松島(2012)は対人的自己効力感など と大学適応感の関連を検討しているが、いかなる自己意識が適応と関連している かはいまだ十分とはいえない。加えて、適応傾向を調査するためには比較的継時 的な調査が必要と思われる。これについて脇本(2013)も、大学適応に関して継 時的検討が必要であることを主張している。

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 このことについて、大学1年次の自己意識・自己認識の変化に関して、仲野・ 桜本(2009)が自己肯定感・自己受容・自我同一性の各概念における学期当初と 学期終了時の変化を検討し、それぞれ平均値の上昇があったことを明らかにして いる。ただ、この研究では調査実施時期が後期授業期間に限られており、大学に 入学して間もない前期授業期間における検討は行われていない。  そこで本研究では、大学入学して間もない新入生の段階からの自己意識に焦点 をあて、その変化を継時的に検討することを目的とする。そして、自己意識と関 連すると思われる諸要因を探索的に検討することで、大学新入生の大学生活への 適応のプロセスを探ることを目指す。  本研究では、自己意識として二つの概念を取り上げる。第一に仮想的有能感(他 者軽視)である。仮想的有能感とは、「自己の直接的なポジティブ体験に関係な く、他者の能力を批判的に評価・軽視する傾向に付随して習慣的に生じる有能さ の感覚」と定義される(速水 ,…2010)。この概念は専ら青年期の心理的問題とし て取り上げられてきた概念であり、いくつかの特徴が挙げられる。第一に、この 感覚は自身を他者より相対的に高く評価することによって生じるというよりもむ しろ、他者を低く評価する、すなわち下方比較することで生じると仮定されてい る点である(速水 ,…2006)。このことから、ネガティブな自己評価と仮想的有能 感との関係が示唆され、実際に速水は一連の研究で自尊感情と仮想的有能感を組 み合わせ、自尊感情が低く仮想的有能感が高い者が真の仮想的有能感を持つ者で あると仮定している。第二に、その際に想定される他者とは基本的に不特定多数 の他者であるとされる点である。ただ同時に速水は、日常的に接点の多い友人等 の他者に対しても仮想的有能感が転移する可能性があるとも述べている。また高 木・丹羽・速水(2008)は、仮想的有能感の強さの違いにおける3か月間の対人 感情の変化の違いを検討し、関係の初期段階で他者に対し否定的感情を抱いた仮 想的有能感の高い者は、3か月後にその否定的感情が強くなったことを示唆して いる。いずれにしても重要なのは、仮想的有能感と友人関係を含めた他者との人 間関係には関連性があることが主張されているということである。したがって、 たとえばサークル活動やアルバイト、ボランティア活動といった他者とのかかわ りの違い、あるいは他者とのコミュニケーションの頻度によって、仮想的有能感 の傾向に違いがみられる可能性が考えられる。  本研究で取り上げる第二の概念は、自己肯定感である。自己肯定感については 多くの研究があるが、本研究では田中(2005)の「自己に対して肯定的で、好ま しく思うような態度や感情」という定義に基づく自己肯定感を取り上げる。先述 したように、仮想的有能感は自尊感情と関連させて述べられることが多いが、田 中(2005)が主張するように、自尊感情と自己肯定感は近接する概念であり、自 己肯定感は自分自身に対する肯定的な態度・感情により焦点をあてた概念である

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と考えられている。神原・遠藤(2013)によると、基本的に自己肯定感は維持す るよう動機づけられているものの、いくつかの要因によって変容・変化する可能 性があることを示唆している。梅山・撫尾(2012)は、小学生に対して社会的ス キルを高める協同学習を行った結果、社会的スキルの低い児童の自己肯定感に変 化がみられたことを報告している。また今泉・内山・若松・大木(2007)は、自 己肯定感を高めることを目的とした心理的ワークプログラム実施前後で自己肯定 感に若干の変化がみられたことを報告している。このように自己肯定感は変化・ 変容する可能性はあるものの、上記の研究はいずれも自己肯定感を変化させるこ とを意図した働きかけによるものであり、大学生活や日常生活における通常の他 者との関わりによる自己肯定感の変容・変化を検討したものではない。また、中 下・岩井・大戸・佐藤・久保田・上原・宮崎(2012)のように、自己肯定感の変 容を企図した働きかけをおこなっても、必ずしも統計的に有意な自己肯定感の変 化・変容が全ての対象者にみられるとは限らない。神原・遠藤(2013)が述べる ように、基本的に自己肯定感は維持される傾向があるとすれば、大学生活や日常 生活での他者との関わりの違いで自己肯定感に大きな変化は見られない可能性は 考えられる。逆に言えば、もし自己肯定感に他の学生と比較して変化がみられた 場合、当該の学生は大学生活や日常生活での他者との関わりの中で何らかの原因 により自己肯定感に影響があらわれる可能性が考えられる。  以上より本研究では、入学当初の入学意思、サークル活動やアルバイト・ボラ ンティア活動といった他者とのかかわりの違い、あるいは他者とのコミュニケー ションの頻度の違いが仮想的有能感や自己肯定感に影響を与えるかを継時的に検 討することを目的に調査を行う。 【方法】 調査協力者 常葉大学教育学部に在籍している1年生であり、2014 年度前期教 職必修科目教育心理学または選択科目心理学を受講している学生に依頼した。 調査実施時に口頭と文書で説明合意を得ており、協力に合意したもののうち、 欠損データのあるもの、回答内容に明らかな疑いが認められ筆者2名の合議に より除外が合意されたもの、第1回または第2回調査で合意が得られなかった り欠席していたりしたものを除く 243 名(男性 120 名、女性 123 名)を分析対 象とした。平均年齢は第1回調査時点で 18.15 歳(SD:…0.53)、第2回調査時点 で 18.40 歳(SD:…0.65)だった。表1に学科・性別ごとの分析対象者数を示す。 調査時期 第1回調査は 2014 年4月 23 日~ 25 日に実施した。第2回調査は 2014 年7月 23 日~ 25 日に実施した。 調査方法 質問紙は個別自記入形式であり、上記授業時間内に筆者によって集合 調査形式で実施した。実施時間は説明を含め 15 分~ 20 分程度だった。

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質問紙の構成  第1回調査   フェイスシート(年齢・性別・学籍番号)のほか、以下の項目で構成した。 ⑴入学意思:本学に入学したかった気持ちの強さを1(入学したくなかった) ~ 10(入学したかった)の 10 段階で回答を求めた。 ⑵サークル・アルバイト・ボランティア活動の有無:サークルについては入部 したまたは入部することを決めているか、そうでないかを、アルバイトおよ びボランティア活動については、しているまたはする予定があるか、そうで ないかを、それぞれ2件法で回答を求めた。 ⑶他者とのコミュニケーション頻度:「家族(親兄弟誰か一人でも可)」、「学校 や塾の先生(以下、先生)」、「現在の同級生(以下、同級生)」、「友人」、「先輩」、 「自分の居住する地域の人(以下、地域)」「アルバイトやボランティア先の 年上の人(以下、年上)」を対象とし、各々との間でのコミュニケーション 頻度(直接的なコミュニケーションのほか、電話、メールや SNS 等のインター ネットを介したコミュニケーションも含めた)を求めた。回答は1(まった くしない)~5(よくする)までの5件法で求めたが、「年上」については、 アルバイト・ボランティアをおこなっていない調査協力者がいる可能性を考 慮し、0(やっていない)、1(まったくしない)~5(よくする)までの 6件法で回答を求めた。 ⑷仮想的有能感(他者軽視)尺度:速水(2006)の仮想的有能感尺度第二版 11 項目に対し、1(まったく思わない)~5(よく思う)までの5件法で 回答を求めた。尺度項目を表2に示す。 ⑸自己肯定感尺度:田中(2005)の自己肯定尺度 ver.2…8項目に対し、1(まっ たくあてはまらない)~4(よくあてはまる)までの4件法で回答を求めた。 尺度項目を表3に示す。なお、尺度項目のうち項目番号2、5、6、7は逆 転項目のため、分析にあたっては逆転項目の処理を行った後得点化を行った。  第2回調査   フェイスシートのほか、以下の項目で構成した。 ⑴サークル・アルバイト・ボランティア活動の頻度:各々その個数(活動団体 数またはアルバイト先数)と、一か月あたりの平均活動時間(複数の団体あ るいはアルバイト先がある場合、各々の平均活動時間を合計したもの)につ いて回答を求めた。 ⑵他者とのコミュニケーション頻度、⑶仮想的有能感(他者軽視)尺度、⑷自 己肯定感尺度は第1回調査と同じ尺度を用いた。

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表1 学科・性別ごとの分析対象者数 学科 男性 女性 計 初等教育課程 69 47 116 生涯学習学科 40 32 72 心理教育学科 11 44 55 表2 仮想的有能感(他者軽視)尺度の尺度項目 1 自分の周りには気のきかない人が多い。 2 他の人の仕事を見ていると、手際が悪いと感じる。 3 話し合いの場で、無意味な発言をする人が多い。 4 知識や教養がないのに偉そうにしている人が多い。 5 他の人に対して、なぜこんな簡単なことがわからないのだろうと感じる。 6 自分の代わりに大切な役目をまかせられるような有能な人は私の周りに少ない。 7 他の人を見ていて「ダメな人だ」と思うことが多い。 8 自分の意見が聞き入れてもらえなかった時、相手の理解力が足りないと感じる。 9 今の日本を動かしている人の多くは、たいした人間ではない。 10 世の中には、努力しなくても偉くなる人が少なくない。 11 世の中には、常識のない人が多すぎる。 表3 自己肯定感尺度の尺度項目 1 私は、自分ことを大切だと感じる。 2 私は、時々、死んでしまった方がましだと感じる。 3 私は、いくつかの長所を持っている。 4 私は、人並み程度には物事ができる。 5 私は、後悔ばかりをしている。 6 私は、何をやってもうまくできない。 7 私は、自分のことが好きになれない。 8 私は、物事を前向きに考える方だ。 【結果と考察】 1.仮想的有能感(他者軽視)尺度および自己肯定感尺度の内的妥当性の検討 仮想的有能感(他者軽視)尺度・自己肯定感尺度とも各々の作成者を中心として 研究が数多く存在し、尺度自体の有効性は確認されているが、念のため本研究に おいても内的妥当性の検討を行った。  まず、仮想的有能感(他者軽視)尺度について、第1回調査・第2回調査それ ぞれで確証的因子分析を行った。先行研究に従い1因子構造を仮定し分析したと ころ、第1回調査では GFI=0.94,…AGFI=0.90,…RMSEA=0.06 であり、第2回調 査では GFI=0.90,…AGFI=0.86,…RMSEA=0.09 であった。またα係数を算出した ところ、第1回調査では 0.83、第2回調査では 0.86 であった。以上の結果から、 仮想的有能感(他者軽視)尺度については第2回調査の AGFI・RMSEA の値が やや低いものの、概ね先行研究の通り1因子構造が妥当であると判断し、以降の

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分析を行った。  次に、自己肯定感尺度について、第1回調査・第2回調査それぞれで確証的因 子分析を行った。先行研究に従い1因子構造を仮定し分析したところ、第1回調 査では GFI=0.93,…AGFI=0.88,…RMSEA=0.11 であり、第2回調査では GFI=0.89,… AGFI=0.81,…RMSEA=0.14 であった。またα係数を算出したところ、第1回調 査では 0.83、第2回調査では 0.84 であった。以上の結果から、特に第2回調査 において内的妥当性がやや低いことが示唆されたが、今回は先行研究の通り1因 子構造で以降の分析を行うこととした。 2.第1回調査と第2回調査にかけての各指標の変化についての検討 2-1.調査協力者全員の分析 ⑴仮想的有能感尺度・自己肯定感尺度の検討  2回の調査における調査協力者全員の仮想的有能感および自己肯定感の平 均と SD を表4に示した。各尺度についてそれぞれ時期(4月、7月)を要 因とした1要因の分散分析をおこなった。仮想的有能感においては1%水準 で有意な主効果がみられ、7月の得点が4月よりも高かった(F[1,242]=25.06,… p<0.01)。自己肯定感については7月にかけて得点が低下する傾向がみられた (F[1,242]=2.91,…p<0.10)。 ⑵コミュニケーション頻度の検討  2回の調査における調査協力者全員のコミュニケーション頻度の平均と SD を表5に示した。コミュニケーションの各対象について、それぞれ時期(4月、 7月)を要因とした1要因の分散分析をおこなった結果、「家族」(F[1,242]=7.05,… p<0.01)、「先生」(F[1,242]=8.51,…p<0.01)、「地域」(F[1,242]=10.53,…p<0.01)の3 対象については4月から7月にかけてコミュニケーション頻度が有意に減少 していることが示された。反対に「同級生」(F[1,242]=4.08,…p<0.05)、「先輩」 (F[1,242]=6.01,…p<0.01)、「年上」(F[1,242]=25.00,…p<0.01)は4月から7月にかけ てコミュニケーション頻度が有意に増加していることが示された。なお、「年上」 については「アルバイト・ボランティアをおこなっていない」と回答した者を「非 体験者」とし、その人数について直接確率計算を用いて検討した結果7月にか けて有意に減少していることが示された(p<0.01)。  7対象のコミュニケーション頻度を合計した得点、年齢が上である4対象(先 生、先輩、地域、年上)に限ってコミュニケーション頻度を合計した得点につ いても同様に分散分析をおこなったが、いずれも有意な時期の主効果はみられ なかった。

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表4 各時期における仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 26.83(6.73) 28.60(7.50) 4月<7月** 自己肯定感 22.00(4.03) 21.74(4.24) 4月>7月† **p<0.01, † p<0.10  2-2.男女の比較 ⑴仮想的有能感尺度・自己肯定感尺度の検討  2回の調査における仮想的有能感、自己肯定感の平均と SD を男女別に示し たものが表6である。各尺度について、それぞれ性(男、女)と時期(4月、7月) を要因とした2要因の分散分析をおこなった。仮想的有能感においては性の主 効果(F[1,241]=9.77,…p<0.01)と時期の主効果(F[1,241]=24.92,…p<0.01)がそれぞ れ1%水準で有意であり、女子よりも男子の方が高いこと、7月の得点が4月 よりも高くなっていることが示された。自己肯定感について時期の主効果のみ に有意な傾向がみられ(F[1,242]=2.87,…p<0.10)、7月にかけて低くなっていく傾 向がみられた。 ⑵コミュニケーション頻度の検討  2回の調査における男女別のコミュニケーション頻度の平均と SD を表7に 示した。コミュニケーションの各対象について、それぞれ性(男、女)と時期 (4月、7月)を要因とした2要因の分散分析をおこなった。その結果、「家族」 は性の主効果(F[1,241]=16.63,…p<0.01)と時期の主効果(F[1,241]=7.08,…p<0.01) がそれぞれ1%水準で有意であり、男子よりも女子の方が高いこと、7月にか けて低くなっていることが示された。「先生」は性と時期の交互作用が有意な 傾向にあり(F[1,242]=3.59,…p<0.10)、単純主効果の検討をおこなった結果、男子 の変化のみに有意な差がみられ(p<0.01)、7月にかけて頻度が減少していく ことが示された。  その他の対象について時期の主効果のみが有意だったものは「同級生」 (F[1,241]=4.10,…p<0.05)、「 先 輩 」(F[1,241]=6.01,…p<0.05)、「 地 域 」(F[1,241]=10.48,… p<0.01)、「年上」(F[1,241]=24.88,…p<0.01)であるが、「同級生」「先輩」「年上」 の3対象はいずれも4月から7月にかけてコミュニケーション頻度が有意に増 加しており、反対に「地域」は7月にかけて有意に減少していた。「友人」に ついては有意な差はみられなかった。  また「年上」については「アルバイト・ボランティアをおこなっていない」 と回答した者を「非体験者」とし、その人数についてχ2検定を用いて検討し たが、有意な人数の偏りはみられなかった。  次に、7対象のコミュニケーション頻度を合計した得点、年上の4対象(先

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生、先輩、地域、年上)に限ってコミュニケーション頻度を合計した得点につ いても同様に分散分析をおこなったが、いずれも有意な差はみられなかった。 2-3.課程・学科間の比較 ⑴仮想的有能感尺度・自己肯定感尺度の検討  2回の調査における仮想的有能感、自己肯定感の平均と SD を課程・学科(以 下、学科)ごとに示したものが表8である。各尺度について、学科(初等教育課程; 以下、初等、生涯学習学科;以下、生涯、心理教育学科;以下、心理)と時期(4 月、7月)を要因とした2要因の分散分析をそれぞれおこなった。仮想的有能 感においては学科の主効果(F[2,240]=5.43,…p<0.01)と時期の主効果(F[1,240]=26.27,… p<0.01)にそれぞれ1%水準で有意な差がみられた。学科の主効果について Holm 法を用いた多重比較をおこなったところ、生涯がもっとも仮想的有能感 が高く、次いで初等であり、最も低い得点を示したのが心理だった(MSe=84.04,… p<0.05)。時期に関しては7月にかけて高くなっていくことが示された。自己 肯定感においては学科の主効果(F[2,240]=3.24,…p<0.05)のみに有意差がみられ、 Holm 法による多重比較をおこなったところ、初等と生涯の得点が心理よりも 高いことが示された(MSe=31.08,…p<0.05)。 ⑵コミュニケーション頻度の検討  2回の調査における学科別のコミュニケーション頻度の平均と SD を表9に 示した。コミュニケーションの各対象について学科(初等、生涯、心理)と時 期(4月、7月)を要因とした2要因の分散分析をそれぞれおこなった結果、「家 族」は学科と時期に有意な交互作用がみられた(F[2,240]=3.70,…p<0.05)。そこで 単純主効果の検定をおこなった結果、時期については4月における学科間に有 意な差がみられ、Holm 法による多重比較をおこなった結果、心理が初等と生 涯よりも高かった(MSe=0.59,…p<0.05)。学科ごとにおける時期の変化につい ては初等と生涯には有意な差はみられなかったが、心理のみに有意な差がみら れ、7月にかけて有意に減少していることが示された。  「先輩」については学科の主効果(F[1,240]=5.56,…p<0.01)と時期の主効果 (F[1,240]=5.36,…p<0.05) が そ れ ぞ れ 有 意 で あ っ た。 学 科 に つ い て Holm 法 に よる多重比較をおこなった結果、生涯と初等の得点が心理よりも高かった (MSe=2.43,…p<0.05)。また時期については7月にかけて高くなっていることが 示された。  その他の対象で時期の主効果のみが有意だったものは「先生」(F[1,240]=7.16,… p<0.01)、「地域」(F[1,240]=10.55,…p<0.01)、「年上」(F[1,240]=18.85,…p<0.01)であ り、「年上」は4月から7月にかけてコミュニケーション頻度が有意に減少し ていたが、反対に「先生」「地域」はいずれも7月にかけて有意に減少してい

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ることが示された。「同級生」「友人」「については有意な差はみられなかった。 また「年上」については「アルバイト・ボランティアをおこなっていない」と 回答した者を「非体験者」とし、その人数についてχ2検定を用いて検討したが、 有意な人数の偏りはみられなかった。  次に、7対象のコミュニケーション頻度を合計した得点、年上の4対象(先 生、先輩、地域、年上)に限ってコミュニケーション頻度を合計した得点につ いても同様に分散分析をおこなったが、いずれも有意な差はみられなかった。 2-4.考察  以上の結果より、大学入学時に比べて3か月後の7月では仮想的有能感は上昇 し、自己肯定感はやや低下する傾向が示された。また、コミュニケーションに関 しては「家族」「先生」「地域」との頻度は減少し、「同級生」「先輩」「アルバイ トやボランティア先の年上の人」との頻度は増加していた。  これらより大学に入学し行動の自由度が増す中で、高校生とはコミュニケー ションの対象が異なってくることが分かる。「家族」や「先生」といったいわば「保 護してくれる大人」ではなく「先輩」や「年上」の「少しだけ人生の先を歩いて いる人」との交流が増すことで様々なことを見聞きし、体験することができる。 その体験は大学生に大人になった実感をもたせ、多少なりとも世の中や人生につ いて学んだような感覚を持たせるかもしれない。特に男子について「家族」や「先 生」とのコミュニケーションの減少と仮想的有能感の増加がみられ、自分を子ど も扱いし、保護してくれる存在からの脱却と仮想的有能感の増加との関連が示唆 される結果となっている。  しかし自己肯定感は低下する傾向が示された。これに関しても行動範囲の広が りとさまざまな新しい体験との出会い、それに伴う人間関係の新たな構築などと の関連から考察することができる。これらは上述のように仮想的有能感を上昇さ せる刺激要因となりうるが、同時に体験の乏しい大学新入生にとっては自己の幼 さを痛感させられるストレスフルな要因でもある。ただ、今回得られた結果は傾 向差であり、大学に入って初めての定期試験直前という時期的な要因などを勘案 すると断言はできない。今後の時系列的なデータとコミュニケーションの質から の視点による更なる分析が必要とされる。

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表5 各調査時期におけるコミュニケーション頻度得点(SD) 4月 7月 有意性 家族 4.54(0.78) 4.40(0.91) 4月 > 7月 ** 先生 2.75(1.16) 2.50(1.18) 4月 > 7月 ** 同級生 4.67(0.69) 4.76(0.60) 4月 < 7月 * 友人 4.77(0.51) 4.74(0.55) n.s. 先輩 3.24(1.27) 3.43(1.27) 4月 < 7月 * 地域 2.69(1.22) 2.42(1.27) 4月 > 7月 ** 年上 2.28(1.46) 2.81(1.55) 4月 < 7月 ** 年上・ 非体験者(人) 109 64 4月 > 7月 ** 全7対象合計 24.93(4.30) 25.05(4.43) n.s. 年上4対象合計 10.96(3.61) 11.16(3.68) n.s. **p<0.01,*p<0.05  表6 男女ごとの各時期における仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 男子 28.27(7.01) 29.79(7.49) 性)男子 < 女子 ** 女子 25.43(6.12) 27.44(7.32) 時期)4月 > 7月 ** 自己肯定感 男子 22.25(4.29) 22.12(4.48) 性)n.s. 女子 21.76(3.75) 21.37(3.95) 時期)4月 > 7月† **p<0.01, † p<0.10  表7 男女ごとの各調査時期におけるコミュニケーション頻度得点(SD) 4月 7月 有意性 家族 男子 4.370(0.88) 4.19(1.01) 性)男子 < 女子 ** 女子 4.71(0.62) 4.60(0.74) 時期)4月 > 7月 ** 先生 男子 2.80(1.22) 2.39(1.16) 男:4月 < 7月 ** 女子 2.70(1.09) 2.61(1.18) 同級生 男子 4.68(0.62) 4.79(0.50) 時期)4月 < 7月 * 女子 4.66(0.75) 4.72(0.69) 友人 男子 4.79(0.43) 4.74(0.54) n.s. 女子 4.74(0.58) 4.74(0.55) 先輩 男子 3.23(1.28) 3.46(1.30) 時期)4月 <7 月 * 女子 3.24(1.26) 3.41(1.25) 地域 男子 2.69(1.22) 2.43(1.26) 時期)4月 > 7月 ** 女子 2.69(1.22) 2.41(1.28) 年上 男子 2.32(1.46) 2.83(1.59) 時期)4月 < 7月 ** 女子 2.24(1.47) 2.79(1.51) コミュニケーション 男子 54 33 n.s. 非体験者(人) 女子 55 31 全7対象 男子 24.88(4.31) 24.83(4.50) n.s. 合計 女子 24.98(4.29) 25.28(4.34) 年上4対象 男子 11.04(3.60) 11.10(3.72) n.s. 合計 女子 10.88(3.62) 11.21(3.63) **p<0.01,*p<0.05 

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表8 学科ごとの各時期における仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 初等 26.64(6.24) 28.03(7.09) 学科)生 > 初 > 心 ** 時期)4月 < 7月 生涯 28.64(7.04) 35.50(7.50) 心理 24.87(6.70) 27.33(7.85) 自己肯定感 初等 22.41(3.80) 22.10(4.01) 学科)初=生 > 心 * 生涯 22.21(3.68) 22.00(3.98) 心理 20.87(4.68) 20.64(4.80) **p<0.01,*p<0.05  表 9 学科ごとの各調査時期におけるコミュニケーション頻度得点(SD) 4月 7月 有意性 家族 初等 4.53(0.79) 4.46(0.89) 4月:心 > 初=生 * 心:4月 > 7月 生涯 4.38(0.84) 4.32(0.91) 心理 4.76(0.57) 4.38(0.92) 先生 初等 2.91(1.21) 2.62(1.17) 時期)4月 > 7月 ** 生涯 2.54(1.10) 2.38(1.20) 心理 2.67(1.05) 2.42(1.14) 同級生 初等 4.69(0.59) 4.85(0.40) n.s. 生涯 4.69(0.66) 4.69(0.70) 心理 4.58(0.89) 4.64(0.77) 友人 初等 4.77(0.42) 4.78(0.42) n.s. 生涯 4.79(0.53) 4.76(0.51) 心理 4.73(0.65) 4.64(0.77) 先輩 初等 3.32(1.13) 3.50(1.15) 学科)生=初 > 心 ** 時期)4月 < 7月 * 生涯 3.39(1.34) 3.64(1.33) 心理 2.87(1.39) 3.02(1.36) 地域 初等 2.68(1.19) 2.46(1.28) 時期)4月 > 7月 ** 生涯 2.79(1.26) 2.47(1.39) 心理 2.58(1.23) 2.25(1.05) 年上 初等 2.19(1.40) 2.89(1.54) 時期)4月 < 7月 ** 生涯 2.38(1.49) 2.75(1.55) 心理 2.35(1.56) 2.71(1.56) コミュニケーション 初等 54 27 n.s. 非体験者(人) 生涯 28 22 心理 27 15 全7対象 初等 25.10(4.01) 25.55(4.01) n.s. 合計 生涯 24.96(4.68) 25.01(5.00) 心理 24.55(4.34) 24.05(4.27) 年上4対象 初等 11.10(3.40) 11.47(3.43) n.s. 合計 生涯 11.10(3.90) 11.24(4.20) 心理 10.47(3.60) 10.40(3.33) **p<0.01,*p<0.05 

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3.課外活動と自己意識との関係の検討 3-1.4月時点におけるサークル活動意思との関係  第1回調査時点において、サークルに入部もしくは活動意思を示していたか否 かと仮想的有能感および自己肯定感の第1回・第2回調査における尺度得点の平 均値を比較した。まず仮想的有能感について、活動意思(あり・なし)×調査時 期(第1回・第2回)の2要因混合分散分析を行ったところ、調査時期の主効果 が有意だった(F[1,241]=22.08,…p<0.01)。活動意思の主効果および交互作用は有意 ではなかった。次に自己肯定感について分散分析を行ったところ、活動意思の主 効果が有意だった(F[1,241]=7.52,…p<0.01)。調査時期の主効果および交互作用は有 意ではなかった。 3-2.4月時点におけるアルバイト活動意思との関係  3-1. と同様に、アルバイト活動意思との関係を検討した。まず仮想的有能感に ついて分散分析を行ったところ、調査時期の主効果が有意だった(F[1,241]=18.78,… p<0.01)。活動意思の主効果および交互作用は有意ではなかった。次に自己肯 定感について分散分析を行ったところ、交互作用が 10% 水準で有意傾向だった (F[1,241]=3.48,…p<0.10)。アルバイト意思の主効果および調査時期の主効果は有意 ではなかった。交互作用が有意傾向だったため、試みに単純主効果の検定を行っ たところ、就労済みまたはアルバイト意思ありグループにおける調査時期の平均 値の差が有意だった(F[1,182]=5.77,…p<0.05)。 3-3.4月時点におけるボランティア活動意思との関係  3-1.、3-2. と同様に、ボランティア活動意思との関係を検討した。まず仮想 的有能感について分散分析を行ったところ、調査時期の主効果が有意だった (F[1,241]=25.34,…p<0.01)。活動意思の主効果および交互作用は有意ではなかった。 次に自己肯定感について分散分析を行ったところ、調査時期の主効果が 10% 水 準で有意傾向だった(F[1,241]=2.77,…p<0.10)。活動意思の主効果および交互作用は 有意ではなかった。以上の結果を表 10 に示す。 3-4.7月時点におけるサークル活動状況との関係  第1回調査時点における参加意思の有無と第2回調査時点における参加状況の 組み合わせで、以下の4群を設定した。 ・参加なし群:第1回調査時点で参加意思がなく、第2回調査でも参加していな い若しくは参加していると回答しているが活動時間が0時間である対象者から 構成した群 ・意思のみ群:第1回調査時点で参加意思があったが、第2回調査時点で参加し ていないもしくは参加していると回答しているが活動時間が0時間である対象 者から構成した群

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・参加群1:第1回調査時点で参加意思がなかったが、第2回調査で参加してい ると回答し、かつ活動時間が 0.1 時間以上の対象者から構成した群 ・参加群2:第1回調査時点で参加済みあるいは参加意思がなく、第2回調査で 参加していると回答し、かつ活動時間が 0.1 時間以上の対象者から構成した群  この4群間で、仮想的有能感および自己肯定感の第1回・第2回調査における 尺度得点の平均値を比較した。  まず、サークル活動状況の違いで上記4群を設定し、仮想的有能感を従属変数 として、サークル活動状況⑷×調査実施時期⑵の分散分析を行ったところ、調査 時期の主効果(F[1,239]=16.23,…p<0.01)が有意だった。サークル活動状況の主効果 および交互作用は有意ではなかった。  次に自己肯定感を従属変数として同様の分析を行ったところ、サークル活 動状況の主効果(F[3,239]=2.50,…p<0.10)および調査時期の主効果(F[1,239]=3.05,… p<0.10)がそれぞれ 10% 水準で有意傾向だった。交互作用は有意ではなかった。 サークル活動状況の主効果が有意傾向だったため、試みに Shaffer の法による多 重比較を行ったが、いずれの水準間も有意ではなかった。 3-5.7月時点におけるアルバイト活動状況との関係  第1回調査時点での参加意思の有無と第2回調査時点での参加状況の組み合わ せを、3-4. と同様に設定し、同様の分析を行った。まず仮想的有能感について分 散分析を行ったところ、調査時期の主効果が有意だった(F[1,239]=13.65,…p<0.01)。 また、アルバイト活動状況の主効果が 10%水準で有意傾向だった(F[3,239]=2.49,… p<0.10)。交互作用は有意ではなかった。アルバイト活動状況の主効果が有意傾 向だったため、試みに Shaffer の法による多重比較を行ったが、いずれの水準間 も有意ではなかった。  次に、自己肯定感について同様の分析を行ったところ、アルバイト活動状況 の主効果が有意だった(F[3,239]=2.77,…p<0.05)。調査実施時期の主効果および交 互作用は有意ではなかった。アルバイト活動状況の主効果が有意だったため、 Shaffer の法による多重比較を行ったところ、参加群1の方が参加なし群より自 己肯定感得点が大きかった。他の水準間の差は有意ではなかった。 3-6.7月時点におけるボランティア活動状況との関係  ボランティア活動状況によって 3-4.、3-5. と同様の群を設定し、同様の分析を 行った。まず仮想的有能感について分析を行ったところ、調査実施時期の主効果 が有意だった(F[1,239]=19.27,…p<0.01)。ボランティア活動状況の主効果および交 互作用は有意ではなかった。次に自己肯定感について分析を行ったところ、ボラ ンティア活動状況の主効果(F[3,239]=1.61)、調査実施時期の主効果および交互作 用のいずれも有意ではなかった。以上の結果を表 11 に示す。

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3-7.考察  仮想的有能感については課外活動の種別や状況によらず、第2回調査時点の方 が第1回調査時点より相対的に高くなったことが示唆された。前述したように、 仮想的有能感は友人等親しい他者に対して感じる可能性がある。7月時点では4 月時点と比べて、同級生に対する親和性が高まったことが予想されるが、そのこ とによって仮想的有能感を高めることにつながったのかもしれない。ただし、親 しい他者以外の(親和性の低い)他者との比較によって生じた可能性も否定できない。  一方、自己肯定感については、第1回調査・第2回調査の間で基本的に大きな 変化は見られなかった。このことは、自己肯定感を変容させる働きかけや出来事 を経験しなければ、自己肯定感は一定であることを示唆しているのかもしれない。 一方で、課外活動を行う意思や、第2回調査時点の実際の参加状況が自己肯定感 に影響を与える可能性が示唆され、課外活動を通じた他者とのかかわりが自身の 自己肯定感(自己肯定意識)に影響を与える可能性が考えられる。ただ、今回の 調査ではその違いはわずかなものであり、課外活動への参加がどの程度自己肯定 感に影響を与えるのかは今後継続的な検討が必要であるだろう。 表 10 第1回調査時点の課外活動意思別の仮想的有能感・自己肯定感の平均(SD) 課外活動意思 n 仮想的有能感得点 自己肯定感得点 第1回調査 第2回調査 第1回調査 第2回調査 サークル活動 入部済みまたは意思あり 162 26.82(6.60) 28.59(7.27) 22.54(3.83) 22.18(4.00) 意思なし 81 26.86(7.06) 28.62(8.02) 20.93(4.26) 20.86(4.61) アルバイト 就労済みまたは意思あり 183 26.94(6.72) 28.70(7.41) 22.21(3.88) 21.79(4.11) 意思なし 60 26.50(6.86) 28.30(7.87) 21.37(4.46) 21.60(4.69) ボランティア 活動ありまたは意思あり 134 27.52(7.01) 29.11(7.64) 21.69(4.35) 21.39(4.51) 意思なし 109 25.98(6.33) 27.98(7.34) 22.39(3.61) 22.17(3.87)

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表 11 課外活動参加状況・調査実施時期別の仮想的有能感・自己肯定感の平均(SD) 課外活動種別 調査実施時期 課外活動参加状況 参加なし 参加意思のみ 参加群1 参加群2 仮想的有能感 サークル n 47 27 34 135 第1回 27.26(6.38) 26.78(7.30) 26.32(7.97) 26.82(6.48) 第2回 28.70(7.27) 28.19(8.44) 28.50(9.07) 28.67(7.05) アルバイト n 42 54 18 129 第1回 27.74(6.92) 26.22(5.71) 23.61(5.92) 27.24(7.10) 第2回 29.64(8.30) 27.41(6.84) 25.17(5.81) 29.24(7.60) ボランティア n 100 61 34 48 第1回 27.79(7.55) 26.03(6.03) 26.74(5.12) 25.92(6.76) 第2回 29.67(8.16) 27.59(7.03) 27.44(5.64) 28.48(7.76) 自己肯定感 サークル n 47 27 34 135 第1回 21.00(4.72) 22.89(3.62) 20.82(3.59) 22.47(3.88) 第2回 20.89(5.07) 21.96(3.97) 20.82(3.95) 22.22(4.02) アルバイト n 42 54 18 129 第1回 20.43(4.12) 22.13(4.11) 23.56(4.55) 22.24(3.80) 第2回 20.74(4.33) 21.46(4.50) 23.61(5.00) 21.92(3.94) ボランティア n 100 61 34 48 第 1 回 21.59(4.67) 22.89(3.34) 21.97(3.27) 21.75(3.86) 第 2 回 21.10(4.77) 22.57(3.85) 22.24(3.59) 21.67(3.88) 4.入学意思と自己意識との関係の検討 4-1.入学意思と自己意識の相関  入学意思の強さと、仮想的有能感(第1回・第2回)・自己肯定感(第1回・ 第2回)の相関を求めた結果を表 12 に示す。分析の結果、入学意思と第 1 回調 査時点の仮想的有能感の間(r=-0.25,…t[241]=4.05,…p<0.01: 両側検定)、および入学 意思と第2回調査時点の仮想的有能感の間(r=-0.18,…t[241]=2.79,…p<0.01: 両側検定) に弱い負の相関が得られた。 4-2.入学意思および課外活動参加状況と自己意識との関係  試みに入学意思の強さと第2回調査段階での課外活動の参加状況との組み合わ せで以下の4群を設定し、第1回および第2回調査時点における、仮想的有能感・ 自己肯定感の得点を比較した(表 13 参照)。 ・第1群:入学意思が相対的に低く(入学意思尺度 1 ~5)、第2回調査段階で 実質的に活動を行っていない(活動していない、あるいは活動団体数の記載が あっても活動時間が 0.1 時間以下) ・第2群:入学意思が相対的に高く(入学意思尺度6~ 10)、第2回調査段階で 活動を行っていない ・第3群:入学意思が相対的に低く、第2回調査段階で活動している ・第4群:入学意思が相対的に高く、第2回調査段階で活動している ⑴サークル活動状況との関係  仮想的有能感を従属変数として分散分析を行った結果、4群の主効果 (F[3,239]=2.95,…p<0.05)、調査時期の主効果(F[1,239]=9.92,…p<0.01)が有意だったが、

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4群間の多重比較の結果はいずれの群間も有意ではなかった。自己肯定感につ いては、調査時期の主効果のみ有意だった(F[1,239]=3.98,…p<0.05)。 ⑵アルバイト活動状況との関係  仮想的有能感を従属変数として分析した結果、4群の主効果(F[3,239]=2.98,… p<0.05)および調査時期の主効果(F[1,239]=15.21,…p<0.01)が有意だったが、4 群間の多重比較の結果はいずれの群間も有意ではなかった。自己肯定感につい ては、いずれの効果も有意ではなかった。 ⑶ボランティア活動状況との関係  仮想的有能感を従属変数として分析した結果、交互作用が有意だった (F[3,239]=4.99,…p<0.01)。そこで単純主効果の検定を行ったところ、第1回調査 時における4群間の差が有意だった(F[3,239]=4.45,…p<0.01)。Shaffer の法に よる多重比較の結果、第2回調査時におけるボランティア活動の有無によら ず、入学意思の高い群より低い群の方が仮想的有能感は高かった。第2回調 査時における4群間の差も有意だったが(F[3,239]=2.68,…p<0.05)、多重比較の結 果はいずれの群間も有意ではなかった。また、第1群を除く3つの群におい て、調査実施時期の違いによる仮想的有能感得点の差が有意または 10% 水準 で有意傾向だった(第1群:F[1,51]=0.04;…第2群:F[1,108]=24.39,…p<0.01;…第3群: F[1,29]=9.46,…p<0.01;… 第4群:F[1,59]=3.02,…p<0.10)。自己肯定感を従属変数とし て分析した結果、いずれの効果も有意ではなかった。 4-3.考察  以上の結果から、入学当初の入学意思の強さと仮想的有能感の強さにわずかに 関係がみられることが示唆された。教育学部に入学してくる学生の中には、教員 養成系の国公立大を第一志望としていたものの、最終的に本学に入学してきた学 生もいると思われる。そのような学生にとって、同級生の存在は自分自身の仮想 的な有能感を高める存在である可能性はある。ただその違いはわずかなレベルで あり、本人の大学生活の適応状況とどの程度関連してくるのかは、今回の調査か らは読み取れない。いわゆる不本意入学による不適応の問題については、今後の 検討が必要だろう。一方、このような入学意思と課外活動への参加状況との関連 はあまり見られなかった。入学の際の入学意思の強さがどうであれ、課外活動へ の参加意欲・参加状況にはあまり影響を与えない可能性が考えられる。 表 12 入学意思と仮想的有能感・自己肯定感各得点との間の相関係数 仮想的有能感 仮想的有能感 自己肯定感 自己肯定感 (第 1 回調査) (第2回調査) (第1回調査) (第2回調査) -0.25** -0.18** 0.08 0.02 **:p<0.01 

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表 13 入学意思×課外活動参加状況による4群における自己意識2得点の平均(SD) 課外活動種別 調査実施時期 入学意思×課外活動参加状況 第1群 第2群 第3群 第4群 仮想的有能感 サークル n 20 54 54 115 第1回 30.35(7.61) 25.87(5.94) 28.54(8.42) 25.87(5.71) 第2回 29.85(8.39) 28.02(7.40) 30.22(8.39) 27.90(6.90) アルバイト n 31 65 43 104 第1回 28.97(7.31) 25.89(5.51) 29.07(8.87) 25.86(5.95) 第2回 29.29(8.26) 27.95(7.22) 30.72(8.44) 27.92(6.97) ボランティア n 52 109 22 60 第1回 29.65(8.56) 25.92(5.86) 27.55(7.24) 25.78(5.64) 第2回 29.50(8.44) 28.59(7.49) 31.59(8.09) 26.75(6.04) 自己肯定感 サークル n 20 54 54 115 第1回 21.60(4.59) 21.72(4.40) 21.78(4.50) 22.30(3.54) 第2回 20.60(5.02) 21.54(4.60) 21.80(4.58) 22.01(3.77) アルバイト n 31 65 43 104 第1回 21.23(4.38) 21.46(4.12) 22.09(4.59) 22.53(3.60) 第2回 21.39(4.86) 21.03(4.22) 21.53(4.64) 22.38(3.86) ボランティア n 52 109 22 60 第 1 回 22.12(4.63) 22.06(4.08) 20.82(4.11) 22.22(3.36) 第 2 回 21.42(4.92) 21.77(4.29) 21.59(4.24) 22.02(3.59) 5.コミュニケーション頻度の違いによる4群における自己意識の比較  4月と7月の両調査時期のコミュニケーション頻度をもとに調査協力者を以下 の4群に分類し、仮想的有能感と自己肯定感の2尺度の得点を比較した。 ・高高群:両時期でいずれも当該対象とのコミュニケーション頻度が高かった群 ・高低群:4月では当該対象との高いコミュニケーションを示したが、7月には その頻度が低くなっていた群 ・低高群:4月には当該対象とのコミュニケーション頻度は低かったものの、7 月に高い頻度となっていた群 ・低低群:両時期でいずれも当該対象とのコミュニケーション頻度が低かった群  なお「年上」に関しては、両時期を通じてコミュニケーションをおこなってい ない者を「未体験群」として抽出し、比較に加えることとした。 5-1.家族  群と時期(4月、7月)を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮 想的有能感については交互作用に有意な傾向がみられた(F[3,239]=2.15,…p<0.10)。 そこで単純主効果の検定をおこなった結果、時期における群間差については7月 に有意な傾向がみられたが(p<0.10)、Holm 法による多重比較をおこなった結 果、明確な差は示されなかった。各群における時期での違いについては、高高群 (p<0.10)、高低群(p<0.05)、低高群(p<0.01)において有意であり、いずれも 7月にかけて増加していた。低低群については有意な差はみられなかった。自己 肯定感についても同様の分散分析をおこなったが、有意な差はみられなかった(表 14 参照)。

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5-2.先生  群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感につ いては時期の主効果が有意であり(F[1,239]=26.02,…p<0.01)、7月にかけて増加し ていた。自己肯定感についても同様の分散分析をおこなったが、有意な差はみら れなかった(表 15 参照)。 5-3.同級生  群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感につ いては群の主効果(F[3,239]=3.03,…p<0.01)と時期の主効果(F[1,239]=8.95,…p<0.01) がそれぞれ有意だった。群間差について Holm 法による多重比較をおこなった 結果、高低群の得点が他の3群よりも高かった(MSe=85.09,…p<0.05)。時期に関 しては7月にかけて増加していることが示された。自己肯定感についても同様の 分散分析をおこなったが、有意な差はみられなかった(表 16 参照)。 5-4.友人  群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感に 有意な交互作用がみられた(F[3,239]=3.32,…p<0.05)。そこで単純主効果の検定を おこなった結果、各群における時期での違いについては高低群にのみ有意な差 がみられ(p<0.01)、7月にかけて上昇していた。各時期における群間差につい てはいずれも有意な差はみられなかった。自己肯定感については時期の主効果 (F[1,239]=3.13,…p<0.10)が有意傾向であり、7月にかけて減少していた(表 17 参照)。 5-5.先輩  群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感につ いては時期の主効果が有意であり(F[1,239]=26.63,…p<0.01)、7月にかけて上昇し ていた。自己肯定感についても同様の分散分析をおこなったが、有意な差はみら れなかった(表 18 参照)。 5-6.地域  群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感につ いては時期の主効果が有意であり(F[1,239]=24.26,…p<0.01)、7月にかけて上昇し ていた。自己肯定感についても同様の分散分析をおこなったが、有意な差はみら れなかった(表 19 参照)。 5-7.年上  群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感につ いては時期の主効果が有意であり(F[1,238]=15.72,…p<0.01)、7月にかけて上昇し ていた。自己肯定感についても同様の分散分析をおこなったが、有意な差はみら れなかった(表 20 参照)。

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5-8.コミュニケーション7対象の合計  全7対象とのコミュニケーション頻度の合計をもとに、4群に分類した。 群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感につい ては時期の主効果が有意であり(F[1,239]=22.72,…p<0.01)、7月にかけて増加して いた。自己肯定感についても同様の分散分析をおこなったが、有意な差はみられ なかった(表 21 参照)。 5-9.年上4対象の合計  全7対象のうち「年上の4対象(先生、先輩、地域、年上)」とのコミュニケー ションの合計をもとに、4群に分類した(表 22 参照)。  群と時期を要因とした2要因の分散分析をおこなった結果、仮想的有能感につ いては時期の主効果が有意であり(F[1,239]=25.28,…p<0.01)、7月にかけて増加し ていた。  自己肯定感についても同様の分散分析をおこなったところ、群の主効果に有意 な傾向がみられた(F[3,239]=2.24,…p<0.10)。そこで Holm 法による多重比較をおこ なった結果、高高群が他の3群よりも高い得点を示し、また低低群は低高群より も低い得点であることが示された(MSe=30.71,…p<0.05)。 5- 10.考察  以上の結果より、「同級生」「友人」において、入学後3か月でコミュニケーショ ン頻度が低下した群の仮想的有能感が上昇したことが示された。大学生にとっ て「同級生」や「友人」は対等の存在であり、そのコミュニケーションは自己と 他者とを客観的に認識するための指針となる。交流の低下によって客観的な評価 をする機会が失われ、それが仮想的有能感の上昇に結び付くと考えることができ るが、明確な根拠とは言い難い。同様に自己肯定感についても、年上の対象との 高いレベルでのコミュニケーションを維持することとの関連が示唆される結果と なったが、引き続き継時的な測定をし、長期的なスパンでの変化の検討が必要と される。

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表 14 「家族」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 7月における群間差† 高高(n = 124) 25.82(6.22) 27.33(7.21) 多重比較の結果n.s. 高低(n = 38) 26.63(6.62) 28.66(7.15) 高高群:4月 < 7月† 低高(n = 22) 27.18(6.38) 30.25(7.83) 高低群:4月 < 7月 * 低低(n = 59) 28.95(7.41) 30.25(7.83) 低高群:4月 < 7月 ** 自己肯定感 n.s. 高高(n = 124) 22.50(4.10) 22.10(4.35) 高低(n = 38) 21.63(4.30) 21.39(4.94) 低高(n = 22) 21.45(2.98) 21.77(2.94) 低低(n = 59) 21.39(3.90) 21.19(3.81) **p<0.01,*p<0.05, † p<0.10  表 15 「先生」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 高高(n = 61) 25.95(5.55) 28.05(6.32) 時期)4月 < 7月 ** 高低(n = 61) 27.10(7.49) 29.15(8.89) 低高(n = 36) 26.50(5.82) 28.81(7.44) 低低(n = 85) 27.45(7.18) 28.52(7.17) 自己肯定感 n.s. 高高(n = 61) 22.77(4.50) 22.43(4.48) 高低(n = 61) 22.07(3.72) 21.85(3.76) 低高(n = 36) 22.28(3.62) 22.00(3.67) 低低(n = 85) 21.28(3.93) 21.06(4.50) **p<0.01  表 16 「同級生」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 高高(n = 162) 22.30(6.53) 28.55(7.80) 群間差) 高低(n = 24) 29.88(7.25) 32.04(6.71) 高低 > 低低=高高=低高 低高(n = 37) 25.38(5.97) 27.38(6.28) 時期)4月 < 7月 ** 低低(n = 20) 27.40(7.74) 27.15(6.58) 自己肯定感 n.s. 高高(n = 162) 22.30(3.92) 21.94(4.17) 高低(n = 24) 21.67(4.59) 21.46(4.01) 低高(n = 37) 21.57(3.87) 21.70(4.03) 低低(n = 20) 20.80(4.13) 20.55(5.12) **p<0.01 

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表 17 「友人」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 高低群:4月 < 7月 ** 高高(n = 163) 27.09(6.86) 28.57(7.60) 高低(n = 31) 25.97(6.59) 30.52(7.59) 低高(n = 26) 26.08(5.80) 26.92(7.05) 低低(n = 23) 27.00(6.81) 28.13(6.46) 自己肯定感 n.s. 高高(n = 163) 22.40(4.06) 22.20(4.15) 高低(n = 31) 21.26(4.31) 21.03(4.63) 低高(n = 26) 21.54(3.59) 21.69(3.81) 低低(n = 23) 20.70(3.41) 19.52(3.95) **p<0.01, † p<0.10  表 18 「先輩」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 時期)4月 < 7月 ** 高高(n = 101) 27.35(6.71) 29.12(7.72) 高低(n = 27) 26.59(6.54) 29.56(7.44) 低高(n = 42) 27.00(5.45) 29.71(6.30) 低低(n = 73) 26.11(7.39) 26.89(7.55) 自己肯定感 n.s. 高高(n = 101) 22.37(3.64) 21.96(3.73) 高低(n = 27) 21.89(4.07) 21.63(4.25) 低高(n = 42) 22.71(3.89) 22.81(3.97) 低低(n = 73) 21.12(4.44) 20.86(4.83) **p<0.01  表 19 「地域」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 時期)4月 < 7月 ** 高高(n = 71) 25.73(6.37) 27.77(7.67) 高低(n = 48) 26.23(7.10) 28.50(7.35) 低高(n = 26) 27.92(6.91) 30.31(7.65) 低低(n = 98) 27.63(6.60) 28.80(7.32) 自己肯定感 n.s. 高高(n = 71) 22.38(3.49) 22.01(3.76) 高低(n = 48) 22.85(4.43) 22.19(4.26) 低高(n = 26) 21.46(4.21) 21.65(4.62) 低低(n = 98) 21.45(4.09) 21.35(4.41) **p<0.01 

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表 20 「年上」とのコミュニケーションの頻度別5群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 時期)4月 < 7月 ** 高高(n = 47) 26.36(6.38) 28.00(6.73) 高低(n = 16) 28.19(5.35) 28.81(6.34) 低高(n = 63) 25.10(6.51) 28.49(7.65) 低低(n = 73) 28.34(7.00) 29.26(8.17) 未体験(n = 44) 26.82(6.71) 28.23(7.19) 自己肯定感 n.s. 高高(n = 47) 23.28(4.05) 23.38(4.09) 高低(n = 16) 21.69(3.96) 21.63(4.43) 低高(n = 63) 22.19(3.69) 21.83(3.78) 低低(n = 73) 21.67(4.09) 21.05(4.39) 未体験(n = 44) 21.02(4.03) 21.05(4.19) **p<0.01  表 21 コミュニケーション(全7対象)の合計得点別の4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 時期)4月 < 7月 ** 高高(n = 86) 25.88(6.49) 28.17(7.74) 高低(n = 45) 28.56(6.25) 30.27(6.84) 低高(n = 29) 26.79(5.81) 29.21(6.59) 低低(n = 83) 26.89(7.31) 27.93(7.72) 自己肯定感 n.s. 高高(n = 86) 23.01(3.84) 22.67(3.82) 高低(n = 45) 21.69(4.45) 21.31(4.57) 低高(n = 29) 22.00(3.23) 22.24(3.49) 低低(n = 83) 21.12(4.00) 20.83(4.47) **p<0.01  表 22 コミュニケーション(年上4対象)の合計得点別の4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 時期)4月 < 7月 ** 高高(n = 78) 26.00(6.63) 28.26(7.62) 高低(n = 49) 27.98(6.24) 29.39(7.14) 低高(n = 34) 26.62(6.20) 29.44(7.87) 低低(n = 82) 27.02(7.19) 28.11(7.37) 自己肯定感 群) 高高(n = 78) 23.12(3.84) 22.82(3.88)  高高 > 高低、低高、低低 高低(n = 49) 21.63(3.85) 21.37(4.17)  低高 > 低低† 低高(n = 34) 21.47(3.70) 21.97(3.98) 低低(n = 82) 21.38(4.22) 20.84(4.47) **p<0.01, †p<0.10 

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6.入学意思・課外活動の活動量・コミュニケーション頻度の変化と、第2回調 査時の仮想的有能感・自己肯定感との関係  4月当初の入学意思や課外活動の活動量、対人コミュニケーションの頻度にお ける第1回調査時と第2回調査時の変化が、第2回調査時における仮想的有能感 や自己肯定感の程度と関係しているのか探索的に検討すべく、入学意思・課外活 動の活動量・対人コミュニケーション頻度の変化量を説明変数、第2回調査時に おける仮想的有能感・自己肯定感を目的変数として重回帰分析を行った。分析に あたり、以下のような変数操作を行った。 ・課外活動の活動量:第1回調査時において、課外活動に意欲を見せていなかっ た学生が第2回調査時で課外活動を行っている場合、何らかの変化を示したと 考えた。そこで、第2回調査時におけるサークル活動時間、アルバイト活動時間、 ボランティア活動時間を、第1回調査時において各々の活動をする予定がない と回答した調査協力者にのみ 1.5 を係数としてかけ、各々の課外活動量とした。 ・対人コミュニケーション頻度の変化量:コミュニケーション7対象それぞれに ついて、第2回調査時の回答から第1回調査時の回答を引いた値を変化量とし た。各変化量の平均と SD を表 23 に示す。  なお、コミュニケーション頻度の変化量の関係から、アルバイトやボランティ ア活動を第2回調査時に行っていない調査協力者を分析から除外した。結果、男 性 87 名、女性 92 名に対し、上記の分析を行った。 6-1.仮想的有能感について  強制投入法により分析を行ったところ、同級生に対するコミュニケーション変 化量・先輩に対するコミュニケーション変化量および4月当初の入学意思の標準 偏回帰係数のみ有意だった(F[11,167]=2.04,…p<0.05;… 自由度調整済み R 2=0.06)。試 みに、課外活動の活動量を、第2回調査時における活動時間そのものとして分析 を行ったが、課外活動の活動量の標準偏回帰係数は有意とはならなかった。そこ で同級生に対するコミュニケーション変化量・先輩に対するコミュニケーション 変化量および4月当初の入学意思の3変数のみを説明変数として再度分析を行っ たところ、3つの説明変数すべてが有意だった(F[3,175]=6.34,…p<0.01;…自由度調整 済み R2=0.08)。結果を表 24 に示す。さらに試みに、第2回調査時における仮想 的有能感得点から第1回調査時の得点を引いた値を仮想的有能感変化量とし、こ れを目的変数として再度分析を行ったところ、友人とのコミュニケーション変化 量の標準偏回帰係数のみ有意だった(β =……-0.23,…p<0.01)。 6-2.自己肯定感について  自己肯定感についても仮想的有能感と同様に分析を行ったが、すべての説明変 数について標準偏回帰係数は有意とはならなかった(F[11,167]=0.40; 自由度調整済 み R2…=-0.04)。試みに、仮想的有能感変化量と同様に自己肯定感についても変化

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量を算出し、これを目的変数として分析を行ったところ、同級生とのコミュニケー ション変化量の標準偏回帰係数のみ有意だった(β =0.18,…p<0.05)。 6-3.考察  上記の結果から、同級生や友人・先輩といった比較的同世代の他者との関わり が自己意識に変化をもたらす可能性が示唆された。仮想的有能感に関しては、同 級生や友人のような上下関係があまり意識されない他者との関わりが低下するこ とによって、わずかに仮想的有能感を高める可能性が示唆された。3-7. で述べた ように、今回の調査では仮想的有能感は高まる傾向にあったが、それは同級生や 友人との親和性が高まったためではない可能性が考えられる。ただ標準偏回帰係 数の数値もわずかであること、説明率の値も低いことから、仮想的有能感の変化 に影響を与えた要因は別に存在する可能性は否定できない。また4.項の結果と 同様、入学意思と仮想的有能感の程度にはわずかに関連がみられた。したがって、 入学当初の本学への志望動機等が少なくとも前期期間中は仮想的有能感に影響を 与えた可能性が考えられる。一方、自己肯定感についてはほとんどの変数が影響 を与えたとはいえなかった。その中で、同級生との関わりが影響を与えたことは、 いわゆる「心の居場所」を感じることが出来るような他者との関わりが自己肯定 感に影響を与える可能性が考えられる。 表 23 コミュニケーション7対象に対するコミュニケーション頻度変化量(SD) 家族 先生 同級生 友人 先輩 地域の人 バイト・ボランティア の年上 -0.14(0.81) -0.13(1.28) 0.05(0.66) -0.04(0.60) 0.31(1.19) -0.19(1.36) 1.26(2.02) 表 24 第2回調査時の仮想的有能感に関する重回帰分析結果 β 同級生に対する コミュニケーション変化量 -0.19* 先輩に対する コミュニケーション変化量 0.16 4月当初の入学意思 -0.21** 自由度調整済みR2 0.08** 【まとめ】  本研究の目的は、課外活動の状況やコミュニケーション頻度を通して、他者と のかかわり方の違いが自己意識に与える影響を継時的に検討することであった。  調査の結果、仮想的有能感(他者軽視)傾向には、同級生や友人、先輩といっ た比較的身近な他者とのかかわりが影響を与える可能性が示唆された。このうち、

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同級生や友人といった比較的対等な立場の他者とのかかわりは、自己を客観視す ることにつながり、結果的に現実的な有能感の認識につながる可能性が考えられ る。また、年上の中でも先輩のような比較的身近な他者とのかかわりも、ロール モデルとしての他者の認識に伴う自己の客観視につながる可能性を示唆させる。 一方で、課外活動への積極性あるいは積極性の変化は仮想的有能感の変化にほと んど影響を及ぼさない可能性が示唆された。本研究における課外活動への参加状 況調査は、参加意思の有無や参加時間数といったどちらかといえば量的側面に限 られており、どのような参加状況であるのかといった質的側面を調査していない。 コミュニケーション頻度との関連から垣間見えるように、どのような他者といか なる関わりを持ったのかという質的側面でのかかわり方の違いが仮想的有能感に 影響を与える可能性も考えられ、今後の検討課題としたい。  自己肯定感と諸変数との関係については、ほとんどの分析で明確な傾向がみら れなかった。先行研究が示唆するように、基本的に自己肯定感は一貫した傾向が あらわれることを示しているのかもしれない。ただ、友人とのかかわり方が自己 肯定感にわずかに影響を及ぼすことが示唆された。これが上述してきたように、 友人とのかかわりが果たして自己肯定感を「低める」ことにつながるのか、「高 める」ことにつながるのかは、今回の研究ではこれ以上の検討ができなかったた め、今後の検討課題としたい。  最後に、4月当初の入学意思の強さと仮想的有能感の傾向にわずかに関連がみ られた。仮想的有能感が高いことが不適応傾向を示すわけではないが、仮想的有 能感の概念から考えると興味深い傾向である。ただ、その傾向はわずかなもので あり、不本意入学を含めた入学意思に関する検討はより慎重に考えていく必要が あるだろう。 【文献】 速水敏彦(著)(2006). 他人を見下す若者たち 講談社 .… 速水敏彦…(2011). 仮想的有能感研究の展望 教育心理学年報 ,…50,…176-186. 今泉靖子・内山… 聡・若松拓也・大木桃代…(2007). 大学生の自己肯定感を高め るプログラムの検討 生活科学研究 ,…29,…177-188. 神原歩・遠藤由美…(2013). 高合意性情報が強制承諾実験における態度変化に 与える効果:自己肯定感の維持という観点からの検討 実験社会心理学研究 ,… 52,…116-124. 松島るみ…(2012). 対人的自己効力感と友人関係における切替による大学適応 感の差異について 日本教育心理学会第 54 回総会発表論文集 ,…p675. 文部科学省…(2014). 学生の中途退学や休学等の状況について(報道発表) 文 部科学省 (2014 年 9 月 25 日) 仲野好重・桜本和也…(2009). 大学一年生にとっての「自分探し」とは何か?

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~初年次教育としての自己発見授業とアイデンティティの模索~ 大手前大学 論集 ,…10,…177-195. 中下富子・岩井法子・大戸美香・佐藤真由美・久保田かおる・上原美子・宮崎有 紀子…(2012). 高校生に対するピアエデュケーション実施前後における自己 肯定感の変化 埼玉大学教育学部教育実践総合センター紀要 ,…11,…109-115. 高木邦子・丹羽智美・速水敏彦…(2008). 仮想的有能感と対人関係(1)…―他者 軽視傾向と対人感情の変容― 日本心理学会第 72 回大会発表論文集 ,…p36. 田中道弘…(2005). 自己肯定感尺度の作成と項目の検討 人間科学論究 ,…13,…15-27. 梅山ひさの・撫尾知信…(2012). 協同学習が児童の社会的スキル及び自己肯定 感の向上に及ぼす効果… ―協同学習におけるペアグループの構成に着目して―  佐賀大学文化教育学部研究論文集 ,…17,…1-22. 脇本竜太郎…(2013). 大学適応感を予測する新入生研修の継時的評価 心理学 研究 ,…84,…429-435.

表 11 課外活動参加状況・調査実施時期別の仮想的有能感・自己肯定感の平均(SD) 課外活動種別 調査実施時期 課外活動参加状況 参加なし 参加意思のみ 参加群1 参加群2 仮想的有能感 サークル n 47 27 34 135第1回 27.26(6.38) 26.78(7.30) 26.32(7.97) 26.82(6.48)第2回28.70(7.27) 28.19(8.44) 28.50(9.07) 28.67(7.05)アルバイトn425418129第1回27.74(6.92) 26.22(5.71)
表 13 入学意思×課外活動参加状況による4群における自己意識2得点の平均(SD) 課外活動種別 調査実施時期 入学意思×課外活動参加状況 第1群 第2群 第3群 第4群 仮想的有能感 サークル n 20 54 54 115第1回 30.35(7.61) 25.87(5.94) 28.54(8.42) 25.87(5.71)第2回29.85(8.39) 28.02(7.40) 30.22(8.39) 27.90(6.90)アルバイトn316543104第1回28.97(7.31) 25.89(5.51) 2
表 14  「家族」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 7月における群間差† 高高(n = 124) 25.82(6.22) 27.33(7.21) 多重比較の結果 n.s
表 17  「友人」とのコミュニケーションの頻度別4群における 仮想的有能感・自己肯定感の得点(SD) 4月 7月 有意性 仮想的有能感 高低群:4月 &lt; 7月 **高高(n= 163)27.09(6.86)28.57(7.60)高低(n= 31)25.97(6.59)30.52(7.59) 低高(n = 26) 26.08(5.80) 26.92(7.05) 低低(n = 23) 27.00(6.81) 28.13(6.46) 自己肯定感 n.s.高高(n= 163)22.40(4.06)22.20
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