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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 片 山 泰 樹

     学位論文題名

Studies on MicroorganlSmSPreSerVed WithinPermafrOStICeWedgeinAlaSka

   (アラスカ永久凍土氷楔中の微生物に関する研究)

学位論文内容の要旨

氷楔(ひょうせつ)はシベリア、アラスカの永久凍土層に一般的に見られる楔形の氷である。

氷楔 は 地 表の 裂 け 目に 雪 解 け水 が 土 砂 と混 ざ っ て入 り 込 み凍結す るとい う一連の 現象の 繰 り 返 し に よ っ て 成 長 し 形 成 さ れ る 。 ア ラ ス カ 、 フ ェ ア バ ン ク ス 市 近 郊 のFox permafrost tunnel内部 は 氷 楔が 部分的に 露出し ており、 これら の氷を含 む凍土層 を零度 以下 に 保 っこ と に よっ て 人 為的 に 保 存 して い る 。こ の ト ンネル内 部に露 出してい る氷楔 は楔 の 形 を示 し て いる だ け でな く 、 そ の形 成 過 程で 生 じ るとされ る縦の 葉脈構造 や凍つ た際 に 閉 じ込 め ら れた ガ ス の気 泡 が 認 めら れ る こと か ら 、形成さ れてか ら一度も 融解し てい な い こと が 示 唆さ れ た 。氷 楔 が 形 成さ れ る 過程 に お いて、微 生物も 土砂など と共に 氷中 に 閉 じ込 め ら れた 可 能 性が 考 え ら れる 。 永 久凍 土 を 含む凍っ た環境 からの微 生物の 分離 は す でに 報 告 され て い るが 、 氷 楔 にっ い て はこ れ ま でに行わ れてお らず、何 万年も の間 氷 の 中と い う 過酷 な 環 境で 形 成 時 に閉 じ 込 めら れ た 微生物が 生き続 けている のかど うか 、 ど のよ う な 微生 物 が 生存 し て い るの か を 知る こ と は地球微 生物学 として非 常に興 味深い。

従っ て 、 本研 究 は 、Fox permafrost tunnel内の氷楔 の年代測 定を行 い形成さ れた年 代を 明ら かにす ると共 に、その 氷楔内 から生き た微生物 を平板 培養法を 用いて 分離する こと、

氷 楔 中 のDNAを 単 離 株 と 共 に16Sリ ボ ゾ ー ムRNA遺 伝 子 に 基 づ ぃ て 系 統 的 な 解 析 を 行 うこ と 、 単離 株 の 温度 感 受 性を 調 べ る こと 、 系 統的 に 新 規な単離 株にっ いての分 類学的 研究 を 行 うこ と 、 また 、 ト ンネ ル 内 部 に露 出 す る他 の 氷 楔や違う タイプ の氷の細 菌群集 構造をDGGE法を用いて調べることを目的とした。

氷楔 試 料 の年 代 測 定の 結 果 、こ の氷 楔は約25,000年 前に形成 され現 在まで凍 り続けて い る も の で あ っ た 。 好 気 的 平 板 培 養の 結 果 、溶 か し た氷1 ml当 た り約103か ら106個 の コ ロニ ー が 増殖 し 、 これ ら が25,000年 間 氷 の中 で 生 き続 け ていたこ とが証 明された 。270 株の 細 菌 を単 離 し 、系 統 解 析を 行っ たところ 、それ らは、Actinobacteria、」Bacilli丶 Ga皿 皿 印rD紿 〇ぬcな 出の3つ の 綱に 属 す る好 気 あ るい は 通性嫌 気性細 菌であっ た。ま た そ れ ら の ほ と ん ど は 胞 子 形 成 能 をも た な い放 線 菌 目の 細 菌 であ っ た 。氷 か ら 抽出 し た DNAを 用 い て 作 製 し た16Sの ク ロ ー ン273個 を 解 析 し た 結 果 、 そ れ ら は 単 離 株 と 同 じ 4c出Dぬc缸ぬ嗇綱、励cえ冱綱、6を皿閲霞prDめ〇ぬc絶め湧綱に属するものであった。全クロ ー ン 中90% 以 上 はAuあ 閲 伽as属 に 近 い も の で あ っ た 。 種 の 豊 富さ を 示 すRarefaction 解析 の 結 果、 氷 楔 中微 生 物 の多 様 性 は 非常 に 少 ない こ と が示唆さ れた。 単離され た真菌 類は匸諂〇ロザむ館Sp.、B轟aeDc〇伽my臠S8p.、ムuC〇印甜たば‖.閲8p.に属するカビ、酵母で

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あった。単離株は4 °C および15 °C で増殖し、27 ゜C 以上では増殖しない低温性の細菌お よび真菌であった。いくっかの単離株は零度以下でも増殖を示し、群集構造解析の結果 と併せて、何万年もの間氷の中で適応した微生物が生き残ってきたことが考えられた。

16S リボゾームRNA 遺伝子の全長配列に基づく系統解析の結果、系統樹において基準株 から独立したクラスターを形成した単離株群がいくっか見出され、属あるいは種レベル で 新 規 な 細 菌 で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 単 離 株 AHU1791T 他 1 株 は IVlicrobacteriaceae 科において、AHU1821T 他6 株は Corynebacterineae 亜目において、

それ ぞれ 独立したクラスターを形成し、新属である可能性が示唆され、多相分類法 (polyphasic analysis) に基づぃて表現型の性質を中心に調べた。AHU1791T は好気性、無 芽胞、極鞭毛を有するグラム陽性桿菌で、・5 ゜C から25 °C で増殖する低温菌であった。

細胞 壁は B2y 型、ジアミノ酪酸を有し、.主要ヌナキノンはMK‑12 と13 あるいは11 で あった。これら表現型は最も近縁なSubtercola 属と異なっていたことから、AHU1791T を新属新種Glaciibacter superstes として提案した。AHU1821T も好気性、無芽胞のグ ラム陽性桿菌で、・5 °C から27 °C で増殖する低温菌であった。細胞壁は化学型IV Aly 型 で、MK‑9(H2) を有していた。DNA gyrase subunitB に基づぃた系統樹においても他の 属と独立していることを支持し、表現型と併せてAHU1821T が新属であると判断した。

氷楔中の微生物の存在が明らかとなったが、土砂などと共に閉じ込められた微生物は主 に周辺環境に由来するであろうということから、地層の違いや形成過程の違いが影響す る可能性が考えられた。そこで、DGGE 法を用いて地層の違う氷楔や氷楔とは構造的に 明確に異なる氷塊の細菌群集を比較した。その結果、氷楔中の細菌群集構造と地層との 関連性は見出されなかったが、氷楔と氷塊の細菌群集は有為な違いが認められた。この ことから、氷楔中の細菌群集構造は地層の違いすなわちそれらの由来する周辺環境より も形成過程により影響されることが考えられる。

このように、何万年も凍った環境から生きた微生物を分離したが、それらがどのように して生き残ったかは未解明である。自然環境、特に過酷な環境には 生きてはいるが培 養できない 状態の微生物が多く存在するといわれている。実際に、実験室で環境スト レスを与えるとあたかも一端休眠しているかのような状態に陥り、再び増殖しなくなる 胞子形成能を持たない細菌種の例がある。氷楔中には水がほとんど存在しないと考えら れることから、閉じ込められた細菌もこのような休眠状態に入る可能性が考えられる。

近年、増殖能を失った細胞を覚醒させ再び増殖に導くタンバク質(覚醒因子)が発見さ れた。休眠状態であったであろう氷楔中の細菌が寒天培地上で増殖したことから、氷楔 単離株が覚醒因子を発現する能カがある可能性が考えられる。氷楔単離株における覚醒 因子についての研究は、氷楔中で生き残ってきた戦略の解明にっながるだけでなく、一 方で未解明な覚醒因子による覚醒メカニズムの解明にもっながることが期待される。そ こで、氷楔単離株に覚醒因子をコードする遺伝子があるかどうかを調ベ、その遺伝子の 配列的特徴を調べた。その結果、いくっかの氷楔単離株においてPCR による覚醒因子遺 伝子部分配列の増幅が確認された。覚醒因子遺伝子の存在が認められた単離株のうち、2 株のOpen Reading Flame を調べた。その結果、単離株の推定アミノ酸配列は既存の覚 醒因子と高い相同性を示し(35 %および45 %)、活性中心のアミノ酸も保存されていた。

このことから、単離株の覚醒因子が、増殖不可の状態から覚醒させる働きを持つ可能性 が考えられたが、それが発現するかどうかは未明である。しかし、氷楔のような特殊な 環境からの単離株においての覚醒因子の存在の可能性が示唆されたことにより、得られ た配列情報や、単離株のカルチャーコレクションが覚醒因子の覚醒ヌカニズムの解明な どの研究に寄与することが期待される。

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学位論文審査の要旨

主査    教授    浅野 行 蔵

副査    客員 教 授    福 田正 巳 ( 国際 北 極圏 研 究 セン ター      アラ ス カ 大学 )

副査    准教 授    湯 本    勳 副査    准教 授    曾 根 輝雄 副査    准教    田中 み ち子

     学位論文題名

Studies on INtIicroorganisms Preserved within Permaf ・ rOStICeWedgeinAlaSka

(アラ スカ永久 凍土氷楔 中の微生 物に関する研究)

本論文は、英文158 頁、図38 、表25 、7 章からなり、参考論文1 編が付されている。

氷 楔 は ア ラ ス カ な ど の 永 久 凍土 層に 見ら れ る楔 形の 氷で あ る。 地表 の裂 け目 に 雪解 け水 が土 砂と 混 ざ っ て 入 り 込 み 凍 結 す る 現 象 の 繰 り 返 し に よ っ て 成 長 し 形 成 さ れ る 。 ア ラ ス カ 中 央 部 に あ るFox permafrost tunnel内部 に露 出す る 氷楔 は楔 の形 を 保ち、その形成 過程で生じる縦の葉脈構造 や形成時に 閉じ 込 めら れた 気泡 が 見ら れる こと から 、 一度 も融 解し てい な しゝ こと が示 唆された。形成 時に微生物 も 土 砂 と 共 に 氷 中 に 閉 じ 込 めら れた 可能 性 が考 えら れる 。 永久 凍土 を含 む凍 結 環境 から 微生 物が 分 離 さ れ て い る が 、 凍 土 層 に 無 数に ある にも か かわ らず 氷楔 に つい ては 行わ れて い ない 。数 万年 間氷 の 中 と い う 過 酷 な 環 境 で 微 生 物 が生 き続 けて い るの かど うか 、 どの よう なも のな の か、 を知 るこ とは 地 球 微 生 物 学 的 視 点 か ら も 非 常 に 興 味 深 く 、 ま た 微 生 物 リ ソ ー ス の 収 集 と い う 点 にお いて 重要 であ る 。 本研 究 は、Fox tunnel内氷 楔の 放射 性炭 素 年代 測定 を行 い、 そ の氷 楔内 の微 生物を平板培養 法、分子生 物 学 的 手 法 に よ り 分 離 ・ 解 析す るこ と、 分 離株 の温 度感 受 性を 調べ るこ と、 系 統的 に新 規な 単離 株 に ついての分類学的 研究を行うことを目的とし た。

年代 測 定の 結果 、氷 楔 試料 は25,000年 前に 形成 さ れ、 一度 も融 解さ れ てい なか った 。好 気 的平 板培 養 の結 果 、l03̲106CFU(/ml of melted ice)が増殖した。270株の単離 した細菌は、グラム陽性ま たは陰性の 好 気 あ る い は 通 性 嫌 気 性 、 従属 栄養 性の 真 正細 菌で 、ほ と んど は無 芽胞 の放 線 菌目 に属 する 細菌 で あ っ た 。 氷 か ら 抽 出 し たDNAの16Sの ク 口 ー ン は 単 離 株 と 同 じ 綱 に 属 す る も の で 、 ほ と ん ど は Pseudomonas属 に 近 い も の で あ っ た 。 分 離 さ れ た 真 菌類 は 、担 子菌 門あ るい は 子の う菌 門に 属す る 無 性 世 代 の カ ピ 、 酵 母 で あ っ た 。 単 離 株 は‑50Cま た は40Cか ら20°Cで 増 殖 す る 低温 性の 細菌 、真 菌 類 であ っ た。 単離 株の 比 増殖 速度 と温 度の 関 係をArrhenius plotで示 した とこ ろ、それらは零 度以下を含 む 低 温 に 適 応 し て い る と 考 えら れ、 群集 構 造解 析の 結果 と 併せ 、何 万年 もの 間 氷の 中で 適応 した 微 生 物が生き残ったこ とが考えられた。単離株をAgriculture Hokkaido University Culture Collectionに登録、

保存した。

様 々 な 培 地 を 用 い て 分 離 を 行っ た結 果、 系 統的 に新 規な 細 菌が 数多 く得 られ た 。分 類上 有効 な表 現 型

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の 特 徴 づ け を 行 っ た と こ ろ 、 単 離 株AHU1791T他1株 はMicrobacteriaceae科 に お い て 、AHU1821T他 6株 はCorynebacterineae亜 目 に お し ゝ て そ れ ぞ れ が 新属 新種 であ るこ と が示 唆さ れ、AHU1791T他1株 を新 属 新種Glaciibacter superstesとして提案した。 現在、AHU1821r株につしゝて も新属新種提案を行っ てい る 。

氷楔 単 離株カルチャーコレ クションの利用と応用の観点 から、Resuscitation‑promoting factor(Rpf)に着 目 し た 。Rpfは 生 き て は い る が 培 養 で き な い 状 態 の 細 胞を 再 び覚 醒さ せる 働き を 持つ タン バク 質で 、 無 芽胞 放線 菌目 細 菌Micrococcus luteusに おい て初 め て見 っか って いる 。 この 菌の 生産 す るRpfは自 身 の 細 胞 だ け で な く 他 の 細 菌 種 にも 覚醒 因子 と して 働く こと か らそ の応 用が 期待 さ れて いる が、 どの よ う な 種 に 効 く の か ま た 、 覚 醒 メカ ニズ ムそ の もの も分 かっ て いな い。 氷楔 中に 水 はほ とん どな く、 今 回 得 ら れ た 単 離 株 は 休 眠 状 態 で生 き残 った と 考え られ たこ と 、一 度コ 口二 ーと し て得 られ たも のが 、 保 存 可 能 な 形 で 培 養 不 可 能 に な っ て し ま っ た こ と 、 氷 楔 単 離 株 の ほ と ん ど はRpf及 び ガ 遺 伝 子 の 見 っ か っ て い る 無 芽 胞 放 線 菌 で あ っ た こ と 、 以 上 の こ と か ら 、 単 離 株 が ガ 遺 伝 子 を持 っ可 能性 が考 え ら れ 、 そ の 探 索 を 行 っ た 。PCRに よ る 増 幅 と 配 列 確 認 の 結 果 、 様 カ な 種 類 の 単 離 株 か ら ガ 遺 伝 子 と 相 同 性 を 持 つ 配 列 が 得 ら れ 、 単 離 株 が 響 ゾ 遺 伝 子 を 持っ こと が明 らか と なっ た。 その 中 から2株の ガ 遺 伝 子Open Reading Flame(ORF)を決 定し たと ころ 、Rpfと 高 い相 同性 を示 し酵 素 活性 に関 与す るア ミ ノ 酸 残 基 も 保 存 さ れ 、Rpfと 同 じ 機 能 を 持 つ 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。ORFを 決 定 し たこ とに よっ て組 換 えRpfの 作 製 が 可 能 に な っ た 。 組 換 えRpfが ど の よ う な 種 の 単 離 株 に 働 く の か 、 氷楔 中の 細菌 群集 に 与 え る 影 響 な ど を 調 べ る こ と に よ っ てRpfの 応 用 、 カ ル チ ャ ー コ レ ク シ ョ ン の利 用だ け でな く、Rpf メカ ニ ズム の解 明に 寄与 す るこ とが 期待 さ れた 。

地 質 学 的 に 特 徴的 な構 造を 持 っ氷 楔に 着目 し、 初 めて その 中の 生き た 微生 物、 微生 物 群集 を明 らか に し た だ け で な く、 年代 測定 を 行う こと で地 質学 と 結び っけ て研 究を 行 った 点は 独創 的 であ る。 多角 的 な 微 生 物 の 解 析を 行い 氷楔 と いう 特殊 凍結 環境 を 特徴 づけ 、そ こか ら 得た 単離 株の ユ ニー クな カル チ ヤ ー コ レ ク シ ョン を作 製し た こと 、実 際に 、そ の 中か ら新 属新 種提 案 を行 い、 分類 学 的に も意 義の あ る 研究 に結 ぴっ け た点 にお いて も評 価 でき る。 また 、 カル チャ ーコレクションの作製 だけに留まらず、

そ の 利 用 を 環 境 微 生 物 学 的 あ る い は疫 学 的に 重要 なRpfの 研究 と結 ぴ っけ 、新 たな 研 究の 展開 を提 示 し たこ とに おい て も十 分に 評価 しう る 。

  こ れ ら の 研 究 結 果 の う ち 、 原 著 論 文 二 報が 学 術雑 誌で あるASM News、Applied and Environmental Microbiologyに 受 理 さ れ た ( そ れ ぞ れ2006年56巻10‑15頁 、2007年73巻2360‑2363頁 ) 。 ま た 、 原 著論文一報が学術雑誌であるInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiologyに受理さ れ、出版予定である 。

  よ っ て 、 審査 員一 同は 、片 山 泰樹 が博 士( 農学 ) の学 位を 受け る のに 十分 な資 格を 有 する もの と認 め た 。

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実