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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 秋 野 聖 之

学 位 論 文 題 名

ジャガイモ疫病菌の新Al 遺伝子型および 交配時活性化型遺伝子7npll に関する研究

学位論文内容の要旨

  ジャガイモ疫病は植物病原菌Phytophthora infestans (Montaagne) de Baryによって引き起こされる 病 害であり、世界共通の重大な問題になっている。1980年代以降P. infestansの遺伝子型の分布に 世 界 的 な 変 化 が 起 こ っ て お り 、 日 本 に お い て も 同 様 で あ る こ と が 知 ら れ て い た 。 1.日本における優占遺伝子型の解析

  本 研究 で はま ず日本 における 遺伝子 型であるUS‑1.JP‑1.Japanese Al‑Aおよ びAl‑Bの遺 伝的 形 質 を 比較 し た。交 配型、ア イソザイ ム遺伝 子型、ミ トコン ドリアDNAハプ ロタイプ 、RG57プロ ー ブ を 用い た 全DNAのRFLPフ イン ガ ー プリ ン ト およ びAFLP多 型に つ いて検 討したと ころ、 各遺 伝 子 型 間で 特 徴 的な 多 型 が認 め ら れ た。RFLPフインガ ープリ ントおよ びAFLPではAl‑Bのシグ ナ ル のほとん どはAl‑AとJP‑1の両方 あるいは そのど ちらかに 存在し ており、Al‑Bのみにユニークな も の は 存在 し な かっ た 。 これ ら の 結 果、Al‑BがAl‑AとJP‑1の 交配の結 果生じ た可能性 が示さ れ た。

2. Japanese Al‑Aの分布

  次 に1996年に中国河北省と甘粛省で採集したP. infestans菌株の前述の形質を1997r 2000年に採 集 し た 日本 菌 株と比 較した。 中国菌株 は4つの遺伝 子型に 分けられ 、そのう ちのー っは日本 の優 占 遺 伝 子型 の ー っで あ るAl‑Aと 完全 に 一致し た。これ までの 各地から の報告 と照合し た結果 、 Al―Aと完 全に一 致する菌 がョー ロッパか らロシ ア、シベリアにかけて広く分布していることがわ か った。ま たそれ らの分離 年から 、Al‑Aの起源 がヨー ロッパで ある可 能性が示 された。Al‑Aはそ の 分布の広 さと優 占度から 、かっ て全世界 的に分 布してい た遺伝子 型、US‑1に 比肩する重要性を 持っようになる可能性があると考えられた。

3.遺伝子型を判定するためのDNAマーカーの作成

  続 いて、圃場で発生したP. infestansの遺伝子型をRFLPフインガープリントに代って迅速に判定 す る た めのDNAマ ー カ ーを 作 成 す るこ と を 試み た 。OPG‑6プ ラ イ マー を 用 いたRAPDに よ っ て、

日 本に存在 した遺 伝子型の うちのUS‑1.JP‑1.Japanese Al‑Bで特異的な増幅産物を得ることがで き た。特異 的増幅 産物N650 fragmentaを クロー ニングし 、塩基 配列を決 定した。 この配列を元に 新 た な プラ イ マ ーBD1.BD2を 設計 し 、PCRを 行按 っ た 。そ の 結 果US―1が530bp、JP‑1が580bp の1本 の 、 そ し てAl Bで は530bpと580bpの2本 の 増 幅 産 物 を 生 じた 。 増 幅 産物 の 特 異性 は 菌     ‑ 250―

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株 間 差 では な く 、遺 伝 子 型の 違 い に 基づ ぃ ている と考えら れた。 このN650マ ーカーは 日本に存 在 するUS‑1・JP‑1.Al‑Bを識 別するこ とがで きたため 、圃場分 離株の 迅速な遺 伝子型 判別および これらを用いた生態実験などの目的に有用であると考えられた。

4.交配時における遺伝子発現の変化

  日 本でP. infestansの交配が起こっていた可能性が指摘されたことから、交配時における遺伝子 発 現の変化 につい て検討し た。尸 . infestansにおいて交配時に転写量が増加するmRNAのクローン cET58を、 サブトラクション法の一種であるcDNA‑RDA (representational diferenceanalysis)法に よ っ て 分離 し た 。cET58を プ ロ ーブ と し て、 交配培 養菌体cDNAライブラ りからcET58L2クロ ーン を 分離した 。配列 分析によ って、cET58L2は1043bpのサイズ であり 、連続的 な786bpのオープンリ ー ディング フレームを持っていることが示された。その推定アミノ酸配列は類似度43.6%、Evalue 5X1げで凡 岱ぴf甜msD励ff.sp・pむfのペクチン酸リアーゼDに類似しており、他のベクチン酸リア ー ゼにも類 似していることが認められた。このクローンが由来する遺伝子を´ゆ′1と命名し、その タ ンパク質 コード領域から新たにプローブp58Lを作成した。ノーザン解析の結果、″リ´l遺伝子の 転 写 は 交配 後5日目 に最高 に達し、 その後 一定のレ ベルで推 移する ことがわ かった 。サザン 解析 の 結果、け り川ま ゲノム中 に少な くとも10コピーの類似する配列を持っており、これがマルチコピ ー 遺 伝 子で あ る 可能性 が示さ れた。こ れらの 結果から けガ1はP.ゆs伽ぷの交 配時に 転写量が 増 加 するペク チン酸 リアーゼ をコー ドしてい る遺伝 子である と考えら れた。 この酵素 は植物病害の 進 展時に病 原菌が 植物体の ぺクチ ン酸を分 解する 上で重要 なもので あると 考えられ ていることか ら、この遺伝子がP.みりお地噺ぷの病原性に影響している可能性が示唆された。さらにけ桝1遺伝子の ゲ ノ ムDNAク ロ ー ンES8は け ガ1の タ ン パク 質 コ ード 領 域 の一 部 を 含ん で お り、 そ の 上流 域 に TATAboxと思 わ れ る部 分 が 存 在し て い た。 し か しES8はcET58L2、と は 完 全に一致 しない部 分が あ る こ と か ら 、 ″ リnの マ ル チ コ ピ ー の ー っ で あ る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ た 。 5.P.魂価ぬ灯ざの形質転換

  続 いて 遺 伝 子研 究 の 方法 と し て 重要 な 遺 伝子 導 入 実験 を 行 なう た め の条件 設定とし て、P. む めs加ぷ の 形 質転 換法に ついて検 討した 。A1交配型 菌株98A8か ら、リポ フェク ション法 によっ て ハイグロ マイシ ン耐性遺 伝子ゆfおよ び日‐glucronidase遺伝子劇姐を導入した形質転換株A893 を 得た。プ ロトプ ラストに は菌糸 細胞由来 のもの を用い、 細胞壁分 解酵素 を既報の ものから改変 し た 結 果、 プ ロ トプ ラ ス ト生 成 数 を 増加 さ せ るこ と が でき た 。 形質 転 換株A893はGUS発 色反応 に より細胞 質が明 確に青色 に発色 し、顕微 鏡下で 単細胞を 容易に識 別する ことがで きた。この形 質 転 換 株を 用 い てA1お よびA2交 配型 菌 株 の交 配培養に おける 有性生殖 器官が 由来する 菌株の特 定 を 試 みた 。 そ の結 果A893お よ びTB201(A2交 配 型 菌株 ) の 交配 培 養 では 有性生殖 器官の一 方 が 発色した ものだ けでなく 、蔵精 器および 蔵卵器 で発色が 認められたものが31.7%、蔵精器およ び 蔵卵器の いずれ でも発色 が認め られなか ったも のが54.5%あるという結果が得られた。単独培 養 では卵胞 子を形 成しない 菌株で も、相手 方の交 配型菌株 が存在す るとき には自家 交配を起こし 単独で卵胞子を形成することが明らかとなった。

  本 研究の 結果、日 本におけ るP.みめs蜘ぷの遺伝子型構成が明らかとなった。主要な遺伝子型は 外 国からの 移入と それに続 く国内 での交配 によっ て生じた 可能性が 示され たと共に 、それらの一

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部 の迅 速な 判別 方法 が 開発された。さ らにこの菌の交配時にペクチン酸リアーゼ類似遺伝子が 活 性化される ことを初めて示したことに続き、P. infestansの遺伝子機能の解明に必須とされる遺伝 子導入法を 改良した。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

内藤 幸田 上田 近藤

学 位 論 文 題 名

繁男 泰則 一郎 則夫

ジ ャ ガ イモ 疫病 菌の 新 Al 遺伝 子型 およ び 交配時活性化型 遺伝子 ynpll に関する研究

  本論 文 は 図32、 表9、147頁から なる和文 であり 別に参考 論文3編が付 されてい る。

ジャガイモ疫病は植物病原菌Phytopluhora infestans (Montaagne) de Baryによって引き起 こさ れる病害であり、世界共通の重大な問題になっている・。1980年以降P infestansの 分布に世界的な変化が起こっていることが知られていた。

1.日本における優占遺伝子型の解析

本研 究では まず日本 における 造伝子 型であるUS−1・JP‑1・Japanese Al‑Aおよ びAl‑B の 遺 伝的 形 質 を比 較 し た。 交配型 、アイソ ザイム 遺伝子型 、ミト コンドリ アDNAハ プ ロ タ イ プ 、RG57プ ロ ー プ を 用 い た 全DNAのRFLPフ イ ン ガ ー プリ ン ト お よびAFLP多 型に ついて 検討した ところ、 各遺伝 子型間で 特徴的 な多型が 認めら れた。RFLPフ イン ガー プリン トおよぴAFLPの結果 、Al−Bが日本 国内でA1‑AとJP−1の交配の 結果生 じた 可能性が示された。

2. Japanese Al‑Aの分布

次 に1996年に 中 国 河北 省 と甘 粛省で採 集したP infestans菌 株の前述 の形質を1997ー 2000年に 採集し た日本菌 株と比 較したと ころ、 そのうち のーっは 日本の 優占遺伝 子型 のー っであるAl−Aと完全に一致した。さらに世界各地からの報告と照合した結果、Al‑A と完 全に一 致する菌 がョーロ ッパからロシア、シベリアにかけて広く分布していること がわ かった 。A1‑Aはその 分布の 広さと優 占度か ら、かつ て全世界 的に分 布してい た遺 伝 子 型 、USー1に 比 肩 す る 重 要 性 を 持 っ よ う に な る 可 能 性 があ る と 考え ら れ た 。 3.遺伝子型を判定するためのDNAマーカーの作成

  統い て、圃 場で発生 したP infestansの遺 伝子型を 迅速に判 定する ためのDNAマーカ

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ーを作成することを試みた。RAPDによる遺伝子型特異的増幅産物をクローニングして 塩 基配列を決定し、新たなプライマーBD1.BD2を設計してPCRを行なった。その結 果US‑Iが530bp、JP‑Iが580bpの1本の、そしてAl‑Bでは530t pと580bpの2本の増 幅産物を生じた。このN650マーカーは日本に存在するUS‑I.JP‑1.Al‑Bを臓別する ことができたため、圃場分離株の迅速な遺伝子型判Sij{こ有用であると考えられた。

4.交配時における遺伝子発現の変化

  P infestansにおける 交配時に おける遺 伝子発現 の変化につ いて検討 した。P iカ festansにおいて交配時に転写量が増加するmRNAのクローンcET58を、cDNA−RDA

(repreSentationaldifferenCeanalySiS)法によって分離した。CET58をプローブと して、cDNAライブラりから新たにcET58L2クローンを分離した。その推定アミノ酸配 列 は凡錨ガ伽 舶I弸jf.sp.pj釘のぺクチン酸リアーゼDに類似していた。このク ロ ーンが由来する遺伝子を卿|1と命名した。卸n遺伝子の転写は交配後5日目に最 高に達し、その後ー定のレベルで推移することがわかった。さらに卿n遺伝子のゲノ ムDNAクロ ー ンES8.は叩nのタンパ ク質コー ド領域の一 部とTATAboxと思 われる 部分が存在していた。ペクチン酸リアーゼは植物体のぺクチン酸を分解する上で重要な も のであると考えられていることから、交配時にPむおs洳sの病原性が影響を受け る可能性が示された。

5.P卿飴鰍ゞの形質転換  、

  続いて遺伝子導入実験を行なうための条件設定として、Pむんs洳ざの形質転換法 について検討した。A1交配型菌株98A8からりポフェクション法によってハイグロマ イシン耐性遺伝子ゆオおよびローglucronidase遺伝子冒恥Aを導入して得た形質転換 株A893はGUS発色反応により細胞質が明確に青色に発色した。この形質転換株を用 いてA1およびA2交配型菌株の交配培養における有性生殖器官が由来する菌株の特定 を試みたところ、単独培養では卵胞子を形成しない菌株でも、相手方の交配型菌株が存 在するときには自家交配を起こし単独で卵胞子を形成することが明らかとなった。

  本研究の結果、日本におけるPゆs細打sの遺伝子型構成が明らかとなった。主要な 遺伝子型は外国からの移入とそれに続く国内での交配によって生じた可能性が示きれ たと共に、それらのー部の迅速な判別方法が開発された。さらにこの菌の交配時にペク チン酸リアーゼ類似遺伝子が活性化されることを初めて示したことに続き、P卿ぬfロ恥 の遺伝子機能の解明に必須とされる遺伝子導入法を改良した。よって審査員一同は、秋 野 聖 之が 博 士(農 学),の 学位を受 けるに十分 な資格を 有するも のと認め た。

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