博 士 ( 理 学 ) 竹 腰 達 哉
学 位 論 文 題 名
An Observational Study based on the1 . 1 ― mm Continuum Survey of the Small IVIagellanic Cloud
(小マゼラン雲に対するl.lmm 連続波サーベイに基づく観測的研究)
学位論文内容の要旨
サ ブ ミ リ 波 帯 の 連 続 波 観 測 は 、 宇 宙 初 期 か ら 現 在 に ま で い た る 星 形 成 と 銀 河 形 成 の 歴 史 を 探 る う え で 欠 か す こ と の で き な ぃ 観 測 で あ り 、 近 年 開 発 が 進 み つ っ あ る ボ ロ メ ー タ カ メ ラ を 用 い た 、 高 感 度 か つ 広 域 の サ ー ベ イ 観 測 は 、 こ の よ う な 観 測 的 研 究 を 効 率 的 に 推 進 す る こ と を 可 能 に す る 。 本 論 文 で は 、 チ り の ア タ カ マ 砂 漠 に 設 置 さ れ た サ ブ ミ リ 波 望 遠 鏡ASTEに 搭 載 さ れ た 波 長1.Imm帯 の 連 続 波 カ メ ラAzTECを 用 い た 、 小 マ ゼ ラ ン 雲 に 対 す る サ ー ベ イ 観 測 の 結 果 を 示 す と と も に 、 そ の 検 出 天 体 に 対 す る 詳 細 な 解 析 結 果 に つ い て 述 べ る 。 ま た 、 さ ら な る サ ブ ミ リ 波 帯 連 続 波 観 測 を 推 進 す べ く 開 発 し たASTE搭 載 用 多 色 ボ ロ メ ー タ カ メ ラ の 光 学 系 の 設 計 につ い て 述 べ る。
小 マ ゼ ラ ン 雲(SMC)は 、 大 マ ゼ ラ ン 雲 と な ら び 我 々 に 最 も 近 い 銀 河 の ー っ で あ り 、 ガ ス や ダ ス ト な ど 、 星 形 成 の 元 と な る 星 間 物 質 の 詳 細 観 測 に 最 適 な 天 体 で あ る 。 ま た 、 低 金 属 量 、 強 い 紫 外 線 輻 射 場 と い っ た 特 徴 は 、 宇 宙 初 期 の 爆 発 的 星 形 成 銀 河 に 近 い 環 境 で あ り 、 こ の よ う な 特 有 の 環 境 下 に お け る 星 間 物 質 や 星 形 成 の 物 理 を 理 解 す る 上 で 、 小 マ ゼ ラ ン 雲 に 対 す る サ ー ベ イ 観 測 を 推 進 す る こ と は 重 要 で あ る 。 本 研 究 で は 、 世 界 で 初 め て 波 長l.lmm帯 連 続 波 に よ る 小 マ ゼ ラ ン 雲 の 全 面 、4.5平 方 度 に お よ ぶ 高 空 間 分 解 能 サ ー ベ イ を 行 い 、5〜13 mJymeamと い う 高 感 度 を 達 成 し た 。 デ ー タ 解 析 は 点 源 天 体 に 感 度 をも つ 手 法 (P( 強cleaniIlg) と 広 が っ た成 分 に 感 度 を 持 つ 手 法 (FImIT) で 行 っ た 。 点 源 に 感 度 を 持 つ 解 析 の 結 果 、53個 の コ ン パ ク ト な 天 体 を 検 出 し た 。 こ れ ら の ほ と ん ど は 小 マ ゼ ラ ン 雲 中 の 星 形 成 領 域 な ど に 対 応 天 体 を 持 っ が 、 そ の 他 にSMCの 背 景 に あ る 既 知 の2つ の 近 傍 銀 河 と 、3つ の 高 赤 方 偏 移 銀 河 の 候 補 天 体 を 検 出 した 。
こ の3つ の 候 補 天 体 の う ち 、SMCW血g領 域 で 検 出 さ れ た 天 体 (MMJ01071・7302、 以 後 MMJ0107と 呼 ぶ ) の 詳 細 な 研 究 を 行 い 、MMJ0107が 波 長1.lmm帯 連 続 波 で 検 出 さ れ た も の と し て は 、 こ れ ま で 知 ら れ て い る 中 で 最 も 明 る い (43mJy) サ ブ ミ リ 波 銀 河 で あ る こ と が わ か っ た 。MM[J0107の 位 置 に は 、電 波 (843MHZ) 、サ ブ ミ リ 波 (HerscheVSPIRE500,350,2501un) 、 遠 赤 外 線 (SpitzerMIPS24pm) 、中 間 赤 外 線 (Spit鴛rIRAC8,5.8,4.5,3.6pm,WISE22,12, 3.6,3.41m) 、 近赤 外 線 (J,H,Ksバン ド ) で も 対応 す る 点 源 が 検出 さ れ て い る。ま た、MMJ0107 の 中 心 か ら1.4秒 角 離 れ た 位 置 に 、 可 視 光 (U,v,Bバ ン ド ) 天 体 が 検 出 さ れ て お り 、 これ は 重 カ レ ン ズ 天 体 の 可 能 性 が あ る 。MMJ0107の 赤 方 偏 移 は 、 複 数 の 銀 河 の ス ペ ク ト ル エ ネ ル ギ ー 分 布 (SED) テ ン プ レ ー ト を 用 い た フ イッ ト に よ り 、1.4〜3.9と 見 積 もら れ た 。 電 波 領域 で は 、 テ ン プ レ ー トSEDに 対 す る 超 過 が 見 ら れ 、radio‐10udAGNの 存 在 が 示 唆 さ れ る 。 見 か け の 赤 外 線 光 度 は (0.3− .2)x1014太 陽 光 度 であ り 、 星 形 成 率は5600139000太 陽 質 量 ′年 に 相 当 す る。
こ の よ う な 異 常 な 星 形 成 率 を 持 つ 銀 河 種 族 は 知 ら れ て お ら ず 、 重 カ レ ン ズ に よ り 増 光 さ れ た 爆
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発 的 星 形 成 を 伴 う 遠 方 銀 河 で あ る と 考 え ら れ る 。
ま た 、 広 が っ た 成 分 の 解 析 か ら 、46個 の 広 が っ た 天 体 を 同 定 し た 。 波 長1.Immの 広 が っ た 放 射 は 、 波 長160pmの 放 射 と も 相 関 が よ く 、 こ れ ら が ダ ス ト の 質 量 を 支 配 す る 、 冷 た い
( 〜20K) ダ ス ト 成 分 か ら の 熱 放 射 で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 ほ と ん ど の 広 が っ た 天 体 は 、 こ れ ま で に 一 酸 化 炭 素 分 子 輝 線 観 測 に よ り 知 ら れ て い る 巨 大 分 子 雲 、 あ る い は 星 形 成 領 域 の ト レ ー サ ー で あ る24pmの 放 射 が 伴 う 。 し た が っ て 、 こ れ ら の 天 体 は 巨 大 分 子 雲 で あ る と 考 え ら れ る 。1.Immで 検 出 さ れ た こ れ ら の 巨 大 分 子 雲 候 補 天 体 の 物 理 量 を 調 ぺ る た め 、 単 一 の ダ ス 卜 温 度 を 仮 定 し た ダ ス ト 熱 放 射 の ス ペ ク ト ル エ ネ ル ギ ー 分 布 を 用 い て 、 物 理 量 の 推 定 を 行 っ た 。 小 マ ゼ ラ ン 雲 で 知 ら れ て い る ガ ス ・ ダ ス ト 質 量 比700を 仮 定 す る と 、 こ れ ら の 天 体 の 質 量 範 囲 は 104〜l06太 陽 質 量 に 相 当 す る 。 こ れ は 我 々 の 銀 河 系 や 近 傍 銀 河 で 知 ら れ て い る 巨 大 分 子 雲 の 質 量 範 囲 と 一 致 す る 。
こ の よ う なASTE望 遠 鏡 に 搭 載 さ れ たAzTEC受 信 機 に よ る 成 果 は 、 さ ら な る サ ブ ミ リ 波 帯 連 続 波 観 測 の 必 要 性 を 示 し て い る 。 こ の よ う な 要 求 の も と 、ASTE望 遠 鏡 に 搭 載 す べ く 、 新 た に 超 伝 導 遷 移 端 セ ン サ ー を 用 い た 連 続 波 カ メ ラ の 開 発 を 行 っ た 。 カ メ ラ 光 学 系 は 光 線 追 跡 法 に よ っ て 、ASTE望 遠 鏡 の カ セ グ レ ン 光 学 系 と 適 合 す る よ う に 設 計 し た 。 そ の 結 果 、2波 長 同 時 観 測 が 可 能 で 、7.5分 角 も の 広 視 野 を 持 ち 、 十 分 な 多 素 子 化 が 可 能 な 光 学 系 を 設 計 し た 。 こ の カ メ ラ の 素 子 数 と し て 、270,350,670 GHz( 波 長l.lmm,0.85mm,0.45mm)そ れ ぞ れ の バ ン ド で 、169、271、919素 子 を 実 現 し た 。 設 計 し た 光 学 系 は 、 物 理 光 学 的 手 法 を 用 い て 評 価 お よ び 最 適 化 し た 。 冷 却 瞳 の 大 き さ は 、 ボ ロ メ ー タ ヘ の300Kか ら の 放 射 が 十 分 小 さ く な る よ う に 、 幾 何 光 学 で 決 定 し た サ イ ズ の85% の 直 径 に 最 適 化 し た 。 ま た 、 フ イ ル タ ー や 鏡 面 精 度 の 影 響 を 除 い た 光 学 系 の 開 口 能 率 は 、270,350,670GHzそ れ ぞ れ で 〜35% ,35% ,32% 、 ま た ビ ー ム サ イ ズ は 〜28,22,12秒 角 に な る こ と を 明 ら か に し た 。
こ の 新 連 続 波 カ メ ラ の 評 価 試 験 は 、 国 立 天 文 台 野 辺 山 宇 宙 電 波 観 測 所 で 行 っ た 。2012年5 月 に は 、 チ リ 現 地 に お い てASTE望 遠 鏡 へ 搭 載 し 、 天 体 画 像 の 取 得 に 成 功 し た 。270,350 GHz 帯 検 出 器 よ る 本 格 的 な 天 文 観 測 は 、2013年 か ら 行 わ れ る 見 込 み で あ る 。 こ れ ら に 加 え て 、 670GHz帯 検 出 器 の 開 発 は サ ブ ミ リ 波 銀 河 の 測 光 学 的 赤 方 偏 移 の 推 定 な ど の 観 測 的 研 究 に 必 須 で あ る 。 広 視 野 、 高 感 度 な 連 続 波 カ メ ラ は 、 初 期 運 用 が 始 ま っ た サ ブ ミ リ 波 干 渉 計ALMAと 相 補 的 な 観 測 装 置 と し て 、 今 後 重 要 性 が 増 し て く る 。
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学 位論文審査の要旨 主 査 教 授 羽 部 朝 男 副 査 教 授 小 笹 隆 司 副 査 教 授 鈴 木 久 男 副 査 教 授 香 内 晃 副査 准教授 徂徠和夫
学 位 論 文 題 名
An Observational Study based on the1 . 1 ― mm Continuum Survey of the Small IVIagellanic Cloucl
(小マゼラン雲に対するl.lmm 連続波サーベイに基づく観測的研究)
博士学位論文審査等の結果について(報告)
宇宙初期から現在に至るまでの星形成と銀河形成の歴史を観測的に明らかにすることは、
現在考え られている宇宙の構造形成および銀河・星形成の理論を検証する上で、不可避の 研究課題 である。波長0.1 ―
Imm前後の電磁波であるサブミリ波帯 の連続波は、活発な星 形成活動 の指標であるとともに、超遠方銀河(サブミリ波銀河)を検出することができる ため、サ ーベイ観測を行うことによってこの課題に取り組むことができるユニークな波長 帯となっている。
著者は 、我々に最も近い系外銀河のーっである小マゼラン雲に対して、世界で初めてと なる波長
1. Imm 連続波での高空間分解能サーベイ観測を高感度で行い、多数の天体を検出 した。こ れら検出された天体の大多数は、小マゼラン雲内の天体であったが、超遠方銀河 の候補天 体も新たに3 つ発見した。こ のうち
1つの候補天体につい ては、他波長データと の詳細な 比較を行い、超遠方に位置する銀河であること、非常に高い星形成率を示してい ること、 重カレンズ効果によって増光を受けていることを明らかにした。このように非常 に明るい 超遠方銀河は、検出例が極めて少なく、宇宙初期の爆発的星形成過程を理解する 上で貴重な天体であり、意義深いものである。さらに、小マゼラン雲内の天体についても、
他波長デ ータとの比較を行い、低温の星間微粒子からの放射であること、巨大分子雲の分 布と相関 が良いことを明らかにした。これは、1 . Imm 連続波が、星形成の母体である分子 雲の良い トレーサーであり、物理状態を明らかにする手法として重要であることを示して いる。
また、 著者は、サブミリ波帯サーベイ観測のさらなる大規模・多波長化を可能する、多 色連続波 カメラの開発を行い、日本での評価試験を経て、南米チりのサブミリ波望遠鏡へ の搭載・ 試験観測を行った。これは、超遠方銀河の三次元的分布と星形成活動性を明らか にするこ とのできる強カな観測装置であり、宇宙の星形成史を解き明かすために必要不可 欠な装置である。
以上のように、本論文は、波長1 . Imm 連続波サーベイ観測によって多数の天体を検出し、
その素性 を明らかにすることで、宇宙初期の星形成過程の解明に迫るものであり、当該研 究分野の 発展に貢献するところ大である。よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位 を授与される資格あるものと認める。
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