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銅酸化物

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 眞 山 博 幸

学 位 論 文 題 名

銅酸化物 Bi2Sr2Cu Oy における常伝導      ― 超 伝 導 相 転 移 と 比 熱 異 常

学位論文内容の要旨

  高 温 超 伝 導 体が 発見 され てか ら10年 以上 経過 し、 多数 の実 験的 ・理 論的 研究 から 、従 来 のBCS型 超 伝 導 体 と は 異 な る 性 質 や 高 温 超 伝 導 が 出 現 す る 舞 台 で あ る 常 伝 導 状 態 の 性 質 が 明 ら か に さ れて きた 。第 一は 超 伝導 状態 で形 成さ れる 電子 対波 およ び超 伝導 ギャ ップ の 対 称 性 で あ る 。BCS型 超 伝 導 体 の そ れ ら は 等 方 的 なs波 対 称 性 で あ る が 、 高 温 超 伝 導 体 で は 異 方 的 なd波 対 称 性 で あ る 。 第 二 は 常 伝 導 状 態 に2っ の 相 、 正 常 金属 相と 異常 金属 相 が 存 在 す る こ とで ある 。異 常金 属 相は 、丁 冫疋 で既 にフ ェル ミ面 にギ ャッ プ様 構造 があ る こ とが 大き な特 徴で 、 その ギャ ップ 様構 造は 擬ギ ャップと呼ばれる。この擬ギャップの特徴 は 、超 伝導 ギャ ップ と 同じd波 対称 性で あり 、そ の 大き さは 疋で 超伝 導ギ ャップにっながる こ とが 確認 され てい る 。こ のこ とか ら、 異常 金属 相では超伝導状態と似た現象、即ち、クー パ ー対 の形 成が グロ ー バル では ない が、 イン コヒ ーレントに生じている状態が示唆された。

し かし 、実 験的 には ま だ確 証さ れて いな ぃ。 一方 、正常金属相では擬ギャップはなく、フェ ル ミ 液 体 的 な 描像 がほ ぼ確 立し て いる 。こ の様 にTc以上 の常 伝導 の電 子状 態は 正常 金属 相 側 と異 常金 属相 側で は 大き く異 なっ てい る。

  そ こ で 本 研 究で は、 イン コヒ ー レン トな クー パー 対の 存否 を反 映し た超 伝導 相転 移が 観 測 さ れ る か 否 か調 べる ため に、 高 温超 伝導 体の ーっ であ る銅 酸化 物Bi2Sr2Cu〇 の 両金 属 相 の試 料を 用い て比 熱 異常 を観 測し た。

  本論 文の 内容 は以 下 の通 りで ある 。

  第1章 で は 、 高 温 超 伝 導 体 研 究 の 背 景 に つ い て 述 べ た 。 超 伝 導 体 に は、 従来 のBCS型 超 伝 導 体 、 重 い 電子 系、 有機 超伝 導 体が ある 。こ れら との 比較 から 、高 温超 伝導 体研 究の 位 置 付け と意 義を 述べ た 。

  第2章 で は 、 ま ず 高 温 超 伝 導 体 に 関 す る 基本 的事 項に つい て述 べた 。高 温超 伝導 体の 特 徴 を示 す電 子相 図、 異 常金 属相 に関 する 実験 事実 、電子対波の対称性と比熱異常の関連性、

臨 界 領 域 に お ける 比熱 異常 の温 度 依存 性等 を説 明し た。 また 、正 常金 属相 との 比較 から 異

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常金属相の特異性を示し、高温超伝導体研究において問題となっている点を浮き彫りにし て、本研究の目的を示した。

  第3章では、実験方法について述べた。試料作製方法、試料特性に関する測定(電気抵 抗率、反磁性磁化率)、比熱異常を観測するために行なった低温比熱測定法(熱緩和法)に ついて述べた。本研究を達成するためには、試料として用いられる高温超伝導物質は、次 の条件が満たされなければならない。(め正常金属と異常金属の両相で試料作製が可能であ ること、(ii)正常金属相、異常金属相で同一の結晶構造であること、(iii)電子比熱を正確 に評価するためにTcが低いことである。Bi2Sr2Cu〇 が上記の条件を満たすことを予め実 験的に確認し、選択された。

  第4章では、測定結果、低温比熱、比熱異常の解析、考察について述べた。特に疋近傍 の臨界領域における比熱異常の温度依存性の詳細に解析した。解析結果から、正常金属相 側と異常金属相側ではその温度依存性が異なることがわかった。正常金属相側では平均場 の揺らぎ型の解析が最適であったこと、比熱異常の大きさおよびその温度依存性がd波超 伝導体の特徴と一致することがわかった。一方、異常金属相側では平均場の揺らぎ型では 解析できず、カスプ型相転移の解析が最適であることがわかった。異なる超伝導相転移の 型から正常金属相側では電子対凝縮、異常金属相側ではボーズ凝縮の可能性が示唆された。

本研究において、ボソン凝縮が示唆されたことは、異常金属相においては疋以上の高温で 既 に イ ン コ ヒ ー レ ン ト な ク ー パ ー 対 が 形 成 さ れ て い る 描 像 を 支 持 し て い る 。   第5章では本研究の結論を総括した。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

銅酸化物Bi2S 勿C ・uoy における常伝導      ― 超 伝 導 相 転 移 と 比 熱 異 常

  銅酸化物高温超伝導体の発見以来、その超伝導発現機構を解明する研究が精力的に行わ れており、それは単に学問上の発展のみならず、液体窒素不要の超伝導物質の開発とその 工学的・産業的応用上、極めて重要であることが認識されている。これまでの実験的・理 論的研究から、超伝導状態で形成されている電子対波の対称性は異方的なd波対称性であ ること、常伝導状態には電子状態の異なる2つの金属相、正常金属相と異常金属相が存在 していることなどが明らかにされてきた。しかしながら、超伝導発現機構に関しては多く のモデルが提案されているものの、まだ確立されていない。

  本論文は、このような背景のもとで、2種類の金属相からの超伝導相転移における比熱 異常を高温超伝導体のーっである銅酸化物Bi2Sr2Cu〇 の試料を用いて精密に測定し、そ の温度依存性を詳細に解析したもので、各々の金属相からの超伝導相転移は異なる型の凝 縮、即ち、正常金属相からの相転移の型はd波対称性を持つ平均場ゆらぎの凝縮、一方、異 常金属相からのそれは新しい型の電荷ボーズ凝縮であることを明らかにするとともに、本 結果が高温超伝導機構の解明上、要因となることを述べたものである。本論文は全5章か らなり、その主要な成果は次のように要約される。

  第1章で は、高温 超伝導体研究の背景について述べている。超伝導体には、従来のBCS 型超伝導体、重い電子系、有機超伝導体があり、これらとの比較から、高温超伝導体研究 の位置付けと意義を述べている。

  第2章では、まず高温超伝導体に関する基本的事項について述べている。高温超伝導体     ●

の特徴を示す電子相図、異常金属相に関する実験事実、電子対波の対称性と比熱異常の関 連性、臨界領域における比熱異常の温度依存性等を説明している。また、正常金属相との

彦 樹

和 直

谷 田

山 徳

授 授

教 教

査 査

主 副

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比較から異常金属相の特異性を示し、高温超伝導体研究において問題となっている点を浮 き彫りにして、本研究の目的を述べている。

  第3章では、実験方法について述べている。試料作製方法、試料特性に関する測定(電気 抵抗率、反磁性磁化率)、比熱異常を観測するために行なった低温比熱測定法(熱緩和法)

について説明している。本研究を達成するためには、試料として用いられる高温超伝導物質 は、次の条件、即ち、(め正常金属と異常金属の両相で試料作製が可能であること、(ii)正常 金属相、異常金属相で同一の結晶構造であること、(iii)電子比熱を正確に評価するために 疋が低いことが満たされなければならないことを説明している。その結果、Bi2Sr2Cu〇 が 上記の条件を満たす最良の試料であることを予備実験で確認したことについて述べている。

  第4章では、測定結果、低温比熱、比熱異常の解析、考察について述べている。特にTc 近傍の臨界領域における比熱異常の温度依存性を詳細に解析し、その解析結果から、正常 金属相側と異常金属相側ではその温度依存性が異なることを示している。正常金属相側で は平均場の揺らぎ型の解析が最適であること、比熱異常の大きさおよびその温度依存性が d波超伝導体の特徴と一致することを示している。一方、異常金属相側では平均場の揺ら ぎ型では解析できず、カスプ型相転移の解析が最適であることを示している。異なる超伝 導相転移の型から正常金属相側では電子対凝縮、異常金属相側ではボーズ凝縮の可能性が あることを議論している。本研究において、ボソン凝縮が示唆され、これは、異常金属相 においては疋以上の高温で既にインコヒーレントなクーパー対が形成されている描像を支 持することについて述べている。

  第5章では本研究の結論を総括している。

  これを要するに、著者は2つの金属相を有する銅酸化物高温超伝導体を作製し、各々の 金属相からの超伝導相転移における比熱異常の温度依存性を測定、解析することにより、

超伝導凝縮において新知見を得たものであり、応用物理学および超伝導工学の発展に対し て貢献するところ大なるものである。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。

参照

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