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テー マ: 精 神 看 護 実 践 に おけ る 倫 理 的 課 題 と 対 処 方 法 の 実 態

宇 佐 美 し お り

(学 術 連 携 委 員 長 , 熊 本 大 学 生 命 科 学 研 究 部 , 教 授 ) (

日 本 精 神 保 健 看 護 学 会 学 術 連 携 委 員 会

)

東 京 女 子 医 科 大 学 看 護 学 部 , 教 授 , 田 中 美 恵 子

自 治 医 科 大 学 看 護 学 部 , 教 授 , 永 井 優 子 国 際 医 療 福 祉 大 学 看 護 学 部 , 教 授 , 相 澤 和 美 東 京 医 科 大 学 看 護 学 科 , 教 授 , 岡 谷 恵 子 東 京 女 子 医 科 大 学 看 護 学 部 , 講 師 , 小 山 達 也 熊 本 大 学 生 命 科 学 研 究 部 ,助 教 , 福 川 麻 耶

Ⅰ . は じ め に

日 本 に お い て 、 医 療 の 高 度 化 複 雑 化 と 在 院 日 数 の 短 縮 、 病 院 の 機 能 分 化 と 地 域 ケ ア の 推 進 と い う 状 況 に お い て 、 病 院 や 在 宅 に お け る 医 療 の 倫 理 的 問 題 も 大 き く な っ て き て い る 。

竹 村 ら は 、 看 護 に お け る 倫 理 的 問 題 を 明 ら か に す る た め 、 緩 和 ケ ア に 従 事 す る 看 護 師 の ア ド ボ カ シ ー の 実 践 に 関 す る 実 態 調 査 を 行 っ た 。 緩 和 ケ ア に 従 事 す る 看 護 師 の 7 割 が 「 患 者 の 治 療 や 病 状 、 今 後 の 経 過 に 関 す る 十 分 な 情 報 提 供 」 を 行 う た め に 、 医 師 へ の 再 説 明 の 依 頼 、 疑 問 点 の 医 師 へ の 確 認 、 看 護 ス タ ッ フ 間 の 協 力 体 制 を 実 践 し て い る と 考 え て い た (竹 村 , 2 00 6 ) 。 ま た 戸 田 ら は 、 ア ド ボ カ シ ー の 概 念 分 析 を 行 い 、 看 護 に お け る ア ド ボ カ シ ー は 、 「 患 者 ・ 家 族 が 患 者 の 権 利 や 利 益 を 守 る た め の 自 己 決 定 へ の 支 援 」 「 患 者 ・ 家 族 へ の エ ン パ ワ メ ン ト 」 で あ る こ と を 報 告 し て い る ( 戸 田 , 2 011 ) 。 上 記 の よ う な 背 景 に お い て 、 日 本 の 看 護 実 践 に お い て も 、 患 者 へ の 十 分 な 情 報 提 供 と 意 思 決 定 の 促 進 、 人 と し て の 尊 重 、 医 療 者 の 過 剰 な 防 衛 、 患 者 の ニ ー ド を 満 た す た め の 医 療 チ ー ム の 協 力 と 責 務 と い う こ と が 重 要 視 さ れ る よ う に な り 、 倫 理 的 問 題 へ の 関 心 は 高 く な っ て き た 。

し か し 一 方 、 精 神 看 護 に お い て は 、 こ れ ま で 精 神 障 害 者 は 、 判 断 能 力 が 十 分 で は な い と 考 え ら れ , 社 会 的 弱 者 で あ る 精 神 科 の 患 者 に 対 し て は , そ の 人 権 を 守 る た め に 他 の 領 域 と は 異 な っ た 倫 理 的 問 題 が 存 在 し て い る 。 た と え ば , 自 殺 や 事 故 を 防 止 す る た め に , 患 者 の 個 人 に 関 す る 情 報 を 共 有 し プ ラ イ バ シ ー を 犠 牲 に し た り ( 磯 部 , 20 11 ) , 隔 離 ・ 身 体 拘 束 の 頻 度 の 多 さ ( 小 森 , 20 11 ) 、 退 院 に 関 す る 患 者 の ニ ー ズ に よ り も 家 族 の ニ ー ズ が 優 先 さ れ る ( 濱 田 ら , 2 00 6) な ど で あ る 。

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2

い ず れ も , や む を 得 な い と 自 分 を 納 得 さ せ , 法 的 に も 認 め ら れ て い る と わ か っ て い て も , 看 護 師 は 後 ろ め た い よ う な , 申 し 訳 な い よ う な 気 持 ち ( 磯 部 , 2 011 ) を 感 じ て 日 々 の ケ ア を 実 践 し て い る 。

精 神 科 看 護 師 が 体 験 す る 倫 理 的 問 題 に つ い て の 全 国 的 な 調 査 ( 田 中 ・ 濱 田 ・ 嵐

・ 小 山 ・ 柳 , 2 01 0 ) で は , 最 も 体 験 す る 頻 度 の 高 い も の と し て , 退 院 の 困 難 さ に 関 す る 項 目 が 上 位 を 占 め て お り , つ い で , 患 者 の 暴 言 や 自 分 の 判 断 と 対 立 す る 患 者 の 意 思 決 定 , 患 者 の 状 態 悪 化 の 問 題 が あ げ ら れ て い る 。 ま た , 悩 む 程 度 が 強 い 項 目 と し て は , 患 者 の 自 殺 ( ま た は 自 殺 未 遂 ) や 自 分 の 能 力 や 知 識 ・ 技 術 の 不 足 に よ る 不 十 分 な 対 応 な ど が あ げ ら れ て い る 。

看 護 師 が 倫 理 的 価 値 や 原 則 に 基 づ い て 正 し い 意 思 決 定 を し た が , 組 織 の 方 針 な ど の 現 実 的 な 制 約 に よ り 実 行 で き な く な っ た と き の 悩 み は , Ja m et on ( 19 8 4) に よ っ て “ 倫 理 的 悩 み ” と 名 づ け ら れ て い る 。

倫 理 的 悩 み は , 看 護 師 が 経 験 す る 倫 理 的 価 値 の 対 立 と し て 、 一 般 的 な も の に な っ て き て い る と 言 わ れ て い る が ( Fry, 1 99 4/ 19 9 8) , 精 神 科 看 護 者 の 倫 理 的 悩 み に 関 す る 研 究 は , き わ め て 少 な い 。 A us t in, Ber g um , a nd G o ld b erg ( 20 03 ) は , カ ナ ダ で 3 人 の 看 護 者 を 対 象 に イ ン タ ビ ュ ー を 行 い , 解 釈 学 的 現 象 学 に よ っ て 分 析 し て い る 。 そ れ に よ る と , 看 護 者 は , 叫 び 声 を あ げ て い る 患 者 の と こ ろ に 誰 も 行 か な か っ た り , 患 者 の 氏 名 と 投 与 さ れ て い る 薬 剤 名 以 外 , 患 者 の こ と を 理 解 し て い な か っ た り す る な ど , 人 手 と 時 間 の 不 足 す る な か で , 患 者 が 一 人 の 人 間 と し て 尊 重 さ れ ず“ も の ”と し て 扱 わ れ て い る 状 況 に 悩 ん で い る こ と が 明 ら か に さ れ た 。 大 西 ・ 浅 井 ・ 赤 林 ( 2 00 3 ) は , 精 神 科 看 護 者 の 倫 理 的 悩 み の 実 態 を 調 査 し て い る が , そ れ に よ る と 最 も 悩 ん で い る 問 題 は , 病 状 が 落 ち 着 い て い て 日 常 生 活 に 支 障 の な い 患 者 が 退 院 で き な い と い う 「 社 会 的 入 院 」 の 問 題 で あ っ た 。 事 故 防 止 の た め に 患 者 の 自 由 を 必 要 以 上 に 制 限 し て い る , あ る い は , 患 者 に 直 接 ケ ア す る 時 間 が 足 り な い , な ど 人 手 不 足 か ら く る と 思 わ れ る 問 題 も 上 位 に あ が っ て い た 。 200 7 年 か ら 20 0 8 年 に 行 わ れ た 調 査 ( O hn i sh i e t a l., 2 010 ) で も , や は り 最 も 強 い 悩 み は 「 安 全 と は 思 え な い レ ベ ル の 職 員 配 置 」 で , つ い で 長 期 の 社 会 的 入 院 が あ げ ら れ て い た 。 こ の 背 景 と し て , ま ず 病 棟 に お け る 人 員 配 置 の 少 な さ が あ げ ら

(3)

3

れ る 。 医 師 や 看 護 師 の 配 置 基 準 が , 一 般 病 床 よ り 少 な く て よ い と さ れ る 「 精 神 科 特 例 」 は 廃 止 さ れ た も の の , 当 分 の 間 従 来 の 基 準 を 維 持 し て よ い と 規 定 さ れ て お り ( 江 口 ・ 末 安 ・ 小 宮 , 2 00 9) , 依 然 と し て 配 置 に 関 す る 差 別 は 残 っ て い る 。 実 際 に , 平 成 2 4 年 医 療 施 設 ( 動 態 ) 調 査 ・ 病 院 調 査 報 告 に よ る 10 0 床 当 た り 従 事 者 数 は 一 般 病 院 は 医 師 14 . 7 人 、看 護 師 51 . 0 人 で あ る の に 対 し 、精 神 科 病 院 で は 、 医 師 3. 5 人 、 看 護 師 2 0. 1 人 と 少 な い こ と が 分 か る 。 ( 厚 生 労 働 省 , 2 013 )

ま た , 倫 理 的 悩 み が 生 じ る 他 の 背 景 と し て 、 日 本 に お け る 精 神 障 害 者 の 在 院 日 数 の 長 さ の 問 題 が あ る 。 先 進 諸 国 に お け る 精 神 障 害 者 の 退 院 患 者 の 平 均 在 院 日 数 は 比 較 的 長 い イ ギ リ ス で も 5 7. 9 日 で , 欧 米 諸 国 の 平 均 は 1 8. 1 日 で あ る の に ,日 本 の 精 神 疾 患 患 者 の 平 均 在 院 数 は 減 っ てき てい る もの の

2 9 6 . 1

日 と世 界 では 最 も 長 い。

また 入 院 患 者 の 内 訳 は 、

1

年 未 満 の 入 院 が

1 9 . 9

%、1 年 から

5

年 未 満 が

3 7 . 5

% 、

5

年 以 上

1 0

年 未 満 が

1 4 . 2

% 、1 0 年 以 上

2 0

年 未 満 が

1 4 . 2

% 、

2 0

年 以 上 の 入 院 が

1 0 . 7 % (

平 成

2 2

)

1

年 以 上

5

年 未 満 の 入 院 が 最 も 多 く、 統 合 失 調 症 、気 分 障 害 患 者 がこ の 時 期 の 入 院 を 占 め てお り 、こ の 時 期 の 入 院 患 者 数 を 減 少 さ せる ことも 重 要 な課 題 とな っ てい る 。さ らに 退 院 し てい く 患 者 は 入 院

6

か 月 ま で に 退 院 し 、 退 院 後

3

か 月 未 満 で 再 入 院 をす る 患 者 およ び 入 院

6

か 月 以 上 の 患 者 は 長 期 入 院 予 備 軍 で 在 宅 移 行 が 困 難 になっ てい くことが 明 らかと な っ てい る( 宇 佐 美 ,

2 0 1 1) 。

日 本 で は 精 神 科 救 急 治 療 病 棟 で さ え , 入 院 患 者 の 4 割 以 上 が 入 院 後 3 か 月 以 内 に 退 院 す る こ と を 条 件 と し て い る が , こ れ も 世 界 的 に 見 て 日 本 の 入 院 期 間 の 長 さ を 示 し て い る と 言 え る 。

精 神 障 害 者 の 地 域 生 活 へ の 移 行 を 進 め る 支 援 と し て 精 神 科 訪 問 看 護 の 有 効 性 が 認 め ら れ て お り 、 訪 問 看 護 ス テ ー シ ョ ン の 数 も 増 え て き て お り ( 精 神 科 看 護 編 集 部 , 2 00 9 ) , 包 括 型 地 域 生 活 支 援 プ ロ グ ラ ム ( A C T ) も 入 院 日 数 の 低 減 や 医 療 費 の 削 減 効 果 が 報 告 さ れ て い る に も か か わ ら ず , い く つ か の 地 域 に お け る 試 行 に と ど ま っ て い る ( 小 宮 ・ 藤 井 ・ 仲 野 ・ 中 井 ・ 矢 田 , 20 09 ) 。 こ の よ う に 日 本 で は 精 神 科 医 療 の 地 域 ケ ア へ の 移 行 が 進 ま ず , 人 口 1 万 人 あ た り の 精 神 科 病 床 数 は 28 と 世 界 一 の 多 さ で あ る ( 武 井 , 2 00 9b ) 。

そ れ で は , わ が 国 と は 全 く 異 な る 国 , す な わ ち , 病 棟 に お い て 精 神 科 看 護 者 が 多 く 配 置 さ れ て い て , 脱 施 設 化 が 進 み 地 域 生 活 支 援 が 充 実 し て い る 国 で は , 看 護

(4)

4

者 の 倫 理 的 悩 み は 少 な い の だ ろ う か , と い う 疑 問 が 生 じ て く る 。 看 護 者 の 抱 え る 倫 理 的 悩 み を 明 ら か に す る た め に は , わ が 国 の 調 査 だ け で な く , こ の よ う な 特 徴 を も つ 国 と の 比 較 も 必 要 と な る 。

WH O( 2 005 ) の デ ー タ に よ る と , イ ギ リ ス の 職 員 配 置 は , 1 医 師 あ た り の 病 床 数 が 5. 3 で , 日 本 の 3 0. 2 に 比 べ 約 6 倍 で , 1 看 護 師 あ た り の 病 床 数 は 0. 6 で , 日 本 の 4. 8 と 8 倍 の 差 が あ る 。 さ ら に , イ ギ リ ス で は ヨ ー ロ ッ パ 人 権 法 ( E u r ope an Hu ma n R i g ht s Ac t ) に よ っ て , 他 科 と 同 様 の 処 遇 を す る こ と が 求 め ら れ て お り , ほ ぼ す べ て の 病 室 が 個 室 で あ る う え ,ア メ ニ テ ィ に 細 か な 配 慮 が な さ れ て い る( 大 西 , 2 00 9 ) 。 そ し て , コ ミ ュ ニ テ ィ ・ メ ン タ ル ヘ ル ス ・ ケ ア の サ ー ビ ス も 充 実 し て お り ,患 者 の 状 態 に よ っ て 早 期 介 入 か ら A C T の よ う な ア ウ ト リ ー チ ,自 宅 で は 寝 る だ け と い う デ イ ホ ス ピ タ ル , 慢 性 期 の デ イ ケ ア な ど , さ ま ざ ま な ケ ア を 受 け る こ と が で き る よ う に な っ て い る ( 大 西 , 20 1 0 ) 。 こ の よ う に 日 本 と イ ギ リ ス で は , 精 神 科 医 療 を 取 り 巻 く 状 況 が 異 な り 、 状 況 が 異 な り 、 看 護 実 践 の 制 約 が 大 き け れ ば , 倫 理 的 悩 み も 強 く な る こ と が 報 告 さ れ て い る ( 大 西 , 2 01 0) 。

大 石 ら は 倫 理 的 悩 み に つ い て 日 本 と イ ギ リ ス の 比 較 を 、 倫 理 的 悩 み 尺 度 を 用 い て 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 精 神 科 で の 平 均 経 験 年 数 が 1 0 年 前 後 の 看 護 師 に つ い て は 、 ① 「 安 全 が 保 て な い 」 よ う な 少 な い 数 の 看 護 師 で 仕 事 を す る 、 ② 病 状 が 落 ち 着 い て い る の に 患 者 が 入 院 し 続 け て い て 何 も で き な い 、 ③ 人 員 配 置 不 足 の た め に 不 適 切 な ケ ア が 提 供 さ れ て い る ( お む つ 着 用 な ど ) 、 ④ 機 械 の 歯 車 の よ う に 扱 わ れ 、 看 護 師 が す ぐ に や め て し ま う 職 場 で 働 か ざ る を 得 な い 、 な ど が 上 位 4 項 目 と し て 抽 出 さ れ て い た ( 大 西 ら , 2 012 ) 。

ま た 田 中 ら は 、 日 本 の 精 神 科 看 護 師 が 直 面 す る 倫 理 的 問 題 と 対 処 に 関 す る 研 究 の 中 で 、 看 護 師 が 体 験 す る 倫 理 上 の 問 題 は 患 者 の 退 院 に 関 す る こ と 、 患 者 の 自 己 決 定 に 関 す る 問 題 、 看 護 師 の 責 任 と 感 情 に 関 す る 問 題 で あ り 、 看 護 師 た ち は 同 僚 へ 相 談 し た り し な が ら 問 題 を 解 決 し よ う と し て い た こ と を 報 告 し て い る ( 田 中 ら , 201 0 ) 。

こ の よ う に 日 本 に お い て も 精 神 看 護 に お け る 倫 理 的 悩 み 、 倫 理 的 課 題 、 倫 理 的 課 題 へ の 対 処 に つ い て は 明 ら か に な り つ つ あ る 。

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5

一 方 日 本 に お い て 、 医 療 の 高 度 化 ・ 複 雑 化 、 在 院 日 数 の 短 縮 、 生 活 習 慣 病 の 増 加 に 伴 う 疾 病 の 複 雑 化 に 伴 い 、 高 度 看 護 実 践 の 重 要 性 が 叫 ば れ る よ う に な っ て き た 。

日 本 に お い て 専 門 看 護 師 ( C ert i f ied Nu rse S pec ia l st, 以 降 C N S と 呼 ぶ ) は 、 平 成 6 年 に 制 度 が 確 立 し 、 看 護 系 大 学 院 を 修 了 し 所 定 の 経 験 を 経 た 後 に 、 日 本 看 護 協 会 の 認 定 を 受 け て 活 動 を 行 う が 、 治 療 状 況 が 複 雑 で ケ ア 困 難 に な っ て き て い る 患 者 ・ 家 族 に 対 す る 直 接 ケ ア 、医 療 ス タ ッ フ へ の コ ン サ ル テ ー シ ョ ン 、教 育 、研 究 、 調 整 、 倫 理 調 整 と い う 機 能 を 担 っ て い る 。 現 在 、 1, 26 6 名 の C NS が 存 在 し 、 が ん 看 護 、 精 神 看 護 、 地 域 看 護 、 急 性 期 重 症 患 者 看 護 、 慢 性 疾 患 看 護 、 母 性 看 護 、 小 児 看 護 、老 人 看 護 、感 染 症 看 護 、家 族 看 護 、在 宅 看 護 の 分 野 で 活 動 を 行 っ て い る 。

海 外 に お い て 、 高 度 看 護 実 践 家 の 歴 史 は 古 い が 、 ヘ ル ス ケ ア シ ス テ ム 特 に マ ネ ジ ド ・ ケ ア に よ る 医 療 シ ス テ ム の 改 革 が 行 わ れ る よ う に な り 、 高 度 看 護 実 践 家 が 発 達 し て き た 。 海 外 、 特 に 米 国 に お い て は 、 高 度 看 護 実 践 家 は 、 看 護 系 大 学 院 を 修 了 し 、 所 定 の 訓 練 ・ 経 験 を 経 て い る こ と は 基 本 的 に 必 要 だ が 、 麻 酔 看 護 師 、 助 産 師 、 専 門 看 護 師 、 ナ ー ス ・ プ ラ ク テ イ シ ョ ナ ー ( Nu r se Pr ac t it i one r,N P ) を 高 度 看 護 実 践 家 と 呼 ん で き た 。 こ の 高 度 看 護 実 践 家 の 成 果 と し て は 、 疾 病 管 理 、 再 入 院 日 数 の 減 少 、 慢 性 疾 患 患 者 の 生 活 の 管 理 能 力 の 向 上 、 Q O L の 改 善 が 報 告 さ れ て い る ( 北 村 ら , 2 01 0; 宇 佐 美 ら , 2 01 0, 201 1 ) 。

CN S が 活 動 し は じ め て 2 1 年 が た ち 、C NS が 活 動 を 行 う こ と で 、身 体 状 態・ 精 神 状 態 の 改 善 、患 者 の 日 常 生 活 機 能 の 改 善 、社 会 的 機 能 の 改 善 、ケ ア 満 足 度 の 改 善 、 地 域 で の 生 活 期 間 の 延 長 、倫 理 的 問 題 の 改 善 な ど が 報 告 さ れ て き た ( 北 村 ら ,20 10

; 宇 佐 美 ら , 2 01 0 ; 野 末 ら , 2 01 1 ) 。 さ ら に 、 C NS の 行 為 が 治 療 チ ー ム や 病 棟 ス タ ッ フ 集 団 の グ ル ー プ ・ パ ー フ ォ ー マ ン ス を 改 善 し 、 看 護 ス タ ッ フ の 患 者 へ の ケ ア を よ り 容 易 に す る こ と も 明 ら か と な っ て き て い る 。 先 行 研 究 に お い て 、 CN S が 精 神 看 護 に お け る 倫 理 的 課 題 を ど の よ う に と ら え て い る の か 、 に つ い て の 調 査 を 行 っ た と こ ろ 、 CN S た ち は 、 長 期 入 院 患 者 に お い て は 患 者 の 退 院 へ の 要 望 が 反 映 さ れ な い 、 退 院 の 意 思 決 定 に 関 す る 患 者 と 家 族 と の 葛 藤 、 医 師 と の 葛 藤 、 患 者 の 状 態 に 応 じ た 適 切 な 治 療 や 環 境 が 十 分 提 供 で き な い 、と い う 倫 理 的 課 題 に 直 面 し 、

(6)

6

倫 理 的 問 題 の 解 決 の ために 精 神 看 護

C N S

は、 1) 倫 理 的 問 題 を 解 決 す るため に 、病 棟 管 理 者 と 話 しあう、 2) 解 決 策 の 提 示 と 実 践 、3) グル ー プ・ パ フォ ー マン スの 改 善 の 検 討 、 を 行 っ て い た

(

小 西 ・ 宇 佐 美 ら ,2 0 1 4 )。

そこ で、 本 研 究 はこれ らの 結 果 を もと に、 質 問 紙 を 作 成 し、 精 神 看 護 に 従 事 す る 看 護 師 たち に 質 問 紙 調 査 を 行 い、 倫 理 的 課 題 と 対 処 方 法 の 実 態 を 明 らか にす ることと した。

本 研 究 を 行 う こ と で 、 精 神 障 害 者 の 自 己 決 定 や 権 利 を 重 要 視 し た ケ ア を 明 確 に し 、 患 者 の 権 利 擁 護 を 中 心 と し た 支 援 が 充 実 し 、 精 神 科 看 護 師 へ の 倫 理 的 問 題 に 対 す る 教 育 的 啓 蒙 活 動 の 方 向 性 を 明 ら か に す る こ と が で き る と 考 え た 。 本 研 究 は 日 本 精 神 保 健 看 護 学 会 学 術 連 携 委 員 会 の 活 動 費 用 で 行 わ れた 。

2. 概 念 枠 組 み と用 語 の 定 義

看 護 実 践 上 の 倫 理 的 課 題 とし て、S A R A . T . F R Y 博 士 は、 患 者 の 権 利 擁 護 と 人 権 尊 意 念 枠 ぐ い と ( ア ド ボ カ シ ー ) 、 責 務 と 責 任 、 協 力 、 ケ ア リ ン グ の 側 面 を 挙 げ て い る 。 ま た こ れ ま で の 文 献 検 討 と 田 中 ら の 先 行 研 究 を も と に 看 護 実 践 家 の 倫 理 的 課 題 と 対 処 を 下 記 のよう に 定 義 し た。

< 倫 理 的 課 題 > と は 、 患 者 へ の 十 分 な 情 報 提 供 と 意 思 決 定 の 促 進 、 プ ラ イ バ シ ー の 保 護 、 患 者 の ニ ー ズ を 満 た す た め の 看 護 師 と し て の 責 務 と 責 任 、 協 力 、 ケ ア リ ン グ が 展 開 で きて い るか どうかをさす 。

<アド ボカ シー> とは 、 患 者 の 治 療 や ケ アに 関 し 、 十 分 な情 報 提 供 と意 思 決 定 の 促 進 と 定 義 す る 。

さ ら に < 責 務 と 責 任 > と は 、 看 護 師 は ① 患 者 の 健 康 の 増 進 、 ② 疾 病 の 予 防 、 ③ 健 康 の 回 復 、 ④ 苦 痛 の 緩 和 に 責 任 が あ る と さ れ 、 責 務 は 法 的 責 務 と 道 徳 的 責 務 が あ る が 、 こ こ で は

①から④ ま での 道 徳 的 責 務 を 指 す 。

< 協 働 > と は 、 患 者 の ニ ー ズ を 満 た す た め に 看 護 職 間 、 他 職 種 と ど の よ う に 連 携 を と っ た のか、 を さ す。

さ ら に < ケ ア リ ン グ > は 、 患 者 の ニ ー ズ を 満 た し 患 者 が 自 分 の 意 思 決 定 を 行 う 過 程 に お い てどの よう に 患 者 と の 信 頼 関 係 を 展 開 し てき たのか をさ す。

<

対 処 >と は 遭 遇 した 倫 理 的 課 題 に 対 す る 対 応 の 方 法 をさす 。

(7)

7

3. 研 究 方 法

1) 対 象 者 およ び 調 査 方 法 : 平 成

2 5

年 熊 本 大 学 疫 学 ・ 一 般 研 究 倫 理 委 員 会 で 承 認 が 得 られた 日 か ら平 成

2 6

3

3 1

日 ま で の間 、 日 本 精 神 保 健 看 護 学 会 正 会 員

1 , 0 0 0

名 を 対 象 に 無 記 名 によ る 質 問 紙 調 査 を 行 っ た 。 調 査 は、 平 成

2 5

6

月 1 5-16 日 に 行 わ れた 第 2 3 回 日 本 精 神 保 健 看 護 学 会 学 術 集 会 に お い て 質 問 紙 を 配 布 し 、 無 記 名 に て 記 載 を 依 頼 し 、 回 収 ボ ック ス にて 回 収 し た。

2 ) . 質 問 紙

:

ア ド ボ カ シ - 、 責 務 、 協 働 、 ケ ア リ ン グ 、 倫 理 的 課 題 に 対 す る 対 処 に つ い て こ れまで の 文 献 検 討 およ び 田 中 らが 開 発 し た質 問 紙 を もと に 、項 目 を 洗 練 し 、 作 成 し た。

3) . 研 究 の 倫 理 的 配 慮

熊 本 大 学 大 学 院 生 命 科 学 研 究 部 疫 学 ・ 一 般 研 究 倫 理 委 員 会 で 承 認 を 得 た 後 、 日 本 精 神 保 健 看 護 学 会 に 研 究 依 頼 を 行 い 、 学 術 連 携 委 員 会 の 委 員 の 所 属 機 関 の 倫 理 委 員 会 、 学 会 理 事 会 の 承 認 を 得 た 後 に 、 実 施 し た 。 ま た 、 対 象 者 へ 研 究 の 目 的 、 意 義 、 方 法 を 説 明 し、 研 究 へ の 同 意 を 得 た。 さら に、 本 研 究 は、 無 記 名 で 行 い、 個 人 や 施 設 が 特 定 されな いよう 調 査 を 行 い、 発 表 時 に も個 人 や 施 設 が 特 定 さない ことを 文 書 で説 明 し 、 返 送 を も っ て 同 意 を 得 た こ と と し た 。 ま た 分 析 の 際 も 、 個 人 や 施 設 名 が 特 定 さ れ な い 形 で、 分 析 を 行 っ た 。

4) . 分 析 方 法

得 ら れ た 結 果 は

S P S S ( V E R . 2 2 . 0 )を 使 用 し 、 記 述 統 計 を 用 い て 記 述 分 析 、 相 関 係 数 、

分 散 分 析 を 行 うとと も に 、 記 述 デ ー タ に つい て は 質 的 内 容 分 析 を 行 っ た。

4 . 結 果

1) 対 象 者 の 背 景

調 査 用 紙 の 配 布 数 は

4 4 4

で 、 その う ち 回 収 率 は

3 6 %の 1 5 9

で あり 、 有 効 回 収 率 は

1 4 8

名 分 、

3 3 . 3 %

であっ た 。 対 象 者 の 平 均 年 齢 は

4 0 . 0

歳 ( ±8 . 8 )、 男 性

5 0

名 (3 3 . 8 % )、 女 性

9 8

名 (6 6 . 2 %) で、 看 護 師 免 許

9 9

( 6 6 . 9 % )、 看 護 師 と 保 健 師 免 許 3 7

名 (

2 5 %)だった。

最 終 学 歴 は 大 学 院 修 士 課 程 を 修 了 し たも のが 最 も 多 く

7 4

名 (5 0%) 、 つ いで 看 護 専 門 学 校 が

4 2

名 (2 8 . 4 % )で 、 看 護 系 大 学 18 名 (1 2 . 2 % )だった 。 職 位 はスタッフが

5 6

3 7 . 8 %、

(8)

8

看 護 管 理 者

(

看 護 師 長 、 主 任

) 5 6

名 (3 7 . 8 %) で、 つ い で専 門 看 護 師

2 1

名 だ っ た(

1 4 . 2 %) 。

看 護 師 の 経 験 年 数 は

1 5 . 7

年 ( ±8 . 8) 、 精 神 科 看 護 経 験 年 数 は

1 1 . 2

年 ( ±

7 . 5

年 ) で 比 較 的 長 か っ た 。 最 終 学 歴 が 大 学 院 で あ る も の は ス タ ッ フ に 最 も 多 く (

2 7

名 、1 8 %) 、 つ い で 専 門 看 護 師

2 1

名 (1 4 . 2 % )、 看 護 管 理 者 ( 主 任 と看 護 師 長 )2 0名 (1 4 . 8 %) で、 最 終 学 歴 と 職 位 で は 有 意 な 差 が み ら れ て い た ( χ2

= 8 6 . 6 , p < 0 . 0 1 )

。 ま た 看 護 師 が 所 属 し て い る 病 院 の 病 床 数 は 平 均

4 9 7 . 2

床 ( ±3 0 6 . 7) 、 所 属 病 棟 の 平 均 病 床 数 は

4 7 . 9

床 ( ±

3 2 . 4

) だ っ た 。 所 属 部 署 は、 急 性 期 治 療 病 棟 が 最 も 多 く

4 9

3 3 . 1 %

、 慢 性 期 病 棟

1 9

1 2 . 8 %

、 看 護 部

1 9

1 2 . 9 %

だ っ た。 倫 理 に 関 す る 講 習 会 へ の 参 加 経 験 のあ る 対 象 者 は

1 0 6

名 (

7 1 . 6 %) 、 参

加 経 験 のな い者 は4 2 名 (

2 8 . 4 %

) で、 参 加 経 験 のあ る 対 象 者 の 平 均 参 加 回 数 は

2 . 4

1 . 6

)

だ っ た 。 ま た 病 院 に お け る 倫 理 委 員 会 は 「 あ り 」 が

1 2 9

( 8 7 . 2 % )

、 「 な し 」 が 1 8 名

( 1 2 . 2 % )

で 倫 理 委 員 会 を も っ て い る 病 院 が 多 か っ た 。 倫 理 講 習 会 へ の 参 加 と 職 位 は 有 意

な 関 連 が み ら れ 、 倫 理 講 習 会 へ 参 加 し て い る 職 位 は ス タ ッ フ が 最 も 多 く い つ い で 看 護 管 理 者 、 専 門 看 護 師 で 有 意 な 差 が み ら れ て い た ( χ2

= 2 0 . 5 , p < 0 . 0 1

) 。 ス タ ッ フ は 大 学 院 卒 業 者 が 多 か っ た こ と か ら 、 倫 理 講 習 会 へ の 参 加 者 は 大 学 院 を 修 了 し た ス タ ッ フ 、 看 護 管 理 者 、 専 門 看 護 師 が 参 加 し て い る と 考 え ら れ た 。 さ ら に 病 棟 の 措 置 入 院 患 者 の 受 け 入 れ は 「 あ

り」

9 4

6 3 . 5 %

だっ た。 これら の 結 果 から 職 位 と最 終 学 歴 、 倫 理 講 習 会 と の 間 に は 関 連 が

み ら れ た こ と か ら 、 職 位 を 取 り 上 げ 分 析 を す す め て い く こ と と し た 。 こ れ ら の 結 果 を 表 1 に 示 す。

2) 倫 理 的 課 題 と 対 処 に つい て

対 象 者 のア ドボカシ ー の 平 均 合 計 得 点 は

9 4

点 ( ±1 8 . 3,

0 - 1 3 5

点 ) 、 責 務 は

3 7 . 1

点 ( ±

7 . 8 , 0 - 5 0

点 ) 、 協 働 は

1 0 . 8

点 ( ±

3 . 1, 0 - 1 5

点 ) 、 ケアリング は

2 2 . 7

点 ( ±

5 . 3, 0 - 3 0

点 ) と、

各 合 計 得 点 は 比 較 的 高 かっ た 。アド ボカシ ーと 責 務 、 ケアリング は、 γ=

0 . 7

と有 意 な 強 い 相 関 を 示 し て い た が

( p < 0 . 0 1 )、 ア ド ボ カ シ ー と 協 働 、 責 務 と 協 働 ・ ケ ア リ ン グ 、 協 働 と ケ ア リ

ン グ と の 間 は、 γ

= 0 . 5 - 0 . 6( p < 0 . 0 1 )で 有 意 な 中 等 度 の 相 関 だっ た 。

アドボカシ ーについて は、ア ドボ カ シー9と

1 0

、アド ボカシ ー

1 6

1 7

、 ア ドボカ シ ー2 4 と

2 5

が γ

= 0 . 7 - 0 . 9

と 有 意 に 相 関 が 強 く (

p < 0 . 0 1

) 、 こ の こ と は 「 患 者 が 隔 離 拘 束 さ れ て い る と き の 患 者 へ の 説 明 」 と 「 患 者 の 家 族 へ の 隔 離 拘 束 の 説 明 」 が 強 く 関 連 し 、 「 患 者 の 活 動 に 関

(9)

9

す る ニ ー ズ の 尊 重 」 と 「 患 者 の 人 と の つ き あ い に 関 す る ニ ー ズ の 尊 重 」 と の 関 連 、 「 家 族 が 患 者 の 退 院 を 不 安 に 関 し て い る 際 、 家 族 へ の 精 神 的 サ ポ ー ト 」 と「 家 族 が 患 者 の 退 院 を 不 安 に 感 じ て い る 際 の 家 族 の 患 者 へ の 対 処 方 法 の 説 明 」 と の 間 で は 強 い 関 連 を 示 し て い た 。 ま た 、 責 務 に お い て は 、 責 務 の 4 と 7 が 強 い 相 関 を 示 し ( γ =0 . 7 , p < 0 . 0 1) 、 「 患 者 の 入 院 中 、 退 院 後 の 生 活 に 向 け て 入 院 生 活 中 、 症 状 管 理 の 方 法 に つ い て 患 者 と 話 し あ い 、 練 習 を 行 っ た 」 と い う 項 目 と 「 患 者 の 入 院 中 、 患 者 の ス ト レ ス と 精 神 状 態 と の 関 係 に つ い て 話 し あ い 、 ス ト レ ス を コ ン ト ロ ー ル す る 方 法 に つ い て 話 し あ っ た 」 の 項 目 と の 間 に は 関 連 が あ る こ と を 示 し て い た 。 さ ら に 、 「 協 働 」 に お い て は 、 協 働 1 と 2 の 項 目 間 に 強 い 相 関 が み ら れ ( γ

= 0 . 7 , p < 0 . 0 1

) 、 「 患 者 の 早 期 退 院 に む け て 医 師 や そ の 他 の 職 種 と 今 後 の 生 活 に む け て カ

ン フ ァ レ ン ス を 開 催 し た 」 と 「 患 者 の 早 期 退 院 に む け て 看 護 者 間 、 医 師 、 多 職 種 間 で 患 者 が 地 域 で 生 活 で き る 社 会 資 源 の 検 討 を 行 っ た 」 と の 間 で は 強 い 関 連 が あ っ た こ と を 示 し て いた。 これら の 結 果 を表 2①- ④ に 示 す 。

3) 対 象 者 の 特 性 と 倫 理 的 課 題 と 対 処 と の 関 連 に

次 に 対 象 者 の 特 徴 と 倫 理 的 課 題 ・ 対 処 の 関 連 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。 年 齢 と 臨 床 経 験 年 数 、 精 神 科 臨 床 経 験 年 数 は 中 等 度 か ら 強 い 相 関 を 示 し ( γ =

0 . 6 - 0 . 8

p < 0 . 0 1

) 年 齢 が 高 い ほ ど 臨 床 経 験 年 数 、 精 神 科 経 験 年 数 も 高 か っ た 。 ま た ア ド ボ カ シ ー 、 責 務 、 協 働 、 ケ ア リ ン グ そ れ ぞ れ の 合 計 で は 、 性 別 で は 差 が み ら れ ず 、 免 許 の 違 い で も 差 は な か っ た が、

職 位 、 最 終 学 歴 に つ い て は ケ ア リ ン グ の 合 計 で 有 意 な 差 が み ら れ て い た 。 す な わ ち 専 門 看 護 師 ・ 看 護 管 理 者 、 ま た 看 護 系 大 学 院 を 出 た 者 が 最 も ケ ア リ ン グ の 値 が 高 く 、 つ い で 看 護 専 門 学 校 、 看 護 系 大 学 の 順 で

K r u s k a l W a l l i s

検 定 で( χ

=

12 .7 ,p < 0 . 0 5) 有 意 な 差 が み ら れ て い た 。 ま た 所 属 部 署 で は 差 は み ら れ ず 、 倫 理 講 習 会 の 有 無 で は ア ド ボ カ シ ー 、 責 務 、 協 働 、 ケ ア リ ン グ す べ て の 合 計 に お い て 有 意 な 差 が み ら れ て い な か っ た が 、 病 院 の 倫 理 委 員 会 の 有 無 で は 、 責 務 の 合 計 に 有 意 な 差 が み ら れ (

u = 8 1 8 . 0 , p < 0 . 0 5) 、 措 置 入 院 の

有 無 で は 差 はみら れな かっ た。また これら の 結 果 を 表

3、 表 4

に 示 す 。

上 記 の 結 果 か ら 、 職 位 ご と に ア ド ボ カ シ ー 、 責 務 、 協 働 、 ケ ア リ ン グ の 実 態 を さ ら に 明 確 にしていくこ ととした 。

(10)

10

4) 職 位 ごとの アドボカシ ー、 責 務 、 協 働 、ケ ア リングの 実 態

職 位 ご と に ア ド ボ カ シ ー を み て い く と 、 ア ド ボ カ シ ー 4 、

1 2 , 2 7

の 項 目 で 職 位 ご と の 有 意 な 差 が み ら れ て い た ( χ

2 = 1 1 . 6 - 1 7 . 9 , p < 0 . 0 5 )。 す な わ ち 、 「 患 者 の ス ト レ ス と 病 状 と の 関 連 に

関 す る 説 明 」 「 患 者 の 拒 薬 時 に 患 者 の 飲 み た く な い 気 持 ち の 尊 重 」 は 専 門 看 護 師 、 認 定 看 護 師 た ち が 最 も 倫 理 的 課 題 と 認 識 し て 実 践 を 行 い 、 「 患 者 の 障 害 年 金 や 生 活 保 護 費 を 家 族 が 使 っ て い る こ と を 知 り つ つ 黙 認 し た 」 で は 専 門 看 護 師 、 認 定 看 護 師 た ち が 最 も 倫 理 的 課 題 と 認 識 し 対 処 を 行 っ て い た。

ま た 、 責 務 で は 、 責 務 7 「 患 者 の 入 院 中 、 患 者 の ス ト レ ス と 精 神 状 態 と の 関 連 に つ い て 話 し あ い 、 ス ト レ ス を コ ン ト ロ ー ル す る 方 法 に つ い て 話 し あ っ た 」 で は 、 専 門 看 護 師 、 認 定 看 護 師 の 順 でこ れら の 実 践 を 行 っ て い た( χ2

= 1 8 . 5 , p < 0 . 0 1

) 。 さら に 、 協 働 で は 、 協 働 2「 患 者 の 早 期 退 院 に む け て 看 護 者 間 ・ 医 師 ・ 多 職 種 間 で 患 者 が 地 域 で 生 活 で き る 社 会 資 源 の 検 討 を 行 っ た 」 では 、 専 門 看 護 師 、 看 護 師 長 の ケアリン グ

1 - 3

す なわ ち「 患 者 の 今 後 の 生 活 に 関 す る ニ ー ズ へ の 注 意 」 「 患 者 の 入 院 中 、 患 者 の こ れ ま で の 生 活 の 仕 方 に つ い て 話 を き く」 「 患 者 と は 入 院 中 、 今 後 の 生 活 に つ い て 話 しあ い を 行 っ た」 で は 専 門 看 護 師 、 認 定 看 護 師 が 最 も 実 践 を 行 っ て いた( χ

1 3 . 2 - 1 5 . 3 , p < 0 . 0 5) 。

さ ら に 自 由 記 載 の 中 で 対 象 者 が 倫 理 的 課 題 と 感 じて いた こ とと し て は 、 < 言 葉 遣 い で 患 者 を 尊 重 精 し てい ると は 思 えな い> < 私 物 管 理 >< おむ つ 交 換 時 な どの プ ラ イ バシ ーへ の 配 慮 > < 不 十 分 な 情 報 提 供 > < 医 療 者 の モ ラ ル の 悪 さ > < 職 種 に よ る 患 者 の と ら え 方 の 違 い の 大 き さ >

<

病 院 側 の 都 合 の 患 者 へ の 押 し つ け > な ど が あ げ ら れ た 。 こ れ ら の 結 果 を 表

6

に 示 す 。

5) アドボカ シー、 責 務 、 協 働 、 ケ アリングに 対 す る 諸 変 数 の 影 響 に つい て

さ ら に ア ド ボ カ シ ー 、 責 務 、 協 働 、 ケ ア リ ン グ に 対 し ど の よ う な 変 数 が 最 も 関 連 し て い る の か 、 強 制 投 入 法 に よ る 重 回 帰 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 ア ド ボ カ シ ー に 対 し て は 責 務 と ケ ア リ ン グ が 、 責 務 に 対 し て は 看 護 師 数 と ケ ア リ ン グ が 、 協 働 に 対 し て は 病 院 倫 理 委 員 会 の 有 無 と ケ ア リ ン グ が 、 ケ ア リ ン グ に 対 し て は 最 終 学 歴 と ア ド ボ カ シ ー が 有 意 に 関 連 し て い た。こ れらの 結 果 を 表 7 に 示 す。

(11)

11

6) 質 問 紙 に つい て

質 問 紙 全 体 の 内 的 一 貫 性 は α

= 0 . 9 6

と 高 か っ た 。 ま た ア ド ボ カ シ ー 間 の 項 目 は α

= 0 . 9 4 ,

責 務 間 内 の 項 目 は α

= 0 . 7 8 ,

協 働 の 項 目 間 で は α

= 0 . 8 3

、 ケ ア リ ン グ の 項 目 間 で は α =

0 . 9 2

と高 かっ た。さ ら に 倫 理 的 問 題 と 対 処 に 関 す る 質 問 紙 の 主 成 分 分 析 を 行 い、 因 子 負

荷 量 の 低 い 項 目 を 削 除 し 、 バ リ マ ッ ク ス 回 転 を 行 い 、 最 終 的 に 5 つ の 因 子 に 分 け ら れ た 。 因 子 1 は 「 患 者 の ニ ー ズ を 尊 重 し 今 後 の 生 活 に 関 す る 話 し 合 い を 行 う 」 、 因 子 2 は 「 行 動 制 限 解 除 の 工 夫 と 症 状 ・ 服 薬 管 理 に 関 す る 工 夫 」 、 因 子 3 は 「 病 状 ・ ス ト レ ス ・ 治 療 に 関 す る 説 明 」 、因 子

4

は「 家 族 へ の 患 者 の 治 療 、 行 動 制 限 の 説 明 と 患 者 対 応 の 話 し あい」 、 因 子 5は「 家 族 ・ 看 護 師 の 利 益 の 優 先 」 に 分 け られた 。これ らの 因 子 で

6 2 . 7 0 %

を占 めていた。こ れらの 結 果 を 表 8 に 示 す。

5 . 考 察

本 研 究 で は 、 回 答 者 が ス タ ッ フ 、 看 護 管 理 者 、 専 門 看 護 師 な ど 大 学 院 を 修 了 し た も の が 多 く 、 職 位 に よ る 違 い が ア ド ボ カ シ ー 、 責 務 、 協 働 、 ケ ア リ ン グ 上 の 倫 理 的 課 題 と 対 処 の 違 い を 生 み 出 し てい た こ と が 特 徴 であ っ た 。

ま た 田 中 ら の 先 行 研 究 の 対 象 者 の 年 齢 、 臨 床 経 験 年 数 な ど は 類 似 し て い た が 、 今 回 の 対 象 者 は 倫 理 的 悩 み や 思 い を そ の ま ま に せ ず 、 倫 理 的 悩 み を 倫 理 的 課 題 へ と 転 換 さ せ 、 積 極 的 に 対 処 し てい た と考 えら れ た。

また 特 に 専 門 看 護 師 や 認 定 看 護 師 は ア ド ボカ シ ー や ケ アリ ン グ に お い て 、 患 者 の 入 院 中 の 生 活 に お い て 積 極 的 な 退 院 後 の 生 活 へ の 支 援 を 行 い 、 ま た 患 者 の 意 思 を 尊 重 し な が ら 患 者 の 自 己 決 定 を 促 し 、 患 者 の 症 状 管 理 や ス ト レ ス 管 理 能 力 を 強 化 す る 実 践 を 行 っ て い た 。 さ ら に 今 回 用 い た 質 問 紙 で は 、 患 者 の ニ ー ズ や 意 見 を 尊 重 し た ケ ア や 退 院 後 の 生 活 に む け た 生 活 支 援 が 重 要 視 さ れ て い る こ と が 抽 出 さ れ る 一 方 で 、 家 族 の 希 望 が 患 者 よ り 尊 重 さ れ て い た り 、 看 護 師 の 利 便 性 を 中 心 と し た ケ ア が 提 供 さ れ て い る 実 態 も 明 ら か と な った。

こ こ で は 、 特 に 1 ) 今 回 の 対 象 者 に お け る 倫 理 的 課 題 と 対 処 の 特 徴 、

2 )

本 研 究 の 限 界 と 今 後 の 研 究 へ の 示 唆 に つい て 考 察 す る 。

1) 今 回 の 対 象 者 に おけ る 倫 理 的 問 題 と 対 処 の 特 徴

(12)

12

竹 村 ら は 成 人 患 者 の 権 利 を 守 る 看 護 師 の 実 践 に お い て 、 患 者 の 権 利 を 擁 護 し て い く た め に は 、 他 職 種 と ゆ と り を も っ て 話 し あ っ た り 、 カ ン フ ァ レ ン ス を 行 う こ と が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 し て い る が 、 今 回 の 調 査 対 象 者 た ち は 、 患 者 の ニ ー ズ を 尊 重 し 、 ス ト レ ス や 病 状 と の 関 係 を 説 明 し 、 患 者 の 入 院 後 早 期 か ら 患 者 の 退 院 に 関 す る ニ ー ズ を 実 現 し て い く 上 に お い て 、 他 職 種 と 話 し あ い を し な が ら ケ ア を 提 供 し て い る こ と が 明 ら か と な っ て い た

(

竹 村 ,

2 0 0 6 )

。 す な わ ち 精 神 科 看 護 以 外 の 領 域 で は 実 践 さ れ が た い こ と が 、 逆 に 精 神 科 看 護 で は 実 践 さ れ て お り 、 こ の こ と が 精 神 疾 患 患 者 の ニ ー ズ を 満 た し 人 と し て 尊 重 さ れ て い る こ と を 示 し て い た 。

また 木 村 ら は、 精 神 科 入 院 病 棟 に 勤 務 す る 看 護 師

1 0

名 の 諸 葛 藤 に つい て 質 的 研 究 を 行 っ て い る が そ の 中 で 、 精 神 科 看 護 に お け る 倫 理 的 問 題 は 、 看 護 者 間 の 相 互 理 解 の 困 難 さ 、 意 見 交 換 の 不 十 分 さ 、 患 者 へ の 否 定 的 な 患 者 像 な ど に よ っ て 、 患 者 の 個 別 的 な ニ ー ズ や 個 別 性 が 尊 重 さ れ な い こ と を 指 摘 し て い る が ( 木 村 ・ 松 村

, 2 0 1 0 )

、 今 回 は 、 木 村 ら の 結 果 と は 異 な っ た 結 果 で あ っ た 。 す な わ ち 患 者 の ニ ー ズ を 満 た す た め に 他 職 種 と 連 携 し な が ら ケ ア を 展 開 し て い る こ と が 明 ら か と な り 、 こ れ は 今 回 の 対 象 者 が 看 護 管 理 者 、 専 門 看 護 師 ・ 認 定 看 護 師 、 大 学 院 修 了 生 が 多 か っ た こ と に 起 因 し て い る と 考 え ら れ た 。 ベ ナ ー は 看 護 師 の 卓 越 し た 実 践 の 中 で 、 文 脈 や 状 況 を 全 体 と し て と ら え て 患 者 に と っ て 必 要 な こ と を 焦 点 化 し て ケ ア を 展 開 で き る 実 践 を 卓 越 し た 実 践 と 呼 び 、 こ の 能 力 の 開 発 に は 看 護 師 と し て の 患 者 ケ ア に 関 す る 努 力 、 教 育 背 景 が 関 連 す る こ と も 述 べ て い る ( ベ ナ ー 、

2 0 0 5

) 。 一 方 、 大 西 ら は 、 精 神 科 看 護 経 験 年 数 が 長 く な る と 倫 理 的 悩 み は 少 な く な る こ と も 述 べ て お り

(大 西 ら 、 2 0 1 2 )今 回 の 対 象 者 た ち は 看 護 師 の 平 均 経 験 年 数 は 1 5 . 7

年 と 長 く 、 こ の 経 験 年 数 の 長 さ が 倫 理 的 課 題 の 解 決 に 影 響 し て い る と も 考 え ら れ た 。 し か し 今 回 、 看 護 師 経 験 は 責 務 に 、 最 終 学 歴 は ケ ア リ ン グ に も っ と も 関 連 し て お り 、 倫 理 的 実 践 に 看 護 師 経 験 年 数 だ け で は な く 最 終 学 歴 も 関 連 し て い る と 考 え ら れ た 。 す な わ ち 看 護 師 経 験 年 数 が 長 く な る と 倫 理 的 問 題 に 対 す る 看 護 師 と し て の 責 務 を 果 た そ う と し 、 ま た 最 終 学 歴 が 高 い と 患 者 の ニ ー ズ を 尊 重 し 信 頼 関 係 を 結 び な が ら 倫 理 的 課 題 を 解 決 し よ う と 試 み て い る と 考 え ら れ た 。 さ ら に 主 成 分 分 析 の 結 果 か ら は 、 患 者 と 家 族 の 今 後 の 生 活 、 ニ ー ズ 、 隔 離 や 拘 束 解 除 へ の 看 護 師 の 強 い 関 心 と 工 夫 が 表 れ て お り 、 田 中 ら の 精 神 科 看 護 師 が 精 神 科 病 棟 で 体 験 す る 倫 理 的 問 題 に 関 す る ジ レ ン マ と 類 似 し た 内 容 も 示 さ れ て い た が

(

(13)

13

中 ら 、

2 0 1 0 )、 今 回 の 対 象 者 た ち は そ れ を ジ レ ン マ だ け で 終 わ ら せ ず 職 位 や 最 終 学 歴 で 培

っ たもの を 活 用 し なが ら解 決 のた めの 方 策 を とっ てい るこ とも 明 らかと なっ た。

さ ら に 、 田 中 ら の 研 究 で は 、 精 神 科 看 護 師 が 最 も 体 験 す る 倫 理 的 悩 み は 「 家 族 の 高 齢 化 や 核 家 族 化 に 伴 う 患 者 の 退 院 の 難 し さ 」 「 家 族 の 希 望 で 退 院 が で き な い 」 な ど 退 院 に 関 し 患 者 の ニ ー ズ よ り 家 族 の ニ ー ズ が 優 先 さ れ 、 次 い で 「 症 状 と は わ か っ て い て も 患 者 の 暴 言 い よ り 看 護 師 と し て の 自 分 の 気 持 ち が 傷 つ く こ と が あ る 」 「 患 者 の 意 思 決 定 と 患 者 の 病 状 に 対 す る 専 門 職 と し て の 判 断 が 対 立 す る こ とがあ る 」 な ど 患 者 の 病 状 や 理 解 に 関 す る 専 門 家 と し て の 葛 藤 が 挙 げ られ て い た( 田 中 ・ 濱 田 ・ 嵐 ら ,

2 0 1 0

) 。ま た 田 中 ら の 研 究 で は 、 精 神 科 看 護 師 た ち が 、 倫 理 的 問 題 に 遭 遇 し た 時 に 「 カ ン フ ァ レ ン ス で 話 し あ う 」 「 看 護 管 理 者 に 相 談 す る 」 と い う 対 処 を と っ て い た こ と を 報 告 し て い た ( 田 中 ら ,

2 0 1 0

) 。 今 回 、 家 族 の 意 思 が 患 者 の ニーズ よ り 優 先 さ れ る こと に つ い て は 同 じ 結 果 であっ た が、 看 護 専 門 職 とし て の 倫 理 的 問 題 に 関 す る 葛 藤 に つ い て は 抽 出 さ れ な か っ た 。 こ の こ と は 、 今 回 の 対 象 者 た ち の 最 終 学 歴 が 大 学 院 で あ る こ と 、 職 位 が 看 護 管 理 者 、 専 門 看 護 師 、 認 定 看 護 師 な ど 倫 理 的 問 題 を 常 に 解 決 し 続 け て い る 対 象 者 で あ っ た こ と が 関 係 し て い る と 考 え ら れ た 。 小 西 ら は 、 専 門 看 護 師 ら が 体 験 し て い る 倫 理 的 課 題 と そ の 対 処 に 関 す る 調 査 を 行 い 、 専 門 看 護 師 た ち が 、 「 患 者 の 長 期 入 院 に 関 し 患 者 の ニ ー ズ が 十 分 尊 重 さ れ な い こ と 」 「 退 院 に 関 し 患 者 の 意 思 よ り 家 族 の 意 思 が 優 先 さ れ る こ とが あ る」 「 医 師 と の 意 見 の 違 い に よ る 葛 藤 」 な ど が 抽 出 さ れ て い た こ と を 報 告 し て い た が 、 専 門 看 護 師 た ち は 関 係 者 た ち と 積 極 的 に 話 し あ い 、 話 し あ う だ け で な く 、 患 者 ・ 家 族 へ の ケ ア リ ン グ を 実 践 し な が ら 患 者 の ニ ー ズ が 尊 重 さ れ る よ う 支 援 の 方 向 性 を 意 図 し て 作 り 出 し て い た こ と を 報 告 し て い た ( 小 西 ら ,

2 0 1 4

) 。 す な わ ち 、 精 神 科 看 護 に お い て 、 患 者 の 長 期 入 院 や 患 者 の 意 思 よ り も 家 族 の 意 思 が 尊 重 さ れ る こ と に つ い て 倫 理 的 問 題 を 体 験 し て い て も 、 看 護 系 大 学 院 に お い て 倫 理 的 問 題 を 解 決 す る た め の知 識 ・ 訓 練 を 受 け た り 、 職 位 に よ っ て 毎 日 遭 遇 す る 倫 理 的 問 題 を 解 決 し 続 け る ことが、 日 々の 倫 理 的 問 題 を 解 決 すること に 役 立 っ て い ると 考 えら れた。

ま た 精 神 科 病 院 に お い て は 、 准 看 護 師 数 も 正 看 護 師 数 と 同 等 に 多 く 、 今 後 、 日 々 の 精 神 科 看 護 に お け る 倫 理 的 問 題 を 解 決 す る た め に 、 看 護 者 が ど の よ う な 訓 練 を 受 け る 必 要 がある のか 、 を 検 討 し てい く 必 要 があると 考 えられ た。

2 )

本 研 究 の 限 界 と 今 後 の 研 究 へ の 示 唆 つ い て

(14)

14

本 研 究 の 対 象 者 た ち は 、 看 護 管 理 者 、 専 門 看 護 師 、 認 定 看 護 師 、 大 学 院 を 修 了 し た ス タ ッ フ が 多 く 、 精 神 科 看 護 を 実 践 し て い る 対 象 者 の 代 表 と は い い が た い 。 ま た 対 象 者 数 が 少 な く 結 果 の 一 般 化 も で き な い 。 従 っ て 、 今 後 、 対 象 集 団 の 選 定 を 考 え 、 か つ 一 般 化 で き る よ う な 対 象 者 数 を 得 て い く こ と が 重 要 と 考 え ら れ た 。 ま た 今 後 、 倫 理 的 問 題 の 解 決 に お い て も っ と も 悩 ん で い る ス タ ッ フ に 焦 点 を あ て な が ら 倫 理 的 問 題 解 決 の た め の 対 処 行 動 の 獲 得 支 援 を 検 討 し てい く 必 要 があ ると 考 えら れた。

本 研 究 は

2 0 1 3

年 度 日 本 精 神 保 健 看 護 学 会 学 術 連 携 委 員 会 に おい て 実 施 さ れた 調 査 です。 ご 協 力 頂 き まし た皆 様 に 感 謝 い たし ま す。

引 用 文 献

Austin, W., Berg um, V ., a nd G old berg, L(2 0 03). U nab l e to a nsw e r th e ca l l o f o ur pa t ie n t s : m e n ta l he a l th nurses’ expe rience o f m or a l d is t res s. N ur s i n g I n q u i r y , 10(3) . 17 7 -1 83.

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(15)

15

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参照

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