サ ー
ビ ス
の 対
価
盟北海道の冬道
今冬の北海道は久しぶりに寒さ厳しく︑雪 も多い︒このような北国の暮らしでの大きな 開題の一つは︑道路事情である︒国道などの 幹線道路はともかく︑住宅街では︑雪で道路
はデコボコ︑道幅が狭くなり︑2車線は1車
線となる︒道路と歩道の境に高い雪山ができ て︑視界が遮られ︑車も歩行者もお互いがよ く見えない︒何より︑道路が滑り︑思うよう に車を制動できない︒スリップ︑追突はよく
見る風景である︒
だから︑私のように運転が得意でない者は︑
冬期間︑パスやタクシーに乗って用をすます︒
しかし︑雪が降ったから︑道路が滑るからと
いって運転を避けることのできない人々がい
る︒タクシーやパス︑あるいは宅配などの輸 送トラックを運転する運転手などである︒本 州の人であれば信じられないような大吹雪の
中︑彼らは車両を運転し︑業務をこなす︒
こんな冬の日にタクシーを利用し料金を支 払うとき︑自宅に届けられる荷物を受け取る とき︑彼らに支払う代金はその役務に対する 対価を意味するだけでなく︑私が危険な目に 遭遇しないという利益︑つまり安全の対価で もあると思う︒言い換えれば︑代金には車両 代︑ガソリン代︑人件費など日に見えるもの だけではなく︑安全︑危険代行といった価値
由喜
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桐拘
医療百論2013
も含まれているということである︒
モノやサービスの値段は︑こうした可視化
されない価値が付加されて設定されるのだろ
= っ
臨医療サービスの場合 ︒
体調が悪いときやケガをしたときに︑私た
ちは病院へ行く︒病院では︑不調の原因を検
査などで探し︑それに合った施術︑投薬など
の治療を行う︒その結果︑快方に向かい健康
を取り戻すこともあれば︑そうならない場合 もある︒後者の場合であっても︑窓口で医療
費の自己負担分を支払う︒
医療サービスの値段は︑したがって回復︑
治癒の結果に関係になく計算され︑サービス
の受け手である患者は費用支払義務を負う︒
すなわち︑医療サービスの代金は一連の診察・
治療行為に対する対価である︒これは前述の 例での運送︑輸送行為に該当する︒そして︑この例では︑費用に安全という目に見えない価値が含まれていると述べた︒では︑医療サービスの場合には︑どんな価値が含まれ︑対価として私たちは何を得ているのだろうか︒盟希望と安心
病気になったとき︑苦痛の原因がわからな
いことが最も辛いことの一つであると思う︒
この﹁わからない﹂という状況ほど︑人を不
安にさせるものはない︒原因は判明したが︑
その治療法がわからない︑あるいは現時点で
は有効な治療法が存在しないと明言する方
が︑まだ︑不安の度合いが小さいという人は
少なくないだろう︒
病院などで検査をして︑病気や苦痛の原因
を知ることによって︑仮に絶望が同時に生じ
るとしても︑不安から解放され︑場合によれ
社会
ば安心を得ることができるのではないだろう
か︒つまり︑私たちは医療サービスを通して
不安からの解放︑すなわち︑納得︑安心や将
来への希望︑展望を得ることができると言え
る︒これら安心や希望という価値を医療費の
対価として︑私たちは得ている︒
盟 看 護 職 か ら の 安 心 盟
診察や治療の場で︑主導権は医師が有す
る︒他方で︑彼らを補助する看護職もまた医
療サービスを提供する過程で︑患者に対し不
安の除去や安心を与える重要な役割を果たし
てい
る︒
私ごとで恐縮であるが︑叩年前に生まれて
初めての胃カメラ検査を留学先のソウルで受
けた︒留学問もない頃で︑体調に関する語葉
はないに等しい状況で︑回目カメラ検査を受け
る私の不安は想像に難くないと思う︒カメラ
挿入後︑あまりの苦痛に自分でカメラを引き
抜きたい衝動に駆られたが︑それを我慢させ
たのは︑そばにいた看護師の励ましであった︒
カメラ挿入と同時に手を握り︑そして直ち
に﹁はい︑すぐ終わりますよ︒大丈夫︑リラ
ックスしてください︒はい︑あと少し︑頑張
りましょう︒もう︑終わります﹂と検査の問︑
ずっと︑背中をさすりながら声をかけてくれ
た︒外国人の私がどれほど不安に思っている
かを慮って︑そして︑医師がスムーズに検査
を続けることができるように︑支えてくれた
ので
あっ
た︒
臨
医療百論2013
彼女の言葉は私から不安を取り除き︑あと
少しで終わるという展望を与えてくれた︒こ
の看護サービスに支払う対価には︑患者への
安心感と展望の付与が間違いなく含まれてい
守 ゐ ︒
関 ま と め に か え て 璽
病める患者に安心や将来への希望を与える
ことは︑治療行為と同じ程度に不可欠である︒
このことは︑これらを患者に与えない医療サ
ービスは︑患者の満足度が低くなることを意
味す
る︒
安心や希望を与えることは︑もちろん︑専
門知識や技術の裏付けがあって︑初めて可能
であることは言うまでもない︒しかし︑それ
だけでなし得るものではなく︑病める人間に
対する思いやり︑想像力といった資質も求め
られる︒医療は医学の社会的応用と言われ︑
実験室で求められる能力とは異なる能力が必
要なのである︒
こんなに偉そうに書くのだから︑では︑大
学の場合︑授業料の対価として知識の提供の
ほかに何を︑どんな価値を学生に与えるのか
と問われるのかもしれない︒これに対する回 矢口は紙幅の都合上︑別稿にゆだねたいと述べて︑ここでは棚上げさせていただく︒これを今年の宿題として︑学生と向き合うごとに考え
たい
︒
社会