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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:丸 野 充

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:舌痛症モデルマウスの舌冷痛覚過敏に対するTRPA1の役割 審査委員:(主 査) 教授 小 林 真 之

(副 査) 教授 祇園白 信 仁 教授 岩 田 幸 一 教授 松 村 英 雄

臨床において舌痛症は,口腔粘膜に何ら器質的変化が認められないにもかかわらず口腔粘膜に灼熱 感などの痛覚異常が見られる代表的な口腔粘膜疾患であり,数ヶ月から数年にわたる。過去の研究か ら,舌神経損傷または口腔粘膜の炎症により,舌投射三叉神経節ニューロンにおいて痛覚の調節に密 接に関係する様々な受容体やセカンドメッセンジャーの発現および機能変化が誘導されることが知ら れている。その結果,舌投射三叉神経節ニューロンの興奮性が増大し,舌痛覚過敏が引き起こされる と考えられている。舌痛症において発症する痛覚異常においても,舌投射三叉神経節ニューロンの感 作により興奮性が増大し,舌痛覚異常が発症することが予想されるが,その詳細なメカニズムは,未 だほとんど明らかにされていない。

そこで,本研究では,2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid (TNBS) の舌処置によって作製した舌痛症 モデルマウスに発症する冷痛覚過敏に対して,17℃以下の冷刺激によって活性化するtransient receptor potential ankyrin 1 (TRPA1) がどのような役割を担うか明らかにすることを目的とした。

実験には,雄性C57BL/6NCrマウスを使用した。ペントバルビタールを用いた深麻酔(50 mg/kg, 腹腔内投与)下にて,マウス舌背にTNBSを一時間塗布することによって,舌に何ら器質的変化が認 められないにもかかわらず舌粘膜に冷痛覚過敏を発症する舌痛症モデルマウスを作製して行動観察実 験および免疫組織化学的解析を行った。

行動観察実験では,TNBS 舌処置後,麻酔深度を一定にした浅麻酔下にて,後肢へ一定の侵害刺激 を与えて逃避反射が誘導されることを確認した後,舌背に接触型温度プローブを用いて冷刺激 (35 - 0℃, -1℃/s) および機械刺激装置を用いて刺激 (30 - 55 g, 5 g/s) を与え,逃避反射閾値を経日的 に計測した。なお,逃避反射閾値は3回計測した平均値より算出した。

また免疫組織化学的解析では,TNBS 舌処置前,舌投射三叉神経節ニューロンを同定するために,

あらかじめ逆行性トレーサー (FluoroGold) を舌背注射した後,TNBS舌処置後5日目に灌流固定し,

三叉神経節を摘出した。その後,舌投射TRPA1陽性三叉神経節ニューロンを検出し,舌投射三叉神経 節ニューロンにおけるTRPA1陽性三叉神経節ニューロンの割合を算出した。なお,背景に比べ2倍以 上の蛍光強度を示したニューロンを陽性と判定し,解析は三叉神経節あたり4切片を使用して行った。

その結果,以下の結論を得た。

1. TNBS処置後5日目から11日目まで,舌組織に器質的変化は見られなかったが,舌への冷刺激に 対する逃避反射温度が有意に上昇した。しかし,舌への機械刺激に対する逃避反射閾値に有意な 変化は認められなかった。

2. TNBS処置後5日目,舌投射TRPA1陽性三叉神経節ニューロン数は無処置群と比較して有意に増 加した。

以上のことから,TNBS処置により引き起こされる舌冷痛覚過敏は,舌投射一次侵害受容ニューロ ンにおけるTRPA1発現の増加が関与していることが示唆され,今後TRPA1シグナルの遮断が舌痛症 患者に発症する舌冷痛覚過敏の治療法の有力な候補となる可能性が示された。本研究は,舌痛症のメ カニズムの一端を明らかにしたものであり,この成果は,歯科臨床の現場で舌痛症で苦しむ患者の治 療法の開発に大いに寄与するものと考えられた。

よって本論文は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上 平成29年3月8日

参照

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