農民工の子どもの教育問題に関する研究
著者 劉 綺莉
雑誌名 人間社会環境研究
巻 15
ページ 95‑106
発行年 2008‑03‑27
URL http://hdl.handle.net/2297/9835
論文
人間社会環境研究第15号2008.3 95
農民工の子どもの教育問題に関する研究
社会環境科学研究科地域社会環境学専攻 劉綺莉
AStudyo征theEducationProblemsofPeasantLabors,Children
LiuQili
Abstract
Oneofthemostmportantproblemsofthepeasantlaborsistheeducationproblemofpeasantlabors,
childrenUmikethepreviouspeasantlaborswhowenttoworkalongmbigcity)inrecentyears,more andmoreofthemaregomgtoworkwiththeirflmiliesThequestionsofWhatkindofeducationtheir childrenarereceivmg,andwhethertheirchildrenwillalsobecomethepeasantlaborsareposedoutand meanwhiledrawingmoreattentionInthisthesislshalltrytodiscusstheeducationproblemsmainly fiFomtwosides,whichareA)thechildrenwhofiollowtheirparentstobigcitiesB)thechildrenwhoare leftathome・hconclusion,thepapershowssomemethodsonhowtosolvetheeducationproblemsof
thepeasantlabors,children.
Keyword:Educationproblems,Peasantlabors,Children
目次 はじめに
1.中国の義務教育とその問題点
(1)教育制度と義務教育の体系
(2)義務教育の現状と問題点
(3)農民工の子どもの社会背景および問題の所
在2.「流動児童」の教育状況と問題点
(1)公立学校への「借読」
(2)「民工子弟学校」の発展
(3)高い流動性の「民工子弟学校」
(4)「流動児童」の教育現状とその問題点 3.「留守児童」の生活環境とその問題点
(1)「留守児童」の生活環境
(2)「留守児童」の抱える問題点
4.農民工の子どもの教育問題に対する対策
おわりにはじめに
中国の改革開放の推進は,農村社会内部に大き な変動をもたらしたが,同時に農民とその外部環 境にも変化を引き起こしている。なかでも最も注 目すべき現象は,「民工潮」と呼ばれている農民の 都市への流入である。中国の都市化,近代化の過 程で,出稼ぎを主とする2億人前後の農民の大移 動が短期間のうちに起きた。そのことは,農村・
都市を問わず社会全体に予想以上の影響を及ぼし
てきた。
日本では主に1960年代から70年代にかけて,農 村地域から大都市(主に三大都市圏)へ出ていく 出稼ぎ労働者が数多く出現した。ここで言う出稼 ぎとは,労働者が一定期間家から離れて働くこと を指すが,後に必ず家へ帰ってくることを特徴と
している。
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現在の中国教育制度はほぼ普通教育(学校教育),
職業教育,成人教育の三つの領域に分けられてい る。表1は2004年の各領域の規模を示している。
2005年には全国の小学校だけでも生徒数が1億 864万人,専任教員が559.25万人という大規模とな
り,小学学齢児童の就学率は99.15%に達した3)。
中国の義務教育は日本と同じように初等教育と 中等教育からなり,一般的に小学校6年,中学校 3年あわせて9年制である。少数の地域では小学 校5年,中学校4年という方式もある。カリキュ ラムは国語,数学,自然,社会,体育,音楽,美 術を各学年で教える。1990年代末からのカリキュ ラム改革によって,総合実践活動(日本の総合学 習)が設けられるようになった。また,小学校3 年生から外国語(英語)の導入が行われ,都市部 の一部の小学校では1年生から英語教育を実施し ている所も少なくない。他方,農村部では,英語 を教えられる教員がいれば小学校3年から授業を することができるが,教員の不足により不可能な 状態である。
日本の小学校と比較して,いくつか異なる点が ある。①日本の小学校では担当教員が一人でほぼ 全科目を教えるのに対して,中国の小学校では国 語,数学などの科目ごとに担当の教員が異なると いう教科担任制をとっている。ただし,農村では 小学教員が不足しているため,-人の教員が全科 目あるいは複数学年の生徒を教えていることもあ る。②日本に普及している学校給食についても,
中国では統一して実施する制度がなく,生徒の多 くは近くにある自宅に帰って食べるか,あるいは 祖父母に面倒を見てもらっている。そのため,学 校の昼休みが12時から14時までの2時間になって いる4)。
小学校から中学校へ進学するとき入学試験が行 われていたが,最近では廃止する方向にあり,基 本的には学齢児童が住んでいる自宅の近くにある,
指定された中学校に進学することになっている。
ただし中学校が不足している地域や「重点学校」
(いわゆる一定範囲また地域内において,進学率,
教学設備などの面が相対的にレベル高い学校をさ
一方,中国研究者の間では,改革開放のもとで
大量に出現したこのような出稼ぎ労働者について,
様々な議論が行なわれている。2006年5月中国の 国務院研究室の課題グループが公表した「中国農 民工調研報告』における農民工の定義で一応の整
理が付けられたと思われる。同報告には,次のように述べている。「農民工は現在の中国の経済と 社会移行期における一つの概念である。つまり戸 籍の身分が農民であり,主に非農業に従事し,賃 金を主要な収入源としている労働者をさす」')。こ の定義を踏まえて整理すると,つまり農民の戸籍 をもつことと,何らかの形での賃金労働者である
ことが農民工の重要な要件である。本論文では狭義の意味での農民工,いわゆる農民の身分を持つ 都市の賃金労働者を主な検討対象とする。実際に,
農民工は都市市民と同じ都市で就労し,暮らして も,都市市民に適用されている労働法規や都市市
民が享受している社会的資源から実質的に排除さ れている。農民工の基本的権利について考える際,最も注
目されている問題の一つは農民工の子どもの教育 問題である。農民工の行動によって,単身出稼ぎ 世帯から家族出稼ぎ世帯へと変化している。農民 工の仕事先の地域で,彼らの子どもたちはどんな 教育を受けているのか,また農民工の子どもたち は農民工になるのか。この論文では,親と一緒に 出稼ぎ先の都市で生活している「流動児童」とそ のまま農民工の出身地に残って生活している「留 守児童」をそれぞれ取り上げ,農民工の子どもの
教育の問題点と対策を明らかにする。1.中国の義務教育とその問題点
(1)教育制度と義務教育の体系中国は建国直後から学校教育・成人教育という
「二本足で歩く」教育制度であった。しかし,急 激な市場経済化の進展と労働者の流動によって,
各企業内における在職訓練を維持することが困難 となり,体系的な職業教育へと組み替えて,正規
の学校体系へと位置づけた2)。
農民工の子どもの教育問題に関する研究 97
表1全国教育基本統計(2004年)
注:1成人教育は主に勤労者・農民のための教育機関の領域であり,成人大学はラジオ・テレビ大学,職工大学などを含める.
出所:『中国教育統計年鑑2004』より作成.
す)に進学したい場合には,激しい受験戦争が避 けられない状況にある。2003年の統計によれば,
中学校の就学率(12~14歳の年齢層で中学校に在 籍する生徒の割合)は94.1%である5)。
中国における義務教育の発展過程についてみる
と,1982年の「中華人民共和国憲法」によって義 務教育を実施する規定が正式に明記された。そし て1986年に「中華人民共和国義務教育法」(以下,
「義務教育法」と呼ぶ)が公表され,全国で9年 制義務教育の実施が始まった。それからの一連の 教育改革は,中国の社会主義市場経済への移行と
ともに行われ,教育制度が急速に改善された。
第7次5カ年計画(1986~1990年)の期間には,
教育に関する立法は201項目にわたった。1995年に は「中華人民共和国教育法」が公表された。この 法律は,中国の教育総合法の'性格をもつものであ
り,従来の9年制義務教育の実施,教育行政の地方分権の促進とともに,生涯教育体系の構築が明 記されたことが注目されている。
成果を収めた。2000年には9年制義務教育はすで に総人口の80%をカバーする地区まで普及し,全 国の非識字率は6.72%まで低下した。
しかし現実には,義務教育段階にある児童の失
学問題が深刻になっている。失学とは,義務教育 段階において,学齢児童が何らかの理由で受ける べき教育を受けられない状態をさす。その多くの 理由は経済的理由と考えられる。2000年の人口調 査と教育統計によれば,全国の小学段階での失学 者は約354万人,中学校段階の失学者は734万人に 達している6)。また2001年に公表されたように,
全国の中学校の卒業率を75%と計算すれば,毎年 500万人におよぶ学齢児童が留年や中退を含めて 期限内に卒業できない状況にあると推測される7)。
特に地域間に格差があり,教育の発展が遅れて いる地域や省では,期限通りに卒業できない比率
が非常に高く,チベットでは中学校の期限内に卒業できる比率が25%,貴州省が48%,寧夏回族自 治区が49%,廿粛省と青海省が52%にすぎない8)。
個別研究の調査結果によれば,農村地域の中学校 では学生の退学率が40~50%を超えている9)。
このような義務教育の失学問題は,主に低収入 の家庭が義務教育の費用負担に耐えられないこと (2)義務教育の現状と問題点
このように義務教育の発展は20年以上にわたっ
ており,一連の教育法規の制定によって,大きな
領域 各教育機構名称 学校数(所) 在学生数(人) 専任教師数(人)
普通教育 初等教育(小学校)
前期中等教育(普通初級中学)
後期中等教育(普通高級中学)
高等教育(高等普通教育)(本・専科)
394,183 63,060 15.998 1,731
112,462,256 64,750,006 22,203,701 13,334,969
5,628,860 3,476,784 1,190,681 858,393 職業教育 前期中等教育(職業初級中学)
中等職業教育(普通中等専科学校)
中等職業教育(職業高級中学)
中等職業教育(成人中等専科学校)
中等職業教育(技能工学校)
697 3,047 5,781 2,742 2,884
525,134 5,544,733 5,169,246 1,033,488 2,345,000
23,680 197,084 270,612 75,758 165,000 成人教育 初等教育(成人小学・識字学校)
前期中等教育(成人初級中学)
後期中等教育(成人高級中学)
高等教育(成人高等教育)(本・専科)
69,452 1,980 955 505
3,841,913 487,796 193,693 4,197,956
43,329 4,993 6,216 86,065
人間社会環境研究第15号2008.3 98
近年,農村の各税費の免除施策によって教育付 加費用などの費用が徴収できなくなったので,農 村の義務教育資金の不足は一層深刻になると思わ れる。
義務教育の財政に対する構造的な不合理性は,
各家庭に重い負担をかけることになった。公共的 資源である義務教育は,通常,政府資金の投入が 中心であり,中国政府も50~60%の財政負担を担
っているが,その他の40~50%は農民・企業・各
保護者側からそれぞれ,徴収している。他方,義 務教育ではない高等教育に対して,国は70%以上 の資金を投入している。義務教育より高等教育を 重視する方向を示しており,義務教育を重視する教育法規に逆行しているといえる。全体の教育問
題は以上のような状況であるが,次に農民工の子どもの教育政策を検討してみる。
が原因の一つと考えられる。2000年に国家統計局 が行った貧困県の学齢児童に対する調査は,学齢 児童の失学の理由について取り上げている(図l)。
“お金がない,,(47%)と‘`学費が高い”(6%)と
いう回答が高い比率を占めている。各家庭にとっ て義務教育にかかる費用が高いために,失学にな
ることが明らかになった。義務教育制度は18世紀中葉から世界各国で形成
されてきたが,主に二つの特徴をもつと言われている。一つは強制性で,もう一つは学費免除であ る。中国の「義務教育法」では,「国家は義務教育 を受ける学生に対して学費を免除する」という規
定を定めた。ただし,政府の運用資金の不足により,学費を免除することが事実上不可能になって
いる。中国では義務教育への資金が不足し,以下のよ うな問題が起こっていた。①教師への賃金の延滞 問題。教育部の統計によれば,2000年4月まで全 国22省.自治区・市の教師への賃金の未払い総額 が76.68億元に達した'0)。②基本的な学校施設や整 備の不足。教育資金の不足によって,一部の地域
では義務教育をうける建設を整備することができず,中西部の農村地域では中小学校の「危房」(建 築上安全'性を保持できない建物をさす)が数多く 存在する。③農村における義務教育資金の不足。
1995~1999年の5年間,全国の義務教育への投入
資金総額が6,944億元であるが,そのうち政府の投 入額が3,713億元,残りの約半分の資金は農民の負 担となっていたu)。
(3)農民工の子どもの社会背景および問題の所在 農民工の子どもの教育問題は農民工自身の変化 と緊密に関連しているため,その社会的背景を考 えなければならない。その変化の一つは,農民工 の規模が年々上昇していることである。2004年に は農民工の数は1.2億人に達している。農村人口は 短期間に減少しているわけではないが,年間900
~1,000万人の農民工が農村から都市へ移動して いると推測されている。
その二は農民工の流動が長期化し,単身赴任か ら家族を伴いながら流動するというスタイルへと 変化していることである。市場経済化の加速化と 緩和されつつある戸籍制度の影響をうけて,都市 部での農民工の滞在は長期化,安定化する傾向が 見られる。農業の不景気により農業活動だけでは 生活ができなくなったことに加えて,単身で赴任 した農民工が,都市と農村間の往復より,家族と 一緒に住むほうが感情的,コスト的に利点がある と考えるようになったことから,妻や子どもを連 れて都市部で暮らすようになってきた。北京市 386.6万人の流動人口のうち,14歳以下の少年・児
童が9.9%を占めており,およそ40万人に達した12)。
全国のデータによれば2003年には家族と一緒に住
21%
%
47%
圖お金がない■行きたくないロ学費が高い□学校が遠すぎ■その他
図1学齢児童の失学理由について
出所:中国統計局農村社会経済調査総隊『2001中国農村貧困監 測報告』中国統計出版社,2001年第1版,p123.
農民工の子どもの教育問題に関する研究 99
む農民工は2,430万人であり,農民工全体の21.3%
を占めている'3)。
学齢児童を持つ農民工はさまざまな問題に直面 するが,表2にあるように,農民工の学齢児童は 二つに分けられる。一つは農民工の親と一緒に都 市部に住む児童であり,親の仕事の流動‘性が高い ので,「流動児童」と呼ばれている。もう一つは,
農民工の親と離れて,片親あるいは子どもだけ農 村部に残って生活する児童を「留守児童」と言わ れている。この二つタイプの学齢児童には,それ ぞれどのような教育問題が生じているか,次に検 討する。
度は,流動している農民工の子どもを都市の教育 体制の枠組みから排除してきた。そのため「義務 教育法」の権利規定は現実と乖離してしまった。
つまり「流動児童」は義務教育を受ける権利が保 障されないという現実である。1997年の北京市の 調査によれば,「流動児童」の中退率は13.9%にも 上る'6)。これらの問題が義務教育の普及の阻害要 素ともなっている。
このため,国家教育委員会が一連の政策を出し た。1996年4月,国家教育委員会と公安部は「都 市流動人口の中の学齢児童就学弁法(試行)」を公 布し,その後'998年3月には正式に「外地戸籍児 童・生徒就学暫時措置法」(流動児童少年就学暫行 弁法)を公表した。この中には,これまで言及さ れていなかった「流動人口」の学齢児童・生徒に 対する流入地政府関係部門の責任が明記された'7)。
2001年の「国務院基礎教育改革と発展に関する 方針」は,再び“「流動児童」の義務教育問題をも っと重視し問題を解決する,,として,農民工の子 どもの教育問題について以下の方針を打ち出した。
つまり「流動児童」の就学は主に流入地域で行う こと,しかも主に全日制公立小中学校に入学させ るという方針である。そして多様な方法を通じて,
「流動児童」の義務教育をうける権利を保障する ことを求めた。このことは,「流動児童」の教育問 題に対する政府の方針が大きく転換したことを示 している。すなわち,流入先地域の学校への入学 規制から入学の受け入れへの転換である。
2003年には国務院から教育部,公安部,発展改 革委員会,財政部など六部門へ「農民工子弟の義 務教育に関する意見」の伝達が行なわれた。この
「意見」であらためて流入地政府は「流動児童」
2「流動児童」の教育状況と問題点
2000年の全国人口調査のデータによれば,全国 の農村戸籍の「流動児童」は約1,500万人に上る。
そのうち6~14歳の義務教育段階の学齢児童は 660万人で,44.0%を占めている。彼らは主に小学 校段階の児童である'4)。国務院婦女児童工作委員 会の調査では,「流動児童」のうち学校に通ってい ない学齢児童が6.9%を占めており,2.5%が失学 者である'5)。
中国の「義務教育法」は「学齢児童が義務教育 を受ける権利を持つ,親が学齢児童に教育を受け させる義務を持つ,国家が義務教育の条件を提供 する義務をもつ」と明確に定めている。この規定 は計画経済体制の下で人々の移動を規制してきた 戸籍制度をベースに作られており,義務教育は戸 籍所在の地方政府が責任を負うと明示した。
しかし,市場経済の導入によって,人口の流動 化が始まった。それに対して,従来の義務教育制
表2農民工の子どもに関する分類
①|流動児宣 56C
②l留守児萱
注:1各タイプの規模人数について,第五回全国人口調査データを参照して作成.
教育部調研組「農民工子女教育問題研究報告」『中国農民工調研報告』中国言実出版社,2006年4月,p、229.
限定対象 分類名称 規模(万人) 戸籍所在地 生活地域/
受教育地域 親との居住関係
農民工の学齢児童 ①「流動児童」 660 農村 都市 同居
(通常6戸、-14歳) ②「留守児童」 2290 農村 農村 同居/別居
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工の半数以上は毎月500~800元の収入(2005年)
なので,物価が高い都市部では生活費用より子ど もの教育費用の方がより大きな負担となっている。
その意味で,公共的資源である義務教育を受け る国民の権利が,都市部に住む低収入の農民工の
子どもには実質的に保障されていないということができる。一方で,「借読」問題については都市住 民の感情問題もある。学校独自の判断で,農民工 の子どもに当該地域で他の子どもと同じように義 務教育を保障するとしても,その学校に子どもを
通わせている都市住民から反発がよく出る。その理由の一つは,農民工の子どもは都市に来 るまでは,農村の学校教育を受けていたため,学 力が都市部の子どもより相対的に低いことである。
また農村と都市の衛生面,生活習'慣あるいは言語
発音(地方方言もある)などの違いが,学校の教 育活動と都市住民の子どもに影響を与えるという
ことも理由にされている。公立学校に入っても都 市部の生徒の軽視や冷たい雰囲気にさらされるた
め,子どもたちは,公立学校に入りたくないとい う気持ちも多少もっている。このような経済的及 び心理的理由から,農民工は子どもの教育機関を 選択するとき,ほとんどが「民工子弟学校」を選
ぶようになった。の教育を受ける責任を担い,主に全日制小中学校 に入学させることを求めた。これを受けて,2006 年6月には「中国人民共和国義務教育法」が修正 され,流入先地域で「流動児童」の義務教育の責 任を担うことが正式に法律によって定められた。
以上の内容に受けて,農民工の「流動児童」が 流入地において義務教育を受ける方式が,①公立 学校への「借読」,②“貴族学校,,(主に私立の学 校であり,公立学校と比べれば,教育施設が完備,
高額の教育費用、寄宿や半寄宿制の特徴をもつ)
のような私立学校への入学,③非公式の学校組織 である「民工子弟学校」への入学の三つに整理さ れた。次に大部分の農民工に利用されている「借 読」と「民工子弟学校」について詳しく紹介する。
(1)公立学校への「借読」
「借読」の起源は1992年に国家教育委員会が公
布した「義務教育法実施細則」にある。そこでは,学齢児童・生徒で戸籍所在地以外の地域において 義務教育を受ける者は,戸籍所在地の県級あるい は郷級教育部門の許可を受けて,居住地人民政府 の関連規定に従って「借読」の申請ができると規 定した。しかし,前述したように中国の義務教育 の経費は全額政府負担ではなく,授業料の一部と 雑費が保護者の負担となり,しかも戸籍以外の児 童・生徒には支出されないため,農民工の子ども が義務教育をうける場合,学費と雑費に加えて,
「借読費」を公立学校に支払わなければならない。
1992年の制度施行当時,「借読費」は1学期一人 につき小学校120元,中学校200元が基準とされた'8)。
しかし地域や学校によってその金額は異なってい
た。1998年に上海では平均一学期400元であった。
有名で評判がよい学校の場合は高額の「借読費」
に加えて別の名目の寄付金も支払わなければなら なかった。2003年北京の調査によれば,農民工の 子どもが北京の公立学校に入るために,一般学生 の学費・雑費以外に毎年2,000~5,000元の寄付金
と一人一学期600元程度の「借読費」を支払っている'9)。さらに各学校では毎年の制服費,映画費,
課外活動や補習クラスなどの費用が加わる。農民
(2)「民工子弟学校」の発展
「民工子弟学校」は文字通り,主に農民工の子
どもを対象とした非公立の簡易学校をさす。多く は小学校である。一般の学校と比べて規模が小さ く,施設が粗末で,主に都市部の中心地区から離 れた,多くの農民工が集中する地域あるいは城区
と郊外地域と重なる地域に設けられるという特徴 がある。全国では,北京の「朝陽区」,「海淀区」,「豊台区」,上海の「徐匪区」,「長寧区」などの地
域がそれに当たる。農民工の子どもに対する教育ニーズの増大に対
応して,1990年代初頭に北京・上海のような大都
市で最初の「民工子弟学校」が自発的に設立され
た。1998年以降学校が増え続ける発展段階に入っ た。1999年4月に北京の「民工子弟学校」が114農民工の子どもの教育問題に関する研究 101
ケ所あり,生徒数はおよそ1.07万人に達した20)。
全国の学校数は明らかにされていないが,新聞報 道によれば,北京には300校(2004年),上海には 500校(2001年)に上る。南亮進・羅歓鎮の推計に よれば,北京では農民工の子どもの30%,上海で は60%が「民工子弟学校」に通っている。全国に は,およそ200~400万人の農民工の子どもがこの タイプの学校に通学していると推測される21)。
山口真美の研究では,経営主体や学校の性格に 注目して,上海市の「民工子弟学校」を次の三種 類に分けている。①農民工出身地の地方政府の教 育委員会が主導して流出地に設置したタイプ,② 個人よって設置されたものが,地方政府の教育委 員会がなんらかの形で(例えば教科書,試験の問 題用紙など)協力しているタイプ,③個人が経営 する私塾形のタイプ。この第3のタイプについて は地方政府の協力がなく,卒業資格も与えていな い。こうした上海市のような「民工子弟学校」の 状況は,全国的にもみられると考えられる。さら に,教育当局や地方行政の許可を得ていないのに,
学校から迎えるバス,給食などの有料サービスを 提供することには,「民工子弟学校」が農民工の子 どもの教育問題を解決するという当初の発想から,
徐々に市場化へ向いつつあることがうかがえる。
員や教員資格をもたない人が少なくない。寧波市 の教育局の調査では,当地域の「民工子弟学校」
の教師は教員資格をもつ比率が30%に過ぎない。
教師の給料は低く,大勢の生徒をうけもち,大量 の仕事をしている。一部の学校では教員に対する 基本的権利が無視されている。例えば,休み中の 給料の保障はなく,教員宿舎も狭小。したがって 教員はよい職場が見つかると,すぐに転校あるい は転職する。
そのため,「民工子弟学校」の教員の転職率は非 常に高くなっている。1999年の北京市の調査によ れば,2000年度上半期における教員の転職率(調 査対象69クラス)は47.8%となっており,最悪の 場合,-クラスで7人の教員が-学期に入れ替わ った24)。頻繁に教師が入れ替わることは,生徒に 心理的な不安を与えるため,生徒の学習能力の形 成にも好ましくないことは明らかである。
「民工子弟学校」の生徒も流動`性が高くなって いる。「流動児童」は親の転職に伴ってよく転校す る。学校では新学期の初めには生徒が少なく,日 がたつにつれ徐々に増え,年末になると生徒が親 と一緒にふるさとに帰るので減少するということ はよくあるケースである。他方,公立学校の子ど もと比べて,異なる出身地からきた生徒同士が,
休み時間にお互いに自分の故郷の風景,動物,言 葉,飲食および生活習』慣を比較しあい,交流する ことを通じて,他の地域の友達ができるというメ リットもあると言われている。
「民工子弟学校」自体も流動'性が高くなってい る。北京の調査結果によれば,一部の学校は登録 住所がなく,15%の学校は移転した経験をもって いる。そのうち,-年間で4回移転した学校もあ
り,ほぼ毎年一回移転する学校もあった。
では,農民工は「民工子弟学校」に対してどの ように考えているのか。南亮進らの調査結果に基 づいて分析してみる。
表3にみるように,農民工が子どもを「民工子 弟学校」に通わせる主な理由として,“授業料が安 い,’ことと“家に近い”ことが多く挙げられてい る。北京と上海市ではやや数字が異なるが,全体 (3)高い流動性の「民工子弟学校」
「流動児童」を対象とする「民工子弟学校」の 特徴は,教員,生徒,さらに学校自体も含めて流 動性が高い。広州市の政府特約教育監督員の李偉 成は,「民工子弟学校」について,「ほとんどの学 校の教学条件が不十分で,設備が粗末なため,公 立学校より圧倒的に劣悪な状態である。教員全体 は不安定かつ無資格で日々の教学活動を行ってい る。教学の質量は低く,主に識字と子どもの管理 を中心に機能している」と述べている22)。このよ
うな「民工子弟学校」が該当地域の70%の「流動 児童」を受け入れ,教育活動を行っている。
教員についてみると,公立学校の教員が教師免 許の資格をもっているのに対し,「民工子弟学校」
の教員はほかの地域からの「民弁教師」23),退職教
人間社会環境研究第15号2008.3
102
表3子どもを民工子弟学校に入学させる理由
(単位:%)
注:1複数回答における構成比.
出所:南亮進・羅歓鎮「民工の都市生活と子弟教育一北京・上海の事例研究」『中 国研究月報』NO701,中国研究所,2006年7月,p8より引用
は義務教育を実施するすべて公立中小学校に,条 件を満たす農民工の子どもを入学させている。
「借読費」も免除することも決定した。2005年2
月には,北京にいる34.5万人の「流動児童」のう ち,63.0%が公立学校で借読しており,「民工子弟 学校」への就学は28.6%にとどまっている25)。
しかし,「流動児童」の教育問題は楽観できない。
2006年に北京の未認定「民工子弟学校」は239ケ所,
在校生徒人数は95,092人である26)。市政府は基本
的に分散,規範,閉鎖の方向で考えており,条件 を満たさない「民工子弟学校」を取り締る一方で,滞在する生徒を-部の公立中小学校に入学させる
方針を取っている。このような政府の政策転換に より「民工子弟学校」の閉鎖に対して,学校側と 保護者側が強い抵抗姿勢を示した。2006年7月,北京の「海淀区」の37ケ所の「民 工子弟学校」が区政府の通知によって閉鎖され,
15,000人の生徒を周辺の公立学校に分散して,入
学させることを決めた27)。周辺の公立学校は受け
入れる人数の限界があって,指定された公立学校 には入学しない人が相次いだ。結局,閉鎖された 各「民工子弟学校」は-ヶ月も経ていないにもか かわらず,区政府の暗黙のもと,再びそのまま開 校することになった。そのほとんどの学校では生徒数は変わっていない28)。
的な傾向は ̄致していることが読み取れる。前述 したように公立学校の場合は「借読費」と寄付金 などの費用がかかる。それと比べれば,毎学期300
~400元の授業料と学費で利用できる「民工子弟学 校」のほうが経済面な負担は少なくて済む。また
「民工子弟学校」は公立学校より設備が良くない が,農村地域の学校よりは"教育の質が高い,,,“先
生がよい,,などのメリットをもっている。例えば
相対的に大きい「民工子弟学校」では,一部農村 地域にみられるような複数学級教育ではなく,少
なくとも-学年-クラスであり,英語やパソコン
なども少し教えている。“入学退学の手続きが簡 便,,であることも農民工の仕事にとって好都合で あり,選択の理由となっている。次に実際に「流 動児童」の教育状況とその問題点を取り上げてみ
る。
(4)「流動児童」の教育現状とその問題点
近年,農民工の子どもの教育問題に対して,政 府は積極的に改革をすすめている。武漢市は,2004 年3月に公立学校に就学する「流動児童」は現地
の子どもと同じ基準で費用を徴収することを決め,政府の審査に合格した「民工子弟学校」に入学す る場合は,市の物価局の公定基準で費用を徴収す
るようになっている。また同年9月から,北京で項目内容 北京市 上海市
理由
授業料が安い 家に近い
入学退学の手続きが簡便 先生がよい
教育の質が高い 子供に差別しない 公立学校にいけない その他
47.2 17.5 2.4 3.2 6.7 0.8 17.1 5.2
24.7 35.2 5.0 5.9 9.1 1.8 12.8 5.5
合計 100.0 100.0
農民工の子どもの教育問題に関する研究 103
各地方の公立小中学校にとっては,「流動児童」
を受け入れる人数が多ければ多いほど財政の圧力 は高まる。全国で最初に農民工の子どもの教育問 題の解決を手がけた東莞市の経験によれば,短期 間で「流動児童」を公立学校に受け入れることはほ ぼ不可能である29)。
2000年以後,当該市は市財政の支援によって,
移動してきた「流動児童」をほぼ100%公立学校に 入学させたが,3年間で倍増した生徒数が本来余 裕がある学校に重い負担をかけるようになった。
そこで,市政府は民間学校の設立を支援する方針 に変えた。その結果,「流動児童」の公立学校の入 学率はやや減少している。
財政力が弱い地方行政にとって,現行の教育体 制の下での「流動児童」の受け入れは耐えられない 負担になっている。「分級負担」という方針により,
各小中学校は所在区(市の下級行政単位であり,
日本の“町,,に相当する)の行政主導と管理に従 うことが決定されたが,国の財政拠出は変わって いないため,各区,各地域の格差を残したままで,
他地域の子どもの教育支出も支払わなければなら
なくなっている。「流動児童」自身の側面から見ても多くの問題が 残されている。一部の適齢児童は農村地域の学校 に入ってから「民工子弟学校」へ,さらに,その次 には公立学校に入る。教師の入れ替わりや異なる 教材による教育ということを考えれば,大切な成 長期にある子どもにとっては深刻な問題である。
次にもう一つの「留守児童」の側から教育問題を
検証してみる。は,農民工の流出が多い四川,安徽,湖南,江西,
河南,湖北などの中西部の省に集中している。「留 守児童」の教育問題はその生活環境とつながって いる。そこでまず生活環境を調べてみる。
(1)「留守児童」の生活環境
「留守児童」と一緒に住む主体は,異なる社会 関係によって①祖父母の扶養あるいは片親の扶養,
②親戚の扶養,③近隣の扶養,④自己管理の四種 類に分けられる。2005年に漸江省の調査では「流 動児童」と「留守児童」を対象にして教育状況の 比較研究を行っている。ここではその結果から,留 守児童の生活環境の状況を紹介する。全体の調査 対象は516人で,296人の「留守児童」のうち,95.5%
が祖父母と一緒に暮らしており,残りの4.3%の子 どもが他の親戚と一緒に住んでいる。親と一緒に 各地を転々としながら,暮らしている「流動児童」
より,「留守児童」のほうが祖父母と一緒に住む比 率が高いことが示されている。両者を比較した結 果のもとに,この研究は次のように述べている。
①両者は生活の質の点を見れば,あまりに変わら ない。②子どもの精神および健康についでは,「流 動児童」より「留守児童」のほうがかなり不安定 の状況になっている。③周辺の人間関係の適応に ついては,「留守児童」は「流動児童」よりうまく 適応していることがある。④将来の夢に対して,
「流動児童」は「個人経営者になりたい」,「留守 児童」は「大学に進学したい」という回答が圧倒
的多い。流出する農民工の増大に伴い,今日「留守児童」
の問題は農村教育の盲点となっている。最も大き な問題は「留守児童」の精神および健康の問題で ある。多数の子どもが高齢者と一緒に暮らし,高 齢者が子どもの生活を維持するために,親に代わ って扶養義務を果たしているが,高齢者の身体状 況を考えると,重い負担がかかっていることが理 解できる。
他方で,親と離れている子どもは生理的,心理 的な問題を抱えており,孤独感,冷たい態度,反 抗行動を示す子どもが多くみられる。親の役割を 3.「留守児童」の生活環境とその問題点
「留守児童」とは農民工の親と離れて,片親と
あるいは子どもだけで農村部に残り別居している
子どもをさす。中国人民大学の人口研究所の推計
によれば,全国の「留守児童」の数は2,290万人を
超えている。そのうち,片親と一緒に暮らしてい
る子どもは56.4%であり,祖父母の扶養で暮らし
ている子どもが32.2%である30)。これらの子ども人間社会環境研究第15号2008.3
104
になっていることが確認できる。生活環境,心理
問題,成績低下,身内安全問題などの問題を解決 しなければ,2,290万人にも上る「留守児童」の教 育問題が子ども自身の個人的問題にとどまらず,
社会全体の発展にも影響を及ぼすことになる。こ うした家庭教育問題の解決のためには,親を中心 とした家庭教育以外に,社会教育と学校教育が親 子の分離した子どもの成長過程に関与し,見守る
役割を果たす必要がある。しかし,それはまだ不 十分といえる。完全には代替できない祖父母(親戚)は,自由放 任になったり,溺愛してしまう傾向がある。その 点では親のそばにいる「流動児童」のほうが安定 的な親子関係を享受できるといえる。また「留守 児童」の場合,農民工は子育てに関わっていない ため,もっぱら経済面で子どもを満足させようと して多くの小遣いを与えしまい,そのことが学校 外での不適切な行動,遊びすぎによる不登校,さ
らには犯罪へとつながっていく場合もある。
(2)「留守児童」の抱える問題点
“留守児童は成績のよくない子の代名詞である,, といわれている。「留守児童」には,教員側と保護 者側から見ると成績がよくなく,自閉的で劣等感 をもつ子が多くいる。特に親が出稼ぎに出た後に 成績の低下が顕著に見られる31)。四川省の仁寿県 では,100万人の農民工のうち半数以上が他の都市 で就労していたため,義務教育段階にある「留守 児童」がおよそ13.8万人に達した。県の教育局の 責任者は,県が行った2,000人の「留守児童」に対 する学力調査では,48%の子どもの成績がよくな く,ほかの40%も中間以下のレベルにとどまって いると紹介している32)。
-時のお金を稼ぐことが,子どもの生涯に影響
を与えている現実に対して,農民工はどのように考えているのか。-人の農民工の言葉を引用して みる33)。
4農民工の子どもの教育問題に対する対策 農民工の子どもの教育問題はさまざまな側面か らとらえることができるが,ここまで「流動児童」
と「留守児童」の立場からその現状および問題点 を明らかにしてきた。両者は教育環境が異なるが,
都市部の子どもよりも深刻な教育問題を抱えてい
る点では共通している。これらの教育問題は農民 工の子どもの問題というより,中国の社会制度・教育制度に内在する問題であるといえる。
これまで明らかにしてきた実態を踏まえて,筆 者はまず義務教育段階にある子どもたちに対する 教育保障の徹底を改めて提起する。憲法は第46条
によって,「中国人民共和国の公民は教育を受ける 権利と義務をもつ」と定めている34)。ついで「国
家は青年,少年,児童の道徳,智力,体質などの 方面を全面的に発展させることを支援する」と定 めている。だが,現実には農民工の子どもに対す る教育を受ける権利,国家による保障はかなり不 十分であることが指摘できる。なぜならば,すで に見たように,彼らは義務教育を受ける権利さえ 確実には保障されていない現実があるからである。農民工の子どもの教育問題について,牧野篤は
「義務教育学齢期にある農民工の子どもに対する 基礎教育の保障は,行政的には看過しえない問題
である」と指摘している35)。中央政府は2003年か
ら農民工政策を転換し,教育問題の解決へ向けて 動き始めた。しかし,政府は問題を解決するために最も重要 /汰当に子どものことを考えて↓'ないわけでは
ない戊家’2Fの生活を維持して↓)<ためには /6fカンワj・なし%」
こう話す胡さんは四川省から江西省南昌市に出
稼ぎしており,親戚の家に預けた子どもと3年間 も会っていないとのことである。農民工の家族で は親子関係が地理的,空間的な分離によって薄く
なっている。このような状態を変えていくことが 子どもの成長には欠かせない要素となっている。以上のことから,「留守児童」の教育問題は子ど
もたち自身の抱える問題や家庭教育の問題が深刻
農民工の子どもの教育問題に関する研究 105
な措置である財源負担については,地方政府の財 政に任せるというこれまでの方針を変えていない。
そのため,従来の地域間格差の問題が農民工のこ どもの教育問題にそのまま反映している。貧しい 地域では教育レベルの低さと費用の抑制,経済の 発展地域では利益追求のため,農民工の子どもの 教育問題が犠牲にされた。
この問題を根本的に解決するためは,憲法の内 容に沿って現代社会に見合った平等な教育制度を 設ける必要がある。具体的には中央政府の財政調 達を通じて地域格差を是正し,義務教育段階にお けるすべての子どもに基本的な費用の負担を免除 することを通じて,すべての子どもに教育を受け る権利を保障することである。
しなければならない。
注:
1)国務院研究室課題組編「中国農民工調研報告」中国 言実出版社,2006年4月,p1.
2)牧野篤『中国変動社会の教育」勁草書房,2006年4
月,pp4~6.3)教育部「2005年全国教育事業発展統計公報」2006 年5月,中国統計局http:"wwwstatSgovbcn
4)「中国年鑑2006」創土社,中国研究所,2006年8月,
pp,357~358.
5)同上注2).
6)『中国教育統計年鑑2001年』中華人民共和国教育部,
http://wwwmoe・gov.c、
7)少数であるが,中国では義務教育段階においても学 力が足りなくて留年になることもある.
8)上海市教科院発展研究センター「中国普及義務教育
の進展および問題分析」『教育発展研究』2002年,第 12期.9)王景英編「農村中学校学生中退問題研究」東北師範 大学出版社,2003年,p5.
馬国賢「当前農村義務教育の現状、問題と成因研究」
「中国農村義務教育政策高級研討会論文集』(未出
版),p45.10)蟹博「中国義務教育財政制度改革構想」『中国教育 報』2007年5月18日閲覧,http://wwwteache正comcn
ll)同注101
12)史柏年「城市辺縁人一進城農民工家庭および子女問 題研究」社会科学文献出版社,2005年8月,p7.
13)同性12).
14)同性1),p229.
15)同性1),p,232.
16)同性121
17)山口真美「民工子弟学校一上海における「民工」子 女教育問題」「中国研究月報」中国研究所,2000年9
号,ppl4~15.18)同性17),pp2~3.
19)李培林「農民工一中国進城農民工経済社会分析』社 会科学文献出版社,2003年4月,ppl64~165.
20)同注19),p164.
21)南亮進・羅歓鎖「民工の都市生活と子弟教育一北京・
上海の事例研究」『中国研究月報』NO701,中国研究
所,2006年7月,p422)晴暁明編著「尋探“心霊”的課卓一農民工子女教育
調査」『中国民工調査」群言出版社,2005年1月,
p284.
23)中国の農村部では,該当教員不足の問題を解決する ため,その地域の共同体が給料を支払って一定の知識 や教学経験を持つ人を教員として授業を行うことが ある.
24)同性18),p217.
おわりに
現在抱えている問題を一気に解決することはで きないが,農民工の待遇と社会的地位の改善を図 りながら,彼らの子どもの教育問題に対して漸進 的に取り組みを進めていくことを提言する。具体 的には,農民工と一般市民,農民工の子どもと都 市部の子どもと農村部の子どもを平等にし,「流動 児童」と「留守児童」のそれぞれの特徴と問題点 を考えながら,社会教育と学校教育の役割を充実 させていくことである。例えば,「流動児童」の場 合は公立学校への入学手続きを簡便にしながら,
公立学校だけではなく,民間学校に対して徹底的 に調査を行い,監督や補助機能を持つ公的組織を 通じて,子どもに質のよい学校を提供できるよう に努める必要がある。「留守児童」の心理問題に対
して,学内外で相談できる仕組みを設立すること
も考えられる。農民工の子どもは今後どうなっていくのか。将
来,彼らは親と同様に,流動‘性の高い農民工にな
るだろうか。そのように考えている子どもはそれ
ほど多くないはずである。教員,警察,医者,看
護師,自営業者などの職業を選択する際に,選び
たい職業と実際に選べる職業に直面することにな
るが,彼らの選べる選択が拡大していくよう努力
人間社会環境研究第15号2008.3 106
31)新華網http://wwwxmhuacom2004年8月4日閲覧.
32)同注31),2004年8月17日閲覧.
33)同注31),2005年2月2日閲覧.
34)「公民は,中華人民共和国の国籍を持つ者である。」
(中国憲法第33条)教学法規センター編『学生常用法 規一憲法」中国法制出版社,2006年8月,pl2,p18.
35)同性2),pp222~225.
25)同性1),p372.
26)王佳琳など「海淀被取締打工学校消然開学」「新京 報』,2006年8月28日閲覧.
27)同注26).
28)同性26)
29)「民工子女義務教育新政策為何難実現?」2006年5 月31日,国家教育在線http:"wwwek360com
30)同注13),p、229.