篠田資料・鮓アンケートの予備的分析
著者 久保 正敏, 大島 新一, 日比野 光敏, 和田 光生
雑誌名 国立民族学博物館研究報告
巻 18
号 4
ページ 593‑647
発行年 1994‑03‑31
URL http://doi.org/10.15021/00004213
久 保 ・大 島 ・日比 野 ・和 田 篠 田資 料 ・鮓ア ンケ ー トの予 備 的 分 析
篠 田資 料 ・鮓アンケート の予 備 的分 析
久 保 正 敏*,大 島 新 一**
日 比 野 光 敏***,和 田 光 生****
A Preliminary Analysis of Shinoda's Sushi Questionnaire
Masatoshi KUBO, Shin-ichi OHSHIMA, Terutoshi HIBINO and Mitsuo WADA
Osamu Shinoda (1899-1978) is known as a pioneer in the research on food habits in East Asia, and has left voluminous documents. Na- tional Museum of Ethnology has inherited his documents and book col- lection, which is called "Shinoda's document collection." The collec- tion contains questionnaires on Japanese sushi-eating habits. They were sent out and collected between 1953 and 1968, which was just the period when traditional local food habits were being replaced by a national homogeneous habit.
We have planned to convert those questionnaires into computer- readable form and analyze them with the following two objectives:
1) To survey the distribution of several types of sushi including narezushi and the domestic lifestyle in those days concerning eating.
2) To make Shinoda's data much more accessible to those who are in- terested in Japanese folklore and food habits.
As a preliminary work, we input data of about 1300 questionnaires, one tenth of the entire volume, into a personal computer, and analyzed the data from several viewpoints. In this paper, we give several distribu- tion maps of narezushi, inarizushi, makizushi, gomokuzushi, etc.
Those distribution maps suggest the evidence of several cultural areas of sushi-eating in Japan. We also propose a new scheme for classification
国立民族学博物館第5研 究部
京都精華大学,国 立民族学博物館研究協 力者 岐阜市歴史博物館,国 立民族学博物館研究協 力者 大津市歴史博物館,国 立民族学博物館研究協 力者
Key Words : computer-aided analysis of questionnaire, classification of sushi, history of sushi, cultural area of sushi-eating, Japanese home cooking
一 ワ ー ド:アンケート の コン ピュ ー タ 分 析,鮓 の 分 類,鮓 の 歴 史,鮓 食 の 文 化 圏, 日本 の 家 庭 料 理
国立民族学博物館研究報告 18巻4号
of sushi, which may hopefully help to resolve the confusion found in the past discussions on sushi.
1.は じめ に
皿。鮓 研究 史 上 に おけ る篠 田 氏 の研 究 の位 置 付け
1.rす しの 本 』 の研 究 史 上 の意 義 2.篠 田鮓 ア ン ケ ー トの研 究 史 的 意 義 皿.サ ソ プル ・デ ー タベ ース の構 成 N.篠 田鮓 ア ンケ ー トの 問 題 点 1.調 査 地 の問 題
2.回 答 者 の 問 題 3.設 問 の 不 適 切 さの 問題
4.設 定 され た 鮭 カテ ゴ リー の問 題 点
V.サン プ ル ・デ ー タ ベ ー ス に 見 る 種 々 の 鮓
1.「 葉 で 巻 く鮓 」 と 「お か ら 鮮 」 に つ い て
2.「 馴 れ 」 を 伴 う鮓 3.「 押 し鮮 」 に つ い て
4.「 握 り鮮 」 に つ い て 5.「 五 目鮓 」 に つ い て 6.「 巻 き鮓 」 に つ い て 7.「 稲 荷 鮭 」 に つ い て V[.今 後 の 課 題
1.は じ め に
おさむ
故 篠 田統博 士(1899‑1978)は,東 ア ジア の食 物 史 の 開 拓者 と して知 られ る と と もに, 生 化 学,動 植物 学,家 政 学,民 俗 学 な ど幅 広 い 分 野 で業 績 を残 した。 篠 田氏 の 蔵書 及 び膨 大 な フ ィール ドノー ト,ス ク ラ ップブ ック,メ モ,ア ン ケ ー ト類 は,国 立 民 族学 博 物 館 に 「篠 田文 庫」 及 び 「篠 田資 料 」 と して 所 蔵 され て い る。
「篠 田資 料 」 に は,篠 田氏 が 昭和28年 頃 か ら43年 頃 にか け て 全 国 で行 な った鰍 こ関 す るアンケート 調 査 資 料 が あ る。 タイ トルは 「鮓」,「鮓と雑 煮 」,「鮮 と正 月 料理 」 な どで,総 計 約1万5千 件 であ る。 これ は,ち ょ うど 日本 人 の食 生 活 か ら地 方 色 が 消 え て行 く寸 前,あ るい は 消 えつ つ あ る時 期 の貴 重 な記 録 で あ る。
筆 者 らは,こ の ア ンヶ 一 卜資料 を コ ン ピ ュー タ可読 な デ ー タに変 換 し,分 析 を行 な お う と試 み た 。 そ の 目的 は次 の 二 点 で あ る。 第 一 は,篠 田氏 が特 に 関心 を持 って いた
「馴 れ鮓 」 の 全 国 分布 を把 握 す る と と もに,当 時 の家 庭 生 活 の 中 で鮮 の 占め る地 位, 鮓 と祭 礼 との 関 係,食 生 活 の実態,な どを総 合 的 に把 握 す る こ とで あ る。 篠 田 氏 自身 も十 分 に ア ンケ ー ト結 果 を活 用 して い な いた め,新 た な知 見 が 得 られ る可能 性 が あ る。
第 二 の 目的 は,資 料 を機 械 可 読 デ ー タ化す る こ とに よ り,食 物 史 や家 政 学,民 俗 学 の 研 究者 に資 料 利 用 の 便 を供 す る こ とに あ る。
ア ン ケ ー ト形 式A シ ー ト1 ア ンケ ー ト形 式A シー ト2
国立民族学博物館研究報告 18巻4号
図2 篠田鮓アンケートの調査地域
久 保 ・大 島 ・日比 野 ・和 田 篠 田 資料 ・鮓アンケート の予 備的 分 析
調査 票 の書 式 は,篠 田氏 の長 年 にわ た る フ ィール ドワー ク途 中 に お け る改訂 を反 映 して14種 類 にわ た って お り,同 一 の条 件 で比 較 ・分 析 を 行 な うの は 必ず しも容 易 で は な いが,幸 い,最 大 件 数 約1万2千 件 は 同一 の 書式 に従 って お り,r国 立 民 族 学 博 物 館 研 究 報告 別 冊 第8号 国 立 民族 学 博 物 館蔵 篠 田統 資 料 目録1』 [石毛 1989】 で は,こ れ を形 式Aと 名 付 け て い る。 この 用 紙 は 図1に 示 す よ うに2枚 の シー トか ら 成 る。 ア ンケ ー トの実 施 地 域 は,図2に 示 す よ うに400市 町村(調 査 当 時 の 行政 区 域 に よる)を 超 え る。
皿.鮮 研究史上 におけ る篠田氏の研究 の位置付 け
こ こでは,篠 田 氏 の 残 した鮮アンケート 資 料 の価 値 を 明 らか にす るた め に,同 資 料 及 び これ に基 づ い て書 か れ,昭 和41(1966)年 に初 版 が 出版 され た 『す しの 本』 【篠 田 1966】 等,同 氏 の鮓 に 関 す る著 作 に対 して,鮭 の調 査 ・研 究 史上 に お け る位 置 付 け を 行 な い た い。
1.rす しの 本 』 の 研 究 史 上 の 意 義
一 口に鮓 と言 って も,様 々な 種 類 の鮓 が あ り,地 域 に よ って違 い の あ る こ とが,一 般 に認 識 され 始 め た の は,さ ほ ど古 い こ とでは な い 。 もち ろ ん,昔 か ら各地 で特 産 の
鮭 が作 られ て い た し,鮭 に歴 史 的 変 遷 や地 理 的 相 違 の あ る こ とに気 付 いて い た人hは 江 戸時 代 に も多 く存在 した 。 こ の こ とは,『 す しの本 』 に も詳 し く記 され てい る。
例 え ぽ,文 政13(1830)年 に 成 立 した,喜 多 村 信 節 編 著 のr嬉 遊 笑 覧 』 は,そ の巻 十 上 「飲 食 」 で(r日 本 随 筆 大 成 』 本 に よる),各 時 代,各 地域 の資 料 名 を あ げ つ つ,
「み さ ご鮨 」 ・ 「一 夜 ず し」 ・ 「釣 瓶 鮭 」 ・ 「雀 ず し」 ・ 「食 ず し」 な ど,色 々な鮓 につ い て考 証 して い る。 また,喜 田川 守 貞 が嘉 永6(1853)年 及 び慶 応3(1867)年 頃 に完 成 したr守 貞漫 稿 』 の中 に も,筆 者 自身 の挿 し絵 入 りで,そ の 当 時,江 戸 ・上 方 で食 され て い た様hな 鮭 が記 述 され て い る。 さ らに,享 和2(1802)年 刊 行 とお ぼ し まる
き,杉 野権 兵 衛 著 『名 飯 部 類 』「附 録 」の 中 には,「鮓 の部 」 ・ 「完 魚鮓 の部 」 と して, 各地 各 様 の鮓 の 名 が 合計33種 類,作 り方 を ま じえ て 書 かれ て い る。 これ らの他 に も, 江 戸時 代 の料 理 本 で 鮮 の作 り方 に触 れ た ものは 多 い し,紀 行 文 ・随 筆 文 の 類 で そ こか
しこの珍 しい と思 わ れ る鮓 に 目を とめ た例 はz枚 挙 に 暇 が な い。
しか しな が ら,そ れ らは いず れ も,全 体 の構 成 中 の ご く一部 に お い て断 片 的 に,あ る いは 偶然 に鮓 に触 れ て い るにす ぎず,特 に鮓 そ の もの に 焦 点 を 当 て て,そ の全 体 像
国立民族学博物館研 究報告 18巻4号 を 明 らか に し よ う と志 した もの で は なか った。 そ の よ うな 意 図 を も って鮮 に つ い て書 か れ た もの を 探す と,時 代 は か な り下 が って し ま う よ うで あ る。
試 み に 「(財)味 の素 食 の 文 化 セ ソタ ー」 刊 行 の 『食文 化 に 関す る文 献 目録 』 味 の 素 1986,1989,1992a,1992b,1993a,1993b]等 を利 用 して,そ う した 書 目を 検 索 してみ た 。 明治43(1910)年 に は,小 泉 清三 郎 著1)『家庭 鮓 のつ け か た』 が 大 倉 書 店 よ り出版 され て い る。 また,大 正6(1917)年 に は,小 泉 迂 外 著r美 味 し く手 際 に 出 来 るお 鮮 の 作 り方 』 が 実 業 之 日本 社 よ り出版 され て い る し,大 正8(1919)年 には,
服部 茂 一 著r家 庭 で 出来 る珍 しい お鮓 の持 へ 方 』 が 服部 式 茶 菓 割 烹 講 習会 よ り刊行 さ れ て い る2)。さ らに昭 和 期 に な る と,昭 和4(1929)年 に は,鈴 木 又 吉 編 『お 寿 司 の こ 志 らへ 方 』 が 古 谷 商 店 か ら刊 行 され,ま た 昭 和8(1933)年 に は,菅 谷 昇 著r寿 しの こ しらへ方 』 が 菅 谷 製 作所 か ら刊 行 され るな ど,鮓 を 主題 とす る本 は次 第 に 増 加 して い る。文 献 目録 か ら漏 れ て い る も のや,筆 者 らの検 索 か ら漏 れ た ものを 含 め れ ば,同 様 の本 の数 は も っ と多 い で あ ろ う。 しか し,こ れ らは,そ の 主 題 名 か らわ か る通 り, 主 に家 庭 の主 婦 を対 象 と した,色 々 な鮓 の作 り方 につ いて の もの で あ り,決 して鮓 の 歴 史 学 的 ・地理 学 的 ・民 俗 学 的調 査 や 研 究 に基 づ い た もので は な い。
以上 の よ うな 状 況下 に あ って,前 記 の よ うな 関心 か ら鮓 につ い て 書 かれ た本 と して 確 認 さ れ 得 る の は,昭 和5(1930)年 に東 京 の 四六 書 院 か ら出 版 され た,永 瀬 牙 之 輔 著rす し通 』 【1930】(1984年に復 刻 版 【永 瀬 1984】 が 出版 され た)で あ る。 これ は, B6版,170ペ ー ジ 余 りの 本 で あ るが,鮮 の歴 史 や 各種 の 鮮 の 由来,日 本 全 国 各 地 の 特徴 あ る鮓,ま た 鮮 に関 す る エ ピ ソー ド等 を 一 冊 に ま とめ た もの と して は,第 二 次 世 界 大戦 以前 の時 期 では恐 ら く唯 一 無 二 で あ る。 この 本 は,家 庭 用 料 理 手 引 き書 の よ う な 実用 書 以外 の 目的 を持 って鮮 を 取 り上 げ た もの の 嗜 矢 と言 え る。
しか し,同 書 以 後 に は,例 えぽ 昭 和15(1940)年 に 出版 され た,木 下 謙 次 郎 著 『美 味 求 真 続 々』 中 に,鮮 に つ い て の一章 が あ った りす る もの の,こ れ に引 き続 く,鮮 を 主 題 とす る本 は,戦 争 が終 るま で見 あ た らな くな る。 戦争 に よ って社 会 情 勢 が 次第
に厳 し くな り,鮓 の調 査 ・研 究 な どは 好 事 家 的色 彩 を 持 つ と受 け取 られ,出 版 が 難 し くな った た め で あ ろ う。
戦 後,1の 業 界 が次 第 に復 興 して くるに 従 って,鮭 に関 す る著作 の刊 行 も再 び 活発 に な った。 例 え ぽ,昭 和30(1955)年 頃 に は,鮓 店 「す し幸 」 の主 人杉 山 宗 吉 に よ っ
1)著 者 の 小 泉 清 三 郎 は,江 戸前 の握 り鮓の 元 祖 と も伝 え られ る江 戸本 所 の華 屋(小 泉)与 兵 衛 家 の末 窩 で あ る。 ま た,小 泉 迂 外 は,同 氏 の 別 名 で あ る。
2) こ の本 は,後 に外 題 を換xてr珍 しい お鮨 の持 え 方 二 百 種 』 として 出 版 され て い る。
久保 ・大 島 ・日比野 ・和 田 篠 田資 料 ・鮓アンケート の予 備 的 分 析
て,『 す しの 話 』 とい う本 が 謄 写 版 印 刷 に よる 私 家 版 な が ら刊 行 され て い る(「(財) 味 の 素 食 の文 化 セ ンタ ー」,食 の図 書 館 所 蔵)。 そ の後,昭 和35(1960)年 に は,漫 画 家 ・文 化 人 で あ った宮 尾 しげ を 著rす し物 語 』 【1960]が出版 され た。 先 に あげ たrす
し通 』 とこ の 『す し物 語 』 が,篠 田 氏 の 『す しの 本 』 に先 立 っ て 出版 され た,鮮 に 関 す る専 門書 の代表 で あ ろ う。
そ れ で は,昭 和41(1966)年 に 出 版 され た 『す しの 本 』 は,そ れ まで の 鮮 に 関 す る 論 考 と どの よ うな 点 で根 本 的 に 異 な るの で あ ろ うか 。特 徴 の一 つ は,文 献 資料 を 博 捜 して,日 本 のみ に と ど ま らず 中 国 か ら説 き起 こ し,東 南 ア ジ ア に始 ま る鮓 の発 展 の歴 史 を 跡 付 け,東 ア ジ アの食 物 史 ・食 生 活史 全 体 の 中 に位 置付 け た点 に あ る。 も う一 つ の 特 徴 は,実 地 調 査 や ア ンケ ー ト調 査 に よって,日 本 各 地 で実 際 に作 られ て い た様 々
な鮓 の 全 体像 を 明 らか に した点 であ る。篠 田氏 自身,『 す しの本 』 の 中 で
戦 後 に 出 た 宮 尾 しげ を 著 『す し物 語 』 を の ぞ い て は,今 まで 出 た す しの 本 は,東 京 風 の握 りず しに 重 点 を 置 き,こ れ だ け が正 統 のす しで,そ の ほ か の もの は 家 庭 用 品 か 片 山里 の 田 舎 料 理 ぐらい に しか 扱 っ て い な い。 …(中 略)… また,宮 尾 の 本 に して も,従 来 の本 が地 方 ず しを 二 分 か 三 分 しか 書 か な い の を五 分 五 分 に まで も って きて い る。 しか し東 京 ず し中 心 な る こ とは変 わ らな い1篠 田 1966:71】。
と言 及 して い る通 り,そ れ まで の鮓 に関 す る著 作 は,ど う して も江 戸前 の握 り鮮 の歴 史 や 由来 に つ い て の論 考 が 中 心 に な りが ちで あ り,そ の他 の地 域 で 作 られ て い る鮮 に つ い て は,た また ま 自分 が 知 った鮓 のみ に しか 触 れ て い な い き らい が あ った。 篠 田氏 は,こ れ に対 して,そ の 当時 日本 各 地 で実 際 に 作 られ て い た各 種 各 様 の鮮 を満 遍 な く 取 り扱 って全 体 像 を 明 らか に して い るの であ る。
この 時 期 以降 に 出 され た 鮮 につ い て の 論 考,例 え ぽ近 藤 弘 著 『す し風 土 記 』 【1974】
や 『す し』 【1982],あ るい は 石 毛 直 道 と ケネ ス ・ラ ドル の共 著 『魚醤 とナ レズ シの研 究 』 【1990】,また 吉 野.=r..;著『鮭 ・鮨 ・す し す しの 事 典』 【1990】な どは,ほ とん ど す べ て,こ の 『す しの 本』 とそれ に 引 き続 く篠 田氏 の 『米 の文 化史 』 【1970b】や 『す
しの話 』 【19781の影 響 を 多大 に受 け てい る と言 って も過 言 で は な い。
これ ら篠 田氏 の著 作 は,今 や 日本 の鮓 研究 のバ イ ブル とな った観 が あ る。 しか し, 篠 田氏 が 述べ て い る結 論 は大 勢 と して妥 当 で あ る に して も,個hの 情 報 や 資 料 の 解 釈 が正 しいか ど うか に は,な お検 討 の余 地 が あ ろ う。 例 え ば,『 す しの 本(改 訂 版)』 第 一 編 「二 馴 れ ず し」 中 の 「ドジ ョウの馴 れず し」 の項 目に は
国立民族学博物館研究報告 18巻4号
滋 賀 県草 津 在 の 大 橋 の 三 輪 神 社 祭 礼 に ドジ ョウ とナ マ ズ のす しを 漬 け た が,川 が 汚 染 され た ので 一 昨 年(昭 和43年)で 中止 に な った。
と あ る 【篠 田 1970a:44】 。 し か し,こ れ は 明 らか に 誤 認 で あ っ て,こ の 行 事 は,そ の 後 も現 在 に 至 る ま で 一 年 も欠 け る こ と な く継 続 さ れ て い る の で あ る 。 こ の 一 例 に よ っ て み て も,篠 田 氏 の 著 作 の 結 論 を 鵜 呑 み に す る こ とに は,慎 重 さ が 望 ま れ よ う。
2.篠 田鮓アンケート の研 究 史 的 意 義
これ ら鮓に 関 す る篠 田 氏 の著 作 の重要 な基 礎 資 料 とな った ものが,本 稿 で取 り上 げ る鮓 ア ンケ ー ト調 査 に他 な ら な い。 もち ろ ん,篠 田氏 の この ア ンケ ー ト調 査 以 前 に, 日本 の鮓 に関 す る地理 学 的 ・民 俗 学 的調 査 が,全 く行 な われ なか った わ け で は な い。
例 え ば,昭 和16(1941)年 秋 か ら翌 年 春 に か け て,柳 田國 男 の主 催 す る 「民 間 伝 承 の 会 」 が行 な った 「食 習調 査 」 の記 録 で あ る 『食 習 採 集 手 帳』 の質 問 項 目の 中 に は,第 31問 と して,「 鮨 はつ け ます か。 ど うい う魚 をつ け ます か 。 そ のつ け 方,季 節 な ども お 知 らせ 下 さい 」 とあ る(平 成2年 に,成 城 大 学 民 俗 学研 究所 編 『日本 の食 文 化 昭 和 初 期 ・全 国 食 事 習俗 の 記 録 』 と して 刊 行)。 しか し,こ の調 査 は,日 本 全 国 に わ た る もの で は あ るが,調 査 地 域 数 が合 計58ヵ 所 と少 な く,後 の篠 田氏 の ア ソケ ー
ト調 査 の総 数 に 及 ぶ べ く もな い。
篠 田 氏 の調 査 以 後 を 見 て も,こ の よ うな大 規 模 な鮓 の 調査 は 行 なわ れ て い な い。 例 え ぽ,最 近,本 間 伸 夫 氏 らは,「 東 西 食 文 化 の 日本 海 側 の接 点 に関 す る研 究 」 と題 す る調査 ・研 究 を 試 み,そ の 中 で各 種 の鮓 に関 す る調 査 を行 な い,分 布 図 と と もに成 果 を 公表 した 【本 間 ほ か 1988】。 これ はか な り詳 細 な もの で あ るが,実 際 の 調査 地域 は 日本海 側 を中 心 とす る山形 県 か ら岐 阜 県 にか け て の8県 の み に 限 られ て お り,そ の他 の地 域 に関 しては,篠 田 氏 の著 作 を含 む文 献 資 料 類 に よ って い る の であ る。
しか しなが ら,篠 田 氏 の調 査 とい え ど も,図2に 示 した よ うに,必 ず し も 日本 全 国 す べ て の地 域 に また が って は い な い。 漏 れ て い る地 域 の 中 に は,調 査 対 象 と して取 り 上 げ られ るべ きで あ った と考 え られ る地 域 もあ る。 例 え ぽ,森 口多 里 著 『町 の 民俗 』 は,昭 和19(1944)年6月 に 初 版 本 が 出 版 され,現 岩 手 県 水 沢 市 を 中 心 とす る地 域 の 民 俗 に つ い て記 した もの で あ る が,こ の 「第 三 章 年 中 行 事 」 の 中 の 「正 月以 外 の食 制 」 の 項 に は,「 鮭 の寿 し漬 」 が 出 て くる。 これ は,鮭 と炊 い た米 飯 と大 根 ・人 参 ・ 生姜 等 の野 菜 類 と塩 を 用 い,そ れ らを桶 に互 い違 いに 入 れ,重 石 を か け て3ヵ 月 間 ほ
ど漬 け 込 む 鮭 で あ り,「馴 れ 鮭 」 と 「い ず し」(篠 田 資料 ・鮭アンケート 形 式Aの 凡
久 保 ・大 島 ・日比 野 ・和 田 篠 田 資 料 ・鮓ア ン ケ ー トの 予 備 的 分 析
例 で言xば,「 魚 と麹 と野 菜 とを 入れ る鮓 」)と の いわ ぽ 中 間 形態 の よ うな鮓 で あ る。
これ な どは篠 田氏 が 生前 に参 照 で きた は ず で あ るが,氏 が この情 報 を利 用 した形 跡 は 見 あ た らな い。 そ の た めか,こ の 地 域 はアンケート 調 査 の 対 象 とな って い な い。
以上 の よ うな問 題 点 は あ る ものの,前 述 の よ うに,こ の ア ン ケー ト調 査 以 前 に も以 後 に も,日 本 の鮓 の実 地調 査 と して これ に ま さる ものは 存 在 しな い。 また,現 在 で は 失 わ れ て しま った鮓 に つ い て の記 述 を 含 む 可能 性 もあ り,そ の 意味 で も貴 重 で あ る。
と ころ が,残 念 な こ とに,篠 田資 料 目録 は 公 刊 され て い るに もか かわ らず,篠 田 氏 の ア ン ケー ト調 査 結 果 そ の もの を利 用 した 研 究 は,こ れ ま であ ま り見 られ な い 。篠 田 氏 の 成 果 を 引用 す る研 究 者 は,お しなべ て 『す しの本 』 等 に記 述 され た 内容 に 頼 って い る。 これ は しか し,第1次 資料 た る鮓アンケート 調 査 結 果 か ら導 出 され た,第2次 資 料 に と どま って お り,前 述 の 問題 点 が 残 るの で あ る。
そ こで,『 す しの 本 』 な どの再 評 価 も含 め,今 一 度,第1次 資 料 に立 ち返 る と と も に,新 た な視 点 を求 め る こ とが,以 下 に 述 べ る分析 を行 な う理 由で あ る。 本 稿 筆 者 の 一 人 で あ る 日比 野 光 敏 も既Y'指 摘 して い る通 り 【日比 野 1993b:45】,篠 田氏 の 『す しの 本 』 を は じめ とす る成 果 は,決 して 日本 の鮓 研 究 の到 達 点 を 意 味す る も の では な く,出 発 点 とす べ き もの で あ ろ う。
皿.サ ソ プ ル ・デ ー タ ベ ー ス の 構 成
我hは,今 回 の分 析 作 業 を,全 体 的 な 感触 を得 るた め の予備 的 作 業 と して位 置 付 け, 鮓 の 種 類,形 態,主 材 料,副 材料,調 味 料 の 地 方 差 異 な ど,鮮 そ の もの に焦 点 を当 て る た め に,形 式Aの シ ー ト1に 含 まれ る正 月 料 理 に 関 す る部 分 を 除外 し,シ ー ト2 のみ を 対 象 と した。アンケート 調 査 地 域 の うちか ら,33府 県 そ れ ぞ れ に対 して,海 岸 部 ・河 川 流 域部 ・山 間部 な ど,代 表 的 と考 え られ る2〜3地 域 を 選 ん だ。 これ らの合 計69地 域 に つ い て そ れ ぞ れ 約20件 ず つ,総 計1297件 の 回答 を選 び 出 して サ ソ プル ・ デ ー タ と した 。 そ の地 域(調 査 当 時 の地 名 表 記)と 件数,調 査 年 月 を表1に 示 す 。 こ
こに示 す 調 査IDと は,各 地 域 に対 して 我 々が仮 に与 えた3桁 の数 字 で あ り,上 位2 桁 は 自治 省 の 設 定 した都 道 府 県 コ ー ド 【自治 省 1992】の上 位2桁 と同 じで あ る。
サ ソプル ・デ ー タの シー ト2の 内 容 を,「 馴 らす 期 間」 の 項 目を 除 い て記 号 化 せ ず, 元 の文 字 情 報 を 生 か す形 で パ ソコ ンに 入 力 した 。 た だ し,他 の研 究 者 が利 用す る際 の 利便 を考 え て,鮮 の 具 の材 料 名 につ い て は表 記 を で き るだ け統 一 してあ る。
パ ソ コ ンで稼 働 す るデ ー タ ベ ー ス ・シス テ ム と して関 係型 デ ー タ モデ ル に 基 づ く も
国立民族学 博物館研究報告 18巻4号 表1サ ソプ ル ・デ ー ター 覧
調査県 地 域 タイ プ 対 象 地 調査年月 調査ID 件数
秋田 南部内陸 由利郡 540.11 oso is
山形 西部海岸 鶴岡市 S40.10 060 20
山形盆地 天童市 S40.12 061 20
新庄盆地
新庄市 S40.10 a62 20
福島 会津盆地 耶麻郡,会 津若松市 S40.11 ono 23
新潟 東部山間 東蒲原郡津川町 S35.5 150 Zo
南部山間 南魚沼郡塩 沢町
S35.3^‑36. S
isi 21西部海岸 直 江 津 市,中 頚城 郡 S35.5 is2 21
北部海岸 村 上 市,岩 船 郡 S35.5 153 22
石川 中部内陸 石川郡鶴来町 S40.4 170 20
山間 石川郡 白峰村 S31.10 iii 7
海岸 江沼郡大聖寺,塩 屋 531.8 172 20
福井 若狭海岸 大飯郡 S35.1 180 19
越前海岸 丹生郡国見村 531.8 181 20
山梨 甲府盆地 韮崎市 S38.4 190 23
長 野 諏訪盆地 諏訪郡下諏訪町 S38.4 200 20
伊那盆地 上伊那郡高遠町 538.5 201 21
北東部 上水内郡信濃町 S35.7 202 20
静 岡 遠州灘海岸 小笠郡 大須賀町 539.1 220 20
三方原台地 引 佐 郡 三 ヶ 日町 S39.1 221 20
愛知 平野部 刈谷市 S39.1 230 22
三重 北東平野部 鈴鹿市 S31.10 240 20
滋賀 湖南 近江八幡市,野 洲郡野洲町 S35.1‑x‑2 250 ao
湖北 伊香郡木 之本町 S31.7 251 20
京都 丹後平野部 竹野郡弥栄町 S35.1 260 20
大阪 北部 山間 豊能郡東能勢村 532.8^‑9 270 17
北東都市近郊 高槻市字服部 S39.6 271 19
兵庫 南部都市部 神 戸市,芦 屋 市 S38.1^‑39.5 280 Zo
北部山間 美方郡 S30.11^‑32.6 281 18
東部 内陸 氷上郡柏原町 S34.7 282 20
淡路島海岸 津名郡 S31.5 283 19
奈 良 笠置山間 山辺郡都 祁村 S39.4 290 20
南部 内陸 吉野郡下市町 S33.9 291 18
和歌 山 南部 川流域 日高郡南部川村 S33.9 300 20
鳥取 東部 山間 八頭郡 S32.8^‑12 310 22
西部海岸 境港市 S37.11 311 20
島根 海岸部 通 摩 郡,浜 田市,太 田市,江 津 市
S29.11〜12
320 20出雲平野 大原郡加茂町 534.12‑35.1 321 20
岡山 南東平野部 邑久郡 530.10 330 20
北部 山間 真庭郡新庄村 S34.11 331 20
中部 内陸 英田郡 535.1 332 21
久 保 ・大 島 ・日比野 ・和 田 篠 田資 料 ・鮓アンケート の予 備 的 分 析
調査県 地 域 タイ プ 対 象 地 調査年月 調査ID 件数
広島 北部山間 比婆郡比和町 S39.2 340 20
中部内陸 世 羅 郡,双 三 郡 530.2,38.1 341 10
山 口 南 部 海 岸 ・島嘆 熊 毛 郡 田 布 施町,上 関 村 529.11,31.3 351 20
北部内陸 阿武郡旭村 S36.11 352 zo
徳島 東部海岸 那 賀 郡,板 野郡,海 部 郡,鳴 門 市 S29.7‑30.1 360 21
西部 内陸 三好郡池 田町近 辺
S29.8〜30.1
361 17香川 東部平野 大川郡 530.1 370 20
愛媛 南部海岸 宇和島市
S29.8〜9
380 9北部海岸 今 治 市,越 智郡 S30.1 381 12
高知 東部海岸 安芸郡 529.7^10 390 14
西部 中村 市,幡 多 郡,高 岡郡
S29.7〜30.1
391 20福岡 筑紫平野 甘木市 S39.10
'll
20北部都市部 北九州市 S39.10 401 20
佐賀 西部 内陸 西松浦郡有 田町 539.10 410 20
長崎 西部海岸 平戸市 S39.12 420 20
島原半島 南高来郡 S39.10 421 Zo
熊本 南部内陸 球磨 郡,人 吉 市 S30.10 430 16
中部都市近郊 熊本市
S42.6〜7
431 20大分 西部 日田盆地 日田 市 S39.10
11,
20南東海岸 佐伯 市,臼 杵 市 S30.10 441 13
西部山間 直入郡 S30.10 442 7
宮崎 南部海岸 日南 市 S42.7 450 21
西部山間 西臼杵郡 S30.10 451 16
北部都市部 延岡市 S30.10^‑11 452 21
鹿 児島 南西海岸 加 世 田 市,川 辺 郡
S42.1〜6
460 20北西 内陸部 薩摩郡東郷町 542.5^'6 461 8
島喚部 薩摩郡甑島 S42.5 462 20
南東 内陸部 曾於郡
S42.6〜7
463 21の が 各 種 市 販 さ れ て い る が,我hはMacintosh用 の 「4th‑Dimension 2.1.1J」 を 利 用 した 。 図3に 示 す 通 り,今 回 作 成 した 鮭 デ ー タ ベ ー ス の 構 造 は,シ ー ト2を 概 観 で き る マ ス タ ー ・デ ー タ フ ァイ ル と,個 別 の 鮭 そ れ ぞ れ の詳 細 デ ー タ を 格 納 す る た め の サ ブ ・デ ー タ フ ァ イ ル か ら 成 り,そ れ ぞ れ の サ ブ ・デ ー タ フ ァイ ル は,アンケート1件 を 一 意 に 識 別 す る た め に 付 与 し た 調 査 番 号(3桁 の 調 査IDと2桁 の 連 続 番 号 を 合 成 し た も の)に よ っ て,マ ス タ ー ・デ ー タ フ ァイ ル に 関 係 付 け ら れ て い る 。 こ れ ら す べ て の デ ー タ は,MacintoshやMS‑DOSの テ キ ス ト ・フ ァイ ル 形 式 に 変 換 で き る か ら, そ れ を 経 由 して 如 何 な る デ ー タ ベ ー ス ・シ ス テ ム に も移 植 可 能 で あ る。
国立民族学博物館研究報告 18巻4号
図3 サ ン プ ル ・デ ー タ ベ ー ス の 構 造
】V.篠 田鮮アンケート の問題 点
このアンケート 回答 の デ ー タ入 力 に は,変 色 した ザ ラ紙 の 手 書 き文 字 を読 み 取 る と い う結 構 困 難 な作 業 を伴 う。 さ らに,回 答 者 の回答 態 度,設 問 の 不適 切 さ,な ど,信 頼 性 を損 な う回 答 が 多 い こ と も,我 々が悩 ま され た 点 で あ る。 以 下 に,篠 田氏 の鮮 ア
ン ケー トを 活 用 す るに あた っ て考 慮 すべ き問 題 点 を指 摘 した い 。
1.調 査 地 の 問 題
図2で 示 した よ うに,ア ンケ ー ト調査 は 日本 全域 にわ た る もの で は な く,北 海 道, 青 森 ・岩 手 ・宮 城 な ど東 北 地 方 の 半 分,関 東 地 方 全 県,岐 阜 県,富 山 県 が 欠 け て お り,
久保 ・大 島 ・日比 野 ・和 田 篠 田資 料 ・鮓ア ンケ ー トの予 備 的 分 析
東 日本 に手 薄 で あ る。 恐 ら くこのアンケート は,篠 田氏 がそ れ 以前 に行 な った 調 査 を 補 遺す る ため に 企 図 された た め で あ ろ う。 また,地 域 に よ って 調 査 件 数 の疎 密 が 大 き く,数 百 件 に も及 ぶ 調 査地 域 が あ る一 方 で,10件 に 満 た な い地 域 もあ り,アンケート 調 査 の常 道 か ら見 て 問題 が多 い 。 従 って,こ のアンケート,就 中 サ ソ プル ・デ ー タの み に よ って,当 時 の鮓 の分 布 や 特 徴 を 論 ず る に は限 界 が あ る こ とを 念 頭 に 置 かね ぽ な
らない 。
2.回 答 者 の 問 題
篠 田氏 が 自 ら出 向 い てアンケート の趣 旨説 明 と回 答 の 回収 に あ た った の では な く, 地 元 学 生 に 作 業 を依 頼 した と思 われ る地 域 で は,回 答者 が設 問 を 良 く了解 して い な い
と考 え られ る回 答(主 婦 の 出身 地 を尋 ね てい るに もか か わ らず,家 庭 住 所 と全 く同 一 の 住 所 を 回 答 して あ る もの),あ る いはアンケート の趣 旨 自体 が 理 解 され てい な い 回 答(自 宅 で作 る鮓 を 尋 ね て い る のに,伝 聞 に よる回 答 や,当 地 以 外 で の事 例 を答 えて い る もの)が あ る。 明 らか に設 問 趣 旨か らはず れ て い る と我 々が 判 断 で き る個 々 の回 答 項 目に対 しては,疑 問 符 を付 け て デ ー タベ ー スに 入 力 した。 原 資 料 を で き るだ け忠 実 に機 械 可読 化 す るた め で あ る。 対 応 す る項 目に関 す る統 計 を 求 め る際 には,こ れ ら 疑 問 符 付 きデ ータ を除 外 した。
3.設 問 の 不 適 切 さ の 問 題
図1で わ か る よ うに,「 鮮飯 に砂 糖 を 入 れ るか」 の設 問 項 目が,「 稲 荷鮓 」 の行 で 分 断 され るた め に,そ れ 以下 の鮓 に つ い て適 切 に 答 え られ て いな い 回 答 例 が あ る。 この よ うに,アンケート 書式 の レイ ア ウ トが不 適 切 なた め,回 答者 の 混 乱 を 招 い て い る。
呼 称 に つ い て の 設 問 も適 切 を 欠 く。 例 え ば,「 五 目鮮 」 につ い て の設 問 を見 る と, 1詐の カテ ゴ リー名 と して,
五 目鮭(ち ら し)
とあ り,呼 称 に つ い て の設 問項 目は, この 地 方 で の 呼 び方(別 名)
とあ る。 回 答 者 は,
1)当 地 方 で の一 般 的 な 呼称 を答 え るべ きか,
2)カ テ ゴ リー名 と して 掲 げ られ た 「五 目鮓」 また は 「ち ら し」 以 外 に も用 い る 呼 称 を 答 え るべ きか,
混 乱 して し ま う。
国立民族学博物館研究報告 18巻4号 また,「 同 じ」,あ るい は 「無 し」(す なわ ち,一 般 的 呼称 が 「五 目鮓」 や 「ち ら し」
で あ り,別 称 は無 い,と い う意 味)と の回 答 が 結 構 多 い 。 これ らは,「 五 目鮮 」 あ る いは 「ち ら し」が 当地 で の一 般 呼 称 で あ る こ とを表 明 して い る と考 え て よいだ ろ うが, そ の どち らが優 勢 か を 教 え て は くれ ない 。
一 方,「 五 目鮓」 や 「ち ら し」 な どの 回答 は,そ れ らが 一 般 呼 称 で あ る こ とを 示 し て い るの は 間違 い な いだ ろ うが,問 題 なの は,「 ば ら鮓 」 「混ぜ 飯 」 等 の独 特 の呼 称 を 回答 して い る例 で あ り,こ れ らは,
a)「 五 目鮮」 や 「ち ら し」 の 呼称 を用 い ず に も っぱ らそ うした独 特 の呼称 を用 い る のか,
b)「 五 目鮓」 や 「ち ら し」 の呼 称 とそ れ らを併 用 して い る のか, 判 然 と しな い 。
従 って,こ の 回答 か らは,独 特 の 呼称 の分 布 を知 る こ とは で き て も,「 五 目鮭 」 あ るい は 「ち ら し」 を 明示 して い な い か ら とい って,そ れ らが 使 わ れ な い とは断定 で き な い 。 つ ま り,呼 称 の 回 答 か らは,「 五 目鮓」 と 「ち ら し」 の 呼 称 の分 布 を 正 しく知 る こ とは で き ない の で あ る。 こ う した 呼称 に関 す る設 問 の あい まい さは,す べ て の カ テ ゴ リー の鮮 につ い て見 られ る。
この 問 題 の 他 に も,設 問 の 不 適 切 さを 指摘 で きる。 例 え ば,「 稲 荷鮓 」 の 「鮮飯 」 の 内 容 を(白 飯,五 目飯,具)の 三 選 択枝 か ら複 数 回答 させ る設 問 で は,五 目飯 と具 の区別 が不 明確 で あ る。 混 ぜ る具 が 多 くな る と五 目飯 と回答 す べ きな の か ど うか,回 答 者 は 混乱 して しま う。
鮓 の 材料 を 問 う設 問 に つ い て も同様 の 問題 が あ る。魚 とそ の加 工 品,野 菜 及 び 乾物, の二 つ に 大別 して尋 ね て い る が,前 者 に(カ マ ボ コ)の 注 記,後 者 に(高 野 豆 腐 な ど) の注 記 が あ り,回 答 者 に よ って は,カ マ ボ コや高 野 豆 腐 そ の ものを 用 い るか ど うか の 設 問 と取 り違 え て い る例 も多 く見 られ る。
ま た,「 馴 れ 鮭 」 の設 問 中,魚 を漬 け る期 間 を 回 答 す るた め の 選 択 枝 の うち,「7
〜14日 」 の次 に長 い期 間 は一 挙 に 「数 ヵ月 」 に飛 ぶ た め,漬 け込 み 期 間 が1ヵ 月程 度 の 「生 成 れ 」 鮭 を 回答 す る こ とが で きな い とい う不 都 合 が あ る。
本 稿V章 で示 す よ うに,篠 田 ア ンケ ー トを 分析 す る際 には,以 上 の よ うな 設 問文 の 不 適 切 さを考 慮 に 入れ た 処理 が必 要 で あ る。
4.設 定 さ れ た 鮮 カ テ ゴ リ ー の 問 題 点
本アンケート を 実施 す るに あ た り,篠 田氏 は どの よ うな分 類基 準 に従 って鮓 の カ テ
久保 ・大 島 ・日比 野 ・和 田 篠 田資 料 ・鮮アンケート の 予 備 的 分 析
ゴ リーを設 定 した の であ ろ うか 。 篠 田氏 の 『す しの本 』 を 参 照す れ ぽ,以 下 の よ うな 定 義 で あ る と思わ れ る。
「五 目鮭 」:鮓 飯 と具 を混 ぜ た も の。 本 来 は,重 石 で圧 迫 し,あ る期 間 熟 成 の後,掘 り起 こ して食 した 。 現 今 は,混 ぜ て 即席 で食 す ものが 多 い 。
「巻 き鮓 」:具 を 芯 に した鮓 飯,ま た は五 目飯 を,海 苔,昆 布,薄 焼 き卵 な どの食 べ られ る 巻 き材 で巻 いて圧 迫 した もの。
「稲 荷鮓 」:薄 い油 揚 げ で鮓 飯 を包 んだ もの。 広 義 の巻 き鮓 と見 な せ る。
「押 し鮮 」:鮓 飯 の上 に 具 を置 き,型 や 箱 な どの 容 器 に詰 めて 圧 迫 した もの 。
「握 り鮓」:握 った鮓 飯 に,生 ま た は鮓 をあ て た 魚 肉の 切 り身 を の せ,手 で握 って圧 迫 した もの 。
「おか ら鮓 」:米 以外 の基 材 と して お か らを 用 い る もの。
「馴 れ鮓 」:米 飯 等 の炭 水 化 物 の 乳酸 発酵 に よ る酸 味 を 得 た魚 肉 を食 す も の。
「魚 と糀 と野 菜 とを入 れ る鮮 」:馴 れ を促 進 す るた め の 米 糀 と,香 り付 け の た め の野 菜 を混 ぜ て 魚 肉 を馴 れ させ た もの。
「魚 の姿鮓 」:(鮓)飯 の 上 に,皮 を残 した 魚 肉(鮓 を あ て る場 合 もあ る)を のせ て 形 を 整 えて 圧 迫 し,一 両 日漬 け 込 む もの,ま た は 即 席 に 食 す もの。
「葉 で巻 く鮓」:香 りの 高 い植 物 の 葉 で鮓 を包 ん だ もの 。
こ うした 定 義 は,正 し く回答 者 に了 解 され て いた ので あ ろ うか 。 例 えぽ,「 魚 と糀 と野菜 を入 れ る鮭(以 下 で は魚 糀 野 菜鮓 と略 記 す る)」 に つ い て の設 問 に 対 して,野 菜 が入 らな い場 合 にそ れ を 「馴 れ鮓 」に分 類 す る者 とそ うで な い者 が 混 在 して い るが,
これは 定義 が十 分 に説 明 され て い なか った た め に生 じた 事 態 と考 え られ る。
さ らに大 きな 問題 は,同 一 地域 に お け る同一 の 鮮 が 回答 者 に よ って別 の カ テ ゴ リー に 分類 され,同 一 の鮓 が,複 数 の カテ ゴ リーに 当 て は まる事 例 が 多 々見 られ る点 で あ る。サ ソ プル ・デ ー タの中 か ら,二 つ の鮓 カテ ゴ リー間 に また が る事 例 を 表2に 示 し, 表 中 の各 番 号 の 具 体 例 を以 下 に 列 挙 して お く。
(1)「 五 目鮓 」 と 「稲 荷鮓 」(五 目鮭 を油 揚 げ で 包 ん だ ものが 稲 荷 鮮) 広 島県 世 羅 郡 甲 山 町,徳 島 県 海 部郡 日和 佐 町,高 知 県 高 岡郡 佐 川 町(各1件)
(2)「 五 目鮓 」 と 「押 し鮓」(五 目鮭 を押 して 作 る。 元 来 の五 目鮭 に近 い もの か) 奈 良県 吉 野 郡 下市 町(3件),和 歌 山県 日高 郡 南部 川 村(1件),鳥 取 県 八 頭 郡(4件), 徳 島県 海 部 郡 日和 佐町(1件),福 岡県 北 九 州 市 門 司 区(1件)
(3) 「巻 き鮭 」 と 「握 り鮓」
国立民族学博物館研究報告 18巻4号 表2 鮭 カ テ ゴ リーの重 複 状 況
巻 き峠 1258件
稲 荷 昨 1231件
押 し詐 795件
握 り詐 621件
お か ら鮓 182件
馴れ詐 85件
魚糀野菜詐 32件
魚 姿鮓 316件
葉巻 き詐 38件
1 2
五 目詐
1227件
\
3壱 き 詐 1258件
\ \ 稲 荷 昨 1231件
\ \ \ 9 5 s 7 押 し炸795件
\ \ \ \ 8 9 握 り昨 621件
\ \ \ O \ 10 お か ら鮓 182件
\ \ \ \ \ \ 11 12 13 馴 れ詐85件
\ \ \ \ \ \ \ 14 魚椛 野粟 詐 32件
\ \ \ \ \ \ \ \ 魚姿昨316件
島 根県 大 原郡 加 茂 町(1件 。 呼 称 は 「巻 き鮓」。 魚 の 切 り身 で 巻 く) (4)「 押 し鮮 」 と 「握 り鮓」
なま
山 形県 天 童市(呼 称 「生 鮭 」。2件),山 形県 鶴 岡市(呼 称 「生 鮮 」。1件),新 潟 県 東 蒲 原郡 津 川 町(1件),長 野 県 上 水 内郡 信 濃 町(1件),静 岡 県 引 佐 郡三 ヶ 日町(2件), 和 歌 山 県 日高 郡 南 部 川 村(呼 称 「押 しぬ き」。1件),高 知 県 安 芸 郡(1件),鹿 児 島 県 曾於 郡 有 明町(1件)
(5) 「押 し鮮 」 と 「魚 糀 野 菜鮓 」
新 潟 県村 上市 瀬 波 町(呼 称 「押 し鮓」 に 糀 と野菜 を入 れ る。1件) (6)「 押 し鮮 」 と 「魚 の 姿 鮮 」
兵 庫 県 津 名 郡北 淡 町(呼 称 「押 し鮓」 を 魚 の 姿鮓 の カ テ ゴ リーに 回 答。1件) (7)「 押 し鮓」 と 「葉 で巻 く鮓」
石 川 県 石 川 郡 鶴 来 町(呼 称 「笹 鮭 」。4件),奈 良 県 吉 野 郡下 市 町(呼 称 「箱鮓 」,「柿 の葉鮓 」。3件),和 歌 山県 日高 郡南 部 川 村(呼 称 「箱鮓 」。5件)
(8) 「握 り鮮 」 と 「馴 れ鮓 」 と 「魚 の 姿鮓 」 宮 崎 県 延 岡 市(呼 称 「魚鮓 」。2件) (9) 「握 り鮭 」 と 「葉 で巻 く鮭 」 奈 良県 吉 野 郡 下市 町(1件)
(10)「 おか ら鮭 」 と 「魚 の姿鮓 」
久 保 ・大 島 ・日比 野 ・和 田 篠 田資 料 ・鮓ア ンケ ー トの 予 備 的 分 析
新 潟 県 村上 市(呼 称 「は らみ鮓 」,「小鯛鮓 」,「小鯛 の か ら鮓 」。8件),島 根 県 逼 摩 郡 (呼称 「魚鮓 」,「お まん 鮭 」,「抱 き鮓 」。9件),広 島県 双 三 郡(呼 称 「蘭鮓 」,「あ ゆ 鮭 」。
1件),山 口県 熊 毛 郡(呼 称 「東鮓 」,「抱 き鮭 」。2件),愛 媛 県 宇 和 島 市(呼 称 「丸鮓 」。
1件)
(11)「 馴 れ鮓 」 と 「魚 糀 野菜鮓 」
鳥 取 県 八頭 郡 河 原 町(呼 称 「あ ゆ鮭 」。6件) (12)「 馴 れ鮓 」 と 「魚 の 姿鮓 」
大 阪 府 豊能 郡 東 能 勢(呼 称 「さば鮓 」。1件),滋 賀 県近 江 八 幡 市(呼 称 「ふ な鮓 」,「お いか わ鮓 」,「さぽ鮓 」,「あ じ鮓」。6件),岡 山 県 英 田郡(呼 称 「さぼ鮓 」。2件),愛 媛 県 宇 和 島市(呼 称 「姿 鮮 」。1件),宮 崎 県 延 岡 市(呼 称 「魚(さ か な)鮭 」。1件) (13)「 馴 れ鮓 」 と 「葉 で巻 く鮮 」
和 歌 山県 日高郡 南 部 川 村(呼 称 「馴 れ鮓 」。2件 。 馴 れ た ア ジ を笹 の葉,葉 蘭 で巻 く) (14)「 魚糀 野菜 鮮 」 と 「魚 の姿鮓 」
新 潟 県 岩 船 郡 山北 村(呼 称 「つ か み鮭 」。2件 。 サ ケを 用 い る)
以 上 の よ うな カ テ ゴ リー間 で の重 複 は,ア ンケ ー トを 作 成 す るに あた って 篠 田氏 が 設 定 した鮮 の分 類 が 適 切 で あ った か ど うか,に 関わ る。 これ は,本 来,別 の 分 類 観 点 (フ ァセ ッ ト)3)に属 す る 用語 を篠 田 氏 が分 類 に用 い た 点 に,混 乱 の 原 因 が あ る と考 え られ る。 こ こで,鮓 の構 成要 素 と製 法過 程 に お け る操 作 を 改 め て整 理 して み る と, 図4の よ うに 表 せ るで あ ろ う(構 成 要 素 を 矩 形,操 作 を 菱 形 で 示 した)。 鮮 の 語 源 は
「酸 し」 と され るが,そ の 酸 味 を得 るた め の 方 法 は乳 酸 と鮓酸 に 大 別 で きる こ とに 着 目 して,篠 田氏 は鮓 を 「馴 れ 鮮 」 と 「早鮓 」 に,ま た近 藤 氏 は 「乳 酸 系 」 と 「鮓酸 系」
に大 別 した 【近 藤 1974:30】。前 掲 した 篠 田氏 の 細分 類 は,図4に お け る,構 成 要 素 の一 部 分 や 相 異 な る操 作 に おけ る調 理 手 法 を,次 の よ うに それ ぞ れ 抽 出 して分 類 の総 称 と した もの と言 え る。
「おか ら鮓 」:基 材 で あ る米 飯 の 代 用 品
「馴 れ鮓 」:乳 酸 発酵 に よる酸 味 付 け
「魚 の姿鮓 」:圧 迫法 に おけ る形 状
「押 し鮓」:鮭 の圧迫 法
「葉 で巻 く鮓」:包 装 法 と材 料
「糀 」:発 酵 促 進 材
3) フ ァセ ッ ト(facet)と は 元 来 「宝 石 な どの カ ッ ト面」 を意 味 す るが,図 書 館 学 な どの分 野 では,分 析 合 成 型 分類 法 に おけ る,ク ラス(分 類項 目)を 細 分 す るた め の 区分 原 則(切 り口), 及 び そ れ に よ って得 られ る下位 ク ラス の 総体 を指 す 【丸 山 1990:229】。
国立民族学博物館研究報告 18巻4号
図4 鮭製造の フm
相異 な る操 作 段 階(そ れ ぞれ が 別 の フ ァセ ッ トと考 え られ る)の キ ー ワー ドに よ る分 類 が重 複 す るの は 当然 で あ ろ う。
従 っ て,総 合 的 な鮮 の分 析 を 行 な うた め には,例 え ぽ,
(鮓 の基 材,基 材 へ の 混 ぜ もの,魚 肉の 酸 味 付 け 法,発 酵 促 進 材,包 装 法,圧 迫 法,最 終 処 理 法)
な ど,相 異 な る フ ァセ ッ,ト毎 に 分 類値 の組 を 与xる よ うな表 現 を 用 い て,収 集 され た デ ー タの 再編 成 を行 な う必 要 が あ る。 次章3節 の 「押 し鮮 」 の 項 で,こ うした表 現 法 の一 案 を 示 した。
ア ンケ ー ト用 紙 に記 入 され た 結 果 を第0次 デ ー タ,コ ソ ピュ ー タに入 力 され た デ ー タを 第1次 デ ータ とす れ ぽ,こ うした再 編 成 に よ って得 られ る第2次 デ ー タを 得 て初 め て,本 格 的 な分 析 が 可 能 に な る と考 え られ る。 しか し,デ ー タの再 編 成 を 行 な うに は,今 後,文 献 調 査 や 現 地 の 再 調査 を行 な って,各hの 鮮 が 実 際 に調 理 され る過 程 を 詳 し く吟 味す る必 要 が あ るだ ろ う。
久 保 ・大 島 ・日比 野 ・和 田 篠 田資 料 ・鮓ア ンケ ー トの 予 備 的分 析
以 上 の よ うな 問題 点 を抱 え て はい る もの の,皿 章 で述 べ た よ うに 規模 の 点 で篠 田 ア ソヶ 一 トに まさ る も のは な く,そ の問 題 点 を 回避 す る処理 法 に よれ ば 活 用 は十 分 に可 能 であ る。 特 に,カ テ ゴ リー間 の重 複 が 極 め て少 な く,独 立 した カ テ ゴ リー と見 なせ る 「五 目鮮 」 ・ 「巻 き鮮 」 ・ 「稲 荷鮓 」 に 関 して は,こ れ らが調 査 地 域 全域 に分 布 し て い る こ と もあ り,地 域 特 性 の比 較 のた め の 資料 と して 貴重 で あ る。 次章 で は こ う し た立 場 で 分 析 を 行 な っ た。 さ らV',形 式Aの シ ー ト1に は,雑 煮 や 祭 礼 料 理 に関 す る設 問 もあ る。これ ら と鮓 との関 係 に つ い て は言 及 され た例 が な く,今後 の デ ー タベ ー ス化 と分 析 に よ って新 た な 知 見 を得 る こ とが 期 待 で き よ う。
V.サ ン プ ル ・デ ー タ に 見 る 種 々 の 鮮
以 下 では,地 域 分布 を 中心 に個hの 鮮 につ い て 見 て い こ う。69ヵ 所 の地 域 毎 に 各鮓 の存 在 を 回答 した 件 数 を集 計 し,そ れ ぞれ の地 域 で 回収 した 基 礎 件数 に対 す る比 率 を
「出現 率」 と して 計 算 した ものが 本文 末 の表3で あ る。 また,表4に は,二 つ の カテ ゴ リーの鮮 が 併 存 す る状 況 を示 した。篠 田アンケート が 全 国 を 網羅 して い な い うえ に, 先述 した通 りカ テ ゴ リー間 に重 複 が あ るため,こ れ らの集 計 結 果 を額 面 通 り解 釈 す る
表4 鮮の併存状況
巻 き詐 1258件
稲 荷 昨 1231件
押 し鮓 795件
握 り詐 621件
おか ら昨 182件
駅れ詐 85件
魚椛野菜 詐 32件
魚姿鉾 316件
葉壱 き詐 38件
1206 1187 783 611
:1
81 31 313 38五 目昨
1229件
\
]213 793 619 180 84 31 316 38巻 き詐 1258件
\ \ 778 612 180 82 31 314 36 稲 荷 炸 1231件
\ \ \ 492 158 59 18 254 34 押 し鮓 795件
\ \ \ \
135 47 19 215 26鯉 り鮓 621件
\ \ \ \ \ 28 8 77 7 おか ら詐182件
\ \ \ \ \ \ 12 30 9 馴れ詐85件
\ \ \ \ \ \ \ 12 0 魚糀轟葉鮓 32件
\ \ \ \ \ \ \ \ 26 魚 姿鮓 316件
国立民族学博物館研究報告 18巻4号 こ とは で き ない が,次 の よ うな 傾 向 を指 摘 で き る。
・ 「五 目鮓」,「 巻 き鮓」r「稲 荷 鮭 」 は,サ ンプ ル地 域 の ほ とん どで 出 現 率 が9割 を 越 え て お り,全 国 ほ ぼす べ て の 家 庭 で作 られ てい る こ とを示 す 。
・ 「押 し鮓」,「握 り鮓」は,サ ンプル地域全体に分布す るが,出 現率が5割 を下回 る 地 域 も多 い。
・ 「魚糀 野 菜鮓 」,「おか ら鮓」,「葉で巻 く鮓」の三者 の間での共起は少な く,こ れ ら が 地域 的 に特 化 した鮓 であ る こ とを示 す 。
1.「 葉 で 巻 く鮮 」 と 「お か ら鮓 」 に つ い て
まず,出 現 す る地 域 の 少 な い 「葉 で 巻 く鮓 」 に つ い て概 観 し よ う。 「馴 れ 」 系 統 の 鮓 に香 りをつ け 魚 肉 の臭 み を 消 す た め に 「葉 で 巻 く鮓」 が工 夫 され た と され るが 【篠 田 1966:10】,他 方,持 ち を 良 くす るた め に 抗菌 防腐 作 用 のあ る笹 の 葉4)で 握 り飯 を 巻 い た兵 糧 が 原 点 で あ る との 説 もあ る 【近 藤 1974:100】。
サ ソ プル ・デ ー タの 「葉 で巻 く鮓」 カ テ ゴ リーで 回答 が見 られ るの は,次 の4地 域 であ る。
大 阪府 豊 能 郡 東 能 勢村:「 ア ブ ラナ で巻 く鮓」;カ ツナ を 用 い る。
奈 良県 吉 野 郡 下市 町:「 柿 の 葉鮓 」 「朴 の葉 鮮 」;サ バ,サ ケ を用 い る。
和歌 山県 日高 郡 南 部川 村:「 押 し鮓」 「箱鮭 」 「馴 れ鮓 」;ア ジ,サ バ 等 を用 い る。芭 蕉 の 葉, 笹 の葉,葦,ミ ョ ウガの 葉,葉 蘭 で巻 く。
鳥取 県 八 頭 郡 智 頭 町:「 柿 の 葉鮓 」;サ バ,マ スを 用 い る。
鳥取 県 八 頭 郡 河 原 町:「 ち ま き鮭 」 「葉 巻 き鮮 」;サ バ,エ ビ,小 タイ を 用 い る。 ミ ョウ ガ の葉 で巻 く。
こ の 他 に,次 の も の が あ る 。
石川 県 石 川 郡 鶴来 町:「 押 し鮭」 「笹鮓 」;サ バ,サ ケ,シ イ ラ等 を 用 い る。 笹 の葉 で 巻 く。
こ れ は 「押 し鮭 」 カ テ ゴ リ ー で 回 答 され て お り,整 形 の た め に 圧 迫 す る点 が 重 視 され た 訳 で あ る 。 こ の サ ソ プ ル ・デ ー タ に は 現 れ て い な い が,笹鮓 を 始 め と し て 綜 や 笹 餅
4)笹 の葉 に は 複 数 の 抗菌 性成 分 が含 まれ てい るの は 確 か で あ るが,脂 溶 性 のそ れ らが 笹 の葉 で 包 まれ た 食 品 に 移 行 して有 効 に作 用 す るか ど うか は疑 問 が 大 き く,微 生 物 付 着 の 阻 止 や空 気遮 断 とい った 消 極 的 効 果 に よる と考え る方 が妥 当 で あ る,と の 見 方 が あ る {内 田 1990:
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