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薄皮丸ナスの渋味成分分析に関する予備的検討

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Academic year: 2021

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(1)

薄皮丸ナスの渋味成分分析に関する 予備的検討

P r e l i m i n a r y  s t u d y  a b o u t  a n a l y s i s  o f b i t t e r  

compon~nt

i n  

Solanum melongena 

L .   ' U s u k a w a ‑ m a r u n a s u '   仁科淳良

1)

・加藤守匡

1)

.森田幸雄

2)

・木村博一

3)

A t s u y o s h i  N i s h i n a ,  Morimasa K a t o ,  Y u k i o  M o r i t a  and H i r o k a z u   K i mura 

1)米沢女子短期大学健康栄養学科、 2)東京家政大、 3)国立感染症研究所

1 .はじめに

薄皮丸ナスは、山形県置賜地方の特産で、年間40""45tが収穫期である7月から9月に 生産されている。果実は食べやすい一口大の大きさで収穫され、濃い紫色をしており、皮が 薄く、肉質が轍密で、漬けるとパリッと歯ざわりが良いのが特徴である。

薄皮丸ナスのルーツとしては、窪田ナス(くぼたなす)と呼ばれていた丸茄子にある。山 形県置賜地方の窪田地区で盛んに栽培されていたこのナスは、庄内地区の「民田ナスJと並 ぶ山形古来の品種である。しかし窪田ナスは皮が厚く、煮物や本漬けには適していたが浅漬 けには不向きだ、った。そこで、この窪田ナスを品種改良し、浅漬けに適したナスとして「薄 皮丸ナスJが誕生した。

図 1 薄皮丸ナス

U l

(2)

山形県立米沢女子短期大学紀要第47

ナスとは、ナス科ナス属の植物で、野菜類の中では特に高温・高湿を好む夏野菜の代表で ある。また育成には多くの肥料を必要とする。インド原産で日本には7"‑'8世紀に伝えられ たと考えられている。日本各地で古くから栽培されているので、各地に固有の品種がある。

品種は、丸・卵形・長型などがあり、加熱調理全般に合う米なすや賀茂なす、漬物に合う小 なす、焼きなすや妙め物などに向く長なす、渋みがほとんどなく生でそのまま食べられる水 なす(泉州なす)などがある。特に、大阪特産の水なすは最近全国的に流通量が増えており、

値段は一般的なナスよりも高価だが、そのまま食べられるためサラダや浅漬け、肉料理の付 け合わせとしてもおいしく食べることができる。薄皮丸ナスに関しては、上記のとおり、外 観、大きさ、食感等が食用として適しているが、渋みが強く、漬け物の原料以外の利用が進 んでいないのが現状である。

一般的なナスの成分については、約94%が水分で、ビタミンB群・ Cなどのビタミン、

カルシウム・鉄分・カリウムなどのミネラル成分、食物繊維などをバランス良く含んでいる。

ナスは、これらの栄養成分により生体調節機能が優れていると言われ、特に豊富に含まれる 食物繊維は、便秘を改善し大腸がんを予防する効果や、血糖値の上昇を抑え、糖尿病や肥満 を防ぐ効果がある。また茄子には、皮に紫黒色の水溶性の色素の一種であり、ナスニンと呼 ばれる「アントシアニン」、一般にナスのアクと呼ばれるクロロゲン酸などの抗酸化成分「ポ リフェノール」が含まれている。乙れらの成分は、体の老化を防ぐ、動脈硬化の予防、がん の発生・進行を抑制する効果が認められている。その他に、アナフィラキシ一反応の抑制作 用ペアテロームや酸化ストレス抑制作用(ヘ好酸球のパースト抑制作用ベ肝保護作用問等 が報告されている。

黒海は各種ポリフェノール類の水溶液について官能比較し、最もナスの渋味に近いものと してクロロゲン酸をあげている(ヘクロロゲン酸はナスの主要なポ1)フェノールであり、カ フェ酸とキナ酸から構成される。クロロゲン酸は種子>外果皮>芯〉中果皮の順に多く含ま れていると報告している。クロロゲン酸 (chlorognicacid)は 5ーカフェオイルキナ酸 (5 caffeoylquinic acid)とも呼ばれ、コーヒー酸のカルボキシル基がキナ酸5位のヒドロキシ基 と脱水縮合した構造を持つ化合物である。コーヒー豆から初めて単離され、現在ではナス科・

セリ科・キク科などの多くの双子葉植物の種子や葉から見いだされている。熱に不安定で容 易にコーヒー酸とキナ酸に分解する。カフェタンニンの一種とされたこともあるが、タンニ ンとしての活性が低く、現在ではタンニンの一種としては見なされていない。

渋味に関するこれまでの研究では、柿渋のタンニン、シブオール、ワインのプロアントシ アニジン、オリーブのオレウロペイン、ナスのクロロゲン酸が渋味成分として報告されてい る。このことから、薄皮丸ナスの渋味成分はクロロゲン酸であると考えられるが、クロロゲ ン酸(試薬)は、渋味を呈しないことから、渋味物質の特定が求められている。今回、山形 県置賜総合支庁産業経済部農業振興課から、品種改良や加工法の改良により薄皮丸ナスの渋 味を低減し、漬物以外の用途拡大を目指すために、ナスの渋味物質の分析依頼があった。ナ スの渋味成分を解明するため、予備的に薄皮丸ナスを含む4種のナス中の渋味成分を探索し た。

2 .

実験材料と方法

2.  1 実験材料

山形県置賜総合支庁産業経済部農業振興課から提供を受けた、置賜地方で生産された 4種 のナス(薄皮丸ナス、党天丸ナス、あのみのり、民団ナス)を用いた。

(3)

2.  2 浅漬けの調整

薄皮丸ナス1kgに対して、水1000mQ、食塩50g、砂糖50g、焼ミョウパン5g、アスコル ビン酸5gを加え、 48時間加圧・漫演した。

2.  3 抽出法

抽出のフローを図2に示した。各ナスのへたを取り除き、真空凍結乾燥機で乾燥した。乾 燥物をミキサーで粉砕後、粉砕物2gに対して40mQのメタノールを加えて1昼夜抽出した。

上澄と残澄を櫨別した後、上澄はロータリーエパポレーターで乾燥し、メタノール抽出物と した。残誼を真空凍結乾燥後、水40mQを加えて、メタノール抽出物と同様の方法により、

水抽出物を調製した。

水 抽 出

2.  4 官能検査

2g 

メ タ ノ ー ル 40rnQ 

水 40rnQ 

メ タ ノ ー ル 抽 出 物

水 抽 出 物

図2 抽出フロー

浅漬けはナスを約1cm角に切断した。抽出物は10μgを用いた。パネラーは2名とし、

渋みの順位づ、けを行った。比ー較的差が明確であったため、検定は行わなかった。

2.  5 ポリフェノールの分析

標品として、特級のカテキン、フェルシトリン、クロロゲン酸、カフヱー酸、ピロガロー ル、クエルセチンを用いた。分析には、薄層クロマトグラフィーを用いた。薄層プレートは、

シリカゲル F捌(メルク社)を用いた。

‑17‑

(4)

山形県立米沢女子短期大学紀要第47

展開溶媒は、ブタノール:酢酸:水

( 4: 

1 : 2 

4: 

1 : 3 

4: 

1 : 

4 )

、クロロホ ルム:メタノール:0.3%CaCQ2、クロロホルム:メタノール:28%アンモニアの5種を用 いた。発色溶媒として、リン酸硫酸銅溶液(硫酸銅3gを15%1)ン酸水溶液100mQに溶かした) をスプレーし、 105"Cで30分間加熱することにより発色した。

2.  6 ナス抽出物中の成分分析

薄層プレートは、シリカゲ、ル

F 2

日(メルク社)、展開溶媒には、クロロホルム:メタノール:

0.3%CaC12を用いた。各抽出物の10mg/mQ溶液を2μQロードした。 2. 5と同様の方法で 発色を行った。

3 結果と考察

3.  1 浅漬けの調整と官能検査

ナスの渋みを判定するためには、調味料の組成が単純な浅漬けが適していると判断した。

今回調整した浅漬けを図3に示した。薄皮丸ナス、民田ナス、党天丸ナスが球形に近い小 型のナスであるのに対し、あのみのりは一般的なナスの形状であった。

浅漬けの官能検査結果を表1に表した。 4種の浅漬けのうち、あのみのりの渋みが最も弱 いことが分かつた。

渋味

民田ナス

図3 各ナスの浅漬け

表1 浅漬けの官能検査 荒天丸ナス

+十

民間ナス

++ 

あのみのり 薄皮丸ナス

++ 

(5)

3.  2 抽出物の官能検査

4種のナスの水抽出物とメタノール抽出物の収量と官能検査結果をそれぞれ表2、表3に 示した。あのみのりのメタノール抽出物の収量が他のナスよりも多かった乙と以外、抽出物 の収量に関しては 4種のナスの開で同等であった。

メタノール抽出物 水 抽 出 物

表2 水抽出物およびメタノール抽出物の収量 薄皮丸ナス

│ 

民田ナス

│ 

あのみのり

0.21  0.36 

0.26  0.38 

0.38  0.43 

党天丸ナス 0.22  0.36 

官能的に、あのみのり抽出物には渋味が全く感じられなかった。また、総じて水抽出物よ りもメタノール抽出物の渋味が強いことが分かつた。以上の結果から、ナスの渋味成分は比 較的メタノールに溶解しやすい性質であることが分かつた。

メタノール抽出物 水 抽 出 物

表3 水抽出物およびメタノール抽出物の官能検査 薄皮丸ナス

│ 

民田ナス

│ 

あのみのり

+++ 

++ 

+十+

+++ 

3.  3 ポリフェノールの薄層クロマトグラフィーによる分析

党天丸ナス

+++ 

++ 

6種類のポリフェノール(カテキン、フェルシトリン、クロロゲン酸、カフェー酸、ピロ ガロール、クヱルセチン)を薄層クロマトグラフィーで分析した結果を図4に示した。

展開溶媒が、ブタノール:酢酸:水=4: 1 : 2では、クエルシトリンとクロロゲン酸以 外のポリフエノールはRf値がほぼ1となり分析不能であった。一方、展開溶媒が、クロロホ ルム :メタノール:28%アンモニアでは、全てのポリフェノールのRf値が0に近く、やは

り分析不能であった。

展開溶媒が、クロロホルム:メタノール:0.3%塩化カルシウムの場合は、 6種のポリフ ェノールのRfが別々の値となり、 Rf値を比較することにより同定が可能であることが分か った。

‑19‑

(6)

47 山形県立米沢女子短期大学紀要

'1 

クエ ルセ チン ピロ ガ口

!ル クロ ロゲ ン クエ ルシ トリ ン

4: 1 : 4  4: 1 : 3 

1~3 ブタノール:酢酸:水 4: 1 : 2  4  クロロホルム:メタノール:O.3%CaC.Q

5  クロロホルム:メタノール :28%アンモニア

ポリフェノールの薄層クロマトグラフィ一分析

3.  4 ナス抽出物の薄層クロマトグラフィーによる分析

表 2に示した 8種の抽出物を展開溶媒クロロホルム:メタノール:0.3%塩化カルシウム で分析した結果を図5に示した。ナス中の渋味成分と言われているクロロゲン酸(図5の矢 印)は、

TLC

スポットの濃度比較結果より、各ナスに同様に含まれていると判断した。仮に クロロゲン酸がナスの渋味成分に関係している場合、渋みの少ないあのみのり中の含有量は 少ないはずである。よって、クロロゲン酸が渋味の原因であるという説は疑わしいと考えら れた。

一方、図5の四角で囲んだ部分に存在する成分はあのみのりには含まれていないが、他の 3種のナスには同様に含まれていた。以上の結果から、渋みと図5の四角で固まれた部分に 存在する成分は関係があるのではないかと考えられた。

図 4

(7)

クロロゲン酸

z a L  

天 丸 ナス

よ荒天丸ナス

̲ f't.. 

民 民 回 目 ナ ナス ス 一札 薄皮丸ナス

i薄皮丸ナス

一一あのみのり

一あのみのり

水抽 出物

メタノール抽出物

水抽 出物

メタノール抽出物

水抽 出物

メタノール抽出物

水抽 出物

メタノール抽出物

ナス抽出物の薄層クロマトグラフィ一分析結果

4.  まとめ

山形県置賜総合支庁産業経済部農業振興課から、ナス中の渋味成分の分析を依頼された。

予備的に薄層クロマトグラフィーで分析した結果、ナス中にはクロロゲン酸以外の渋味成分 が存在することが示唆された。次年度は正式に、山形県置賜総合支庁産業経済部農業振興課 と共同研究を行い、薄層クロマトグラフィーよりも精密な成分分析が可能な高速液体クロマ トグラフィーを用いた検討を行いたい。最終的にはナスの渋l床の全貌を解明し、ナスの渋味 低減の一切をすることが本研究の目標である。

図5

5.謝辞

本研究を行うにあたりご協力いただいた佐藤敏子氏に感謝いたします。

21 

(8)

山形県立米沢女子短期大学紀要第47

参考文献

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要旨

山形県置賜地方の特産である薄皮丸ナスについて、生産者から渋味成分を解明し機能性を 把握したいという要望が出ていた。一方、ナス中の渋味成分は、クロロゲ、ン酸が通説となっ ていた。我々は、予備的にナス中の渋味成分の探索を行った。

4種のナス(薄皮丸ナス、党、天丸ナス、あのみのり、民田ナス)の中で、あのみのりの渋 味は、他の3種に比べて明らかに少なかった。 4種のナスの成分を薄層クロマトグラフィー で分析した結果、これまでナスの渋味成分と言われてきたクロロゲン酸は4種のナス中に同 様に含まれていた。

以上の結果からナス中にクロロゲン酸以外の渋味成分が含まれていると推定した。

Summary 

Weiedto identifシstructureand function of bitter component in Solanum melongena 

L .

Usukawa‑

marunasu'  which is  specia1ty of Oitama district ofYamagata prefecre.A1though

, 

ch1orogenic acid  had been accepted as bitter component in eggp1ant

, 

the taste of pure ch1orogenic acid was not bitter.  Thus

, 

we studied to  identif

thebitter  component in  eggp1ant Amongfour kind of eggp1ant

, 

Usukawa‑marunasu

, 

Bonten‑marunasu

, 

Anominori and Minden‑nasu

, 

there was no biertaste  of  Anominori. As a rsu1tof component ana1ysis of four kinds of eggp1ants by thin 1ayer chromatography

, 

the ch1orogenic acid content was simi1ar. Our present results thus suggest that bircomponents other  than ch1orogenic acid were contained in eggp1ant. 

参照

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