「技術決定論」仮設の検証
一その予備的分析一
二 ︶ ーー 晋 1 は じ め に 2) 組織理論の流れの中で,技術を巡る研究は1つの大きなトピックである。そ のなかでも中心を占めているのは,技術が組織のあり方,あるいはそこで働く 人々に,どの様に影響を与えるか,という観点からの研究である。特に,技術 の重要性を主張し,技術が組織の構造や人々の行動を決定すると主張する技術 決定論は1つの大きな論争の焦点となっている。 本稿の目的はこれまでの技術をめぐる研究を概観し,その問題点を明らかに し,仮説群を抽出し,それを検証することにある。今回はその予備的分析とし て,組織戦略研究会によって集められたデータを使用し,これらの仮説のいく つかを検証する。 皿 技術をめぐる研究の流れと問題点 技術と組織との関係をめぐる研究は,Woodward(1965)の研究を一つの契 機として大きく発展されており,それは2つの流れに分割できよう。1つは, 技術が組織成員の行動や態度に及ぼす影響を研究するもので,いま1つは技術 3) の組織全体の構造へ及ぼす影響を研究するものである。本稿ではより詳細に, !) 自由にデータを使用させて載いた組織戦略研究会(野中郁次郎,加護野忠男,小松 陽一,奥村昭博,坂下昭宣,榊原清則)の方々に感謝致します。 2) ここでは技術とは,設備,機械等の生産システム,生産技術といった実体的なレベ ルだけでなく,知識というレベルのものも含むと理解する。 3) Gillespie & Mileti (1977) p. 8.94 彦根論叢第225号 しeavittの枠組に従い,図1に示す諸関係を考察する。 組織構造 (D)
匝}《三十…
(C) (B)××
技 術 (A) 天 間 図1 (Leavitt.1964. P.58より) A.技術が個人の行動(モチベーション,欠勤率,離職率)や態度(満足, 期待)に対して及ぼす影響は,Blauner(1964)の研究を例外として,主に人 間関係論の伝統から生じてきたものであり,ここでは,技術は生産システム, あるいは生産技術として扱われている。 Walker&Guest(1952)は米国の自動車工場での調査結果から,大:量生産 技術における単調で反復的な作業のもとでは欠勤率が高く,転職を布卒してい る者も多いことを示した。社会=技術システム論の一連研究(Trist&Bamf− orth,1951, Rice,1958, Trist et al,1963)においては,生産過程が機械化さ れ,大量生産技術が導入される際に,従業員のストレスや,欠勤率が高くなる のことが示された。又Blaunerは印刷工場(熟練技能型),繊維工場(機械監視 型),自動車組立工場(組立ライン型),化学産業(連続処理工程型)の4つの タイプの生産技術を取り上げ,組立ライン型で最も従業員の疎外感が強い,と いう,いわゆる「逆U字型」仮説を示した。 これらの研究者の主張の中で一貫して暗示されていることは,生産システ ム,あるいは,生産技術が手作業の段階から,ベルトコンベアに代表される大 :量生産の段階に移行した場合に,従業員のストレス,疎外感が高まり,欠勤率, 5) 転職率が高まるということであろう。 4)詳しくは拙稿(1982)参照。 5)Blaunerは,技術システムが組立ライン型から更に高度に自動化された連読処理工B.技術と組織との関係,特に生産技術と組織構造との関係の研究は,Wb− odward(1965)によって始められた,といえる。彼女は英国のサウス・エセッ クス地区の製造企業を調査し,生産技術の複雑性と組織構造の適合が高い成果 に関係することを発見した。この研究では企業の採用する生産技術が単品およ び小バッチ,大バッチおよび大量生産,連続プロセス,と三分され,それと, 組織形態(ライン組織,職能組織,ライン・スタッフ組織),経営管理システ ム(組織体制,生産統制,コミュニケーションの方式),管理階層数 などと の適合関係が調査された。その結果,管理階層数,スタッフに対する直接労働 者比率など,技術の複雑性に従って変化する構造特性と,経営システム,熟練 労働者の割合など,技術の両端において類似する構造特性とが発見されてい る。彼女の研究は,その後,アストン・グループ(Hickson et al,196g)によ って追試が行なわれ,組織構造の決定因をめぐって,技術か規模かという論争 が引き起こされたのである。 C.タスクと個人の行動・態度との関係に関して,初めてその因果関係を理 論化したのはHerzbergであろう。彼は職務満足をもたらす諸要因(動機づけ 要因)と職務不満をもたらす諸要因(衛生要因)とは異なることを実証し, の 職務それ自体が動機的効果をもつことを明らかにしたのである。又Turner& Lawrence(1965)は職務あるいはタスクに内在する客観的特性を測定する為 に,多様性,自律性,職務要件として相互作用,知識および技能,責任の6次 元から職務複雑性の程度をあらわす指標を作り出し,米国・カナダのブルーカ ラー労働者を対象に実証研究を行なった。この研究での中心的仮説は,職務が 複雑であるほど,職務満足は高い,あるいは欠勤率は低い,というものであっ たが,実証結果はこの仮説を支持しなかったために,サンプルが工場立地場所 によって2分された。そして立地が農村の場合,職務複雑性と満足とは正の相 程型になると,従業員の疎外感な少なくなると主張するが,この点は議論の分れると ころであろう。 6)Herzberg et al(1959),ここではタスクと職務は同じ意味であり,どちらも技術 システムと組織構造との相互作用の中から生じるものと考える。
96 彦根論叢i第225号 7) 関を示しており,都会の場合は両者の関係が負であった。この分析結果は,職 務あるいはタスクの複雑性が必ずしも満足につながるのではなく,その間に文 化的特質という媒介変数が存在することを示唆しているといえよう。Turner らの研究はその後,Hackmanらに引き継がれ,職務特性モデルというより洗 8) 練された形になっている。尚,このCの関係においては,技術システムあるい は生産技術は所与のものとして扱われていることは注意を要することである。 D。タスクと組織構造との関係,特にタスクが組織構造の決定因であるとす る立場を代表するのはPerrow(1967)であろう。彼はタスクを情報プロセッ シング・パラダイムに基づいて原材料・加工素材の特質の理解可能性と不安定 性により生じる不確実性処理行為として定義し,このようなタスクが組織構造 とその目標とを決定するという。Hage&Aiken(1969)はPerrowのモデル を実証し,タスクの変化のなさを示すルーチン性(業務の明確度,業務の定義 の充分性,ルールの厳格さ)が組織構造(公式化,集権化,複雑性)に有意な 影響を与えることを示している。 E.技術とタスク,即ち生産システムあるいは生産技術がタスクにどう影響 するのか,についてはこれまであまり注目されず,一部は社会=技術システム の 論者,又,一部はオートメーションの研究によって行なわれた。タビストック の研究者達は生産システムがパッチ型から大量生産に変化した場合に,それが タスク,特に集団レベルでの作業割当て,ローテーション,といった特性にど う影響を与えるか,ということを研究して来たといえよう。Mann&HQffman (1960)では発電所がオートメーション化された時の作業者のタスクが調査 され,オートメーション化された後に,作業者の知覚する作業の多様性,責任 感,技能等が増加することが報告されている。 最近では技術と組織あるいは技術と個人といった2幽間の関係だけではな 7) Turner & Laurence (1965), p. 74. 8)詳しくは金井(1982)参照。 9) Billings et al (1977), p. 318.
く,技術一組織構造一タスク(Schuler,1977),組織特性一タスクー個人(Pie− rce, Dunha皿&B正ackburn,1979)といった3者間の関係,特にそれらの適合 関係を議論する研究が見られるようになってきた。 これら技術あるいはタスクに焦点を合わせた研究の流れにおいて中心を占め てきた考えは,「技術決定論」,即ち技術が組織構造,あるいは成員の行動,態 度を決定するという考え方の妥当性の問題である。しかしながら,これまでの ユの 研究では一貫した結果は見い出されていない。この原因には,次の5点が考え られるであろう。 (1)技術の捉え方の違い 技術をめぐる研究においてそのとらえ方は様々であるが,大別して2つの系 統が識別されるであろう。1つはそれを組織の外部条件と仮定し,生産システ ム(Woodward,1965, Blauner,1964),ワーークフロー(Hickson et al,1969) 等と,実体的に捉える立場であり,他は技術を必ずしも組織の外部条件として 仮定しないで,オープン・システム論に基づいてそれを,投入一変換一産出プ ロセスないし,サイクルと認識する立場である。この場合,技術は通常タスク ユコ と呼ばれ,知識としての技術も含まれることになる。Perrow(1967)は後者の 立場をとり,技術を原材料を望ましい方向に変換させるために,発生した刺激 に対してとられる戦略の集合と定義する。そしてこのような技術の次元とし て,①作業のなかで遭遇する例外ケースの数,②例外が生じる場合個人により 企てられる探索の特質であり,それが体系的・分析的・論理的に遂行される程 度,という2次元を示す。又この2次元は技術あるいはタスクのルーチン性一 ユ ラ 非ルーチン性という1次元に集約することも可能である,という。図2はこの ようなPerrowの概念図を示している。 PerroWの技術概念は個人レベルの問 題解決活動ないしタスクを意味していると考えられるが,この様な立場は次の 2っの点で,Wo(xdwardらの前者の立場より優れているであろう。1つは広 10) Reimann (1980), p. 61. 11)野中他(1978)P.68. 12) Perrow (1967) p. /96,
98 彦イ艮言禽叢 第225号 〈探索〉 〈例外〉 例外少数 分析不”j能な問題 ノ @!I/ クラフト産業 非ルーチン ’ @/Y’ (特殊ガラス) ︵航空機︶〆 1 2/〆 〆 ルーチン 〆 @!Y’ エンジニアリング (製鋼工場,ネ法ボルト) (重 機 械) ’
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@!I1 4 3 例外多数 分析可能な問題 図2 (Perrow.1967. p.196より) ……線はルーチン性一非ルーチン性の次元を示す い応用性をもっていることで,例えば,Woodwordのいう大・ミッチあるいは大 :量生産は例外の頻度が少ない,と理解できるであろう。もう1つはその概念の レベルが今後重要な研究領域となると予想される集団レベルあるいはユニット ユの レベルの分析に適していることであろう。 (2)分析レベルの問題 現実の大規模な組織にはいくつかのタイプの技術があり,どれが支配的な影 ユの 響力をもつかを確定することは因難である。即ちどのレベルで技術,あるいは 組織構造をとらえるかは概念定義,および操作化の問題と関連して重要な点で ある。 特に技術一組織構造関係の研究において,もし組織構造として全組織レベル で考えるのなら,それに相応した技術レベルを,又もし組織内のユニットレベ ルで組織構造を考えるのなら,それに対応するレベルの技術を採用すべきであ ろう。Astonグループの研究において,ワーeクフローレベルの技術と,全組織 レベルとワークフP一レベルの組織構造とが測定され,ワークフP一レベルだ のけの技術と構造との相関関係が発見されたのも当然と言えよう。又,技術一組 13) Withey et al(1983), p.48. 14) Miles&Snow(1978), P.258. 15) Reimann (1980), p.63.織構造関係研究の一貫していない結果は,全組織レベルに焦点を合わせた研究 に見られる,というReimann&Inzerilli(1979)による指摘も,技術の測定 ユの レベルの問題から生じているのであろう。 以上のような理由から,調査の容易さ,という事とも絡んで最近では,組織 内のサブユニットに焦点を合わせた研究が増え,技術とサブユニットの構造と 17) の間に強い関係が旧い出されている。一般的に,これらの研究は,グループに おける変換プロセスあるいはタスクが,非ルーチンで,不確実で,複雑な程, そのグループの構造は,より有機的で,参加の程度が高く,自律性があり,成 員間のインフォーマリティーが上がる,というものである。(Hage&Aiken, 1969) ⑧ 戦略の重要性 技術と組織構造との研究において,従来は技術が組織構造を決定する,とい う因果関係が想定されていたが,Child(1972),占部(1971)等は,組織の採 用する技術,組織構造は,経営者の戦略によって大きく左右される,と主張す る。この点を考慮すると,全く新しい組織が設立され,そこで採用される,技 術と,既に存在する組織が採用する技術とを区別して考える事が必要になるの 18) かもしれない。 ㈲ 個人差の問題 (2)と関連するが,技術と個人との関係を扱った研究,特に,タスクとモティ ベーション,満足との関係を扱った研究においては,個人差が媒介変数として エ 働く事が指摘されている。即ち,タスクあるいは職務の内容は直接,個人の職 務満足,モチベーションに影響を与えるのではなく,都会出身一農村出身, 成長欲求強度,権威の許容度,あいまい性耐性,複雑性統合度,といった個人差 によって大きくモデレートされる,というのである。年齢,在職期間,といっ 16)但し,Woodward(!965)の研究は例外と言えようが,これに対しては,その標本 が小規模企業に偏っていた,という指摘がある(Reimann,1980. p.62)。 17) Mohr(1971), Grimes&Klein(1973), Van de Ven(1977). 18) Rousseau (1979) p.539. !9) Turner&Lawrence(1965), Hackman&01dham(1980).
!00 彦根論叢 第225号 20) た個人属性も,この様な効果.を持つのかもしれない。 (5)規模,その他の要因の影響 Astonグループの研究(Pugh et al,1969)は組織構造の決定因として,技 術よりも,規模の重要性を主張しており,Wbodward(1965), Perrow(1967) 等の結論と大きな対立を示している。もしそうなら組織の規模は,技術一構造 関係のみならず,技術あるいはタスクー個人関係の研究においても,その影響 を考慮しなければならないであろう。 技術に焦点を合わせた研究において,その他に注意を要する変数としては, 外部環境,組織文化,リーダーシップ,等が考えられる。しかし,これらの要 因は図1で示した枠組の射程を超えるものであるため今回の分析ではとり扱わ ない。 皿 問題点の克服と最近の研究 Roussean(1979)は技術をインプット,変換,アウトプットの連続としてと らえ,インプット,アウトプットに関しては,その特性と,そのコントロール おの 機能として理解できると,言う。即ち技術はインプットの特性,インプットコ ソトロ 一一ル,変換,アウトプットコントP ・一ル,アウbプットの特質という5 つのフェイズを持つのである。彼の主張するインプットの特性とは,組織に持 ち込まれる原料,情報,人間の属性であり,原料の堅さ,インプットの多様性 等である。インプットコントP一ルとは,変換に先立ってインプットの利用可 能性や,その供給に影響を与える機能で,例えば,備蓄(stockpiling)やふる い分け(screening)等の機能があげられている。叉,変換とは,オペレーター や設備を通して,イソプヅトに価値を付加するプロセスであり,アウトプット の特性とは,その属性の事であり,異なる製品の数や,アウトプットのタイプ 等の事である。そしてアウトプットコントロールとは,環境へ送り出されるア 20) Brousseau (1983) pp. 34−35. 21) Rousseau (1979) p, 532.
ウトプットの量や質に影響を与えるメカニズムであり,品質管理機能や備蓄機 22) 能面が示されている。 Rousseauは,これまでの技術に焦点を合わせた研究が,技術の変換プロセ スのみに注目しがちであった,と批判する。そして測定における分析レベル, 即ち全組織,サブユニット,個人,という3つのレベルと,彼の主張する技術 の5つのフェイズとを組み合わせ,3×5の15のレベルで,技術を評価してい かなければならないと主張する。 彼の指摘は,問題提起だけに止まっているとは言え,これからの実証研究 を行なっていく上で,大きな意義を持つと言えよう。又,Fry(1983)はWo− odward(1965)から1980年までの,技術一組織構造関係の50の研究を統計的に 分析した結果,その68.8%が統計的に有意な関係を示しているとし,例外はあ コの るものの,技術一組織構造関係の存在を支持する。そして分析から以下の点を 強調する。 (1)技術の複雑性の概念(Woodward,1965)を使った研究では,一貫して 組織構造との問にU字型の関係が見い出されている事。 (2)技術,組織構造が客観的に測定されたか,あるいは組織成員の認知に基 づいて測定されたかは研究結果に大きな影響を与えない事。 (3)技術の変数として,相互依存(Thompson,1967)が重要になってきて いる事。 (4)その操作化に差異はあるものの,技術のルーチン性の概念(Perrow, ら 1967)を使った研究において,非常に首尾一:貫した結果が示されている事。 Fryの指摘は,厳密な分析に基づいているだけに,説得力があり,技術を巡 る研究を一層,発展,飛躍させるものであろう。 22) lbid., p. 532. 23) lbid., pp. 532−533. 24) Fry (1983). 25) lbid., p. 547.
102 彦根論叢 第225号 W 仮 設 体 系 技術をめぐる研究のサーベイを通して,いわゆる「技術決定論」仮説は以下 の5点に集約できるであろう。 (1)全組織レベルにおいて,その組織の採用するドミナントな生産技術,ある いは生産システムの自動化と,組織構造の有機性とはU字型の関係にある。 (Woodward, 1965) (2)組織の採用する生産技術あるいは生産システムの自動化とそれに関与する 個人の職務満足の高さとはU字型の関係にある。(Blauner,1964) (3)全組織,あるいはサブユニットの採用する生産技術あるいは生産システム の自動化の程度とタスクのルーチン性とは逆U字型の関係になる。(Trist & Bamforth, 1951, Trist et al, 1963, Mann &Hoffman, 1960) (4)サブユニットレベルにおいて,タスクがよりルーチンでなくなる程,その ユニットの構造はより有機的になる。 (Hage&Aiken,196g) (5)タスクがよリルーチンでなくなると,個人の職務満足は高くなる。(Turner & Lawrence, 1965)
V 予備的分析
技術決定論を巡る仮設群を厳密に検証するための予備的分析として,組織戦 略研究会によって収集されたデータを使用させて戴いた。このデータは昭和54 年4月から10月目間に集められたもので,本来は管理者行動を明らかにする目 的で収集されたものである。対象となる管理者の属する企業は,24企業,35事 業部で従業員数,数万人の大企業から,総数十人の中小企業まで含まれてお り,その産業も,エレクトPニクス,重電,家電,造船,薬品からアパレル, 食品と多様なものである。又その所在地も,東京,大阪,名古屋,神戸,岡山 と広く分布している。分析対象となるのは,総数382人(部長105人,課長256 人,係長21人)で,平均年令41才の管理者であり,これら回答者の認知より測 定がなされたものである。ここではその回答をそれぞれ担当セクションの代表値とみなしている。 今回の予備的分析では仮説(4),(5)を検証するが,その概念図は図3のようで ある。ここでタスク(技術)はPerrow(1967)の2次元,であり,例外の頻 度は,例外発生頻度,タスク多様性,タスク反復性の3項目(5ポイントスケ ール)を単純合計したもので,例外の分析可能性は,1つの質問項目(5ポイ ントスケール)のみである。例外の頻度が低く,例外の分析可能性の高いタス クがルーチンなタスクとなる。
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(5) Xx rr凶 職務満足
図3 組織構造は公式化,集権化,複雑性の3次元で捉え,公式化,集権化の程度 が低く,複雑性の程度が高い組織構造を有機的とする。公式化はアポイント・ スケー・ルで,規則,手続きを重視する程度を聞く3つの質問項目を合計したものである。集権化はTannenbaumら(Smith&Tannenbaum,1963)のコン
トロールグラフの手法を数学的に変形させた。複雑性は,高度の教育訓練を要 する専門知識能力の必要度,と,新参者が一人前になるまでに要する期間と をそれぞれ質問し,合計したものである。 職務満足は職務達成の機会,仕事上の責任,仕事自体,仕事を通じた自己の 進歩,自律的な思考・行動,個人的成長と能力関発,職務の達成感という7項 目に対する満足であり,それらを単純合計したものである。 今回の分析では以上の変数に加えて,規模(従業員数の対数)を採用した。 26) トップから係員までの影響力を5ポイントスケールで,それぞれ質問し,それらに 重みをつけて合計したものである。104 彦根論叢 第225号 その理由は日本においては組織構造,職務満足,どちらに対しても規模の持つ 影響は大きいであろうという予想によるものである。 W 分 析 結 果 まず仮説(4),即ちタスク(技術)と組織構造との関係を調べるために,構造 の3次元各々を被説明変数とし,タスク,規模を説明変数とする重回帰分析を
諏薮 叢一重
例 外 の 頻 度 例外の分析可能性 規 模決定係数(R2)
公式化集権化雪雑性
一.251* .ooo .199* .037 .103 .208* .056 一.023 .030r .260 .105 .324 表1 数字は標準化回帰係数(ベータ係数) eep<0.05,以下の表も同様とする。 行なった。結果は表1に示されている。ここで分かることは,有意な関係のみ を取り上げると,3つの内2つが仮設(4)を支持することである。即ちタスク (技術)「のルーチン性g)1つの次元である例外の頓度が高くなると。公式化は 低下し,複雑性eJ #昇している。又,有意でないものの,3つの内2つが仮 説を支持する方向に動いている。例外の分析可能性が高いと,公式化,集権化 の程度は高いのである。規模に関しては予想に反して構造の各次元に有意な 影響を与えていない。以上のことから,仮説(4)は概ね支持できるといえるであ ろう。 次に仮説(5)を検証するために,職務 満足を被説明変数に,例外の頻度,例 外の分析可能性,規模を説明変数とす る 重回帰分析を行なった。表2がそ の結果である.。これによるとタスクの 2次元共,仮説(5)とは反対の方向に動 説明変数 満 足例外の頻度
例外の分析可能性 規 模 決定係数(R2)職務満足
一.047 .148* .151* .203 表2いている。タスクルーチン性の1次元である例外の分析可能性が高い場合,有 意に職務満足が高く,有意ではないものの例外の頻度が高いと,職務満足は低 いという関係である。叉,規模は最も大きく職務満足に影響を与えていること が分かる。 仮説(5)を更に検討するために,サンプルを在職期間(平均19年)および規模 (平均2,548人)でそれぞれ2回してみた。結果は表3,4に示されている。こ れによると興味ある事 実が発見される。1つ は例外の頻度がグルー プにより,その方向が 有意ではないものの異 なるということである。 即ち大規模グループ, 叉は在職期間の短いグ ループに属するものは 例外の頻度が高い程, 職務満足が高く,小規 模グルーープ,又は在職 短在職グループ .0!7 .155* .104 .199 説 明 変 数
例外の頻度
例外の分析可能性 規 模 決定係数(R2) 長在職グループ .124 .140 .196* .234 (N=199) 表3 (N=159) 小規模グループ 一.095 .158* .ユ72 説 明 変 数例外の頻度
例外の分析可能性 決定係数(R2) 大規模グループ .129 .10/ .ユ84(N=197) (N=177)
表4 期間の長いグループに属するものは例外の頻度が高い程,職務満足が低いとい う関係である。叉,例外の分析可能性に関して,小規模グループ又は在職期間 が短いグループに属するものと,大規模グル・・一プ,又は在職期間が長いグルー プに属するものとを比較した場合,前者の方が例外の分析可能性が高い場合, 職務満足が高くなる傾向があることも発見される。もう1つの発見は,規模が 職務満足に与える影響は短在職グループよりも長在職グループの方が大きい, ということである。W要約と議論
分析の結果,タスク(技術)が構造に影響を与えるという仮説(4)は,概ね支106 彦根論叢 第225号 持できることが明らかになった。又予想と反して規模が組織構造に影響を与え ていないことも明らかになった。これらの事実は,組織構造の決定因として, 規模よりも技術の重要性を示唆するものであるが,規模の影響が少ないことの 理由としては2つの原因が考えられるであろう。1つは日本の大規模の組織に おいては構造の公式化,集権化を減少させ,複雑性を増加させるメカニズムを 人事政策,組織政策を通じて実現しているのかもしれないことである。もう1 つはそもそも組織構造の次元を公式化,集権化,複雑性でとらえること自体が の適切でないのかもしれないことである。 次に仮説(5)に関しては,支持されなかったといえよう。即ちタスクは2次元 共仮説と反対の方向に働いており,規模が最も強く,職務満足に影響していた のである。但し,より詳細な分析により,タスクの1次元のみに関して有意で はないものの,仮説を支持する方向を持つことが示された。このような結果の 原因としては次のような推論ができよう。まず規模に関しては,その増大がい わゆる「社格」に代表される,組織全体のイメージに対する満足を増加させ, それがタスクに対する満足にも影響を及ぼす,ということであろう。タスク に関しては,測定誤作も含めて考えると,タスクのルーチン性と職務満足とは 逆U字型の関係にある。即ち最適なルーチン性というものがあるのかもしれな い。
田 残された課題
今回の分析では,「技術決定論」仮説の検証にとって重要な変数である,生 産システムの自動化のレベルという変数を扱っていないことに加えて,分析対 象を管理者のみに限っていること,その管理者の認知データを彼の属するセク ションの代表値と見なしていること,経済的成果に関する変数を含めてないこ 27)例えば,Hull&Hage(1982)ではタスクの多様性と,インプットの規模との2次 元で組織を,伝統型,機械型,有機型,混合型の4つに分類している。加護野他(1983) では,オペレーション志向か.プPダクト志向かと,グループ・ダイナミクスか,ビ ュロクラティック・ダイナミクスか,という2次元で組織を4種類に分類している。と,回帰分析で必ずしも因果関係は明らかにならないこと,等々,多くの解決 すべき課題が残されている。しかしながら,たとえこれらの課題が克服された としても,更に,重要な問題が残る。1つは,何故,技術が組織構造あるいは 個人の行動,態度に影響を与えるのかということであり,もう1つは,それで は,技術はどういうプロセスで組織構造,あるいは個人に影響を与えるのか, という問題である。前者に関しては,Gerwin(1979)の様に,組織構造をイン プットをアウトプットに変換する管理技術と見なして,本来,構造と技術とは 関連するものだ,とする見方もあるが,やはり個人への影響をも均等に考慮す る理論が必要であろう。この意味で,情報プロセッシング・パラダイムは1つ の包括的な視座を与えてくれるものである。 後者の特に技術,タスクが個人に与える影響プロセスに関しては,最近,徐 々に研究がなされ,例えばBrousseau(1978)はタスク重要性とタスク完結性 の高い職務を遂行する個人を6年間に渡って調査し,その個人の志向,態度が 積極的なものに変化していくプロセスを報告している。又Mortimer&Lor− ence(1979)は自律性のあるタスクは個人の内在的人問志向の仕事価値感を強 めていくことを報告している。 今後はこれらの研究の様に経時的な実証に基づぎ,しかも,技術,タス久 組織構造,個人の間のダイナミックな関係を包括的に説明するような理論が開 発されなければならないであろう。 参 考 文 献 (1) Billings, R. S, Klimoski, R. J,, &r Breaugh, J. A, (1977) “The impact of a change in technology on job characteristics: A quasi−experiment” A. S. Q一 Vol・ 22. 318一一339. (2) Blauner, R,, (1964) Alietuatiore and .17reedom, Chicago: University of Chicago Press(佐藤慶幸監訳,『労働における疎外と自由』,新泉社,1971.) (3) Bonjean, C. M., & Grimes, M. D. (1970) “Bureaucracy and Alienation: A Dimensional Approach” Social Forces, Vol. 48. 365−373, (4) Brousseau, K. R. (1978) “Personality and job experience” O. B. & H. P. Vol. 28)加護野(1980)参照。
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