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菅原晴之

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Academic year: 2021

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(1)

一般的不均衡における政策効果

菅原晴之

目次 1はじめに 2.不均衡モデル

3.不均衡下における租税政策 4.不均衡下における貨幣政策 5.結びにかえて

1. は じ め に

ケインズ『一般理論』にもとづくマクロ理論は,経済がワルラシアンの意 味で不均街状態にあっても完全雇用状態に復帰せずに失業均衡に留まること を有効需要の理論によって説明する。しかし,こうした本来のマクロ経済学 は必ずしも経済主体の合理的行動から説明されていなかった。生産,交換,

取引という経済的現象は財・サービス,貨幣を媒介とする個別主体の関係に はかならず,したがって失業も個別主体間の取引を集計した結果として発生

しているのである。

そこで失業を均衡と見倣す限り,マクロ経済をワルラシアンによってミク ロ的に基礎づけることは均衡の定義自体に両理論の間に相異があるため,重 大な困難を伴うので,むしろわれわれは有効需要の原理をミクロ的に基礎づ

ける再決定・数量制約説に従うことにしたい。

従来の均衡分析による経済政策の効果については,公的部門の行動がミク ロ的にいかなる配分と分配をもたらすかについて一般均衡論の立場から解釈 されてきた。またマクロ面から,所得=支出モデルが雇用・産出および物価 に与える効果が議論されてきた。近年さかんに論じられているケインズ経済 学のミクロ的基礎づけは,このようなミクロおよびマクロの政策目標を整合

的に扱うことを可能にするものであると解釈することができよう。

(2)

このような方法において,概ね次のような前提を採用しているo

1 .  

自発的交換

2 .  

貨幣的交換

3 .  

非模索過程

4 .  

再決定

5 .  

ショート・サイドの原理

6 .   短期期待の実現

7 .  

完全競争

なお,貨幣賃金の硬直性は主体の合理的行動から説明されるべきことであ るが,本論文では前提としておくO また,貨幣の本質面では計算単位とし ての機能のみを強調し,第 2の前提である貨幣的交換の理論は単純化のため に捨象する。

このような数量制約説による再決定理論はパテインキン,クラウアー, イヨンフープットによって始められ,パローおよびグロスマンがこれを総合 化した。さらにその後,ベナシイ, ドレズ,マランボー,グラモン,ラロッ ク,根岸,ユネ等が精力的に研究しているD

また不均衡下における政策効果についてはマランボー,ディキシット,ヒ ノレデンプラント=ヒjレデンプラント等によって研究が試みられているが,効 果の符号を判定するだけでも多くのパラメータの具体的な数値を読みとって 計算しなければならない。

そこで以下で,われわれは従来マクロの目標とされていた完全雇用とイン フレ抑制を達成するための財政,金融政策の効果を単純化された仮定のもと でミクロ的に分析することを主題とする。

2 .  

不 均 衡 モ デ ル

われわれは消資財,労働,貨幣の三財からなる経済で,代表的企業と代表 的家計を想定する。

企業の生産関数を

(3)

yS=F (Ld ) 

とおくD ただし,

ys

は産出量,

L

dは労働需要とするo

消賀者(家計)の効用関数は,財の需要量を yd,貨幣の

i J 1 7

要呈を

M

,余

!

Lo‑LS( L S

は労働供給)として,単純化のために,

u= α1  lnYd +a

lnM 十 a 3l n  (Lo‑LS) 

というコブ=夕、、クラスタイプに代表させておく。

さて,貨幣の初期保有量を

Mo

,利潤の分配分をZとすれば予算制約は,

pYd+M

w(Lo‑LS)=Mo

7t

+ ωL

とおくことができるo

競争的家計の概念上の(制約されない)需要と供給は,条件付き最大化問 題を解くことによって,

Y.=~ 〆。

a

2

ρ 

L3=Lo-~ 笠ι

w

(1) 

(2)  となる。この財需要と労働供給に対応する技術的制約に従った財供給と労働 需要を

Y3 =F(L3 )

, 

L

2

=F‑

(Y

2)とおく。

同様に競争的企業の概念上の需給は次のようになる。

F ' ω =

( 3 )  

Y

1

=F  (L

1)  (4) 

τ

V ,  . ~~~. ,~''',._'-~ , 

以上から実質賃金(一一)と実質貨幣孜両(ーユ)の組合せは財市場お

p ‑ .  p 

よび労働市場の不均衡の状態は

4

迫り(均衡状態との組合せも含めれば

9

り)になる。

1.  Yd>Y"

, 

Ld<L" 

(スタグフレーション)

I I .   Yd<Y.

, 

Ld<L" 

(デフレーション)

m .   Yd>Y.

, 

Ld>L" 

(インフレーション〉

N.  Yd<Y"

, 

Ld>LB 

(4)

Ll=L2 

' P 加 一

1

ところで領域町では家計が両市場で制約を受けて, し か も 点 W を 通 る L2=La の単調増加の線がこの領域を二分する。この領域町ではいずれにお いても概念上の労働供給は実現しないが, L2 =La の右側では Ll>L2>La , 左側では Ll>La>L2 となっており,ショート・サイドの原理により前者で

は L=L2 ,後者では L=La となる

o

ただし , L は実現した労働取引量であ る。したがって再決定により,左側は領域 Eに,また右側は領域 Eに組込ま れる

o

3 .  

不均衡下における租税政策

次に財および労働に課税されるケースを想定しよう

o

したがって,本節で は間接税としての消費税と直接税としての所得税との組合せを政策パラメ ータとして,不均衡にある経済を最適状態にするための方法を捜すのであ る

o

単純化のために租税は家計が購入する財に支払う価格および受取る賃金の

(5)

みに賦課されると仮定しよう

o

そのとき課税前の価格および賃金を q = t + t , 

=

ω ‑ r とする。したがって競争的家計の概念上の需給は,

Y.=~ Mo 

a

J

+ t 

L3=Lo-~~o

a

w ‑r 

( 1 ' )   ( 2 ' )  

図 l

において財市場の需給均衡を示す L

1

= L2 に対して,消費税 t が及ぼ す効果を考察してみよう

o

Yl=Y2が 成 立 し て い る と き に

f

を 引 上 げ る と れ> Y2 となる。即ち Ll>L2が成立して均衡線にシフトすることが容易に 示される

o

同様に労働市場において需給が均衡しており r が引上げられると想定し よう

o

このとき Ll>L3が成立するので Ll=L3 の均衡線は左にシフトす る。また , L2 = L3 の均衡線についても t の上昇が右にシフトさせ r の上 昇が左にシフトさせることも容易に確かめることができる

o

w

一 戸

Ll=L3 

ρ 除 一

2

(6)

卸一

b a

p 約 一

3

領域 Iのスタグフレーションにおいて価格調整が不十分のまま経済がワ

ノレラス均衡点W~乙収束しない場合 r と t をともに引上げて現実の経済を

L

1

=L

2

Ll=L3 との新しい交点、 W' に一致させる乙とができる

o

領域 Eの デ フ レ の 状 態 に あ る と き を 引 下 げ r を引上げるとインフレ のない完全雇用が実現可能になる

D

領域

E

のインフレの世界においては,その対策がデフレと逆になる

o

領域 E および

E

においては企業および家計が各々一つの市場において制約 を受けて再決定を行なっている

o

例えば領域 I Iのデフレの世界では労働市場 で家計が制約を受けてより低い水準の雇用および生産が怨定されるが,生産 物市場で企業が制約を受けるのでさらに低い水準の雇用と生産が実現する。

ところが領域Nでは家計が両市場において制約を受けることはないが,泊賀

者は自らの収入でどれだけの財を購入できるかを知らず,またある一定額の

財を購入するにはどれだけの労働を提供すればよいかを知らない。この領域

は再決定により,デフレの領域X とYとに分割できるが,いずれのケースで

(7)

r とも引下げる必要があ もインフレのない完全雇用を実現するためにはん

3) 

る 。

第 l 表

y  E  E 

不均衡下における貨幣政策

4 .  

これと ρおよび、 ω との関係を考 次に

M

。を政策パラメータとするために,

えてみよう

o

財の貨幣価格

(p)

と貨幣賃金 ( ω 〉との組合せは前節と同様 同じ 4 通りの組合せ に財市場および労働市場の超過需要・超過供給により,

を示す乙とができる

D

第 4 図の各領域は第 l 図の領域に各々対応するものである。なお三つの均

90 4

L /  

︐ 

︐ 

く 〆

dF 

︐ ︐ 

︐ 

X  w 

I I   I  、 、

、 、

、 、 、

、 、

w

,  , 

,  , 

,  , 

,  , 

,  , 

,  , 

,  , 

,  , 

L2=L3  Y 

ρ 

4

(8)

強 I 線が交叉する点 W はワルラス均衡点である。

さて,初期貨幣保有量が変化した場合における均衡および不均衡状態に対 する効果を考察してみよう。いま, Mo が増加したものと仮定する。

Mo の増加以前に経済が Ll=L2 であれば,

Ll

は不変であるが, L2 は雇用 関数であり , Mo の増加関数であるから, Ll<L2 になる。 Ll=Ls の労働市場 均衡については, Ll=Ls が実現している助合, M 。の増加後には Ll>Ls と なる o L

2

は Mo の増加関数であるが L s は減少関数であるから, M 。の的力

JI

後には L2>Ls となる

O

Ll=L2 

Ll=L3 

ρ 

5

したがって,貨幣供給量調整を政策変数としても,ワノレラス均衡点が動き

うる範囲は点

W

を基準として L

1

=L2 および Ll=Ls の均衡線に固まれた北

東および南西の領域内である。しかも効用関数および生産関数の連続性,単

調性,逓減性等の w e l l ‑behavedness を仮定すれば均衡点の集合は第 5 図

において点

W

と点 W' とを通る一本の曲線にすぎない。不均衡状態にある

現実の経済が偶然この曲線上に存在しなければ,貨幣供給量を調節しても最

(9)

適点に到達することはできない。また,図から明らかであるように貨幣供給 量の調節ではスタグフレーションの対策として無意味であり,さらにデフレ およびインフレのケースでも領域 X および Y の状態にあれば,不均衡の解消 は不可能である。

5 .  

結びにかえて

以上において考察した結果より,不均衡下における政策効果に関して興味 ある事実が判明した。

第ーに租税政策がきわめて広範囲に適用可能であるのに対して,貨幣政策 は一部の限定的な方向にしか反応しない。しかし,本稿における租税の設定 に関して,利潤に課税されず,また租税はすべて家計に転嫁されている等の 非現実的な仮定に基づいて議論を進めてきた。完全競争 ω 仮定と整合化をは かるには,その転嫁される比率も需要と供給の弾力性に依存させるべきであ り,第 3 節の結論は過大評価の傾向があるかもしれない。

第二に,貨幣の機能についても価値の計算尺度以上の役割が与えられてい ない。即ち,クラウアーの「貨幣は財を買い,財は貨幣を買うが,財が財を 買うことはない」という貨幣経済の特性を説明しているとはいえない。まし て「貨幣は容易に財を買えるが,財は容易に貨幣を買えない」という命題を 説明する世界を対象とすることは困難であろう

o

しかし以上の欠点にもかかわらず,租税(補助金〉政策について通常のマ クロ理論と異なる結果を導くことができたことは無意味ではない。第一に,

インフレあるいはデフレといえども税率を一定の方向に変化させるとは限ら ず,同じ現象でも消費者が企業から制約を受けているか否かにより消費税ま たは所得税のいずれかの反応の方向が具なる。第二に消費税と所得税の増減 は必ずしも同じ符号ではなく,現実がいかなる領域に属するかによって決定 されるべきことが明らかになった。

(

1

)根岸(1

9 7 9 )

,第

7

章 藤 野 ( 1

9 7 8 )

(注勺〉 ベナジー(1

9 7 8 )

, 

5 2 2

ページ。

(10)

3)

期待を含めた多期聞に及ぷ一時的均衡の場合には,政府収支ノイランスが新た

4) 

な制約になるであろう。

4)

財政支出の効果については,マランボー(1

9 7 7 )を参照せよ。

[ 参 考 文 献 ]

1 )   Barro

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and H. S .  Grossman

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2 )  

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1 9 7 8 .  

1 1 )  

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1 9 8 0 .  

参照

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