氏 名・(本籍)
学位 の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件
学位論文題目 論文審査委員
斎 藤 順 雄 工 学 博 士
工博 甲 第 2 号
(岡山県)
昭和54年 6 月28日 学位規則第5条第1項該当
電子科学研究科 電子応用工学専攻 アモルファス半導体の電子的性質
(委員長)
教 授 三橋広二
教 授林 敏也 教 授山田祥二 教 授 山本達夫 教 授萩野 実 助教授安藤隆男 助教授藤安 洋
論 文 内 容 の 要 旨
第1部 アモルファス半導体スイッチング素子の動作機構と劣化
Te,As及びGeから成る三元系のアモルファス半導体Te70As20GelO(以下TAGと記す)にお けるしきい値型スイッチングの動作機構を調べるために・金属基板及び結晶半導体基板を用いてグラフ ァィト電極を点接触せしめた素子を作成した0金属基板の素子においては印加電圧の極性に関して双方 向に対称状のスイッチング特性が観測された0また一部の素子では時間とともに特性が劣化する場合も 観測された。(これに関しては後記する0)半導体基板の素子では基板半導体が縮退している場合と縮 退していない場合とで特性に相違がみられた0前者では双方向に対称状のスイッチング特性が観測され た。後者では非対称状の特性が観測された○また基板半導体とグラファイト電極とで構成される点接触
ダイオードの降伏電圧の値が,金属基板のスイッチング素子におけるしきい電圧より大きい場合は・二 方向でスイッチング作用が観測されないことが明らかになった0以上の諸特性を説明する電子的機構と モデルを提案した。まず縮退した結晶半導体を基板とした素子においてグラファイト電極に対して基板 半導体が逆方向となるバイアスの場合には,半導体側から電子(あるいは正孔)がTAGとの界面部分 でトンネル効果によって注入され,グラファイト電極側からは正孔(あるいは電子)が注入されるとい
ぅ所謂二重注入によってスイッチング幾樺を説明することができる0順方向の場合には,金属基板の素 子と同様の二重注入によって説明することができる0界面部分の降伏に必要な電圧は小さいために,ス
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イッチソゲ特性が対称伏になることを説明することができる。次に縮退した半導体を基板とした素子に おける逆バイアスの場合には,界面部分で雪崩破壊によって半導体側からキャリアが注入されて二重注 入が佳ずると考えられる。降伏に必要な電圧が金属基板の素子のしきい電圧よりも大きい場合には,二 重注入が起こらず従って一方向のみでスイッチング作用が年ずることを説明可能である。以上のモデル は,スイッチングの遅延時間特性も有効に説明できる。
金属基板の素子における劣化現象には3種類あることが明らかになり,それぞれに対してモデルを提 案した。第1のものはスイッチング動作の継続によって生ずるシュール勲によってTAGに相分離が生 ずることを考慮した結果,両電極から低抵抗のフィラメントが伸びていくモデルである。2番目のモデ ルは,ジュール勲によって相分離を経てTeを主成分とした極めて細い結晶状フィラメントが両電極間 を通して生成され,動作の継続とともにその本数が増加するというものである。3種類目の劣化におい ては,TAGの抵抗温度係数が正になった。この場合には下側電極とTAGとが共晶して金属的組成に 変化したと考えられる。
第2部 アモルファスGeにおける不純物添加効果
蒸着法によって作成されるアモルファスGe(以下a−Geと記す)へのGaあるいはSbの添加効 果を,直流導電率,熱電能及びトンネル分光分析によって調べた。一般にa−Geの性質は蒸着条件,
特に真空度及び蒸着速度によって大きく変化する。その理由はVOid及びそれに伴うdangling bond と酸素との結合に困るものであると考えられる。これらの減少を計るために適当な条件が選ばれた。
まず不純物が添加されないa−Geに関しては次のことが明らかになった。即ち,直流導電率の温度 依存性から求められるフェルミレベル近傍の局在状態密度は低い値になった。また熱電能及びトンネル 分光分析の結果から伝導の型はn形であることが明らかになった。これらの結果はグロー放電分解法に よって作成される良質なa−Geの特性と類似している。従って蒸着法によっても比較的良質なa−
Ge を作成可能であることが明らかになった。
次にSbが添加されたa−Geにおいては,以下の事項が明らかになった。まず直流導電率の温度依 存性から求められる活性化エネルギーの値は,添加量の増加とともに減少し,フェルミ レベル近傍の局 在状態密度は増加した。次に,熱電能及びトンネル分光分析の結果から,伝導の型はSbの添加によっ てもn形のままに保存され,移動度ギャップは添加量とともに減少してフェルミレベルが相対的に伝導 帯寄りに移動していくことが明らかになった。又,熱電能及びトソネル分光分析から求められる活性化 ェネルギーは直流導電率から求められるそれに一致した。以上の諸結果を考慮してエネルギー状態密度 のモデルを提案した。
最後にGaが添加されたa−Geにおいては,添加量の増加とともに伝導の型がn形からP形に転換 することが明らかになった。このことは移動度ギャップ中にアクセブタ的局在状態が形成され,従って ドーピソグ効果があることを示唆している。添加量の増加とともに移動度ギャップは減少し,相対的に フェルミレベルは価電子帯に移動することが明らかになった。以上の諸結果によって状態密度のモデル を提案した。