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ソ連時代と市場経済移行によるキルギス遊牧民共同体の変容

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2020年129

ソ連時代と市場経済移行によるキルギス遊牧民共同体の変容

―イシククリ州東部ロシア人入植村の家畜共同管理システムの事例より―

共生基盤学専攻 共生農業資源経済学講座 地域連携経済学 星野 愛花里

1.はじめに

中央アジアの遊牧地帯は

19

世紀後半のロシア帝国の侵入から、ソ連時代の定住化・集団化、そ してソ連崩壊後の市場経済化といった大きな変化をここ百年ほどで経験してきた。遊牧から定住、

そして社会主義から資本主義、という生活様式・生産様式の変化に関しては今まで多くの研究がな されてきたが、現在の農村構造を明らかにする実証的な研究はほとんどない。中央アジア

5

カ国の 中でも急進的な民営化を行い小規模な独立自営農家を生み出したキルギスでは、農業発展が望まれ ているが、持続可能な開発のためには農村への理解がまずは必要である。

本論では、キルギス共和国イシククリ州の東部に位置するノボボズネセノフカ村を調査対象とし て、このような社会変化の中で彼らの農村の共同体がどのように変わってきたのかを明らかにする。

具体的には、元遊牧民キルギス人にとって重要な意味を成す家畜飼養に着目し、遊牧生活から定住 化・集団化、そしてソ連崩壊後の市場経済化という主に2つの転機をどのように経験して現在の姿 につながるのかを、放牧の共助組織「ゲズー」と委託システム「マルチ」と「バダ」の成立過程と 機能面から考察する。

2.方法

調査対象はイシククリ州東部のノボボズネセノフカ村である。

2019

3~12

月の現地滞在中に行 った参与観察とキルギス語による聞き取り調査の結果を用いて分析を行った。

3.結果と考察

GDP

のおよそ

3

割を占めるほどキルギスでは出稼ぎが多く、家族経営体の行う農業・牧畜の多く

は自給的であることが分かった。しかし一方では、市場経済化の中で経営分化も起きており、家畜 飼養に関わる人間関係は固定的ではないものの、 「ゲズー」 、 「マルチ」 、 「バダ」の3つの家畜共同管 理システムは形を変えながら存在し続けていた。特に、ロシア人入植によって創設され、途中から ロシア人の流出とキルギス人の流入でできてきたノボボズネセノフカ村では、近隣住民が必ずしも 親族ではないが、同じようにシステムが動いていることから、遊牧時代とシステムは異なっている が、家畜飼養に対するキルギス人の共通認識があると考えられる。

4.まとめ

19

世紀後半から始まった定住化・集団化の下、自留家畜飼養の分業のため家畜共同管理システム

が生まれ、市場経済化の下では個々の経営を支えとなってきたといえる。つまり、共同体の生産の

面において、遊牧時代に支配的であった同族的な共助が、ソ連時代には影を薄くした代わりに地理

的な分節が現れ、現在はそれを活かして独立自営農家が存在していると結論付けられる。遊牧時代

は自給的であった生活が、ソ連時代には分業体制下に組み込まれ、現在再び自給経済に戻ってはい

るが、遊牧時代と同じ主に親族関係を基にしたシステムで家畜飼養をしているのではなく、ソ連時

代の地理的区分による分業のシステムによって経営体の中で農業と牧畜を両立させているのであ

る。しかし前提には遊牧民の家畜文化が存在している。

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