学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2015 年 4 月 22 日(水)
報告番号:甲 第 1660 号 氏名:桝野 龍平
論文審査
担当者 主査 教授 小田原 雅人 印
副査 教授 長尾 俊孝 印
副査 教授 橘 政昭 印 審査論文の題目: Utility of chemical shift-MRI for anterior mediastinal mature teratoma
(前縦隔成熟奇形腫に対する Chemical shift-MRI の有用性)
著 者:Ryuhei Masuno, Soichi Akata, Jinho Park, Jun Matsubayashi, Norihiko Ikeda, Kazuhiro Saito, Koichi Tokuuye
掲載誌:Journal of Tokyo Medical University (in press, 2015)
論文要旨:奇形腫の殆どは良性だが稀に悪性転化する。良性と悪性のいずれも破裂や隣接した縦隔や肺、
横隔膜、心膜などとの瘻孔を形成することがあり、手術に際しては周囲との癒着が強固の事が多い。し たがって、奇形腫を他の前縦隔腫瘍と鑑別することは臨床上重要である。本研究では従来の CT や MRI で 脂肪や石灰化を認めない、前縦隔の嚢胞状奇形腫に対し、chemical shift-MRI を用いてわずかな脂肪成 分を検出することにより診断できるか否かを検証した。東京医大病院にて 2005 年 11 月から 2012 年 8 月 までの間に手術された 28 例(29 病変)の前縦隔嚢胞状腫瘤のうち、CT・MRI・chemical shift-MRI を撮影 されていたものを対象とした。MRI 検査は 1.5-T system、呼吸停止下の dual-echo sequence で撮影され、
繰り返し時間 (TR) は 120-138 msec、エコー時間 (TE) は 2.38 (opposed-phase)と 4.76 (in-phase) で ある。腫瘍の chemical shift-MRI における信号強度を測定し、成熟奇形腫とそれ以外の嚢胞とで統計学 的な有意差を判定した。2 例の奇形種が chemical shift-MRI において信号の変化が見られ、その他の奇 形種および奇形種以外の病変には信号の変化は見られなかった。Mann-Whitney U-test で成熟奇形腫と それ以外の嚢胞性病変とで信号強度の指標において統計学的有意差が確認された(P=0.039, <0.05) 。 前縦隔嚢胞性腫瘍で、CT や従来の MRI にて脂肪や石灰化を検出できなかったとしても、成熟奇形腫とそ の他の腫瘍の鑑別をするのに chemical shift-MR imaging は有用である。
審査過程:
1. 本研究の臨床的背景について具体的な説明がなされ、本研究の目的、意義も明確に述べられた。
2. 対象症例、用いた解析方法、研究結果に基づいた考察、結論についても適切な説明がなされた。
3. 得られた結果に関する特異度、感度、偽陽性、偽陰性の可能性について適切に説明がなされた。
4. SII のカットオフ値を20%に設定した根拠に関する質問に適切に回答できた
5. 基準設定の参考にした副腎腺腫のマイクロファット含有率と奇形腫との相違点についての質問に適 切に回答できた。
価値判定:本研究結果は、しばしば鑑別診断が困難な一部の前縦隔成熟奇形腫に対し、chemical shift-MRI を用いて解析することにより鑑別診断が可能となる症例があることを示唆している。本研究 結果から前縦隔腫瘍の、より正確な術前診断が可能となり、これまで術前診断が困難であった症例に適 切な手術を含む治療が施行される可能性が高くなると考えられる。今後の手術成績、治療成績に大きく 寄与する可能性がある結果であり、当該領域の今後の診療に大きく寄与するものと考えられる。よって 学位論文としての価値を認める。