長野工業高等専門学校紀要第
36号
(2002) 15超砥粒フィルムによる砥石の製作
宮 尾 芳 一 芳 賀 武 青 木 博 夫
The Fabrication of Grinding Wheel using Super Grain Films Yoshikazu MIYAO Takeshi HAGA and Hiroo AOKI
Recentlynewmaterials,whichhavehigh hardnesB,arebeingdeveloped.Sincethesematerials arenoteasytobecut,SuperabrasivegrainsSuchaSdiamondgrainorCBNgrainarellSed
t
ogrind.Howeverthesetypesofgrainareexpensive,80theyaremainlyusedforhigh precisiongrinding.
W
h enthedemandedprecisioniSnotSOhigh forhigh hardneSSmaterials,theeasiergrindingis neceSSary.Soweproposenew grindingwheelthatismadebystickingdiamondfilm onthedisc. Thenweexaminedproperties0fthegrindingwheelbygrindinghigh hardnesSmaterials.
キーワー ド:超砥粒,ダイヤモン ド砥粒,ダイヤモ ン ドフイル ム,研削
1
.はじめに
近年,セラミックス等の新素材の開発が活発である.
これ らの新素材には高硬度,高耐熱性な ど優れた特性 をもつ反面,高脆性,難削性などで 日的形状にするた めの加工が容易ではない材料が多い.そ こで新素材の 特性を失 うことな く高能率,高精度に加 工することが 要求 され る.高脆性,高硬度の材料を加工する主な方 法は研削であ り,それ らの研削には超砥粒 と呼ばれる 非鉄用のダイヤモン ド砥粒や鉄系用のcBN(立方晶窒 化ホ ウ素)砥粒 を使わ ざるを得ない 1).ダイヤモン ド 砥粒は高価なため,ダイヤモン ド砥粒砥石の砥石層は 薄いか,場合によっては単層の場合 もある.また,面 粗 さに対する要求 も高ま り,細かな砥粒による研削が 必要 となってきた.砥粒径が細かい と砥石は研削屑に よる目詰ま りを起 こし研削量が減少する.そこで,加 工中に電解 ドレッシング (研削屑 を除去すること)を 行いなが らセ ラ ミックス等 を鏡面加 工できるELID 研削法が開発 された2)3).この方法は加工能率が高く, 高精度加工ができるが,高価な専用装置を必要 とする.
このよ うな背景の中で,高硬度な材料に対 して加工 の要求精度があま り高 くない場合,簡便な方法で研削 する研削法が必要 となる.そこで筆者 らはラッピング
*機械工学科教授 辛*電子制御工学科教授
*辛*電気工学科教授
原稿受付
2002年
5月
17日
用 に開発 されたダイヤモ ン ドフイル ムをホイール に 貼 り付 け,簡便に表面層が レジノイ ドダイヤモン ド砥 石 になる砥石の製作法を提案する.
また,本手法によ り製作 した砥石により高硬度であ る超硬材を研削 して,その研削性能を調べた.
2.
ダイヤモン ドラッピングフイルムの特性
図
1
4)にラッピングフイルムの製造方法例を示す.従来のラッピングフイルムは図中(Dに示す よ うに静 電法または重力落下法 によ り基材 にコーテ ィング し た ものである.この方法では基材表面にだけに しか砥 粒層がないため,磨耗 し砥粒が無 くなると使用できな
くなる.
今回の砥石の製作 には市販 されているダイヤモ ン ド フイルム (商品名ポ リモン ド:新 日産ダイヤモ ン ド工 業株式会社製)を使用 した.これは図中③に示す よ う にポ リイ ミ ド樹脂 とダイヤモ ン ド砥粒 を混練 してフ イルム状に したものである.従来か らの製造法①,② に対 してこのフイル ムは次のような利点を有す る.
・静電法で製作 したもの と異な り,フイルムの厚 さ すべてに砥粒が点在 している.
・構造的には レジノイ ド砥石に相当 し,フイル ムが 厚 くなれば寿命が長 くなる.
・砥粒摩耗 とマ トリクスであるポ リア ミ ド樹脂 との 摩耗バ ランスがよく,自生作用 もある.
・静電法では一般的に製作できない#1200よ り細か
16
宮尾芳‑ ・芳賀 武 ・ト ー J ' ・ 木博夫
.
q 硬 化斤三権有 刺 T イヤ モ ン ド砥 粒 外可Pj
任
稚 苗剤
エ ステル 蔓り
Y イヤ モ ン ド根粒
.
T.'lJイ ミ ド? トりクス
① 静電または重力落下 コーティング形 ② ローラコーテ ィング形
③混練一体成形形 図 1 ラッピングフイルムの製造方汰
な砥粒 で も使 用できる.
・ポ リイ ミ ド樹脂 との混練 のためフ イル ムの引張強 度 は
140MPaと高 い.
図
2は今 回使 用 したダイ ヤモ ン ドフ イル ム表 面の 走査電子顕微鏡
(SE帆)写実 で ある.
A図左側 は ドレ
ッシング軌 右側 はサ ン ドペーパーで数 回擦 ることに ょる ドレシング後の フイル ム表面 を示す,また
,B図 は ドレシング後 のフ イル ム表面の拡大写真 であ る・ド
レッシングに よ り砥粒 の切 れ 刃がポ リイ ミ ド樹脂 面 よ り露出 され るのが観察でき る.
B図 は砥石突 き出 し丑が少ないが,市販の超砥粒砥石において も高価 な 砥粒 の保 持力 を高 めるため砥石突 き出 し丑 が少 な く して使用す ることが多い ( 5) .ダイヤモ ン ドは硬いの で普通のサ ン ドペーパー ( 砥粒 は炭化珪素が多い)で 擦 って もダイ ヤモ ン ド砥粒 は研 磨 されず結合剤 のみ 研磨 され る.すなわち,サ ン ドペーパー を擦 ることで
ドレッシングが可能 であることも分 か った.
3.砥石の製作方法 3‑ 1
台金の真円度向上
一般的に硬 く,砥粒屑の少 ない超砥粒砥石ではあま りツル‑イ ング (ドレッサに よ り砥石形状 を整 える) は行 われない.本手法で製作 す る砥石 もツル‑イ ング ができない.そのためフイル ムの貼 り付 ける前 の台金 の真 円度 を高めることは重要 となる,そ こで,まず台 金 とな るアル ミの円盤 ( ホ イール)を平面研削用 フラ ンジで固定 し,平面研削盤 に取 り付 けた.一九 旋盤 用バイ トを電磁 チ ャ ックで平面研 削盤 テー ブル の上 に固定 し.ドレッシング工程 と同様 な方法でアル ミの 円盤 の端面 を切 削 し,ホ イールの円盤 ‑の取付等 に よ る誤差分 を切削す ることで,使用時にお ける台金 の真 円度 を向上 させ た.
3‑2
フイルム貼付法
ノイル ムの i & 材 ‑の接 着 方法 として表
1の よ うに 徽 r rH.I l l ‑ 1 L 庄 捕岬 テープ,超 強力粘着テー プの 3
種類&・
T , 恥 t I
)いて 刊 は 験椀 で比較 した・◎は最適 で
100〟m
図2
フイルム表面の
SEM写其 ( 砥
粒 #200)表 1 接着方法の比較
接藩力 耐久 性
厚さ均一性 簡便性 接 着
剤◎ ◎ ◎
△×
両面粘着テープ
○ ○ ○◎ ◎
両面粘君テープ・ コクヨ両面紙粘肴テープ
T‑240超強力粘着テープ: 住友スリーエム( 耐水用. 耐熱用)
超 砥 粒 フ イル ムに よ る砥 石 の 製 作
あ り,以下○,△,×の順である.これ より超強力粘 着テー プを使用す ることに した.
研削において,冷却等 の目的でクー ラン ト液 を使用 す ることが多いので,クーラン ト液を使用 した予備実 験 をお こなった ら,フイルムの端か ら剥離が発生 した そ こで図3に示す よ うに台金 をフライス加 工 し凹部 を作成 した,また,ホ ィ‑ル回転時の動的バ ランスを とるため180度反対側にも同 じ加 工をした.その部分 にフイルム端が くるよ うにフイル ムを接着 した ら,フ イル ムの剥離がほ とん ど無 くなった.
図4は本手法 によ りアル ミの台金上にフ イル ムを 貼 り付 け製作 した砥石の写真である.中央部がフイル ム端の部分である.
4.
本手法による砥石の特徴
本手法で製作 した砥石は次の特徴 が考 え られ る.・旋盤加工に使われ る/くイ トのスローア ウェイチ ッ プ と同様 に簡便 に フイル ムが損 解 した ら,刃部
(シー ト)のみの交換が簡単にできる.
・低 コス トで砥石 を製作できる.
・電着砥石では製作が難 しい,微細砥粒の砥石の製 作が可能である.
・市販では購入 しに くい細かな粒径の砥石が作れ る
・現時点では,膜厚 と砥粒径 との関係で#LO0位以下 の粗い砥石ができない.
・粘着テープの弾性の影響がある.そのため.仕上 げ研 削ではスパー クア ウ トが必 噂である.
5
・結果 と考察
5‑ 1 フイルムの耐久性雑 削材 と して知 られ る雌 RT胡 (lL[何フライ ス用 SNCN120308)を研 削代1
/く
ス 10FJJnで151TW (1500パ ス)研削の実験 を行 った.この とき研削 励) J
朴を用い 研削抵抗 を測定 した.図5は累積研 削代 と接線方向の研削
紙)
/.Lの朋係 を 示す.これ よ り研削回数の増加 に伴 い研r H 川も ) / L L L わず
かに増加 す るのみで急激 な増加 は生 じない ‑とが分 かった,これは研削回数が増加 して も定常的に研nfJ
が 行われていることを示す.また,15JTun研削 して も‑/ イルムの破損は無かった.加工表面 は十点平均机 さで 0.3JJmであった.5‑2 研削回数の増加に対す る研削抵抗の変化 図6は切 り込み を一定 (10JLm)で超硬材 を研削 し た時の1回転の研削抵抗値 を示す .これ より1回 目の 研 削抵抗 は極 めて少な く7‑9回の研削で研 削抵抗 が一定 となることが分かった.これ は初期の段階で粘
17
図
3
フイルムの接着方法屈 4 本 手
法に よ り魁
作 し た 砥石500 100
0
Ⅰ500累横研削代
(〟m )
図 5 フイルムの耐久試験18
宮尾芳一 ・芳賀 武 ・青木博夫
着テープが弾性変形 し研削抵抗が少な く,その後弾性 変形の限界に達 し研削抵抗がほぼ一定 となった.すな わち,研削抵抗が一定の段階では研削代 と同 じ101Lm が研削 されていることになる.また,研削代を無 くし ても研削抵抗が急速に減少 しなかった.いわゆるスパ ークア ウ ト現象は大きく見 られた.これは初期の粘着 テープの弾性変形が徐々に戻 るためと考え られ る.
図6の下部に,粘着テープが初期に弾性変形を開始 し.定常的になるまでの状態を模式的に示 した.
5‑3 研削代増加に対する研削抵抗の変化 図7は研削代を1パス2JJmか ら40〃皿に変えて研 削を行った場合の研削抵抗を示す.このよ うに研削代 (研削面積 S) と研削抵抗 Rはほぼ比例 し比研削抵抗 (R/S)は一定であった.研削代1パス40pJnでも急 激な研削抵抗の変化が無いことは,正常に研削できて いることを示す.
5‑4 形状変化‑の試み
本手法で総形砥石 を製作す るためには小 さなフイ ルムの接着により砥石を製作す る必要がある.そこで 予備実験 として,フイルムの部分的な接着による研削 が可能であるかを調べた.図8に示す ようにフイルム を台金全周でな く,90度おきに2枚すなわち砥石全 周面の半分に接着 して砥石 を製作 し研削実験 を行 っ た.この形状でも研削 され ることが分かった.これ ら は,総形砥石の可能性 を示唆するとともに,破損 した 部分だけのフイルムを交換す ることも可能であ り,よ りランニングコス トが低 くできることが分かった.
6
.おわりに
ダイヤモ ン ドフイルムを砥石台金 に接着す る方法 で製作する砥石を提案 し,その特性を調べた.その結 果,フイルムは簡便に接着,交換ができることが分か ったのでコス トの削減が期待できる.また,超硬材に 対 しても研削代 1パス4011mで研削できた. しか し, 総計砥石の製作 しにくい等の欠点 もある.
今後は種々の条件による実験 をお こない,本手法に よる砥石の完成度を高めたい.また,本手法で簡単に 細かな砥粒による砥石 も製作できるので,微小砥粒砥 石 に対 して必要になる ドレシングの方法な ども検討
したい.
参考文献
1)例えば.海野邦昭 :cBN・ダイヤモン ドホイール の使い方,工業調査会,
2)
大森整,中川威雄 :セラ ミックの鏡面研削,F C
レポー ト7No.llP429‑p436,1989
胡2
(N)は蛍rlH缶
図
6
製作した砥石の研削抵抗特性2
0
研削代(〟m) 図
7 比研削抵抗40
図
8 フイルムの部分的接着の砥石3)
林昭他 :次世代の超精密加工技術 (上巻)超精密 平 面 と面粗 さ,産業技術サ ー ビスセ ンター, p245‑p276,19934)
柴 田順二,小林裕 :ファインセラ ミックスのラッ ピングおる研磨加工,機械 と工具1989年2月号 p70‑p755