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〈論 説 〉
水資源の管理 と配分 に関す る 基礎理論 の検討
一 水 利 権 の法 的性 質 を 中心 と して 一
宮 嫡 淳
目 次 1は じめ に 2公 水 私水 区分 論 (1)公 水 と私水
(2)判 例 にお け る公 水 私水 区分 論 (3)水 利 権 の本 質 的 属性 3河 川 法2条2項 の 解 釈
(1)旧 法3条 お よ び現 行 法2条2項 の立 法 趣 旨 (2)流 水 の 特 定性
(3)河 川 の流 水 の性 質 4水 利権 の 法 的性 質 (1)流 水 地 役 権
(2)慣 習上 の地 役権 の成 否 (3)地 役権 構 成 の検 討 5む す び にか えて
1は じめ に
わ が 国 の 水 資 源 は 、 地 域 的 に も季 節 的 に も偏 在 す る点 に お い て 他 の資 源 とは 違 っ た性 質 を有 して い る。 と くに最 近 で は 、 水 資 源 の 循 環 性 や 有 限 性 が 強 調 さ れ 、 そ の 保 護 を 求 め る動 きが 世 界 的潮 流 とな っ て きて い る。
な か で も、 急 激 な 気 候 変 動 、 い わ ゆ る地 球 温 暖 化 現 象 に よ る水 資 源 へ の 影 響 が 懸 念 され 、 渇 水 リス ク や水 質 に係 わ る リス ク が 高 ま る危 険性 等 が 指摘 され て
り
い る。 そ の 他 に も、 集 中豪 雨 に よ る 災 害 や 都 市 型 水 害 の 発 生 、 有 害 物 質 に よ る
106
水 質汚濁(廃 棄物処理施設 の操業 に伴 う地下水汚 染等)、大規模 地震等の災害 時
z)
に お け る水 の確 保 な ど、水 資 源 を め ぐる 問題 は多 岐 にわ た り、 現 代 社 会 が 直 面 す る課 題 と して 認 識 さ れ て い る 。
の
日本 の 水 資 源 の 利 用 は 、 歴 史 的 に 農 業 水 利 を 中心 に発 達 して きた 。 地 域 慣 行 に依 拠 した慣 行 水 利 権 に基 づ く農 業 水 利 は 、1960年 代 の 高 度 経 済 成 長 に よ り需 要 が増 加 す る都 市 用 水 に そ の 余 剰 水 を 配 分 す べ き とい う議 論 へ の 対 応 に迫 られ
4)
た 。 そ の 後 、 経 済 成 長 の終 焉 と と もに 農 業 用 水 と都 市 用 水 の 緊 張 関 係 は幾 分 緩 和 さ れ る こ とに は な っ た が 、 近 時 、 自然 環 境 保 護 の 意 識 が 高 ま り環 境 目的 に よ る水 利 用 の 要 請 が加 わ っ て きて い る。 この よ うに 、 水 資 源 の 利 用 を め ぐる問 題 は、 農 業 用 水 と都 市用 水 との 対 立 か ら、 水 資 源 を い か に保 全 し、 か つ 多 様 な 目
らラ
的 の た め に 、 いか に 配 分 す るか と い う問題 に変 容 して き て い る。
積 極 的 な 水 資 源 開発 が 見 直 され て い る現 今 で は、 水 利 用 とい う視 点 か ら は、
限 られ た水 資 源 を い か に有 効 に 利用 す る の か とい う問題 が 、 よ り一 層 、 顕 在 化 して くる。 地域 的 な差 は あ る もの の 、 概 ね 河 川 水 の ほ とん どが既 存 の水 利 使 用 に よ っ て網 羅 され て い る とい っ て よ い現 状 に お いて 、水 の 有 効 利 用 に つ い て 考
G)
察 す る こ とは、 水 資 源 を い か に適 正 に配 分 す るか とい う課 題 へ の 挑 戦 で もあ る。
この こ とを 法 的 側 面 か ら捉 え る と、 水 利 権 の譲 渡 を容 認 す る の か 否 か 、 す る と した場 合 い か な る条 件 の も とで 譲 渡 を認 め る か とい う問 題 に収 敏 され よ う。 まハ
た、 水 資 源 の管 理 とい う視 座 か らは 、水 の 統 合 的 ・一 元 的 管 理 を進 め る の か 、 規 制 緩 和 に よ る市場 原 理 の 導 入 で 水 利権 の 流 動 化 を図 る の か 、 とい う問 題 と し て 表 れ て くる。
本 稿 は 、 限 りあ る水 資 源 を い か に保 全 ・利 用 す るの か とい う問 題 意 識 に基 づ き、 水 資 源 の 管 理 お よ び配 分 の あ り方 を 考 え る た め の 基 礎 的 な 法 理 論 を考 察 す る素 材 と して 、 水 利 権 の 法 的性 質 につ い て 明 ら か に す る こ と を 目 的 とす る。 具 体 的 に は、 は じ め に 、 公 水 私 水 区 分 論 を検 討 す る こ とに よ り、 水 の性 質 決 定 論 に 依 拠 しな い 水 利 権 の 本 質 的属 性 を考 究 す る。 そ して 、 河 川 の 流 水 に 対 して私 権 を 排 除 した 河 川 法2条2項 の実 質 的 根 拠 で あ る流 水 の 性 質 に つ い て考 察 した うえ で 、 水 利権 の 地 役 権 構 成 を検 討 し、 水 利 権 の 法 的 性 質 に っ い て 究 明 す る。
水 資 源 の 管理 と配 分 に 関 す る基礎 理 論 の 検討 ion
2公 水 私 水 区 分論
(1)公 水 と私 水
水 利 権 は、 水 利 使 用 権 、流 水 使 用 権 、 流 水 占用 権 、 公 水 使 用 権 、 用 水 権 等 、 様 々 な 呼 称 で 表 現 され て い る。 こ の よ うな 多 様 な 表 現 形 式 が 存 在 す る理 由 は 、 水 利 権 が 社 会 に お い て 歴 史 的 背 景 を もち つ つ 形 成 され て きた権 利 で あ り、 現 代 社 会 の 法 体 系 の 中 に 位 置 づ け られ た制 定 法 に よ っ て 定 義 さ れ た 権 利 で は な い 点 に求 め られ る。 また 、 名 称 の 多 様 性 の み な らず 、 水 利 権 とい う用 語 が もつ 意 味
おジ
内容 も多 義 で あ る。
判 例 に お い て も、 水 利 権 は上 述 の よ う な名 称 を も っ て表 され て きた が 、 そ れ らの な か で も公 水 使 用 権 と説 示 さ れ る こ とが 少 な くな い。 また 、 学 説 お よ び 実 務 に お い て も、 公 水 を使 用 す る権 利 が 水 利 権 で あ る と解 す る立 場 が 一 般 的 で あ
の
る。 この よ うな 見 解 に従 う な らば 、 公 水 で は な い 水 、 す な わ ち私 水 につ い て は 水 利 権 が 成 立 す る余 地 は な い の で あ ろ うか 。 も し、 公 水 の み が 水 利 権 の 対 象 と な るの な らば 、 水 利 権 の 成 立 に 関 して は水 の性 質 決 定 が 規 定 的 な 意 味 を もっ こ とに な る。 つ ま り、 水 の 性 質 が公 水 と判 断 され る な らば 、 土 地 所 有 権 とは切 離 され た 水 利 権 が 成 立 し、 私 水 と解 され る な らば そ の水 の 利 用 権 限 は 土 地 所 有 権 の 効 力 に包 摂 され る の で あ る。 この よ うに水 を公 水 と私 水 に 区分 し、 そ の 区 分 に よ っ て水 利 権 の 成 否 を 判 断 す る理 論 的構 造 は妥 当 な もの で あ ろ うか 。
水 利 権 に つ い て 公 水 を使 用 す る権 利 で あ る と解 した場 合 、 こ こで い う公 水 と は、 い っ た い ど の よ うな 水 で あ ろ うか 。 大 別 す る と2つ の 学 説 に 分 け られ る。
第1は 、 公 水 とは、 公 物 た る水 で あ っ て 、 直 接 に公 共 の 目 的 に供 せ られ 、 公 法
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に よ っ て 支 配 され る水 で あ る とす る見 解 で あ り、 第2は 、 何 人 か の 私 有 に 属 し
ロけ
な い 水 はす べ て公 水 で あ る と解 す る説 で あ る。 両 者 の公 水 概 念 の ア プ ロ ー チ は 、 明 らか に相 違 す る。 公 物 につ い て 、 国 ま た は 公 共 団体 等 の 行 政 主 体 に よ り直 接 に公 の 目的 の た め に供 され る個 々 の有 体 物 と解 す るな ら ば、 前 説 は、 公 水 を公 共 の 目 的 に 供 さ れ る水 と捉 え て い る こ とに な る。 これ に対 して 、 後 説 は 、 公 水
を私 有 に 属 す る私 水 で は な い水 と解 して お り、 私 人 の 支 配 が 及 ぶ か 否 か とい う 私 的 所 有 の 視 点 か ら公 水 を定 義 して い る。 公 水 と私 水 の 区別 に つ い て 、 前 説 は 公 共 の 目的 に供 さ れ るか 否 か を基 準 と し、 後 説 は 私 的 支 配 に服 す る か否 か を基
ios
準 と して い るの で あ る。 こ れ らの 判 断基 準 につ き、 前 者 は水 利 用 の 目的 に、 後 者 は水 の 所 有 関 係 に焦 点 を あ て て い る こ とか ら、 目的 に 関 す る議 論 と所 有 関 係
13)
に 関 す る そ れ とを峻 別 す べ き で あ る との批 判 が な され て い る。
そ も そ も公 水 私 水 の 区 別 は必 要 な の で あ ろ うか 。 水 利 権 に つ い て公 水 を使 用 す る権 利 と解 す る な らば 、 両 者 の 区 別 は 、水 利 権 の 対 象 とな る水 を判 断 す る に つ き、 規 定 的 な 役 割 を 果 た す こ と に な る。 公 水 の み が水 利 権 の 客 体 とな るか ら で あ る。
(2)判 例 に お け る公 水 私 水 区 分 論
公 水 私 水 の 区 分 は、 古 くは ロ ー マ 法 に遡 り、 その 流 れ を汲 ん だ 大 陸 法 系 の 諸
14)
国 に も継 受 さ れ 、 わ が 国 もか か る区 分 を肯 定 して き た。 判 例 に お い て も、 伝 統 的 に公 水 私 水 の 分 類 を認 め て き た とい っ て よい 。 判 例 は 、 公 水 に つ い て 「公 共 の 利 益 」 や 「公 共 の 利 害 」 に影 響 を 与 え る流 水 と解 釈 す る傾 向 に あ る。 た と え ば、 東 京 地 判 昭36・10・24下 民集12巻10号2519頁 は 、 「一 般 に流 水 が 公 水 で あ るか 私 水 で あ るか の 区 別 は、 特 定 の 私 人 に 流 水 の 完 全 な排 他 的 支 配 を許 して も、
公 共 の 利 害 に影 響 す る と こ ろが な い か ど うか 、 す な わ ち流 水 利 用 の 経 済 的社 会 的 価 値 と治 水 との 両 面 か らみ て 私 人 に 排 他 的 支 配 を 許 す こ とが 公 共 の 利 害 に影
IS)
響 しな い か ど うか に よつ て 決 め るべ きで あ る」 と判 示 す る。 また 、東 京 地 判 昭 37・ll・15下 民 集13巻ll号2322頁 も、 「元 来 自然 河 川 は公 共 の 利 害 に対 して極 め て 影 響 の 深 い もの で あ る 」 と して 、公 共 の 利 害 へ の 影 響 が 極 め て大 き い こ と を理 由 に 、 自然 河 川 め 流 水 を 公 水 と解 して い る。 さ らに 、玉 川 上 水 の 流 水 に つ い て 言 及 した 東 京 高 判 昭42・7・25下 民 集18巻7=8号822頁 は 、 「そ の 利 用 、 治 水 の面 か ら公 共 の 利 害 に著 しい影 響 を もつ 流 水 で あ る と認 め られ る」 こ とを 根 拠 に公 水 と判 断 した 。 この よ うな裁 判 例 の 集 積 の 後 に 出現 した 新 潟 地 長 岡支 判 昭44・9・22判 時603号69頁 は、 公 共 の 利 害 に影 響 を与 え る流 水 を 公 水 と解 釈 す る前 提 にた ち 、 自然 河 川 は 公 共 の利 害 に影 響 を 及 ぼ す こ とが 通 常 で あ る か ら、 「自 然 の流 水 はそ の 多 少 に拘 らず原 則 と して これ を公 水 とみ るべ き」 で あ る と論 及 した と考 え られ る。
一 方、流 水 の 性 質 決 定 を公 共 の 利 益 の判 断 基 準 の み で 決 め るの で は な く、 水 路 につ き相 当 の 水 量 と幅 員 お よび 不 変 性 を 有 す る こ とが 必 要 とす る判 例 も存 在
水資源の管理 と配分に関する基礎理論 の検討 109
す る。 す な わ ち、 熊 本 地 宮 地 簡 判 昭41・3・29判 タ191号137頁 は、 「河 川 法 等 の適 用 な い し準用 の あ る 河 川 に入 る流 水 に つ い て は、 全 部 が 公 水 で あ る とは い う こ とが で き ず 、 公 水 とい い 得 る た め に は、 相 当 程 度 の水 量 と相 当 の 巾 員 を持 つ た水 路 を有 し、 且 つ 、 そ の 水 路 は 、 或 る程 度 不 変 性 の もの で あ る こ とを要 す る」 と判 示 す るの で あ る。 さ らに 、 当該 判 決 は、 「一 般 的 に 権 利 の 而 か ら水 を 大 別 す れ ば 、 公 法 の 適 用 を 受 け る 『公 水 』 と私 法 の 適 用 を受 け る 『私 水 』 とに分 類 す る こ とが で き る」 と述 べ 、 公 水 私 水 の 判 断 基 準 を適 用 され る法 の 分 類 に 求 め る考 え 方 を示 した 。 この 裁 判 例 の1年 後 に 出 現 した 前 掲 東 京 高 判 昭42・7・
25は 、三 田用 水 につ いて 言 及 し、 「三 田用 水 は玉 川 上 水 に くらべ て利 水 、 治水 の 両 面 と も公 共 の 利 害 に影 響 を及 ぼ す こ とは 少 な い けれ ど も、 そ の水 流 が 相 当長 距 離 に わ た る こ とお よ び 利 用 価 値 の 少 な くな い こ とな どか ら公 法 上 の 規 制 を 受 け る余 地 が あ るの で 、 そ の か ぎ りに お い て これ を 公 水 と認 め る こ と を妨 げ な い で あ ろ う」 と判 示 した。 す な わ ち 、 公 法 上 の規 制 を受 け る余 地 が あ る流 水 を 公 水 と解 し、 公 法 的 規 制 の 適 用 可 能 性 を公 水 の判 断 基 準 と した の で あ る。
つ ぎに 、 私 水 につ い て論 じた裁 判 例 を分 析 し よ う。 前 掲 熊 本 地 宮 地 簡 判 昭41・
3・29は 、 私 水 とは、 公 水 以 外 の水 を指 し、通 常 、 私 人 所 有 の 土 地 か ら湧 出 し、
湧水 、 地 下 水(伏 流 水 を 含 む 。)、井 戸 水 等 を 総 称 す る水 で あ る と説 述 す る。 東 京 控 判 大ll・9・29評 論ll民1350頁 で は 、 田 地所 有・者は 自分 の 土地 か ら湧 出 す る水 を灌 概 用 に 引 用 す る権 利 で あ る水 利 権 を 有 す る と判 示 す る。 要 す る に 、 当 判 決 は、 私 水 で あ る地 下 水 の 利 用 権 を水 利 権 と解 して い るの で あ る。 東 京 控 判 昭14・2・23評 論28民561頁 も また 、 私 人 の 所 有 地 内 に湧 出 す る流 水 は原 則 と して 私 水 で あ り、 土 地 所 有 者 が専 ら これ を 利用 す る こ とが で き る と述 べ る。 つ ま り、 土 地 上 の 湧 出水 は 、 そ の土 地 の 所 有 者 が 自 由 に 利用 し う る私 水 で あ る と 説 示 す る の で あ る。 さ ら に、 本 判 決 は、 私 水 が 第 三 者 に よ っ て永 年 に わ た り利 用 され て き た 慣 行 が 存 在 す る場 合 に は、 水 利権 の 成 立 を 認 め る と論 及 した 点 に つ い て も看 過 され て は な ら な い。 す な わ ち 、水 利 権 の 対 象 とな る水 は、 厳 密 な 意 味 に お い て 公 水 に 限 られ て い るわ けで は な く、 土 地 所 有 者 が 利用 し う る私 水 に 関 して も第 三 者 が そ れ を永 年 に わ た り使 用 して き た慣 行 が あ る場 合 に は 、 水 利 権 が 生 じ、 湧 出 地 の所 有 者 で も これ を侵 害 す る こ とが で き な い と言 及 す るの で あ る。 した が って 、水 利 権 を公 水 使 用 権 と解 す る立 場 か らは 、 私 水 を使 用 す
uo
しの
る権 利 が 成 立 す る と した 当該 判 例 の見 解 との 整 合 性 が 問 題 と な ろ う。
水 利 権 の 客 体 が 公 水 で あ るか 私 水 で あ るか が 問題 とな るケ ー ス に お い て は 、 土 地 所 有 者 が 水 を 自 由 に(行 政 機 関 の許 可 な しに)使 用 で き るか 否 か が 論 点 と な って い る。 大 判 大8・5・13新 聞1580号19頁 は 、 土 地 か ら湧 出 した水 が そ の 土 地 に浸 潤 して ま だ溝 渠 そ の他 の 水 流 に 流 出 しな い 間 は、 土 地 所 有 者 は 自 由 に これ を使 用 す る こ とが で き る とす る。 私 水 で あ る間 は 土 地 所 有 者 が 自由 に使 用 で き るが 、 私 水 が 溝 渠 その 他 の 水 流 に流 出 した 場 合 に は、 公 水 とな り任 意 に使 用 で き な い と説 述 す るの で あ る。 こ の よ う に公 水 私 水 の 区分 論 は、 土 地 所 有 者 が 自由 に水 を使 用 で き るか 否 か の 判 断 基 準 を水 の性 質 決 定 に求 め る もの で あ る。
また 、 水 が 私 水 で あ るか 否 か を 問 うこ とに よ っ て、 土 地 所 有 権 の 効 力 が 及 ぶ 範 囲 を問 題 と して い る と も指 摘 で き る ので あ る。
フ
公 水 私水 の 区分 論 は、 「公 法私 法二 元 論 」 と直 結 させ て論 じ られ る こ とが 多 い 。 す な わ ち、 公 水 は公 法 に よ っ て規 律 され 、 私 水 は私 法 に よ っ て 支 配 さ れ る との 命 題 を導 くの で あ る。 裁 判例 にお いて も、 前 掲 熊 本 地 宮 地 簡 判 昭41・3・29は 、 公 水 を公 法 の 適 用 を受 け る水 、 私水 を私 法 の 適 用 を受 け る水 と解 し、 前 掲 東 京 高 判 昭42・7・25も 、 公 水 を公 法 上 の 規 制 を 受 け る水 と した う え で 、 公 法 上 の 規 制 を受 け る余 地 が あ る流 水 も公 水 と認 め て い る。 この よ うな 思 考 は 、 公 法 私 法 の 区 別 の 有 意 性 を前 提 に した考 え方 で あ る。 しか し、 近 時 に お い て は 、 両 者 の 区 別 に実 質 的 意 義 を 見 出 す こ と は困 難 で あ るか ら、 積 極 的 に 支 持 す る理 由が
ia)
あ る とは い え な い。 そ れ ゆ え、 公 水 私 水 概 念 を 公 法 私 法 二 元 論 と短 絡 的 に 結 合 させ る こ とに つ い て は 、 消 極 的 な 態 度 を と る こ とが 望 ま しい とい え よ う。
環 境 保 護 意 識 の 高 ま りが 顕 在 化 す る に つ れ 、 公 共 概 念 の もつ 意 味 が 拡 大 して きて い る現 今 にお い て 、 公 共 概 念 を 内包 す る 「公 共 の 利 益 」 へ の 影 響 の 有 無 を 判 断 基 準 とす る公 水 を 水 利 権 の 客 体 と して捉 え る こ とは 、 か え って そ の輪 郭 が ぼ や け る こ と に な る。 また 、 典 型 的 な私 水 で あ る地 下 水 の ほ とん どが 地 中 を流 動 し公 水 で あ る地 表 の流 水 を支 え て い る こ とが 少 な くな い うえ 、 最 近 で は水 循 環 の 視 座 か ら水 資 源 を 捕 捉 す る立場 が 有 力 に 主 張 さ れ る よ うに な っ た 点 を考 慮 す る と、 公 水 私 水 概 念 の 区 別 自体 が 流 動 性 や 循 環 性 とい っ た水 資 源 の特 質 とは 親 和 的 で は な い よ うに も思 わ れ る。 公 水 を公 共 の利 益 に影 響 す る流 水 と解 して 、 水 利権 を公 共 の 利 益 に影 響 す る流 水 の 使 用 権 と捉 え る立 場 に た っ た と して も、
水資源の管理 と配分に関す る基礎理論の検討 1〃
水 利 使 用 が公 益 上 の支 障 を生 じ させ る場 合 に は 、 そ もそ も許 可 権 者(国 土 交 通 大 臣 、 都 道 府 県 知 事 等)は 水 利 使 用 を許 可 しな い の で あ るか ら、 公 共 の 利 益 に 影 響 す る流 水 の 使 用 権 を水 利 権 と して 認 め る とい う思考 は、 理 論 上 一 貫 性 を 欠 くと批 判 され て も仕 方 な い よ うに 思 わ れ る。 したが っ て 、 公 水 私 水 概 念 に依 拠
is)zn)
す る こ とな く、 水 利 権 の 本 質 的属 性 を考 察 す べ きで あ る と思 慮 す るの で あ る。
(3)水 利 権 の本 質 的 属 性
水 利 権 の本 質 的 属 性 を明 らか に す る た め に は 、 水 の性 質 決 定 の 観 点 か らで は な く、 水 利 権 の 内包 を構 成 す る不 可 欠 な要 素 を挙 げ る こ とに よ っ て 、 そ れ を 究 明 す る こ とが 適 合 的 で あ る と思 わ れ る。
水 利 権 の 内包 を構 成 す る不 可 欠 な 要 素 は、 水 利 用 に お け る2つ の 限 定 で あ る。
す な わ ち、 第1に 使 用 目的 に よ る制 限 で あ り、 第2に 目的 に応 じた 量 と質 に お け る水 の 必 要 性 に よ る限 定 で あ る。 つ ま り、水 利 権 は 、 典 型 的 な 物 権 の 効 力 で あ る絶 対 的優 先 性 に対 す る制 限 が 存 在 す る 点 に お い て特 徴 的 な の で あ る。
この 絶 対 的 優 先 性 に 対 す る制 限 に つ い て は 、 以 前 よ り判 例 の集 積 が あ る。 た とえ ば 、大 判 明31・ll・18民 録4輯10巻24頁 は 、 田家 用 の堰 水 は 田 家 に 要 す る だ け の 水 の 使 用 に限 られ る と論 じ、 大判 明33・2・26民 録6輯2巻90頁 は 、 渓 水 使 用 の 権 利 につ い て他 の 物 権 上 の 使 用 権 と同 視 せ ず 、 特 種 の もの と して他 人 の権 利 を害 しな い程 度 に お い て使 用 す る こ とが で き る と言 及 す る。 大 判 大5・
12・2民 録22輯2341頁 も 同様 に、 流 水 使 用 権 の 範 囲 は、 自 己の 必 要 を み た す 程 度 に とど ま り、 絶 対 の優 越 権 を認 め る もの で は な い とす る。 さ らに 、 前 掲 東 京 高 判 昭42・7・25に お いて も、 「一 般 に水 量 に お い て の み制 限 を受 け 、使 用 目的 に よ る制 限 は あ りえ な い とい う こ とは 首 肯 しが た い。 む し ろ、 水 利権 は水 量 と と もに 水 の一 定 の 使 用 目的 に よ る制 限 の 下 に存 在 す る」 と判 示 す る。 そ して 、
21)
最 高 裁 も また 、最 判 昭37・4・10民 集16巻4号699頁 に お い て、 「公 水 使 用 権 は、
そ れ が 慣 習 に よ る も の で あ る と行 政 庁 の 許 可 に よ る もの で あ る とを 問 わ ず 、 公 共 用 物 た る公 水 の 上 に存 す る権 利 で あ る こ とに か ん が み 、 河 川 の全 水 量 を独 占 排 他 的 に 利 用 し う る絶 対 不 可 侵 の権 利 で は な く、 使 用 目 的 を充 た す に 必 要 な 限
2'L)
度 の流 水 を使 用 し うる に過 ぎ な い」 と論 述 す る。本 判 決 は 、 従 前 か らの 諸 判 決 を収 敏 させ た もの と して位 置 づ け られ よ う。
112
この よ うに 判 例 に 表 れ た使 用 目的 お よび 必 要 水 量 に よ る制 限 につ い て は 、 当 初 よ り学 説 に お い て も支 持 さ れ て き た。 す な わ ち 、 流 水 は 公 共 の利 益 の た め に 供 され るべ きで あ るか ら、 永 年 の 慣 習 に よ り特 定 の 団 体 ま た は私 人 が 取 得 して
23)
い る流 水 の使 用 権 は完 全 な 排 他 的 ・独 占 的 な 効 力 を有 す る わ け で は な い と述 べ 、 公 水 使 用 権 の 内容 は その 使 用 の 目的 を充 た す に必 要 な限 度 に 止 ま る もの で な け
24)25)
れ ば な らな い と論 及 す る。 ま た 、 公 水 使 用 権 の 範 囲 は、 そ の 使 用 目 的 を 充 た す' に必 要 な 限 度 に止 ま るか ら、公 水 使 用 権 は 流 水 の排 他 的 ・独 占的 な使 用 権 で は
'16)
な く、 他 の 使 用 権 者 と互 譲 して 使 用 す る権 利 で あ る と解 す る学 説 もあ る。 さ ら に、 公 水 使 用 権 は そ の 範 囲 が 当 該 使 用 目的 に必 要 な 限 度 に お い て の み 、 社 会 の 正 当 な承 認 を受 け て い る とい うべ き で あ り、 使 用 目的 に必 要 の な い流 水 を権 利 者 に支 配 させ 、 他 の 使 用 目 的 を犠 牲 に す る こ とは公 共 の 福 祉 に適 合 しな い と論
コアエ
じ る 見 解 も あ る。
28)
前 掲 の 諸 判 例 は 、 使 用 目的 お よ び必 要 水 量 に よ る制 限 の も とで 水 利権 が 成 立 して い る こ とに言 及 した もの で あ るが 、 これ らの 事 案 で は水 の 質 に つ い て 問題 とな らな か っ た た め 、 水 質 の 視 座 が抜 け落 ち て い る点 を看 過 して は な ら な い 。 した が っ て 、 判 例 お よ び学 説 が 論 述 す る よ うな 、 使 用 目的 に必 要 な 限 度 に お い て 流 水 を 使 用 し う る とい う制 限 は、 使 用 目 的 に よ る制 約 お よ び そ の 目的 に応 じ た 量 と質 に お け る水 の 必 要 性 に よ る限 定 を意 味 して い るの で あ る。 典 型 的 な 物 権 の 効 力 で あ る絶 対 的 優 先 性 に対 す る この よ うな2つ の 制 限 は 、水 利 権 の本 質 的 属 性 で あ る とい え よ う。
3河 川 法2条2項 の 解釈
(1)旧 法3条 お よ び 現 行 法2条2項 の 立 法 趣 旨
水 利権 に つ い て 、 特 定 目的 の た め に必 要 な 量 と質 の水 を継 続 的 、 排 他 的 に利 用 し う る権 利 で あ る と解 す る な らば 、 河 川 法(昭 和39年 法 律 第167号)2条2 項 との 関 係 に つ い て検 討 しな け れ ば な らな い 。 す な わ ち 、 同 法2条2項 が 「河 川 の流 水 は、 私 権 の 目 的 とな る こ とが で き な い」 と規 定 す る こ と との整 合 性 を 、 い か に図 るか と い う問 題 が 生 じ るの で あ る。
本 条 項 は、 旧河 川 法(明 治29年 法 律 第71号)3条 「河川 並其 ノ敷 地 若 ハ 流 水
水 資 源 の 管 理 と配 分 に 関 す る基 礎理 論 の 検 討113
"19)
ハ 私権 ノ 目的 トナ ル コ トヲ得 ス」 との規 定 を改 めた もの で あ る。 「河 川 法 理 由∬}」
に よれ ば 、 旧 法3条 につ い て 「河 川 並 其 ノ敷 地 若 ハ 流 水 ハ 民 法 上 ノ権 利 ノ 目 的 トナ ラザ ル コ トヲ定 メ タル モ ノ ナ リ」 と述 べ た後 で 、 「河 川 ヲ私権 ノ 目的 トナ ス トキハ 或 ハ 時 効 等 二 依 ル権 利 義 務 等 ヲ生 ジ為 二其 ノ公 用 ヲ害 ス ル ノ結 果 ヲ生 ズ ル コ トナ キ ヲ保 セ ザ ル ヲ以 テ 河 川 ハ 私 権 ノ 目 的 トナ ラザ ル コ トヲ規 定 セ リ」 と
30)
論 述 す る。 さ らに 、 河 川 の 敷 地 お よ び流 水 が 私 権 の 目的 とな ら な い理 由 につ い て も、 「河 川 ノ敷 地 若 ハ 流 水 ハ 実 際 上 河 川 其 ノ物 ト同一 体 ナ ル ヲ以 テ 之 二私 権 ヲ 与 フ ル トキハ 間接 二 河 川 二 私 権 ノ影 響 ヲ及 ボ ス ノ虞 ア ル ノ ミナ ラ ズ 河 川 ノ工 毒
ヲ施 行 ス ル 場 合 二 於 テ往 々 其 ノ敷 地 ノ所 有 権 ヲ侵 害 ス ル ノ 結 果 ヲ生 ジ為 二民 事 上 ノ争 訟 ヲ生 ズ ル 虞 ナ シ トセ ズ」 と論 ず る と と も に、 「一 河 川 ノ敷 地 ニ シ テ数 多 ノ所 有 者 ヲ生 ジ所 有 権 ノ犬 牙 錯 雑 ヲ来 シ 河 川 行 政 ノ困 難 ヲ見 ル ベ シ 」 と言 及 し、
「流 水 二 関 シ テモ 其 ノ使 用 権 等 二 付 テ 同一 ノ状 況 ヲ呈 ス ベ シ」 と説 述 す る。要 す
る に 、 河 川 を私 権 の 対 象 か ら排 除 した の は、 河 川 につ き権 利 義 務 等 が 発 生 す る こ とに よ って 公 用 を害 しな い よ うに す るた め で あ り、 河 川 の 敷 地 お よび 流 水 に つ い て は 、 河 川 と 同一 体 で あ るか ら間 接 的 に公 用 に影 響 す るの み な らず 、 河 川 工 衷 の場 合 に敷 地 所 有 権 の 侵 害 とな るお そ れ が 生 じる うえ 、 敷 地 に 多 数 の所 有 権 が 成 立 す る こ と に よ り河 川 行 政 が煩 雑 に な る こ とを 回 避 す る た め に、 民 法 上
32)
の権 利 で あ る 私権 の 排 除規 定 を設 け た とい うの で あ る。
現 行 河 川 法 は 、2条2項 に お い て 河 川 の 流 水 につ い て 私 権 の 目的 とな らな い
33)34)
旨 を規 定 した だ けで 、 河 川 お よ び そ の 敷 地 に っ い て ほ 私 権 の 排 除 規 定 を置 か な か っ た 。 河 川 の 私 権 排 除 に つ い て 、 日本 民 法 は 特 別 法 の な い限 り財 産 権 の対 象 と して の 統 合 体 また は集 合 物 の 観 念 を 認 め て い な い か ら、 敷 地 お よび 流 水 の統 合 体 で あ る河 川 を 私 権 の 目的 とす る特 別 法 が存 在 しな い 以 上 、 河 川 が 所 有 権 そ の他 の 財 産 権 の 目的 とな らな い こ とは 明 白 で あ る と して 、 現 行 法 は 河 川 の私 権 排 除 に つ い て定 め なか っ た 。 ま た 、 河 川 の 敷 地 につ い て も、 そ の敷 地 に お け る 私 権 の 存 在 と河 川 の 管 理 とは 両 立 し得 な い もの で は な く、 公 共 用 物 で あ る河 川 の適 正 な 管 理 の た め に必 要 な 限 度 で 私 権 の 行 使 を制 限 す る こ とを も って 足 りる
35)
と解 し、 私 権 の 排 除 を しな か っ た の で あ る。
現 行 法 に お い て 、 河 川 の 敷 地 に つ い て は私 権 性 を排 除 せ ず 、 適 正 な 河 川 管 理 の た め に 必 要 な 限 度 で 私 権 の 行 使 を制 限 す れ ば 足 りる と解 釈 して い る に もか か
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わ らず 、1流水 につ い て は、 なぜ その よ うな 理 解 を しなか っ た の で あ ろ うか 。 立 法 府 に お け る現 行 法 案 の 審 議 の 経 過 を た ど る と、政 府 原 案 に は私 権 排 除 の規 定 は見 当 た ら な い。 政 府 は 、 旧 法3条 を全 面 的 に 削 除 す る予 定 で あ った の で あ る。
しか し、 参 議 院 建 設 委 員 会 に お いて 修 正 案 が 提 出 され 、 流 水 につ い て の み 私 権 を 排 除 す る条 項 が 付加 され た の で あ る。 現 行 法2条 に2項 を 設 け る趣 旨 にっ い て は、 つ ぎ の よ うに説 明 され て い る。 す な わ ち 、 「これ は 、 河 川 の 流 水 は、 文 字 どお り流 れ る水 で あ りま して 、 その 物 理 的 な性 質 上 、 私 権 の 支 配 の 対 象 とは な りが た い もの で あ ります が 、念 の た め 、 法 律 上 も明 らか に して 、 疑 義 な か ら し
36)
め る こ とが 適 当で あ る と した 理 由 に よ る もの で あ ります 」。
河 川 法 の 解 説 書 に お い て も、 以 下 の よ う に解 され て い る。 す な わ ち 、 物 が 財 産 権 の 客 体 とな るに は 、 その 物 が 特 定 さ れ て い な けれ ば な らな い こ と を前 提 に、
河 川 の流 水 は流 動 して い るた め 、 そ の 状 態 に お い て 流 水 は特 定 で き ず 、 それ に 対 して財 産 的 支 配 を 及 ぼ す こ とが で きな い が 、 容 器 に貯 留 され た水 は 、 特 定 さ れ て い るか ら財 産 権 の 対 象 とな る こ とが 可 能 で あ る。 そ の 意 味 に お い て 、 水 そ の も の が その 性 質 上 、 財 産 権 の 客 体 とは な らな い とい う もの で は な い の で 、 疑
37)
義 が 生 じな い よ う に明 文 の 規 定 を置 い た と説 述 され る の で あ る。
旧法 と現 行 法 で は、 流 水 の 私 権 排 除 規 定 の立 法趣 旨 が相 違 す る こ とを見 逃 し て は な ら な い。 旧 法3条 が 私 権 を排 除 した 主 な根 拠 は、 適 正 な河 川 管 理 を な す 必 要 性 に 求 め られ た の で あ るが 、 現 行 法2条2項 の 私 権 排 除 の理 由 は、 流 水 を 特 定 す る こ とが で き な い 点 で あ っ た の で あ る。
(2)流 水 の 特 定 性
流 動 して い る流 水 は特 定 で き な い か ら財 産 権 の 対 象 と は な りえ ず 、 特 定 で き れ ば財 産 的 支 配 を 及 ぼ す こ とが で き る とい う理 論 は妥 当 で あ ろ うか 。 特 定性 と は 、物 を 直 接 的 に 支 配 し う る権 利 で あ る物 権 の 属 性 か ら導 か れ る法 的性 質 で あ る。 した が っ て 、 原 則 的 に 特 定 が 生 じて い な い 物 に つ い て 物 権 が 成 立 す る余 地 は な い 。 しか しなが ら、 流 水 は流 動 して い るか ら特 定 が 生 じて い な い と解 して 、 物 権 の 成 立 を 否 定 す る こ とは で きて も、 流 水 に 対 して 私 権 ま た は 財 産 権 が成 立
しな い とい う こ とま で も導 出 で き るわ け で は な い こ と に留 意 す べ き で あ る。 物 権 の成 立 が 否 定 され て も、 債 権 が成 立 す る可 能 性 が 排 除 さ れ て い な い か らで あ
水資源の管理 と配分 に関す る基礎理論の検討 its る。
また 、 特 定 が 生 じて い る か ら と い っ て、 直 ち に財 産 権 の 対 象 とな り う る こ と を 結 論 づ け る こ と もで き な い。 財 産 権 とは経 済 的 取 引 の 客 体 を 目的 とす る権 利 で あ るか ら、 目的 物 に 対 す る経 済 的 取 引 の規 制 が 妥 当 で あ る か 否 か とい う価 値 判 断 を必 要 とす る の で あ る。 した が っ て、 河 川 の 流 水 は 私 権 の 目的 に で きな い とい う規 定 の 立 法 趣 旨 は、 経 済 的 取 引 の規 制 の 枠 内 に 流 水 を お くこ とに つ いて の 実 質 的 根 拠 が 示 され ね ば な らな いの で あ って 、 特 定 可 能 性 の 否 定 の み を 趣 旨 説 明 と して 挙 げ る こ と は適 切 とは い え な い で あ ろ う。
そ も そ も、 特 定 とは 、 経 済 的 ・社 会 的 観 念 か ら決定 され るべ き もの で あ っ て 、
38)
必 ず し も物 理 的 な意 味 に お け る特 定 を指 して い るわ けで は な い 。 物 権 の成 立 に つ き、 物 の特 定 が 必 要 とさ れ るの は、 物 が 特 定 さ れ な けれ ば権 利 の 客 体 の 範 囲 が 確 定 しな い か らで あ り、 物 が 厳 格 に特 定 され て い な い場 合 で あ っ て も、 客 体
;IJ)
の 範 囲 が 確 定 され て い る な らば 、 そ の物 の 上 に物 権 は成 立 す るの で あ る。 した が っ て 、 水 の流 動 性 に よ って 水 利 使 用 の本 質 に変 化 が 生 じ な い 以上 、取 水場 所 、 取 水 期 間 、 取 水 量 、 取 水 方 法 等 が 定 ま る こ とに よ り水 利 使 用 の 範 囲 が確 定 され
て い る な らば 、 流 水 は水 利 権 の 客 体 とな り うる と観 念 す べ きで あ る。
構 成 部 分 の 変 動 す る集 合 動産 につ い て も、 判 例 は 、 種 類 、 所 在 場 所 お よ び:臆 的 範 囲 を 指 定 す るな ど の方 法 に よ っ て 目的 物 の 範 囲 が 特 定 され る場 合 に は、1
40)
個 の 集 合 物 と して譲 渡 担 保 の 目的 とす る こ とが で き る と論 及 す る。 集 合 動 産 譲 渡 担 保 に つ い て も、 目的 物 の 範 囲 が 特 定 され て い る な らば 、 集 合 動 産 は1個 の 譲 渡 担 保 の 目 的 とな り う る と解 され て い るの で あ る。
(3)河 川 の 流 水 の 性 質
そ こで 、 流 水 を 経 済 的取 引 の 規 制 対 象 とす る実 質 的 根 拠 は ど こ に 求 め られ る べ きで あ ろ うか。 まず 、 現 行 河 川 法2条1項 との 関 係 を考 察 しよ う。本 条 項 は、
「河 川 は 、公共用物で あって、その保全、利用 その他 の管理 は、前条の 目的が達 成 され る よ うに適 正 に行 な わ れ な け れ ば な らな い 」 と規 定 し、 河 川 が公 共 用 物
4q
で あ る こ とを宣 言 して 、 河 川 管 理 の原 則 を示 した と説 明 さ れ て い る。 した が っ て 、 条 文 の 構 造 か ら は、 公 共 用 物 た る河 川 の適 正 な 管 理 の た め に、 流 水 を私 権 の 対 象 か ら外 した と理 解 す る こ と もで き る。 この こ とは、 旧河 川 法3条 が 河 川 、
//6
河 川 の 敷 地 、 河 川 の流 水 を と もに 私 権 の 目的 か ら除 外 した論 拠 と もほ ぼ 一 致 す る。
しか し、 現 行 河 川 法 に お い て は 、 河 川 の 敷 地 に つ き適 正 な 河 川 管 理 の た め に 必 要 な 限 度 で 私 権 の行 使 を制 限 す れ ば足 りる と解 して 私 権 を 排 除 しな か っ た こ とか ら も わ か る よ うに 、 流 水 を 私 権 の 対 象 か ら外 す こ とが 適 正 な河 川 管 理 の た め に絶 対 的 に必 要 な手 立 てで は な い。 た しか に 流水 の私 権 を排 除 す る こ とに よ っ て 、 河 川 管 理 に つ き私 権 行 使 の影 響 を考 慮 しな くて よ くな る 点 で は管 理 の 適 正 性 を確 保 しや す くな るで あ ろ うが 、 だ か ら とい っ て適 正 な河 川 管 理 の必 要 性 か ら直 ち に流 水 の 私 権 排 除 が 導 出 さ れ る と考 え る こ とは 、 早 計 で あ る よ う に思 わ れ る。 そ うな る と、 河 川 の流 水 そ れ 自体 の 性 質 に着 目す る こ とが 肝 要 とな ろ う。
河 川 の流 水 の性 質 に つ い て は 、 旧 民 法 財 産 編25条 が取 り上 げ られ 、議 論 され て き た 。 す な わ ち 、 河 川 の 流 水 に つ いて 、 旧民 法 財産 編25条 「公 共 物 トハ 何 人 ノ所 有 ニ モ 属 ス ル コ トヲ得 ス シ テ総 テ ノ人 ノ使 用 ス ル コ ト ヲ得 ル モ ノ ヲ謂 フ例 ヘ ハ 空 気 、 光 線 、 流 水 、大 洋 ノ如 シ 」 に規 定 され た 「公 共 物 」 と解 釈 す るの で あ る。 た とえ ば 、 旧民 法 の 「物 」 の 分 類 の 観 点 か ら、河 川 の 流 水 そ れ 自体 は 、
42)
旧民 法 に お け る と同 様 、人 の 所 有 に 属 す る こ との な い物 と して の 「公 共 物 」 で
4:1)44)
あ る と解 す る学 説 や 、 ロ ー マ 法 以 来 の 伝 統 に よ れ ば 公 共 物 の 本 質 は 一 般 使 用 に 供 さ れ る こ とに あ る と し、 流 水 の有 す る物 理 的性 質 お よび 現 行 法 令 の 整 合 性 を
45)
総 合 的 に考 察 して 、 流 水 を公 共 物 と捉 え る こ とが 妥 当 で あ る と論 じる説 が あ る。
公 共 用 物 で あ る河 川 の構 成 要 素 で あ る流 水 は 、 本 質 的 に私 的所 有 の 観 念 に は な じ まな い 。 水 資 源 の 循 環 性 お よ び 有 限 性 が 強 調 され て きて い る現 今 に お い て は、 水 の もつ公 共 的 性 質 は、 よ り明 白に認 識 され 、 適 正 な 河 川 管 理 は も と よ り、
健 全 な水 循 環 の確 保 の 理 念 を支 え る理論 的 基 礎 を な して い る と もい え る の で あ る。 この よ う に解 す る な らば 、 流 水 の 私 権 排 除規 定 の根 拠 は、 流 水 の 公 共 性 に 求 め られ るの が 合 理 的 で あ ろ う。 す な わ ち 、 河 川 法2条2項 は、 河 川 の 流 水 に つ い て 、何 人 の所 有 に も属 しな い と解 して 私 権 を排 除 し、 河 川 管 理 者 の 管 理 の も とに 置 い た と解 釈 す る こ とが で き るの で あ る。 そ して 、 私 権 の 目的 とは な ら
ac)
な い河 川 の流 水 は 、 原 則 と して 自 由 に使 用 で き るが(一 般 使 用)、 そ の流 水 を 継 続 的 、 排 他 的 に使 用 す る た め に は、 そ の 流 水 を永 年 に わ た り利 用 して き た慣 行 に よ っ て水 利 権 を成 立 させ るか 、 ま た は 河 川 管 理 者 か ら流 水 占用 の 許 可 を受 け
水資源の管理 と配分に関す る基礎理論の検討
47)
る こ とが 必 要 とさ れ るの で あ る。
iii
4水 利 権 の 法 的性 質
(1)流 水 地 役 権
水 利 権 の法 的性 質 に つ い て、 「公 共 物 」 で あ る河 川 の流 水 を排 他 的 に使 用 す る 場 合 に は 、 地 役 権 が 設 定 され る こ とに な る とす る学 説 が あ る。 す な わ ち 、 河 川 の 流 水 を 旧民 法 の 意 味 で の 「公 共 物 」 と解 した う えで 、1日民 法 財 産 編 の 地 役 の 諸 規 定 に 着 目 し、 水 利 権 を 流 水 地 役 権 で あ る と解 釈 す るの で あ る。 当 説 に よれ ば、 流 水 それ 自体 は人 の所 有 に属 す る こ との な い 物 で あ る こ とを前 提 に、 水 利 権 を流 水 の 存 在 す る土 地(な い し河川 あ る い は その 付 属 施 設)に 対 す る地 役 権
4d)
と理 解 す る。 た と え ば 、農 業 水 利 権 な ら ば 、 河 川 を承 役 地 と し、 農 地 を要 役 地 と して設 定 さ れ る地 役 権 と観 念 す る こ とに な る。 こ の見 解 は、 日光 、 大 気 、 眺 望 の よ う な そ れ 自体 が 財産 権 の客 体 と して 認 め られ な い もの か らの 利 益 享 受 に つ い て 、E1照 、 通 風 、 眺 望 を確 保 す るた め に承 役 地 に対 して 建 築 、 植 栽 等 を 制 限 す る地 役 権 の 設 定 に 着 眼 し、 そ の 法 律 構 成 を 流 水 使 用 の 場 合 に 敷 循 して い る 点 に お い て特 徴 的 で あ る。 こ の よ う に水 利 権 を 流 水 地 役 権 と構 成 す る学 説 は 、 水 利 権 を物 権 法 体 系 の 中 に位 置 づ け、 そ の 法 的 性 質 を 明 確 に した 点 に お い て 注
目に 値 す る見 解 で あ る。
本 学 説 に お け る水 利 権 の 特 色 は 、 地 役 権 の 付 従 性 か ら導 か れ る。 地 役 権 は 物 権 で あ る た め 譲 渡 性 を 有 す る こ とが 前 提 とな って い るが 、 地 役 権 は 要 役 地 の た め に 存 在 す る権 利 で あ るか ら、要 役 地 か ら離 れ て 地 役 権 の み を譲 渡 す る こ と は で き な い。 地 役 権 は要 役 地 と と も に譲 渡 さ れ るべ き で あ り、 逆 に 要 役 地 が 移 転 す れ ば 、 特 約 が な い限 り地 役 権 も また 移 転 す るの で あ る(民 法281条)。 この よ うな 地 役 権 の 付 従 性 に よ り、 水 利 権 が 要 役 地 に拘 束 され る た め 、 水 利 権 の譲 渡 は要 役 地 と と も に な され な け れ ば な らな くな る。 この こ とは、 水 利 権 の譲 渡 に
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つ い て 要 役 地 の 所 有 権 ま た は利 用 権 の 譲 渡 が 絶 対 的条 件 とな る こ とを意 味 す る の で あ る。
また 、 地 役 権 は 、要 役 地 所 有 者 が 承 役 地 か ら直 接 に 収 益 を あ げ る の で は な く、
承 役 地 に通 路 や 水 路 を 設 置 等 して 承 役 地 を 補 助 的 ・手 段 的 に利 用 す る こ と に よ
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り要 役 地 の 客 観 的 便 益 を増 す こ とを 目的 と して い る。 と こ ろが 、流 水 地 役 権 な る概 念 は 、 こ の よ うな 承 役 地 の 補 助 的 ・手 段 的利 用 を超 え て 、 要 役 地 所 有者 が 承 役 地 で あ る流 水 の 存 在 す る土 地(河 川)か ら流 水 を取 水 す る こ と に よ り、 直 接 的 に利 益 享 受 して い る よ うな 印 象 を拭 い きれ な い 。
判 例 に は 、 流 水 利 用 権 に つ い て 用 水 地 役 権 との相 違 を示 し、 地 役 権 に 関 す る 規 定 を適 用 す べ き で は な い と論 究 して い る もの が あ る。 す な わ ち、 東 京 控 判 大
4・ll・19新 聞ll26号23頁 は、 「民 法 が 規 定 す る用 水 地 役 権 な る もの は斯 る 河 の 流 水 の 利 用 権 に関 す る も の に あ らず して 、 要 役 地 所 有 者 が 其 承 役 地 の 水 を使 用 す る に過 ぎ ざ る承 役 地 の 負 担 に 関 す る規 定 とす 、 故 に 地 役 権 に関 す る規 定 を 之 に 適 用 す べ き も の に あ ら ざ る こ と明 か な り、 左 れ ば 灌 概 の為 に す る在 来 の 公 水 利 用 権 は沿 岸 地 水 田所 有 者 が 古 来 の 慣 行 上 国 家 の黙 許 に因 り収 得 した る水 の 支 配 権 と認 む るの 外 な し」 と判 示 して 、 地 役 権 に関 す る規 定 の適 用 を否 定 す る
の で あ る。
(2)慣 習 上 の 地 役 権 の 成 否 ・
水 利 権 が 慣 習 に よ っ て物 権 ま た は 物 権 的 権 利 と して成 立 す る こ と に異 論 は な い が 、 水 利 権 を 流 水 地 役 権 と解 した 場 合 に は 、 地 役 権 が 慣 習 に よっ て 成 立 す る の か とい う問 題 が 生 じ る。
地 役 権 は、 明確 な設 定 契 約 に よ らな いで 取 得 され る場 合 が 少 な くな い 。 す な わ ち 、 当 癖 者 間 に 明 白 な設 定 契 約 が 存 在 しな い に もか か わ ら ず 、 事 実 と して 通 行 や 引 水 等 の た め に他 人 の 土 地 を長 年 使 用 し、 相 手 方 も その 事 実 を 承 認 して い る と きに は、 地 役 権 が 成 立 して い る と解 され る場 合 が あ るの で あ る。 こ の よ う な場 合 に は、 通 常 、 黙 示 の 意 思 表 示 や 時 効 に よ って 地 役 権 を取 得 す る と理 解 さ れ る が 、 慣 習 に よ る地 役 権 の 取 得 を 認 め て よ い の で あ ろ うか 。
慣 習 法 上 の 地 役 権 の 成 否 につ い て 、判 例 の立 場 を考 察 して み よ う。 引水 目的 で 他 人 の 土 地 を使 用 す る権 利 が 慣 習 上 の 地 役 権 と して認 め られ るか とい う点 に 関 し、 大 判 昭2・3・8新 聞2689号10頁 は 、 つ ぎ の よ う に述 べ 、 民 法 と異 な る 内 容 を もっ 地 役 権 につ い て 、 それ を 認 容 す る慣 習 法 は物 権 法 定 主 義 に照 ら して 認 め られ な い と した 。 す な わ ち、 「一 定 ノ場 合 二地 役 権 発 生 シ登 記 ナ クモ 之 ヲ第 三 者 二 対 抗 シ得 ヘ キ慣 習 存 在 ス ル箏 実 ア リ トス ル モ 此 ノ 如 キハ 民 法 力 地 役 権 ト
水資源の管理 と配分に関する基礎理論 の検討 Ii9
シ テ認 ム ル 所 ト異 ナ リタ ル 体 様 ノ地 役 権 ヲ認 ム ル慣 習 二 外 ナ ラサ ル ヲ以 テ民 法 第 百 七 十 五 条 二 照 シ慣 習 法 トシ テ 之 ヲ認 メ得 サ ル ヤ 勿 論 ナ リ トス」 と判 示 した の で あ る。
また 、 長 年 溜 池 か ら灌 概 用 水 の 配 水 を受 け て きた 権 利 は 地 役 権 の 性 質 を 有 す る水 利 権 で あ る とい う主 張 に 対 して 、福 岡 地 飯 塚 支 判 昭31・ll・8下 民 集7巻 ll号3169頁 は、 「水 利 権 も一 種 の慣 習 法 上 の 権 利 と して地 役 権 的 性 質 を有 す る」
と判 断 した 。 本 判 決 は 、 水 利 権 に つ き慣 習 法 上 の権 利 と解 した う えで 、 その 地 役権 的 な性 質 に言 及 した に過 ぎず 、 そ れ を 地 役 権 と して 位 置 づ け る こ と に消 極 的 な 態 度 を 示 した と思 わ れ る。 当 裁 判 例 の 立 場 は 、 水 利 権 侵 害 の 場 合 に 、 水 利 権 の 物 権 的 効 力 と して 物 権 的請 求 権 を認 容 す る こ とに 主 眼 が あ るた め 、 水 利 権 が 慣 習 法 上 の 物 権 また は物 権 的 権 利 と して 判 例 に お い て 確 立 して い る以 上 、 地
きの
役 権 と して 構 成 す る必 要 が な い と判 断 した と も考 え られ るが 、 水 利 権 の 地 役 権 的 性 質 は 認 容 で き る に して も、 水 利 権 の 本 質 的属 性 を考 慮 して 、 そ れ を地 役 権
と明 示 す る こ とを 疇 躇 した と解 さ れ るの で あ る。
さ らに 、 前 掲 新 潟地 長 岡 支 判 昭44・9・22は 、慣 習 に よ る流 水 利 用 権 を取 得 す るた め の 衷 実 的 な 流 水 利 用 の 期 間 に つ い て 、 流 水 利 用 権 は民 法 上 の 用 水 地 役 権 に類 似 した 権 利 で あ るか ら、 民 法 上 の 時 効 取 得 に準 ず る と した 。 当 該 判 決 も、
慣 行 水 利 権 に つ いて 用 水 地 役 権 に 類 似 した権 利 で あ る と論 じて い るが 、 これ は 時効 取 得 に準 じて 解 釈 す るた め に 地 役 権 との 類 似 性 に言 及 した だ けで 、 そ れ を
5U
地 役 権 と構 成 した わ け で は な い と解 され る。
他 方 、 蔭 打 ちの 権 利 につ いて 、 金 沢 地 判 昭39・6・30下 民 集15巻6号1690頁 は 、 つ ぎの よ うに判 示 す る。 す な わ ち、 「蔭 打 とい うの は 山 間部 の耕 地 が 山 林 の 樹 木 の 蔭 に な つ て農 作 物 の 成 長 が 妨 げ られ る こ とを 防 ぐた め に 耕 地 の所 有 者 に 対 し、 一 定 の 範 囲 に わ た つ て耕 地 に接 続 す る山 林 の樹 木 の 刈 取 を許 す慣 習 で あ り、 か か る慣 行 は地 役権 に類 似 す る一 種 の慣 習 法 的物 権 で あ るか らそ の 法 的 関 係 につ い て は民 法 第 二 八 〇 条 乃 至 第 二 九 四条 を準 用 規 整 す る の が 相 当 で あ る」。 本 判 決 は、 蔭 打 ち の権 利 に つ き地 役 権 に類 似 す る慣 習 法 上 の 物 権 と解
して 、積 極 的 に地 役 権 と して構 成 しな か った 。
52)
こ れ ら一 連 の 判 例 に は、 慣 習 に よ る地 役 権 の成 立 を認 め な い 傾 向 が あ ら われ
53)
て い る と い っ て よ い で あ ろ う 。
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(3)地 役 権 構 成 の 検 討
水 利 権 を 流 水 地 役 権 と解 す る学 説 は 、 水 利 権 を 民 法 典 に 規 定 さ れ た 物 権 と し て位 置 づ け る。 しか し、 慣 行 水 利 権 は 、 慣 習 上 の権 利 と して 物 権 的 に取 り扱 わ れ て き て は い る もの の 、 厳 密 に い え ば 、 民 法 上 の典 型 的 な物 権 で は な い 。 慣 行
v4)
水 利 権 は 、 民 法 典 で は な く慣 習 法 に依 拠 して い るの で あ る。 前 述 した よ うに 、 水 利 権 は 、 物 権 の 効 力 で あ る絶 対 的 優 先 性 につ い て 特 定 目 的 の た め に 実 際 に必
55)
要 な 量 と質 の 水 利 用 に 限 定 さ れ る う え、 観念 性 が 否 定 され る か ら、 そ の 目的 ま た は必 要 性 を欠 い た場 合 や水 源 が 枯 渇 した場 合 に は 消 滅 す る こ とに な る。 また 、 灌 概用 水 利 権 につ い て は 農 地 に 引 水 す る こ とが 目 的 で あ るか ら、 そ の 地 役 権 性 を 指摘 す る こ とが で き る。 さ らに 、 慣 習 を 第 一 法 源 と して い る点 お よ び 共 同 体 が 管 理 処 分 の権 能 を有 しそ の構 成 員 が 使 用 収 益 権 を もつ 点 に お い て は 、 入 会 権
との類 似 性 が見 て 取 れ る。 この よ うな 性 質 は 、 典 型 的 な 物 権 とは 相 違 す る水 利 権 の特 殊1生を物 語 る もの で あ る。
物 権 法 定 主 義 を 謳 う民 法 典 に定 め られ た物 権 は、 そ れ ら を保 護 す る要 請 が 高 い こ とか ら、 包 括 的 に物 権 的 効 力 が 与 え られ て い る。 これ に対 し慣 習 法 上 の 物 権 に つ い て は 、 か か る物 権 的 効 力 の す べ て を網 羅 的 に認 容 す る必 要 は な く、 当 該 権 利 の 内 容 に応 じて 個 別 に認 め れ ば よ い。 した が っ て 、慣 習 に よ っ て個 別 的 に認 め られ た物 権 的 権 利 で あ る慣 行 水 利 権 に つ い て 、 そ れ を民 法 典 上 の地 役 権 と構 成 す る こ とが 、 水 利 権 の 性 質 の 多様 性 、 特 殊 性 を忠 実 に反 映 す る こ とに な るの か 、慎 重 な検 討 が 必 要 で あ る。
水 利 権 を流 水 地 役 権 と構 成 す る学 説 は 、 水 利 権 の 土 地 所 有 権 との 付 従 性 を 基 軸 に して そ の 性 質 を 捉 え て い る。 この 見 解 に よ れ ば 、 水 利権 が 土 地 の 便 益 を 高 め る た め の 道 具 と位 置 づ け られ る こ とに な り、土 地 所 有 権 の 財 産 的 価 値 に そ れ が 包 摂 され 、 水 利 用 の 独 立 した 権 利 性 が 稀 釈 さ れ る こ とに も な ろ う。 こ の こ と は 、 権 利 の 客 体 で あ る流 水 の公 共 性 が土 地 所 有 権 の 私 権 性 の 中 に埋 没 す る こ と
58)59)
に も繋 が る と言 え な くも な い 。 した が っ て 、 水 利 権 を土 地 か ら切 離 させ 、 水 の
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利 用 に純 化 した 権 利 と解 釈 す る こ とに よ り、 水 の公 共 性 を直 接 的 な根 拠 と して そ れ を公 的 管 理 の も と に置 く方 が 、 水 資 源 の 保 護 に 適 合 的 で あ る と言 え る の で は な い か。 この よ うに 流 水 の公 共 性 を水 利 権 の 中核 に据 え る こ とは 、 その 公 権
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性 を補 強 す る こ とに も結 びつ くの で あ る。
水資源の管理 と配分 に関する基礎理論 の検討 izi
5む す び にか えて
公 水 私 水 区 分 論 は、 水 利 権 成 否 の 判 断 に関 す る基 盤 理 論 と して 機 能 して き た。
しか しな が ら、 以 前 よ り、 水 利 権 の 客 体 を厳 密 に公 水 に 限 る の で は な く、 私 水 に対 して も使 用 権 を認 め る判 例 も存 在 して い た 。 近 時 で は 、 水 循 環 の 視 座 か ら 水 資 源 を捕 捉 す る立 場 が 有 力 に な って い る点 を考 慮 す る と、 公 水 私 水 の 厳 格 な 区分 自体 が流 動 性 や循 環 性 とい っ た 水 資 源 の 特 質 とは 親 和 的 で は な い と も恩 わ れ る。 した が っ て 、公 水 私 水 とい う形 式 的 、 観 念 的 な 水 の 性 質 決 定 論 か ら離 れ て 、 水 利 権 に 内包 さ れ る不 可 欠 な 要 素 を析 出 す る こ とが 、 当該 権 利 の法 的 性 質
を考 察 す る に あ た り重 要 な手 が か り とな る と思 わ れ る。
水 利 権 の 本 質 を表 す 特 徴 は 、 特 定 目的 の た め に実 際 に必 要 な 量 と質 の 水 利 用 に限 定 され る点 と、 水 利 用 の 目的 ま た は 必 要 性 を 欠 い た場 合 や 水 源 が枯 渇 した 場 合 に は 、 当 該 権 利 の 観 念 性 の 欠 如 に よ っ て そ れ が 消 滅 す る点 に あ る。 す な わ ち、 水 利 使 用 の 目的 お よ び そ の 必 要 性 の 範 囲 内 に 限 り流 水 の 利 用 が で き、 これ らが な くなれ ば権 利 も消 滅 す る とい うの で あ る。換 言 す れ ば 、 物 権 的 効 力 で あ る絶 対 的 優 先 性 に 対 して 、 水 利 目 的 に よ る制 限 お よ び そ の 目的 に応 じた 量 と質
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に お け る水 の必 要 性 に よ る限 定 が 存 在 す る の で あ る。
この よ うな 制 限 は、 流 水 利 用 の 共 同 享 受 性 を 前 提 と した 制 約 で あ り、 さ らに
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そ の 共 同 享 受 性 は、 流 水 それ 自体 の 公 共 性 か ら導 か れ る もの で あ る と理 解 で き る。 す な わ ち 、 流 水 の公 共 性 が水 利 権 の核 心 に 置 か れ 、 そ こか ら流 水 利 用 の 共 同享 受 性 が 派 生 し、 そ れ が 水 利 権 の 絶 対 的優 先 性 に対 す る制 約 を 生 み 出 す と考 え られ る の で あ る。 そ れ ゆ え 、水 の 公 共 性 を 抜 き に して 水 利 権 の性 質 決 定 を[illy ず る こ とは で き な い とい え よ う。
水 資 源 の公 共 性 に つ い て は 、 ます ま す社 会 的 認 知 が 高 ま っ て い る。 そ れ を水 利権 の 法 的性 質 に反 映 させ る 法 理 論 が 求 め られ て い る と思 うの で あ る。
注
1)国 土 交通 省 土地 ・水資 源 局水 資 源部 編 『平成20年 版 日本 の水資 源 一 総 合 的水 資源 マ ネ ジ メ ン トへ の転 換 一 』(佐 伯 印刷 、2008年)2頁 以下 参 照 。
2)国 土 交 通省 土 地 ・水 資源 局水 資 源部 編 ・前 掲 注1)17頁 は、大 規 模地 震 が発 生 す る危 険 性 の 高 ま り等 を受 け て、震 災 ・事 故等 の 緊急 時 の水 供給 機 能 に障 害 が生 じる リス クへの 対