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第67巻 第2号,2008(301~303) 301

ランチョンセミナー

インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンについて

津久井 智(群馬県保健予防課新型インフルエンザ対策室)

1.はじめに

 歴史的にみれば,インフルエンザ菌は1889年 ドイツ人Pfeifferが発見した当時インフルエ ンザの病原体であると考えられていた。実際に スペインかぜ流行時に使われたワクチンは,そ の効果について賛否両論があったものの,主成 分はインフルエンザ菌ワクチンであった。その 後インフルエンザウイルスがSmithによって 発見されたのは1933年のことである。

皿.Hib髄膜炎

 インフルエンザ菌はグラム陰性の通性嫌気性 短桿菌であるが,一派を持つものと持たないも のがあり,爽膜株はさらに6種類(a型~f 型)の血清型に分類される。心膜株の多くはb 型(Hib)であるが,乳幼児に好発して髄膜炎,

喉頭蓋炎,肺炎,敗血症等の全身感染症を引き 起こす。一方,無虚幻株は局所感染症の原因と

なる。

 Hib髄膜炎を含めた細菌性髄膜炎は,感染症 発生動向調査の5類感染症として全国471の基 幹定点病院から報告されている。従って,全数 調査ではないのでHib髄膜炎の正確な患者数 はわからないが,およそ年間500~600人と推計 されている。発生動向調査における2005年の

5歳未満児の細菌性髄膜炎の報告数は154人で あった。この数値はHib以外も含んでいるが,

実際にはこの数倍の細菌性髄膜炎の発生があっ たと考えられる6

 Hibは小児の細菌性髄膜炎の約60%を占め,

2歳未満に好発し5歳以降は稀である。Hib髄

膜炎は予後が悪く,患児の5%が死亡し,約 25%に聴覚障害や知能障害などの後遺症を残 す。感染経路は飛沫感染や接触感染であるが,

乳幼児の数%に健康保菌者がいるとされる。

皿.Hibワクチン

 Hibワクチンは細菌性髄膜炎の予防に有用性 が高く早期導入が期待されてきたが,わが国で は申請から4年近くを経て,2007年1月に承 認された。海外では,1980年代後半から各国 でHibワクチンが予防接種として採用されて きた。米国では1),5歳未満の10万人あたりの Hib全身感染症の年間罹患率が,1980年代の 40人からHibワクチン導入後1人未満まで低 下し1/100となった(図1)。同様に,ヨーロッ パ各国もワクチン導入後1,2年でHib髄膜炎 は激減している。一方,日本ではHib髄膜炎 の発生数が少ないといわれていたことやMMR ワクチン接種禍の影響もあり,先進国では唯一 の未導入国となっていた。

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図1米国におけるHibワクチン接種率とHib全   身感染症罹患率の推移(CDC,19981)参照)

群馬県保健予防課新型インフルエンザ対策室 Tel:027-223-1111 Fax:027-223-7950

〒371-8570群馬県前橋市大手町1-1-1

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302 小児保健研究

ルリビトールポスフェイト(PRP)を抗原とし て用いるが,PRP単独では乳幼児に対する免 疫応答が不十分なため,破傷風トキソイドを結 合させ免疫原性を高めている。国内臨床試験で 報告された副反応は,発赤等の局所反応および 発熱等の全身反応があるが,重篤な有害事象は なく,海外の使用経験からも安全性は極めて高 いものと考えられている。

 Hibワクチンの標準的な接種方法は,初回接 種が2か月齢から7か月齢未満の場合,初回免 疫として4~8週間隔で3回皮下注射し,およ そ1年後に1回追加する(図2)。4回の接種で 十分な免疫が獲得される。接種もれ者には投 与回数を減じる。一方,この接種時期はBCG,

ポリオ,DPT三種混合の定期の予防接種と重 なるので,Hibワクチンを別個に組み入れるこ とは容易ではない。そこで,Hibワクチンと DPTの同日接種が認められ, DPTの接種間隔

にあわせて3週間隔の接種も可能となった。た だし,DPTとの混合接種は禁止されている。

 ワクチン導入の必要性が高まっているもう一 つの理由として,近年,βラクタマー丁丁産生 アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)

などの新しいタイプの耐性菌の割合が急増 し2),抗菌薬に頼る治療に限界がみえているこ とがあげられる。また,費用対効果からみても,

ワクチン導入によってわが国で年間82億円の費

用削減効果があると試算されている3)。

N.今後の課題

 ワクチン導入後の課題として,当面は任意接 種であり4回接種で3万円程度を保護者が負担

しなければならない。また,任意接種では予防 接種健康被害救済制度の対象とならず,不幸に

も健康被害が発生した場合に十分な救済を受け られないことがあげられる。

 わが国ではワクチンに対する不信感が根強 く,予防接種推進の障壁となっているとされて きた。しかし,予防接種をすべて否定するよう な考えは一部であり,2007年夏に,10代,20代 の若年者を中心に麻しんが流行した際には未接 種対策を求める声が大きく,不当に副反応のみ を強調する報道はほとんどされなかった。こう した状況は麻しんの中・高生における追加接種 の制度化を後押ししたと考えられる。

 国ではHibワクチンを予防接種法の対象と すべきか検討するために,専門家からなる研究 班を立ち上げることを決定した。もちろんHib ワクチンが定期接種に組み入れられれば接種率 は改善するが,さらに重要なことは,医療関係 者やマスコミが協力して予防接種の正しい知識 と必要性を国民に伝えていく努力を続けること である。

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図2 Hibワクチンの投与方法

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第67巻 第2号,2008

        文   献

1) CDC. Progress toward eliminating haemophil-

 us influenzae type b disease among infants and  children-United States, 1987-1997. MMWR

 1998 ; 47 : 993-998.

2)長谷川恵子,千葉菜穂子,小林玲子,他.化膿  性髄膜炎例から分離されたHaemophilus influen一

      303

 zaeの疫学解析一1999年から2003年の分離株に  ついて一.感染症誌 2004;78:835-845.

3)神谷 齊,宮崎千明,中野貴司,他,インフル  エンザ菌b型髄膜炎の疾病負担とHibワクチン  の費用対効果分析.日本小児科学雑誌 2006;

 110 : 1214-1221.

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