1.はじめに
本調査の経緯と目的
本調査報告は、2020年度「“オール近大”新型コロナウィルス感染症対策支援プロジェクト」
の一環で実施したアンケート調査およびインタビュー調査(以下、調査プロジェクト)報告の 一部である。
新型コロナウイルス感染症が拡大する中で学生が長期にわたりメディア授業を受講すること となった。また、緊急事態宣言などを含め、外出や活動の自粛が求められた。そうした状況が 学生の心身にどのような影響を及ぼしたのかに関して、アンケート並びにインタビュー調査の 結果を基に報告する。なお、調査全体の目的と概要については、本報告書の最後にまとめて記 述した。
「 “オール近大”新型コロナウィルス感染症対策 支援プロジェクト」におけるアンケート並びに
インタビュー調査の結果から
―心身の健康と教育実習に関する報告―
向 後 礼 子*
“All-Kindai University Support Project Against COVID 19”
From the Results of Questionnaires and Interview Surveys:
A Report on Physical and Mental Health and Teacher Training Practicums
(KOGO Reiko)
*近畿大学教職教育部教授 〔キーワード〕新型コロナウィルス感染症、健康状態、ストレ ス、教育実習
調査方法
調査は、アンケート調査とインタビュー調査の2種類を実施した。調査実施にあたっては、
「“オール近大”新型コロナウィルス感染症対策支援プロジェクト」の1つである「『近大発、
ポストコロナ社会の設計図』プロジェクト」(代表者:安田直史 社会連携推進センター)の 協力を得た。
アンケート調査は、プレ調査として2020年8月3日から2020年8月9日の期間に、「『近大発、
ポストコロナ社会の設計図』プロジェクト学生意識・行動調査 Vol.1」を、Google フォームを 用いて実施し、261名の回答を得た。プレ調査の自由回答を参加学生とともにカテゴリー化す る作業を経て項目を検討し、さらに参加学生が調査した他大学、他機関の同種の調査内容の項 目を追加しながら、「新型コロナウィルス感染症拡大が学生に与える影響に関する調査」の項 目を作成した。その後、共同研究者間での議論を経て最終的に92項目からなるアンケートを作 成した。人権問題研究所内に設置する調査倫理審査会で承認を得たのち、2020年11月18日から 12月23日の期間に、Google フォームを用いてアンケート調査を実施した。調査対象者は、共 同研究者が行う授業および共同研究者が授業を行っていない他学部の授業を受講する学生、
1,091人から回答を得た。
インタビュー調査は、参加学生の発案により計画されたものである。したがって参加学生と 教員が2人ペアになりインタビューを実施することとした。調査対象者は、参加学生、共同研 究者、共同研究者が所属する学部以外の教員を通じて紹介された。インタビューの方法、項目 ならびにデータの取扱いについて、人権問題研究所内に設置する調査倫理審査会で承認を得た のち、2020年12月3日から12月22日の期間に調査を実施した。
インタビュー当日には、調査の目的、方法、倫理的考慮について調査対象者に説明し、同意 書の提出をもって同意したものとみなした。インタビュー内容は、先に実施したアンケートの 項目に基づいて構成されている。具体的には、「講義」「学生生活」「日常生活」「自分の健康状 態」「感染への不安や感染予防」「自分の経済状況」「将来展望や就職」「人間関係」「ストレス を含む精神状態」「社会状況」の10項目について質問しながら1時間程度インタビューを行っ た。また、筆者が担当したインタビューでは、教育実習を経験した5名の学生について、新型 コロナウィルス感染症下の教育実習に関する質問を追加した。
インタビューは感染防止対策の観点から Zoom で実施した。インタビューの冒頭、誰がイン タビューをするのかを明らかにするため、インタビュアーは教員、参加学生ともにカメラをオ
ンにし、その後、全員がカメラをオフにして実施した。
インタビュー調査対象者(以下、調査対象者)は、1
年生6人、2
年生2人、3
年生5人、
最終学年10人の合計23人であった。分析に際しては、音声データを調査対象者の同意を得た後、
文字化されたデータとした。分析は、文字化されたデータに基づく。また、インタビュー内容 についての確認を希望した調査対象者に関しては、投稿前に内容確認の手続きを行った。なお、
本報告のインタビュー調査に関しては、実習・演習を経験した学生7名を対象に行った調査の 結果に基づく(学生名は匿名とし、J1~J7の番号で表記した)。
2.健康状態とストレスを含む精神状態について
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、近畿大学では、令和2年4月3日から5月6日まで、
医学部を除き、学生・大学院生のキャンパスへの立ち入りが原則的、禁止された(その後、こ の措置は5月31日まで延長された)。また、 令和2年度前期授業は、5
月11日から原則、オン ラインでの実施となった。後期に関しては、9
月12日から開始され、学部ごとに異なった対応 が選択されたが、卒論や実験等の授業を除き、オンラインでの授業が多く選択されていた。
本項では、政府、自治体(大阪府)からの休業要請並びに外出自粛の要請に加え、オンライ ンでの授業が学生にどのような影響を与えたのかについて、健康状態とストレスを含む精神状 態について分析した結果について報告する。
アンケート調査から ①分析対象調査項目
本報告では、全92項目の質問のうち、表1に示す全体的な心身の健康に関する2項目、健康 状況に関する6項目並びに精神状態(ストレスを含む)に関する8項目の計16項目のみを分析 対象とした。
また、 過去3ヶ月の全体的な心身の健康を問う2項目に関しては「改善している」「変化し ていない」「悪化している」「わからない」の4択で、健康状態並びに精神状態(ストレスを含 む)に関する項目に関しては、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」「どちらかと言えば そう思わない」「そうは思わない」の4択で回答を求めた。
②結 果
全体的な心身の健康を問う2項目に関して、過去3か月の健康状況が「変化していない」と 回答した学生は78.1%、「悪化している」と回答した学生は10.9%であった。また、過去3か月 の精神状態(ストレスを含む)について「変化していない」と回答した学生は43.4%、「悪化し ている」と回答した学生は40.6%であった。したがって精神状態(ストレスを含む)によりマイ ナスの影響があることが分かった。アンケートは11月18日~12月23日の期間で実施されたため、
回答の時点から過去3ヶ月と考えると後期の授業開始前後からの健康状況と精神状態について 回答したと考えられる(図1)。ただし、いずれの場合も一定数、改善していると回答している 学生(健康状況:5.9%、精神状態(ストレス):8.4%)がいる点には留意しておく必要がある。
次に、新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナ感染症)拡大以降の「自分の健康状態 について、あなたはどう思いますか?」という問いに対する6項目への回答を分析した。
6項目中、最も「そう思う」+「どちらかと言えばそう思う」の回答が多かった項目は、「オ ンライン授業等による目の疲れがある」であり、合計84.1%の学生が「そう思う(58.8%)」+
「どちらかと言えばそう思う(25.3%)」と回答した。 オンライン授業等の導入により必然的に パソコン等を視聴する時間が多くならざるを得ず、結果、8
割を超える学生が目の疲れがあっ たと回答した。「運動不足により体力の衰えや体調不良を抱えている」と回答した学生(「そう 思う(30.9%)」+「どちらかと言えばそう思う(35.8%)」)、「筋力の低下や体重の増加がある」
表1 分析対象としたアンケート項目 1.過去3か月のあなたの健康状況は?
2.過去3か月のあなたの精神状態(ストレス)は?
31.運動不足により体力の衰えや体調不良を抱えている 32.筋力の低下や体重の増加がある
33.オンライン授業等による目の疲れがある 34.以前より頭痛がひどくなっている 35.以前より腰痛がひどくなっている 36.以前より睡眠不足になっている 3.
新型コロナウィルス感染症拡 大以降の「自分の健康状態」に ついて、あなたはどう思います か?
41.眠りが浅くなっている(寝付きが悪くなっている)
42.感情のコントロールが難しくなっている 43.自己肯定感が低下している
44.モチベーションが低くなっている 45.だるいと感じることが増えている 46.イライラすることが増えている 47.物事に集中しにくくなっている 48.憂鬱に感じる日が増えている 4.
新型コロナウィルス感染症拡 大後のあなたの「精神状態(ス トレスを含む)」について、 ど う思いますか?以前と比較して 回答してください。
と回答した学生(「そう思う(31.0%)」+「どちらかと言えばそう思う(34.6%)」)は、 いず れも6割を超えていた。これは、外出自粛等に伴い運動する機会が減少したことと関連してい る可能性が高い。また、他の3項目に関しても、「そう思う」に「どちらかと言えばそう思う」
を加えた結果は、「以前より睡眠不足になっている」で54.3%(29.6%+23.8%)、「以前より腰 痛がひどくなっている」で50.8%(27.2%+23.6%)、「以前より頭痛がひどくなっている」で 44.2%(23.1%+21.1%)とすべての項目において、 約半数の学生が新型コロナ感染症拡大以
降、健康状態が悪化していた(図2)。
一方、「あなたの精神状態(ストレスを含む)についてどう思いますか?以前と比較して回 答してください」という設問下に用意した項目についてみると8項目中、「そう思う」+「ど ちらかと言えばそう思う」の回答が最も多かった項目は「だるいと感じることが増えている」
であり、合計76.9%の学生が「そう思う(44.0%)」+「どちらかと言えばそう思う(32.9%)」 と回答した。 また、「モチベーションが低くなっている」と回答した学生は、74.8%(「そう思 う(42.6%)」+「どちらかと言えばそう思う(32.9%)」)、「物事に集中しにくくなっている」
と回答した学生は、71.0%(「そう思う(39.2%)」+「どちらかと言えばそう思う(31.8%)」 といずれも7割を超えていた。こうした状況が、オンライン授業によるものなのか、外出等の 自粛要請や感染不安によるものなのか、また、その複合的な影響を受けたものなのかなど、そ
図1 過去3ヵ月の健康・精神状態の変化
の背景要因については明確にできないが、モチベーションの低下や物事へ集中のしにくさなど は、授業課題への取り組み等にも影響を与えた可能性を示唆している。さらに「憂鬱に感じる 日が増えている」(「そう思う(34.4%)」+「どちらかと言えばそう思う(28.0%):62.4%」) と回答した学生は約6割、「イライラすることが増えている(「そう思う(27.5%)」+「どちら かと言えばそう思う(25.3%):52.8%」)」「眠りが浅くなっている(寝付きが悪くなっている)
(「そう思う(27.3%):52.6%」+「どちらかと言えばそう思う(25.3%)」)」「自己肯定感が低 下している(「そう思う(25.6%)」+「どちらかと言えばそう思う(28.1%):53.7%」)」と回 答した学生は約5割と半数程度の学生が不調を感じていた。 また、「感情のコントロールが難 しくなっている(「そう思う(17.5%)」+「どちらかと言えばそう思う(22.9%):40.4%」と 回答した学生も約4割いた。感情のコントロールを失うと些細なことでイライラしたり、涙が 止まらなくなるなど、その影響は対人関係面にも及ぶ可能性がある。今後、人間関係に関する 質問項目等への回答との関連について分析する必要があると考える。
図2 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「自分の健康状態」について
今回のアンケート調査の結果からは、身体的な健康、精神的な健康のいずれか、または、双 方について支援を必要とする学生が存在する可能性が示唆されたと考える。今後、新型コロナ 感染症がどのように拡大、または、収束するかを予測することは困難だが、学生のおかれた状 況を把握し、必要に応じた支援が求められる。
インタビュー調査から
インタビューはアンケート調査の10の大項目毎に順番に尋ねたが、本項では主に健康状態と 精神状態に関する部分のみを採りあげて分析する。また、分析対象とした学生は、インタビュー 調査対象者23名中、実習・演習等の授業を受講している7名であった。本項では、インタビュー 対象学生をJ1~J7で表記した(J2~J5とJ7は教育実習を体験した学生である)。 図3 新型コロナウィルス感染症拡大後のあなたの「精神状態(ストレスを含む)」について、どう思いますか?
①自分の健康状態について
新型コロナ感染症前と比較した「自分の健康状態」に関する質問に対しては、視力の低下や 目の疲れ(J1・J3・J6)、 運動不足(筋力の低下(J5・J6))、 睡眠リズムの乱れ
(J4・J6)などに関する回答が得られた(他の質問に対する回答の中で語られた関連する 回答を含む)。ただし、視力の低下や目の疲れに関しては、J2のように新型コロナ感染症拡 大以前から比較的パソコン等を多く利用する生活をしている場合は、1
日の画面を見る時間に 大幅な変化はなく視力の低下や目が痛いなどの症状は報告されなかった。
【目の疲労に関連して】
J1:視力は確かに落ちましたね。
(質問:健康診断の時とかに分かったんですか?)
そうですね。あと、コンタクトレンズなので、買い替える時にだいぶ下がったね、みたいに言われて。
(質問:1日何時間くらいパソコンを見ていらっしゃいましたか?)
結構朝から夕方までは絶対、あとは、予備校のテスト、あの予備校の授業も動画として見れたの で、基本、本当に朝から夜までずっとパソコン生活でした。あと、課題もパソコンだったので。
J3:あー、講義がずっと Zoom になったので視力が悪くなってしまったなっていうのが一番分かりや すかった変化で、ちょっとコンタクトの度数を最近変えました。ちょっと悪くなってしまったな と思います。はい。
J6:(目が疲れるのは)かなり感じています。あの講義のほとんどがやっぱりパソコンで行われるっ ていうのと、要は自宅でできるストレス発散がほとんど画面を見ることでやっているので。本当 にひどいと、そうですね、かなり長い間、1日13時間から14時間くらい画面を見てることもあっ て。かなり目が疲れてきますね。
J2:画面を見るとかっていうのは、結構パソコン操作ってずっとやっていたので。慣れているというか。
J2:普通にパソコンで結構いろいろエクセルでやったり、あと、普通にバイトで資料を作る時もワー ドとかで、ずっとカチャカチャやっていたので、あまり変化はないかな。
(質問:1日に画面を見る時間でいうと、大幅に変化はないっていうこと?)
J2:そんなにないです
【運動不足・筋力低下に関連して】
J5:結構、 あの運動不足になっているなっていう感じですね。学校に行かないので。 ちょっと家で 走っただけで疲れてしまうような感じになってしまいましたね。
J6:前期はやっぱりコロナ禍っていうのもあって、ただでさえ学校に行かないに加えて、なかなか外 出がしづらくなっていたので、ひきこもりがちになって。授業がなかった、確か4月5月ごろで すね、なんかほんとにずっと部屋にひきこもってやることがないので、ずっとどうでもいい動画 を見たりとかっていう時間があって。かなり運動量も落ちましたし、あまり体調良くない日々が 続いたなって思います。
後期は多少は学校に行くようになったので、運動不足はまだましになったんですけど。外出す る機会が前期で減ってしまったのがなかなか戻らなくて、学校行く以外はあんまり外に出れてな い日が続いています。
また、「たまに学校に行く時とかに、本当に前だったら歩いても疲れなかったような距離がす ぐ疲れるようになってたりとか」。
もちろん、こうした状況に対し、運動不足を解消しようとした試みが報告されている。例え ば、J1は「前期の間は自宅で動画を見ながら筋トレをしていたのですごく健康体」だったと 回答し、J2は「スクワットやバービージャンプ(なんか、 腕立てみたいなのをして立ち上 がって、ジャンプしながら手を叩いて、みたいなのを繰り返すやつ:J2による補足説明)っ ていうのがやってたりしました」と回答した。また、J2は「なんか気分転換を込めてという のもありますけど」と精神的な面での安定にも運動を利用していたことがわかる。さらにJ3 は、「健康面だけで言うと、そうですね、 運動不足だなと感じた時は家の中でもちょっと腹筋 したりはしていたので。以外と家の中でもできたなっていう印象と、 はい、 ちょっと健康に なったかな、なんか食生活に気をつけるようになったなというのがあります」と在宅が続くこ とによるプラスの影響についても報告された。 食生活については、J1も「(家にいるので)
栄養バランスはすごく整っていました」と報告している。
しかし長期間に及ぶ外出自粛の中、継続的に運動することが難しいこともうかがえる。例え ば、 J5は、「僕、結構、 スポーツはしていたんですけど。あのバスケットボールをやってい たんですけど。それ自体もまあ結構接触スポーツなので、全然人が集まらないということにな り、スポーツもできないので。やっぱり家で一人で筋トレっていうのも、僕三日坊主タイプな のであんまり続かず。だからスポーツもあんまりできてないのでちょっと困っていますね」と 家で継続的に運動することの難しさを挙げた。同様にJ6も「多少は、最初のほうはさすがに まずいなと思って、ちょこちょこ筋トレは。元からあんまり運動が得意じゃないのもあって、
しばらくするうちに辞めてしまいました」という。
睡眠に関する回答としては、個人差が大きく、J1・J2・J5は、多少の乱れはあるもの の生活リズムに大きな崩れはないと回答している。これに対し、昼夜逆転があり朝起きるのが 辛い(J4)、イライラしてなかなか寝付かれず深夜まで起きていることが多くなった(J6)、
また、一日中家にいることから、時間の感覚が取りにくくなり、睡眠のリズムが崩れてしまっ た(J7)などマイナスの影響がある学生がいる一方、通学時間がなくなったことで睡眠時間 が確保できたとする(J3)報告もあった。
②「ストレスを含む精神状態」
ストレスに関する発言で最も多かったのは、外出自粛に関連する内容であった(J1・J2・
J4・J5・J6)。一方、 新型コロナ感染症関連ではなく、自身の進路に影響を与える試験 に対する不安をストレスとして挙げた学生(J3)もいるが、ストレスの発散方法に関しては 外出自粛と関連した回答であった。また、在宅で Zoom による学習をする際に他の家族と利用 時間が重なることによるストレスについての回答もあった(J7)。
J1はコロナ前は体を動かしたり、結構飲みに行ったり、遊んでいたという。ただし、最終 学年でもあり、もともと就職活動や資格試験のために多くの時間を割くことを計画していた。
しかし、ストレス発散ができない状況の中では時期によっては寝つけないなどの不調があった ことが語られた。一方、そうしたストレスに対しては「みんな同じ状況やから仕方ないってい
【睡眠に関連して】
J4:そうですね、授業がある程度多かったんで、教職も取っていたんで。結構朝ちゃんと起きて活動し ているっていう感じだったんですけど。コロナ入ってからは寝るのが朝っていう感じやったんで。
(質問:生活習慣みたいなのが崩れてしまって?)
そうそう。完全に崩れて、朝起きるのが辛かったです。
J6:後期からは課題とかが増えてきたので、課題をやるのに夜中の1時とか2時までかかってしまっ たりとか。
(質問: 実質睡眠時間を減らさないと無理くらい増えたっていうことですか?)。
J6:そうですね、えっと、量的な話をするなら、その睡眠時間減らさなきゃ無理っていうのはあんま りなかった。ほとんどなかった。ほとんど自業自得で遅くまでやらなかったっていうことだった んで。
J6:やっぱり寝る時間がどうしても遅くなりがちになってしまいます。なんかこうイライラしてやっ ぱり、そうですね、寝付けなくなるので、どうしてもスマホとかでゲームして遊んでみたりとか、
あとちょっと本とか読んだりとかしてるので、どうしても最近は1時くらいに寝ることが多く なってます。朝も寝るのが遅いので、起きるのが遅くなってしまったりっていうのがあります。
J7:睡眠が自分の中で変わったなと思います。以前は朝から学校に行って夜に学校から帰ってきて、
ちょうど6時間7時間の睡眠で気持ちよく毎日を過ごせてたんですけど、特に4月5月ごろは ずっと家にいるのでなかなか外にも出れなくて、なんでしょうね、今何時なんだろうみたいな感 覚が自分の中でどんどん狂っていって。寝つきが悪くなったり、逆に長く寝すぎたり、寝つけな かったり、短時間で目が覚めたりみたいなのをずっと繰り返していて。寝たのに寝れてなかった り、なんか寝たくても寝れないみたいなのがすごく増えました。
携帯は見ないって決めて寝床についてもなんか1時間、2時間寝つけないみたいな時もたまに あります。
J3:ああ、でも夜寝る時間はそこまで変わってなくて。もともと1時とか日付を過ぎてから寝てしま うタイプで、でも朝は早く起きるので、睡眠時間は短めだったんですけど、ゆっくーり寝るよう になりました。もし1限になんか授業が入っていても、9時から家でできるので。それで時間の 確保はできて。で、朝昼逆転ということも、ちょっと朝がゆっくりになったかなぐらいです。
うふうに割り切り」、友人との会話を通してストレスを発散するなどの方法で対応している。
J2は、新型コロナ感染症が拡大する前は学校やカフェ、図書館などに行っていたが緊急事 態宣言により行き先がなくなり閉塞感を感じたという。そうした中でも自分でできる方法で対 処していることが伺える。
J4は、外出自粛に伴う生活リズムの乱れからくるだるさについて健康状態に関する質問の 際も言及している。また、外出自粛の時期に無気力となり、活動が著しく落ちたことから体重 の増加に至る。しかし、外出自粛が解除されたことを契機に運動を始め、結果としてそれがス トレスの解消にもなっていたという。その一方で、以前は、締切の1週間前から取り組んでい た課題に前日になってから取りかかるようになったり、内容的にも中途半端なものを提出する ようになった、などの変化があったと振り返った。このように6月を過ぎても集中力の低下に よる学習への影響は続いていた。
【ストレス:外出自粛と就職活動・資格試験】
J1:やっぱり私が普段なかなか家にいない人なんで、その辺がすごくストレスでした。
J1:前期、一回就活の最後の本採用の時の波、6月くらいですかね。の時はすごいストレス発散でき ない状況で、ストレスだけがたまっていってたので、なかなか寝付けませんでしたし。あと次に その就活が6月に終わって、その次からずっと勉強モードに入らないといけなかったので、それ がまたストレスでしたし。(笑い)でまた模試が始まるってなった時もなかなか寝付けなかった ですね。定期試験か。定期試験が始まっても寝付けなかったです。2回大きな波が来ました。
J1:結構、皆で電話した時に「ほんまにしんどない」みたいな感じで話たりして、あとはすごく笑っ たので、話してると、それがストレス発散になりましたし。そういう面では結構ストレスたまっ たら友達と電話してみて、みたいなお互い発散し合うっていう状況で乗り切ったこともあるかも しれないです。
【ストレス:外出自粛】
J2:(コロナ前は)学校に行っていたりとか、カフェとか図書館に行っていたりというのがあったん ですけど。やっぱり緊急事態宣言が出て全部、閉まってしまうと家にいざるをえないというか、
いないといけないので、やっぱりちょっとしんどかったかなというところはあります。
J2:知り合いとかと話したり。あとは、そうですね、カラオケとかもやっぱりずっと閉まっていたの で、密になるということで、でも歌うの好きだったので、家で歌ってたりとかいうことで。発散 になってるのか分からないですけど、一応楽にはなっていました。
J5は、外出できないことで家族とのやりとりが増えた点を良かったとしながらも、同様の理 由で家族とトラブルとなったこともあるという。また、ストレス発散と聞かれても困るとしつつ も、甥や姪との交流を挙げるなど外出自粛が家族関係にも影響を及ぼしていることがわかる。
【ストレス:外出自粛】
J4:疲れが取れなくなりましたね。 生活リズムが崩れたからなんかな、全体的に疲れが取れにくく なって。しっかり寝てもだるさが残るっていう感じですね。
(質問:その疲れとかっていうのはどういう時に感じるんですか?)
J4:とりあえず、朝、朝っていうか昼なんですけど、起きた時になんか永遠に眠いんですよ。起きる んですけど永遠に眠くて、そこから部屋を移動してリビングのほうに行って、行ってるんですけ ど。それでも結局1時間半とか2時間したらまた寝とって見たいな感じになってしまってて。あ あ疲れとれてへんなって感じますね。
J4:前々はまあしっかり寝たらっていう感じだったんですけど。コロナ、自粛入って、やっぱりリズ ム崩れてから本当に、なんて言いうんですかね。だるさが残るようになりましたね。
J4:集中力がなくなりましたね。なんか一個の物事するのにすぐに集中力が切れてっていう感じなん で。影響してたりするのかなと思ったり。自分が年取ったんかなと思ったり。
(質問:集中力がなくなるって言ってたでしょう。それって何月ごろから始まった?)
J4:それは、自粛明けてちょっとしてからぐらいですかね
J4:6月くらいですかね。5月まではゲームしてても集中力は悪くなったんですよ。全部ゲームなん ですけど。
J4:6月くらいに入ってきて、ちょこちょこゼミのほうの課題とかも出てきて、やらないといけない ことが少しずつ出始めた時に、いつもやったら一回である程度進められたんですよ。分量を。例 えば小っちゃいレポートだったら一日で終わらせたりしてたんですけど、それが3日4日かかる ようになってきて。1回あたりにやる時間がすごく短くなっていったんですよ。そういうことを 感覚、感覚としてあったんで、自分の中で。なんか終わらへんな、長いなって思いながら、思っ てたんで。
J4:いつもだったら締切の1週間前からやり始めるんですけど、本当に前日とかに、やばいって焦り ながら中途半端なものを提出したりとかもしていたんで。
J4:いつもやったら、締切ギリギリに気づいてやばいってやってもある程度のレベルのものは作って たって自分で思っているんですけど。家で一人でやる、このコロナ明けてから一人でやるって なった際に、なんか納得いききらへんけど、まあ期限があるから出しとこかっていう感覚で、出 してしまったものが増えたかもしれないです。
(質問:精神状態。ちょっと大きいくくりになってくるんですけど、そういう面で内面的な変化と かってありますか?)
J4:内面的には行動する力がなくなりましたね。なんかやろうっていう感じが。去年まではいろんな ことをやってみようっていう感覚はあったんですけど。今年からは動くことがだるくなったんで。
活力がなくなりました。なんかしようっていう。
J4:元々はいろんなところ行ったりとか、いろんな新しいことをしたりとかっていうのが、結構大学 入ってから好きやったんで。行動して何か、体を動かして何か、するっていう感じだったんです けど。それが自粛とかであんまりしないほうがいいかなとか。しないでください、みたいな感じ のことを言われているんで。それやったら家おって寝とこって感じになる。そんなんを2月3月 くらいからやって、5月くらいまでやってると、何もする気がなくなったという感じですよ。
(質問:無気力みたいな感じになったんですかね?)
J4:そうですね。何かするなら寝ときたいって感じなんです、今は。
J4:(ストレスが溜まっているという自覚)はなかったと思うんですけど。 自粛、 国から自粛要請出 とったじゃないですか、3月終わりくらいから5月あたまくらいまで出とったと思うんですけど。
その期間はちょっとたまったりはしましたね。
J4:(ストレスを)忘れるかのように寝て、ゲームして、起きて、ご飯食べて、寝ての繰り返しました。
【ストレス解消】
J4:5月までに10キロくらい太って。やばいわって思って、5月以降、自粛明けてから、筋トレ始め たんですけど。逆にそれがストレスの発散になっていたかもしれないです。今考えると。
J6は、日常生活に関する質問とストレスを含む精神状態に関する質問の2箇所で外出自粛 に関連するストレスについて触れている。J6にとって新型コロナ感染症が拡大する前の主な ストレスの発散方法は「山に登ったりするのが好きなので。山に登ったりとか、どこか日帰り で京都とかに旅行に行ってみたり」「一人で自由にぶらぶら計画決めずに、 歩く」ことであっ たが、これが外出自粛により制限されることとなった。また、大学構内に入構できないことか ら授業を希望する形で受講することができずストレスになっている様子もうかがえる。メディ ア授業については、良い点ももちろんあるが、一方でメディア授業の限界についても、今後、
分析していく必要があるといえる。また、J6のストレス解消法は、小説やアニメを見ること だが、講義のほとんどでパソコンを利用する中、目の疲労が大きくなっている。加えて、従来 のストレス発散の代替としても十分ではない現状が伝えられた。
【ストレス:外出自粛とそれに伴う家族との関係】
J5:ああもう、ストレスはもうたまる一方ですよね。えっとなんですか、正直僕は結構外でめちゃめ ちゃ遊びたいんですよね、 やっぱり。 外でカラオケとかも行きたいですし、今で言うたらユニ バーサルスタジオジャパンが盛り上がっているの、めちゃ行きたいなあと思うんですけど。まあ 怖いのでね。行けないというのが現実で。だから結構ストレスもたまるし。家でもやることがな いので暇やなって思ってみたり。あとはなんか、家にいる時間が長いので家族とのなんかやりと りが増え、ちょっと家族の絆が深まったのもありますけど。 その分なんか家族とのトラブルが あったり。ちょっとイライラが募ったりして結構当たっちゃうときもありますね、なんか。だか ら早く収まってほしいですね。
【ストレス解消】
J5:えー、ストレスの発散。あの、姉がうちの家を出てまして、子どもも2人いるので、そっちの家で 結構その子どもらと遊んだり、甥っ子ですね。甥っ子と姪っ子と遊んだりするのが僕の一番の生き がいというか。(笑い)そうですね。ほんまにそれぐらいかなって感じです、ほんまに。そんなに なんか、ストレスの発散なんですかって今聞かれて正直あんまり出てこなかったのが辛いです。
【ストレス:外出自粛とメディア授業(実験ができない)】
J6: あんまり運動は好きじゃないんですけど、結構外に出るのは好きなタイプで、えっと受験終わったら いろんなところに遊びに行こうと思ってたのがやっぱできなくてストレスがたまってしまっている。
J6:一番は休日とかにやっぱ外に出づらいところですね。特に長期休みとか、あんまり遠出ができな いとかっていうのはかなりストレスがたまりますね。
J6:あの大学入ったら、講義とかで、実験ができる。実験がもっといろんな器具とか使ってできるっ ていう思いがあったので、その実験が一切できていなくて。それでかなりやりたいこともできな くて。ちょっと、実験ができないっていうのはかなりイラついています。
【ストレス解消】
J6:一応、趣味の小説を読んだりとか、あのアニメとかを見たりとか。あとまあ外に出ないような趣 味、えっと基本的にいろいろ勉強したりするのが好きなので、そういった分野の勉強とかをして、
発散はなるべくするようにしているんですけど、正直発散しきれてないのが現状です。
J6:(目が疲れるのは)かなり感じています。あの講義のほとんどがやっぱりパソコンで行われるっ ていうのと、要は自宅でできるストレス発散がほとんど画面を見ることでやっているので。本当 にひどいと、そうですね、かなり長い間、1日13時間から14時間くらい画面を見てることもあっ て。かなり目が疲れてきますね。(再掲)
J3のストレス(不安)についての回答は、直接的には外出自粛に関連するものではなかっ たが、「ストレスの発散の仕方が家の中だけでは少し難しくて」というようにストレスの発散 方法に関しては影響を受けていた。また、J6と同様にオンライン授業に加えて、ストレス発 散のため YouTube などを視聴することによる目の疲れに言及している。
J7は、Zoom による学習の際、同居している大学生の兄弟や在宅で勤務している父親と利 用時間が重なることで生じる音のストレス、また、自分のパソコンを持っていないことから家 族から借りる必要があり、自分のペースで課題を進められないことに関するストレスを感じて いた。こうした中、大学への入構が一部、可能となり、そのことがストレス発散の1つの機会 となったと述べている。
【ストレス:就職試験】
J3:あー、ストレスはやっぱり、えっと試験への不安、合格するかどうかなっていう不安が大きいん ですけど、やっぱりずっと勉強しているとしんどいっていう。ここがぶつかってしまったのが怖 かったので。英語の映画観たりして、ちょっと不安を和らげるようにしていました。ストレスの 発散としては。英語やから、その専門が英語なので、英語の動画やから勉強になるし、でもちょっ と面白いからストレスも発散できるかなっていうので。ストレス発散としてはそうしていたか なって思います。
【ストレス解消】
J3:「ストレスの発散の仕方が家の中だけでは少し難しくて。そうするとやっぱりその YouTube とか であったり、 やっぱりそれを結構見ることが多くて、それで発散はできるんですけど、 視力で あったり、ちょっと目がショボショボしてしまったり」
【ストレス:外出自粛とメディア授業(Zoom で授業を受ける際の家庭環境調整)】
J7:我が家は防音の個室みたいなのがなくて、どこにいても家族がいるみたいな家庭なんですけど。
兄弟が2人いて、あのどちらも今大学生なんですけど。
J7:授業の時間が被ってしまう時がありまして。あの、Zoom している時に兄弟の Zoom の声が入る だとか。後は家族、父も仕事とかで Zoom をすることがあるんで、なんでしょうね、音によるス トレスみたいなのが多くて。誰かが Zoom をするから静かにしないといけないとか、自分が Zoom をするのに家族がうるさいとか、そういうストレスがあったり。 あとは私は自分のパソコンを 持ってないんですけど。家族はパソコンを持っていて、そのなんでしょう、学校に来れるように なってからは、KUDOS のパソコンを使ったりするようになりましたけど、家にいる時はどうし ても父か誰かのパソコンを借りないとできないみたいなときに、相手も使う時間がかぶっている と、私はどこで何をすればいいんだ、みたいになってしまって。課題を思うように進められない とか、いうストレスはありました。
J7:一番外に出れないストレスが大きく感じてたのが4月5月くらいだったんですけど、その時期は 早朝にお散歩に行くようになりまして。人に会わない時間にちょっと外に出てリフレッシュみた いな感じで。それまでは2か月間くらい家からずっと出たことがなくて、みたいな感じだったの で。そうですね、お散歩でまずは一つストレスを発散しまして、 その後は学校に行けるように なったのが私の中では一番大きかったかもしれないです。6月。
なお、回答の中では、大学への入構禁止と関連して、学習のモチベーションの維持や集中力 を高めることが難しかったことが挙げられた(J1・J2)。
3.教育実習を巡るインタビューの結果から
新型コロナ感染症にともない、教育実習に関しては、351名中49名が1週間の短縮、4 名は 中止となるなど大きな影響を受けた。また、当初の予定期間(高等学校免許取得:2週間/中 学校免許取得:3週間)での実習を行った学生に関しても実習時期の延期を含め、例年とは異 なる体験となった。本項では、教育実習を行った5名の学生のインタビュー結果について報告 する。
教育実習時期の延期、短縮等について
教育実習の延期についてJ2(延期/1週間の短縮)は、自身の問題ではないが、広く進路 選択に関わる問題として捉えていた。また、J3(延期/短縮なし)は教員採用試験と時期が 重なったことによる影響を挙げた。しかし「6月に逆に筆記対策をすごく徹底してできたので、
なんかそこは前向きにとらえるようにした」という。J4(延期なし/1週間の短縮)の「やっ ぱり2週間だとそこまで仲良くはなれないんで。頑張ったんですけどね。仲良くなろうと」と いう発言からは、 生徒との心理的距離に関して期間短縮の影響があったことが伺えた。J7
(延期/短縮なし)は、 延期された時期に1年前から計画していた活動が重なり、 教育実習期 間の調整を余儀なくされた。教育実習校の理解もあり、教員免許取得に関して延期による影響 はなかったが、同時期に個人的な辛いできことが重なり、精神的に不安定な中での実施となっ た。なお、J5は予定通りの実施であった。
J1:そうですね。やっぱり一番個人的に嫌だったのは、やはり今年結構勉強しないといけなかった年 なので、前期の間に大学に行けなかったのは結構きつかったですね。
(質問:大学と自宅だと勉強する時、何が一番違いましたか?)
J1:やっぱり、私とかは特に自分からあんまり勉強するタイプじゃなかったので。緊張感ですとか、
勉強の集中している雰囲気を簡単にはなかなか勉強に取り組めなかったので、すごく出だし遅れ ました。
J2:そうですね、えっと入構許可が下りてからは、研究のほうが止まっていたので。 あと僕自身が ちょっと家だとやる気が起きないというのがあって、行かせてもらうようにはなっていましたね。
生徒との交流 ①学校行事
J2は、1
週間短縮されたことにより生徒との交流の機会が減り、学校行事にも参加できな くなったことが残念だったという。また、学校行事に関しては、期間短縮がなくても参加でき なくなった学生もいた(J3)。
J2:僕自身は絶対に教員になるって決めていたんで大丈夫だったんですけど。あの、やっぱり、実習 先で別の大学の実習生とか、他のいろんな話を聞いていると、やっぱりそこ(教育実習)で決め る人も結構毎年いて。今年もたぶんいたはずなんで。教育実習が試験より後ろになってしまった んで、それができなくなってしまったんで。それはちょっとあれかな。今年の受験生というか、
悩んでいた子はかわいそうかなっていうことは思っていましたね。
J3:元々は6月にその試験の前にある予定で、実習で学んでから試験に挑めるかなと思っていたんです が、6月が無理で9月になったので、ちょうど試験の時期とかぶってしまったというのがすごくし んどかったです。その実技試験のところを実習で補おうと思っていたので、そこの対策はもう家で できるのは本を読むとか動画を見るとかしかなかった。なんか不安っていうのはもちろんあったと 思うんですけど、それより先になんか対策しなきゃっていう焦りが大きかったと思います。
J7:そうですね。元々はゴールデンウイーク明けの時期を予定されていたんですけど、あれはいつで しょう、延期になって9月以降になる予定です、みたいなのをたぶん春先に連絡していただいて、
ちょっとややこしい話になるんですけど、元々私たち、私たちというか、友人とその最後の学年 なので、活動を発表する場を持とうっていう話をしてて。メンバーの中に教育実習に行く子もい たので、実習が終わって夏休みも終わって落ち着いた時期にしようっていうのを1年前から計画 をしておりまして。9月の頭にしてたんですよ。ギリギリ夏休みの最終週ですかね、たぶん。本 来のスケジュールだと。だったんですけど、実習校から9月以降になりますって言われて、じゃ あ被らないかなと思って待っていたんですけど、最終的には8月の中旬から実習が始まることに なって。きれいに被ってしまったんですね、期間が。
J7: それで、でも、それで1年前からずっと準備していて、他のメンバーもいる中での計画だったので。
実習先の先生が恩師だったというのもあって、ちょっと事情をお話しして、相談したところ、その 期間、お休みを取って、また延期で受け入れられますよっていうお話しをしてくださって。ただ私 の地元が大阪ではなかったので、コロナの感染者が増えている大阪で活動があったので、戻ってき てすぐに実習再会というのは怖いから、2週間自宅待機をしてから戻ってきてくださいっていうの を言われて。その、なんでしょうね、さっきの話に戻るんですけど、友達が亡くなってしまったの がちょうど、その、これから活動の発表をするっていうタイミングだったんですよ。で、その友達 が亡くなってしまって、ちょっと気持ちが凹んだ中で1週間やって、2週間の自宅待機があってか ら実習が再会して。この1カ月くらいの間の自分の精神状態がものすごく不安定で。
J2:そうですね、でもやっぱり、せっかくの実習なんで、もっといっぱいなんて言うんですかね、子 どもたちと関わっておきたかったなと。あと他の先生たちの授業も見ておきたかったかなってい うのは思いますね。あと延期されたことによって学校行事に文化祭に参加できる予定だったんで すけど、文化祭の時期も変わって参加できなくなったんで、そういう学校行事で子どもたちがど ういうふうに楽しんでいたりとか、活動しているのかっていうのも見れなかったのが残念かな。
J3:本当は体育大会にも参加できる予定やったんですけど。その学校行事っていうものを一切関われ なかったので、ちょっと参加したかったなっていう心残りはあります。
②給食等
学校の教育活動を再開するにあたって大阪府教育庁は、「学校園における新型コロナ感染症 対策マニュアル(令和2年5月28日 Ver.1)」を配布した。その中で給食に関しては、「児童生 徒等全員の食事の前後の手洗いを徹底してください。会食にあたっては、飛沫を飛ばさないよ う、例えば、机を向かい合わせにしない、または会話を控えるなどの対応が必要です」と明記 している。そうしたこともあり、給食時の生徒との交流等に関して、例年とは異なる様子が報 告された(J2・J3・J4・J5・J7)。なお、J3・J4・J7は中学校で、J2・J5 は高等学校での実習だった。
【中学校での実施】
昼食時、班を作ることもなく(J3)、各自が黒板を向き(J4)、会話時にはマスクをする ように指示される(J7)などの状況に対して、「仲良くなれる場を失ってしまった感じがす ごく大きい」というJ3の感想は、他の教育実習生にも共通するものだろう。
【高等学校での実施】
高等学校での様子は中学校とは少し異なったものであった。J2の場合、昼食を実習生控室 J3:(質問:昼食時、生徒との交流が難しかったか?)
(班を作ることなく食事をするように決められていたため)そこがすごく私の中で難しくて。 生 徒とのなんか、仲良くなれる場を失ってしまった感じがすごく大きくて。本当に実習3週間で。
まず授業がどの人もそうだとは思うんですけど、あまりにも授業がメインすぎて、その生徒観っ ていうのもなかなかつかめなかったっていうのもあったなと思います。難しかったですね。その、
昼休みにぽこっと話しかけに行くっていうのもあるんですけど。やっぱりなんていうんですかね。
自分から話しかけていくなり、給食の時間って話したりできる機会かな、とは思うので、それが なかったのはちょっとなんか、でももうしょうがないので、それをみんなしているんですけど、
ちょっと悲しかったなと思います。
J4:(給食の時は)全員前向きです。席は元から離れているんで、 全員黒板のほうを向いて食べてい るって感じですね。会話はほぼなしです。
(質問:会話を禁止してるわけではなく?)
J4:禁止はしてなかったと思います。普通に会話しているんですけど、 やっぱある程度控えるよう にって言われているのか、子どもたちはあんまり会話はせずにっていう感じでしたね。
J4:同じ空間におって、ちょっと浮いた存在でご飯を食べてました。
J7:まずは机の並びですね、 子どもたちの。 中学校に行ったんですけど。私の時はこの2つの席を くっつけて1列みたいなのが、4列くらい並んでいたんですけど、完全に1列ずつに隔離がされ ていて、マスクが必須で。給食の時間がちょっとこう静かというか、黙って食べて、しゃべりた かったらマスクをしなさい、みたいなのがあって。その普段はないような注意をしなければいけ ないみたいな。マスクをしてない生徒に、マスクをしましょうとか。なんでしょう、今しゃべら ないで、みたいな。コロナによって必要な注意が新しく生まれているのが印象的でした。
でとるようになどの指示はあったもののクラスの中で生徒同士の交流は通常と同様にみられた という。また、J5に関してもJ5が在籍していたときとはスタイルが異なっているものの友 人同士で昼食をとっている様子が伺えた。中学と比較するとやや生徒同士のコミュニケーショ ンが活発であったと推察される。ただし、教育実習生と生徒との交流に関しては、例年と比し て十分とはいえない状況だったと推察される。それは、J5の「やっぱりもう本当にもう距離 が遠いぶん、心の距離を近づくのは難しかったですね」という声にあらわれている。
③授業等
新型コロナ感染症の影響は授業面にも及んだ。J3の回答からは、生徒がマスクをしている ことで表情が読みにくくなり、結果、教科指導にも影響があったことがわかる。一方、J7は、
直前の給食時を含めたマスクの着用に関する話に続いて尋ねたところ、マスクによる影響はそ れほどでもなかったという。しかし、J7の実習校では、特別支援学級の教員が透明のマスク を利用し、生徒にくちもとがみえるように工夫するなど、マスクによる影響は一定程度あるこ とがわかる。
J2:(昼食時)一回だけ配布したプリントに訂正があって新しいのを配りに行ったタイミングで見た んですけど。その時は普通になんか僕、高校だったんですけど。結構なんて言うんですかね、い つもどおりというか、好きな人同士で食べてる、教室で食べている感じでした。
J5:お昼ご飯を僕の学校では皆、元々教室で食べてたんですけど、それじゃなくて、結構大学みたい な感じで。なんていうんですか、そこら辺、そこら辺って言ったらあれですけど、なんかどこか 座って食べていいよっていうスタイルで。だから僕はその二人とかで食べているところにちょっ と行って、一緒に食べたりはしてたんですけど。こうなんか、皆でクラス全員で並んで食べるみ たいなのがなかったので、それは寂しいなと感じましたね。
(質問:仲良くなるとかっていうのはちょっと難しかったりとか?)
J5:そうですね、やっぱりもう本当にもう距離が遠いぶん、心の距離を近づくのは難しかったですね。
(笑い)
【マスクによる表情などの情報の減少】
J3:3週間学校に行って、ずっともちろんマスクはしたままで、給食の時は一切しゃべらずにってい う状況で授業も行います。
J3:生徒がやっぱりその、目で笑うって難しいなと思いました。
(質問:笑っているかどうかの判断ってこと?)
あ、そうです、なんかやっぱり見た目からの情報がすごく多いので。分かってるか、机間指導し ていても、なんか悩んでいるのか、本当に思考が停止しているかっていうところが表情から読み 取れなかったので。授業外で話してる時は結構皆声のトーンが高かったり、それで結構読み取れ る面はあるんですけど。個人的に問題解いていたり、道徳もしたので、意見を書くっていう、個 人の時がすごい難しかったです。
J3:考えている時にいきなりばーっと話しすぎてもいけないんですけど、本当に思考が止まっている んだったら話さないといけない。授業中がちょっと難しかったなあと思います。
J4からはグループワーク時の時間制限が挙げられた。J4はもともとグループワークをや りたいと考えていたが、指導案を提出した際に「5分に制限して欲しい」と言われたこと、他 の先生がグループワークをあまり実施していなかったことなどから、実施はしたものの「コロ ナの影響で納得のいかない授業になった」と評価した。
J5は、新型コロナ感染症関連の変化として、感染予防のための消毒作業(クラスが終わっ た後の消毒、生徒が使用したチョークや教材の消毒など)が加わったことを挙げた。チョーク 等の消毒は、休み時間に行わなくてならず、次の授業へ小走りで向かうなど、授業準備にも影 響があった可能性が示唆された。
(質問:生徒との距離感がつかみにくいとかいうことないですか?マスクをしてると表情が見えな いでしょう?)
J7:そうですね。でもなんでしょう。なんか授業、大学の授業がもう対面で始まっていたので、それ に慣れていたのもあってか、結構マスクをしてても人の顔って分かるなみたいな気持ちにはなっ ていました。
J7:ただあの、特別支援学級のある学校だったんですけど、そこの生徒たちはやっぱりマスクをして る私たちの表情に対しては口が見えてたほうがいいんだろうなっていう反応というか、そういう のはちょっと感じました。
(質問:支援級は聴覚障害とかではなく?)
J7:自閉症の方が多かったですかね。(支援学級の)教室に入られる先生方は透明のマスクをされて いる方も何人かいらっしゃいました。
【グループワークへの制限】
J4:グループワークに関しては、えっと実施するには、各5分程度って決まりが決まっていましたね。
やっぱり何10分とか長い時間しっかり考えてグループワークすることっていうのは禁止されて、
5分間の意見交換って感じのグループワークならっていうふうに言われました。
J4:マスクは絶対着用、グループワークする前に伝えて、そこから普通に班の形みたいな感じで、机 向き合わせて、5人6人程度でグループワークは行ってました。
J4:教科指導に関しても、他の先生はグループワークはあまり実施してなかったんで。僕自身がグ ループワークを実施する授業を作ることをちょっとためらった部分はありましたね。まあ実際、
実施はしたんですけど、やっぱり時間的な制限のこともあって、本当にやりたいグループワーク、
考えてたのをだいぶ短縮してっていうふうな感じで対応はしたんで。やっぱ授業の部分はちょっ と自分的にも納得いってない部分は。コロナの影響で納得いかない授業になってしまったなって いう思いがちょっとありますね。
J4:僕自身がグループワーク結構時間とってやりたい人間だったんで。 いろんな学校で行われるグ ループワークとかでも、だいたい平均的に10分くらいとってやってたんですよ。それを中学校で もやろうかなと思って指導案出した時に、指導案っていうか、その話した時に、5分に制限して ほしいと話をされたんで。
J4:(5分に)根拠はないと思うんですけど。やっぱりその長くやり過ぎると、 あれって言われるん で。目処としては5分程度で。
まとめ
生徒との交流に関しては、学校行事への参加ができなくなったこと、また、給食時の交流が できなかったことによる心理的な距離の課題だけでなく、物理的な距離についても触れられて いた。例えば、J3は、「(生徒との物理的距離)ちょっととりました。もともと中学生なので、
そこまでべったりはいかないと思うんですけど。実習先の先生自体がそんなに近いっていうこ とがあんまりなかったので。あと結構『そこ密になってるぞ』っていう注意がされている中で、
こっちから近づくっていうのが怖くて」という。同様にJ4も「やっぱ最初の2、3 日間はコ ロナのことも考えながら接していたんで、距離は詰めにくかった部分はありますね」と物理的 な距離について挙げた。新型コロナ感染防止対策としてソーシャルディスタンスが挙げられて いたため、こうした点についても学生が悩みながら対応していた様子がうかがえる。また、新 型コロナ感染下の教育実習においては、生徒との交流だけでなく教科指導の面でも複数の課題 が挙げられた。
一方で、新型コロナ感染下だからこそ、教員として理解しておく必要のある「子どもの家庭 環境の多様性」についてより具体的に考える機会にもなっていた。それは、例えば、J3の次 の発言によくあらわれている。「ああ、 えっと各家庭の事情を把握するっていうのがすごい難 しいなと思いました。やっぱり教員になるので、生徒の家庭の事情っていうのはすごいプライ バシーで、医療従事者の人がいたり、でも飲食経営してるから、絶対経済を回さないといけな
【消毒作業と授業準備】
J5:これを言ったら先生方に怒られるかもしれませんけど。あの仕事がもう、コロナ用の仕事が増え てちょっと大変でした。例えば、クラス終わった後も消毒作業。これは当たり前だと思うんです けど、消毒作業で一人一人の机を拭いていくっていうのがめちゃめちゃ大変やって。チョークと かも授業終わった後にあの、生徒たちがチョークを触っている授業があったとしたら、それをも う授業終わりから、次の授業が始まるまでの間に消毒作業をしないといけなくって、それが10分 間しかないのでとても大変でしたね。
(質問:チョークを消毒するってどうやるのかな?)
J5:ああ、えっと、なんて言うんですかね。雑巾みたいなのを僕もいつも教卓の上に置いていたので、
雑巾に消毒をアルコールを掛けてちょっと濡らして、えっとチョークを拭き、そのままじゃちょっ と書けないので、雑巾の裏で乾拭きをするっていう作業です。
(質問:やっぱり授業の準備とかはしないといけないわけじゃないですか。それを10分間にってなっ たら、それはすごく大変なんじゃないかなと思うんですけど?)
J5:そうですね、めちゃめちゃ大変なんで、もう廊下も結構小走りになったりしてましたね。(笑い)
J5:(先生も手伝う)でも手伝ってくださいと言えないので。 本当に一人でやるっていう。 そしたら 僕だけじゃなくって、結構、話聞いたんですけど、例えば英語の友達がいて、その子は、そのな んて言うんですか、日本語と英語が書いてあるパネルみたいなのを生徒に触らせてたので、それ も全部拭かなあかんみたいに言ってたので。そっちはもっと大変やな。触らせるものが多ければ 多いほど、もう大変だなと思いました。
いっていういろんな立場の人がいろいろいるなかで、でもその人の背景が分からないまましゃ べるっていう機会がたくさん増えると思うので、そこが一番危惧しているというか、難しいな あっていうのと。私だけが危惧していても、周りの人がポッと言った言葉でクラスの誰かが傷 ついてしまったりするのも怖いですし。もちろんコロナ下じゃなくてもそれはあると思うんで すけど、各家庭の経済状況とか仕事、親の仕事とかっていうのをどう扱っていくかっていうの が難しいなと思います」
令和2年度に教育実習を行った学生で令和3年度から教員として働く学生にとっては、新型 コロナ感染症の影響は、今後も続いていくことになる。また、令和3年度に教育実習を行う予 定の学生は、前年度の学生と類似した状況の中での実施となる。本項でまとめたインタビュー 結果は、昨年度、どのようなできごとがあったのか、また、事前に考えておいた方が良いこと は何か、などについて考える際のヒントとなる回答が含まれていると考える。
4.おわりに
「“オール近大”新型コロナウィルス感染症対策支援プロジェクト」の一環で実施したアン ケート調査およびインタビュー調査では、「講義」「学生生活」「日常生活」「自分の健康状態」
「感染への不安や感染予防」「自分の経済状況」「将来展望や就職」「人間関係」「ストレスを含 む精神状態」「社会状況」の10項目について尋ねている。また、インタビューを行った学生は 合計23名である。しかしながら、本報告では、一部の項目(「自分の健康状態」「ストレスを含 む精神状態」)と一部の学生(実習・演習授業受講者)に焦点を当てた報告となっている。 今 後、今回、分析対象としなかった項目やインタビュー内容についてもより詳細に分析する必要 があると考える。
参考文献
1) 京都ノートルダム女子大学(2020)オンライン授業に関するアンケート(学生)結果概要 報告 https://www.notredame.ac.jp/news/news/2159/(最終閲覧日:2021年3月30日)
2) 京 都 ノート ル ダ ム 女 子 大 学(2020)今 後 の オ ン ラ イ ン 授 業 に 向 け て 学 生 か ら の 提 案 https://www.notredame.ac.jp/news/news/2159/(最終閲覧日:2021年3月30日)
3) 大阪府教育庁 学校園における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル ~学校の教育 活動を再開するにあたって~ 市町村立学校園版(令和2年5月28日 Ver.1)