乱流組織運動の統計処理に関する考察
著者 藤松 信義
著者別名 FUJIMATSU Nobuyoshi
雑誌名 工業技術
巻 38
ページ 41‑44
発行年 2016
URL http://id.nii.ac.jp/1060/00009538/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
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*技術報告***乱流組織運動の統計処理に関する考察
Investigation on Stochastic Method for Coherent Motion in Turbulent Flow 藤松信義*
The VITA method is one of the stochastic methods to investigate the coherent motion and the bursting phenomena in the turbulent boundary layer. Some researchers pointed out that the results analyzed by the VITA method contain the invalid detection of the bursting events and the VITA method can hardly cap旬rethe dynamic structures in the turbulent boundary layer. We proposed the stochastic technique which is incorporated the wavelet transform to the VITA quantities. The analyzed result shows that the erroneous detection is removed and the bursting ph巴nomenaare captured appropriately.
Key words: Bursting phenomena, coherent structures, stochastic analysis, turbulent boundaly layer, VITA method.
1 .緒論
乱流渦運動を定量的に把握するために,速度変動波形や 画像情報を用いた条件付測定が古くから提案されている
(1.2).これらの手法の基本は乱流速度変動の時系列データを 用いる方法であり,四象限法(3.4)やVITA法(1.5,6)が利用され ている.VITA法 (VariableInterval Time Averaging method) は乱流の整構造である bursting現象を検出する方法の一つ である, bursting現象は乱れエネルギの生成に関与してお り, ejectionや sweepといった大きな速度変動を伴う渦運 動として断続的に観測される.速度変動波形からその現象 を捉えるために, VITA法では区分積分時間内における乱 れエネルギの局所分散値を適用している.局所分散値があ る闇値以上となり,特定の渦運動の状態が検知されたとき のみ,vrTA法ではbursting現象として捉えられる.しかし,
vrTA法により検出される bursting現象と実際の秩序構造
の一致は芳しくないことが報告されておりの,近年,乱流 渦構造を適切に捉える方法が多くの研究者により提案さ れている(8.12) 本論では,乱流渦運動の特徴に着目して vrTA
t
去を改良した手法について紹介する目2 .
実験装置位置でR行った.流速計測には I型熱線プロープを用いた.
サンプリング周波数は 10kHzで,各点、 60秒間計測した.
単位長さ当たりのレイノルズ 数はRe
=
5 X 105である目 熱線流速計により得られた対数速度分布をFig.2に示す 図には粘性底層を表すが=
y+と対数領域を表すPatelの 式 (u+=5.4510g y+ + 5.5 )も示した.粘性底層から乱流域 に切り替わる遷移層の位置は y+=15付近であり,十分発 達した乱流境界層の傾向を捉えている.2000 ̲j}iQ1亙E
、、、
600 x(u)
Fig.1 Schematic of wind tunnel. 30
';:;
20
10
( o I‑probe)
AU l
100 1000 y +
Fig. 1は本実験で使用したNPL式ブローダウン型風桐 Fig. 2 Logarithmic velocity profile. の測定部地面板の簡略図である.地面板前縁を原点に散り 3.統計処理と乱流渦構造解析
流れ方向にX軸,高さ方向に Y軸,スパン方向にZ軸を 3. 1 乱流組織構造
取っている.軸にはカッコ書きで各軸に対応する速度変動 乱流現象は壁面近傍における渦運動に特徴があり,組織 成分を示しである.地面板前縁は長軸40mm,短軸5mm 構造や秩序構造と呼ばれる.これまで乱流の渦構造につい の楕円形状をしている.乱流境界層を人工的に安定発達さ て,様々な提案がなされている(2.9)目基本的な乱流渦構造の せるためにx=100mmと1l0mmの位置に直径3mm高 模式図をFig.3に示す
さ3mmの円柱をスパン方向に中心問距離20mmで千鳥状 乱流境界層の壁近傍では,流れ方向に回転軸を持った筋 に配列している.境界層計測はx=1900mm. Z= Ommの 状の渦構造が存在する.その中でも乱れエネルギの生成に
本理工学部機械工学科
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乱流組織運動の統計処理に関する考察
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寄与するのは,渦運動における ejection,sweepと呼ばれ る過程である.乱流境界層における速度変動u,νの正負を 区別して分類した図が Fig.4である.Ejectionとsweep は第2,第4象限に対応しており,レイノルズ応力‑puvが 正となる.そのため,乱れエネルギの生成に寄与する.第 1,第3象限はouterinteraction, inner interactionと呼ば れており,乱れエネルギの生成には寄与しない.
Fig. 3 Coherent structure in turbulent boundary layer.
v
E象 限(11 0.., >:0)
I
1象限(11",0.1口、0)Ejectwn Iりukrmterachon
11
E象限υt、0.,><.リ)I I¥'象 限(11、0,,"<.υ)
inner mteractlOn I S weep
Fig. 4 Classification of vortex motion in four quadrant plane.
3. 2
V I T A
法Blackwelderは乱れエネルギの生成に寄与するejectionや sweep現象 を捉 え る た め に VITA(VariableInterval Time Averaging)法を提案した.乱流渦運動は断続的に生じてお
り,Ejectionやsweepといったbursting現象を検出するため に, VITA法では以下の量が導入される.
川 ) = t 1 3 3 % ・ ) 広 告 1 3 2 u e w 1 2 ( l )
例えば,町ectlOnの検出では以下の条件が適用される.
(I) vaらu(t) > ku,2かつ uくO
(II) Ejectionからsweepへ移行するときぬIdt > 0 . kは闇値であり,乱れエネルギを基準に定められる. VITA法では条件(1),(II)を満たすとき ejectionが発生した
ものと識別され,それ以外は検知されない.
乱流渦構造の検出関数D(t)は以下のように定義される
D(t)=~~ νa川)>ザ2
and du/dt > 0 (2)I 0 otherwlse
本研究では多くの解析事例(,15,7,9‑12)に従って,闘{直はk=1, 積分時間間隔Tは無次元時間 T+=10に定めた.
‑2 ‑50 O T令
50
Fig. 5 Ensemble averaged waveform of bursting phenomena measured by 1 ‑type and X ‑type probes.
3 2
.ヨ . . . ~ 1
(制)
Q
4000 Time
Fig. 6 Time histories of fluctuation velocities, VITA results and detection function
4500
Fig̲ 5はI型プローブと X型プロープによる実験結果か ら得られた速度変動のアンサンブ、/レ平均波形を示してい
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る. 平均流(速度変動 u=O)か ら 減 速 し て い く 結 果 か ら ejectionを生じていることが確認できる.その後, r+-=・5~
+5で流れは加速しており, sweepが生じている. I型プロ ーブと X 型プローブにより得られたアンサンブ ル平均波 形はよく似ている.
Fig.6は X型プローブで測定した速度変動u,νと乱れエ ネルギの局所分散値, VITA解析による検出結果の時間履 歴を示している.横軸は無次元時間(三tul/ν),縦軸は上から 順に,速度変動u,速度変動の局所分散varuu{t),速度変動 v,検出関数D(t)を示している.Ejectionを識別するために, 速度変動 uが負になる領域を斜線でハッチしである.
同ectionの検出位置は図中に縦線を示しである.
乱れエネルギの局所分散値が増大するとき速度が負か ら正に時間変化していればEjectionが発生しており D(t)=l となる.ただし, 明 u{t)が大きく,速度変動が u>Oから 減速するときはsweep現象と識別され,D(t)=Oとなる.
ここで D(t)=lとなったときの速度変動の符号に着目し てみる.速度変動uの符号は二つの検出位置においてがO である.速度変動vの符号は,初めの検出位置ではvくOで あり,次の検出位置ではv>Oとなる.Ejection はUく0,v>O の渦運動であるから,最初に検出された結果は句ectlOnを 誤検出していると考えられる.これはVITA法が単一の速 度変動で渦運動を捉えようとしたためである.
Ejection
2
1
.
雲口. .
〉 Sweep
‑3 ‑2
。
n 、2 , , ωu・Fig. 7 VITA analysis results in four quadrant plane. Fig. 7はVITA法による検出結果と速度変動の関係を示 している。横軸と縦軸は速度変動成分u,νである.町ection が検出されているので,u>O側の情報は存在しない.一方、
句ectionは第2象限の現象である.しかし,v<Oとなる検出
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結果が多数含まれていることが分かる. 上記の誤検出は,
VITA法が単一の速度変動を基に提案されているためであ る 誤検出を減らすには,速度変動u,νを同時測定して,
bursting現象を適切に捉えることができるように VITA法 を改良する必要がある.次節ではVITA法を拡張して乱流 渦構造の捕獲を行う.
3 . 3 VITA
法の拡張乱流境界層における bursting現象はレイノノレズ 応力生成 に寄与しており,単一の速度変動のみでは識別することが できない.一方,Xプローブ測定であれば速度変動成分u, vから句ectionとsweepを区別することができるここでは VITA解析を拡張して, Xプローブを用いた乱流渦構造の 捕獲を行う(9).町ectlOnは速度変動u,vがuく0,ν>0となる 現象である.そこで, VITA解析の条件を以下のように拡 張 す る
(I)川((t)+叫 ( わ や2+V,2)かつUく0,
ρ o
(II) Ejectionからsweepへ移行するとdu/ dt > 0, dv / dtくO 従来法との違いは, (I)の条件が2次元乱れエネルギで評 価されており,速度変動による巴jectionの識別を加えてい ることである その結果,句ectlonと異なる第 3象限の現 象を捉えることがなくなると考える.
1
2
‑3 ‑2 ‑1 O
u/u'
Sweep
Fig. 8 QVITA analysis results in four quadrant plane. Fig.8はQVITA法による句ectionの検出結果と速度変動 の関係を示している.QVITA法では第3象限の誤検出がな くなっていることが分かる また, Fig. 7と比べると速度 変動νの影響が加わることで, VITA法では捉えられなか ったejectionを捉えていることも確認できる.
乱流組織運動の統計処理に関する考察
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2
n u
t s
勾E
L‑
‑ 80
。
T +
Fig. 9 Time histories of ensemble averaged velocity fl uctua tion.
Fig.9はVJTA法とQVJTA法のアンサンプル平均波形を 示している.(V)が VJTA法による結果であり, (QV)は QVJTA法による結果である.アンサンブ、/レ平均波形から, TくOではejection,T>Oではsweepの渦運動が確認できる. 速度変動uに関する波形は,補正前後であまり違いはみら れない.しかし可ection発生時における速度変動vの波形 はQVJTA法の方が強くなっている.従来の VITA法はu 成分のみに着目しているので,第3象限が誤検出されて平 均化された波形により,速度変動vの成分が弱められてい たが, QVJTA法は誤検出をしないため,適切に捉えること ができている.
4 .
まとめ従来のVITA法は単一の乱流速度変動に着目しているた め,乱流渦運動を誤検出することを示した.乱流渦運動を 正確に捉えるために, VJTA法に乱流渦の速度変動成分を 考慮した QVJTA法を提案した その結果,乱流渦運動を 誤検出する問題点を解決することが可能となり,乱流組織 構造を適切に捉えることができた.
参 考 文 献
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w . w .
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び4象限解析の改良,実験力学,10(1),pp.82‑88, (2010). (10) A. Drozdz, W. EIsner, S. D帥 niak,Appl同 tion of VITA
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