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補助的な間欠的空気圧迫法は

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(1)

2019年4月16日

大阪市立総合医療センター 救命救急部 孫 麗香

Journal Club

補助的な間欠的空気圧迫法は

静脈血栓塞栓症を予防するか

(2)

本日の文献

Y.M. Arabi et al, NEJM, April 4, 2019; 380: 1305-1315

PREVENT trial

(Pneumatic Compression for Preventing Venous Thromboembolism)

(3)

Introduction

(4)

 PEとDVTは一連の病態であり、VTEと総称される。

PE DVT VTE

: Pulmonary Embolism

: Deep Vein Thrombosis

: Venous thromboembolism

肺塞栓症

深部静脈血栓症 静脈血栓塞栓症

(5)

VTE発症予防は不可欠

Geerts WH et al. Chest 2008; 133: 381S-453S.

ICU重症患者における静脈血栓塞栓症(VTE)

Nakamura M et al. Clin Cardiol 2001; 24: 132-138 Cook D et al. Crit Care Med 2010; 38: S76-82

DVT罹患率

13~31%

DVTを有する場合、人工呼吸器管理期間、

ICU滞在・入院日数の延長、院内死亡率が増加

PEを発症した場合の院内死亡率は14% (40%以上が突然死)

(6)

VTE予防法

理学療法:

早期歩行および積極的な運動、

弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法

抗凝固療法

未分画ヘパリン、低分子ヘパリン、ワルファリン

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)

日本循環器学会、合同研究班参加学会

(7)

VTE予防 ~抗凝固療法は有用~

ICUに入室した重症患者 (3,068人)

未分画ヘパリン or 低分子ヘパリン

未治療

DVT, PEの発生が約50%減少 P

I C O

Alhazzani W et al, Crit Care Med 2013; 41: 2088-98

1980年~2012年 4つのRCT

(8)

重症患者においては、全例で抗凝固療法を行うよう推奨

 予防抗凝固療法を行っても、DVTは重症患者の5-20%に発生

 出血リスクより禁忌となる症例がある。

2012年 ACCP(American College of Chest Physicians)guideline

…術後、外傷、消化管出血、血小板減少など

Arabi YM et al, Chest 2013; 144: 152-9、 Kaplan D et al, Chest 2015; 148: 1224-30

Cook DJ et al, Crit Care Med 2010; 38: S76-82

VTE予防 ~抗凝固療法は有用~

(9)

VTE予防 ~間欠的空気圧迫法は無効?~

ICU 内科系重症患者

間欠的空気圧迫法 or 弾性ストッキング を受ける

〃 を受けない

死亡率や症候性DVT, PEの発症に有意差なし。

介入群の方が皮膚障害が多い。

1982年~2009年 3つのRCT (※1つが空気圧迫法、2つが弾性ストッキング)

P I C O

Lederle FA et al, Ann Intern Med 2011; 155: 602-15

※ 弾性ストッキングを使用した巨大RCTに影響を受けた可能性

(10)

VTE予防 ~間欠的空気圧迫法は無効?~

ICU 重症外傷患者 間欠的空気圧迫法 低分子ヘパリン

ヘパリンの方が症候性DVTの発症が減少

2003年~2004年 2つのRCT

P I C O

Limpus A et al, Am J Crit Care 2006; 15: 402-10

(11)

VTE予防 ~間欠的空気圧迫法 は 有用?~

急性期脳卒中患者(2,876人)

間欠的空気圧迫法 を受ける

〃 受けない

DVT発症は間欠的空気圧迫法を受けた群で有意に減少

2008年~2012年 RCT, イギリス94施設

P I C O

Dennis M et al, Lancet 2013; 382: 516-24

(12)

VTE予防 ~間欠的空気圧迫法 は 有用?~

ICU 重症患者(798人)

間欠的空気圧迫法 or 弾性ストッキング を受ける

〃 を受けない

DVT発症は、

ヘパリンの使用や種類、外傷や手術の有無に関係なく 間欠的空気圧迫法を受けた群で減少

2006年~2008年 A multiple propensity scores adjusted analysis

P I C O

Arabi YM et al, Chest 2013; 144: 152-9

(13)

急性期脳卒中 ICU重症 ICU内科系重症 ICU外傷重症 IPC IPC

or GCS

IPC

or GCS

IPC

非IPC 非(IPC or GCS) 非(IPC or GCS) 低分子ヘパリン DVT発生

減少

DVT発生 減少

ヘパリン使用や種類、

外傷 or 非外傷、

手術 or 非手術に 関係なし

DVT, PEの発生 有意差なし

皮膚障害多い

DVT発生 減少しない

ヘパリンで減少

VTE予防 ~間欠的空気圧迫法~

間欠的空気圧迫法 IPC ; Intermittent pneumatic compression 弾性ストッキング GCS ; Graduated compression stockings

P I C O

<まとめ>

(14)

VTE予防 ~抗凝固療法+間欠的空気圧迫法~

ほとんどが術後患者のみ、軽症のみを対象

Combined intermittent pneumatic leg compression and pharmacological prophylaxis for prevention of venous thromboembolism in high-risk patients.

Kakkos SK, Cochrane Database Syst Rev 2008

過去に報告された複数のtrial

抗凝固療法+空気圧迫法 vs 空気圧迫法のみ

→ 併用群の方が発生率が低い

術後患者、軽症患者を対象

(15)

VTE予防 ~抗凝固療法+間欠的空気圧迫法~

ほとんどが術後患者のみ、軽症のみを対象

Combined intermittent pneumatic leg compression and pharmacological prophylaxis for prevention of venous thromboembolism in high-risk patients.

Kakkos SK, Cochrane Database Syst Rev 2008

過去に報告された複数のtrial

抗凝固療法+空気圧迫法 vs 空気圧迫法のみ

→ 併用群の方が発生率が低い

ICU重症患者(内科・外科)におけるVTE予防研究のうち、

空気圧迫法を併用した時の有効性について評価したRCTはまだ無い

術後患者、軽症患者を対象

(16)

VTE予防 ~弾性ストッキングは無効?~

Lancet 2009;373:1958-65

入院脳梗塞患者(2,518人)

大腿の長さのGCSを着用する

〃 しない

DVT発症は両群で同等

着用した方が皮膚障害は増加

CLOTS trial 1

P I C O

ちなみに…

Ann Intern Med. 2010;153:553-562

入院脳梗塞患者(3,114人)

大腿の長さのGCSを着用 膝下の長さのGCSを着用

大腿の長さの方がDVT発症を減少 皮膚障害の発生は同等

P I C O

CLOTS trial 2

(弾性ストッキング GCS;Graduated compression stockings)

(17)

VTE予防 ~弾性ストッキングは無効?~

Arabi YM et al, Chest 2013; 144: 152-9

ICU 重症患者(798人)

間欠的空気圧迫法 or GCS を受ける

〃 を受けない DVT発症はGCSで減少しない

2006年~2008年 A multiple propensity scores adjusted analysis

P I C O

(弾性ストッキング GCS;Graduated compression stockings)

今回の研究ではGCSを使用せずに施行

ちなみに…

(18)

“重症患者のVTE予防は、薬物治療にIPCを併用した方がいいか”

Y.M. Arabi et al, NEJM, April 4, 2019; 380:1305-1315

本日の文献

(19)

Methods

(20)

本論文の概要

成人急性重症患者

空気圧迫法群 : 抗凝固療法+間欠的空気圧迫法

コントロール群 : 抗凝固療法のみ 下肢近位DVTの発生

P I C

O

(近位 : 膝窩静脈から中枢側)

(21)

Design

 多施設ランダム化比較対照試験

 全4ヵ国、 全20 ICU施設

…サウジアラビア(9施設)、カナダ(5)、オーストラリア(3)、インド(3)

 2014年7月~2018年8月

(22)

Patient Criteria

Inclusion

 成人ICU入室

※成人の定義は各国の基準による;≧14歳、≧16歳、≧18歳

 抗凝固療法 (未分画 or 低分子ヘパリン) が禁忌でない

 体重 45 kg以上

 ICU滞在が72時間以上の見込み

(23)

Exclusion

入室後すでにランダム化から48時間以上経過

入室時すでに24時間以上のIPC治療歴あり

VTE予防として未分画or低分子ヘパリン以外の薬物治療歴あり

治療量の抗凝固療法を既に行っている患者

両下肢にIPCを装着できない

下肢静脈超音波検査ができない

IVCフィルターを留置している

妊婦

余命<7日間、緩和医療

Patient Criteria

(24)

Randomization

 ランダム化はコンピュータによるvariable-block法で行った。

 空気圧迫法群とコントロール群の1:1に均等割当

 層別化は、施設と使用ヘパリンの種類 (未分画 or 低分子)、

入院種別 (内科 or 外科 or 外傷) などで行った。

(25)

Intervention

間欠的空気圧迫法 (IPC)

・ IPCの機種は問わない。

・ できれば大腿までの長さを使用。フットポンプの追加も可。

大腿まで 膝下まで

(26)

Intervention

間欠的空気圧迫法 (IPC)

・ IPCの機種は問わない。

・ できれば大腿までの長さを使用。フットポンプの追加も可。

・ 空気圧迫法群: 1日18時間以上装着。8時間毎に外して評価。

・ コントロール群 :

薬剤療法の中断中のみ装着。

中断基準

: 合併症の発生、強い不快感や運動制限がある時、

完全な移動能力の回復、

ICU退室、 死亡、 trial 28日目

DVT・PE を疑う (中断して評価し除外されれば再開。)

弾性ストッキング : 両群とも使用しない。

(27)

薬物治療

2012年 ACCPガイドライン に基づいて施行。

(28)

Measurements

DVTの評価方法

・ 両下肢静脈の超音波検査で評価。検査技師が施行。

・ 検査のタイミング

①ランダム化後の48時間以内 ②週2回 ③DVTを疑う時

・ 大腿静脈、膝窩静脈、下腿静脈3分枝を静脈圧迫法で評価。

近位DVT

部分的であっても完全に圧縮しなければ診断。

遠位DVTやPE : 各病院の診断方法に従う。

(29)

Primary outcome

・ 新規の近位下肢DVTの発生率

Secondary outcome

・ VTE の有病率や発生率

・ ICU・病院退院、 trial 28, 90日間における死亡

・ 有害事象 : 皮膚障害、 虚血

ランダム化から3暦日後 ~ [ ICU退室 or 死亡 or 完全な移動能力の回復 or trial 28日目 ] 週2回行う下肢超音波検査で検出されるもの

Outcome

(30)

近位下肢DVT発生率が7%と想定

空気圧迫法群(薬剤+空気圧迫法)は

コントロール群(薬剤)と比較して、絶対リスク減少 3% と想定 α 0.05、power 80%で2,000人必要

実際のサンプルサイズは2,003人

Statistical Analysis

(31)

 Modified ITT解析: ランダム化が行われた全患者のうち 既にDVTを有する患者を除外

 Per protocol解析: 割り当てられた治療を受け、少なくとも 1回の超音波検査が行われた患者

 Primary outcome, Secondary analysis:

カイ2乗検定で分析

cox比例ハザードモデルでVTE発生の時間推移を分析

 Subgroup analysis:

cox比例ハザードモデルで影響因子を分析

Statistical Analysis

(32)

Results

(33)

Randomization and Follow-up

登録者 16,053人

(34)

コントロール群 : 薬剤のみ 空気圧迫法群 : 薬剤+IPC

ランダム化 2,003

登録者 16,053人

(35)

コントロール群 : 薬剤のみ 1,012

空気圧迫法群 : 薬剤+IPC 991

Primary outcome 957人

Primary outcome

Modified ITT解析 985人

Trial 1~3日目に

既にDVTを有する患者を除く

ランダム化 2,003

(36)

Baseline Characteristics

年齢は60歳ぐらい

(37)

Baseline Characteristics

8割が内科系患者

(38)

Baseline Characteristics

Renal replacement therapy – no. (%)

Continuous renal replacement 116 (11.7) 85 (8.4)

Intermittent dialysis 52 (5.2) 52 (5.1)

Peritoneal dialysis 2 (0.2) 8 (0.8)

MV患者は2/3 昇圧剤は1/3で使用

CRRTは10%程度

(39)

Baseline Characteristics

未分画ヘパリン 6割

低分子ヘパリン 4割

(40)

Baseline Characteristics

DVTリスクの無い 患者が4割

(41)

Interventions

介入期間は約1週間

(42)

Interventions

介入群はIPCを 22時間使用

(目標達成していた)

(43)

Interventions

8割が膝下IPC

2割は大腿も

43

(44)

Cointerventions

弾スト使用は1%

(45)

Cointerventions

VTE以外の理由で抗凝固療法を行っていた患者は約6%

(46)

Primary Outcome

 近位DVT発生は両群で同等。

Secondary analysisでも 同様の結果

(47)

Primary Outcome

ランダム化から3暦日後から ICU 退室

死亡

完全な移動能力の回復 trial 28 日目

いずれかのイベントが発生したら追跡終了

近位DVT発生は両群で同等

(48)

Primary Outcome subgroup

・ 使用ヘパリンの種類

・ BMI 30

・ 内科or外科or外傷

・ 心不全

・ EF 40%

・ 大腿CVカテ-テル挿入

・ 昇圧剤使用

・ 国

・ 施設

近位DVT発生は両群で同等

(49)

Secondary Outcome

VTE発生率(遠位DVT/PE含め)は両群で同等

(50)

Secondary Outcome

皮膚傷害や虚血は 両群で同等

MV期間も 死亡率も 両群で同等

(51)

Primary outcome

・ 新規の近位下肢DVTの発生率

→ modified ITT分析、per-protocol分析、

全てのサブグループ解析において同等

Secondary outcome

・ VTE の有病率や発生率

・ ICU・病院退院、 trial28, 90日間における死亡

・ 有害事象 : 皮膚障害、 虚血

→ 全てにおいて同等

Results

(52)

Discussion

(53)

“重症患者のVTE予防は、薬物治療にIPCを併用した方がいいか”

…前研究では対象が術後・軽症患者のみでRCTは無い

Discussion①

 ICUに入室したすべての重症患者に対する RCT

IPCを併用しても、VTE発生率や28日死亡を低下させない。

PREVENT trial

(54)

 前研究と異なり、IPC併用の有効性を示せなかった。

→有効性の阻害因子はなるべく減少できていた。

コントロール群におけるIPCの使用、

両群における弾性ストッキングの使用は最小限

Discussion②

 前研究と異なり、IPCによる皮膚障害がより少なかった。

→本研究の方が約20歳若い事が影響している可能性

CLOTS 3 trail:急性期脳梗塞患者、 3.1%

本研究 :成人ICU入室患者、 2.5%

Dennis M et al, Lancet 2013; 382: 516-24

(55)

Limitation

コントロール群のprimary outcomeの発生が想定より低く、

トライアルの検出力が減少した可能性

盲検化が不十分 (患者、治療者、超音波検査技師)

プロトコールのアドヒアランスは良好であったが ベースラインの超音波検査の結果が無かった。

フォローアップの超音波検査は週末の測定者不在により欠損があった。

IPCやフットポンプの機種は参加施設により異なった。

(想定7%→実際4.2%)

(56)

Conclusion

 抗凝固療法を受けている重症患者において、

IPC併用によって近位DVTの発生を予防するメリットは無い。

(57)

私見

前研究より抗凝固療法とIPCの併用によるVTE予防が

疑問点となっていたのに対し、Primary outcomeはDVTの発症であった。

抗凝固療法について実際の投与量やコントロールについての記載が無い。

使用されたIPCも多様であった。

抗凝固療法のみによるDVT発生率は4.2%、

低分子ヘパリンのみによるのDVT発生率は1.9%と低い結果であり、

抗凝固療法のみでも十分予防できる症例が選択されていた可能性がある。

(58)

私見

といった問題点はあるが、本論文は 主に内科系のICU重症患者における 抗凝固療法と空気圧迫法の併用によるVTE予防の有効性について

評価した初めての大規模RCT

内科系のICU患者では、抗凝固療法にIPCの併用は不要だろう。

… 外科・外傷系で、特にVTE高リスク群では、サンプルサイズが少なく、

併用に効果がないか結論は出せない。

→現状のガイドラインに従うしかない。

(59)

ガイドライン上、抗凝固療法とIPCの併用が推奨される場面とは?(Grade 2C)

・整形外科術後のVTE高リスク群(股関節置換術後、膝関節置換術後、大腿骨頭 骨折後)

・一般外科、腹部骨盤外科術後、胸部外科術後、開頭術後、脊椎術後のVTE高リ スク群

・重症外傷患者のVTE高リスク群(脊髄損傷、脳外傷、脊椎手術が必要な患者)

Chest. 2012 Feb;141(2 Suppl):e691S-e736S.

(60)

外科・外傷患者におけるVTE高リスク群とは?

→Caprini score 5点以上

1点 2点 3点 5点

・年齢41-60歳

・マイナー外科

・BMI>25

・下肢腫脹

・下肢静脈瘤

・妊娠中または産褥期

・原因不明の流産歴

・経口避妊薬・ホルモン薬

・1か月以内の敗血症

・1か月以内の重症呼吸不 。・慢性呼吸不全

・急性心筋梗塞

・1か月以内の心不全

・炎症性腸疾患

・年齢61-74歳

・関節鏡手術

・開腹手術

・腹腔鏡手術

・悪性腫瘍

・72時間以上のベッド上 安静・ギブス装着時

・CVが留置されている

・年齢75歳以上

・DVT既往

・DVT家族歴

・Factor V Leiden

・ループスアンチコアグラ ント陽性・抗リン脂質抗体陽性

・血清ホモシステイン高値

・HIT・他の血栓形成傾向

・1か月以内の脳卒中

・関節置換or修復術

・骨盤、大腿骨頭or下肢骨 ・1か月以内の脊椎損傷

(61)

本邦のガイドラインでは

最高リスク患者に併用を推奨

最高リスク患者とは?

VTEの既往または血栓性素因のある 大手術 61

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