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総 説 日集中医誌.2010;17:155 ~161. 人工呼吸器の技術的進歩と換気モードの変遷 藤野 裕士 要約 : 人工呼吸器の技術的進歩と呼吸不全の病態生理学の進歩に伴い, さまざまな換気モードが提案 評価されてきた 換気補助を目的として機械的陽圧人工呼吸を行う場合は, 自発呼吸との同調性,

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大阪大学医学部附属病院集中治療部 (〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15) 受付日2010年 2 月 2 日 採択日2010年 2 月 3 日 要約:人工呼吸器の技術的進歩と呼吸不全の病態生理学の進歩に伴い,さまざまな換気モー

ドが提案・評価されてきた。換気補助を目的として機械的陽圧人工呼吸を行う場合は,自発 呼吸との同調性,呼吸仕事量の軽減,快適性といった要素が換気モードの評価に重要である。 急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)のような低酸素性呼吸不 全に対して人工呼吸を行う場合は,人工呼吸器関連肺傷害(ventilator-associated lung injuries, VALI)を起こさないための肺保護換気法という観点から換気モードを評価する必要がある。 臨床データが不十分なこともあり,これまでの換気モードの中で著しく優位に立つものは知 られていないが,いずれも利点と欠点があるため,それらを十分に認識して選択する必要が ある。

Key words: ①mechanical ventilation, ②respiratory failure, ③ventilatory mode, ④acute respiratory distress syndrome

人工呼吸器の技術的進歩と換気モードの変遷

藤野 裕士

Ⅰ.はじめに

人工呼吸器は気道内にガスを送り込みガス交換を補 助するものであるが,その技術的進歩と共に機械的制 御から電気的制御へ,さらに計測技術とマイクロプロ セッサー技術の進歩によりガス供給を精密に制御でき るようになった。技術的進歩と平行して,人工呼吸器 関連肺傷害(ventilator-associated lung injuries, VALI)や呼吸中枢,呼吸筋に関する知見が深まったこ ともあり,理想的な陽圧人工呼吸を追求するさまざま な試みが行われてきた。その過程で,同一の概念に基 づいた換気モードでも人工呼吸器の製造会社によって 異なる名称を与えられたりしたため混乱を生じた。ま た,同一の換気モードでも人工呼吸器による性能差が 大きく,同じ効果が得られない例も認められる。本稿 では,換気モードの定義と分類,評価法について陽圧 人工呼吸に限定して概説し,その知識に基づき最新の 換気モードについて考察する。なお,非侵襲陽圧換気 については本稿では言及しない。

Ⅱ.換気モードの定義

人工呼吸器の換気モードは,「呼吸の型」と「吸気相 を規定する変数」によって定義される1)。「呼吸の型」 としては,強制換気(mandatory breath)と自発呼吸 (spontaneous breath)に分かれる。強制換気では吸気 終了(cycle)が人工呼吸器により行われ,自発呼吸で は患者自身により決定される。「吸気相を規定する変 数」としては,trigger,limit,cycleがある(Table 1)。 Triggerは吸気の開始を規定し,limitは吸気中に超え ることのない圧・流量・容量の値,cycleは吸気終了 を規定する。これらの変数がどのように制御されるか により換気モードが大まかに決まるが,ガス供給の際 に第一目標とする変数(control variable)により,例 えば従圧式換気や従量式換気など大まかに分類でき る。本稿では全ての換気モードの定義を述べることは しないが,上に述べた変数の組み合わせにより,ほと んどの換気モードを規定することができる(Table 2)。例外として,後述するproportional assist venti-lation(PAV)やautomatic tube compensationでは,

(2)

目標とする変数が圧でも容量でもない。

Ⅲ.技術的進歩と換気モードの変遷

初期の人工呼吸器はピストンやふいごを用いてガス を肺に供給するメカニズムであったが,これでは自発 呼吸との共存ができないという問題があった。そのた め,人工呼吸器に定常流回路を組み合わせて,人工呼 吸器が強制換気を行っていない時にも自発呼吸が可能 になるような工夫を施すことで,間欠的強制換気 (intermittent mandatory ventilation, IMV)が可能と なった。自発呼吸と同調するには,自発呼吸を検知す るメカニズムが必要である。技術的理由から,まず人 工呼吸器回路内の圧低下を利用して自発呼吸を検知す る圧トリガーが開発された。しかし,圧トリガーでは, 自発呼吸との共存のため定常流を流すと自発呼吸によ る気道内圧の低下が少なくなり,圧トリガーがうまく 働かないという問題があった。そこで,定常流を流さ ない状態で自発呼吸を可能とするために,圧支持換気 (pressure support ventilation, PSV)が登場した。も ともとPSVは,同期式間欠的強制換気(synchronized IMV, SIMV)を実現するための技術として導入された が,PSV自体がSIMVモードより患者の快適性が良い ことが分かり,自発呼吸に対する補助換気モードと認 知されるようになった2) 1980年代後半に流量トリガーが開発され,また吸気 流 量 の 制 御 メ カ ニ ズ ム の 進 歩 に よ り 圧 制 御 換 気 (pressure control ventilation, PCV)が可能となった。

Table 1 Variables to describing mechanical ventilation

Control variable   Pressure Volume/Flow Dual

Phase variables Trigger Machine Machine Machine

Patient Patient Patient

Limit Pressure Volume Pressure

Volume Flow Volume

Flow

Cycle Pressure Volume Pressure

Flow Flow Volume

Time Time Flow

        Time

Table 2 Classification of ventilation modes according to control and phase variables

Mode Control Trigger Limit Cycle

CMV Pressure/Volume/Flow Time Pressure/Volume/Flow Time/Pressure/Volume/

Flow

AMV Pressure/Volume/Flow Pressure/Volume/Flow Pressure/Volume/Flow Time/Pressure/Volume/ Flow

VC-SIMV Pressure/Volume/Flow Time/Pressure/Volume/ Flow

Pressure/Volume/Flow Time/Pressure/Volume/ Flow

PC-SIMV Pressure Time/Pressure/Volume/

Flow

Pressure Time/Flow

PSV Pressure Pressure/Volume/Flow Pressure Flow

APRV Pressure Time/Pressure Pressure Time

VAPS Pressure/Volume/Flow Pressure/Volume/Flow Pressure Pressure/Volume/Flow

PAV NA Pressure/Volume/Flow Pressure Flow

AMV, assisted mechanical ventilation; APRV, airway pressure release ventilation; CMV, controlled mechanical ventilation; NA, not applicable; PAV, proportional assist ventilation; PC-SIMV, pressure-controlled synchronized intermittent mandatory ventilation; PSV, pressure support ventilation; VAPS, volume-assured pressure support; VC-SIMV, volume-controlled synchronized intermittent mandatory ventilation.

(3)

流量トリガーでは,人工呼吸器回路に定常流を流し, 吸気回路と呼気回路の流量差を利用して自発呼吸を検 知する。これにより,人工呼吸器回路の容量に影響さ れず,圧トリガーよりも鋭敏な自発呼吸の検知が可能 となった3)。PCVと流量トリガーの組み合わせによ り,小児の人工呼吸でも自発呼吸との同調が可能と なった4) 1990年代になると,人工呼吸器開発の焦点は呼気弁 の性能向上となった。それまで患者は,人工呼吸器が ガス供給を行う吸気中に呼気を行うことができなかっ た。しかし,この頃から改良された呼気弁では吸気中 にも呼気が可能となり,呼気時における患者の呼吸負 荷を軽減した。この技術的進歩が近年の新しいメカニ ズ ム に よ る 気 道 内 圧 開 放 換 気(airway pressure release ventilation, APRV)につながっている。

Ⅳ.換気モードの評価指標

1

)自発呼吸との同調性(テスト肺を用いた評価) 自発呼吸に対する人工呼吸器の同調性などを評価す るために,テスト肺が用いられてきた。このテスト肺 は,肺のメカニクスのうち弾性と抵抗を生体に近い値 に設定し,人工呼吸器に接続して評価する。生体に近 い自発呼吸を模倣するのは技術的に長らく困難であっ たが,近年人工呼吸器の吸気流速を制御する技術をテ スト肺に応用し,自発呼吸の流量パターンを模倣する ものも現れた。テスト肺を用いることの利点は,自発 呼吸が生体のように変動せず常に一定であるため,異 なるブランドの人工呼吸器間で性能比較を行ったり, 非生理的な状況下でも計測が可能なことである。逆に 欠点としては,呼吸中枢を持たないため負荷のかかる 状況でも吸気努力が変わらず,呼吸負荷を過少評価す る可能性があることや,呼気性能,特に努力呼気時の 呼吸負荷を模倣できるテスト肺が存在しないことが挙 げられる。

2

)呼吸仕事量 自発呼吸の存在下で行う人工呼吸の大きな目的は, 呼吸筋にかかる過大な呼吸仕事量の軽減である。さま ざまな換気モードや人工呼吸器が乱立した1990年代 には,これらを評価する指標として呼吸仕事量が用い られた。呼吸仕事量の計測法は大きく分けて2通りあ り,いずれも胸腔内圧の代用として食道内圧を用い る5)。1つは,吸気時の食道内圧とガス容量をプロッ トし,胸郭コンプライアンスの直線との間で決まる面 積として表す方法である(Fig. 1)。もう1つは,食道 内圧の経時変化のグラフで吸気時の陰圧部分の面積と

して表す方法(pressure time product)である。呼吸 仕事量は自発呼吸のために患者の呼吸筋が行う仕事量 を定量的に表すため,各種の換気モードの評価や ウィーニングの指標として注目された。しかし,計測 が煩雑なため,臨床の場で日常的指標として用いられ ることはあまりない。後述するように,近年,呼吸仕 事量そのものを換気補助の目標とするPAVの登場と 共に,再度注目を集めつつある。

3

)快適性 人工呼吸器による補助換気の評価は,上に述べたよ うな客観的指標だけでは十分ではない。例えば,ガス 供給の様式を,患者の呼吸筋が実際に行うパターンに より近づけることを目的としてPAVとPSVを比較す るような場合,患者自身の感じる快適性以外に両換気 モードの差を認めないこともある6)。快適性を評価す

るのは容易でなく,visual analog scale(VAS)や,一 定レベルに患者を鎮静するのに要する鎮静薬の量に よって評価することが多い。

4

)肺傷害

急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)患者に陽圧人工呼吸を行う際に, 人工呼吸そのものにより肺を傷害してしまうVALI は,動物実験などによる基礎的研究を含めて検討され てきた。人工呼吸による肺傷害で最も重要な因子は, 最大肺胞圧または最大肺容量である。これらが過剰な 状態が続くと,肺胞構造が傷害を受けARDSが増悪す るとされており(high stretch injury)7),臨床的目安

は吸気終末圧で30 cmH2Oとされる。また,PEEPの Fig. 1 Esophageal pressure (horizontal axis) and tidal

volume (vertical axis)

The total inspiratory work associated with breathing is regarded as the sum of the work required to expand the lungs (area A) and that required to expand the chest wall (area B). Compliance can be obtained by measuring the esophageal pressure during muscle relaxation.

Positive Negative

Esophageal pressure

Compliance of chest wall Tidal volume

(4)

最適設定に関する証拠はないものの,不適切に低い呼 気終末圧設定を行うと末梢気道と肺胞の虚脱と吸気時 の再開放を繰り返し,傷害を起こすと考えられている (low volume injury)8)。換気モードがVALIにどう影

響するかについての報告は少ないが9),前述のhigh

stretch injuryやlow volume injuryを起こさないよう な設定を行うことが大原則である。その上で,各換気 モードにおける吸気流速の制御の違いが影響する可能 性がある。Maedaらは,正常肺ウサギのhigh stretch lung injuryモデルで肺傷害の進展に吸気流速が関係 していることを示した10)。Fujitaらは,さらに肺傷害 モデルで検討を行い,正常肺より低い気道内圧でも吸 気流速が影響することを示した11)。これらのデータ がヒトのARDSにも当てはまるかどうかは不明であ るが,重症ARDS患者では早い吸気流速が肺傷害を悪 化させる危険性はある。ARDS患者では往々にして吸 気流速が増大しており,人工呼吸器との同調性の観点 からはPSVに代表される補助換気や,調節換気でも PCVが優れているが,肺保護の観点からは不利な可能 性はある。 以上のような肺傷害に対する換気モードの影響を評 価するためには,生命予後や人工呼吸日数の観点から 臨床試験を行う以外に判定する方法はない。一般的に, 換気モードを患者で比較するときは血液ガス所見など の生理データを用いることが多いが,ARDS患者では 間違った結論に陥ることがある12)。実際の臨床試験 でも,肺保護換気法の方が侵襲的換気法より初期の血 液ガスは高値を示すことが知られている13)。現時点 でARDS患者に対する換気法で十分な証拠として認 められているのは,ARDS Networkによる低一回換気 量換気しかない。従ってARDS患者に対する換気モー ドの選択は,一回換気量の設定や最高気道内圧を一定 以下にしている限り,特別に推奨すべきものはない。

Ⅴ.最近話題となっている換気モード

近年,いくつかの換気モードが話題になっている。 これらの換気モードは必ずしも新しいものではない が,技術的進歩により過去の問題点を克服し再登場し たものもある。これらの換気モードに関して,簡単な 解説と現時点での臨床的位置づけ,今後の課題を述べ る。

1

)高頻度振動換気法(

high frequency oscillatory

ventilation, HFOV

) 既に述べたように,ARDS患者の人工呼吸において は,いかにVALIを防ぐかが重要となる。HFOVは解 剖学的死腔以下の一回換気量で高頻度(3〜15 Hz)に 換気を行うことにより,肺胞換気を維持する。人工呼 吸器回路内の圧は大きく振幅するが,末梢気道に近づ くにつれて振幅は小さくなり,肺胞レベルではほとん ど気道内圧の振れはなくなるとされている14)。従っ て,最低気道内圧,平均気道内圧,最高気道内圧がほ とんど同じ状態で換気を行うことができる。HFOV は機械的制約から,まず肺の未熟な新生児において, 気道内圧を制限する目的で臨床応用された15) 1990年代になりARDS患者に対する肺保護換気法 が注目されるようになった。肺保護換気法は,最高気 道内圧の制限と高いPEEPの組み合わせからなる。重 症ARDS患者では最高気道内圧とPEEPの差が小さく なると,肺胞換気を維持することが難しくなるが, HFOVでは容易にPEEPを設定できるため,究極の肺 保護換気法として注目を集めた。成人ARDS症例で HFOVを行うに当たっては,近年開発された専用の人 工呼吸器を用いる必要がある。新生児でのHFOVと の違いは,定常流が相対的に小さく,自発呼吸が混在 すると平均気道内圧を維持できなくなることである。 従って,成人ではHFOV中は深い鎮静,時には筋弛緩 を要することが多い16)。深い鎮静や筋弛緩は人工呼 吸日数が延びる要因となり,予後の観点から必ずしも 有利とは言えない。新生児での経験から,HFOVでは 従来型換気法より容易に肺胞換気を維持することがで きるととらえられていたが,成人例の報告では必ずし もそうではなく,肺胞換気維持のため気管チューブの カフの空気を抜く必要が生じることもある17)。小児 ではカフなしチューブを用いる効果が大きかった可能 性があり,HFOVでの一回換気量低減効果を疑問視す る意見もある。また,気道近位部ではガス流速が数 100 l・min-1にも達するため,末梢気道に対する影 響も懸念される。いずれにしても現時点では,成人 ARDS症例に対するHFOVは予後を改善する効果が 証明されておらず,特殊な専用人工呼吸器を必要とす ることからも,日常的に臨床使用するまでの地位は確 立していない。

2

PAV

PAVは,Younesが1992年に提唱した補助換気モー ドである。これまでの換気モードではガス流量制御や 目標気道内圧を固定していたことから,患者の自発呼 吸努力が増したときに過少補助に陥る可能性があっ た。Younesは,補助換気は患者の自発呼吸努力が大 きいときは大きく,小さいときは小さくあるべきだと 考えた。そこで呼吸筋出力(Pmus)の一定割合を補助 す る 換 気 モ ー ド を 考 案 し,proportional assist

(5)

ventilationと名付けた18)。PAVの実施のためには

Pmusをリアルタイムで評価する必要があるが,Pmusは

直接計測できない。そのため,次の運動方程式を利用 する。

Pmus=E×V+R×F

(E, elastance; V, volume; R, resistance; F, flow) 患者のEとRが分かれば,人工呼吸器はVとFを計 測できる。問題は自発呼吸存在下に患者のEとRを計 測する方法が知られていなかったことである。この技 術的制約が原因で,長らく試作型人工呼吸器による報 告しかなかった19) PAVはまず最初に,非侵襲陽圧換気専用人工呼吸 器に搭載された。この人工呼吸器では,EとRを計測 する代わりに正常肺,閉塞性肺傷害,拘束性肺傷害, 混合性肺傷害の4つの代表的数値のセットをあらかじ め用意し,ユーザーの判断で選択する方法を選んだ。 近年になって,人工呼吸器自体がEとRを計測する機 種が登場した。計測は,自発呼吸中に短時間の気道閉 塞が定期的に起こることを利用する。気道閉塞は短時 間のため呼吸中枢に認識されないことから,自発呼吸 の影響を受けずにEを計測できる20)。Rは,気道閉塞 開放直後の数ミリ秒間の圧低下をガス流速で割ること で求める。このシステムが計測するRは呼気抵抗であ るが,これを吸気抵抗の近似値として用いている。 EとRを計測しない,あるいは近似値を用いるシス テムの欠点として,実際の呼吸仕事量を上回る圧補助 が行われる(run away)危険性があることが挙げられ る。この現象は補助率が100%に近い場合に起こりや すく,原因としては,前述のようにEとRが正確に得 られていない場合以外に,肺の圧容量曲線が直線でな く,高肺容量ではEが低下することも原因の1つと言 われている21)。いずれにしても,PAVでは安全のた め適切な高気道内圧アラームを設定しておくことが重 要となる。 PAVの利点としては,患者の換気補助をPmusに応 じて,すなわち呼吸中枢の活動に比例して行うことか ら,患者にとってより快適な換気補助となることが期 待できる。ただPSVと比較した報告では,生理学的パ ラメータには差が認められず,VASにわずかな差し か認められなかった6)。PAVの臨床的位置づけは現 在のPSVにあると思われるが,大多数の患者ではその 差は大きくない。PAVが真価を発揮するのは,換気 補助の快適性がより重要な長期人工呼吸患者であるか も知れない。

3

APRV

APRVは,最初の報告が1987年と,換気モードとし てはそれほど新しいものではない22)。APRVは2レ

ベルの持続性気道内陽圧(continuous positive airway pressure, CPAP)を用い,高圧相のCPAPで肺の含気 と酸素化の改善を狙い,これに低圧相のCPAPを短時 間組み合わせることで低圧相との移行の際に換気補助 を行うのが基本原理である。初期のAPRVでは,2種 類のCPAP弁とタイマーを組み合わせて定期的に CPAPの圧を切り替えていた。通常の人工呼吸器で APRVを行えなかったのは,高圧相(PCVでは吸気に 当たる)では呼気ができず,自発呼吸ができなかった ためである。APRVは高圧相による高PEEP効果と, 低圧相と高圧相の移行時に起こる換気補助効果を組み 合わせたもので,低圧相の頻度や時間を増やすことに より換気補助効果を増すことができる。しかし,低圧 相の時間を長くしすぎると,ARDSのような呼吸不全 患者では肺胞虚脱が起こる危険性が増す。肺胞虚脱を 防ぐためには,低圧相の圧を上げるか,時間を短くし て内因性PEEPを意図的に利用するが,いずれの場合 でも,換気補助効果は低下する。実際に低圧相の時間 を変化させて呼吸仕事量を評価した研究でも,低圧相 を一定時間以下にすると呼吸仕事量が急増することが 示されている23) APRVは,高PEEP効果をねらってARDS患者に用 いられることが多いと思われ,自発呼吸を温存するこ とによる血行動態や換気血流比への好影響が期待され る。しかし,ARDS患者に適応する際には,既に述べ たように肺保護効果の観点から評価する必要がある。 APRVでは最高気道内圧が制御されているため肺保 護的とされるが,実際は自発呼吸を温存するため,肺 内外のtranspulmonary pressureは見かけ以上に高く なる危険性がある。また高圧相から低圧相に移行する 際にlow volume injuryを起こす危険性も指摘されて いる24)。APRVの臨床的位置づけは,最適設定戦略

を含めて今後のさらなる検討を要する。

4

Neurally adjusted ventilatory assist

NAVA

) NAVAは,自 発 呼 吸 吸 気 時 の 横 隔 膜 電 気 活 動 (diaphragmatic electrical activity, EAdi)を用いる換 気モードである。吸気開始,終了,吸気中の補助を EAdiに基づいて決定する25)。EAdiは横隔膜電気活 動の信号を得るための電極を経食道的に挿入して計測 する。単位当たりのEAdiに対してどれだけの圧補助 を行うかは,ユーザーが設定する26)。2010年1月時 点で本邦にはNAVAを実施できる人工呼吸器がない ため,文献に基づいた評価となるが,NAVAは電気信 号に基づき動作することから,内因性PEEPにより吸 気トリガーに遅れが生じる慢性閉塞性呼吸器疾患

(6)

(chronic obstructive pulmonary disease, COPD)患者 や新生児では吸気の同調性改善が期待できる。また, 動物実験の結果ではあるが,一回換気量を患者自身が 制御することになるため,自発呼吸を温存しつつ低一 回換気量による肺保護換気法と同程度の肺保護効果が 得られるという報告もある27)。NAVAは現時点では 実験的換気モードであるが,COPDのようにこれまで 技術的に対応できなかった病態では画期的な換気モー ドとなる可能性がある。

5

Dual mode

これまでの換気モードの多くは,ガス供給の際に第 一目標とする変数は圧,流量など1つであった。しか し,近年の制御技術の進歩により,例えば従圧換気モー ドで換気圧を制御することにより目標一回換気量を設 定する,などといったことが可能となった28)。この ような制御を行う利点は現時点でははっきりしない が,いくつかの目標値を定めて換気状態を制御する技 術は,将来的には人工呼吸器の自動制御につながると 考えられる29)。現時点では人工呼吸器設定戦略に標 準と呼べるものが少ないため,技術を活かすことがで きていないが,今後人工呼吸療法における知見の増大 と共に発展していく可能性がある。

Ⅵ.最後に

技術の進歩と共に,人工呼吸器にはさまざまな換気 モードが搭載されてきた。中には臨床の場での要望か ら発展したものもあれば,新技術を活かすことを目的 として搭載されたものもある。一般的ユーザーにとっ ては,利用できる換気モードが多いことは必ずしも利 点ではなく,混乱の原因ともなる。人工呼吸の目的に よってそれぞれの換気モードを正しく評価し,利用し ていくことが重要である。 文 献

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(7)

Abstract

Technical advances in ventilators and development of ventilatory modes

Yuji Fujino

Intensive Care Unit, Osaka University Hospital 2-15 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan

Various ventilatory modes have been proposed and evaluated in clinical settings in parallel with advances in the engineering of ventilators and knowledge of the pathophysiology of respiratory failure. Synchrony between sponta-neous and mechanical breathing, a reduction in the workload required for breathing, and comfort are the most important factors when mechanical ventilation is performed to assist spontaneous breathing. However, the ventilatory modes should also be evaluated with regard to lung protection to avoid ventilator-associated lung injury in patients with hypoxemic respiratory failure, such as those with acute respiratory distress syndrome. At present, no mode is regarded as superior to the others, partly because of insufficient clinical data. Clinicians should select a ventilatory mode after considering the advantages and disadvantages associated with each mode.

Key words: ①mechanical ventilation, ②respiratory failure, ③ventilatory mode, ④acute respiratory distress syndrome

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Table 2 Classification of ventilation modes according to control and phase variables

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