論文内容要旨
論文題名:ピアスタッフが病棟で働くことの意義と課題
‐ピアスタッフに対する医療スタッフの意識調査‐
専攻領域名:医療マネジメント領域
氏名:池ヶ谷訓章
内容要旨
近年、精神保健福祉領域では障害のある人が自らの体験に基づいて、同じ障害のある人を 支えあうピアスタッフが活躍している。精神科単科の A 病院では、精神疾患で入院経験の ある患者を障害者雇用枠の職員として採用した。今回、初めて病棟にピアスタッフを導入し た。受け入れる際、一部の医療者からは、ピアスタッフを病棟に受け入れることに対して不 安の声が聞かれた。そこで、ピアスタッフに対する医療スタッフの意識を調査し、ピアスタ ッフが病棟で働くことの意義と課題について検討する。研究方法は、A病院職員286名を対 象とし、アンケートを用いて評価した。質問項目は、職種・精神科経験年数・ピアスタッフ との就労経験・ピアスタッフについて・ピアスタッフと働くことについて・社会的距離尺度
(SDSJ:The Japanese-language version of Social Distance Scale)とした。今回はピアスタッフ との就労経験の有無を軸に結果を分析した。
165名から有効回答が得られた。(有効回答率57.7%)。更に、牧田が作成した社会的距離 尺度をもとに、Lie scale 2点以上の22名を除外し143名のデータを基に分析した。一緒に 働きたいという思いは、ピアスタッフと就労経験があるスタッフの方が、ないスタッフに比 べて、有意に高かった。不安に思うことについては、「スタッフとの関係性」、「ピアスタッ フへの接し方」が就労経験のないスタッフの方が有意に高かった。SDSJの比較では、ピア スタッフと就労経験のあるスタッフの方がないスタッフに比べて、有意に社会的距離が近 かった。
ピアスタッフと就労経験を持つことは、病棟スタッフの肯定的理解を深める機会となり、
ピアスタッフへの偏見是正に繋がると考える。病棟スタッフはピアスタッフと働く中で、入 院患者に対し良い影響を与えているという印象が残り、ピアスタッフを肯定的に捉えるこ とができたのではないかと考える。さらに、専門職だけでなくピアスタッフならではの視点 を共有することで、新たなチーム医療の効果が期待できる可能性が示唆された。ピアスタッ フの力を最大限にするためには、ピアスタッフが働きやすい環境を整えていくことが今後 の課題である。