• 検索結果がありません。

英語英文学研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "英語英文学研究"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

動詞と目的語の間 (I)

著者 小川 明

journal or

publication title

英語英文学研究

volume 3

page range 77‑92

year 1997‑10

出版者 東京家政大学文学部英語英文学科

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009603/

(2)

動詞と目的語の間(1)

小 川 明

0.動詞と目的語の間の関係は多様であると言われている。これは国広

(1970:189)を見ると了解できる。そこでは「動詞+目的語」構造におけ る動詞と目的語の間の意味関係を直感的に掴んで列挙している。括弧内は 彼による仮の名称である。

                                1234567891011 ︵  ︵  ︵  ︵  ︵  ︵  ︵  ︵  ︵  ︵  ︵

国広はこれを決して網羅的なものと見倣していない。

・4Modern English Grammar, III ch. XIIで なものとして「結果の目的語(object of result)」、

object)」、

げながら、

(1970:

 plant trees(ordinary object).

 rUn a train(CaUSatiVizatiOn).

Paソadriver(deletion).

加ηgthe wall with pictures(hypallage).

tap one s fingers on the table(instrumental object).

pour a glass fu11(receptacle object).

 dig a hole(object of result).

shoulder one s way through a crowd(stratification of meaning).

 sleep a sound sleep(cognate object).

pass the gate(10cal object).

 hear mztsic(source of stimulus).

      さらにJespersenが

      ,     object について割会明瞭       「同族目的語(cognate

  「手段の目的語(instrumental object)」、「使役(causative)」を挙

  あっさり次のような告白をしていることに触れている(国広

190))。

(3)

 on the whole we must say that on account of the infinitive variety of meanings inherent in verbs the notional(or logica1)relations between verbs and their objects are so manifold that they defy any attempt at analysis or classification(§12.12).

 動詞と目的語の間の関係が多様であることは、たしかであるが、主語と 動詞の問の関係も一様ではない(cf. Fillmore(1968))。

(1) a.John opened the door with a key.

  b.Akey opened the door.

  c.The door opened.

  d。 Iliked the play.

  e.The play pleased me.

(1a)でJohnは動作主、(1b)でkeyは道具、(1c)でthe doorは状態の変化 をこうむるもの、(1d)でlikeはある感情を持つもの、(1e)でthe playは ある感情を引き起こす原因になっている。もっとも主語と動詞の間の多様 さは、動詞と目的語ほどではないかもしれない。ここから出てくる問題は 主語と動詞の間と、動詞と目的語の間の関係にはなにか組織的な違いがあ るのかということである。これはいわゆるDowty(1991)などが扱っている 項選択の問題に繋がって行くであろう。

1.本稿で問う問題は、なぜ動詞と目的語の間の関係はこのように多様な のかということである。基本的な事から考えてみよう。我々の前に拡がる 現実世界は多様な関係に満ちている。しかし言語は、その関係を表現する ために限られた手段しか持っていない。この関係を近藤(1984:1−2)は見 事に捉えている。次の引用は現実世界において無数の関係が存在すること

を、色の比喩で捉えている。

ある風景に何種類の色が見いだされるかということと、それを描く

(4)

のに何種類の色または絵の具を用いるかということは、一応別の問題 である。単なる概念としての格、あるいは純粋な概念カテゴリーとし ての格は、風景の中の色のようなものであり、それに対する言語使用 者の意識そして直感がどうあろうとも、あらゆる言語に存在する関係 である。すなわち、いかなる言語においてであれ、文中で機能する名 詞句は、文中の他の語または文全体に対して、ある文法関係、言い換

えれば、ある格関係を有する。……

 このように、概念カテゴリーとしての格が存在することを認めるこ とはできても、それが幾つ存在するのか定かではないし、まして具体 的な名称をもって、それを網羅することは容易でない。これはちょう ど、色が幾つ存在するか、何という名の色があるかを言うのが困難で あるのに似ている。色について、われわれは一般に赤とか青とか大雑 把な言い方をするか、そうでなくとも、せいぜい黄緑・赤紫・濃紺と いった程度の分類ですませてしまうのであるが、厳密に言おうとする ならば、真に厳密に言い得るかどうかは別にして、これらの色をほと んど無数に下位区分しなければならなくなる。

 現実世界のさまざまな関係を言語という限りある手段で表わすためには 必然的に、現実世界の多様な関係をなんらかの基準により整理し言語の持 つ枠に押し込めなければならない。以下の引用も、近藤(1984:4−5)から

である。

…… i語尾、前置詞、後置詞、そして語順のいずれであれ、これらは

複数の格を代表する形態であって、ある特定の格のみを表示するもの

ではない。すなわち、ほとんど無数に存在するように思われる格の関

係は、微妙な差異を無視することによって、ある限られた数の型に分

類され、それぞれの型にある形態が当てられているのである。これは

ちょうど、無数の色があって無数の絵の具がないのと同じことである。

(5)

あるいは、地図が現地と違うこと、つまり現地のすべてが地図に書き 込まれていないのと同じことである。

 概念カテゴリーとしての格とそれを表わす形態との間に一対一の対 応関係がないと言うとき、次の2つの場合を区別しなければならない。

 ㈹ 単一の形態または形態素が複数の格を表す場合  (B)複数の形態または形態素が単一の格を表す場合

㈲の例として、次の(2)や(3)を、(B)の例として(4)や(5)を挙げている。

(2) a. Ileft the station before noon.

  b. Ireached the station before noon.

(3)a.わからないのなら、太郎に教えてもらいなさい。

  b.わかっているのなら、太郎に教えてあげなさい。

(4)a.Igave him a present.

  b.Igave a present to him.

(5)a.これは母にもらった指輪です。

  b.これは母からもらった指輪です。

 ㈹の極端な例、つまり単一の形態素が相当の数の現実世界の関係をカバ ーする例は、日本語における「の」であり、英語におけるofと所有格など である(cf.小川(1996))。ここで取り上げている動詞+目的語も相当数の 現実世界の関係を同一形式で表現する(A)のグループに入る。

2.さて生成文法におけるθ役割は、現実世界に無数に存在する格関係に もかかわらず、少数の関係を設定しようとする試みとしても捉えることが できるであろう。近藤の比喩を借りれば、自然界にある無数の色に対して、

何色の絵の具を用意すればいいのかということになる。その時次の二つの ことが問題になる。

 (1)ある一つのθ役割(絵の具)がどのくらいの範囲の現実世界の関係

   をカバーするのか。

(6)

 (2)θ役割をいくつ設定したらよいのか。

もし意味だけを基準にθ役割を決定しようとすれば、現実世界が無数と思 われる関係を含んでいる訳であるから、決定するのはなかなかむずかしい であろう。それゆえ一種のあいまいさ不確定さを含まざるを得ないのであ る。θ役割の起源となったFillmoreの格に関しても、いくつかの問題点を 伴っていた。たえず格の数と種類は修正を受けてきた。そして格の数を無 制限に増やす危険があった。.これは以上のことを考えるとあたりまえのこ

となのである。

 Fillmoreの格という概念の延長である生成文法のθ役割についても、あ る種の不安定さを伴っている。θ役割の種類と数については明確に決定さ れている訳ではない(cf. Dowty(1991:547−542))。なぜこのような事が生

じるのかは格文法の場合と同じであると思われる。安藤他(1993)では定 義は明確ではないが、文法理論でよく使われるθ役割として、「主題」「動 作主」「起点」「着点」「場所」「時間」「被動者」を挙げている。もっとも言 語理論にとって重要なのは「1つの項は唯一のθ役割を持ち、1つのθ役 割は唯一の項に付与される」というθ規準を守ることであって、各項の役 割を一々指定することは必要なことでも望ましいことでもないとすれば、

差異が重要になるわけであるが。

3.今まで見てきたことから明らかなように、現実世界に存在する関係だ

けを手がかりにする限り、動詞と目的語の関係の問題にアプローチするの

は困難である。言語学にとって重要な問題は、現実世界のなかに存在する

数えきれないほどの多様な関係そのものでなくて、その関係を言語がどの

ように区別をして表現しているかということである。ある言語が同一形式

で表現している限り、それらの現実世界の関係はその言語では区別しない

で一つのものとして扱っていることになる。もっとも同じ現実世界の関係

を別の言語では区別して表現をするかもしれないということは常に留意し

なければならない。たとえば日本語では区別しているにも拘らず、英語で

(7)

は区別しない例を挙げてみよう。

(6) Xを壊す    Xを書く    Xに会う    Xに入る    Xと結婚する    Xと等しい    Xが好きだ    Xが聞こえる

break X write X meet X enter X marry X equal X like X hear X

 英語では動詞+目的語と同一形式で表現されるが、日本語では、助詞が それぞれ異なっていて細かく分けられている。言語は外界をそのまま反映 しているのではなくてそれぞれの言語が独自のやり方で外界に切れ目を入 れ、ある見方を採用しているのである。このことは、ある語が現実世界の どの部分を守備範囲にするのかという問題と似ている。例えば鈴木(1990)

の例を取りあげてみよう。日本語の「オレンジ」と英語の orange は、現 実世界の切り取り方がずれている。「オレンジ」はいわゆる蜜柑色である が、 orange は明るい茶色までをその守備範囲としている。言語によって、

語の現実世界の切り取り方はちがっている。動詞+目的語が日本語と英語 で食い違う問題と、語の現実世界の切り取り方が違う問題は、同じ性質の

ものと思われる。

4.それでは本稿のテーマである英語の動詞と目的語の関係に目を向けて みる。以下の文を観察してみよう((7)、(8)などの例文については吉川(1995)

を利用あるいは参考にさせて頂いた)。

(7) a. He attended the funeral.

  b.Who is attending you?

  c. Iclutched the child s hand.

  d.We consult a map.

(8)

e五経hL工kL m焦

0.

  これらだけを見ているかぎり英

わち動詞+目的語で表現していて区別はしていない。

味でこれと平行に次のような表現が存在する。

(8)a.

   b.

   C.

   d.

   e.

   f.

   9・

   h.

   i.

   j.

    k.

    1.

m几

He entered the hall.

Acry escaped her lips.

Japan fought the US in World War II.

The police are investigating the crime.

Tom shot a bird.

The name has slipped my memory.

The song doesn t suit his voice.

This tie matches this suit.

We meditated revenge.

She met a difficulty.

The car rubbed the wall.

       語ではさまざまな関係を同一形式、すな       ところがほぼ同じ意

He attended at the funeral She is attending on the patient.

Iclutched at the child s hand.

He consulted with the specialist.

They entered in to negotiations.

He escaped from the police.

Japan fought against the US in World War II.

The police are investigating in to the crime.

Tom shot at a bird.

It slipPedノテo〃z his fingers.

The position suits with his abilities.

The color matches well with his suit.

Imeditated on my failure.

She has met with a lot of sorrow in her life.

(9)

  o.The car rubbed against the wall.

吉川(1995)に述べられているように、実は、前置詞がつくものと、そう でないものは微妙に用法が異なることが多い。例えばenterはある「場所」

に入るのに使われるが、「交渉」など抽象的な物の中に入る時は、enter into が使われる。shootは「撃ち落とす」という行為の達成を表わすが、 shoot atは必ずしも達成を示さない。しかしこのような差は本稿の目的にとって は無視できるだろう。前置詞のあるなしで動詞と目的語の関係は変わらな いかちである。enterの目的語はintoの有る無しに拘らず入っていく対象 を示す。shootとshoot atの目的語はどちらも弾丸が飛んでいく対象であ る。実際このような差はその派生名詞形においては、中和されてしまう。

「場所」と抽象的な「交渉」のどちらの場合もentranceはintoを取り区別 はなくなる。entrance into the cityやone s entrance into public office

(公職)のようにである。escapeはan escape from the earthやan escape from deathのように常にfromを取る。

 ただし、前置詞が付くと、全く動詞と目的語の関係が異なってしまうも のがある。

(9) a.The police searched the suspect.

  b.The police searched for the suspect.

(9a)では容疑者は身体検査の対象であり、(9b)では行方を追っている対象 である。しかしこの場合は、派生名詞形の時も前置詞は異なるのである。

(10)a.the search of the premises by the police.

  b. the search/eor the lost plane.

本稿の目的にとって後者の例は注意してはずさなければならない。

 (7)を見ている限り同一形式で表現されている関係が、(8)では異なる表現 形式、具体的には異なる前置詞を伴って表わされている。この時初めて言 語学の観点からこれらの関係は有意味なものになる。つまり英語では(8)に おいてはじめて、無数の現実世界における関係に線を引き区別するのであ

る。

(10)

 それでは(7)と(8)の関係はどのように考えたらよいのであろうか。これは、

Gruber(1976)によって既に「編入(incorporation)」という語形成規則で 捉えられている。(8)では前置詞が用い・られているが、それが示す概念が編 入されて、(7)では一つの動詞として具現化されている。ここではそれとは 逆に考えてみる。動詞と目的語の意味関係をよりはっきり示すために、動 詞の中に含まれていた意味要素が前置詞として顕在化して表現されたので あると。その時異なる前置詞を用いることは、無数に存在する現実の関係 を英語という言語がある仕方で区別していることになる。つまり動詞+目 的語で区別なしに表現されていた関係がここにおいて、形式の上で差異を 生じ、英語という言語が現実の世界をどのように解釈しているのかを知る 手がかりを与えてくれるのである。(1)

5.一方(7)と対立的に、必ず前置詞を使う形しか存在しないものがある。

次のような動詞の場合である。

(ll)a. I apologized to him for her.

  b.We object/consent to the proposed new airport.

  c.Isympathized with her in her suffering.

  d.He will not respond/reply to such a question.

ここでは前置詞から動詞とその目的語の関係は推測できる。

 これとは逆に前置詞が決して現われない動詞がある。

(12) a. He described the event.

  b.The air attack destroyed the city.

  c.They discussed the problem.

  d.The news gratified us.

  e.She resembles her mother.

ここで生じる疑問がある。なぜ(7)と(8)のように前置詞はあってもなくても いいのに、(ll)の場合は必ず前置詞を伴った表現しかないのか。また⑫のよ

うに前置詞を伴わない表現が存在するのか。なにかこの三者の問に差があ

(11)

るのだろうか。あるいは単に個別的なことにすぎないのであろうか。例え ば、argue(on), debate(on), dispute(on)対discussや、 meet(with)対 encounterなど考えると個別的なことのような感じがする。しかしはっき りしたことは、もう少し広範にデータを検討する必要がある。この問題は 将来の課題としたい。

6.すこしここで本題から外れる。(7)と(8)の関係のように、一方では隠れ ている関係が、他方で前置詞によって顕在化するケースをもう一つあげる ことができる。いわゆる間接目的語である。

⑬ a.Have you paid him the money?

  b.Have you paid the money to the boy?

(1の a.She bought her a new hat.

  b. She bought a dictionary/cor her brother.

⑮ a.We asked him a question.

  b.We asked a question(of the boy.

(8)と異なり前置詞はtoやforなど極くわずかであり、動詞と間接目的語の 関係は今まで問題にしてきた動詞と直接目的語との関係ほど多様ではない ことが明らかである。toによって示されるのは主として動詞の示す行為に よって移動した具体的あるいは抽象的な物の受け取り手であり、forの場 合は、動詞の示す行為によって恩恵を受けるものである。

7.さて(7)のように動詞+目的語と一様に表現されるのにも関わらず、実 は違う部分では区別して表現せざるを得ない例がもう一つある。それは動 詞の派生名詞形を考慮する時、明らかになる。一般に派生名詞形を用いる 時、その目的語に対応する名詞句の前にはofが置かれる。

⑯  destroy X    destruction of X

   indicate X    indication Of X

   include X    inclusion Of X

(12)

  invade X    invasion of X

 しかし常にそうなるとは限らない。さまざまな前置詞が使われるのであ

る(cf. lto(1991)、ノJ、川(1996;1997))。

(1の  admire X

  attempt X   enter X   escape X   greet X   request X   resemble

  admirationノわγX

.  attempt at X   entrance in to X   escape fro〃z X   greeting to X   requestノわγX   resemblance to X

やはりここにおいても、動詞+目的語においては、区別を受けなかった関 係が前置詞を媒介にして顕在化している。

 (8)と(11)の動詞の場合は派生名詞になっても、その前置詞がそのまま使わ れることになる。

(18) attend at X

  escape from X   meditate on X   meet with X   aplogyze to X    object to X

attendance at X escape from X meditation on X meeting with X apology to X objection to X   sympathize with X sympathy with X

一番問題なのは、働のように前置詞を伴うことが決してない動詞の類であ る。実は、これらの動詞もまたofに限らず多様な前置詞を取るのである。

それを見ることによって動詞と目的語のさまざまな関係を明らかにするこ とができる。

(19) destroy X    destruction of X

  discuss X    discussion on X

  gratify X    gratification to X

(13)

   resemble X    resemblance to X

 動詞+目的語の関係は無数と言っていいほどあるはずなので、これだけ を眺めているかぎりでは、英語という言語がその中にどのような区別を持 ち込んでいるのか明らかにならない。ところが以上挙げたような二つの場 合から、英語が区分を持ち込んでいるのがわかる。

8.実は、動詞+目的語では区別がされていない差が顕在化する場合をさ らにもう一つ指摘できる。しばしば動詞はそれに対応する形容詞を持って いる。その時伴う前置詞が異なるのである。そしてその派生名詞形もまた 同一の前置詞を伴う。(2)

⑫O)allure X   contradict X   embarrass X   envy X   help X   obey X   obstruct X   offend X   regret X   repent X   thank X

be alluring to X・

be contradictory to X be embarrassing to X be envious(ゾX be helpful to X be obedient to X be obstructive to X be offensive to X be regretfulノわγX be repentantプ「or X be thankful to X

allurement to X contradiction to X embarrassment to X envy(ゾX

help to X obedience to X obstruction to X offense to X regretノわアX repentanceプわγX thanks to X

 以上動詞+目的語では表現上全く区別がない関係が、それと関連ある他 の三つの領域で区別されることがわかった。その区別する機能を担ってい るのが前置詞なのである。

9.各々の動詞の派生名詞形がどの前置詞をとるかが決まっているとすれ

ば、何によって決定されるのか。これは小川(1997)で示したように「意

味が類似している動詞の派生名詞形は同じ前置詞を取る」という原則でほ

(14)

ぼ説明できるのではないかと思う。例えば、「類似・一致」の意味を持つ語 はtoを伴う。

(21)

approach(to)

apProximate(to)X conform(to)X correspond to X resemble X

be close to X be equal to X be similar to X be like X

approach to X apProximation to X conformity to X correspondence to X resemblance to X closeness to X equality to X similarity to X likeness to X

「結合」の意味を持つものは、withを伴う。

⑳  combine with    combination with X    connect with    connection with X    link with     link with X

なぜこのように「類似の意味を持つものは同一の前置詞を取る」という原 則が成り立つのか。それを説明するためには、前置詞そのものの意味の解 明にむかう必要がある。例えばtoの基本的な意味はgo toのtoの意味す なわち近付いて行く対象を表わす。そうすればapproachがtoを取るのは 空間における接近を表わすからであり、resemblanceやsimilarがtoを取 るのは、性質において接近しているからである。つまり比喩的に用いられ ている。またwithの基本的な意味は、「一緒」であるので「結合」の意味 を持つ語と結びつくのである。このような前置詞の意味との関係について は次稿で詳しく調べたい。

 第二に前置詞によって表わされる概念(関係)の中には編入されにくい

ものとしやすいものがありそうである。例えばatやfromが示す概念は編

入されにくい。atとfromについては、それを伴ってもそうでなくても良い

動詞は少ないように思われる。すぐ思い付くのは、aim(at), attend(at),

(15)

clutch(at)であり,escape(from), flee(from)のような少数の例である。圧

倒的にatやfromが顕在化する例が多いように思われる。たとえばglance at,100k at, gaze atのように。それに対してtoはとても編入しやすい。

 第三に、一つの前置詞はどのくらいの範囲の現実世界の関係をカバーし ているのかという問題がある。toのように広くカバーする前置詞とそうで ないものがあるように思われる。

 第四に派生名詞の時、圧倒的にofを取るものが多いのであるが、その他 の前置詞を取るものが存在する。それらはofを取るものと意味的に差があ

るのであろうか。これは次の例が示唆的である。

(23) enter X    invade X    damage X    destroy X

entrance in to X invasion Of X damage to X destruction of X

ofを取るものは対象Xに大きな変化を起こすものではないか。 invadeは ただ入るだけではなくて、相手に変化を引き起こすのである。これはLong−

man Dictiona7fy of Contemψora7Si Englishの定義to go or come into and attack, so as to take control ofを見れば明らかである。それに対して enterの対象は変化を引き起こされるわけではない。damageとdestroyの 関係も同じように考えることができるであろう。(3)

 第五にCroft(1990)におけるように、動詞を分類していった時に、前置 詞とその動詞のグループとの間に何か相関関係が見られないか。

 以上の問題については次稿で詳しく調べたい。

       注

1)三宅(1996)によれば、「出る」、「降りる」、「離れる」などの動詞は、

  ヲ(対格)とカラの両方を取ることができる。これは英語において前

 置詞を取らない場合と取る場合があるのとパラレルに考えられるかも

  しれない。三宅は、ヲとカラの間には、制限があって自由に交換でき

(16)

  るわけではないことを指摘しているが、この点も英語と似ている。

2)いわゆる心理動詞とその派生名詞形の間には、他の場合とは違う問題  が存在する。

 Xembarass Y Y is embarrassed at with X Y s embarrassment  with X

 XsurpriseY Yissurprised at X Y ssurprise at X

  その派生名詞形は、普通受身文に対応する。これについては多く論じ   られてきているが、影山(1996:122−130)は新しい見解を示してい

  る。

3)派生名詞形にはもう一つやや複雑な問題がある。Ito(1991)が指摘し  ているように、動詞の取る構文に対応する派生名詞表現がない場合が

  ある。

  i) a, They robbed the woman of the jewels.

    b.・the robbery of the woman of the jewels.

    c. the robbery Of the jewels from the woman.

  またPesetsky(1995)の指摘しているように、動詞が複数の構文を取   る場合、すべての構文に派生名詞形が対応しているのではない。

  ii) a. Sue presented a medal to Mary.

    b.Sue s presentation of a medal to Mary.

  iii) a. Sue presented Mary with a medal.

    b.・Sue s presentation of Mary with a medal.

  これらの現象は前置詞のofがどのくらいの関係をカバーできるのか   という問題と関係すると思われる。「対象・相手」を示すのにはtoであ   って、ofでは示せないのではないか。

       参考文献

安藤貞雄・天野政千代・高見健一(1993)『生成文法講義  原理・パラメ

  ター理論入門』北星堂.

(17)

Croft, William(1990) Possible Verbs and the Structure of Events, S.

  L.Tsohatzidis(ed.)Meanings and 1)rotot)tpes,48−73, Routledge.

Dowty, David(1991) Thematic Proto・roles and Argument Selection.

  Language 67, 547−619.

Fillmore, Charles(1968) The Case for Case, E. Bach and R. Harms   (eds.)Universals in Linguistic Theo7 y,1−88, Holt, Rinehart&

  Winston.

Gruber, Jeffrey S.(1976)Lexical Structzares in Synttix and Seman tics.

  North−Holland.

Ito, Takane(1991) Gselection and S−selection in lnheritance Phenom−

  ena, English L inguistics 8, 52−67.

影山太郎(1996)『動詞意味論  言語と認知の接点』 くろしお出版.

国広哲弥(1970)『意味の諸相』 三省堂.

近藤健二(1984)『英語前置詞構文の起源』松柏社.

三宅知宏(1996)「日本語の移動動詞の対格標示について」『言語研究』110,

  143−168.

小川 明(1996)「派生名詞と前置詞に関する試論」『東京家政大学研究紀   要』36,143−149.

小川 明(1997)「意味から見た派生名詞の前置詞」『東京家政大学研究紀   要』37,223−228.

Pesetsky, David(1995)Zero Syntex Experiences and Cascades. MIT   Press.

鈴木孝夫(1990)『日本語と外国語』岩波書店.

吉川千鶴子(1995)『日英比較  動詞の文法一一発想の違いから見た日本

  語と英語の構造』くろしお出版.

参照

関連したドキュメント

文字を読むことに慣れていない小学校低学年 の学習者にとって,文字情報のみから物語世界

節の構造を取ると主張している。 ( 14b )は T-ing 構文、 ( 14e )は TP 構文である が、 T-en 構文の例はあがっていない。 ( 14a

この 文書 はコンピューターによって 英語 から 自動的 に 翻訳 されているため、 言語 が 不明瞭 になる 可能性 があります。.. このドキュメントは、 元 のドキュメントに 比 べて

スキルに国境がないIT系の職種にお いては、英語力のある人材とない人 材の差が大きいので、一定レベル以

つまり、p 型の語が p 型の語を修飾するという関係になっている。しかし、p 型の語同士の Merge

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

その結果、 「ことばの力」の付く場とは、実は外(日本語教室外)の世界なのではないだろ

 さて,日本語として定着しつつある「ポスト真実」の原語は,英語の 'post- truth' である。この語が英語で市民権を得ることになったのは,2016年