自閉的傾向のある子どもの 「 心理的安定 」 を目指した支援に関する研究
一児童期における 「 遊びの指導 」 場面での実践事例を通 して‑
ASt ud yo nSup po r tMe t ho dsAi me da tPr o mo t i ngt heMe nt a lSt a bi l i t yo f
Chi l dr e nwi t hAut i s t i cTe nde nc i es
(2006年3月31日受理)
福森 護 北村久美子 * 松 田 文春 *
MamoruFukumori KumikoKitamura FumiharuMatsuda要 ヒ 日 エ
Keywords:自閉症,心理的安定,遊びの指導
自閉的傾 向のある子 どもの教育支援のための具体的実践論の展開を考える うえで,「心理的安定」を目指 した支援が 基本的生活習慣の確立にもつながる基礎的な要因になると考えられる0
本研究では,児童期における子 どもの 「心理的安定」を目指す うえで遊びの指導を充実 させ ることが,場面に集 中し て遊ぶことを引き出 し,それが心理的に落ち着いた状態に導 く一因になることを実践事例を通 して明 らかに した。
1 は じ め に
特別支援教育においては,個々の子 どもの実態に応 じ た教育的ニーズに迫 る支援を展開することが強 く求めら れ る。特に独 自のルールをもち,それに適合する範囲内 で行動 しようとする自閉的傾 向にある子 どもの場合,コ ミュニケーシ ョン手段の広が りを求めて支援を行 うこと が非常に大きな命題 といえる。中でも,発達の様々な面 で未分化の状態にあることが多い児童期においては,日 常生活の基本的な リズムを築 くうえで 「心理的安定」を 図ることは不可欠の課題である。福森 ら (2005)は様々 な生活場面で,心理的な安定に導 くためにはスケジュー ルの視覚的な提示が不可欠であるとい うことを実践事例 を通 して確認 した。そこで,本研究では,発達が未分化 な児童期に焦点を当てその 「心理的安定」に関する具体 的実践論について検討 しようと考えた。その実践の主場 面を遊びの指導場面におき実践に進んだ。
2 方 法 ( 実践)
本研究は,知的障害養護学校小学部第1学年5名 (男 児4孝.,女児1名)の行動観察を中心 とした事例研究で ある。まずは,5名の実態把握 を行 うことにより個々の 行動特性を把握 し,集団行動を行 ううえで課題 となる事 柄 を明 らかにす ることか ら始めた。
(1) 子 どもの実態について
5名 ともに, 自閉的な傾 向があ り, 自分の限 られた興 味 ・関心、に沿って行動することが多い面や他者 とのかか わ りをもちにくいなど非常に限定 された人間関係の中で 生活する傾向がある。また,活動‑の見通 しをもちにく い時や 自分の思い と違 う時な どで, 自傷行為など心理的 に不安定な状態に陥ることがよくある。
遊びの面では, どの子 どもも一人で遊ぶ ことが多 く, 友達 とかかわろ うとす る姿勢がほ とん ど見 られ ない。
いろいろな遊びに興味をもって主体的に遊ぶ ことはまだ 難 しいが, 自分の好きな遊びは しばらくの間,続 けるこ とができる。2名 (A児・C児)は,教師 と一緒に遊ん だ り,遊びを繰 り返 した りす る中で遊びの楽 しさが分か 注)*岡山県立西備養護 学校
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福森 護 北村久美子 松 田 文春
ると, 自分か らやってみた り,遊びを少 しずつ広げた り す ることができ始めている。友達が遊んでいる様子を見 た り,友達が急に遊びの中に入ってくるのを嫌がった り す るなど,友達の存在は意識 しているが,かかわって遊 ぼ うとする姿勢は見 られない。5名 とも教師 とのスキン シップを伴 う遊びが好きで,個人差はあるが,教師が働 きかけるとそれ に応 じて遊ぶ ことができる。 コミュニ
ケ‑ションの面では,5名 ともに教師の手を引いた り, 教師の体の向きを変えようとした りして, 自分の思いを 伝えようとすることが多い。前述の2孝.については,塞 声や ごく簡単な言葉で 自分の思いを伝 えることができ始 めている。本研究に取 り組む前段階 としての実態,5名 とも概 して活動‑の見通 しがもてない場面では,心理的 に極めて不安定になることが多い。
表1.個々の子どもの実態 (主として行動観察による)
児童 実 態
A児 ・集団のルールやスケジ三一ルなどが理鹿できにくいことなどから生起する自分の思い と異なることや事象の 変化に混乱 し,心理的に不安定になることがよくある○心理的に不安定位なると,床面に自分の額を打ち付 けた り, 自分の拳でこめかみをたたいた り,他人に頭突きをした り,噛んだ りするなどの 自傷行為が見 られ るo
・興味のもてる遊びを見つけると,一つの遊びを続けた り, 自分な りの遊びの決め事を作って遊んだ りする姿 が見 られる〇時間いっぱい遊ぶ ことは,まだ難 しいo
B児 ・友達の泣き声がすると,不安定にな り自らも泣 くときがある○
・自分の したいこととは違 う活動に誘われた ときなど,大きな声を出した り,泣き声のような声を出 した りす るなどの手段で意思表示をする○
・自分か らいろいろな遊びをすることは,まだ難 しいO.初めての遊びには,教師や友達が遊んでいる様子を遠
間,遊ぶ ことができるようになってきているo
・自分のや り.たい遊び と教師の誘いが一致 した時には,教師の誘いに応 じることができるようになってきてい るo 自分の思い と違 う遊びに誘われると,教師か ら離れようとする姿が見 られ る○
C児 ・自分の興味 .関心に沿って行動す ることを制止 されたときや 自分の思いに沿わないことをすることを期待 さ れたとき,興味 .関心のない活動をす ると.き,不安を感 じているときなど,大人の意に沿って行動 しようと するが,泣いた り,大きな声を上げた りすることがあるo突然大きな声を出 しなが ら泣 くなどのパニックが 起きると,.気持ちを静めるまでに時間を要することが多い○ (30分以上)
・積んだ り,倒 した りす る遊びや体をしっか りと動かす遊びに興味があ り,そのような遊びを教師が見本を見 せ,や り方が分かると, 自分か ら遊ぶ ことができるようになってきている〇一人で遊ぶ時間が長かつた り, 遊びが広が らなかった りす ると,遊びが止まることもあるが,教師が遊びに誘った り,気持ちが高まるよう な声かけをした りす ると,安心 し,遊びを続けることができる○
・心を許せ る教師 とな ら一緒に遊ぶ ことを好み,その場面では,そばにいる教師に自分の思いを伝えることが できるようになってきている○
‑D児 ・自分の要求が通 らなかった り,好きな遊びを制止 された りす ると,大きな声を出 した り,他人の手をつねつ た り,噛んだ りす るなどの他傷行為が見 られるo
・自分か ら遊ぶ ことは少ないが,動いた り,揺れた りす るなどの感覚運動的な遊びは好きである○ 自分の好き
・自分のや りたい遊びがある時には,教師の手を引いて教師 と一緒に遊ぼ うとす る姿が見 られ るよ うになって きているo
うな声を出 した り,不安を表す同 じ言葉 を繰 り返 した りす るな どの常同行動が見 られ る○
・経験 したことのない遊びには, 自分か ら取 り組 もうとす る姿はあま り見 られないが,経験 したことのある遊 びは, 自分か らしようとす る○教師がそばで している遊びに興味をもつ と,それを模倣 し,遊ぶ姿が見 られ るよ うになってきた○
・教師の誘いに応 じて,少 しの間,教師 と一緒に遊ぶ ことができるo教師 と一緒 に遊ぶ中で楽 しい とい う思い
※行動観察の観点 として, 日常生活面での心理的な状態,遊び場面での実態,コミュニケーシ ョン能力のそれぞれの 実態に基づき記述 した。
(2) 子 どもの興味 ・関心について
次 に 「心理的な安定」を 目指す支援 を行 うに当たっ て,子 どもの興味 ・関心に沿った教材 について考えた。
子 どもの実態か ら, どの子 どもも一人での遊びが中心で あるので,いろいろな遊びに興味をもって数人で場を共 有 し遊ぶ ことはまだ難 しい。 しか し,子 どもを引き付 け る教材であれば,興味をもって主体的にかかわることが で きるのではないか と考 えた。実態の把握 をもとに興 味 ・関心のある教材 を選ぶことは,子 どもの 「心理的安 定」を目指 した支援の第1段階 と考えた。
身近にあ り,子 どもたちもよく知っている,『風船』
と 『ダンボ‑ル』を取 り上げることに した。特に風船は
彼 らにとって,感触の心地よさや 目立ちやすい色,程 よ い大きさ,興味を持 ちやすい単純な形,空中での動 きの おもしろさ等を感 じることができる点で効果的な教材で ある。また,ダンボ‑ル は,軽 く,弾力性があ り,変形 させやす く,児童にも安全で遊びやすい教材である。 こ のため,子 どもが主体的に,運ぶ,積む,倒す,中に入 る,転がす,滑るな どのいろいろな活動を引き出す うえ で適切な遊びのための教材であると考えられ る。
以上のよ うな観点か ら,遊びの指導における具体的場 面 として 『風船で遊ぼ う』 と 『ダンボ‑ルで遊ぼ う』の 二つの場面を設定 し,実践に取 り組んだ。
(3) 教材 ・教具を提示す る うえでの工夫について
表2.『風船で遊ぼう』での教材 .教具の工夫 単元名 『風船で遊ぼ う』
教材 .教具 ね ら い 提 示 の 工 夫
ジェッ ト風船 不規則な風船の動 きに興味をもち,それ を視線 ジェット風船を飛ばす ときには,カウン トダウン
で追 うことで,その場に集 中できる○ 風船を飛ばした りし,場面に躍動感をもたせるをし,場面に緊張感をもたせた り,一斉に複数のo
風船 バ ルーン バ ルーンを叩 き , 跳ね 返 ってくることの繰り 返 大きな風船の中に鈴を入れてゴムでつ るし , 接
しのお もしろさと,接触の快 を覚える○ 触 により音が出るよ うにす る○
風船プール .風船 直接的な自己の動作に基づかな くても,二次的 滑 り台の下には,風船 をた くさん入れた風船
滑 り台 に物の動きが派生す ることに興味をもつo 合わせ,活動に幅をもたせ るよ うにす るoプ∵ル を設置 し,風船 と遊具 (滑 り台)を組み
風船エア ポリ ン 直接的な自己の動作
に基づかなくても,二次 的 遊具( エア ポリ ン)の中に風船をたくさ ん 入
に物の動きが派生す ることに興味をもつo れ,フワフワ感 を醸成す る○
風船バ
ド
ミントン 自分の主体的な活動で,風船の動きを支配でき 風船 をバトミ
ン トンのラケ ッ トで打って遊ぶ こ96
福森 護 北村久美子 松 田 文春
るようにするo
風船バ スケット 自分の主体的な活動で,風船の動きを支 配 でき バスケットゴール状の網の中に風船を入れて遊
るとい う遊び‑の関心をもつ○ ぶo風船を入れ ると,その網の中に風船がたまるようにし,反復,継続 した活動を引き出す ようにするo
表3.『ダンボールで遊ぼう』での教材 ・教具の工夫 単元名 『ダンボ‑ルで遊ぼ う』
ー教材 .教具 ね ら い 提 示 の 手 夫
そ り滑 り .滑 り台 スピー ド感のある滑 りか ら得 られるス リルを味 大型マ ッ トの上にダンボ‑ルを敷いているoそ
わ う○ のまま滑 り台 として滑った り,そ りに乗 って滑った りすることで,スピー ド感を味わ うことができるようにするo
ボート 直線的でスピード 感の あ るボートに 回転 が加 ダンボ∵ルの柵の中. にカラーボ ー ルを入 れ, そ
わつた複合的な動きに興味をもつo の上にボー ト状に加工 したダンボ‑ルの板を置ができるようにする○きそれを滑 らせて,様々な動きを派生す ること
回転ダンボ ‑ル 音と共にダンボ‑ ル が転がるスケールの大きな 中に数本のフラフープを入れて, . それらを ダン
動きを自分の意思で支配できることに満足感を ボール で包んでい る.転がす と音がで るよ う
覚えるo に, どんぐりをた くさん入れ,回転 と音が同時に発生するようにするo
積み木 積み木が崩れる迫力に圧倒され,再度 崩 したい い ろいろな大きさや形のダンボ‑ルをたくさん
とい う征服感をもつo 集めて,それ らを不規則に高 く積み,様々な形で崩れるようにする○
アーチ アー チをく ぐる こと で , そり 滑り. 滑り 台に 到 ダンボ ‑ ルで作ったア ーチ をつけて,そり ゃ滑
達できるとい う,段階的な意識をもつ○ り台をする時に使 う階段 として位置づける○
ス ティ ッ ク スティックを叩くことで音がでる とい うことを ダ ンボ‑ルのス ティ ッ クをたくさん集め て , ダ
興味 ・関心のある教材だけでは,遊びが持続 しないの で,風船や ダンボ‑ル を自由に使 って遊べ るよ うに し た り,子 どもの遊びの様子に合わせて少 しずつその場の 教材 ・教具の利用の仕方を変えた りするなど,遊びがよ り深まるよ うにした。また,風船やダンボ‑ルを単一の 教材 として扱 うよりも,子 どもの好きな遊具 と組み合わ せて扱 うことで, 自分が興味 ・関心のもてるものを選択 し,それに集 中して遊ぶようになると考えた。そ して, それが 「遊び」に対す る主体的な意欲を引き出す ことに つながるので,教材 ・教具を工夫 し提示することに留意
した。 (表2,表3)この教材 ・教具の工夫は,子 ども の 「心理的安定」を目指 した支援の第2段階に位置づけ
た。
(4) 授業展開 ・環境設定
遊びの場 面が変化することにより,心理的に不安定に なる子 どももい る。そ こで,活動の見通 しをもち,遊 びに集 中できるように,集合する場所 と遊ぶ場所を区別 し,毎時間,同 じ活動の流れで遊びを進めてい くように した。また,子 どもが好きな遊びに広い場所で安心 して
取 り組 めるように,活動場面を体育館 に設定 し,静かな 空間の中で伸び伸び と活動できるよ うな授業づ くりを目
指 した。授業展開 ・環境設定は,児童の 「心理的安定」
を目指 した支援の第3段階に位置づけた。
表 4.授業場面 (場面の変化によって予想される子どもの心理的状態)
単 元一二. ・『風船で遊ぼ う』. 『ダンボ‑ルで遊ぼ う』
授
・業各の 1 教室であい さつをす ・休憩が終わ り,学習が 1 教室であい さつをす ・休憩が終わ り,学習が る0
2 教室で風船遊びをす 始まったことを自覚する○ 2る0教室でダンボ‑ル遊 始まったことを自覚するo
場面 ・ジェッ ト風船を飛 ばす ・回転ダンボ‑ルで積み
と
予 ・3る〇体育館 で風船遊びを ことで教室移動 し,本 3びをす る0体育館でダンボ‑ル 木 を倒す ことで教室移
悲れ千るさ ・遊びに集 中している〇・同 じ場 所 で終 わ る こ格的な遊び‑の期待感が高まる〇 ・遊びに集 中している〇・同 じ場 所 で終 わ る こ勤 し,本格的な遊び‑の期待感が高まる〇 ど
も す るo 遊びをす るo
‑の心 ■4 ‑体育館であい さつを 4 .体育館であい さつを
(5) 教師 と子 どものかかわ りについて
5名 とも教師 とのスキンシップを伴 う遊びが好 きで, 個人差はあるが,教師が働 きかけるとそれに応 じて遊ぶ ことができる。そ こで,心を落ち着かせて遊ぶ ことがで きるよ うに,教師がそばで彼 らの願いに沿 うよ うにかか わ りなが ら共に遊ぶ よ うに心掛けた。また,遊びを楽 し んだ り,遊びの幅 を広げた りす ることができるように, 同 じ遊びをした り,言葉 を掛 けた り,遊びの見本をして 見せた りした。教師 と子 どものかかわ りは,子 どもの
「心理的安定」を 目指 した支援の第4段階 と考えた。
図1.『風船で遊ぼう』配置図
風船滑 り台 ル□風船1 バス
冒
ゴケーッル‑
ト刀
ラケ ッ ト風船プ‑
風
船
バルーン 風船プール 風船エアポリン
入 り口
ll
体育倉庫98
福森 護 北村久美子 松 田 文春
図 2.『ダンボールで遊ぼう』配置図
階 段
骨り そ り lア ー チ
「
スティック= 「 □ 由 り台
※場 面設定の配慮事項 (教材 ・教具 の配置上 の工夫) (1) 『風船 で遊 ぼ う』
・子 どもが次 の場所 に移 りやすい よ うに,体育館 の前半 分 に教材 ・教具 を設置 した。
・友達や教師 の遊び を見 ることがで きるよ うな配置 に し た。
・多 くの友達 と遊ぶ ことを好 まない子 どもに対応す るた め,風船 プール では,滑 り台 と組 み合 わせ た風船 プー ル ,風船バルー ン と組み合 わせ た風船 プール の2種類 を用意 し, 自分専用 の遊び空間 を確保 で きるよ うに し た。
・風船バルー ンを風船エアポ リン,風船 プール ,風船バ スケ ッ トに架 けることで遊びのバ リエー シ ョンが広 が るよ うに した。
・ラケ ッ トは,思いっき り打つ ことがで きるよ うに広 い スペ ースで行 えるよ うに した。
(2) 『ダ ンボ‑ル で遊 ぼ う』
・子 どもが次 の場所 にす ぐ移 りやす い よ うに,体育館 の 前半分 に教材教具 を設置 した。
・友達や教師の遊び を見 ることがで きるよ うな配置 に し
た。
・滑 り台の下 に積み木 コーナー を用意す るこ とで,滑 り 終 えた時 に小 さい積 み木 を倒 して遊べ るよ うに工夫 し た。
・ボー トとステ ィ ックは どち らもダンボ‑ル の柵 の中に あるので,入 りやすい よ うに二つ を近 くに設置 した。
・回転 ダンボ‑ル は, 自由に転 がす こ とがで きるよ うに 広 い場所 に設置 した。 また,滑 り台の上か ら転 がす こ
ともできるよ うに滑 り台の近 くに設置 した。
3 結 果
第1段 階 か ら第4段 階 にか けて のそれ ぞれ の段 階 に お け る結果 は次 の通 りで あ る。 (主 と して複 数 の教 師 に よって一 人一人 の行 動 を観 察 し,整 理 した もの で あ る。)
(1) 第 1段 階
どの子 ども も提示 され た風船 の感 触 や 色 ,大 き さ, 形 ,動 きのお も しろ さに興 味 を もち,遊 ぶ こ とが で き た。特 に風船 の感触 に心地 よさを感 じ,見た り,触 った
りす る うちに笑顔 で喜ぶ姿が見 られ た。
ダンボ‑ル については,素材 その ものに興 味 を もつ と い うこ とはあま り感 じられ なかったが,第2段 階で取 り 組 んだ教材 ・教具 の工夫 を行 うこ とで興 味 をもって遊ぶ
こ とができた。
(2) 第2段階
最初 の頃は, 自分 か ら教材 ・教具 に積極 的 にかかわっ てい く姿 はあま り見 られず,体育館 の後 ろを歩 いた り, ステー ジのそでに入 った りす る子 どもがいた。 しか し, 第 4段 階で も触れ るが,教師が遊び方 を教 えた り (教 師 と児童 のかかわ り),教材 を変化 させ た りした こ とで, 遊 び の楽 しさが分 か り,遊 び が少 しず つ深 ま ってい っ た。 その結果, どの子 どももい ろい ろな教材 ・遊具 で遊 ぶ ことがで きるよ うになった。
表5.『風船で遊ぼう』での子どもの変容
た.○教師が風船滑 り台に誘った り,友達の遊んでいる様子を見た りすること ルーン .風船プール .風船滑 り で,風船プ‑′レ.風船滑 り台でも遊ぶことができるようになった○ 台 .風船エアポ リン
B児 風船エアポ リンを好み,エアポ リンの中に入って遊ぶことが多かつたo風船 ジェ ッ ト風船 を見 る .風船バ エアポ リンだけでなく,風船バルーンにも興味 .関心をもっことができるよ ルーン .風船プール .風船滑 り
うに,.教師が遊んで見せた り,B児のそばに風船を近づけた りす ることで, 育 .風船エアポ リン 自分かちかか.わつて遊ぶ ことができるよ うになったo ̲
C兎 最初は,風船プール .風船滑 り台を好み,何度 も繰 り返 し遊ぶことが多かつ ジェッ ト風船を見る .ジェット たO.選びが広が らなかった り,二人で遊ぶ時間が長 くなづた りす ると,不変 風船を膨 らませ る .風船バルー な表情を見せ ることがあったo教師が一緒に遊んだ り,.新 しい遊びを知 らせ ン .風船プール .風船滑 り台 . た りする ことで安心 し,風船バ ドミン トンでも積極的に遊ぶことができるよ 風船バ ドミン トン
うになったo
D児 風船エアポ リンで遊ぶが,飽きるとエアポ リンの外‑出ようとす ることが多.かつたo教師が‑緒に遊んだ り,
D
児の好きそ うな風船滑 り台に誘った りす ルーン .風船プ⊥′ジェ ッ ト風船 を見 る .風船バp.風船滑 り ることで,遊びに集中するこができるようになった○ 台 .風船エアポ リンE児 最初は,風船プール .風船滑 り台を好み,何度 も繰 り返 し滑って遊ぶことが ジェ ッ ト風船 を見 る .風船バ多かつた○遊びの幅を広げることができるように,風船バスケッ トの遊び方 ル†ン .風船プール .風船滑 り
■を知 らせ ると,楽 しさが分か り, 自分か ら積極的に遊ぶ ことができるように 育 .風船バスケ ッ ト
表6. 『ダンボールで遊ぼう』での子どもの変容
子 ど も の 変 容 選択 し,遊んだ教材 .教具
A児 ‑ボ」 トやミ好き■でよく遊んでいたが,飽きるとステージのそでに入った り,体 そ り 一滑 り台 .回転 ダ ンボ‑
育館の後ろを走 り回った りす ることがあったO.ボー トの形を変化 させた り, ル .ボー ト.積み木 他の教材 .教具の楽 しさを知 らせた りすることで,時間い っぱい垂ぶ ことが
できるようになったo 自分な りの遊び方を見つけて遊ぶ こともできるよ う古と なった○
B児 教材 .教具に自分か ら積極的にかかわって遊ぶ土とが難 しく,最初の頃はス 滑 り台 .そ りに乗 り,教 師にチ‑ジの上を歩いた り,大好きなろく木で遊んだ りしていたo しか し,遊び 引っ張つても̲らう (床め上) . 方が分かると,少 しずつかかわることができるよ うになった○滑 り台やボー ボー ト
トは, 自分か ら積極的にかかわって遊ぶ ことができるようになったo
C児 最初は,そ りゃ滑 り台で遊ぶ ことが多かつた〇一人で遊ぶ時間が長 くなると そ りJ不安な表情を見せ ることがあったo教師も一緒に遊んだ り,離れていても声 木 .回転ダンボ‑ル.滑 り台 .ボー ト .積 み かけをした りす ることで安心、し,ボ」 トや積み木にも積極的にかかわること
ができるようになった○
D児 最初は,教材 .教具に自分か ら積極的にかかわって遊ぶ ことが難 しく,体育 滑 り台 .積み木 .スティック .館の後ろを一人で歩いた り,ステージの上か らジャンプ した りして遊ぶ こと そ りに乗 り,教師に引っ張って
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福森 護 北村久美子 松 田 文春
教具を変化 させた りすることで,.遊びを少 しずつ広げてい くこ とができるよ ボール うになつたら
的に遊ぶ姿が見 られたo しか し,遊びに飽きると座 り込むことがあった○教 木 .回転ダンボ‑ル .ステイツ 材 .教具や遊び方を変化 させた り,遊び方を知 らせた りすることで,ボー ト ク
や回転ダンボ‑ルでも遊ぶことができるようになった○また,教師の手を引
(3) 第3段階
授業展開では,毎時間,同じ活動の流れで遊びを進め た り,遊びの内容を表 した写真や実物 (風船やダンボ‑
ルの教材 ・教具)を提示 した りしたことで,活動の見通 しをもっ ことができ,5名 とも落ち着いて授業に参加す ることができた。
環境設定では, 教室ではな く体育館 とい う広い空間 が,今回の遊びには適 した広 さで,子 どもも伸び伸び と 活動す ることができていた。 『ダンボ‑ル遊び』では, 最初;体育館で始めのあいさつをしていた。 しか し,何
、回か授業 をす ると,体育館‑行 ってダンボ‑ル を見 る と遊び始 める子 どもがいたので,教室であい さつ を し た後,体育館‑行った らす ぐ遊ぶことができるようにし た。 「早 く遊びたい」 とい う気持ちと子 どもの 自然な活 動の流れを大切にすることができ,場面により意識の切
り替えをスムーズに行えるようになった。
最初は,雰囲気を盛 り上げるために遊んでいる時に音 楽 をかけることも考えた。 しか し,音楽があるとそれ が刺激になる子 どももいる。また,ラジカセが気になる 子 どももいる。集団活動においてより適 した状況を考え た時,遊んでいる時は曲がない方がよい と判断 し,音楽 をかけることをやめた。その結果,予想通 り子 どもは遊 びに集 中し,安定 した状態で授業に参加す ることができ た。 この段階は,第2段階 と密接に連携 させて取 り組ん だことで,より大きな成果が得 られた。 (表5,表6)
(4) 第 4段階
遊びを楽 しんだ り,遊びの幅を広げた りすることがで きるように,同 じ遊びをした り,言葉を掛けた り,遊び をして見せた りしたことで, 自分のや りたい遊びの場所
‑一緒に来て欲 しい とい うしぐさを教師にしてきた り, 教師 と一緒に楽 しく遊んだ りす ることができた.また,
教師がす ぐに声をかけるのではなく,教師の待ちの姿勢 (見守る)も大切にlLたことにより,子 どもが主体的に 遊ぶことができた。
4 考 察
以上のよ うな取 り組みの結果,子 どもの 「心理的安 定」を目指 した支援をまとめると次のよ うになる。
まずはじめに,子 どもの興味 ・関心に基づいた教材設 定 (第 1段階)をすることが大前提 となる。そのために は, 日々,子 どもの行動を観察 し,子 どものより具体的 かつ客観的な実態を把握することか らは じめる必要があ
る。
題材が決定す ると,次は遊びを深めることができる教 材 ・教具の工夫 (第2段階)が必要 となる。今回の単元
『ダンボ‑ルで遊ぼ う』では,遊びやすい手作 りの教材 作 りにこだわ り,子 どもが自分か ら遊べるよ うな工夫を 全ての教材 ・教具に取 り入れた。また, 「子 どもの表情 や遊び方を観察する」‑ 「改善点を見つける」‑ 「修正 する」を毎回,繰 り返 し行い,一つ一つの教材を細かい 部分まで修正 し,変化 させていった。その結果,子 ども の遊びの幅が少 しずつ広が り,遊びに集 中できる子 ども が増えた。 このことは,遊びに集 中している時の子 ども は,心理的に安定 していることを物語っている。 この教 材 ・教具の工夫 (第2段階)は, 「心理的安定」を目指 した支援において特に重要な項 目であると考えられ る。
活動の見通 しをもっことができる授業展開 ・環境設定 (第3段階)では,活動の流れが分かる授業展開や子 ど もが安心 して遊ぶことができる場の設定が必要であ り, 子 どもの不安定要因を取 り除 くことが求められ る。
教師 と子 どものかかわ り方の工夫 (第4段階)では, 自閉症児の遊びの指導においては,教材 ・教具 とのかか
わ り方についてア ドバイスす ることも必要である。教師 が子 どもにかかわ りなが ら示範 をし,具体的に伝 えるこ とで,子 どもの遊びの幅を広げることができる。また, 教師 と一緒に遊ぶだけでなく,時には見守った り,待 っ た りす ることで,その子 どもの主体性 を育むよ うな支援 も大切である。
「心理的安定」を 目指 した支援 を第1段階か ら第4段 階に分けて段階ごとに考えてきたが,これ らの四つの支 援は全て相互に関連 してお り,一つでも欠 ければ子 ども の 「心理的安定」につながるような成果は望めないであ ろ う。教師が適切な支援 を行い,子 どもの遊びの幅を少 しずつ広げていき,遊びに集 中できるよ うになれば,そ の子 どもは心理的に安定 した状態にあると考えられ る。
自閉症児にとって,心理的に安定 した状態は,その子 ど も意欲や次の行動につながってい くうえで大きな意味が ある。 「心理的安定」は,その子 どもの意欲や次の行動 につながってい くもの と思われ る。
本研究では, 「心理的安定」を目指 した支援 として四 つの段階に基づ く支援 を挙げたが,他の題材 を設定 して 同 じよ うに実践 し,四つの段階以外の支援の方法を多面 的に考察 し,この四つの段階の妥当性 について検討す る
ことが求められ る。
最後に,本研究は, 自閉的傾 向のある子 どもの 「心理 的安定」に焦点をあて,主に 「遊びの指導」場面 にお いて実践 し,成果を求めてきた。その具体的方法論 とし て,教材 ・教具の工夫や教師 とのかかわ りに主眼 をお き,一定の成果を確認 した。今後は, さらに 「遊びの指 導」を感覚統合的な視点か ら 「心理的安定」について追 究 し, より個に応 じた支援のあ り方について検討す る必 要がある。
5 文 献
(1) 福森護 ・松 田文春 ・二階堂修以知 ・浅野久美江 (2005)福祉分野‑のつなが りをめざす 「自立活 動」に関す る研究.中国学園紀要,第4号23‑29 (2) 小出進 (監修) (1999)新生活単元学習.学研 (3) 文部省 (1992)遊びの指導の手引き.慶鷹義塾大
学出版会株式会社
(4) 坂本龍生 ・花熊暁 (2004)新 ・感覚統合法の理論
と実践.学研