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土粒子径と表面粗さに着目した粘土と地盤改良体の界面強度の評価

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Academic year: 2022

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(1)

土粒子径と表面粗さに着目した粘土と地盤改良体の界面強度の評価

九州大学大学院 学生会員 ○有間 航 正会員 石藏 良平 フェロー会員 安福 規之

1.はじめに

軟弱地盤上に盛土構造物を建設する際、建設コストの削減と共に沈下 量の抑制を要求される。軟弱地盤層が深く堆積している地域で、図-1に 示す非着底型の深層混合処理技術が経済性や、地盤環境への配慮の観点 から適用され始めている。粘土地盤中においては通常、杭周面の摩擦抵 抗は支持力として考慮されないが、非着底型改良を適用する場合は、改 良杭が粘土層に留まっているため、周面摩擦抵抗を設計に積極的に利用 することが実務において重要と考える。対象とする実杭が現地粘土とセ メントを混合したセメント固化処理土の場合、粘土の粒度分布が改良杭 の表面粗さに関係すると考えている。そこで本研究の目的は、土粒子径 と実杭の表面粗さの関係を明らかにして実改良杭の界面強度を定量的に 評価することである。本論文ではまず、土粒子径と改良杭の表面粗さの 関係を明らかにするためセメント固化処理土を室内で作製し、粘土の粒 度分布と供試体の表面粗さの関係について考察した。次に実改良杭と周 辺粘土との界面強度を調べるために、リングせん断試験機を用いて改良 体を想定した表面粗さの異なる材料と粘土の摩擦特性を調べた。

2.室内で作製したセメント固化処理土の表面粗さと土粒子径の関係 土粒子径と実改良杭の表面粗さの関係を明らかにするために4種類の 試料(有明粘土、カオリン粘土、宇土粘土、豊浦砂)を用いてセメント 固化処理土を作製し、供試体の表面粗さを測定した。図-2に試料の粒径 加積曲線を示す。プラスチックのモールドを用い、現地の混合量を参考 にセメント混合量を300kg/m3とした。作製したセメント固化処理土の表 面粗さRyと粒径D50, D90 の関係をまとめたのが表-1と図-3である。表 面粗さは最大高さRyで評価する。Ryは評価長さを基準長さに分け、各 基準長さの最大高さを平均した値である。これより、室内で作製した有 明粘土とカオリン粘土の供試体は粒径D90と表面粗さが同程度であるこ とがわかる。しかし宇土粘土の供試体の場合、現地改良杭は粒径D90 表面粗さが同程度であったが、室内改良土は粒径D50と表面粗さが同程 度であった。図-4に示すように同じ宇土粘土を用いたセメント固化処理 土では室内で作製した場合の方が表面粗さは滑らかであることがわかる。

室内で作製した場合、供試体の表面粗さは粒径よりも表面が滑らかなモ

ールドの影響を強く受けたためと考えられる。これより室内でセメント固化処理土を作製する場合、改良杭の表面 粗さは母材粘土の粒径のみならず杭周辺の材料の表面粗さ、今回ではモールドの表面粗さも影響すると考えられる。

3.リングせん断試験の概要と結果の考察

キーワード 粒度分布,表面粗さ,周面摩擦抵抗,界面強度,セメント固化処理土 連絡先 〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡 744 番地 WEST2 号館 1108-2 TEL092-802-3378

盛土

浅層改良

壁式改良

支持層 未改良層

図-1非着底型深層改良技術の概念図

0 20 40 60 80 100

0.01 0.1 1 10 100 1000 10000

有明粘土カオリン粘土 宇土粘土豊浦砂

通過百分

粒径 ( m ) 図-2 試料の粒径加積曲線

表-1 試料の物理的特性

D50(m) D90(m) カオリン粘土 5.5 16.8

有明粘土 7.3 19.4 宇土粘土 21.6 76.4

豊浦砂 267.1 346.3

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

D90

D50

D 90 , D 50 (m )

表面粗さ R

y ( m ) 現地改良土

(宇土粘土)

室内改良土

(宇土粘土)

カオリン粘土 有明粘土

図-3 粒径と改良杭の関係 土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

‑489‑

Ⅲ‑245

(2)

次に実改良杭と周辺粘土との界面強度を調べるためにリングせん断試験 機を用いて、異種材料間の摩擦試験を行った。試料としてカオリン粘土と有 明粘土を用い、本研究では、カオリン粘土内部および有明粘土内部のせん断 特性と、カオリン粘土および有明粘土と改良杭周面の表面粗さを模擬したア クリル板との摩擦特性について検討を行った。改良体の表面粗さを表すパラ メータとして最大高さRyを用いた。異種材料間のせん断試験では、せん断 箱の下半分に厚さ20 mmの改良体を設置し、粘土との摩擦特性を調べた。

せん断箱内に、含水比w を80%に調整した粘土を脱気させながら投入し、

予圧密を行った。所定の垂直応力n’ まで、垂直応力を漸増させながら圧密 を行い、所定の垂直応力を作用させた状態で所定の排水時間を設けた。3 種 類の垂直応力n’(50kPa,100kPa,200kPa)のもとせん断を行い、せん断速 度は間隙水圧が発生しない速度( 0.02 mm/min )に設定した。図-5にカオリ ン粘土と有明粘土の垂直応力-せん断応力関係を示す。これよりピーク時、

残留時ともに有明粘土のせん断抵抗角が大きいことがわかる。図-6に改良体 の表面粗さRyを粒径D90で除した相対粗さと、粘土内部のせん断抵抗と異種 材料間の摩擦抵抗の比を意味するR = tan’ / tan ’ の関係を示す。’は異 種材料間の摩擦角を示し’は粘土のせん断抵抗角を示す。図-6よりカオリ ン粘土の相対粗さが1に近づくにつれ、Rがカオリン粘土のせん断抵抗角に 近づく傾向を示した。さらに1を超えると一定の値となる。このことよりカ オリン粘土と表面が滑らかな改良体を用いた条件では、図-7 a)に示すよう にカオリン粘土内部ではなく、カオリン粘土と改良体の間で滑りが発生して いるものと考えられる。表面粗さが大きくなると、摩擦角はカオリン粘土の せん断抵抗角に近づき、摩擦抵抗の比Rも1に近づく。このことより、改良 体の表面粗さRyが大きいと、摩擦角がカオリン粘土のせん断抵抗角の値に 近づくので、図-7 b)に示すようにカオリン粘土内部での滑りが支配的にな っていると考えられる。有明粘土は図-6に示すように異種材料間の摩擦角よ りも粘土内部のせん断抵抗角が大きい。相対粗さが1.1のときは異種材料間 の摩擦抵抗の比Rはピーク時、残留時共に0.8以上であった。

4.まとめ

本研究では、深層改良体と粘土の摩擦特性を明らかにすることを最終目的 として、改良体の表面粗さと粘土の粒径の関係について考察を行った。また リングせん断試験機を粘土内部のせん断抵抗および粘土と改良体の摩擦特 性を考察した。得られた結果は主に以下である。

1) 室内モールドでセメント固化処理土を作製した場合、D90が20m以下のカオリン粘土および有明粘土において は供試体の表面粗さとD90の関連性が確認できた。一方D90が70m以上の宇土粘土の場合、供試体表面粗さと D90に差異が見られたが、実際に現場施工された改良体においては表面粗さとD90の間に関連性が確認できた。

2) カオリン粘土と改良杭の界面強度を調べるためのリングせん断試験を実施した。改良体の表面粗さが大きくな ると粘土と改良体間の摩擦抵抗は大きくなり、改良体の表面粗さが粒径D90 より大きい場合は、粘土と材料間 の摩擦抵抗は粘土内部のせん断抵抗と同程度となることを確認した。

【謝辞】:実改良体の表面粗さの計測については、国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所の方々に、多大なご配慮をいただいた。また 本研究の一部は,科学研究費補助金(課題番号15K18114)の支援を得て実施したものである.ここに記して謝意を表します.

【参考文献】1)安福規之ら:ピークおよび残留状態に着目した砂と鋼材の摩擦特性、応用力学論文集 Vol.6, pp.563-571, 2003.

-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60

0 2 4 6 8 10 12

現地改良土 Ry = 92.9 m 室内改良土 Ry = 25.2 m

面粗( m )

評価長さ ( mm ) セメント固化処理土 ( 宇土粘土 )

図-4 セメント固化処理土の表面粗さ

0 50 100 150

0 50 100 150 200

カオリン粘土 p' = 36.6 ° カオリン粘土

r' = 34.1 °

有明粘土p' = 32.8 °

有明粘土

r' = 31.5 °

ん断応力' ( kPa )

垂直応力 

n' ( kPa ) 図-5 垂直応力-せん断応力関係

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 0.5 1 1.5

カオリン粘土 ピーク時 カオリン粘土 残留時 有明粘土 ピーク時 有明粘土 残留時

擦抵抗の比 R=tan'/tan'

相対粗さ R

y / D

90

図-6 粘土と改良体の界面強度関係

改良体 粘土

a) 改良体の表面が滑らかな場合

改良体 粘土

b) 改良体の表面が粗い場合 図-7 粘土と改良体の接触面模式図 土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

‑490‑

Ⅲ‑245

参照

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