NII-Electronic Library Service
メ デ
ィ
ア
文化研 究
の
射程
一
英 米
ファ ッシ
ョン研 究
の概
観
と日 本 に お け る 展 開 の 可
能 性
一
The
Scope
of
Media
and
Cultural
Studies
−
How
can
the
works
of
fashion
studies
in
UK
,
US
and
Australia
be
applied
to
Japan
?
一
成 実
弘至
京 都 造形 芸 術 大学
Hiroshi
Narumi
Kyoto
University
otArt
andDesign
●は じ め に
こ の
十 数 年
間、
英 米 圏
にお ける ファ ッ ション研 究
の盛
り上 が り に は注 目に値 する も のがあ る。それは
毎 年
コ ンスタ
ン トに研 究 書
が 上梓
さ れて い る こ とや、
ファ ッショ ンを テー
マにした 展 覧 会がつね にどこかの美 術 館・
博 物 館で開 催 さ れていること か らも うかが え る。
この傾 向 は 学 術 研 究 誌“
Fashion
Theory
’
が 創 刊 さ れ た1997
年ごろ か ら 目 立 つ もの になっ て き た。
ま た 研 究 書 だ け に と ど ま ら
ず
、
初 学 者 向 けの入 門 書 や 論 文 集 も 続 々と出 版 さ れてい る。
2007 年にはマル コム・
パー
ナー
ドが 編 集 し た
”
Fashion
The
αy
:A
Reader
”
と リンダ・
ウエ ル ター
ズ とアビー ・
リリサム に よ る 共 編 L‘
The
FashionReader
”
、
二 冊 の リ
ー
ダー
が 登 場 し て い る。
こ う し た リー
ダー
は大 学の授業
のため に編 纂
さ れ る もの であ り、
出版 社
が ある程度
の読 者 数
を見 込ん で い る こ と を意味
す る。
こ れ ま で 周縁
の領 域で あっ た フ ァ ッショ ン研究
に とっ て、
この活況
ぶ りは驚
くべ ぎこ とだろ う。
これ らの研 究 成 果 を 見て いる と
、
メ デ ィ ア研 究の問 題意
識 や 方 法 論 か ら影 響 を 受 けて いる ものが 少 な く ない こと に気
づ く。
その大 き な 特 徴 は テ キス ト分 析 やフ ィー
ル ドワー
クによっ て 文 化 に お け る権 力 作 用 を 解 明 し よう とする と こ ろ にあ る。 これは70
年 代 イギ
リス に 誕 生 し、
80〜
90
年
代 に 英 米 圏に おい て 発 展 し た カ ル チュ ラ ル・
スタ ディー
ズ
に よっ て推 進 さ れ た 方 向 性 と 大い に重 なっ ている。
カ ル チュ ラル・
スタ ディー
ズは ポピュ ラー
カ ル チ ャー
やメ ディ ア の領 域(
新 聞、
雑 誌、
音 楽、
テ レビ、
ネ
ッ トな ど)
を主 な舞 台
とし てお り、
ファ ッシ ョ ンも 分析
と し て積 極 的に取り 上 げてき た の で あ る。
それに
比
べ て、
日本
の ファ ッシ ョン研 究
は活 発
におこな わ れ て い る と は いいが たい。
ファ ッ ショ ン は 研究の伝 統 が ない う え に、
さまざ ま な 領域
に広
くまた がる現 象
で もあ り、
大学
での専
門 分 野と して成立 し に くい と い う事 情
も あ る。これま で も美 学
、
美 術 史、
服 飾 史、
社 会 学、
心 理学
、
文 化
人 類学
、
経 済学
、
家 政
学 な どの分 野で取 り 組 ま れて き た が、
そ れ ら の 試 み も 多 くは 単 発 的 な ものに と ど ま り、
ひ とつ の組 織 化 さ れ た 研 究 領 域 に は な りえて いない。 ま た、
英 米のよ う に カ ル チュ ラル・
スタデ ィー
ズ がア カ デ ミズム に根付
か なか っ た こともあ り、
メ デ ィア 研究 の分野 で は ファ ッ ショ ン に た いする関 心 がほ とんど 見られ ない のが相
も変
らぬ わ が国
の状
況である。
本 稿
で は主に英米
圏(
イギリ ス、
ア メ リカ、
オー
ス ト ラ リ ア な ど)
で の メ デ ィア研
究やカル チ ュ ラ ル・
スタディー
ズの アブ ロー
チによ るフ ァ ッ シ ョ ン研 究 を概観
し、
わが国に お い て成 果 を ど のよ う に応
用でぎ るのか、
その可 能 性につ い て考
察 して み たい。
現 在の停 滞 状 況 を 打 破 し、
ファ ッショ ン研 究 を建 設 的 な 方 向 に 進 め る た め に も、
こう し たメディ ア研 究の問 題 意 識・
方 法 論・
成 果 に 学 ぶこと は き わ めて重 要 な 示 唆 を 得 ること に な る だ ろう。
1
英 米
圏
に お け るファ ッション研 究 ●ファ ッシ ョン の表 象 分 析こ こ では
英 米 圏
の ファ ッシ ョン研 究 を「表 象 分 析」「文 化 実 践」 「消 費
文 化」、
3
つ の分野 か ら見て いきた い。
こ れ はおも に分 析 する対 象
によっ て分類
さ れるカ テ ゴ リー
である。ま
ず第
一
に あ げ ら れ る の は メ ディ ア に お け る ファ ッシ ョ ン・
イ メー
ジの分析
を中心
と し た研究
だろ う。
7Q 年 代 後 半 以 降、
英 米で は ソシュー
ルやバ ル トによ る 記 号 論が メ デ ィ ア研 究に導 入 さ れ、
文 化に お け る表 象 分 析に取り組 ん できた。 もと も と英米
の メ デ ィ ア研究
に は フェ ミニ ズムや ジ ェ ンダ
ー
研 究の立 場に たっ研究 者
が少
な くない。
彼
ら・
彼 女
ら の関 心 は 広 告、
映 画、
テ レ ビなど の コンテンツ に お いて女性
や 男 性 がどの よ うに表 象 さ れて い るか、
そのなか にいかにジェ ン ダー
の ス テ レオ タ イ プ が 埋 め 込 ま れてい る のか を 批 判 的 に 解 読 すること に 向 け ら れてき た。 そ の代 表 的 な ものと して広 告 に お け る女 性 像を 分析
し たジュ デ ィス・
ウィリ ア ム ソ ン (1978
)や、
ス レ ンダー
な 身 体の女性
イ メー
ジの背後
に ある消 費
社会
の イ デ オロギー
を明 らかに しよう と したスー
ザン・
ボル ドー
(
1993
)
の仕 事
な ど が ある。こ の問
題意 識
は広 告
や雑誌
な ど 大 衆 文化
が 女性
に及
ぼ す 影響
を疑
問視
するフ ェ ミニ ズム の論 者
にとっ て は共 感
しやす く、
ま たフ ァ ッショ ン・
イ メー
ジ の 分 析 に も 応 用 し や すいも のであっ た。
これ まで編 纂 さ れた ファ ッ ショ ン論 集は ジェ ンダー ・
メデ ィア研 究の問 題 意 識 を 重 視 す る ものが 少 な く ない。
こ の時 期の メ ディア研 究におい て ファ ッ ションとい う主 題 が 議 論の俎 上に2
デザイ ン学研究特 集号sPecial Iss
コ
e ot亅aPan s ie吐ytorthescience otdesign vol16
.
1 ∩o.
61 2008NII-Electronic Library Service
乗
せ ら れ、
重要 な 研 究 対 象と なっ て いっ た こ と の背
景に は フェ ミニ ズムが大
き な役 割
を果
たし て いたの であ
る。フェ ミニ ズムがフ ァ ッ ショ ン を男
性 中
心社会
に お け る抑圧装
置
とし て否定
的にとらえる一
方
、
カル チュ ラ ル・
スタディー
ズ は大 衆 文 化に お け る主体 性
に注 目し た ので、
ファッ ショ ンに対 する理 解 も 両義 的
な もの となっ た。 イ ギ リスの フェ ミニ ズ ム・
メディア研 究 者アン ジェ ラ・
マク ロ ビー
(
1991
)はイギ
リ ス の労 働 者 階 級の女 性 と 大 衆 文 化 との結
びつきに注
目、
当
時 人 気のあっ た 大衆
女性 雑
誌 「ジャ ッキー
」 を記 号 論的 に読 解し、
こ の雑 誌 が 「ロ マ ン ス 」 「個
人 生活」「フ ァ ッシ ョ ンと 美 容」 「ポ ピュ ラー
音 楽」 の4
つ の コー
ド に よっ て成 立し てい る と分 析 し た。
マクロビー
は 英 国 力ルチュ ラ ル・
スタ ディー
ズ を 揺 籃 したバー
ミンガ ム 現 代 文 化 研 究 センター
出 身で、
ファ ッ ショ ン、
雑 誌、
ダンスな どの大 衆 文 化 研 究で知 ら れている。
ファ ッショ ン の表 象 分 析 に 本 格 的 に 取 り組んだの はジェ ニフ ァー ・
ク レイ ク (1994
)だろ う。
それ までも 多 くの研 究 者 に よ っ て単 発
的 な 論 文 は 書 か れて いた が、
ク レ イ ク は雑
誌、
広 告、
写真
、
イ ラ ス ト、
デザイ ンな ど、
服飾
をま と う身体
に か か わ る 言説
を横 断
しな がら、
女 性
ら しさ、
男性
ら しさ、
エ スニ シ テ ィ が どの よう に構 築さ れて い る か を総 合 的に検 証し た ので あ る。
そ れ はメディ ア研究 や
カルチュ ラ ル・
スタ
ディー
ズの文 脈
に お いて フ ァ ッショ ンの全 体像
をつか み だ そ うとした 試 みとして興 味 深い。
も ちろ ん彼 女 以 前 に もフ ァ ッ ショ ン に 注 目 し た 社 会 学 者 は お り、
エ リザ
ベ ス・
ウィル ソンは1985
年
に ファ ッ ショ ン を女 性 文 化の重 要な一
部
と し て取り 上 げ た先 駆 的な著書
を書
い ている。フ ァ ッ ショ ンが い か に男
性
ら し さ を構築
す るかを 分 析し た の はシ ョー
ン・
ニ クソ ン (1996 )で ある。 こ こ で ニ クソ ン は 90 年 代にイギ
リ ス に 登場し た 「ニ ュー
マ ン」 とい う男 性 像(
フ ァッ シ ョ ンや文化
に敏 感
で、
育 児
・
家事
もこな す新
しい男性 )
が、
社 会 的 につ く ら れてい っ た プロセス を 細 か く検 証 している。
こ の研 究のユ ニー
ク な とこ ろは、
フ ァ ッ ション雑 誌、
広 告 やマー
ケティ ング、
アパ レ ル や 小 売 店 な ど、
ひ とつの分 野 に 閉 じこも らず複 数
の産業
を横
断し ながら表象
の成 立を追い か け た こ と、
しかも イメー
ジの記 号 論 的
な分 析
に と ど まらず
、
デザイ ナー、
編集 者
、
スタ
イ リ ス トな どの文 化媒 介者
に聞 き 取り調査
をする な ど、
文 化の 生 成 過程にフ ィー
ル ドワー
ク を か けて いた ところ である。 ニ クソ ン は表 象
の発
生メカニ ズムを社 会 的
なコ ン テキ ス トの な か で調 査 する こ と で、
表 象の意 味 を よ り立 体 的に 明 ら かに しよう とし た。
ジェ ンダ
ー・
メ ディ ア研 究による イ メー
ジの分 析は、
男性
中心
主義 的
なイ デオロギー
であ れ資本
主義
による搾 取
であ れ、
結
論が一
義 的に導か れ る よ う な枠
組み を持つせ い か、
現在
は あ ま り 注 目さ れて い る と はい いが たい。
かつ て フェ ミニ ズ ム的な表象 分 析
をお こなっ て い たキャ ロラ イン・
エヴ
ァ ンス(
2003
)
も 近著
で は、
90
年
代 以降
のフ ァ ッ シ ョ ン・
デ ザ イン、
ファ ッ シ ョ ン・
ショー、
写真
な どの イ メー
ジに 「不安
」 「苦 悩
」 と いっ た時 代 精神
を解 読しよう とす る 試 みに移 行して い る。
こ れはフ ァ ッシ ョ ン と理 論 を 接 合 す る 企て として注 目 さ れるが、
ジェ ン ダー ・
メ ディア研 究 が新
しい方 向 を 求 めて試 行錯 誤
す る 状 況 を 反映し て い ると もい えよう。
●文 化 実践
と して の スタ
イル第
二 に、
実際
に 衣服を か ら だ に ま と う、
あ るい は ス タ イ ル を つ く り だ す という 文化
的 な実 践
とし て の ファ ッ ショ ンに着 目
し た 研 究 が ある。
イ メー
ジ とし て で はなく、
実 際の 服装 が どのよ う に ま と わ れている か、
そこに おい てメディアが どのよ う な 役 割 を果
た している か を考
え る研
究 が 主 と なる。この分 野で の先 駆 的 な 研 究 者は デ ィ ック
・
ヘ ブディジ (1979
) で あ る。
ヘブ ディ ジ が 学 んでい たバー
ミンガ ム現 代
文化
研 究セ ンター
では、
戦 後 イギ
リ ス にお ける若 者 文 化 と階 級
文化
の関 係 を再考
するプロジェ ク トが おこな わ れて いた。彼
ら は若 者
文化
を資 本
主義
や ア メ リ カ ナ イゼー
ショ ンの産物
と して で は な く、
,
イギ
1丿 ス の労働 者 階級 文 化
を批判 的
に継
承 す る生
き 生 きし た文
化 実 践と して と ら えよう と し たの であっ た。
ヘブ ディジ は当 時出
現 して いたパ ンクの若 者
た ち をスタ イ ル に よ る 表 現 という観
点 か ら 記 号 論 的 に 分 析 した。
服 装 や 化 粧 は 分 析 対 象 と して中 心 的 な 位 置 を 占 めてい た が、
こ こで いうスタイ ル のな かには 音 楽 聴 取、
ダ
ンス、
ミニ コミ 制 作 な ど の 活 動 も 含 ま れていた。
そ の 定 義は人 間が生 きる環 境 そのもの を 文 化とす る 文 化 人 類 学 的 な 関 心 に き わ めて 近い もの であっ た。
ヘ
ブ
ディ ジ ら の仕 事 は 英 米 に おいてサ ブ カ ル チャー
研 究とい う新 しい領 野 を 開 拓 し た。
こ こ で い う サ ブカ ル チ ャー
と はおも に音 楽、
フ ァ ッ ショ ン、
ネッ トなどの メ ディアを 介 して つ なが る若 者 グ
ルー
プの こ とを 指 して いる。
若い研 究 者 た ち にとっ て は 年 の 近い若 者 た ち は 調 査 対 象 と しや す かっ たこと も あっ て、
サ ブ カ ル チャー
研 究 はひとつの流 れ と なっ て現 在
に至っ て い る。
そ のな かに はクラブ カル チャー
を 研究
したサ ラ・
ソー
ン ト ン(
1995
)
や い わ ゆ る 「ゴス」 を調査 し たポ
ー
ル・
ホド キンソ ン(
2002)
の仕事 な
ど があ
る。
近
年
のサブ
カ ルチャー
研 究 は、
バー
ミンガ
ム 学 派 お よ びヘブ
デ ィ ジ を批 判 的に継 承 する、
ないし徹 底 的に批 判 する とこ ろに特 徴
が ある。 現在
の サブ
カ ルチャー
はヘブ
ディジ ら がい う よ う な、
シ ンボル を と お し た 反抗と して、
あ る い は文 化に よ る階
級 闘 争の形 態と し て 理解
す る こ と は で き な い。 ま た方法 論
と し て も、
ヘ ブディ ジ が依 拠
し た よ う な記 号論
は そ の有 効性
が疑
問視
され
て いる。若 者
た ちの世
界観
や価 値
観 を 的確
に 把 握 す るた め に は、
ス タ イ ル を テキス ト と して 「読 む 」 だけでは 不 十 分であ欝
饗∴∴
訓
∵
NII-Electronic Library Service
り、
実 際 にス ト リー
トや クラブ
に 出 か けてい っ て フィー
ル ド調 査 を すること が 不 可欠
と なる。 文化
が ど うつ くられるか、
ど う 消費
さ れて い るか とい う問 題 意 識 からす れ ば、
フィー
ル ド ワー
クへ の接
近 は当
然の帰 結
だっ た といえ よ う。そ の意
味
で 興味
深い の は ア ンジェ ラ・
マ ク ロビー
(
1998
)
に よる イギ
リ ス・
フ ァ ッ ショ ン産業
の研究
である。本 書
で マ クロ ビー
は 以前し た よ う に 女性が ファ ッ シ ョ ンや メ デ ィ ア を ど う消 費
す るか、
メディアが女 性
イメー
ジを ど
う表
現 す る かではな
く、
フ ァ ッショ ンが どのよ う に 生 産 さ れてい る か、
つ く り手 に 光 を 当てた 分 析 を おこなっている。
彼 女 はフ ァ ッ ション産 業 が お か れてい る 状 況 を 実 証 的 に 分 析 するた め、
多 くの ファ ッショ ン・
デザ イ ナー
た ち に 聞 き 取 り 調 査 を おこない、
彼 ら が 直 面 している 問 題 を 明 ら か に し よ う と する。 た と え ばファ ッ シ ョ ン・
デザ インはアー
トなのか ビ ジ ネ ス な の か、
デザイ ナー
と し て どう生 計 を 立て て い く か、
どう い う教 育
や技 術
が 必 要な の か……
な どで ある。 ファ ッ ショ ン・
ジ ャー
ナ リズム などの メ デ ィ ア も含
め て、
フ ァッション を ひ とつ の創造 産 業
と し て と ら え、
こ の産 業
におい て働
くと い う こ と は ど ういうこと な の か を明ら か に し た ので あっ た。
これは メ デ ィ ア研 究の方法 論
がイメー
ジの 分析
か ら政
治 経済
学 的 な 分析
へ と移 行して い く局 面 を 表して い た の か も しれ ない。
フ ァ ッショ ン は そ れ を まとう
身体
にど
の よ う な 影響
を与
え るの か。
ジョアン・
エ ン ト ウィッスル(
2000
)
は あ る ス タ イ ル を ま とう ことで着る人の 自 己 意 識 が 明 確に変 容 する と 主 張 し て いる。
彼 女 は80
〜
90
年 代 の 働 く 女 性の間で流 行 し た 「パ ワー ・
ドレッ シ ン グ」 を事 例として、
女 性 が 制 服 を まとっ た り 職 場の ド レス コー
ドに 従 うこと が、
キャリアウー
マ ンと して の自
己イ メー
ジ を 表現
する こと、
ま た新
しい消費
生活
を も た ら し て いっ た こ と に注 意を喚
起す る。
エ ン ト ウィ ッス ル も ま た イ メー
ジ や 言説
の分 析
で は、
フ ァ ッ シ ョンをま と う と い う生
き られ
た経験
を 理解
す る た め に は不十 分
である こ と、
現象 学
的 なアブ ロー
チによる身 体 性
への分析
に取 り組
む べ きこ と を提
言し て いる(
もっ と も前掲 書
を読
む限りでは、
現象学
的な アプロー
チ が 具 体 的に どの ような 方 法論
なの か は明ら かではない)
。 ● 衣 服 と 消 費 文 化第 三 に あ げてお き たいのは
消 費
文化
研 究であ る。
こ こに は社
会 学 や 文 化 史のほ か、
「マテ リ ア ル カ ル チャー
」 という 観 点 か ら デザイ ンやメ デ ィアを 研 究 する文 化 人 類 学 的 研 究 も 含 めて よいだろう。 これ はモ ノ、
デザ イン、
情報
な ど が さ ま ざ ま な国
に お い て どう 用 い ら れ て い るか をフ ィー
ル ドワー
ク 調 査 を す る ものであ
る。
そ の 調
査対 象
に は 服飾 史
も含
ま れ る。服 飾 史
研究
と いう と 歴 史 衣 裳の保 存・
修 復 などをお こなうス タ テ ィ ック な印 象が あ る が、
近 年 は カ ル チュ ラ ル・
スタ ディー
ズ
の問 題 意 識 に 触 発 さ れ、
4
デザイン学 研究 特集 号sPeclal issueofiaPan soGietytor ±hescience efdesign vel
.
16−
1ne
.
61200S 歴 史 を メ ディアや 都 市 と 結 びつ い たダ
イ ナ ミック な プロセ ス の な かで見てい く研 究 が増
えてい る。
ク1丿 ス トフ ァ
ー ・
ブリュ ワー
ド (1999
)
は19
世
紀 後 半 から第
一
次 大 戦 まで の近代
に おい て、
男性
た ち がファ ッシ ョ ンをいか に享 受し た かをロ ン ド ン の消費
文 化の成 立と と も に検
証 し て い る。 19世 紀
ヴィク ト リ ア時 代 中
流階 級
といえば、
女 性
がコ ル セ ッ ト・
ク リ ノ リン・
バ ッス ル を身につけ る一
方、
男性は地 味な
スー
ツを 着
るよ
う にな
っ た時代
との通 念 があ
るが
、
ブ
リュ ワー
ドに よ る と、
ロ ン ドンの イー
ス トエ ン ドは 男 性 向 け の 既 製 服 業 者 や その小 売 店 な ど が 立 ち 並 ぶ 消 費 都 市であっ た。
彼 は 男 性 ファ ッショ ンとい う 隠 さ れ た 消 費 文 化 を 歴 史 的 な 資 料のな か か ら再 構 築 していく。
歴 史 衣 裳 を メ ディアや 消 費 空 間 に 媒 介 さ れ た 都 市 文 化 と して論 じ るこ の試 み に は カ ル チュ ラ ル・
スタ ディー
ズの影響
が 垣 間見
ら れ る。
近 年 ブリュ ワー
ド は フ ァ ッ ショ ンと 都 市 文 化の関 係にま すま す 光 を あて るよ うになっ てお り、
近 著(
2004
)
において も、
20
世 紀
ロ ン ドン の都 市 文 化
と い う視 点
から新
し い ファ ッショ ン文
化
の側
面 を浮
き彫
りに し て い る。彼
は さ ら に パ リ、
ニ ュー
ヨー
ク、
ミ ラ ノ、
東
京、
上海な ど の都
市とフ ァ ッ ショ ンと の関 係を考 察
し た論 文 集 (
2006)
をデ ビッ ド・
ギ
ル バー
トと と も に編 集して い る。
近 年 グ
ロー
バ 1丿ゼー
ショ ンが新
しい研 究領 域
として台
頭 して きている が、
フ ァッショ ン研 究 にお い ても 世 界 経 済 や 流 通のネ ッ トワー
クの なか で服 をとら え る よ う な 研 究 が 目 だっ てきて い る。
パー
ミンダ
ー ・
バー
チュ(
2004
)
は イギ
リ ス の イン ド系
移 民の女 性た ち が民 族 衣 装の影 響を う け たファ ッ ショ ン をつ く り、
ロー
カ ル 経 済 に おい て重 要 な 役 割 を 果 た していること を、
エ スノ グ ラフィー
調
査 に よっ て明 ら か に している。 イン ド系移
民 の女 性 た ち は 結 婚 式 な どの儀 礼 用に伝 統 的 な民族 衣 装 を 制作
し、
あるいは 民 族衣 装
を自分
な りに デザイ ン したフ ァ ッショ ン とし て発 表し てお り、
な かに は メ デ ィア に取
り 上 げられて脚 光 を あ び た ものも少
なくない。 バー
チュ はグロー
バ ル経 済
が大 手
を振
っ て い る現状
に お い て、
周縁
に い る移
民女 性
たち がファ ッ ショ ン を自分
た ちの た め に流
用して いる様
子を鮮
や か に描
き出
し た。
同様
に サ ン ド ラ・
ニー
セ ン、
ア ン・
マ リー ・
レ シュ コ ウ ィ ック
、
カー
ラ・
ジ
ョー
ンズ ら(
2003)
は、
ベ トナ ム、
イン ド ネ シ ア、
タ イ、
韓
国、
香 港 な ど アジ
ア のフ ァ ッ ショ ン が グ ロー
バ ル 経 済のな かでどう普 及 し変 容 してい く か を 論 じている。
ま たマ
ー
ガ レット・
メ イ ナー
ド (2004
)
は、
グロー
バ ル 化の な かで、
いわ ゆる発 展 途 上 国の人 々 と 先 進 国の人 々 が どのよう に服 装
を 選 んで い るか に 注目
する。
グロー
バル なフ ァ ッショ ン文 化
が普 及
して いく
一
方
で、
独 自
の スタ
イルを発 信
し て いくロー
カ ル なフ ァ ッシ ョ ンも根 強く活 動 して い る の だ。
メ イ ナー
ド に よ れば
、
グ
ロー
バル 化 が 進ん で いる とい っ ても、
ファ ッシ ョ _峠
NII-Electronic Library Service
ンは た だロー
カ ル な人々 の身 体を標 準 化・
均 質 化して い る わ け では な く、
ケー
ス・
パイ・
ケー
スで多
様 な 受 容 が な さ れている ので あ る。
ニュー
ヨー
クと ケニ アで は同 じT
シ ャ ツ・
ジー
ンズ 姿 を してい ても、
人々が そこに 込 めて い る意
味 は複 雑
に 錯綜
し、
一
義 的 に は 決 め られ ない。
グロー
バル 化 ということでは、
世 界の ファ ッ ショ ンを 主 導 し て いる ブ ラン ドの研 究 も 進 め ら れてきている。
た と え ば シ リ ア・
ルー
リー
(
2004
)
は 企 業 と 人 々 をつな ぐコミュ ニケー
シ ョ ンと してブラ ンドにつ い て議 論 して いる。
彼 女 は ブ ラン ドがコ ミュ ニ ケー
ショ ン手 段
となっ て い る こ と、
同時
に新
し いグロー
バ ル経 済
に おける企 業
と人
々 の関係
を再編
し て い る こ とを分 析
し て い る。
彼 女によ れ ば、
ブ
ラン ド は 「も の」 で ありかつ コ ミ ュ ニ ケー
シ ョ ン で もあ るとい う新しいメ デ ィ ア の様 態な のであ る。ブ
ラン ドは かならず
し も服 だ けに限 るも の で はないが、
別
の角 度か ら 見 れば、
現代 社 会に お い て はあらゆる文 化は も はや フ ァ ッショ ン(
流行)
と なっ てい る の である。
そ の意 味で フ ァ ッション はグロー
バ ル経 済の渦に人 々 を 巻 き 込 む 強 力 なメ デ ィ ァと して作
用 して い る のだ。
こ こ で は フ ァッション研
究
を 「表 象 分析
」 「文 化 実 践
」 「消費
文 化1 の 三つのジ
ャンル か ら検
討 してみ た。
研究
によって は ひ とつ に 収 ま ら ず 複 数 の 領 域 に ま た が ること も あ る し、
ま た 上の カテゴ リー
に 入 ら ない場 合 も あ る が、
現 在 英 米 圏の ファ ッ ショ ン研 究 が き わ めて広い射 程 を もっ た 領 域 と して成 立 して いるこ と は十 分
に確
認でき よう。2
フ ァ ッ シ ョ ンを め
ぐ
る問 題
●メ デ ィ ア の影 響
英 米
の研 究 状
況 を ふ ま えて、
現 在
の日本
ファ ッション の研
究 にどのよ うに適 用 する こと がで きるだろう か。
その前 に メデ ィア研 究 はファ ッ ショ ンに ど ん なアプロー
チ が できる のか、
解 き ほ ぐ してお き たい。
ファ ッ ションという言 葉 も あ ま りにも 恣意
的に用いら れて い る の で、
指
示 対象
が 曖昧
に なっ て いる きら いが あ る。フ ァ ッ シ ョ ン と は ま
ず
第一
に 「流 行」 の こ と で あ る。
現 代は あ ら ゆ る も の に 流 行 が 見 ら れ る が、
と く に 近 代 以降
の服 装 や 髪 型 は 変 化のサ イ ク ル が 早いた め、
消 費 社 会の発 展と深 く結 びつ き、
流 行の代 名 詞 と なっ てい る。
そのよ う な 服 飾 流 行 の 普 及 に は雑 誌
、
広告
、
テ レビ な どの メ デ ィアが 大 き な役 割
を果
た して い る。 それ ゆえ、
流行
を社 会
に伝
達 する媒 体
とい う意味
で の メ デ ィア(
雑誌
、
新 聞
、
テ レビ、
映画
、
ネッ ト、
広告
な ど)
を 研 究す る視
点 がひ とつ あ る。
こ れ は狭 義の意味
におけ る ファ ッシ ョ ン の メ デ ィア研
究 といえ よ う。
そ の一
方、
ファ ッションは 身につ ける人の 「個 性 」 を 表 現 す るため の媒 体
でも ある。
洋服
、
化 粧
、
ヘ ア ス タ イル、
バ ッグ、
ケー
タ イ……、
これ ら を身につけ、
デ ザ インを 選 ん だ り、
自作 し た り、
組 み 合 わせた り、
カスタマ イ ズ す ることに よっ て、
私 た ち は自
分ら し さ を探求
し、
見られた い自
己 像を他 人に ア ピー
ルす る。
その意味
で服装
や外
見 その ものが自
己表
現の ためのメ ディア といえ る。
広 義 に おいてはファ ッションそ の も の が メ デ ィ アとい うこ と に な る。
こう考 え る と、
前 章で述べ た ジャンル を 想 定 しつ つ、
三つの 問いを 立て ることがで き よ う。
第一
は メ ディアが 人 々 を ど う 消 費 文 化 に 巻 きこみ、
そのな か で ど ん な自
己像
を構 築
させ る のか とい う問
いである。 ファ ッシ ョ ン雑誌
や広 告
は商 品
を身
につけた 「理想の 男性 /女 性 像
」 を提
示し、
読 者
に そ の イ メー
ジと の同一
化
を は か ら せ て商
品の購
買 意 欲を か き たてよ う とする。
そ の よ う な身 体の表 象は そ の時代
に特 定
の ジェ ンダ
ー
イ メー
ジ を 反映
し て い る こ とが多
く、
特
定の人 物 像 が だ れにとっても正 し いもの であるかのよう に 見 る 者 を 誘 導 する こと に なる。
最 近の例でい え ば、
2000
年 代ご ろよ り、
フ ァ ッション誌『Can
Cam
』 は 蛯 原 友 里 や 押 切 も え な どの モ デル を カ リス マ的 な 存在
に成 長 させ、
女
子 大 生 やOL
に絶
大 な 人気
を誇
っ て い る。彼
女
た ちが誌
面で着
た服は ショップに読 者
か ら問い合
わせ が殺 到 す ると いう。 雑誌
の物 語 風 特集
記事
では 蛯 原 た ち は 私 生 活では 素 敵 な 恋 人、
職 場で は異 性の 上 司 や 同 僚 に 支 え ら れて適 度 に ク リエ イ ティブ
な 仕 事 を す る 女 性 を 演 じている。
そこ では働 く女性
が直 面
する深
刻 な悩
みや職
場の トラブルな ど は一
切捨 象
さ れ、
異性
から愛 さ れる こと が 最 大の関 心 事であるような 女性
ら し さ が顕
揚 さ れている。
フ ァ ッ ション雑 誌の表
象
分析
は す で に こ れ ま で も お こなわ れ て きて いる。
落 合 恵 美 子 (1995
)
は、
女性 雑
誌 に お け る 身体 技
法が当 時の 女 性 観 をどう 反 映 して いる かを 分 析 して いる。
し か し、
現 在、
ファ ッション の影 響 力 を 分 析 す る に は 雑 誌 な どひとつ のメディアに 限 定 するだ けで は 十 分では な く な りつ つある。
た と え ば、
2005
年
よ り 「東 京 ガー
ル ズコ レクシ ョ ン」 と い う ファ ッシ ョ ン イベ ン トが話
題にな
っ て い る。 これは大 会
場を貸
し 切 り、
多
く のブラン ドが参
加す る ファ ッショ ンショー
の形 式で お こな わ れ る 販売
促 進 イベ ン トであ る。
『Can
Cam
』 など の カ リスマ モデルや 有 名 タ レン ト を 起 用 して観 客 を 動 員 し、
ショー
に 出てく る 服 を 携 帯 や インター
ネッ ト上 の サ イ トで 販 売 すること が 目 的 だ。
こ こではショー
とい う現
実の空 間 と と もに雑
誌、
携帯
電話
、
ネッ トな どの メ ディア空間
がファ ッショ ン消費
を 促 進 する場 所 と なっ てい る。
い ま やファ ッ ショ ン・
イ メー
ジはよ り錯 綜した 複 雑 なメ ディア・
シ ス テ ム か ら う みださ れて くる の であ る。
●ス ト リー
トと メ ディ ア環 境二
番
目に人 々 がメ デ ィアか らの情 報
を どう受容
し、
どのよう1韈
∴
劃
∵
. 。NII-Electronic Library Service
な文 化実
践を お こ な う の か と い う問い が考
え ら れ る。
先
の アブ ロー
チが メディ アの権 力作
用を扱
うとした ら、
こち ら は受
け手
の主
体 的 な 文 化 実 践に目を向
けて い る。
フ ァ ッ ショ ン
雑 誌
・
広 告
の発信
す る身体 表 象
を受
け手
は無条
件 に 受 け 入 れるわ けでは ない。
実 際 に 消 費 すると き に 情 報 は 取 捨 選 択 さ れるもの であ り、
さ ら に 身 につ けると き に は 送 り 手 が 想 定 し ない独 自の組 合 せ やアレンジ が おこな わ れ ること に な る。
ディ ック・
ヘ ブディ ッ ジ がイギリ ス の サ ブ カル チャー
を 記 号論 的
に分 析
し た と き、
そ れ は若 者
た ち に よる文化
の解 釈 行
為
、
すなわち産 業
の発信
する元来
の意 味
を読
み か え て、
服
、
音
楽、
ふ る ま い な どの様
式 を創
造 して き た こ と に着
目し た の であ っ た。 服を身
に ま と う こ と も主体 的
な自
己表
現であ り、
時
と し て社
会 規 範を挑 発 する よ う な下位
文 化を生む こ と が あ る の だ。
ス ト リ
ー
トファ ッションは若 者
が メ ディア や都 市
か ら 影響
を 受 け な がら、
自 分た ち の身 体を表 現の媒 体とす る 文 化 実 践と見 な すこと がで きる。
欧 米の パ ンク やヒップ ホップ、
日 本でも 都 市の路
上 を舞
台 に し た 若 者 グ ルー
プ が 服 装 や 遊 び に 独 自のスタ イルを 作 り、
時 と して問 題 視 さ れて き た。
しか し 彼らは 商 業 資 本 からある程 度 距 離
を置
い て活 動 する とは い うもの の、
メ ディ アや 市 場 からまっ た く 自 由 な わ けで はな く、
両 者 は 互い に影 響 し あう関係
にある。2000
年 前
後 く ら い にガングロ、
ヤ マ ン バ と い う少 女 文 化 が 登場
して話
題になっ た。
これ は からだ を黒
く焼
いた りファン デー
シ ョ ン を使い、
ア イシ ャドー
や 唇 を 臼 く塗 りたく り、
髪の毛 は金 髪 や 白 髪 など に染め、
さ ら に ミニス カー
トを は い た り、
厚底 ブ
ー
ツ を はいた りす る 女性
た ち のグルー
プ の こ と であ る。 そ の身 体のイメー
ジ はあま り に も女 性ら し さの規 範か ら か け離 れ てい て、
な に か 異 界 の 生 き物
を想
起 さ せ る よ う な 奇 妙 な存 在
に 見え た もの で あっ た。
彼 女 た ちの外 見 は あ ま り に も 特 異であ り、一
見 す る とアメ リ カの ヒッ ピー
や イ ギ リス のパンクのよ う な サブ
カル チャー
と同 じ く、
対 抗 文 化 や下位 文 化のメッセー
ジ が ある よ う に も 見 え る。
し か しよ く調
べると、
彼
女 た ちに特
定の メ デ ィアが 大 き な 影響
を与え て い る ことが わ かる(
成 実(
2007
)
)
。
それは 「egg 」 「popteen
」 のようなス ト1丿一
ト雑誌
で あっ た。
これら の雑 誌はも と も と 読 者の投 稿 雑 誌 と して創 刊 さ れ、
ラ イフ スタイ ル雑
誌へ と変 容
して いっ た もの である。
ほ かの ファ ッ ション雑誌
と同様
に読 者
モ デ ル を提
示 するが、
大
きな違
い は 街の ご く普 通の少 女た ち を積極 的
に紙 面に起 用す る こ と で、
読
者
同 士の価 値 観 を 媒介
し て い る と こ ろ であ る。 こ う し た雑 誌
は 読 者 同 士の コ ミュ ニケー
ショ ンツー
ル と して機 能 する。
ス ト リー
ト雑 誌 は 少 女 た ち に メ ディ ア に 登 場 す る 機 会 も 提 供 する。雑
誌の記
者 や 写 真 家 は 渋 谷・
池 袋 な どのエ リアで撮 影 を する た め に、
休日 に注目さ れ や すい ファ ッシ ョ ン で街 を 歩 く と6
デ ザ イン学 研 究特集号sPeelal
口
ssueef]aPan
soGiety 「orthe
scLence
ot
design vd
.
16−
1no
.
612008 雑 誌に 取 り上 げら れ る 可能 性
が高
く な る。
ま た
渋 谷
109 な どに入っ て い るシ ョ ップも ま た少
女 た ち に さ まざま な ファ ッション情 報を提 示 する。
こ う し た都
市の メ デ ィ ア環境
が ガング
ロ・
スタ イルを生
んだ。
ス ト リー
トファ ッ ションは 若 者 が 街 中で衣 服 を 表 現 や メッセー
ジ と して着 ることで生 ま れる。
そ れ は 都 市 空 間のな かで、
お な じテ イス トの若 者、
ショ ップの店 員、
雑 誌 や テ レ ビの記 者、
カメ ラ マ ンな ど、
さ ま ざ ま な 人 々 が 相 互に コ ミュ ニ ケー
ション を おこな う な かで形 成 さ れて い く。
その意 味で は、
都市
空間
と い う の は、
ひ とつ のビ ジュ ア ル・
コ ミュ ニ ケー
ション の舞台
な のだ。
ま た、
こ う した ま な ざし のな かで、
衣 服 を まとっ た り、
外
見 を 整えた り する ことで、
若 者
た ちは自
ら の ア イ デ ン テ ィ テ ィ にっい て問い か け た り、
構築
し た り す る。
都 市
と い う の はフ ァ ッ ションやスタ
イル と いう 記 号 に よっ て、
人
々 がメッセー
ジ を伝え合う公 共 空 間、
スタ イル による公 共 圏と考
え るこ と がで ぎる の では ない だろう か。
しか しこう し た 公 共 圏でか わ さ れる 視 覚 言 語 につ い ては、
これ までの メディア 論で は 取 り上 げ られ てこな かっ た。
近 年では、
携 帯 電 話 や インター
ネッ トの コミュ ニ ケー
ショ ン が 発 達 し た せいも あっ て、
雑 誌 文 化の影 響 力 が 低 下 して い ると の指 摘
が ある。
街 に 出て刺
激 を 求 める こと が少
な く なっ て い る と も い わ れ、
最 近で は若 者の ス ト リー
ト フ ァ ッション は 目立っ た ものが な く なっ てきて い る。
そ う いう 意味
でもファ ッショ ン に対
す るメ デ ィ ア の影 響
は重
層的
に作
用 する の で あ る。 ●身体
の フ ァ ッ ション化
最
後
に考
え た い の は身
体の ファ ッ ション化
・
情 報 化
と で も い うべ き状 況で あ る。
現
在
の消費 社 会
にお いて は、
身 体
は加
工や修
正 が 可 能 な もの と な り、
そ の物 質 性
は ま す ま す強 調さ れ る状況 が あ る。
た と えばダ
イエ ッ ト、
エ ス テ、
脂 肪 吸 引、
豊
胸、
プ チ整
形 な ど、
身 体 は可 塑 的 なマテ リ ア ル として、
自 由 自 在に形を変え られ る よ う に なっ ている。
これ は身
体の情 報 化 に たいす る 不 安から、
逆 に そ の物
質 性 を 確 認 し たい という 欲 求の表 れ なのか も し れ ない。
すっ か り 定 着 し た タ トゥや ピア スな ど も ま た 自 己 確 認の実 践 と 考 え ら れる。
自 分の外 見の輪 郭 を 変 えるというのは、
自 己のな か に 他 者 を 導 き 入 れ る ということでも ある。
そ れ は 身 体の外 見 をファ ッショ ン のよ う に改 造 す る 事 態であ る。
そ の
一
方
で、
身体
の情 報 化
も ま た 進行
し ている。多
く の人
々 が指 摘
す る よ う に、
私
た ち の身 体
は遺伝
子情 報
、
医療 情 報
、
個
人 情 報
と し て断 片 化
さ れ、
情 報 ネ
ッ ト ワー
クのな かに流
通 し、
監 視や管理 の対象
と な っ て い る。
かつ て マ ク ルー
八ンは 「メ デ ィ ア は身 体
の拡
張であ る」 と主 張 し た が、
これ は逆
にい う と、
メディ ア によっ て身 体の諸 機 能が代 替 さ れ ることで もあ る。
パ ソ コ ンや 携 帯 電 話 が 登 場 する ことで、
知 識 や 情 報 を 暗 記 する能 _ ._謳
NII-Electronic Library Service
力は大 幅に低 下し た。
現 在のネッ ト や携 帯 電 話の発達 は身 体の 現前 性
をかならず
し も必
要とし な く な る一
方
で、
た と えば絵 文
字 をつか う な ど別の形での 「身
体」 を 強 調 す る よ うにも 働い て い る。
身 体の重 みが低 減 す ると ともに、
物質 性
への欲 求
が逆流
して い く とい う 奇 妙 な 局面
が 到 来 している。
鷲
田清
一
(
2003
)
によれば、
身体
の情 報 化
とい う事 態は、
も と も と人
間存 在
のもっ て い る宿 命
であっ た。自
分の身体
はつね に断 片 的な情 報と して し か 与 え ら れ ない。自
分 の顔
さ え も鏡
の像 や
写真
な どの視 覚
イ メー
ジで しか確
認で きず、
それは想像
の中
で し か統一
像を与え る こ とがで き る に す ぎな い のだ。
私 た ち が服
を着
る のは、
身体
をつ ね に 全 体 的 な もの と して把 握 し たい という根 源 的 な 願 望にかられているか ら なのか も し れ ない。
しか し、
どのよ う な 身 体 像 が 理 想 か とい う規 範 は 社 会 的 に 形 成 さ れる。 かつ てな ら共 同体
や家
族 が中
心 と なっ て伝
えて いた 身 体につ い て の規 範 を 形 成す る の は い まやメ デ ィア である。
現在
の身体
にか か わる言 説
は錯 綜
し矛盾
し絶
えず変 化
しつづ けて いる。 メ デ ィ ア は若
く美
し い か らだの イ メー
ジを大
量に流
通さ せ る一
方
で、
ひと はそ れ ぞ れ美
し い のだか ら他 人
の美
し さ に合
わせる 必 要 は ないというメ ッセー
ジも 忘 れ ない。
フ
ー
コー
に よると、
近 代 社 会 に お け る 権 力 は 規 律 訓 練 す る身
体、
健 康 な 身 体、
強い身 体 を 生 み 出 し たとい う が、
現 在の 消 費 社 会 は、
む しろ ファ ッ ショ ン化 する身 体、
断 片 化 す る 身 体、
美 しい身 体 を 生 み 出 して いる。
近 代 以 降の生 権i
力 に 大 き な 変 容 が おこっ ている証 し か も し れ ない。
カ ル チュ ラ ル・
スタ ディー
ズ や メ ディア研 究 か ら 身 体・
ファ ッションを 考 えるこ と は、
消 費 社 会 に おいて私 た ち に どのよ う な権
力 が作
用 して い る のか、
それ をメ デ ィアはいか に 媒 介 して いる のか を 考 え るこ とでも あ る。
本 稿で は英 米 圏の研 究 を 概 観 し、
それ が日本の ファ ッ ショ ン 状 況 を ど う 照 ら し 出 すのか を 検 討 してき た。
日 本の ファ ッ ショ ン・
消費
文 化は新
しいメ ディア環
境によっ て大 き な 変 容 を と げ てお り、
英 米
の研 究
から学
ぶ ことは少
な く ない。 こ う した問
題意
識に よっ て 日本
のファ ッ ショ ンを分析
す る有 効
な枠 組
をどう 具体
的に組 み立て て いくの か が、
今 後
の課 題とな ることだろ う。 参 考 文 献 落 合 恵 美 子 (1995
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イ メー
ジ と して の女」 井 上輝
子 他 編 『表 現 と メデ ィ ア』岩 波 書 店 成 実弘 至 (2007
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