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子 どもの情動表 出傾 向の予測因子の検討

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人間発達 科学部紀要 第 1巻 第 2号 :13‑18(2007)

子 どもの情動表 出傾 向の予測因子の検討

―母親の情動表出傾向と養育態度の影響について二

小林 真

An Exanlination of the Predictor to Children's Emotions Expresslon Tendency:

The lnluence of EmotiOnS Expresslon Tendency and〕 √others:Discipline。

V[akoto KOBAYASHI

Abstract

ln this paper,inluence of mother's emotions expression and discipline on childls emotional&behavioral control.Three models werQ eXamined.The models were(1)the e∬ ect of motheris discipline on childrenis emotional and beha宙 oral control,(2)the effect of mother's emotions expression on children's emotional and behavioral control,and(3)mother's dicsip五ne rnediate the relations of mother:s emotions expresslon and childrents emotional and behavioral Control.

As a result of analysis of covariance structure,three models did not show sumcient goodness of nt.By Comparing three models,model(1)Was rqected.The point common to the two remaining models were as fo1lows.The amount Of mOther's

laughs was promoting childrenis expression ofjoy,selicontrol,and assertiveness.Moreover,motherls anger expression was promoting expression of childrenls displea,ure・TO COnstruct a model with high accuracy is needed by improving investigation items.

キー ワー ド :情 動表 出、情動―行動 コン トロー ル、母親 の養育態度

Keywords :emotions expression,emotional and behavioral control,mothers:discipline

問 題 と 目的

岩立 (2001)は 、幼稚 園 0保 育所 で気 にな る子 どもの問題 として行動や情動 のコン トロールができ ない ことを指摘 している。その背景 にある親の不適 切 な養 育態 度 が、愛着 の形 成 の不全、 自律 的 な 自 己意識 の未発 達、仲 間関係 の発 達 の阻害 とい った 問題 を 生 じや す い (岩立,2001)。 ま たJouriles&

0'Leary(1990)は 、母親 の気分 によって母子 の相 互作用が影響 を受 けることを示 した。特 にネガテ ィ ブな情動が喚起 され る と、子 どもをポジテ ィブに受 け止 め られ な くな る ことが実験 によって示 され た。

したが って、母親の養育態度は母親 自身が どのよ う な情動を抱いているかによって大 き く影響 を受 ける と考 え られ る。」ouriles&0'Leary(1990)の 研究 は、実験 的に母親をある情動状態 に誘導 した研究 で あ るが、母親 の性格特性 としての情動表 出傾 向が、

養育態度を規定 している可能性 も考 え られ る。すな わち、快の感情を表現 しやすい母親 は、子 どもを肯 定的に評価 し受容的に接す ることができるが、不快 な感情を表 出 しやすい親 は子 どもを叱責 しやすい と い った可能性が考 え られ る。そ こで、母親の性格的 な情動表 出傾 向を測定 し、 これ らが養育態度 に与 え

る影響や子 どもの情動 ・行動 コン トロールに与 える 影響を検討す る必要がある。

子 どもの情動 ・行動 コン トロールの問題 は、子 ど も自身の情動反応性 (気質)に よって も影響を受 け てお り、 さ らに子 どもの気質が親 の養育態度 に影響 を与 えることが指摘 されてい る。金谷 (1991)は 、 生後 4〜 8ケ 月の間にそれぞれの母子 間に特有 の相 互作用 スタイルが生 まれ る と指摘 してい る。具体的 には、泣 きや ぐず り、なだま りに くさ とい った子 ど もの気質的な要因が、母親 の性格的な要因 (葛藤 を 感 じやすい、肯定的な情動表 出が少 ないな ど)と 影 響 し合 っているのではないか と述べている。

したが って、従来 のよ うに 「親 の養育態度→子 ど もの情動 ◆行動上の問題」 とい う一方 向的な理解 で はな く、親 と子の持つ特徴が相互 に影響 し合い、 さ らに親子を取 り巻 く環境 (社会的資源の程度)に よっ て も影響を受 ける とい った統合的なモデルを構築 し てい く必要 がある (岩立,2001)。 しか し統合 的な モデルを検証す るよ うな多岐にわたるデー タを、特 定の調査対象者 か ら一 回で収集す ることは困難 であ る。そ こで、モデルを構成す るい くつかの要因につ いて調査を行い、部分的なモデルを組合せなが ら全 体像を検証 してい くことが必要である。

‑ 1 3 ‑

(2)

そこで本研究は、従来のような 「母親か ら子 ども への影響」のモデルを設定 し、母親の養育態度や母 親 自身の情動表出傾向が子 どもの情動 ・行動コン ト

ロールにどのような影響を及ぼ しているのかを検討 する。母親の養育態度に関する研究は数多 くあ り、

拒否的な養育態度が情動 ・行動 コン トロールの間 題 (反社会的行動の表出)に 至るとい う報告 もある (戸ケ崎 ・坂野,1997)。 しか し母親の情動表 出傾 向については これまでほ とん ど議論されていない。

そこで、本研究ではまず母親の情動表出傾向を測定 する尺度を試作する。そ して、新たに開発 した情動 表出傾向と、母親の養育態度 と子 どもの情動 ・行動 コン トロール との関連性を検討する。具体的には、

子 どもの情動 ・行動 コン トロールが母親の養育態度 によって規定されるのか、母親の情動表出傾向 (性 格特性)に よって規定されるのか、あるいは母親の 性格が養育態度を経由して子 どもの情動 ・行動コン トロールを規定するのか とい う3タ イプのモデルを 比較する。

予備 調査

目 的

予備調査では、母親の情動表出傾向を測定する尺 度を開発する。具体的には、英語版の情動表出を尋 ねる 3つ の尺度 (EEQeAEQOECQ)を 日本 語化 し、項 目の選定を行 う。

方 法

被験者 富 山大学 の学生 107名 (男子22名、女子 85名)。

調査時期 2005年 6月 。

手続き 質 問紙調査を実施 した。個別に調査用紙を 配布 し、後 日回収 した。

調 査 内容 フ ェイ ス項 目 (年齢 ・性 別 )、BrOwn (2005)が 作成 した情動表出に関する調査尺度 3種 類の 日本語訳を実施 した。情動表 出尺度 (EEQ)

は14項 目、情動 に関す る行動尺度 目 (AEQ)は 13項 目、情動のコン トロール尺度 (ECQ)は 19 項 目か らなっている。

結果と考察

EEQ、 AEQ、 ECQは それぞれ異なった内容 を測定する尺度 とされているが、 日本語訳を作成 し たところ、 3つ の尺度に重複する部分が多いように 思われた。そ こで 3尺 度 (46項目)を 全て込みに

して因子分析 を行 った。 主 因子法 を用 い て固有値 1の 基準 で因子を抽 出 し、varimax回転を実施 した。

因子 負荷 量 が0.35未 満 で あ った項 目を順次 削除 し ては因子分析を繰 り返 し、最終的に 7因 子解を得た。

因子分析の結果をTable lに示す。

Table lに 見 られ るよ うに、第 1因 子は項 目17・

18な どが負荷 したため、情動表 出の 困難 さ と命名 した。第 2因 子 は、項 目22・ 23な どが負荷 したため、

怒 りの制御 と命名 した。第 3因 子 は項 目807な ど が負荷 したため、否定的な感情表 出 と命名 した。第

4因 子 は項 目1010な どが負荷 したため、肯定的な 情動表 出 と命名 した。第 5因 子 は項 目19021な ど が負荷 したため、情動表 出への不安 と命名 した。第

6因 子 は項 目42・ 43の 2項 目が負荷 したため、情 動 制御 の 困難 さ と命名 した。第 7因 子 は項 目5・ 6 の 2項 目か らな り、感謝の表現の困難 さ と命名 した。

こうして、全46項 目か ら17項 目を除いた29項 目 が 日本語版 の原尺度 とな った。 しか し本調査 では、

母親の養育態度 と子 どもの情動表 出傾 向 も尋ね るた め、項 目数 を絞 り込む必要がある。 まず、第 7因 子 に負荷 した項 目 5は 日本 の文化 にそ ぐわない と判断 されたため、第 7因 子を削除 した。次 に第 6因 子を 削除 した。今 回はVarimax回 転を用い たため、第 6 因子は第 2因 子 と直交す る因子である。つ ま り情動 制御の困難 さは厳密 には怒 りの制御 とは異なる次元 である。 しか しこの因子が 2項 目しかないので、原 尺度に含 まれ る情動制御 に関す る項 目の大部分が第 2因 子 に負荷 し、残 った 2項 目が独 立 した因子 に なった もの と判断 し、削除 した。 さ らに第 5因 子 は、

感情を表現 したい とい う自分の思い と、それによる 影響への懸念 とい う感情表 出への評価が含 まれてい るので削除 した。 したが って本調査では、第 1因 子

〜第 4因 子 に負荷 した 12項 目を情動表 出傾 向の尺 度 として用い ることにす る。

本調 査

目 的

母親の情動表出傾向が、養育態度を経由して子 ど もの情動 ・行動コン トロールにどのように影響を及 ぼ しているのかを検討する。

方 法

被験者  富 山県 内の私立幼稚園に子 どもが在籍す る母親 1 6 8 名 ( 調査用紙を2 2 8 名配布 し、回収率は

‑14‑

(3)

子 どもの情動表出傾 向の予測因子の検討

Tabに1探 索的因子分析の結果 (主因子法・va‖max回転後)

第1因子第2因子第3因子第4因子第5因子第6因子第7因子 共通性 第1因子:情助表出の困難さ

17 自分の感情を言葉で伝えることが苦手な方だ

18も つと自然に感情を表現したいと思うが、実際には表現できていないと思う 15 自分が感じていることを他者に伝えたいと思うが、実際には伝えられないほうだ 27 自分以外の人は、とても簡単に素直な感情表現をしていると思う

16あ まり自分の感情を表現したいとは思わないほうだ

20自 分の抱えている問題について他者に相談したいと思うが、なかなか相談できないほうだ 45め ったに感情を表現しないほうだ

第2因子:怒りの劇御

22嫌 なこと、腹立たしいことがあつても平静を装うほうだ

23腹 立たしいことがあつても、怒りを表現する前に、いつたん冷静に考えるほうだ 11 たとえ公共の場であつても、腹立たしいことがあれば怒りを表現するほうだ 37ケ ンカをするくらいなら、自分から謝罪したいと思う

39ど んなに怒つていても、汚い言葉は使わないほうだ 32め ったに怒鳴らないほうだ

第3因子:否定的な情動表出 8感 情が顔に出やすいほうだ

7あ なたが怒つているとき、周囲の人はそのことを知つていると思う 12あ なたの表情から、周囲の人はあなたの感情を知ること力tできると思う

9物 事が思うように進まないとき、がつかりした表情になつてしまう 第4困子:肯定的な情勁表出

1 涙が出るほど、またはわき腹が痛くなるほど激しく笑うことがある 10よ く笑うほうである

4控 えめに笑うほうだ

2お もしろいテレビや本を見ると大声で実うほうだ 第5田子:情勁表出への不安

19素 直に感情を表現したいと思うが、そうすることによって自分が傷つくのではないかと恐れてしまう 基闘 Q 馨 た:なりといつた否定的な表現をしてしまつたら、他者から受け入れられないのでは 44自 分の感情を素直に表現することに対して戸惑いを感じない

24誰 かに対して怒りを表現した後、長い間そのことについて悩んでしまうほうだ 第6田子:情助制御の困難さ

42先 のことを考えないで、ものを言つてしまうことがある 43自 分の感情をコントロールできないことがある 第7困子:感‖の表現の困難さ

5突 然のプレゼンHこ驚いたとき、どのように反応したらよいかわからないことがある

6他 人から親切にしてもらうと、どのように感翻の気持ちを表現したらよいか困つてしまうことがある

・ ・ ︲ ︲ 5

・ ・ 2 2 4都

・ ・ ︲ 4 4 畑

・ 0 ︲ 1

・ ・ 4 ︲ 4   

・ 0 6 5m

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・ ・ 2 3 2

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¨ ・ ︲ 4 2

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・ 2 ︲ 7   

・ 7 7 3

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・ 5 4 2

・ 5 2 6

・ 3 7 5

・ 7 2 0 師

・ 6 4 7

・ 6 2 7

・ 6 ∞抑

・ 4 ︲ 5   

・ 2 0 6

・ 0 3 2

・ ・ ︲ 0 3 ・ ∞ 0

・ ・ 0 1 ︲

・ 1 ︲ 4

.031    080    .141    .689 .099    245    .133    .467 154    .177    .029    .478 135   ‑.091   ‑.012    675 .198   ‑.484    113    .485 .213   ‑064    .142    615 .327    010    .159    814

‑.034  ‑.066   ‑.038    .485

‑.009   ‑.158    .069    .611

‑.084   ‑.136    .027    .486 .167   ‑.052    .080    .672 160  ‑.080    .040    580

‑.100  ‑.236  ‑145    .706

‑.058    .045   ‑123    .780 027    .166  ‑.022    668 .046    .172  ‑.106    .645 .084  ‑030    .219    .384

‑.123   ‑121   ‑.102    537

‑.049    .056  ‑.144    .705 .036   ‑.110    053    .593

‑.130    .069    016    .616 .723   ‑.118   ‑.026    437 .621    .082    .256    .278

‑066   ‑.230

‑116   ‑.295

‑.293   ‑.277 053    .063

‑.043   ‑.018

‑.203   ‑.044 .172    .158

‑.049    .275 .300    .041 156    .072

‑.147   ‑.075 J12    .392 .143  ‑066

‑.010  ‑.269 .135    .145 .328   ‑.129

.853    090 .685    125 .674    .111 649   ‑036 127    .794 .007    741 .038   ‑.637

101    .598 .067   ‑109 209  ‑.079

.087   ‑107    163    064    766    .483

‑,103  ‑.188    .053    .060    .555    .633

3.43    2.95 9 ︲

11.82   10.18 説明された分散

寄与率

74%で あった)。

調査時期 2006年 1月 。

手続き 質 問紙調査を実施 した。質問紙は幼稚園の 担任により配布 ・回収された。なお、回答が幼稚園 教論の目に触れないように、シール付きの封筒を配 布 し、必要に応 じて母親に封を してもらった。

調査内容 フ ェイス項 目 (子 どもの数 。年齢 ・性 別、母親の年齢)と 、母親の情動表出傾向、母親の 養育態度、子 どもの情動 0行動コン トロールを尋ね る質問紙を実施 した。母親の感情表出傾向は、予備 調査で作成 した12項 目である。養育態度 は、 TK 式幼児用親子関係検査 (品川 ・品川,1992)と 山田 (2001)を 参考に作成 した。子 どもの情動 ・行動コ ン トロールは、母親用の情動表 出傾向尺度 12項 目 に、水野 ・本城 (1998)の 自己主張 ・自己抑制を 尋ねる 6項 目を加えた18項 目か らなっている。

結果と考察

まず、モデルに投入する潜在変数の構成を行 った。

母親の情動表出傾向、養育態度、子 どもの情動 ・行 動 コン トロールのそれぞれについて探索的因子分析

い、その結果を参考にしながら確認的因子分析を実 施 した。

モデルの構成にあたっては、まず母親の養育態度 が子 どもの感情表出等にどのように影響を与えてい るのかを検討 した。子 どもの感情表出については、

4つ の因子が構成された。それぞれ喜びの表出、 自 己制御、不快感の表出、(適切な)自 己主張 と命名

した。母親の養育態度については、当初は 4つ の因 子が構成 されたが、共分散構造分析を行 った結果、

子 どもの感情表出に影響を及ぼ していない 1因 子を 削除 し、 3つ の因子をモデルに用いた。 これ らの 3 因子をそれぞれ、喜びへの共感、叱責、甘やか しと 命名 した。母親の情動表出傾向は、笑い、怒 りの表出、

情動表出の困難さと命名 した。 この 3因 子をそれぞ れ相関関係にあ り、笑い と怒 りの表出は正の相関を 有 している。また、笑い と情動表出の困難さ、およ び怒 りの表出 と情動表出の困難さは負の相関を有 し ている。そこで共分散構造分析を行 う際には、情動 表出傾向の 3因 子の共分散を想定 してモデル構成を 行った。

( 最尤法 ・ス ク リー基準 ・プロマ ックス回転) を 行       最 後 に、 ( 1 ) 母 親 の養育 態 度 が子 どもの情動

1 5 ‑ ―

(4)

丁aЫe 2本研究で用いた因子と負荷した項目 因 子 名

子どもの情動・行動コントロール 喜びの表出

よく笑う

嬉しいことがあると、身体全体で喜びを表現する 自己制御

待つているようにいわれると、やりたいことでも我慢して待つことができる 貸してといわれたら、使つているものでも貸してあげる

してはいけないといわれたことはしない 不快感の表出

自分の思うようにならないと、すぐに泣いたり暴れたりする ほしいものが手に入らないと、すぐに泣いたり暴れたりする 適切な自己主張

嫌なことははっきりと言うこと力tできる

入りたい遊びに自分から入れてということができる

他の子どもと意見が異なるときに、自分の意見を主張することができる 他の子どもに自分の思いや考えを、言葉で伝えることができる 母親の養育態度

喜びへの共感

子どもが喜んでいるとき、一緒に喜ぷ 子どもが外で体験した話を、楽しんで聞く 叱責

子どもに対して口やかましいことがある 子どもを厳しく叱ることがある 甘やかし

子どもが欲しがるものは、すぐに与えてしまう 子どもがだだをこねた時は、親が負けてしまうことが多い 子どもが困つているときは、すぐに親が代わりにやつてあげる 子どもが希望したことはだいたい受け入れてあげる 子どもの機嫌をとることがある

母親の情動表出傾向 笑う

涙が出るほど、または脇腹が痛くなるほど激しく笑うことがある よく笑う

怒りの表出

あなたが怒つているとき、周囲の人はそのことに気づいている 感情が顔に出やすい

人前であつても、腹立たしいことがあれば怒りを表現する

周囲の人は、あなたの表情からあなたの感情を読み取ることができる 表出困難

自分が感じていることを他者に伝えたいと思うが、実際には、なかなか伝えられない 自分の感情を言葉で伝えることが苦手だ

もつと自然に感情を表現したいと思うが、実際には表現できていない

行動 コン トロールに影響を及ぼすモデル、(2)母 親の情動表出傾向が子 どもの行動/情 動コン トロー ルに影響を及ぼすモデル、(3)母 親の情動表 出傾 向が養育態度を媒介変数 として子 どもの情動/行 動 コン トロールに影響を及ぼすモデルを構成 し、モデ ルの適合度を検討 した。モデル構成の際に用いた因 子 と、その因子に負荷 した個々の項 目をTable 2に 示す。

まず モデル (1)を 検討 した。様 々な影響 につ いて検討 し、パス係数の小 さい ものを削除 しなが らモデルを構成 した。最終的に得 られたモデルを Figure lに示 す。養育態度 か ら情動 ・行動 コン ト

ロール に向か うパスその ものは十分 に解釈可能で あ る が、 こ の モ デ ル はC F I = 。9 0 3 、R M S E A = . 1 7 5 、 AIC=1263.664であ り、適合度は十分ではなかった。

次 にモデル (2)を 検討 した。様 々なパ スの う ち係数の小 さい ものを削除 しなが ら最終的に得 ら れ たモ デルをFigure 2に示 す。 このモデル のパ ス

も解 釈 可 能 で あ る が、C F I = . 9 1 6 、 剛 SEA=.163、AIC=1110.804で あり、

適合度は十分ではなかった。

最後 にモデル (3)を 検討 した。

このモデルでは様々なパスを設定す ることができるが、パス係数の低い ものを順次削除 しながら整理 した結 果、最終的にFigure 3のようなモデ ルを構成 した。 しか しこのモデル も、パ スを解釈 す る ことは可能 で あ る が、CFI=.901、RMSEA=.150、

AIC=1798.435で適合度 は十分でな かった。

今回は、検討 した 3種 類のモデル とも十分 な適合度が得 られず、子 どもの情動 。行動 コン トロールを 規定する要因は解明できなか った。

しか し3種 類の適合度指標 (CFI・

跡パEA O AIC)を総合的に評価する と、CFIが最 も大きくAICが最 も小さ かったのが母親の情動表出傾向が子 どもの情動 ・行動コン トロールを直 接規定するとい うモデル (2)で あ る。 また、RMSEAが 最 も小 さか っ た (採択の基準 と見なされ る0.1に 近かった)の は、母親の情動表出傾

バス係数

. 7 1 . 4 8 5 1 4 1

. 7 1 5 1 7 1 .56 49 50

向→養育態度→子 どもの情動 ・行動 コン トロール と い うモデル (3)で あ る。 したが って、養育態度 が 子 どもの情動 ・行動 コン トロールを規定す る とい う モ デル (1)は 棄 却 して よい と思 われ る。今後 は、

母親の情動表 出傾 向が直接的に子 どもの情動 ・行動 コン トロール に影響す るのか、それ とも養育態度を 経 由 して情動 ・行動 コン トロールに影響するのかを よ り詳細 に検討 してい く必要があるだろ う。

Figure 2のモデルでは、母親が よ く笑 うほ ど子 ど もの喜びの表 出 ・自己制御 ・適切 な 自己主張が促進 され、怒 りの表 出が多いほ ど不快感の表 出が促進 さ れ ることが示 された。 また母親が 自身の情動表 出が 困難 だ と感 じるほ ど子 どもは不快感を表 出 しやすい ことも示 された。 これは母子の気質が相関を持つ と い う解釈 と、母親か ら日常的に快 ・不快の感情が提 示 され るほ ど子 どもの快 0不 快 も高 まる とい う解釈 の双方が成 り立つ。

F i g u r e   3 のモデルでは、母親がよく笑うほど子ど

‑ 1 6 ‑

(5)

もに対 して喜びを共感的に受 け止める態度 につなが り、それが子 どもの喜びの表 出 ・自己制御 ・適切 な 自己主張を促進す る とい う傾 向が示 され た。 また母 親の怒 りの表 出傾 向は、子 どもに譲歩 した り子 ども の機嫌 を とる とい った甘 や か しの養育態 度 を促進

子 どもの情動表 出傾 向の予測 因子 の検討

し、それが不快感の表 出を促進す る とい う傾 向が示 された。

この 2つ のモデルを比較す る と、 どち らのモデル で も母親の笑いの表 出が子 どもの喜び ・自己制御 ・ 適切 な 自己主張を高め、母親の怒 りの表 出が不快感 の表 出を促進す る とい うパスが得 られてい る。 した が って、養育態度を途 中に介在 させ るモデルがふさ わ しいか どうかは今後 の検討課題 であるが、少な く とも母親 の情動表 出傾 向が子 どもの情動 ・行動 コン トロール に影響 してい ることが示 された と考 え られ る。

全 体 的 考 察

本研究では、母親の情動表 出傾 向 と養育態度が子 どもの情動 ・行動 コン トロールに どのよ うに影響す るかを検討 してきた。 3種 類のモデルの構成を試み たが、十分 な適合度を有す るモデルは得 られなか っ た。 しか し、母親の情動表 出傾向が子 どもの情動 0 行動 コン トロールに影響を与 えている可能性が示唆 された。今後 は、子 どもの情動 ・行動 コン トロール の測定方法を改善 し、各因子 に十分 な負荷を もつ観 測変数 を設定 してい くこ とが必要 であ ろ う。 また、

今 回開発 した情動表 出傾 向を測定す る尺度 について も、 日本語 としてよ り精度の高い尺度に改良 してい く必要があろ う。

さらに、研究のモデル構成 につ いて も再検討の余 地 があ る。Blechman(1990)は 、情動 と家族 内の コミュニケー シ ョンに関す る研究を展望 して次のよ うに指摘 してい る。すなわち、子 どもが 自分の気分 を調節す るスキルは、子 どもの気質 によって影響を 受 けてい る。 また、家族成員がお互いの快 ・不快 の 感情を正直 に表 出 し、相互 に受容 し、葛藤 のエスカ レー トを避 け る こ とに よ って家 族 内 コ ミュニ ケー シ ョンが うま くい くのである。 このプロセスをモデ ル に入れ るな らば、子 どもが表 出 した情動を母親 (あ るいは父親)が どのよ うに受 け止 め、そ こで どの よ うなメッセニ ジを子 どもに返すか とい う、繰 り返 さ れ るコミュニケー シ ョンのパ ター ンを取 り扱 う必要 があ る。Blechman(1990)が 指摘す るよ うな円環 的モデルを構成す るためには、調査項 目の内容 それ 自体を再検討 し、新 たな要 因を設定す る必要がある だろ う。

喜びへの共感

Figure l養 育 態度 か ら情 動 行 動 コン ロ ール ヘ のパ ス

/       ヽ 喜びの表出 V

笑 い

1 ; ′「 ] : │ : : : : [ J 9

怒 りの表出

不快の表出

ヽ       /

Figure 2母 親の情動表出傾 向か 輔 動 行 動 コン ロ ールヘのパス

喜びへの共感

Figure 3母 親の情動表出傾 向か 義 育態度 を経 由 晩 情動 術 勁 コンロ ールヘのパス

‑ 1 7 ‑

(6)

引用文献

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付 記

本研究における探索的因子分析はSPSS for Windows 10を使用 し、確認的因子分析 と共分散構造分析は Amos 4を 使用 した。

謝 辞

情動表出尺度の作成 ・データ収集 ・入力に関 して は、幼児教育専攻 (当時)の 北上由梨さんの協力を 得ました。 ここに感謝の意を表 します。

(2006年10月20日受付) (2006年12月 6日 受理)

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