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共 同訴訟 か ら集合 訴訟へ

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(1)

【報 告 】

共 同訴訟 か ら集合 訴訟へ

小 島武 司/小 林 学 共著

〈も く じ〉

は じめ に I  共 同 訴 訟

1

.現 代 型 訴 訟 の登 場

2.共 同訴 訟 の活 用 と そ の 限 界 II  従 来 の集 合 訴 訟

1.選 定 当 事 者 訴 訟 2.消 費 者 団 体 訴 訟 III 

新 た な 集 合 訴 訟 の 制 度 設 計 に 際 して 1.原 告 適 格 と判 決 効(被 害 者 の 加 入 態 様) 2.制 度 目 的 と手 段

3.手 続 構 造 4.集 合 訴 訟 モ デ ル

IV  む す び に代 え て

※本 稿 は 、2010年11月15日 に 中 国 ・上 海 交 通 大 学 で 開 催 さ れ た 第5回 東 北 ア ジ ア 民 事 訴 訟 法 学 会 国 際 会 議 に お け る 筆 者 ら の 共 同報 告 「日本 に お け る群 体 訴 訟‑共 同訴 訟 か ら集 合 的 訴 訟(collective  action)へ‑」 に、

そ の 後 の 動 向 な どを加 筆 した もの で あ る。

(2)

桐 蔭法 学18巻1号(2011年)

は じめ に

2006年5月 の 消 費 者 契 約 法 の 一 部 改 正 に よ り、 日本 で 初 め て の消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 が 導 入 され た。 これ は 消 費 者 団体 に よ る差 止 請 求 を認 め て 将 来 に お け る損 害 の発 生 を予 防 し よ う とす る もの で あ っ て 、 す で に発 生 した 損 害 の 回復 を 目的 とす る の で は ない 。 もち ろ ん 、 消 費 者 個 人 に損 害 賠 償 請 求 権 は認 め られ るが 、 各 人 の賠 償 額 は少 額 で あ る の が通 常 で あ り、被 害 者 個 人 が 実 際 に損 害 賠 償 請 求 訴 訟 を提 起 す る こ と は期 待 し難 い場 合 が 多 い 。

こ の よ う な 状 況 に あ っ て 、 日本 にお け る 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 の 創 設 は、

大 量 少 額 被 害 な い し拡 散 利 益 の救 済 とい う局 面 に お け る 画 期 的 な 出 来 事 で あ る とい え る 。 そ れ は、 差 止 とい う限 定 領 域 に あ る もの の 、 社 会 現 実 の な か で は そ の 領 域 を 超 え て 連 動 す る可 能 性 を秘 め て お り、 そ の現 実 の 機 能 と政 策 的含意 は 、 議 論 を さ ら に 実 効 的 な 制 度 構 築 へ 向 け た 新 た な 地 平 に移 行 す る契 機 を孕む と こ ろ に見 出す こ とが で き る 。 確 か に 、 消 費 者 保 護 や 環 境 保 全 な どの 大 量 少 額 被 害 の 問 題 に 対 して は 、 日本 で は 企 業 や 業 界 の 顧 客 対 応 等 に よ る 自浄 作 用 が 高 く、 行 政 の 果 た す 役 割 も依 然 と し て 大 きい う え に1、 調 停 ・あ っせ ん と い ったADRの 拡 充 も ます ま す 進 み つ つ あ り2、 ま た 、 訴 訟 とい う枠 組 み を超 え て常 に全 体 を俯瞰 しな が ら考 察 しな け れ ば な ら な い 。 しか し な が ら、 訴 訟 以 外 の 装 置 群 が 作 動 して そ の 機 能 を発 揮 し う る た め に は 、 究 極 の 救 済 手 段 と して の 訴 訟 が 整 備 を怠 ら ず 、 輝 きを保 つ こ とが 前 提 と な る。

そ う し た 観 点 か ら、 現 在 、 日本 で は 、 訴 訟 制 度 が 拡 散 利 益 の 救 済 機 能 を よ り一 層 果 た す た め に 、 消 費 者 団体 訴 訟 に お い て 損 害 賠 償 請 求 を認 め る べ きで は な い か 、 さ らに は 、 ア メ リ カ 版 ク ラ ス ア ク シ ョ ン な ど を参 考 と しな が ら集 団 的 被 害 者 救 済 制 度 と して の新 た な 訴 訟 形 態 を創 設 す べ き で は な い か とい っ た方 向 で の議 論 が 盛 ん で あ る3。

そ こ で 、 本 報 告 で は、 共 同 訴 訟 形 態 を 中心 と して 活 用 した 現 代 型 訴 訟 の 登 場 に さか の ぼ り、 そ の 後 の 大 量 少 額 被 害 の 救 済 を め ぐ る近 時 の 動 向

を眺 め 、 根 底 の 流 れ に 触 れ て み た い。

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共 同訴 訟 か ら集 合 訴 訟 へ(小 島武 司 ・小 林 学)

I共同訴訟

1.現 代 型 訴 訟 の 登 場

1960年 代 か ら1970年 代 に か け て 、 そ れ ま で の 急 激 な 産 業 興 隆 の 影 と もい うべ き公 害 事 件 や 薬 害 事 件 が 日本 全 国 で 発 生 し、 各 地 の 法 廷 に は 、 生 命 侵 害 や 後 遺 症 侵 害 な ど の 重 大 な 損 害 を被 っ た 多 数 者 が 原 告 とな り、

そ の 賠 償 を企 業 等 に求 め る 、 い わ ゆ る 現 代 型 集 団 訴 訟 が 数 多 く持 ち込 ま れ る よ う に な っ た。 た と え ば 、 公 害 訴 訟4と して は 、水 俣 病 訴 訟5や 新 潟 水 俣 病 訴 訟6な ど、 薬 害 訴 訟 と して は 、 ス モ ン訴 訟7、 サ リ ドマ イ ド訴 訟8 な どが 著 名 で あ る 。 さ らに 、食 品 被 害 で あ る森 永 ヒ素 ミル ク事 件 訴 訟9も 、 当 時 耳 目 を集 め た 。

か く して 、 当 時 の 日本 に は、 よ う や く 「裁 判 の 季 節 」 が 本 格 的 に 到 来 し たか の観 が あ っ た10。

2.共 同 訴 訟 の 活 用 とそ の 限界

こ う した 現 代 型 の 集 団 訴 訟 の受 け 皿 と して 、 日本 民 事 訴 訟 法 は 、 伝 統 的 に 共 同 訴 訟 と い う形 態 を用 意 し て い る(民 訴 法38条 以 下)。 共 同 訴 訟 とは 、 一 つ の 訴 訟 手 続 に 数 人 の 原 告 ま た は被 告 が 関 与 して い る場 合 を い い 、 同 一 の 側 に立 つ 多 数 当 事 者 は 共 同 訴 訟 人(さ ら に原 告 側 で あ れ ば 共 同原 告 、被 告 側 で あ れ ば 共 同 被 告)と 呼 ば れ る 。 日本 民 事 訴 訟 法 が 個 別 訴 訟 の手 続 を一 本 化 して 共 同 訴 訟 と し た法 意 は 、 各 共 同 訴 訟 人 と相 手 方 との 間 の 各 紛 争 が 相 互 に 関 連 す る場 合 に 、 こ れ ら を ひ と括 りに して 同 一 手 続 内 で 審 判 す れ ば 、 重 複 審 理 の 回 避 、 訴 訟 経 済 、 紛 争 の 統 一 的 か つ 一 回 的 解 決 の 実 現 を期 待 し う る とい う点 に あ り、 そ の 結 果 、 裁 判 所 の コ ス

ト削 減 お よび 当事 者 の リ ソー ス の結 合 を 図 る こ とが 可 能 とな る。

共 同 訴 訟 人 の 全 請 求 が 一 つ の 手 続 に お い て 審 理 され る こ とか ら、 一 方 で 特 定 の 共 同訴 訟 人 に よ る、 ま た は 、 こ れ に対 す る 訴 訟 行 為 の 効 果 を そ の 他 の 共 同 訴 訟 人 に 及 ぼ す 必 要 が あ る が 、 他 方 で 他 の 共 同 訴 訟 人 の 手 続

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桐 蔭 法 学18巻1号(2011年)

的 利 益 に も配 慮 しな け れ ば な ら な い 。 そ こ で 、 法 は、 紛 争 の タ イ プ に応 じ て 、 相 互 に掣肘 され る こ とな く訴 訟 行 為 を行 う こ との で き る 通 常 共 同 訴 訟(39条)(同 時 審 判 申 出共 同 訴 訟11[民 訴 法41条1項]を 含 む)、 お よ び 、 足 並 み を揃 え て 合 一 確 定 の 要 請 さ れ る必 要 的 共 同 訴 訟12(民 訴 法 40条)と い う二 類 型 を設 け て い る 。

共 同訴 訟 は 、 集 団 紛 争 の 整 合 的 か つ 効 率 的 な 解 決 を一 挙 に も た ら し う る とい う法 の 期 待 を受 け 、 全 体 と して の訴 訟 追 行 の 負 担 軽 減 や 争 点 の も つ 社 会 的 影 響 力 の 拡 大 と い う観 点 か ら 、 と りわ け 、 公 害 、 薬 害 、 消 費 者 被 害 な ど 、 不 特 定 多 数 の 者 に被 害 が 及 ぶ事 件 にお い て 、 現 に 共 同 訴 訟 を 推 進 す る とい う 選 択 が 当 事 者 側 か ら な され る こ と も少 な くな い 。

もっ と も、 共 同 訴 訟 は 、 こ の 種 の 事 件 解 決 に と っ て 最 適 な 選 択 肢 とい う と い う わ け で は な く、 そ こ に は 自 ず と 限 界 の あ る こ と も否 定 で き な い 。 こ の 点 、 まず 、 裁 判 所 側 か らす る 裁 判 運 営 上 の負 担 増 が 指 摘 さ れ て い る 。 す な わ ち 、 訴 訟 の 共 同 化 は 、 訴 状 の 送 達 に始 ま り、 主 張 ・証 拠 の 整 理 、 そ して 、 判 決 書 の 作 成 に至 る まで 裁 判 実 務 の 複 雑 化 や 混 乱 を招 来 す る こ と も少 な くな い とい うの で あ る13。 た だ し、 この 指 摘 は 、 共 同訴 訟 と い う道 具 立 て に と っ て 本 質 的 な も の で は な い 。 そ の 危 惧 は、 精 密 司 法 の 因 習 の な か で涵養 さ れ た メ ン タ リ テ ィ ー に 由 来 す る 面 が 多 分 に あ り、 よ り広 い 視 野 か ら は そ こ に 普 遍 性 を無 条 件 に 見 出 す こ と は で きず 、 現 に 学 界 に お い て は 共 同 訴 訟 人 間 に お け る 主 張 共 通 の 原 則 の 弾 力 化 の 動 き もあ り、 共 同 訴 訟 に個 別 訴 訟 の 法 理 を貫 徹 して 過 度 に精 緻 な 整 理 を す る必 要 は な い と の 認 識 が 広 ま りつ つ あ る と こ ろ で あ る14。

つ ぎ に 、 運 営 上 の 限 界 に言 及 され る こ と も あ るが 、 そ れ は 、 共 同 訴 訟 と い え ど も、 所 詮 、 個 別 訴 訟 の 寄 せ 集 め に過 ぎな い と観 念 さ れ て い る こ と に起 因 す る 。 す な わ ち 、原 告が 何 人 で あ ろ う と、訴 訟 は 、結 局 の と こ ろ、

各 人 の権 利(損 害 賠 償 請 求 権 な ど)の 訴 訟 上 の 行 使 な の で あ っ て 、 前 述 の よ う な 生 命 侵 害 や 重 度 の 身 体 障 害 とい っ た重 大 な 法 益 侵 害 を結 果 す る 公 害 事 件 や 薬 害 事 件 の 場 合 に は 、 被 害 者 各 人 に お け る提 訴 お よ び訴 訟 追 行 の イ ン セ ン テ ィ ヴ は 必 し も小 さ くな く、 しか も、 そ の こ とは 訴 訟 支 援 活 動(各 地 の被 害 者 団 体 の 結 成 とそ れ らの 連 携 な ど)へ の 弁 護 士 の コ ミ ッ

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共 同訴 訟 か ら集 合 訴 訟 へ(小 島武 司 ・小 林 学)

トメ ン トに対 す る 誘 因 とな る の で あ っ て 、そ こ に は共 同 訴 訟 の ポ テ ンシ ャ ル を 最 大 限 に 活 用 す る契 機 を見 出 す こ とが で き る 。 さ ら に 、 同 一 事 件 の 被 害 者 らが 各 地 裁 に 提 起 した 共 同 訴 訟 が 一 定 の 有 機 的 関 連 性 を も っ た 展 開 を 見 せ 、 個 別 訴 訟 の 寄 せ 集 め を超 え て 、 後 にみ る 集 合 的 権 利 保 護 訴 訟 制 度 と 同様 の 機 能 を果 た した こ と も、 特 筆 に値 し よ う。 そ れ は 、 弁 護 士 の 協 力 の 下 で 各 訴 訟 を共 同 で 準 備 した り15、 あ る い は、 典 型 的 な 事 件 を 取 り上 げ て審 理 な い し判 断 し、 そ の 成 果 を他 の 同 種 の事 件 に お い て利 用 す る とい う モ デ ル 訴 訟 や ピ ッ ク ア ッ プ 訴 訟 と呼 ば れ る 工 夫 で あ る。 これ は 、 複 数 の 共 同 訴 訟 の う ち 一 つ を 先 行 訴 訟 と して 本 案 判 決 まで 進 め(他 の訴 訟 を事 実 上 停 止 させ る)、 請 求 が 認 容 され る と、 そ の判 決 の 間接 波 及 効 と して 、他 の 共 同 訴 訟 に お い て 和 解 を成 立 させ た り16、 す で に行 わ れ た 証 拠 調 べ の 結 果 を 流 用 し、 ま た は 、 こ れ か ら証 拠 調 べ を 共 同 で 行 う た め に弁 論 の 併 合 ・分 離 を利 用 した りす る もの で あ る17。 た とえ ば、 新 潟 地 方 裁 判 所 は、 係 属 中 の10件 の 新 潟 水 俣 病 訴 訟 の うち 一 部 につ い て まず 訴 訟 を進 め 、 そ の他 の 事 件 の 期 日 を 「追 っ て 指 定 す る 」 と した う え で 、 証 拠 調 べ の 終 わ りの 段 階 で 他 の全 事 件 を併 合 して 、 結 局 、 合 計10件 の 事 件 に つ き一 括 して 判 決 を 下 し た18。 この よ う な 工 夫 は 、 特 別 の 立 法 的 手 当 て が な くて も、 当 事 者 の協 力 さ え あ れ ば 実 施 す る こ と が で き る もの で あ り、 集 団 大 量 訴 訟 に 関 す る 裁 判 運 営 上 の 工 夫 と して 実 務 の 賢 慮 に 裏 打 ち され て い よ う。 さ らに 、た と え ば 、争 点 ご と にモ デ ル 訴 訟 を各 地 で起 こ し、

そ れ らが 各 争 点 を分 担 す る な ど、 さ ま ざ ま な 活 用 に よ っ て 広 が り を みせ る こ とが 期 待 され る19。

しか しなが ら、そ の 反 面 で 、と りわ け 消 費 者 訴 訟(製 造 物 責 任 訴 訟 な ど) や 環 境 保 全 訴 訟 な ど に お い て み られ る 、 被 害 が 不 特 定 多 数 人 に拡 散 しつ つ も、 各 人 の被 害 は 少 額 に と ど ま る とい う大 量 少 額 被 害 ま た は拡 散 的利 益 の 救 済 とい う 局 面 で は、 先 行 訴 訟 の 当 事 者 や 弁 護 士 の 負 担 が あ ま り に 大 きい に もか か わ らず 、勝 訴 の場 合 で さ え経 済 的 利 益 を期 待 し難 い な ど、

万 人 向 け の提 訴 動 機 を用 意 しえ な い とい う克 服 困 難 な 障 碍 の 存 在 は 否 定 し得 な い 。

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桐 蔭 法 学18巻1号(2011年)

II 従来の集合訴訟

そ こで 、 大 量 少 額 被 害 の 救 済 と して 、 個 別 訴 訟 を ベ ー ス に単 に そ れ ら を束 ね る とい う既 存 の シ ス テ ム に よ る便 宜 的対 応 で は な く、 集 合 的 権 利 の 救 済 な い し個 別 的 権 利 の 集 合 的救 済 に 特 化 した独 自の 訴 訟 形 態‑い わ ゆ る 集 合 訴 訟(collective  action)‑を さ ま ざ ま に 模 索 しな け れ ば な ら な い 。 こ う した 集 合 訴 訟 制 度 と し て 、 日本 民 事 訴 訟 法 に は 、 古 くか ら選 定 当 事 者 訴 訟 が 存 在 して い る の で 、 まず は こ れ を概 観 す る と こ ろ か らは じ め た い 。

1.選 定 当 事 者 訴 訟

(1)選 定 当事 者 訴 訟 の 意 義

選 定 当 事 者 訴 訟 とは 、 共 同 の利 益 を有 す る多 数 者 の 中 か ら全 員 を代 表 す る者 と して 選 定 さ れ た 者(選 定 当 事 者)が 全 員 に代 わ っ て 訴 訟 当 事 者 とな る 訴 訟 をい う。 これ は 、 共 同 訴 訟 の よ う に 被 害 者 全 員 が 訴 訟 当 事 者 と な る とす る と、 訴 訟 の 進 行 が 煩 雑 と な る こ とか ら、 選 定 当 事 者 の み が 訴 訟 当事 者 と な り、 そ の 他 の 被 害 者(選 定 者 とい う)は こ の 者 に 訴 訟 を 委 ね て 、 訴 訟 に参 加 し な い が 、 判 決 効 を 受 け る こ と に して(明 文 の 許 容 す る任 意 的 訴 訟 担 当)、 手 続 上 の 簡 素 化 を狙 っ た もの で あ る。

こ の 選 定 当 事 者 制 度 は 、1890年 の 初 代 民 事 訴 訟 法(明 治23年 法 律 第 29号[い わ ゆ る 、 旧 々 民 訴 法])に は 存 在 せ ず 、1926年 の2代 目民 事 訴 訟 法(大 正15年 法 律 第61号[い わ ゆ る 、 旧民 訴 法])制 定 の 際 に、 当 時 の イ ギ リス 法 の代 表 訴 訟(representative  action)20を 範 型 と して 新 設 され た も の で あ る 。 も っ と も、 共 同 の 利 益 を有 す る 者 は 、 提 訴 して 一 旦 訴 訟 当 事 者 と な っ た後 に併 合 を 待 ち 、 選 定 に よ り訴 訟 脱 退 す る とい う 仕 組 み で あ っ た た め(旧 民 訴 法47条2項[現 行 民 訴 法30条2項])、 提 訴 の イ ンセ ン テ ィ ヴが 極 め て 低 い 少 額 被 害 事 件 で の 利 用 は 見 込 め ず 、 し か も、

先 述 した よ う な生 命 な い しそ れ に準 じ る重 大 な 法 益 が 侵 害 され た事 件 の

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共 同訴 訟 か ら集 合 訴 訟へ(小 島武 司 ・小 林 学)

場 合 に は 、反 対 に、選 定 者 と して 背 後 に退 く よ りは共 同訴 訟 の 当 事 者(共 同 原 告)に 名 を連 ね る方 を選 択 す る の が 通 常 で あ り‑つ ま り、 選 定(脱 退)の イ ン セ ンテ ィ ヴ を 欠 く‑、 結 局 、選 定 当 事 者 訴 訟 は機能 不 全 に陥 っ て い た とい わ ざ る を得 な い 。 実 際 、 立 法 当 時 に 法 廷 を賑 わ せ て い た 入 会 権 な ど を め ぐ る多 数 当 事 者 訴 訟 の 簡 易 迅 速 化 の た め の便 法 と して 立 法 化 さ れ た の で あ っ て 、 そ こ に大 量 少 額 被 害 の 救 済 とい う立 法 動 機 は 見 られ なか っ た と い う21。

(2)大 量少額被 害 の救 済 と選定 当事者訴 訟

そ の た め 、 民 事 事 件 一 般 を 対 象 とす る 集 合 訴 訟22で あ る 選 定 当 事 者 訴 訟 は 、1970年 代 、 日本 が 本 格 的 な 大 量 消 費 時 代 を迎 え る に至 っ て も、 集 合 訴 訟 本 来 の 機 能 を果 た す ど こ ろか 、 そ う し た期 待 を も た れ る こ と も な

く、 そ の利 用 は極 め て 低 調 で あ っ た23。

む し ろ、 各 界 を 巻 き込 ん だ議 論 は 、 当 時 、 い ち 早 く大 量 消 費 社 会 に突 入 して 大 量 少 額 被 害 救 済 の た め の 強 力 な制 度‑ク ラ ス ア ク シ ョ ン24‑を 発 達 させ た ア メ リ カ法 に倣 っ た 立 法 化 へ と 向 け られ て展開 した25。 も っ

と も、 高 度 経 済 成 長 の 緒 に 就 い た ば か りの 日本 社 会 に あ っ て は 、 消 費 者 保 護 等 よ り も経 済 発 展 が 優 先 さ れ 、 企 業 の 営 利 追 求 に と っ て足枷 と な る よ うな 制 度 の 導 入 に は 、 と りわ け経 済 界 を 中 心 に 警 戒 が 強 く26、制 度 化 に は至 らな か っ た 。

と こ ろ で 、 学 界 か らは 、 消 費 者 保 護 や環 境 保 全 の分 野 にお け る拡 散 利 益 救 済 の必 要性 は 喫 緊 の課 題 で あ っ て立 法 を待 つ 猶 予 は な い と して 、被 害 者 各 人 か らの授 権 を要 せ ず に提 訴 前 に紛 争 解 決 の た め の行 為 を して い る 者 に 当 事 者 適 格 を認 め る紛 争 管 理 権 説 とい う考 え方 が提 唱 さ れ た が27、 実務 の 採 用 を見 る に は至 らな か っ た28。 ま た 、 局 面 は 異 な るが 、 環 境 破 壊 ・汚 染 を 惹 起 し う る 開 発 の 差 止 等 を求 め る訴 訟 の原 告 適 格 を動 植 物 等 の 自然 物 に認 め 、個 人 や 市 民 団体 等 が そ の 訴 訟 追 行 に あ た る とい う ア メ リ カ で の 試 み29を 受 け て 、1995年 に奄 美 大 島 の ゴ ル フ場 開発 の差 止 を 求 め る 訴 訟 (行 政 訴 訟)が 特 別 天 然 記 念 物 の ア マ ミク ロ ウサ ギ な どを原 告 と して 提 起

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桐 蔭 法 学18巻1号(2011年)

さ れ た が(「 ア マ ミ ク ロ ウ サ ギ 訴 訟 」 と呼 ば れ る)、 原 告 適 格 が な い こ と を理 由 に訴 え は却 下 され た(鹿 児 島 地 判 平 成13・1・22)。 そ の 後 も、 同種 の動 物 等 原 告 訴 訟 が 各 地 で 提 起 され た が 、 い ず れ も却 下 され て い る30。

そ の 後 、1996年 の 新 民 事 訴 訟 法(平 成8年 法 律 第109号)の 制 定 に際 し て 、 ク ラ ス ア ク シ ョ ン立 法 化 の議 論 が 再 び俎上 に載 せ られ た が 、 そ の

濫用 に対 す る 懸 念 な ど の ア レル ギ ー 反 応31は 未 だ根 深 く、 既 存 の 集 合 的 訴 訟 形 態 で あ る 選 定 当 事 者 訴 訟 の 活 用 を促 進 す る こ とで 対 処 す べ きで あ る との 意 見 が 大 勢 を 占 め 、 結 局 、 提 訴 を経 由 しな い 訴 訟 外 か らの 追 加 的 選 定 を 認 め る こ と で(民 訴 法30条3項 ・144条1項 以 下)、 選 定 当事 者 訴 訟 制 度 を拡 充 す る方 向 で の 改 正 が 行 わ れ る に止 ま っ た 。

(3)追 加 的選定 導入後 の選定 当事 者訴訟 の現状

選 定 当事 者 訴 訟 は 、 ア メ リ カ の ク ラ ス ア ク シ ョ ンの よ う に 、 被 害 者 各 人 が 除 外 申 出 を し な い か ぎ り当 然 に訴 訟 当 事 者 と され る 、 い わ ゆ るopt‑

out型 で は な く、彼 らが 判 決 効 を享 受 す る に は積 極 的 に加 入 申 出 とい う行 動 を しな け れ ば な ら な い 、 い わ ゆ るopt‑in型 で あ る が 、1996年 の 新 民 事 訴 訟 法 は、 追 加 的 選 定 の 許 容 に よ っ てopt‑inの ハ ー ドル を下 げ る こ とで 、 opt‑in型 ク ラ ス ア ク シ ョ ンの 機 能 を発 揮 す る こ と を狙 い と して い た 。

しか しな が ら、 そ の 狙 い も虚 し く、 旧 法 時代 と 同様 に選 定 当 事 者 訴 訟 は ほ とん ど利 用 さ れ な い ま ま で あ っ た 。 す な わ ち 、opt‑in型 で あ る こ との 障 壁 は 、 提 訴 後 に お い て 直 ち にす る選 定(提 訴 不 要)を 認 め る 程 度 で は 到 底 克 服 しえ な い こ とが 実 証 され た わ け で あ る 。 不 振 の 原 因 は 、 大 量 少 額 被 害 を 受 け た 不 特 定 多 数 人 に と っ て 、 共 同 の利 益 を有 す る者 に よ る訴 訟 の 係 属 を知 ら しめ る広 告 制 度 の 不 存 在32、 自 己 の 権 利 の救 済 を他 人(選 定 当 事 者)の 訴 訟 追 行 の 帰 趨 に委 ね る こ とへ の 不 安 、 あ る い は 、 せ っ か

くopt‑inし て お き な が ら選 定 者(潜 在 的 当 事 者)と して 背 後 に 追 い や ら れ る 不 満 な ど、 種 々 考 え られ る。 即 断 は禁 物 で あ る も の の 、 そ こ に は さ ま ざ ま な 集 合 訴 訟 制 度 を構築 す る う え で の 貴 重 な示 唆 が 存 す る こ と を見 逃 して は な る ま い。

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共 同訴 訟 か ら集 合 訴 訟 へ(小 島武 司 ・小 林 学)

2.消 費 者 団体 訴 訟

(1)消 費者団体訴 訟 の導 入の経緯 とそ の拡 張

ほ ど な く、 日本 で は司 法 制 度 全 体 を射 程 に 入 れ た 改 革 論 議 が 盛 ん とな り、 そ こ で は 大 量 少 額 被 害 の 救 済 策 も検 討 さ れ た。 す な わ ち 、2001年6 月 の 司 法 制 度 改 革 審 議 会 意 見 書 は 、 裁 判 所 へ の ア ク セ ス 拡 充 の 手 段 と し て被 害 救 済 の 実 効 化 を掲 げ 、 そ の な か で 、 少 額 多 数被 害 へ の 対 応 と して 、 ア メ リ カ の ク ラ ス ア ク シ ョ ン お よ び ドイ ツ の 団 体 訴 権(Verbandsklage) に言 及 した う え で 、 団 体 訴 権 の 導 入 に つ い て は前 向 き に検 討 す べ きで あ る と しつ つ も、 ク ラ ス ア ク シ ョ ン につ い て は 将 来 の 課 題 と して 当 面 の 検 討 作 業 を見 送 っ た33。

そ の 後 、 違 法 行 為 の差 止 に 係 る 団体 訴 訟 制 度 の 創 設 につ い て 、 法 分 野 ご と に検 討 が 進 め られ た結 果 、2006年 の 消 費 者 契 約 法 の 一 部 を 改 正 す る 法 律(平 成18年 法 律 第56号)に よ っ て 、 消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 が 新 設 さ れ34、 さ ら に2008年 の 消 費 者 契 約 法 の 一 部 を改 正 す る 法 律(平 成20年 法 律 第29号)に よ っ て 、 そ の 差 止 請 求 の対 象 が 特 定 商 取 引 に 関 す る 法 律

(特商 法)お よび 不 当 景 品類 及 び不 当 表 示 防 止 法(景 表 法)の 一 部 に違 反 す る行 為 に も拡 大 さ れ た 。 要 す る に 、 こ れ は 、事 業 者 の 違 法 な 経 済 活 動 に よ っ て 、 不 特 定 か つ 多 数 の 一 般 消 費 者 が 不 利 益 を被 る お そ れ の あ る 場 合 、 具 体 的 に は 、 消 費 者 契 約 法 の 下 にお け る不 実 告 知 や 不 利 益 事 実 の 不 告 知 な ど を 含 む 不 当 な勧 誘 行 為 、 な ら び に、 不 当 契 約 条 項 の使 用(同 法 12条)、 特 商 法 の 下 に お け る 訪 問 販 売 、 通 信 販 売 、 電 話 勧 誘 販 売 等 の 各 種 の取 引 類 型 に お け る不 当 な勧 誘 行 為 お よ び 不 当 な 契 約 条 項 の 使 用(同 法58条 の4以 下)、 景 表 法 の 下 に お け る優 良 誤 認 表 示 や 有 利 誤 認 表 示 と い っ た 不 当 表 示(同 法11条 の2)が 行 わ れ た場 合 に 、 消 費 者 保 護 を 目 的 とす る 一 定 の 消 費 者 団 体 に対 して 、そ の 種 の違 法 行 為 の 差 止 請 求 な ど(現 行 法 上 は 差 止 請 求 に 限 ら れ る)、 消 費 者 利 益 の 擁 護 の た め の 訴 え を提 起 す

る権 能 を付 与 す る と い う もの で あ る。

(10)

桐 蔭 法学18巻1号(2011年)

以 下 で は 、 こ の 消 費 者 団 体 訴 訟 を概 観 し た う え で 、 若 干 の 問 題 点 に触 れ る こ と に した い 。 な お 、 と く に断 ら な い 限 り、 消 費 者 契 約 法 上 の そ れ を念 頭 に置 く。

(2)消 費者 団体 訴訟 の特徴

① 内 閣総 理 大 臣 の 認 定 を受 け た 適 格 消 費 団 体(以 下 、 適 格 団 体 とい う) が(消 費 者 契 約 法2条4項)、 ② 不 特 定 多 数 の 消 費 者 に対 して 不 当 な 勧 誘 行 為(同 法4条1項 以 下)や 不 当 な 契 約 条 項 の 使 用 行 為(同 法8‑10条) を現 に行 い 、 ま た は 、 行 う お そ れ の あ る事 業 者 に対 して 、③ 当 該 行 為 の 差 止(停 止 、 予 防 、 そ れ に必 要 な 措 置)を 請 求 し う る こ と(同 法12条) を基 本 的 枠 組 み と し て 、 こ の差 止 請 求 を訴 訟 を通 じて 行 使 す る の が 消 費 者 団 体 訴 訟 の し くみ で あ る。 消 費 契 約 法 は 、 団 体 訴 訟 に 由 来 す る手 続 上 の 特 例 を定 め る。

た と え ば、 まず 、 訴 訟 物 を差 止 請 求 権 に 限 定 し35、原 告 適 格 を 内 閣 総 理 大 臣 の 認 定 を受 け た 適 格 団 体(同 法2条4項)の み に認 め る 点(同 法 41条)は 、 特 例 の 出発 点 と して 重 複 を厭 わ ず に確 認 して お きた い 。

つ ぎ に 、 適 格 団 体 は 、 請 求 の 趣 旨 お よ び紛 争 の 要 点 な ど を記 載 した 書 面 に よ り、訴 訟 外 で 差 止 請 求 を した うえ で 、そ の1週 間経 過 後 で な け れ ば、

提 訴 す る こ とが で き な い(同 法41条1項 本 文)。 た だ し、 相 手 方 が 差 止 請 求 を拒 ん だ と きは 、 こ の 限 りで な い(同 条 項 但 書)。 早 期 の 実 態 把 握 に よ っ て 是 正 の機 会 を与 え 、 迅 速 な 紛 争 解 決 と取 引 の 適 正 化 を狙 い とす る もの で あ り、 現 に事 業 者 等 が 是 正 に応 じて提 訴 に至 ら な い こ と も多 い と いう36。

消 費 者 団 体 訴 訟 の 管 轄 に つ い て は、 事 物 管 轄 は 地 方 裁 判 所 に 認 め られ るが37、 土 地 管 轄 に 関 して は、 一 般 原 則 に従 っ て 被 告 の普 通 裁 判 籍 所 在 地 に よ っ て 決 せ られ る ほ か(民 訴 法4条1項)38、 一 定 の特 別 裁 判 籍 も認 め

られ て い る39。

同 一 ま た は 同 種 の 行 為 の 差 止 請 求 に係 る消 費 者 団 体 訴 訟 が 複 数 係 属 し て い る場 合 に 、 裁 判 所 は 、 相 当 と認 め る と き は 、 裁 量 に よ っ て移 送 す る

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共 同訴 訟 か ら集 合訴 訟 へ(小 島武 司 ・小 林 学)

こ とが で きる(同 法44条)。 そ の う え で 、 複 数 の 適 格 団 体 に よ り同 一 事 業 者 等 に対 す る 同 一 内 容 の 請 求 に係 る 訴 訟 が 同 一 の事 実 審 裁 判 所 に 数 個 同 時 に係 属 す る と きは 、 裁 判 所 は 、 弁 論 お よ び裁 判 を併 合 しな け れ ば な ら な い(同 法45条1項 本 文)。 こ の 特 例 は 、 複 数 の 適 格 団体 に よ る 重 複 的 な差 止 請 求 訴 訟 の提 起 自体 を 禁 じる の で は な く、 可 能 な 限 り手 続 を併 合 す る よ う に仕 向 け て 審 理 の重 複 と判 決 の 矛 盾 を 回 避 し、被 告 の 応 訴 負 担 を軽 減 して 重 複 訴 訟 の弊 害 に対 処 す る と と も に40、 証 拠 調 べ の 効 率 化 、 被 告 の応 訴 負 担 の 軽 減 を企 図 した もの で あ る。

適 格 団体 は 、 差 止 請 求 に 関 し て 、 裁 判 上 の 和 解 ま た は 裁 判 外 の和 解 を した と き、 あ る い は 、 請 求 の放 棄 や 和 解 を し よ う とす る と き は、 他 の 適 格 団 体 へ の 通 知 お よ び 内 閣 総 理 大 臣 へ の 報 告 を しな け れ ば な らな い(同 法23条4項7・9・10号)41。 こ れ は 、 請 求 の放 棄 や和 解 は調 書 に記 載 さ れ る と確 定 判 決 と同 一 の 効 力 が 生 じ るの で(民 訴 法267条 〉、 他 の 適 格 団 体 は 同 一 事 業 者 等 を相 手 方 と して 同一 内 容 の 差 止 請 求 をす る こ とが で き な くな り(消 費 者 契 約 法12条5項2号)、 特 定 の 適 格 団 体 の した和 解 等 が 不 特 定 多 数 の 消 費 者 に不 利 益 と な る 危 険 に配 慮 して 設 け られ た 特 例 で あ る。 そ の制 度 趣 旨 か ら、 和 解 や 放 棄 に よ り訴 訟 手 続 を終 了 させ よ う と す る適 格 団 体 は 、 他 の 適 格 団 体 と の 連 携 や 協 議 を行 う こ とが 要 請 さ れ 、 適 格 団体 は 、 和 解 や 放 棄 の 内 容 そ の他 必 要 な 情 報 を消 費 者 に提 供 す る よ

う努 め な け れ ば な ら な い(同 法27条)。

適 格 団 体 は、 他 の適 格 団 体 を当 事 者 とす る差 止 請 求 訴 訟(前 訴)に お け る確 定 判 決 等 に よ っ て 既 に実 質 的 判 断 が な さ れ て い る場 合 に は42、 同 一 の請 求 内 容 お よ び 同 一 の 相 手 方 に対 す る差 止 請 求 を す る こ とが で きな い(同 法12条 の2第1項2号)43。 要 す る に 、あ る適 格 団 体 を 当 事 者 とす る差 止 請 求 訴 訟 に つ い て確 定 判 決 が あ っ た場 合 、 他 の 適 格 団体 は差 止 請 求 権 の 行 使 を 制 限 され る の で あ る 。 こ れ は 、 判 決 効 の相 対 効 の原 則(民 訴 法115条1項1号)の 例 外 と し て 、 判 決 効 の 主 観 的 範 囲 に つ い て 独 自 の 拡 張 場 面 を創 設 した も の(訴 訟 法 上 の 問 題)で は な い 。 実 体 法 上 の権 利(差 止 請 求 権)を 制 限 す る こ と に よ り44、 あ る適 格 団 体 に 対 す る判 決 の 効 力 が 他 の 適 格 団体 に も及 ぶ の に等 しい 結 果 へ 至 る にす ぎ な い45。 こ

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れ に よ り、 同 一 の 事 業 者 に対 す る 同 一 内 容 の 訴 え が 、判 決 確 定 後 も繰 り 返 し提 起 され る こ と に よる 事 業 者 の 過 大 な応 訴 負 担 等 の 弊 害 を 取 り除 こ う と し た わ け で あ る 。 そ の た め 、 既 に確 定 判 決 を得 た 適 格 団 体 は 、 他 の 適 格 団 体 の 後 訴 を制 限 す る の で 、 当 該 確 定 判 決 に 係 る差 止 請 求 権 を放 棄 す る こ とは で きな い(消 費 者 契 約 法23条6項)。

(3)消 費者 団体訴 訟制度 にお ける理論 的問題

以 上 の よ う な 手 続 上 の特 例 の み られ る 消 費 者 団 体 訴 訟 で あ る が 、 そ の 法 的 構 成 に 関 して は議 論 が あ る 。

立 法 者 は 、 適 格 団体 に 固 有 の 差 止 請 求 権 を 付 与 し、 そ れ に 基 づ い て 差 止 訴 訟 の 当 事 者 適 格 が 適 格 団 体 に認 め られ る と考 えて い た よ うで あ る46。

この 固 有 権 的 構 成 は 民 事 訴 訟 の 基 本 構 造 に馴 染 み や す く、 通 常 の 民 事 訴 訟 法 の規 定 が そ の ま ま 妥 当 す る こ と に な る 。 さ ら に、 消 費 者 被 害 の 防止 ・ 救 済 と い う消 費 者 団 体 の役 割(消 費 者 基 本 法8条 参 照)を 遂 行 す る う え で 、 消 費 者 団 体 自体 に差 止 請 求 権 を認 め る 必 要 が あ る こ と も、 そ の 根 拠 と さ れ る。

しか し、 こ れ に対 して は 、 消 費 者 団 体 訴 訟 で は 、 差 止 請 求 権 の 主 体 で あ る 「適 格 団 体 」 と被 害 者 で あ る 「不 特 定 多 数 の 消 費 者 」 が 一 致 せ ず 、 主 体 と被 害 者 の 一 致 す る従 来 型 の差 止 請 求 権 と は 、 実 体 法 上 も は や 同 列 に扱 う こ とが で きな い は ず で あ る との 指 摘 が あ る 。

そ こで 、 実 体 法 上 の 新 た な概 念 構 成 を 試 み る見 解 が あ らわ れ た 。 す な わ ち 、 消 費 者 の 集 合 的 利 益 の存 在 を 前 提 に、 そ の 最 良 の 守 り手 と な る 消 費 者 団 体 に 私 権 と して の 保 護 請 求 権(集 合 的 差 止 請 求 権)が 帰 属 す る と の見 解(集 合 的 差 止 請 求 権 説)で あ る47。

こ の 消 費 者 団体 訴 訟 の 法 的構 成 をめ ぐ る対 立 か ら は 、 さ ま ざ ま な 派 生 的 問 題 を分 析 す る うえ で の 原 理 的 な視 座 が 得 ら れ る。 た とえ ば 、 前 述 の 請 求 権(後 訴)制 限 効(消 費 者 契 約 法12条 の2第1項2号 ・2項)は 、 実体 法 上 の 権 利 制 限 とい っ て も(立 法 者)、 基 準 時 後 の 事 由 に 基 づ い て の み 前 訴 確 定 判 決 を争 う こ とが で き(同 法12条 の2第2項)、 訴 訟 上 は 既

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判 力 と同様 の働 き をす る こ と に な る。

も っ と も、 固 有 権 的 構 成 説 か らは 、 団 体 ご と に 固 有 の 差 止 請 求 権 を有 して お り、 前 訴 と後 訴 で は 当 事 者 た る 団体 が 異 な る の で 、 前 訴 判 決 の 既 判 力 は 及 ば な い は ず で あ る か ら、 請 求 権 制 限 効 は 、 訴 訟 法 上 の 判 決 効 の 制 度 と は 異 な る もの で あ っ て 、 同 一 事 業 者 に対 す る 同 一 内 容 の 訴 求 が 繰 り返 さ れ る こ と に よ る弊 害(矛 盾 判 決 、 応 訴 負 担 、 不 経 済 な ど)防 止 の た め の 消 費 者 団 体 訴 訟 に 特 有 の 政 策 的 制 度 で あ る と い う こ と に な る。 こ れ に 対 して 、 集 合 的 差 止 請 求 権 説 に よ る と、 各 団体 に は、 消 費 者 の 集 団 的 利 益 の た め に差 止 請 求 権 が付 与 さ れ て い るの で あ り、 複 数 の 団 体 に よ る 同 一 事 業 者 に対 す る 同 一 内 容 の 請 求 の 場 合 、 実 質 的 に は 同 一 の 消 費 者 の 集 団 的 利 益 が 審 理 対 象 とな っ て い る の で 、 そ こ に請 求 権 制 限 効 を設 け る 必 要性 が 認 め ら れ る こ と に な る48。 す な わ ち 、 固 有 権 的 構 成 が 団 体 ご と に 固 有 の差 止 請 求 権 を認 め な が ら、 上 記 の よ う な弊 害 対 策 を 講 じな け れ ば な ら な い とい う の は、 実 際 に は 、個 々 の 差 止 請 求 権 の 背 後 に あ る 法 律 問 題 や 法 的 利 益 が 共 通 で あ る こ と を意 味 して お り、 そ うす る と 、差 止 請 求 権 の 行 使 に よ り各 団 体 が 救 済 し よ う と して い る の は 、 消 費 者 の 集 団 的 利 益 と い う共 通 の 法 的 利 益 で あ る と把 握 す る 方 が 自然 で あ る と い う わ け で あ る49。

(4)消 費 者団体訴訟 の現 実的課題

日本 で 初 め て 団 体 訴 権 を立 法 化 し た消 費 者 団 体 訴 訟 制 度 は 、 未 だ 十 分 に機 能 して い る と は言 い 難 い。 具 体 的 に は 、2007年6月 か ら2010年6 月 の3年 間 で 、内 閣 総 理 大 臣 の 認 定 を受 け た 適 格 団体 は9団 体 に と ど ま り、

差 止 訴 訟 件 数 も7件 に す ぎ な い50。

そ の 原 因 と して は 、① 適 格 団 体 の 財 政 的 基 盤 の 脆 弱 さ51、 ② 認 知 度 の 低 さ 、③ 実 効 性 に対 す る 不 信52な どが 挙 げ られ よ う。

も っ と も 、 消 費 者 団 体 訴 訟 が 抱 え る さ ま ざ ま な 課 題 を実 際 の 事 件 処 理 を抜 き に語 る に は 限 界 が あ る。 そ こ で 、 こ の 制 度 の 実 効 性 な ど に お け る 課 題 とそ の 対 策 を検 討 す る う え で 相 応 しい と思 わ れ る事 例 を紹 介 す る こ

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と に した い53。

2007年8月23日 に8番 目 の 認 定 を受 け た 適 格 団 体 「消 費 者 支 援 機 構 関 西 」(以 下 、KC'sと い う)は 、 不 当 な 勧 誘 行 為 を行 っ て い た 英 会 話 学 校 事 業 者Yに 対 して 、 まず 、2008年6月24日 付 で 不 当 な 勧 誘 を是 正 す る よ う 申 し入 れ た と こ ろ 、Yは す で に改 善 済 み で あ る と して 、 今 後 不 当 勧 誘 を 行 わ な い 旨 の 誓 約 を拒 否 した。 しか し、KC'sは 、 そ の 後 もYに よ る 不 当 な勧 誘 が行 わ れ て い る と の情 報 を得 た た め 、 同 年8月28日 、 消 費 者 団 体 訴 訟 を提 起 した と こ ろ54、2009年3月4日 に、 「今 後 、 不 当 な勧 誘 を行 っ た 場 合 、Yは そ の相 手 方 一 人 に つ き金50万 円 をKC'sに 対 して 支 払 う」 との 違 約 金 条 項 な ど を盛 り込 ん だ 訴 訟 上 の 和 解 が 成 立 した55。

しか し、 そ の 後 もYに よ る不 当 な 勧 誘 行 為 が 続 け られ て い る と い う情 報 が 寄 せ られ た 。 そ こ で 、KC'sは 、2009年11月30日 、 消 費 者3名 に対 して 不 当 な勧 誘 行 為 が 行 わ れ た と して 、Yに 対 して 和 解 条 項 に基 づ く違 約 金150万 円 を 請 求 す る 文 書(違 約 金 請 求 書)を 送付 した56。こ れ に対 して 、 Yは 、 自 ら求 め た2週 間 の 支 払 猶 予 期 間57を 徒 過 し て も、 支 払 い に応 じ な か っ た た め 、 同 年12月25日 、KC'sは 、大 阪 地 方 裁 判 所 に 執 行 文 付 与 の訴 え を提 起 す る に至 っ た 。

そ の 後 、Yは 、12月25日 付 で 「調 査 結 果 の ご 報 告 及 び廃 業 の お 知 ら せ 」 と題 す る文 書 を訴 外 でKC'sに 送 付 し、 前 述11月30日 付 の 違 約 金 請 求 書 で 指 摘 さ れ た 消 費 者3名 へ の不 当 な 勧 誘 の 事 実 は な い 旨 を主 張 した 。 2010年2月18日 、 消 費 者 庁 と東 京 都 は 、Yが 就 職 活 動 中 の 大 学 生 ら に 対 し 「今 の英 語 力 で は 就 職 で き な い」 な ど と不 安 を あ お り、 虚 偽 の 説 明 で 強 引 な勧 誘 を続 け て い た と し て、 特 定 商 取 引 に 関 す る法 律(い わ ゆ る 、 特 商 法)に 基 づ き、Yを6か 月 の 業 務 停 止 命 令 とす る 同 時 行 政 処 分 を行 っ た 。 な お 、KC'sは 、2006年8月 に 同 法 に よ る 申 し 出 を して お り、Yへ の行 政 処 分 が 早 期 に行 わ れ る こ と を要 請 して い た 。

他 方 の 違 約 金 請 求 訴 訟(執 行 文 付 与 の 訴 え)は 、Yの 代 表 者 が所 在 不 明 で あ る こ とか ら、 訴 状 は 公 示 送 達 に よ ら ざ る を 得 ず 、2回 の 延 期 の 末 に よ うや く開 か れ た 口 頭 弁 論 は 、 そ の 第1回 期 日 を も っ て結 審 し、 同 年 5月31日 、 大 阪 地 方 裁 判 所 は執 行 文 を付 与 す る 旨 の 判 決 を言 い渡 し た58。

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こ の 事 案 で は 、 適 格 団 体 の 取 り組 み 全 体 が 奏 功 して お り、 消 費 者 団 体 訴 訟 は そ う した 一 連 の 流 れ の な か に お け る一 局 面 に位 置 づ け ら れ る と の 見 方 も許 され よ う。 行 政 との 連 携 や和 解 条 項 の 活 用 に よ る 第 二 次 的 な金 銭 請 求 訴 訟 へ の 転 化 は、 そ れ を裏 打 ち す る もの と思 わ れ る。 適 格 団 体 に よ る 活 動 自体 が 、 本 事 案 の よ う に 、事 業 者 を廃 業 に追 い 込 む ほ どの 威 力 を発 揮 す る こ とは 特 筆 に値 しよ う。

そ う した 強 力 な活 動 の 一 環 と して 位 置 づ け ら れ る消 費 者 団体 訴 訟 の件 数 が 僅 少 で あ る と い う の は、 退 場 処 分 に 相 当 す る悪 徳 業 者 が 経 済 市 場 全 体 に 占 め る割 合 に比 例 して い る とい う面 もあ り、 程 度 の 問 題 は あ ろ うが 、 日本 の ビジ ネ ス 界 にお け る 自浄 作 用 の高 さ を 示 して い る とい う こ と もで

きよ うか 。

翻 って み る と、消 費 者 利 益 の 向 上 に と っ て は 、一 枚 の レ ッ ドカ ー ド(現 行 の 消 費 者 団体 訴 訟)で は不 十 分 で あ っ て 、 そ の ほか に さ ま ざ ま な イ エ ロ ー カ ー ドも必 要 な は ず で あ る。 そ う し た観 点 か ら、 現 行 の 消 費 者 団体 訴 訟 を見 直 した り、 こ れ と は 別 個 の 新 た な集 団 的 消 費 者 被 害 回復 制 度 を 構 築 し た りす る 必 要 性 は、 現 在 、 一 層 高 ま りつ つ あ る もの とみ られ る。

そ こ で 、 つ ぎ に 、 新 た な集 合 訴 訟 制 度 を構 想 す る うえ で の 予 備 的 考 察 と して 、既 存 の 制 度 を分 類 す る な ど して 、分 析 の 視 点 の獲 得 につ とめ た い 。

III 新 たな集合訴訟の制度設計 に際 して

1.原 告 適 格 と判 決 効(被 害 者 の加 入 態 様)

大 量 少 額 被 害 を一 挙 に救 済 す る訴 訟 の 原 告 適 格 を い か な る者 に認 め る か と い う観 点 か ら は 、 消 費 者 団体 な どの 団体 に 限 定 す る① 団 体 訴 訟 型 と 被 害 者 の 一 部(anamed  plaintiff)で も よ い とす る② ク ラ ス ア ク シ ョ ン型

に二 分 さ れ る。 さ ら に、 ① 団 体 訴 訟 型 の う ち 、 国 な ど の公 共 団 体 に 原 告 適 格 を認 め る公 共 団 体 型 とい う特 別 の 類 型 を観 念 す る こ と もで き る59。

① 団 体 訴 訟 型 は 、 ドイ ツ の 団体 訴 権 が 有 名 で あ り、 日本 の 消 費 者 団 体 訴 訟 も こ れ に該 当 す る。 な お 、① 団体 訴 訟 型 は 、 どの よ う な 団 体 に 訴 権

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を認 め る か に よ っ て② ク ラ ス ア ク シ ョ ン型 と の 距 離 は 可 変 的 で あ る 。 た と え ば 、 ア ドホ ッ ク に結 成 され た被 害 者 団体 や 環 境 保 護 団 体 に 適 格 を認 め る と、 そ れ らの 団 体 は 個 別 の 事 件 の被 害 者 の 代 表 者 的 な 位 置 づ け か ら

して 、 そ れ だ け ク ラ ス ア ク シ ョ ン型 に接 近 し よ う60。

② ク ラ ス ア ク シ ョ ン型 は 、 さ らに 、 被 害 者 各 人 が と く に除 外 申 出(opt‑

out)を しな い 限 り、メ ンバ ー と して 当 然 に 判 決 効 を受 け る(A)opt‑out型 と、

判 決 効 を受 け る に は 被 害 者 各 人 の 加 入 申 出(opt‑in)を 要 す る(B)opt‑in型 に 分 類 され る 。(A)opt‑out型 は、 ア メ リ カ版 ク ラス ア ク シ ョン と して 知 られ 、 カ ナ ダや オ ー ス トラ リア で もみ られ るが 、 主 流 は(B)opt‑in型 で あ る とい う こ とが で き61、 大 陸 法 諸 国 は も と よ り(日 本 の 選 定 当 事 者 訴 訟 が(B)opt‑in 型 に属 す る こ と は前 述 した)、 イ ギ リス で も2000年 の民 事 訴 訟 法 改 正 で 導 入 され た集 団 訴 訟 命 令 制 度 は(B)opt‑in型 で あ る62。

そ の ほ か 、 被 害 者 代 表 と 団体(公 共 団 体 を含 む)の い ず れ も並 立 的 に 原 告 適 格 を認 め る 制 度 を有 す る 国 も多 い 。 た とえ ば 、 ブ ラ ジ ル にお い て 1990年 の 消 費 者 保 護 法 に よ っ て 導 入 され たopt‑out型 の ク ラ ス ア ク シ ョ ン の 原 告 適 格 は 、 検 察 官 、 連 邦 ・州 政 府 お よ び 団 体(認 可 不 要)に も認 め ら れ る63。 ま た 、 ス ウ ェ ー デ ン に お い て2002年 の 集 団 訴 訟 手 続 法 に よ っ て 設 け られ た の は、opt‑in型 の 私 的 集 団 訴 訟 、 団体 訴 訟(ア ドホ ッ ク の 団体 で も よい)、 消 費 者 オ ン ブ ズ マ ン の公 的 集 団 訴 訟 で あ る 桝。 さ ら に、opt‑

out型 とopt‑in型 を組 み合 わ せ る 折 衷 タ イ プ もあ る。 た とえ ば 、ノル ウ ェ ー や デ ンマ ー ク で は 、 原 則opt‑in型 で あ る が 、 き わ め て 少 額 で あ っ て 個 別 の 争 点 が 存 在 せ ず 、加 入 申 出 が 困 難 で あ る場 合 に は例 外 的 にopt‑out方 式 に よ る こ とが 認 め られ る とい う65。

2.制 度 目 的 と手 段

訴 訟 制 度 の 一 般 的 目 的 を超 え て 、 大 量 少 額 被 害 を 一 挙 に 救 済 す る 訴 訟 に固 有 の 目 的 と して は 、 ① 事 後 的 な 被 害 の 救 済(損 害 の 回復)、 ② 事 前 の 予 防(違 法 行 為 の 抑 止)の 二 つ が 考 え ら れ 、 そ れ らは 排 他 的 な 関 係 に あ る の で は な く、 ど ち らが よ り主 位 的 か とい う濃 淡 の 問 題 で あ る。

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そ の う え で 、 そ れ ぞ れ の 目 的 を達 成 す る た め の 手 段 を想 定 す る と、 ① 事 後 的 な損 害 の 回 復 の た め に は 、 損 害 賠 償 請 求 とい う手 段 が 選 択 さ れ る の み で あ るが((A)損 害 賠 償 型)、 違 法 行 為 の 抑 止 の た め に は 、 直 裁 に違 法 行 為 を差 し止 め る こ と((B)差 止 請 求 型)、 加 害 者 に 不 当 利 益 を吐 き出 させ る こ と((C)不 当利 益 剥 奪 型)、 あ る い は、 刑 罰 に付 加 した金 銭 賠 償 に よ る こ と((D)刑 罰 連 動 型)な どが 考 え られ る66。 た と え ば 、 大 量 少 額 被 害 の 救 済 を刑 罰 と連 動 させ る こ と が 可 能 で あ る の が フ ラ ン ス の 付 帯 私 訴 で あ り、 した が っ て 、 刑 事 訴 追 に付 帯 す る 消 費 者 団 体 に よ る損 害 賠 償 請 求 は、

違 法 行 為 の抑 止 を 目的 とす る(D)刑罰 連 動 型 で あ る とみ る こ とが で き る67。

ま た 、 経 済 法(独 占 禁 止 法 ・競 争 法 な ど)や 金 融 法 の 分 野 で は、(C)不 当 利 益 剥 奪 型 に特 化 した 制 度 が 存 す る 。 ドイ ツ に お い て2004年 の 不 正 競 争 防 止 法 改 正 お よ び2005年 の カ ル テ ル法 改 正 に よ っ て導 入 さ れ た 利 益 剥 奪 訴 訟68が そ の 代 表 例 で あ る 。 日本 に お い て 類 似 した もの と して は、 課 徴 金 制 度 が あ る(独 占 禁 止 法8条 の3・20条 の2以 下 、 金 融 商 品取 引 法 172条 以 下 、 公 認 会 計 士 法34条 の40以 下 な ど)。 こ れ は 、特 定 の 法 令 違 反 者 に対 して行 政 上 の 措 置 と し て 金 銭 的 負 担 を課 し、 そ れ を 国 庫 に納 付 す る手 続 で あ り、 被 害 救 済 を 目的 と して い る わ け で は な い69。

以 上 の よ う に主 た る 制 度 目的 が 明 白 で あ る 場 合 も あ る が 、 そ うで は な く、 目 的 が 重 畳 的 で あ る た め に採 られ る 手 段 も多 岐 に わ た る と い う場 合 も多 い 。 た と え ば 、 ア メ リ カ の ク ラ ス ア ク シ ョ ン は、 損 害 賠 償 の ほ か に 差 止 請 求 も認 め られ る し、 加 害 者 に命 じ ら れ る金 銭 の 支 払 い は不 当 利 益 を 吐 き 出 させ る とい う側 面 も あ る 。 日本 の選 定 当事 者 訴 訟 も こ の 点 に お い て 変 わ りは な い 。 こ れ に対 して 、 日本 の消 費 者 団 体 訴 訟 は 、 そ の 目的 が 違 法 行 為 の 抑 止 の み で あ って 、事 後 的被 害 の 救 済 は想 定 され て お らず 、 手 段 も差 止 請 求 の み で あ り、 目 的 ・手 段 に お け る そ の 限 定 性 は 自明 で あ ろ う。

と こ ろ で 、 日本 で は 、2006年 に 「犯 罪 被 害 財 産 等 に よ る被 害 回 復 給 付 金 の 支 給 に 関 す る 法 律 」(平 成18年 法 律 第87号)が 制 定 さ れ 、 詐 欺 罪 等 の財 産 犯 の 犯 罪 行 為 に よ り犯 人 が 得 た 財 産(犯 罪 被 害 財 産)を 、 そ の 犯 罪 が 組 織 的 に行 わ れ た場 合 や い わ ゆ る マ ネ ー ・ロ ン ダ リ ング が 行 わ れ た場

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桐 蔭 法 学18巻1号(2011年)

合 に は 、 刑 事 裁 判 に よ り犯 人 か ら剥 奪(没 収 ・追 徴)70し て 「給 付 資 金 」 と して 保 管 し、 申請 を した 被 害 者 に 対 して 支 給 す る とい う 「被 害 回復 給 付 金 支 給 制 度 」 が 創 設 され た 。 こ れ は 、検 察 官 の 選 任 し た被 害 回 復 事 務 管 理 人 が 手 続 の 公 告 や 知 れ て い る被 害 者 へ の 通 知 を行 い 、 被 害 者 各 人 か ら の 支 払 申 請 に基 づ い て 被 害 額 の 裁 定 と給 付 金 の 支 給 を行 う とい う も の で あ るが 、(C)不当 利 益 剥 奪 型 お よび(D)刑罰 連 動 型 の 両 面 に よ り犯 罪 抑 止 を狙 い 、 か つ 、 被 害 者 の 事 後 的 救 済 に も資 す る の で 、(A)損害 賠 償 型 の 側 面 を も備 え る 。2011年9月 時 点 で 、22件 の 適 用 例 が あ る とい う71。

3.手 続 構 造

損 害 賠 償 請 求 訴 訟 の 手 続 は 、 一 般 的 に は 、 まず 、 不 法 行 為 責 任 や 債 務 不 履 行 責 任 な どの 成 否(第1段 階)に つ い て進 め られ 、 そ れ が 肯 定 さ れ た 場 合 に の み 、 損 害 額 の算 定(第2段 階)に つ い て 行 わ れ る 。 被 害 者 が 複 数 の 場 合 、 第2段 階 の 算 定 方 式 に は、 さ ら につ ぎの 二 つ の タ イ プ に 分 け られ る。 す な わ ち 、 被 害 者 各 人 に つ い て の賠 償 額 を算 定 す る個 別 賠 償 方 式 と被 害 者 集 団 に対 す る賠 償 総 額 を算 定 す る 一 括 賠 償 方 式 で あ る72。

こ れ を踏 ま え る と、 上 述 の(A)損害 賠 償 型 の 集 合 訴 訟 は 、 通 常 の 個 別 訴 訟 と 同 じ く、 第1段 階 お よ び 第2段 階 を対 象 と す る 場 合((A)非 分 離 型) だ け で な く、 第1段 階 の み を対 象 と し て 、 第2段 階 を個 別 訴 訟 に委 ね て も よい で あ ろ う し((B)分 離 型)、 さ ら に、(A)非分 離 型 は 、 第2段 階 が 個 別 賠 償 方 式 か 一 括 賠 償 方 式 か で さ らに 二 分 さ れ る。

(A)

非 分 離 型 に よ る の が 一 般 的 で あ る が73、(B)分 離 型 もみ られ る よ う に な りつ つ あ る と い う74。 た とえ ば、 フ ラ ンス に お け る2006年 の グ ル ー プ 訴 権 法 案 は 、 第1段 階 に お い て 、 全 国 レベ ル の 認 可 消 費 者 団 体 が 被 告 の 責 任 に つ い て の 確 認 的 判 決 を求 め て 提 訴 し、 有 責 判 決 の 際 、 裁 判 所 は 、 関 係 す る す べ て の 消 費 者 に 当該 判 決 を告 知 す る方 法 を示 す と 同 時 に 、 消 費 者 が 意 思 を表 明 す る こ と の で き る期 限 を付 与 し、 第2段 階 に お い て 、 そ の 期 限 内 に個 々 の 消 費 者 が被 告 に損 害 賠 償 請 求 書 を送 付 し、 そ れ に対 す る 被 告 の 応 答 に 満 足 し な い 消 費 者 は 、 個 別 に損 害 賠 償 請 求 訴 訟 を提 起

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共 同訴訟 か ら集 合 訴訟 へ(小 島 武 司 ・小 林 学)

す る こ と が で き る と す る も の で あ っ た75。

4.集 合 訴 訟 モ デ ル

以 上 の よ う な 整 理 ・分 析 を 経 て 、 平 成21年9月 の 内 閣 府 国 民 生 活 局

「集 団 的 消 費 者 被 害 回 復 制 度 等 に 関 す る研 究 会 報 告 書 」 を 踏 ま え て 、 平 成 22年9月 に取 りま と め られ た 消 費 者 庁 「集 団 的消 費 者 被 害 救 済 制 度 研 究 会 報 告 書76」 は 、 金 銭 的被 害 回復 の た め の 集 合 訴 訟 モ デ ル 案 と して 、opt‑

out型 、opt‑in型 、 そ して 、 二 段 階型 の 分 類 に応 じて 、 二 段 階 型 のA案77 お よ びB案78、opt‑out型 のC案79、 そ し て 、opt‑in型 のD案80と い う4 つ を示 した 。

個 々 に眺 め る とそ れ ぞ れ に 困 難 な 課 題 を抱 え る が81、 平 成23年8月 に 公 表 され た消 費 者 委 員 会 「集 団 的消 費 者 被 害 救 済 制 度 専 門調 査 会 報 告 書 」

は 、B案 お よ びC案 の長 所 ・利 点 をで き る か ぎ り加 味 しつ つ 、 判 決 効 拡 張 に よ る被 告 の 利 害 に も配 慮 す べ く、A案 を 基 軸 と した 制 度 設 計 を行 う と の 基 本 的 方 向 を 明 ら か に し た82。 こ こ で 大 切 な の は、 通 常 の 民 事 訴 訟 が 前 提 とす る 権 利 義 務 の 概 念 と決 別 して 、 糾 合 さ れ る消 費 者 の 権 利 の 特 殊 性 を反 映 させ た 特 別 の 手 続 モ デ ル を 構 築 しよ う とす る大 胆 な発 想 の 転 換 で あ ろ う。 さ ら に言 う と、 当 事 者 適 格 や 手 続 保 障 な ど の民 事 訴 訟 理 論 上 の 概 念 も、 従 来 の そ れ と は 異 な る 側 面 が 見 出 さ れ て 然 る べ きで あ る 。

そ こ に 民 事 訴 訟 理 論 が 突 然 変 異 の ご と く進 化 す る 契 機 が 潜 む の で は な い か と期 待 す る こ と もあ なが ち 的 外 れ と は い え まい 。 な お 、 日本 に お け る 集 合 訴 訟 制 度 を デ ザ イ ンす る際 の 選 択 肢 は 以 上 の モ デ ル に 限 られ る わ け で は な い こ と は消 費 者 庁 の 上 記 報 告 書 の 指 摘 す る と こ ろ で あ り(消 費 者 委 員 会 の 上 記 報 告 書 も、 原 告 適 格 を適 格 消 費 者 団 体 の み に 認 め る な ど限 定 的 な制 度 を デ ザ イ ンす る)、 しか も、 集 団 的 消 費 者 被 害 の 多 様 性 に鑑 み る と、 複 数 の 集 合 訴 訟 制 度 を併 用 した り83、 メ ニ ュ ー を充 実 させ て 選 択 の 幅 を広 げ る な ど して 、 腐 りや す い 権 利(perishable rights)の 保 存 方 法 を 様 々 に備 え て お くこ とが 肝 要 で あ り、 そ の 開発 に 向 け た努 力 を怠 っ て は

な ら な い 。

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IV むすびに代 えて

集 団 的 消 費 者 被 害 の 救 済 とい う観 点 か ら集 合 訴 訟 制 度 の構 築 に向 け た 議 論 が 盛 ん で あ るが 、 最 後 に、 集 団 的 消 費 者 被 害 と い う枠 組 み を はず し

た 大 量 少 額 被 害 救 済 制 度 の グ ラ ン ドデ ザ イ ン と い う大 局 的 見 地 に立 って 一 言 して お き た い。

ま ず 、 さ ま ざ ま な タ イ プ の集 合 訴 訟 が 適 材 適 所 に配 置 さ れ 機 能 す る と と も に、 そ れ ら と他 の 訴 訟 の機 能 的 連 携 、 あ る い は 、 集 合 訴 訟 同 士 の 機 能 的 連 携 を図 る こ とが 重 要 で あ る 。 た と え ば 、 日本 の 消 費 者 団 体 訴 訟 に お い て 、 差 止 請 求 の 認 容 判 決 が 言 い 渡 さ れ た 後 に、 被 害 者 各 人 が 損 害 賠 償 訴 訟 を個 別 に提 起 した り、 選 定 当 事 者 を 選 定 し た りす る こ とで 、 ク ラ ス ア ク シ ョ ン類 似 の 機 能 を果 た す こ と もでき る 。 こ う した 消 費 者 団 体 訴 訟 と個 別 訴 訟 な い し選 定 当 事 者 訴 訟 の 連 携 の た め に は、 ア メ リ カ の ク ラ ス ア ク シ ョ ンの 制 度 的 基 盤 を参 考 に し な が ら、 弁 護 士 広 告 や 和 解 規 整 な

どが い か に機 能 して ゆ くか を見 定 め る 必 要 が あ ろ う84。

つ ぎに 、 と りわ け 消 費 者 被 害 の 救 済 に は 、 集 合 処 理 だ け で な く、 通 常 の個 別 訴 訟 お よ び そ の 併 合 で あ る共 同 訴 訟 、 少 額 訴 訟 手 続 や 簡 易 裁 判 所 の機 能 の 充 実 な ど の簡 易 処 理 の 方 向 、 さ ら に は 、 訴 訟 外 のADRの 動 向85 な ど に も 目配 り して お く必 要 が あ ろ う。

最 後 に、 こ の領 域 に つ い て は 、 各 国 の 実 情 を踏 ま え た 立 法 と そ の 運 用 に 関 す る情 報 収 集 を 怠 っ て は な らず 、 比 較 法 学 的 な 手 法 を用 い た 考 察 が と りわ け要 求 され る も の と思 わ れ る 。 世 界 市 場 と して の ア ジ ア地 域 の プ レ ゼ ンス が 増 しつ つ あ る 現 在 、 と りわ け 、 東 北 ア ジ ア 三 国(日 中 韓)間 の 交 流 は 、予 断 を許 さ な い 今 後 の 展 開 に と っ て も はや 欠 くべ か ら ざ る プ

ロ セ ス で あ る 。

【註 】

1 2009年9月 、 消費 者 の視 点 か ら政 策全 般 を監 視 す る行政 組 織 で あ る 「消 費 者庁 」 が発 足 した こ とは 、行 政 に期 待 され る役 割 の大 きさを物 語 ろ う。

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共 同 訴 訟 か ら集 合 訴 訟へ(小 島 武 司 ・小 林 学)

2

3

た とえば 、消 費者 紛 争 の適 正 ・迅 速 な解 決 を促 進 す る ため に、 国民 生 活 セ ン ター を消 費 者ADRの 中核 的機 関 と して位 置 づ けるべ く、 国民 生 活 セ ン ターADRの 整 備(た とえば 、対 象 紛争 を 「国 民生 活 の 安定 及 び向 上 を図 る上 でそ の解 決 が全 国 的 に重 要で あ る」 とい う重 要 消費 者 紛争 に 限 定す るな ど)を 主 な内容 とす る 「独 立行 政法 人 国民生 活 セ ンター の一 部 を改 正 す る法 律」(平 成20年 法 律 第27号)が2008年5月 に成 立 した り(2009年4月 施 行)、 また 、投 資 に伴 う損 失 や強 引 な勧 誘 な ど金融 に 関連 す る トラ ブル を指 定 紛 争解 決 機 関 のADRに よ り訴訟 に比 して迅 速 か つ廉 価 に解 決 す る こ とを 目指 して 、金 融庁 の 監督 下 に あ る銀 行 や保 険 会 社 、貸 金業 者 な どの 金融 機 関 に対 して指 定紛争 解 決 機 関 との個 別 の契 約 締結 を義務 付 け る こ とを原則 とす る金融ADRが2009年6月 の金融 商 品取引 法 、銀 行法 、保 険業法 等 の金 融 関連諸 法 の改 正 に よって導 入 され 、 2010年10月 よ り指定 紛 争解 決機 関(全 銀 協 、生 命保 険協 会 、信 託協 会 、 日本損 害 保 険協 会 、 日本貸 金 業協 会 な ど)が 業 務 開始 した とい った動 き が 注 目され る。

た とえば 、研 究 者 に よる外 国法 制 の調査 ・研 究 を行 う 「集 合 的権利 保 護訴 訟 研 究 会(代 表 ・三木 浩 一教 授)」、 内 閣府 の 国 民生 活 局 に置 かれ た 「集 団的消 費 者被 害 回復制 度 等 に関す る研 究 会(座 長 ・三 木浩 一教 授)」(2008 年12月 〜2009年8月)、 消 費 者 庁 に設 置 さ れ た 「集 団的 消 費 者被 害救 済制 度研 究会(座 長 ・三 木浩 一教 授)」(2009年11月 〜2010年9月)、 そ して内 閣府 の消 費 者委 員 会 に置 か れ た 「集 団 的消 費者 被 害救 済制 度 専 門 調 査 会(座 長 ・伊藤 眞教 授)」(2010年10月 〜2011年8月)な どが あ る。

な お、現 在 の ク ラス ア ク シ ョン等 の立 法論 は、 第3期 にあ た る とい わ れ る(そ の 最新 状 況 に関 して は、 本 文III4を 参 照)。 ち な み に、 第1期 は 1970年 代 か ら80年 代 にか け て の公 害等 の高度 経 済 成長 の歪 み が社 会 問 題化 した 時期 で あ り、 第2期 は1990年 代 か ら2000年 代 初頭 の改革 期 で あ る(日 本 で は1996年 に民事 訴 訟 法 の全 面 改 正 が行 われ 、2001年 に司 法 制度 改 革 審議 会 意 見 善 が 出 さ れ た)。 以 上 につ き、三 木 浩 一 「集 合 的 権利 保 護訴 訟 制度 の構 築 と比較 法 制度研 究 の意 義‑ア メ リ カの ク ラスア

クシ ョンを中心 と して‑」NBL882号(2008年)13頁 を参照 。

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4日 本 全 国 で 発 生 し た 公 害 病 の う ち 、1910年 代 か ら1970年 代 に か け て の イ タ イ イ タ イ 病(富 山 県 富 山 市)、1950年 代 の水 俣 病(熊 本 県 水 俣 市)、

1960年 代 の 新 潟 水 俣 病(新 潟 県 新 潟 市)、 そ して 、 四 日 市 ぜ ん そ く(三 重 県 四 日市 市)を 四 大 公 害 病 と呼 ぶ 。

5水 俣 病 は 、 チ ッ ソ 株 式 会 社 が 海 に 流 し た 廃 液 に よ り惹 き起 こ さ れ た 公 害 病 で あ り、1956年 に 熊 本 県 水 俣 市 で 発 生 が 確 認 さ れ た こ とか ら 、 そ の 名 が あ る(英 語 で はMinamata diseaseと 呼 ば れ る)。 水 俣 病 は 、 環 境 汚 染 に よ っ て 惹 起 さ れ た 人 類 史 上 初 の 病 気 で あ り、「公 害 の 原 点 」 と もい わ れ る。

熊 本 水 俣 病 患 者 ・家 族 の う ち112名 は 、1969年6月14日 、 チ ッ ソ を被 告 と し て 、 熊 本 地 方 裁 判 所 に 損 害 賠 償 請 求 訴 訟(熊 本 水 俣 病 第 一 次 訴 訟) を 提 起 した 。 そ の 後 も提 訴 が 続 い た が 、 と りわ け 、 熊 本 、 鹿 児 島 両 県 か ら 関西 に 移 り住 ん だ水 俣 病 の 未 認 定 患 者45名(う ち 死 亡15名)と 遺 族 が 、 国 と 熊 本 県 に 損 害 賠 償 を 求 め た 関 西 水 俣 病 訴 訟 に お い て 、2004年10月 15日 、 最 高 裁 は 、 国 お よ び 県 が 被 害 拡 大 を 防 止 しな か っ た の は 著 し く合 理 性 を欠 き違 法 で あ る と して 、 国 お よ び 県 に 賠 償 を命 じた 大 阪 高 裁 判 決 を 支 持 した(最 判 平 成16・10・15民 集58巻7号1802頁)。

6新 潟 水 俣 病 は 、1965年 に新 潟 県 阿 賀 野 川 下 流 域 で の 水 俣 病 と同 様 の 被 害 が 確 認 さ れ た こ と か ら、 「第 二 水 俣 病 」 や 「阿 賀 野 川 有 機 水 銀 中 毒 」 と も 呼 ば れ る。 新 潟 水 俣 病 患 者 は 、1967年 、 昭 和 電 工 を 被 告 と して 、 新 潟 地 方 裁 判 所 に 損 害 賠 償 請 求 訴 訟 を提 起 した(新 潟 水 俣 病 第 一 次 訴 訟)。

四 大 公 害 病 中 、 発 生 は 最 も遅 か っ た が 、 訴 訟 は 最 も早 く提 起 され た 。 7ス モ ン(SMON)は 、「亜 急 性 」、「脊 髄 視 神 経 」、「抹 消 神 経 」 障 害(subacute

myelo‑optico‑neuropathy)の 略 称 で あ り、1955年 頃 か ら 散 発 し、1960年 代 後 半 に は 大 量 発 生 した 。 そ の 原 因 が キ ノ ホ ル ム 投 与 に よ る も の と 判 明

す る と 、 全 国 の 各 地 方 裁 判 所 に 訴 え が 提 起 さ れ た 。 被 害 患 者 は1万 人 を 超 え、 全 国33地 裁8高 裁 で 争 わ れ た 。 そ の 結 果 、 被 害 患 者 は全 国 組 織 を結 成 し、 救 済 の み な らず 薬 害 の根 絶 を 求 め る 運 動 を 展 開 し、 薬 事 二 法 の 制 定(1979年9月 の 薬 事 法 の 改 正 と医 薬 品 副 作 用 被 害 者 救 済 基 金 法 の 成 立)に 寄 与 した 。

8サ リ ドマ イ ド(thalidomide)と は 、1957年 に ドイ ツ で発 売 さ れ た 睡 眠 薬 で

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共 同訴 訟 か ら集 合 訴 訟 へ(小 島武 司 ・小 林 学)

あ るが、 妊婦 の服用 に よ り胎児 に異常 を引 き起 こす とい う被 害が 世界 中 に広 ま った。 日本 で は、1958年 、大 日本 製薬(当 時)が サ リ ドマ イ ドを 配 合 した薬 品 を販 売 したた め被害 者 が全 国 に広 が り、1963年6月 の 同社 らに対す る損 害 賠償 請 求 訴訟 を皮 切 りに、 つ ぎつ ぎと訴 えが提 起 され た が 、1974年10月26日 に東京 地 方裁 判所 で 製薬会 社 お よ び国 との和 解が 成 立 す る と、 同年11月12日 まで に全 国8地 裁 で順 次和 解 が成 立 す る に 至 った。

9森 永 ヒ素 ミル ク(中 毒)事 件 と は、1955年 に西 日本 を中心 と して ヒ素 の 混 入 した森 永乳 業 製 の粉 ミル ク を飲 用 した乳幼 児 に多 数 の死 者、 中毒 患 者 を出 した世 界最 大 級 の食 中毒事 件 で あ る(1956年6月9日 の厚 生省 発 表 で は、 死亡130名 、発 症12,131名)。 被 害 者 の うち55名 に よっ て森永 乳 業 お よび国 に対 して提 起 された訴 訟 は1974年 に取 り下 げ られ、 同年 、 被 害 者 ・森永 乳 業 ・国 の話 し合 い に よ り和 解 が成 立 し、被害 者 の恒 久 的救

済活 動 を目的 とす る 「財 団法 人 ひか り協 会 」 が設 立 され た。 な お、 数十 年 を経過 した現 在 、 こ う した被 害者 団体 のあ り方 が 問い直 され つつ あ る

(再び法 廷 に)。

10小 島武 司 「変 化 す る社 会 にお け る訴 訟事 件 の動 態 とそ の検 討‑最 近40 年 間の 回顧 と将来 の展望‑」 法 セ増刊 総 合特 集27号<現 代 の裁判>(1984

年)187頁 。

11同 時審 判 申出 共 同訴訟 とは、共 同被 告 に対 す る原 告 の請 求が 法律 上 併存 し得 ない 関係 に あ る場 合 に、原 告 の 申出 に基 づい て 同時 審判 され る通常 共 同訴 訟 を い う。1996年 の新 民 訴 法 に よ って 導 入 され た。 裁 判 所 の弁 論 分 離 権 限 が 制 限 され る こ とか ら(民 訴 法41条1項)、 弁 論 分 離 禁止 共 同訴 訟 とも呼 ばれ る。 た とえば、 本 人 に対 す る契約 上 の請 求 と無 権代 理 人 に対 す る請 求 をす る場 合(民 法117条1項)や 、工作 物 の 占有 者 に 対 す る損害 賠 償 請求 と所 有 者 に対 す る請 求(民 法717条1項)を す る場 合 な どが その 例 であ る。 旧民 訴 法下 で は 、原告 に よる複 数 の請 求が 相互 に法 律 上併 存 しえず 、単 純併 合 が許 され な い こ とか ら、 どち らか一 方 の 認容 を優先 して 申 し立 て、 そ れが認 容 され る こ とを解 除 条件 と して他 の 請 求の 審判 を申 し立 て る とい う併合 形 態 で あ る 「主 観 的予備 的併 合 」 の

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桐 蔭 法 学18巻1号(2011年 〉

許 否 と して議 論 され てい た。判 例 は、 予 備 的 被 告 の地 位 不 安 定 お よび 上 訴 によ る裁 判 不統 一 の危 険 をお それ て、 これ を否定 した が(最 判 昭 和 43・3・8民 集22巻3号551頁 〔百選3版A38事 件 〕)、通 説 は、 関連 請 求 を一 挙 に解 決 して 審判 の重 複 ・矛 盾 を回避 し、 もっ て訴 訟 経 済や 当 事 者 の便 宜 に資 す る とい うメ リ ッ トを重視 して 、 これ を肯 定す べ きであ る と して いた 。新 民訴 法 は、相 互 に両 立 しえ ない請 求 につ き、原 告 の 同時 審 判 の 申出 に よ って、 弁論 の分 離 お よび一 部判 決 を許 さず に併合 審 理 す る こ とを認 め た。 なお 、 同時 審判 申出共 同訴訟 を立法 化 した新 民訴 法 下 で は、 もはや 主 観 的予 備 的併 合 を認 め る余 地 は ない との見 方 もあ るが、

その効 用 は同時 審判 申出 共 同訴訟 に よっ て は カヴ ァー しきれ てい な い と して 、依 然 と して主 観 的予 備 的併 合 の適 法 性 を認 め る見 解が 多 数 を 占め る とい う。高橋 宏 志 『重 点 講義 民事 訴 訟法 ・下 〔補訂 第2版)』(有 斐 閣、

2010年)287頁 な ど参 照。

12必 要 的共 同 訴訟 は、 さ らに 固有必 要 的 共 同訴訟 と類似 必 要 的共 同訴 訟 に 二 分 され る。 前 者 は訴 え提 起 の 当初 か ら共 同訴 訟 人全 員 の 関与 が 要件 と され る場 合 で あ り、後 者 は共 同訴 訟 で あ る限 りは合一 確 定 が法律 上 保 障 され るが 、全 員の 関与 は要 件 とされ ない場 合 で ある。

13き わめ て説得 力 に富 む もの と して、 田尾 桃 二 「紛 争 の一 回 的一挙 的解 決 とい うこ とにつ いて」民 事訴 訟雑 誌40号(1994年)37頁 があ る。 なお、

訴 訟共 同 に よる判決 書 の複 雑 化 につ い て は、確 か に旧法 時代 の伝 統 的 な 判 決書 にお け る事 実 主 張 の整 理 な ど に関 して 、 その傾 向 を看 取 す る こ と がで きた もの の、争 点 中心 の審理 に対応 した新 様 式判 決 書へ の移行 が 新 法 に よって追 認 され た後 は(253条2項 参 照)、 事 情 は異 な る。

14た とえ ば、新 堂 幸 司 『訴訟 物 と争 点 効 ・下 』(有 斐 閣、1991年)33頁 以 下 ・60頁 ・482頁 な ど。 もっ と も、 司 法 現場 の隅 々 に至 る まで充 満 した 精 密司 法 の 空気 は 、容 易 に払 拭 し得 ず 、共 同訴 訟 の柔 軟 な運 営 に は心 理 的 な抵 抗 感 も想 像 以上 に強 い もの と思 われ る。

15小 島 武 司 「大 量 被 害 とそ の 救 済‑MER/29訴 訟 を め ぐっ て‑」 ジ ュ リ 510号117頁(1972年)、 同 『訴 訟 制 度改 革 の理 論 』(弘 文 堂 、1977年) 75頁 。

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