主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビ リティ」 : ビジネスコミュニケーションの視点か らの一考察
著者 久島 幸雄
雑誌名 同志社商学
巻 65
号 5
ページ 513‑532
発行年 2014‑03‑15
権利 同志社大学商学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013449
主要国中央政府の
ウェブサイトに見る「アクセシビリティ」
──ビジネスコミュニケーションの視点からの一考察──
久 島 幸 雄
Ⅰ はじめに
Ⅱ ウェブサイトと社会的弱者
Ⅲ 調査対象と調査方法
Ⅳ 調査結果
Ⅴ まとめ
Ⅰ は じ め に
1
研究の経緯筆者は
2008
年よりウェブサイトの研究を始め,主に内外主要企業のウェブサイトに おける企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility. CSR)を調査してき1
た。2011 年以降は地方政府のウェブサイトを調査対象とし,中でも社会的弱者の救済措置(アク セシビリティ)に焦点を当てた調査を進め,2012年
3
月には日本,米国,韓国の都道 府県レベルのウェブサイト,翌2013
年3
月には世界50
都市のウェブサイトについて,いずれも社会的弱者への配慮の観点から国際学会での報告を行っ
2
た。
本稿は,新たに主要
40
ヶ国の中央政府のウェブサイトを対象として,「国内外への情 報開示とメッセージの伝達がどのように行われているか」,「アクセシビリティがどのよ────────────
1 拙稿「日経225社のウェブサイトに見る企業理念とCSR」『国際ビジネスコミュケーション学会 研究 年報 第69号』,2010年,71〜79ページ,拙著「日本企業と外国企業のウェブサイトにおけるCSR 表示の特徴」(則定隆男,亀田尚己,椿弘次編『国際ビジネスコミュニケーション』第7章,2010年,
丸善出版),93〜107ページ,拙稿「東証マザーズ上場企業のウェブサイトに見るCSRとコンプライア ンス」『国際ビジネスコミュケーション学会 研究年報 第70号』,2011年17〜24ページ。なお,ウ ェブサイトを意味する用語としてホームページ,ウェブページといった呼称があるが,本稿では「ウェ ブサイト」との呼称を統一的に使用する。ただし,引用などに際し,元の資料が別の呼称を使用してい るときには,その呼称を用いることにした。
2 拙稿「都道府県のウェブサイトの特徴と東日本大震災の取扱」『国際ビジネスコミュケーション学会 研究年報 第71号』,2012年21〜32ページ,ならびに2012年3月31日に慶煕大学(韓国)で開催さ れた米国のAssociation for Business Communication学会(以下ABCという)第12回Asia-Pacific大会 における報告( One Study upon the Specific Features of the Websites of the Local Governments of the US, Japan and Korea : Comparative Researches of their Municipal Communications および2013年3月14日に 同志社大学(京都)において開催されたABC第13回Asia-Pacific大会における報告 Hospitality upon World Principal Cities’ Websites : An Analysis from the Perspective of Business Communications 参照。
(513)45
うに講じられているか」について調査を行い,その結果に分析を加えたものであ
3
る。
2
先行研究本稿の執筆に当たり筆者は内外の学術文献を精査したが,本稿のように主要国におけ る中央政府または地方政府のウェブサイトを網羅的に調査し,比較分析した事例はな く,それらにおけるアクセシビリティについて研究した事例も見当たらない。
3
本稿の目的と内容本稿は次の
2
点を目的としている。①主要国のウェブサイトにおける使用言語とアクセシビリティを確認する。
②各国政府のウェブサイトにおける特徴と相違点についてビジネスコミュニケーシ ョンの視点から分析する。
Ⅱ ウェブサイトと社会的弱者
1
ウェブサイトの機能ウェブサイトは開設の目的に応じて様々な機能を持
4
つが,政府機関にとってウェブサ イトは行政広報の一環として機能を発揮する。そこで,筆者は中央政府におけるウェブ サイトの機能として以下の
7
項目を挙げる。①政府によるサービスの提供について公に周知する
②政府の活動・政策への理解の一助とする
③国民からの質問に答える
④国民の意見を取りまとめる
⑤国のイメージを高める(いわゆる「ブランディン
5
グ」の一環である)
⑥国民と外国に対し国のメッセージを伝達する
⑦行政広報のコストを削減する
これら
7
項目の機能のうち,中央政府にとって対外的にも重要となるのは6
番目の「国民と外国人に対し国のメッセージを伝達する」である。なぜならば,後記
2
で述べ────────────
3 本稿は,2013年10月にニューオリンズで開催されたABC第78回世界大会において,筆者が同年10 月24日に行った報告( Hospitality upon Principal Central Governments’ Websites : An Analysis from the Viewpoint of Business Communications)を基に,大幅に加筆訂正のうえ執筆されたものである。なお,
本稿以外には,言語の如何に関わりなく同報告に関する論文などの提出は行っていない。
4 拙著,前掲書(注1)97ページ。
5 元々は,ブランドの構築,管理に関する経営・販売上の戦略用語であるが,転じて他の分野でも「イメ ージ・高級感,信頼感,安心感,満足感など他と明確に差別化できる個性」の創造,維持,向上を意味 するようになった。
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
46(514)
るように,ウェブサイトは中央政府にとって,自国民のみならず,外国の組織・個人に 対して自国の政策や活動の状況を伝達する最も効果的かつ効率的な手段と考えられるか らである。
ち な み に,国 際 連 合 の 専 門 機 関 で あ る 国 際 電 気 通 信 連 合(ITU : International
Telecommunication Union)が発表した The World in 2013 : ICT Facts and Figures
によ ると,世界の人口の40% を超える人々がインターネットを使用してい
6
るとのことであ り,今後ますますその利用率が高まるものと考えられる。
2
ウェブサイトの優位性筆者はウェブサイトにおいて以下
4
点の優位性を評価する。①スピードの速さ
②情報量の大きさ
③ユビキタス(「いつでも,どこでも」といわれるアクセスの利便性)
④維持・管理費用の低さ
このように,ウェブサイトは他の情報伝達手段に比して高い優位性を保持しており,
その事実は中央政府のウェブサイトにおいても変わることはない。
3
社会的弱者社会的弱者の定義は様々であ
7
るが,本稿では「高齢者,障害者(ウェブサイトの利用 という面からは「視覚障害者」が対象となろう),未成年者および日常的外国語話者
(自国民ながら日常的に外国語を使用し,公用語または主要言語の理解に難がある者)
ならびに在留外国人」を社会的弱者と定義する。
4
アクセシビリティアクセシビリティ,すなわちウェブサイトにおける社会的弱者の救済措置について説 明を加えたい。我が国では「ユニバーサルデザイ
8
ン」と呼ばれる,「高齢者,障害者を 含め,すべての人が使いやすい設計」を導入しようとする思想から,地方自治体のみな らず中央政府の省庁のウェブサイトにおいても,文字の拡大・縮小,表示色の変更,文
────────────
6 ITUのウェブサイト,http : //www.itu.int/en/ITU−D/Statistics/Pages/facts/default.aspx(2013/11/28)。
7 八幡耕一「オルタナティブ・メディアと社会的弱者の可視化」『言語文化研究叢書V 8, 2009』,2009 年,171ページ。
8 東京都福祉保険局は,ユニバーサルデザインを「年齢,性別,国籍,個人の能力にかかわらず,はじめ からできるだけ多くの人が利用可能なように,利用者本位,人間本位の考え方に立ってデザインするこ とであり,その対象は,ハード(都市施設や製品など)からソフト(教育や文化,サービスなど)に至 るまで多岐にわたっている」と定義している。同局のウェブサイト,http : //www.fukushihoken.metro.
tokyo.jp/(2011/8/10)。
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (515)47
章の読み上げおよびフリガナといった社会的弱者の救済措置が講じられている。これが 我が国のウェブサイトに見られる「社会的弱者への配
9
慮」である。
本稿では,このような「社会的弱者への配慮」,すなわち社会的弱者に対する救済措 置を「アクセシビリテ
10
ィ」と呼んでいる。なお,社会的弱者のうち日常的外国語話者と 在留外国人にとっては「外国語でのウェブサイトの設置」も救済措置の一つとなるが,
混乱を避けるため後記Ⅳ2の「アクセシビリティ」の項目には含めず,後記Ⅳ1のよう に「外国語でのウェブサイト設置」を単独での調査項目とした。
ところで,外国では日本語に見られるような「フリガナ」がないため,今回の調査に
際しては
Text Size(文字の拡大・縮小),Color(文字・背景の表示色)と Voice(人口
音声による読み上げ)の
3
項目にアクセシビリティを絞り込むことにした。なお,後記Ⅳ2(注
2)で述べるように,これら 3
項目以外にもフォント(字体の変更)などのサービスを提供している国がある。
5
アクセシビリティの規格ちなみに,我が国のウェブページにおけるアクセシビリティの規格としては,2004 年
6
月20
日に制定された日本工業規格(JIS)の「高齢者・障害者等配慮設計指針−情 報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3
部:ウェブコンテンツ」(JIS X8341−3 :
11
2010)がある。
一方,国際規格としては,World Wide Website Consortium(略称
W 3 C. World Wide Web
で使用される各種技術の標準化を推進するために設立された非営利目的の標準化 団体)の規格であるWCAG
12
2.0
がある。なお,上記のJIS
規格はWCAG 2.0
に基づいて2010
年8
月20
日に改正さ れ て お り,当 該JIS
規 格 に 沿 っ て 対 応 す れ ば,そ の ま まWCAG 2.0
に適合することになる。6
我が国各省の状況外務省,経済産業省,防衛省の各公式ホームページ(ウェブサイト)におけるアクセ
────────────
9 文部科学省のウェブサイトでは,「アクセシビリティへの対応について」と題して,色使い,文字の書 体,テキスト形式の文字サイズ,ページのスタイル,ページの文書構造,ナビゲーションの付与,読み 上げソフトへの対応の7項目を挙げている。同省のウェブサイト,http : //www.mext.go.jp/accessibility/
index.html(2013/11/20)。
10 「社会的弱者への配慮」は,我が国において「バリアフリー」とも呼ばれることがあるが,駅,オフィ ス,住宅などのハード面で使われることが多いため,本稿ではウェブサイトへのアクセスの容易性とい う観点から,ソフト面の用語である「アクセシビリティ」を使用している。
11 当該JIS規格については日本工業標準調査会のウェブサイト参照。同会のウェブサイト,http : //www.
jisc.go.jp/app/pager?RKKNP_vJISJISNO=X8341−3&%23jps.JPSH0090D:JPSO0020 : /JPS/JPSO0090.jsp(2013 /11/20)。
12 W 3 Cのウェブサイト,http : //www.w3.org/TR/WCAG20/(2013/11/21)。
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
48(516)
シビリティの状況は以下の通りである。
①外務
13
省
「アクセシビリティについて」と題して,文字サイズの変更,読み上げソフト への対応などについてバリアフリー化を実施している旨を述べている。
②経済産業
14
省
「経済産業省ウェブアクセシビリティ方針」の中で,「JIS X 8341−3 : 2010の 等級
AA
に準拠する事を目標とする」と明記している。③防衛
15
省
「文字による情報が見づらい方や,目の疲れやすい方でもホームページを快適 に閲覧していただくための支援サービス」との説明を付して,Easy Web Browsing
(イージーウェブブラウジン
16
グ)が利用できるようにしている。
Ⅲ 調査対象と調査方法
1
調査対象人口,GDP,地域のバランスなどを勘案して,筆者の裁量により主要
40
ヶ国を選び 出し,我が国のa)外務省,b)経済産業省,c)防衛省に相当する各国省庁の公式ウェ
ブサイトを調査対象とした。これらの国名および省庁名(英文名)は次の第1
表に記載 の通りである。────────────
13 我が国各省のウェブサイトはJIS X 8341−3 : 2010に基づいて作成されている。外務省のホームページ,
http : //www.mofa.go.jp/mofaj/annai/accessibility/index.html(2013/11/21)。
14 経済産業省のホームページ,http : //www.meti.go.jp/main/accessibility.html(2013/11/21)。
15 防衛省のホームページ,http : //www.mod.go.jp/(2013/11/21)。
16 Easy Web Browsing(EWB)は,日本政府が推進するu-Japan政策の理念の一つである「人に優しい」
情報社会の実現支援のために,日本IBM東京基礎研究所アクセシビリティ・センターが開発したイン ターネット閲覧支援ソフトウェアである。同社ウェブサイト,http : //www−06.ibm.com/jp/accessibility/
solution_offerings/EasyWebBrowsing.html(2013/11/21)。
第1表 主要40ヶ国における省庁名(英文名)の表示
番号 国名 省庁名(英文名)
1 日本
a)Ministry of Foreign Affairs
b)Ministry of Economy, Trade and Industry c)Ministry of Defense
2 中国
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Commerce c)Ministry of National Defense
3 韓国
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Trade, Industry, Energy c)Ministry of National Defense
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (517)49
4 フィリピン
a)Department of Foreign Affairs b)Department of Trade and Industry c)Department of National Defense 5 マレーシア
a)Ministry of Foreign Affairs
b)Ministry of International Trade and Industry c)Ministry of Defence
6 シンガポール
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Trade and Industry c)Ministry of Defence
7 インドネシア
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Trade c)Ministry of Defense
8 ブルネイ
a)Ministry of Foreign Affairs and Trade
b)(Ministry of Foreign Affairs and Tradeに含まれる)
c)Ministry of Defence
9 タイ
1)Ministry of Foreign Affairs 2)Ministry of Commerce
3)Ministry of Defence(英語版なし)
10 インド
1)Ministry of External Affairs 2)Ministry of Commerce & Industry 3)Ministry of Defence
11 米国
a)Department of State b)Department of Commerce c)Department of Defense
12 カナダ
a)Department of Foreign Affairs, Trade and Development b)(Department of Foreign Affairs and Tradeに含まれる)
Department of National Defence and the Canadian Armed Forces
13 メキシコ
a)Ministry of Foreign Affairs b)Secretariat of Economy c)National Defense Secretariat
14 ブラジル
a)Ministry of Foreign Affairs
b)Ministry of Development, Industry and External Commerce c)Ministry of Defense
15 アルゼンチン
a)Ministry of Foreign Relations and Worship(英語版なし)
b)Ministry of Commerce and Public Finance(英語版なし)
c)Ministry of Defense(英語版なし)
16 パナマ
a)Ministry of Foreign Relations and Worship(英語版なし)
b)Ministry of Commerce and Industry(英語版なし)
c)Ministry of Public Security(英語版なし)
17 ペルー
a)Ministry of Foreign Affairs(英語版なし)
b)Ministry of Exterior Commerce and Tourism(英語版なし)
c)Ministry of Defense(英語版なし)
18 チリ
a)Ministry of Foreign Relations
b)Ministry of Economy, Development and Tourism(英語版なし)
c)Ministry of Defense(英語版なし)
19 オーストラリア
a)Department of Foreign Affairs and Trade
b)(Department of Foreign Affairs and Tradeに含まれる)
c)Department of Defence 20 ニュージーランド
a)Ministry of Foreign Affairs and Trade
b)(Included in Ministry of Foreign Affairs and Trade)
c)Ministry of Defence
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
50(518)
21 英国
a)Foreign and Commonwealth Office b)Department of Business, Innovation & Skills c)Ministry of Defence
22 ドイツ
a)Federal Foreign Office
b)Federal Ministry of Economics and Technology c)Federal Ministry of Defence
23 フランス
a)Ministry of Foreign Affairs
b)Ministry for the Economy and Finance c)Ministry of Defense
24 イタリア
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Economic Development Ministry of Defence
25 スペイン
a)Ministry of Foreign Affairs and Cooperation b)Ministry of Industry, Energy and Tourism c)Ministry of Defence
26 ポルトガル
a)Ministry of Foreign Affairs
b)Ministry of Public Works, Commerce and Industry c)Ministry of National Defence
27 スイス
a)Federal Department of Foreign Affairs
b)Federal Department of Economic Affairs, Education and Research c)Federal Department of Defence, Civil Protection and Sport 28 スウェーデン
a)Ministry of Foreign Affairs
b)Ministry of Enterprise, Energy and Communications c)Ministry of Defence
29 ノルウェー
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Trade and Industry c)Ministry of Defence
30 フィンランド
a)Ministry for Foreign Affairs
b)(Ministry of Foreign Affairsに含まれる)
c)Ministry of Defence
31 ロシア
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Industry and Trade c)Ministry of Defence
32 ポーランド
a)Ministry of Foreign Affairs
b)Ministry of Economy(英語版なし)
c)Ministry of National Defence
33 トルコ
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Economy
c)Ministry of National Defence(英語版なし)
34 サウジアラビア
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Trade and Industry
c)Ministry of Interior(General Directorate of Civil Defence)
35 クウェート
a)Ministry of Foreign Affairs(英語版なし)
b)Ministry of Commerce and Industry(英語版なし)
c)Ministry of Defense(英語版なし)
36 アラブ首長国連邦
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Economy c)Ministry of Defense 37 イスラエル
a)Ministry of Foreign Affairs b)Ministry of Economy c)Ministry of Defense
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (519)51
上記
40
ヶ国の地域別分布は以下のようになっている。・アジア
15
ヶ国・北米・南米・オセアニア
10
ヶ国・ヨーロッパ
12
ヶ国・アフリカ
3
ヶ国2
調査方法2013
年4
月27
日から同年10
月18
日にかけ,検索エンジン1
表 記載各省の公式ウェブサイトを検索した。なお,これらのURL(Uniform Resource Locator)については,大部となるため表示を割愛する。
Ⅳ 調 査 結 果
1
使用言語主要
40
ヶ国各省庁のウェブサイトにおける使用言語は次の第2
表に記載した通りで ある。38 ケニア
a)Ministry of Foreign Affairs and International Trade
b)(Ministry of Foreign Affairs and International Tradeに含まれる)
c)Ministry of Defence 39 アルジェリア
a)Ministry of Foreign Affairs(英語版なし)
b)Ministry of Commerce(英語版なし)
c)Ministry of National Defence 40 南アフリカ
a)Department of International Relations and Cooperation b)Department of Trade and Industry
c)Department of Defence
出典:筆者作成
第2表 主要40ヶ国における使用言語
番号 国名 使用言語
1 日本
a)日ほか36言語
b)日,英 c)日,英
2 中国
a)中,英,仏,露,西,アラブ b)中,英,仏,露,西,独 c)中,英
3 韓国
a)韓,英 b)韓,英 c)韓,英 4 フィリピン
a)不明(ウィルスのためアクセス不能)
b)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
c)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
52(520)
5 マレーシア
a)マレー,英,仏,西ほか4言語
b)マレー,英 c)マレー,英 6 シンガポール
a)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
b)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
c)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
7 インドネシア
a)インドネシア,英 b)インドネシア,英,中,
c)インドネシア,英
8 ブルネイ
a)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
b)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
c)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
9 タイ
a)タイ,英 b)タイ,英 c)タイ
10 インド
a)ヒンディー,英,アラブ,ウルドゥー b)ヒンディー,英
c)ヒンディー,英
11 米国
a)英 b)英 c)英
12 カナダ
a)英,仏
b)(上記a)に省庁が統合されている)
c)英,仏
13 メキシコ
a)西,英 b)西,英 c)西,英
14 ブラジル
a)葡,英,西(ポータルサイトのみ)
b)葡(ポータルサイトのみ)
c)葡,英,西(ポータルサイトのみ)
15 アルゼンチン
a)西 b)西 c)西
16 パナマ
a)西 b)西 c)西
17 ペルー
a)西 b)西 c)西
18 チリ
a)西,英 b)西 c)西 19 オーストラリア
a)英
b)(上記a)に省庁が統合されている)
c)英 20 ニュージーランド
a)英
b)(上記a)に省庁が統合されている)
c)英
21 英国
a)英 b)英 c)英
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (521)53
22 ドイツ
a)独,英,仏,西ほか4言語
b)独,英,仏 c)独,英,仏
23 フランス
a)仏,英,独,西ほか2言語
b)仏,英 c)仏,英,西
24 イタリア
a)伊,英,アラビア b)伊,英
c)伊,英,仏
25 スペイン
a)西,英,カタロニアほか2言語
b)西,英,カタロニアほか2言語
c)西,英,カタロニアほか2言語
26 ポルトガル
a)葡,英 b)葡,英 c)葡,英
27 スイス
a)独,仏,伊,英 b)独,仏,伊,英 c)独,仏,伊,英 28 スウェーデン
a)スウェーデン,英,仏,独ほか7言語
b)スウェーデン,英,仏,独ほか7言語
c)スウェーデン,英,仏,独ほか7言語
29 ノルウェー
a)ノルウェー(2言語),サーミ,英
b)ノルウェー(2言語),サーミ,英
c)ノルウェー(2言語),サーミ,英
30 フィンランド
a)フィンランド,スウェーデン,英
b)(上記a)に省庁が統合されている)
c)フィンランド,スウェーデン,英
31 ロシア
a)露,英,仏,独,西 b)露,英
c)露,英 32 ポーランド
a)ポーランド,英 b)ポーランド c)ポーランド,英
33 トルコ
a)トルコ,英,仏,独,西 b)トルコ,英
c)トルコ 34 サウジアラビア
a)アラビア,英 b)アラビア,英 c)アラビア,英 35 クウェート
a)アラビア b)アラビア c)アラビア 36 アラブ首長国連邦
a)アラビア,英 b)アラビア,英 c)アラビア,英 37 イスラエル
a)ヘブライ,英
b)ヘブライ,英,アラビア c)ヘブライ,英
38 ケニア
a)不明(メンテナンスのためアクセス不能)
b)(上記a)に省庁が統合されている)
c)英(他の公用語のウェブサイトがあると推測される)
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
54(522)
①複数言語を使用している国
対象
40
ヶ国のうち27
ヶ国で複数言語のウェブサイトを持ち,うち我が国をは じめとする8
ヶ国では以下のように5
ヶ国語以上のウェブサイトが用意されてい る(国名の後のカッコ内は番号を指す。以下同様)。なお,本稿では,各国の使 用言語数について,最も使用言語数の多い省庁の数字を採用している。・日本(♯1)
37
ヶ国17
語
・スウェーデン(♯28)
11
ヶ国語・マレーシア(♯5)
8
ヶ国語・ドイツ(♯22)
8
ヶ国語・フランス(♯23)
6
ヶ国語・中国(♯2)
6
ヶ国語・インドネシア(♯7)
5
ヶ国語・スペイン(♯25)
5
ヶ国語②
1
ヶ国語のみを使用している国その一方で,13ヶ国において
1
ヶ国語のみを使用している。これらのうちシンガポ ール(♯6),フィリピン(♯4),ブルネイ(♯8),ケニア(♯38)および南アフリカ(♯40)の
5
ヶ国については,他の公用語でのウェブサイトが用意されているものと推 測されるが,アルゼンチン(♯15),パナマ(♯16),ペルー(♯17)の南米3
ヶ国とク ウェート(♯35)については,自国語のウェブサイトしか用意されていない。残る
4
ヶ国はすべて英語を母語とする国である。すなわち,米国(♯11),オースト ラリア(♯19),ニュージーランド(♯20)および英国(♯21)であるが,これらの 国々(以下「英語四ヶ国」という)は英語以外の言語のウェブサイトを有していない。英語が
Lingua Franca
であることを否定するつもりは毛頭ないが,自由と平等を標榜し世界に強い影響力を持つ英語四ヶ国が英語以外にウェブサイトを用意していないことに は違和感がある。
────────────
17 各国における日本の大使館,総領事館のウェブサイトを通じて各国語のサービスを提供しているもので ある。
39 アルジェリア
a)アラビア,仏 b)アラビア,仏 c)アラビア,仏,英 40 南アフリカ
a)英 b)英 c)英
出典:筆者作成 主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (523)55
なぜならば,世界の人口
70.2
億人のうち英語を母語とするのは4.83
18
%であり,「14.2 億人〜18億
19
人」といわれる世界の英語使用者総人口の最大値をとっても世界人口の
25
%程度にすぎないからである。換言すると,世界人口の
4
分の3
は英語を日常的に使っ ていないことになるが,このような事実にもかかわらず,なにゆえに英語四ヶ国が外国 語のウェブサイトを設置しないのか,筆者には理解できない。まず,自国の日常的外国語話者,在留外国人への情報伝達の面で不十分ではないだろ うか。それは,ウェブサイトの閲覧に際して,利用者が自らインターネット上の無料の 翻訳サービスを利用すればよいというものではない。確かに自動翻訳のレベルは向上を 続けているものの,まだまだ翻訳の信頼性が乏しく,現時点では信頼性を担保する方法 がないからである。
次に,対外的な情報発信の面でも不十分ではないだろうか。上記Ⅱの各項で述べたよ うに,行政広報としてのウェブサイトの有用性は極めて高く,外国に対して自国の方 針,見解,姿勢を伝達する格好の手段である。したがって,対外的な情報発信という観 点からも,外国語でのウェブサイトの設置が求められよう。
2
アクセシビリティ各省庁のアクセシビリティについては次の第
3
表に記載の通りである。────────────
18 米国中央情報局(CIA : Central Intelligence Agency)作成のThe World Factbook 2013, https : //www.cia.gov /library/publications/the−world−factbook/(2013/11/18)。
19 亀田尚己はCristalの推計を引用して,「現在,英語母語話者では3億4千万人,それに母語話者並みの 英語の話し手6億7千万人などをも加え,今や世界の英語話者人口は18億人に達している」と述べる。
亀田尚己著『国際ビジネスコミュニケーション再考』文真堂,2009年,124ページ。一方,岸田勝昭は
「従って,世界の英語使用者総人口は約14.2億人〜14.7億人と推定される」と述べている。亀田尚己編 著『現代国際商取引』文真堂,2013年,259ページ。
第3表 主要40ヶ国におけるアクセシビリティなど
番号 国名 符号 アクセシビリティ
印刷の可否
Text Size Color Voice
1 日本
a) ○ 可
b) ○ 可
c) ○ 可
2 中国
a) 可
b) 可
c) 可
3 韓国
a) 可
b) 可
c) 可
4 フィリピン
a) ? ? ? ?
b) 可
c) 不可
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
56(524)
5 マレーシア
a) ○ ○ ○ 不可
b) ○ ○ 可
c) ○ ○ ○ 可
6 シンガポール
a) 可
b) 可
c) 可
7 インドネシア
a) 可
b) 可
c) 可
8 ブルネイ
a) ○ 可
b) a)に統合
c) 可
9 タイ
a) 可
b) 可
c) 可
10 インド
a) ○ ○ ○ 可
b) 可
c) ○ ○ 可
11 米国
a) 可
b) 可
c) 可
12 カナダ
a) 可
b) a)に統合
c) 可
13 メキシコ
a) 可
b) 可
c) 可
14 ブラジル
a) ○ ○ 可
b) ○ ○ 可
c) ○ ○ 可
15 アルゼンチン
a) 可
b) 可
c) 可
16 パナマ
a) 可
b) 可
c) 可
17 ペルー
a) 可
b) 可
c) 可
18 チリ
a) ○ 可
b) 可
c) 可
19 オーストラリア
a) 可
b) a)に統合
c) 可
20 ニュージーランド
a) 可
b) a)に統合
c) 可
21 英国
a) 可
b) 可
c) 可
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (525)57
22 ドイツ
a) 可
b) 可
c) 可
23 フランス
a) 可
b) ○ 可
c) 可
24 イタリア
a) ○ 可
b) ○ 可
c) 可
25 スペイン
a) 可
b) 可
c) 可
26 ポルトガル
a) 可
b) 可
c) 可
27 スイス
a) 可
b) 可
c) 可
28 スウェーデン
a) ○ ○ ○ 可
b) ○ ○ ○ 可
c) ○ ○ ○ 可
29 ノルウェー
a) ○ ○ 可
b) ○ ○ 可
c) ○ ○ 可
30 フィンランド
a) ○ 可
b) a)に統合
c) ○ 可
31 ロシア
a) 可
b) 可
c) 可
32 ポーランド
a) 可
b) 可
c) 可
33 トルコ
a) 可
b) 可
c) 可
34 サウジアラビア
a) ○ 可
b) ○ 可
c) 可
35 クウェート
a) 可
b) 可
c) 可
36 アラブ首長国連邦
a) ○ ○ 可
b) ○ ○ 不可
c) 可
37 イスラエル
a) ○ 可
b) 可
c) 可
38 ケニア
a) 可
b) a)に統合
c) 可
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
58(526)
第
3
表に基づき,対象省庁のウェブサイトにおいて,どのようなアクセシビリティが 講じられているかを以下のように取りまとめてみた。なお,該非判定にあたっては「英 語のウェブサイトにおいてアクセシビリティが講じられている場合」のみを該当とし た。したがって,我が国のように,日本語では3
項目すべてのアクセシビリティが講じ られていても,英語では1
項目しか講じられていない場合には「1」と判定している。このように,アジアとヨーロッパでアクセシビリティに積極性が認められる一方で,
北米・南米・オセアニアとアフリカではさほど熱心でないように考えられる。特に,イ ンターネット大
21
国である英語四ヶ国のいずれにおいてもアクセシビリティが講じられて いない点は甚だ残念である。中でも,英国,オーストラリア,ニュージーランドは,福 祉国家としての長い歴史を持つだけに,ウェブサイトにおいても高齢者や視覚障害者に 対する配慮があっても良いのではないだろうか。上記Ⅱ5で触れたように,WCAG 2.0 という確立されたアクセシビリティの国際規格があるにもかかわらず,なぜ対策を講じ
────────────
20 「経済産業省」に相当する省庁が「外務省」に統合されているのは,ブルネイ(♯8),カナダ(♯12),
オーストラリア(♯19),ニュージーランド(♯20),フィンランド(♯30)およびケニア(♯38)の6 ヶ国である。
21 英語四ヶ国におけるインターネット普及率は,米国77.86%,英国82.00%,オーストラリア79.00%,
ニュージーランド86.00% といずれも高水準にある。ITUが2011年に発表した調査データに基づいて グローバルノート社がウェブサイト上に掲載している。同社ウェブサイト,http : //www.globalnote.jp/p−
data−g/?dno=940&post_no=1437(2013/11/28)。
39 アルジェリア
a) 可
b) 可
c) 可
40 南アフリカ
a) 可
b) 可
c) 可
出典:筆者作成
Text Size Color Voice 計 対象省庁数 百分比
・アジア
・北米・南米・オセアニア
・ヨーロッパ
・アフリカ
13 4 9 0
7 3 4 0
2 0 6 0
22 7 19 0
44 27 35 8
50%
26%
54%
0%
・合計 26 14 8 48 114 42%
(注1)6ヶ
20
国については,経済産業省に相当する省庁が外務省に統合されている。このため,対象省 庁数は114となる。
(注2)スウェーデン(♯28)においては,TextSize, Color, Voiceに加え,Font(フォント=字体の変
更)などのサービスも提供している。
(注3)フィリピン(♯4)の「外務省」については,ウィルスが原因としてウェブサイトへのアクセス
ができなかった。また,ケニア(♯38)の「外務省」についても,メンテナンス中である旨の 表示があり,ウェブサイトの閲覧ができなかった。
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (527)59
ようとしないのか,その理由が理解できない。
3
印刷の可否第
3
表の右側に「印刷の可否」という欄を設けた。これは,ウェブサイト自体は用意 されており,閲覧は可能であるものの,その印刷ができない3
件の事例が認められたた めである。具体的には,フィリピン(♯4)の「国防省」,マレーシア(♯5)の「外務 省」,そしてアラブ首長国連邦(♯36)の「経済産業省」である。このうちの「防衛省」については,国防という性格から印刷に制限を加えるという発想もわからないではない が,「外務省」または「経済産業省」についてまで印刷に制限を加える理由は今一つ釈 然としない。
4
特徴各国のウェブサイトにおける主な特徴には以下の
4
点がある。①省庁の呼称
省庁の呼称についてもそれぞれに各国の個性が表れている。なお,上記
2
の(注1)
で触れたように,6ヶ国において「経済産業省」に相当する省庁が「外務省」に統合さ れている。
②Ministryと
Department
対象
40
ヶ国のうちMinistry
を使用しているのは31
ヶ国,Departmentを使用してい るのは6
ヶ国である。また,メキシコ(♯13),英国(♯21),ドイツ(♯22)の3
ヶ国は
Ministry
と他の呼称との混合型となっている。地域的分布としては,英連邦諸国と欧州,アジア,中南米,アフリカでは
Ministry
を使う傾向が強く,逆に北米ではDepartment
を使っている。このような傾向には歴史 的な背景が影響しているものと考えられるが,英連邦加盟国であり,かつ隣国でもある オーストラリア(♯19)とニュージーランド(♯20)の呼称が,それぞれDepartment
と
Ministry
とに分かれている点は興味深い。ちなみに,Departmentを使用している国として,米国,カナダの北米
2
ヶ国とオー ストラリア(♯19)のほかに,フィリピン(♯4),スイス(♯27)と南アフリカ(♯40)がある。
③Defenceと
Defense
一方,単なる英語と米語の違いとはいえ,「防衛省」について
Defence
とDefense
と の使用にも分布の特徴が認められる。パナマ(♯16)を除く
39
ヶ国のうち23
ヶ国ではDefence
を使用しているが,残る16
ヶ国では
Defense
を使用している。前者は主に英連邦諸国と欧州,後者は主に米国,中同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
60(528)
南米とアジアにおいて傾向が顕著であり,上記②と同様に,歴史的な背景が影響してい るものと考えられる。
ちなみに,パナマ(♯16)では,
Ministry of Public Security
という表現を使用して いる。④省庁の担当分野
省庁の呼称からさまざまな事実が読み取れる。それらは各国に特有の事情によるもの であろうが,それが国の個性となって表れている。
まず,
Federal
という形容詞が付されているのは,言うまでもなく連邦制を採用している国家である。ドイツ(♯22),スイス(♯27)がこれに該当するが,ロシア(♯
31)については Federal
との記載はなく,省庁名の後にof Russian Federation
と付 記しているのが特徴である。次に,個性的な省庁の担当分野の例としてスイス(♯27)が挙げられる。「外務省」
については一般的な呼称を採用しているものの,「経済産業省」に相当する
Federal Department of Economic Affairs, Education and Research
が教育,研究・調査も,また「防衛省」に相当する
Federal Department of Defence, Civil Protection and Sport
がスポ ーツも,それぞれ担当しているのである。Ⅴ ま と め
1
調査結果の要約とコメント上記Ⅳの調査結果を踏まえ,使用言語とアクセシビリティについて以下のように要約 し,それらに対する筆者のコメントを付記する。
①使用言語
自国語のみのウェブサイトしか用意していないのは
8
ヶ国である。このうちアルゼン チン(♯15),パナマ(♯16),ペルー(♯17)の南米3
ヶ国とクウェート(♯35)の4
ヶ国については,それぞれスペイン語とアラビア語のウェブサイトのみとなっている。残る
4
ヶ国は英語四ヶ国(米国(♯11),オーストラリア(♯19),ニュージーランド(♯20)および英国(♯21))であり,いずれも英語を母語とするものの,英語以外の言 語のウェブサイトを有していない。
皮肉なことに,英語四ヶ国では外国からの移民の増加が顕著である。すなわち,米国 ではヒスパニックと呼ばれる中南米系住民が増加
22
し,英国にもインド,アフリカといっ
────────────
22 2013年2月1日付けロイター電子版では,米国の総人口に占めるヒスパニック比率は2000年の12.5%
から2011年には16.7% に拡大しているという。同日付けロイター電子版,http : //jp.reuters.com/article/
worldNews/idJPTYE91003920130201(2013/12/19)。
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (529)61
た旧植民地からの移民が絶え間なく流入してい
23
るばかりか,オーストラリア,ニュージ ーランドにおいても中国系移民が増加してい
24
るのである。そのような時代的背景の中,
英語が得意でない自国民(日常的外国語話者)と在留外国人に対して英語のみで情報発 信すれば足りるのであろうか。文化の多様性(Diversity)に対する国家としてのあるべ き姿勢が問われるところである。
しかしながら,問題はそれに留まらない。なぜ英語四ヶ国において移民が増加してい るのか。それは,英語四ヶ国での自由で民主的かつ文化的な生活を求めているからでは ないか。このように考えると,「自由と平等を追い求める人々に勇気と支援を与える」
という英語四ヶ国に与えられた使命が理解できよう。この使命とは,外国および外国人 に対して自国の政策,方針を適切に伝達するという一般的な政府広報の役割を超越し た,「国家の社会的責任(State Social Responsibility)」とも呼ぶべき,先進国としての責 任である。もちろん,この使命は英語四ヶ国のみが負っているのではなく,我が国を含 むすべての先進国に求められていることは言うまでもない。この点については,後述の
2
で改めて述べることにしたい。②アクセシビリティ
アクセシビリティの観点からも英語四ヶ国の消極性が顕著である。このように,上記
①の言語の面に加え,アクセシビリティの面でも英語四ヶ国が同じ姿勢を表しているの は実に興味深い。これらの国々において,社会的弱者に対する姿勢につき共通の思想,
考え方が存在するのであろうか。
③英語四ヶ国における「消極性」の理由
それでは,上記①と②に共通する英語四ヶ国の「消極性」の原因は何か。それを,母 語が英語という,Lingua Francaであるがゆえの傲慢さに求めるのは簡単である。しか し,そのように断言するのは早計であろう。
むしろ,外国への情報発信の点で英語四ヶ国がウェブサイトの有用性に気付いていな いからではないか。さらには,上記①で述べた「自由と平等を追い求める人々に勇気と 支援を与える」という先進国の使命に気付いていないのかもしれない。
このほかに,費用対効果も一因となるであろう。外国語のウェブサイトを自国語のウ
────────────
23 2013年11月8日付けMSN産経ニュースは,英国家統計局の発表を引用して,「2012年現在で約6,370 万人の英国の人口が2037年には約7330万人に達する見通しであり,かかる人口増の主な要因は移民の 増加にある」と述べている。同日付MSN産経ニュース,http : //sankei.jp.msn.com/world/news/131108/erp 13110808260002−n 1.htm(2013/12/19)。
24 在日オーストラリア大使館は,「2001年と2006年の国勢調査の間に,最も多く増加した海外生まれの 人たち」として,中国からの移民(6万4,000人)を筆頭に挙げている。同大使館のウェブサイト,
http : //www.australia.or.jp/aib/people.php(2013/12/19)。また,ニュージーランドの Labour & Immigration Research Centre による Migration Trends and Outlook 2011/2012 116ページによると,2011年から2012 年の間に同国の在住許可を得た人数40,448人のうち5,412人が中国からの移民であり,英国の6,032人
(14.9%)に次ぐ高い水準(13.4%)となっている。
同志社商学 第65巻 第5号(2014年3月)
62(530)
ェブサイトとまったく同じ内容にし,それを維持するには相当の人員と資金を投入しな ければならないからである。なお,アクセシビリティについても同様のことが言えなく もないが,そのために必要なコストは外国語のウェブサイト設置に比してかなり低くな るものと推測されることから,コスト面からだけのアプローチでは説明がつかない。
2
筆者の主張まず,アクセシビリティというウェブサイト上の社会的弱者への配慮の必要性につい ては,改めて意見を述べるまでもないであろう。それは基本的人権に基づく当然の要求 にほかならない。
次に,外国語でのウェブサイトの設置について考えてみたい。英語四ヶ国は,単に英 語を母語とする国々というだけの存在ではない。英語という
Lingua Franca
を通じて世 界の政治,経済,文化,思想を先導しているのである。その影響力の強さをここで改め て繰り返すまでもないであろうが,少なくとも全世界のGDP
の実に28.3% を四ヶ国が
占めてい25
ること,そして先進国の代名詞と称される
OECD(経済協力開発機構)の古
くからの加盟国であ26
ることは事実である。また,米国と英国は国連安全保障理事会の常 任理事国として,世界に対する強い政治的影響力を保持しているばかりか,それぞれウ ォール街,ロンバード街という屈指の金融センターを持ち,世界経済への影響力も比類 がない。
上記
1
で述べたように,先進国,中でも英語四ヶ国に対する世界の人々の期待は大き い。人権が軽視される国々,支配者の専横に苦しめられる国々,差別に悩む国々の良識 ある市民が英語四ヶ国における「自由」を知りたいと願い,英語四ヶ国からの「支援」を期待しているのである。
ウェブサイトを利用するにはパーソナルコンピューター,スマートフォンといった電 子機器が不可欠である。しかし,それらは発展途上国の市民にとって高価であるばかり か,入手も容易ではないだろう。また,外国のウェブサイト閲覧に対して当局が妨害す ることも考えられよう。それでも,インターネットを利用したウェブサイトは,外国か らの情報を入手するうえで最も迅速かつ有用なツールである。
英語四ヶ国が国際社会における自らの責務をしっかり認識し,多言語で人権保護,民 主化,差別解消に向けた情報を発信することによって,自由と平等の実現に貢献するよ う期待したい。それは,単なる日常的外国語話者,在留外国人への配慮を超えた,先進
────────────
25 世 界187ヶ 国 の 名 目GDP合 計72.2兆 米 ド ル に 対 し,四 ヶ 国 の 合 計 は20.4兆 米 ド ル で あ る。IMF
(International Monetary Fund)ウェブサイト中のWorld Economic Outlook Database October 2013, http : //
www.imf.org/external/ns/cs.aspx?id=28(2013/11/15)。
26 米国と英国はOECD設立時(1961年)に,オーストラリアは1971年,ニュージーランドは1973年に それぞれ加盟している。なお,日本のOECD加盟は1964年である。
主要国中央政府のウェブサイトに見る「アクセシビリティ」(久島) (531)63
国としての国際的使命の実践である。
3
今後の研究課題筆者は「社会的弱者(日常的外国語話者,外国人を含む)への配慮」の研究を続ける にあたり,今後の課題として次の
3
点を認識している。第
1
点は,英語四ヶ国において外国語でのウェブサイト設置とアクセシビリティのい ずれも実施されていないことについて,事実の指摘は行ったものの,その原因を明確に 提示できなかった点である。関係諸氏からのご意見を仰ぎたい。第
2
点は,調査対象の拡大である。今回の40
ヶ国,114省庁では必ずしも必要十分 なサンプル数とはいえないであろう。したがって,調査対象を広げ,例えば対象国を国 民1
人あたりのGDP(国内総生産)の上位 100
ヶ国とし,すべての省レベルの組織の ウェブサイトを検索することが挙げられる。第
3
点は,利用者から見た中央省庁のウェブサイトに対する評価である。ウェブサイ トの普及が1990
年代の後半からという事実もあろうが,ウェブサイトの利用者からの 情報が集めにくく,我が国でも調査事例が少な27
い。この点については,引き続き対応策 の検討を進めたい。
────────────
27 総務省自治行政局地域情報政策室が2007年6月に発表した「地方公共団体におけるオンライン手続の 利用促進について」において,同年2月に実施した住民アンケートの結果が触れられているにすぎな い。総務省自治行政局地域情報政策室の作成によ るPDF資 料,http : //www.soumu.go.jp/main_sosiki/
kenkyu/denshijichi_suisin/pdf/070607_si7.pdf(2013/12/27)。
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