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(1)

インド経済のグローバル化と財行政改革 : 税制改 革と地方分権化をめぐって

著者 西口 章雄

雑誌名 同志社商学

巻 56

号 5‑6

ページ 1‑29

発行年 2005‑03‑15

権利 同志社大学商学会

ドウシシャ ダイガク ショウガッカイ

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000007310

(2)

インド経済のグローバル化と財行政改革

──税制改革と地方分権化をめぐって──

西 口 章 雄

はじめに

インドの連邦政体における中央・州関係 複合的共和政体

インドの連邦制と国民統合 計画的工業化と州自治

中央財政の構造的赤字と中央指令型開発戦略の行き詰まり 現行間接税制の諸問題と付加価値税制導入の意義

投入財への課税と税の累積 中央販売税(CST)と 税の輸出 税制改革の現状と課題

73次憲法改正法と 農村自治

憲法改正法と農村自治制度(パンチャーヤティ・ラージ)

憲法改正法施行の背景

諸州における農村自治への取組み──先行的事例と現状 A.西ベンガルの事例

B.カルナータカの事例 農村自治制度の現状

結び──パンチャーヤティ・ラージへの道

1991

年の国際収支危機を契機として,インドの経済開発戦略の転換(中央政府主導 の計画的工業化から外資連携のグローバル市場経済化への漸進的移行)が図られてき た。従来の開発戦略を支えてきた統制的な制度的諸形態は,経常・資本取引の自由化,

為替の自由化,変動相場制への移行,産業許認可制度の撤廃(新企業の設立・新製品の 生産における国営・混合・民間企業の役割区分の撤廃),独占・制限的商慣行規制法の 改廃,資本発行統制法の撤廃,インド準備銀行の公開市場操作と結びついた短期国債の レポ取引を介した短期金融・資本市場の育成・整備などを通じて,競争原理に基づく市 場経済的な制度的諸形態へと,矢継ぎ早にかつ多面的に改革されてきた。しかしこれら の制度的改革(経済改革)は中央政府レベルのそれである。インド連邦財政システムに おける中央・州間の財政的諸関係は,特に税制面で成長・公正の達成にとって阻害的な 諸問題を孕んできたにも拘らず,その改革への道には,中央・州の両サイド,とりわけ

521)1

(3)

州サイドにおいて今日なお解決されねばならない難問題が残されている。本稿では,イ ンドにおける間接税制の運用において生じてきた諸問題について検討し,インド経済の グローバル化に対応して提言されている間接税制改革(付加価値税制)の意義と諸課題 について考察する。ついで,経済改革と並んで,第

73

次憲法改正法(1992年)におい て諸州議会に付託された農村行政制度改革(農村自治制度の法制化)と運用の現状につ いて考察する。最後に,インド経済のグローバル化に対して持つ農村行政制度改革の意 義と,インド連邦システムの新しい在り方(中央集権的連邦政体⇒協同的連邦政体)に ついて論じる。

インドの連邦政体における中央・州関係

複合的共和政体:本稿の課題に先立って,インド憲法(1949年の制憲議会により採 択・実施)において構想されているインドの連邦政体の性格について見ておこう。A バグティ(Amarsh Bagchi)は,「連邦主義」(あるいは「多レベル統治」のあり方を示 す概念)における「2つの正反対のモデル」が,「連邦構成の二者択一的形態の比較的 メリットを評価するための便利な出発点を与える」として,次の

2

モデルを提示してい る。「(衢)各々が中央政府の行動を拒否する権限を持つ都市主権国家(sovereign city-

states)によって構成された連合共和政体(a confederate republic)のモンテスキュー概

念(Montesquieu’s ideal),(衫)J. マディソン(James Madison)とその他の 連邦主義 者 −USにおける連邦主義の創始者達−の複合的共和政体(a compound republic)のビ ジョン(必要とされる場合,狭い地方の利益を無効にできるアーチ型をなす代議制中央 政府を持

1

つ)」。「複合的共和政体」の特徴として,以下の諸点が挙げられている

「1.多レベルの政府が強力なセンターを持ち,しかし下位レベルの政府が地方のサービスを供給する 責任を持つ;2.それぞれのレベルで権限の分割 所有 ;3.構成諸単位の満場一致の同意からではな く,市民の多数の承認から引出される中央政府の正当性;4.市民の選択は,地方で市民によって選ばれ た国民議会への代議員と,議会によって制定された法律を実施する大統領の国民選挙を通じて,接合さ

2

る。

インド憲法において構想された連邦政体は,「複合的共和政体」のインド版であると いえる。インド憲法は,地方分権化(権限の割譲

‘decentralization or divided power’)の

原則に基いて,第

246

条第

7

付則において「リスト−Ⅰ:連邦リスト」・「リスト−Ⅱ:

────────────

Amarsh Bagchi, ‘Rethinking Federalizm’, An Overview of the current Debates with Some Reflections in the In- dian Context, Development, Poverty, and Fiscal Policy, Decentralization of Institutions, ed. by M. Govinda Rao, Oxford Univ. Press, 2002, p. 226.

Ibid.,p. 229.

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

2(522

(4)

州リスト」・「リスト−Ⅲ:共同リスト」を挙げ,前

2

者において連邦(中央)政府と州 政府へそれぞれ独自な権限(役割)と課税権限(支出責任)を分割・付託している。防 衛(安全保障),外交,国際関係,連邦行政に加えて,道路・鉄道・海上・航空輸送,

議会と法によって国益から見て得策であると宣言された産業,中央銀行,商業銀行・保 険,主要鉱物資源の統制など,国レベルの役割を中央政府へ付託している。州政府へ は,一般行政,自然災害救助,初等教育,医療と保健,家族の厚生,住宅と都市開発,

社会保障と福祉などの「社会・地域事業」と,農業と農業関連サービス,動力と灌漑及 び洪水制御,運輸(道路及び内陸水路),公共事業などの「経済的事業」を中心とし て,主として地方の必要と要求に基づいて公共財を提供する役割を付託している(第

1

表,参照)。

インドの連邦制と国民統合:ところでインドの連邦共和政体は,言語的な差異を有す

る諸地域(英領インド諸州と藩王国)を言語別に州編成して成立した。このような歴史 的経緯を持ち,自然的諸条件の差異に加えて,言語・人種・宗教・生活習慣(文化)に おいて地域的差異を持つ人口大国インドにおいて,それぞれの州への幅広い自治権限の 付託を指導原理とする独自な「複合的共和政体」の構築は,多様な人種の国民への「政

1 中央・州政府の支出(経常+資本):1991−92年度

支出額(10億ルピー) 支出額のシェア(%)

中央 中央

A.利子支払い B.防衛 C.一般行政業務 D.自然災害救助 E.社会・地域事業

1.教育,その他 2.医療・公衆衛生 3.家族福祉 4.住宅・都市開発 5.社会保障・福祉 6.その他 F.経済的事業

1.農業・農業関連事業 2.工・鉱業

3.動力・灌漑・洪水制御 4.運輸・通信

5.公共事業 6.その他 G.借款・貸付

200.3 164.5 100.2

49.3 32.8 6.2 0.8 3.6 3.4 2.4 219.8 54.4 67.3 24.9 34.3 3.8 35.1 88.2

109.6

167.4 10.6 312.8 174.3 67.1 9.9 15.2 41.7 4.5 318.5 100.6 18.1 128.6 38.8 10.0 22.6 31.6

309.9 164.3 267.6 10.6 362.1 207.1 73.4 10.7 18.9 45.2 7.0 538.3 154.9 85.4 153.4 73.0 13.8 57.7 119.7

64.6 100.0 37.4

13.6 15.8 8.5 7.4 19.3 7.6 35.1 40.8 35.1 78.8 16.2 46.9 27.8 60.9 73.6

35.4

62.6 100.0 86.4 84.2 91.5 92.6 80.7 92.4 64.9 59.2 64.9 21.2 83.8 53.1 72.2 39.1 26.4

100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100

H.支出総額(A+B) 822.3 950.6 1772.8 46.4 53.6 100

中央・州政府の実支出額.二重計算を避けるため,中央政府から州への移転支出は含まれない。

資料:M. G. Rao, et al.,Fiscal Federalism in India,−Theory and Practice−,Macmillan India Limited, 1996, pp. 25−26.

インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 523)3

(5)

治的統合」の課題と深く結びついている。インド独立後において国民政党として政権を 掌握した国民会議派の下で確立された一党優位体制(多様な階層・人種・地域の要求を 吸収し,それらの間の利害対立の調整メカニズムとして作用してき

3

た)が,1960年代 の中頃までその政治的支柱となってきた。1967年の第

4

回総選挙における会議派の後 退と多数の野党州政権の出現(この事態は,「州政府相互間,州政府と中央政府の対立 を激化させることになった」といわれてい

4

る),69年末の会議派の分裂を経て,70年代 に入って蠢・ガンディー(Indira Gandhi)会議派(左派)政権が強権化し(その頂点は

1975

6

月の非常事態宣言であった),インド連邦政体は体制的危機に瀕した。以下 では,インド連邦主義の経済的側面について考察し,その背景の一端に触れることとす る。

石井一也氏は,J. ナーラーヤン(Jayaprakash Narayan)によって率いられた「ガンディー主義の枠組 み」に基く「『全面革命』運動が強権主義的インディラ・ガンディー政権を崩壊に導いた事実」,また

『ガンディー主義』に支えられたこれらの運動が,国家権力に対して少なからぬ影響力を保持しつつ,

国民会議派の強権政治に対する民主主義勢力からの一定の歯止めの役割を果たしたこ

5

と」について指摘 している。また同氏は,独立後インドの国家政策に与えたガンディー主義の影響,上記の事実と共に民 衆の支持を受けたガンディー主義運動の経緯に踏まえて,『ガンディー主義』が,独立インドにおける

『民主主義』の不可欠の構成要素であった」と論じている。

ちなみに,草の根の民主主義・自治・平等を求めるM. ガンディー(Mahatma Gandhi)主義は,※農 村自治制度(パンチャーヤティ・ラージ〈panchayati raj〉)の樹立(インド憲法,第4編:国家政策の指 導原理,第40章──農村地域レベルへの「政治および行政の分権化」──),※社会・経済・政治的公 正:カースト差別の廃止,経済・社会的格差の是正(機会の均等,富と生産手段の集積防止──第4 編,39・39 A条),※農村家内工業・小規模工業の振興など,インドの連邦主義(インド憲法における インド統治〈統合〉原理)やインド政府の産業政策に深く浸透していること(インド連邦主義の固有性)

を,ここで注目しておく。憲法第73次改正法(1992年)によって,農村自治制度が憲法上の制度とし て認定され,新たに挿入された第9編(The Panchayats)において基本原則が示され,各州議会は法律に よって適切な措置を講じるよう義務付けられた(本稿,蠱章,参照)

────────────

この会議派支配の政治システムは,「コンセンサスの政体」あるいは「開放的な多元主義的政体」**と称 されている。このシステムの下で,社会的に支配的(有力)なさまざまなコミュニティの要求が,会議 派内の支配的派閥に対する他派閥あるいは諸野党からの圧力,批判,影響を媒介として,「村落レヴェ ル,州レヴェル,全国レヴェルへと……幾多の紆余曲折,複雑な合従連衡を経つつ,積み上げられてい くプロセス」を通じて,「政治的世界に反映される途が保障されていた」***といわれている。

竹中千春「比較政治学と歴史学における『インド像』」―『オリエンタリズム』論に参照しながら」

(山之内靖編『歴史への問い/歴史からの問い』岩波講座 社会科学の方法衂,1993年)150ぺージ。**

P. Bardhan,The Political Economy of Development in India,Basil Blackwell, 1984, p. 73.***木村雅昭「国 内政治の展開―多発する紛争の背景」(岡本幸治・木村雅昭編『紛争地域現代史3 南アジア』同文 館,1994年),32ぺージ。他に,堀本武功「会議派の百年」(佐藤 広・内藤雅雄・柳沢 悠編『もっ と知りたいインド1』弘文堂,1989年),56ぺージ,参照。

古賀正則「インドにおける地域政策の展開」(川島哲郎・鴨澤 巌編『現代世界の地域政策』大明堂,1988 年),173ぺージ。

石井一也「ガンディー死後の『ガンディー主義』―独立インドにおける「民主主義の不可欠の要素とし て―」『香川大学法学部創設20周年記念論文集』200371日,51・55・66ぺージ。

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

4(524

(6)

植民地支配からの民族解放闘争を通じて民族的願望(合意)となった「経済統合=経 済開発」の課題──計画的輸入代替工業化を基軸とする国民経済の形成──は,B. R.

アンベードカル(Bhimrao R. Ambedkar)を始めとして憲法の創始者達や制憲議会のメ ンバーによって十分視野に納められていたと思われる。以上で見られたように「連邦リ スト」は,マクロ経済政策(中央銀行)に加えて,鉱工業,運輸・通信などのインフ ラ,金融,外国貿易など,「経済統合」において要となる諸分野における権限(役割)

を中央政府へ付託している。「共同リスト」(No. 33〈a〉)は,「連邦リスト」(No. 97)**

と共に,中央政府が経済開発における経済的権限を集中(中央集権化)していく道を開 いている。このようにインドの独立(1947年)後における政治・経済的統合の課題と 深く関わりながらインド憲法に盛られた連邦構想について,

R. F.

チェリア(Raja F. Chel-

liah)は次のように指摘している。

「多分,建国の指導者達は統一を維持することに関心

を寄せていたので,独立の初期においてそうであったと理解できることであるが,彼ら は真の連邦憲法と中央集権的憲法の間の中庸の道−その下で,国益にとって現実的脅威 があったとき,中央政府が決定的に介入し得た−に決め

6

た」。A. バグティによれば,

「分離独立に続いて,一方で国が更に分裂するという恐れと,他方で強力に統一した国 家(nation)のビジョンによって動かされて,新しいインド憲法を起草した指導者達 は,中央に支配的位置を与えた諸条項をはめ込んだ。……『その領域内で全体的(gen-

eral)政府と地域的政府のそれぞれが対等で独立的であるように』

,権限が分割されてい

る真の連邦としてのその性格を損ねた。この基準によって判断して,自由インドの憲法 によって生み出された統治形態は, 準連邦(quasi-federal) として特徴付けられてき

7

た」ということである。

共同リスト:No. 33(a)「連邦によるかかる産業の統制が国益において得策であると,議会・法律によ って宣言されている産業の何れを問わず,その産品の取引・商業,生産,供給と分配」への中央・州政 府の介入権限。

**連邦リスト:No. 97.「リスト−Ⅱあるいはリスト−Ⅲに挙げられていない残余事項」に関して,中 央政府が介入権限を持つ。

計画的工業化と州自治:1951年から開始された計画的工業化は,インド連邦政体に おける中央政府(一党優位体制を確立した国民会議派政権)の経済的権限強化の推進力 となった。為替管理,輸入統制,主要物資の価格統制,産業開発・規制法(1951年)

に基く産業許認可制の導入(民間部門の経済活動に対する規制),主要産業部門の国家 部門への留保,金融的中枢の掌握(14大商業銀行の国有化,1969年)など,積極的な

────────────

R. F. Chelliah, Liberalization, Economic Reforms, and Center-State Relation,India’s Economic Reforms and Development–Essays For Manmohan Singh,ed. by Isher Judge Ahluwallia and I. M. D. Little, Oxford Univ.

Press, 1998, p. 345.

A. Bagchi,op., cit.,p. 245.

インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 525)5

(7)

経済過程への介入を通じて経済的権限を集積した中央政府は,’50年代初頭からの改良 農業普及事業を始めとし,’60年代中頃からインド農村において展開した 緑の革命 の推進,農村雇用計画・統合農村開発計画(’60年代末以降)を通じて,また地域的発 展の格差是正を目的として

’60

年代初頭以降に開始された農村工業プロジェクト計画

(RIP)・県工業プロジェクト計画(DIP)などを通じて,州の農業・工業(小規模工業)

開発計画過程へ関わっていった。これらの事業・計画は,州政府との対等出資を伴う中 央支援スキームや中央省庁の州計画への補助金交付を通じて実施され,中央政府が州政 府への影響力を行使する媒体となった。このようにして,「経済・社会計画」は,中央 と州の「共同リスト」(No. 20)に挙げられているが,経済計画の設計・実施に関し て,事実上,「計画委員会──中央の政令を通じて設立された機関──が,巨額の中央 資金を支出し,また州の開発計画を承認し始め

8

た」のである。このような中央指令型の 経済・地域開発戦略は,’80年代におけるポピュリスト的・権威主義的性格を帯びた国 民会議派(インディラ)政権によって継承された

198911月の第9回連邦下院議員総選挙において国民会議派は敗北し,12月に北部インドの「後進 諸階級」(中・小農層を中心とする中間カースト階層)を有力支持基盤として,ジャナタ・ダル(大衆 党)によって率いられた国民戦線政府(NF)が成立した。同政党は,「社会的転換に向けて」と題した 8次五カ年計画(1990−91〜94−95年度)を発表し,そこでのアプローチとして「社会的公正と人民参 加を伴う新しい成長の道」を提示した。これによるとNFは,工業の地方分散化の促進と共に,農村地 域の貧困層に対して生産的な雇用機会の拡大を図るために,地域計画立案・執行段階における地方分権 化と,地域社会住民・諸機関の開発機関への積極的参加に基く統合地域計画(Integrated Local Area Plan- ning)の推進を革新的課題として提起してい

9

る。しかし 湾岸戦争 勃発によってもたらされた経済危 機が深刻化するなかでNFは政権の座から降り(199011月),このアプローチは理念倒れとなった が,経済開発行政の地方分権化は幾らかの州においてすでに進行していた(後出)

中央財政の構造的赤字と中央指令型開発戦略の行き詰り:以上に見られた中央政府の 積極的な計画支出を賄うための歳入(経常収入)源は,当初(1950年代〜’60年代を通 じて)富裕(高所得)層を課税対象として,高率の個人所得税(追徴金を含め最高限界

税率は

97.7% にも達したと言われている)に加えて,資産あるいは富裕税・資本利得

税・相続税を組み合わせ,主として直接税収入に依拠した。しかし高所得者層への過重 な税負担は彼らの脱税・租税回避を促がし,新企業への国内投資を促がすための法人税 課税上のインセンティブ(例えば,課税猶予,優遇税率,投資信用など)と共に,直接 税の課税ベースを侵食するのみであった。こうして,’70年代に入って,個人所得税率 の漸次的引下げを伴って,間接税(連邦物品税)へ依存する歳入構造が形成されていっ

────────────

Ibid.,p. 246.

Govt. of India, Planning Commission, Towards Social Transformation : Approach to the Eighth Five Year Plan 1990−95,July, 1990.

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

6(526

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10

た。中央政府財政の歳入(経常)勘定収支は,’80年代初頭まで多少とも黒字(中央政 府部門貯蓄)を計上した。しかし,巨額の政府投資による持続的な財政赤字(経常収入

−経常・資本勘定支出<0)は,海外経済援助によって

1

部埋め合わされたが,その残 余は予算赤字(budgetary deficit)として計上され,中央銀行(インド準備銀行)による 財務省証券(TB)の引受け(通貨膨張)によって融通された。’80年代(とりわけ後 半)に入ると,海外短期資金の導入を図りつつ展開された大規模な公的インフラ・産業 部門(通信・情報関連部門)の現代化政策によって,財政赤字幅は経常勘定赤字転落に よって増幅されて拡大し,TBの償還期限のない「特別証券」化によってインフレを助 長した。財政赤字の拡大は,経常国際収支赤字と表裏一体化して,’90年代初頭の 湾 岸戦争 →海外短期資金の大量流出を契機として,インド政府を対外債務支払い不履行 の危機へと追込んでいった。このように,中央計画主導の開発戦略が中央財政の構造的 赤字を孕ましながら隘路に逢着するなかで,幾らかの州(西ベンガル,カルナータカ)

において地域住民参加型の開発戦略が展開されてきたことは,注目に値する。この動向 については蠱章で詳論することにして,以下では,インドの財政赤字構造に纏い付いて きた間接税制度に内在的な諸問題と,改革への取組みの現状と課題について考察する。

現行間接税制の諸問題と付加価値税制導入の意義

投入財への課税と税の累積:憲法第

7

付則において,連邦(中央)政府と州政府への 行政権限の付託に対応して,両政府への課税権限の付託が 分離原則 に基づいてなさ れている。この原則の下で,インドの全領域に及ぶ課税ベースを持ち,且つ累進的な課 税の権限は中央に移譲された。第

2

表で見られるように,中央歳入総額(中央税+分与 税合計+中央税外収入)において,関税(26.7%),所得税(法人税〈9.4%〉と個人所 得税〈8.1%〉),連邦物品税(33.8%)が大きな比重(78.0%)を占めている。州政府の 課税権限は,主として(歳入への貢献度からみて)課税ベースの大きい州内における財 の販売(あるいは,購買)への課税に向けられており,販売税は州政府自身によって徴 収された歳入総額の

43.4%(総税収〈A.b〉の 54.3%)を占めている。ところで,中央

・州のそれぞれにとって主要な財源である物品税と販売税の課税ベースは殆ど共有され ており,その限り「税の分離は,法律上の意味においてのみなされ得るのであり,事実 上,重複は避けられな

11

い」。これらの間接税の中央・州レベルでの重複は,「NIPFPの 研

12

究」(1993年に,当時の連邦財務大臣の要請によって税制改革計画を作成した)に拠

────────────

G.Thimmaiah, Evaluation of Tax Reform in India, M. Rao,op. cit.,pp. 129−31.

M. Rao, Indian Fiscal Federalism : Major Issues,Public Finance, Policy Issues For India, ed. by Sudipto Mundle, Oxford Univ. Press, 1997, p. 232.

National Institute of Public Finance And Policy(NIPFP),Reform of Domestic Trade Taxes in India : Issues! インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 527)7

(9)

って以下で考察されるように,現行のインド間接税制に固有な拘束的諸条件の下で,投 入財への課税が税の上に税〈税の累積〉⇒物価上昇を始めとして様々な歪みを生み出す

悪循環 の一環を形成した。

連邦物品税は,インドにおいて製造あるいは生産されるタバコ,その他の財への中央税である(消費 用アルコール飲料,麻酔剤を除く)。販売税は,新聞以外の財の販売あるいは購買への州税である。これ らの税に加えて,地方自治体によって徴収される財の入市税(octroi)と州間で売買される財への税(中 央販売税)が,事実上,重複している。

物品税と販売税は,販売あるいは購買の 最初の時点 (the first point)で(即ち,

製造業者と輸入業者に)課税される。物品税の場合,製造業者による国内登録業者(卸 売り業者)への製品の工場渡し価格に課税され,次いで当該製品(あるいは輸入品)の 州内販売に際して販売税が課税される。ところで,物品税の課税には,次(**,参照)

にみられるように, 製造 の定義という難解な問題が付きまとい,税務当局と納税者 の間で紛糾・訴訟が多発し,「その問題は夥しい回数で最高裁へ持ち込まれた」(6)と いう。このような状況は,課税の回避・脱税の誘因となった***

────────────

! And Options-Report of a Study Team,1994.「NIPFPの研究」からの引用・参照箇所は( )内にぺージ数 のみ記す。

2 中央・州政府の歳入(1991−92年度)

歳入項目

歳入(10億ルピー) 歳入のシェア(%)

中央 中央

A.税収(a+b)

a)中央税 1.法人税 2.関税 3.その他 b)州税

1.州物品税 2.販売税 3.乗物税

(財及び乗客)

4.その他 c)分与税

1.所得税 2.連邦物品税 B.税外収入

1.公企業納付金(純)

2.利子収入 3.海外贈与 4.その他

501.6 325.2 78.5 222.6 24.1

176.5 16.3 160.2 158.7 24.1 109.3 9.5 15.8

526.9

364.9 54.7 198.2 29.8 72.3 172.0 51.0 120.9 91.5 11.1 53.2

49.4

1028.5 325.2 78.5 222.6 24.1 354.9 54.7 198.2 29.8 72.3 348.4 67.3 281.1 250.2 13.0 162.5 9.5 65.1

48.8 100.0 100.0 100.0 100.0

50.6 24.2 57.0 63.4 184.9 67.3 100.0 24.2

51.2

100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 49.4 75.8 43.0 36.6

−84.9 32.7

75.8

100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100

C.歳入総額(A+B) 660.3 618.4 1278.7 51.6 48.4 100

資料:M. G. Rao,op. cit.,p. 23.

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

8(528

(10)

当初,インドにおける販売税のシステムは2つの主要な様式── マドラス(多時点)システム ベンガル(小売課税)システム ──を採ったが,「小売レヴェルで税を管理し,多時点課税が伴う非 常に多くの業者と取決めを行う諸問題を避けるために,幾年もかけて今日,全州は歳入の大部分を徴収 するため,主として最初の時点での課税に転換した」(12)とされている。

** 製造 の定義に関する幾らかの判決によれば,例えば,液体石鹸への水,香料,染料の添加は,別 個の名称,性格,あるいは用途の何ら新しい実質も生み出されないので 製造 に該当しない,という ことであった。以下同様:アルミニウム・スラグからアルミニウム缶の製作,綿織物へのゴム合成品の 適用,完全組立て(CKD)状態における諸部品から自転車の組立て,関税支払い済のシャシ上への車体 の組立て,様々な規模,厚板,梁などへの丸太の転換と切断,マーセル法(木綿に光沢を与える苛性ア ルカリ処理法)での加工。また,「高度に複雑な,専門化されたあるいは技術的な性格」のものではない パンチング,ドリリング,亜鉛メッキ加工は 製造 に該当しないと見做された。(5)

「NIPFP」の研究は,中央物品税法(Centra1 Excise Tariff ACT, 1985年)の章/節ノートから,上記の 製造 に関する判決とは対立する解釈を抜粋している。例えば,散薬の錠剤への転換,消費者のために 目論まれたコンテナーの付箋付けあるいは付箋付け替え,バラ積みから小売用パックへの再包装,製品 を消費者へ販売可能にするため何らかのその他の処置の採用は, 製造 と解釈される(Note 4 to Chapter 33)。同法のXVI節の下に包摂された機械に関して,同節Note 6において,次のような解釈がなされて いる:「不完全あるいは未完成であるが,完全あるいは完成品の基本的な性格を持っている物品( ブラ ンク ,即ち,直接の使用のためには仕上がっていないが,完成品あるいは部品の大凡の形態・概観を持 っており,例外なく完成品あるいは部品への仕上げのためにのみ利用され得る物品を含む)の完全ある いは完成品への転換は, 製造 に該当する。(p. 6)

***「税が最初の販売時点でのみ課せられるとき,以上に記したようなサービスを提供する財の販売者 は,もし彼らが 製造業者 の範疇に入らなければ,彼らは唯の再販売業者であると主張できるので,

税を支払う必要がない。(7)

製造 の定義の 曖昧さ による物品税課税をめぐる紛糾は,以下で取上げられる 諸問題と共に,限られた範囲で投入財に支払われた物品税に対する払戻しの仕組みを伴 って修正付加価値税(MODVAT)制が導入(1986年

3

月)されるようになって,よう やくその解決の端緒が開かれるようになった。しかし販売税を含む現行間接税制の付加 価値税制への移行には,今日なお解決されるべき多くの問題を抱えている。以下,この 間題について立入った考察をなす。

最初の時点 課税は文字通り一度限りの課税であり, 製造 後における加工活動

(例えば,研磨,撚糸,織地作り,ブレンディングなど),また/あるいは加工活動に関 連するサービス支出によって生み出される付加価値に対して税の支払い義務が無い(あ るいは,課税回避される)限り,物品税の課税ベースは狭く,中央政府は投入財と資本 財を含めて物品税の課税ベースを拡大し続けた。諸州政府もまた,歳入増大の必要に迫 られ,「最初の時点での販売税率を一層引上げることを困難とみて」,売買の様々な段階 で,売上税(免税限度額を超える販売額を持つ業者の総販売額に課せられる),付加販 売税,追徴金を課してきた(12)。このように,製造工程において利用される投入財の 購買者(B)によって販売者(A)に支払われた物品・販売税は,(B)によって製造さ

インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 529)9

(11)

れた製品の販売価格(購入投入財のコスト+付加価値〈賃金+利潤〉)に込められ,こ うして値上がりした販売価格に課せられる税(実際,税率は財によって多様)を支払う 後続の購買者(c)から,徴収・納税される。投入財の購買の際に支払われた税が購買 者に払い戻されない限り(払い戻しがなされる場合には,税はそれぞれの財の製造段階 における付加価値のみに課税される),投入財への税の上に税(税の累積過程)→製品販

売価格

up→値上価格への税→税の累積が,投入財の売買過程を通じて最終消費財(あ

るいは,完成資本財)の生産者まで続く。消費財への販売・売上税は,財の仕入価格に 課せられた税の払い戻しがない限り,中間(卸・小売)業者を経て累積し,消費財販売 価格の上昇を通じて最終的に消費者へ転嫁される。このような段ばく(累積)的税制 は,上記の理由と共に脱税・課税回避の

1

誘因となった。第

3

表は現行間接税制下の 投入財課税と販売額の 値上げ による税への累積効果(cascading)を例示している。

「物品税と同様に最初の時点での課税は,人為的に低い価格で姉妹会社へ販売をなすことを通じて,

また財の販売に関連する若干のサービス(コスト)を最初の時点を越えて移行させることを通じて,租 3 投入財(仕入コスト)への課税による税の累積効果(例示)

製造業者/

卸・小売業者

投入財/

仕入コスト

課税前価格

(値上げ50%)

販売税

@10%

課税後 販売額

付加価値

(純コスト)

(1) (2) (3) (4) (5) (6)

A.

B.

C.

0 110 181.5

100 165 272.2

10 16.5 27.2

110 181.5 299.5

100 50

(100×50%)

75

(150×50%)

53.7 225

最終販売価格と付加価値の差・・・・・・・・・・・299.5−225=74.5 付加価値に対する税・・・・・・・・・・・・・・・225×10%=22.5 投入財/仕入コストへの課税による税の累積効果・・53.7−22.5=31.2

(付加価値の13.9%)

価格値上げによる税への付加的累積効果・・・・・・74.5−53.7=20.8

(付加価値の9.2%)

出所:NIPFP,Reform of Domestic Trade Taxes in India, Issues and Options, Report of Study Team,1994, p.

10.

※第3表の説明:

・C(小売業者)のB(卸売り業者)からの仕入額(181.5)+Cによる付加価値(75)+付加的投入(仕 入れ)コスト(15.75=181.5×50%−75)=Cの課税前販売価格(272.25) ………(a)

(a)(a)×税率/10%(27.2)=Cの税込み販売価格(299.5) ………(b)

・CBからの仕入額(181.5)=A(消費財の製造業者)・Bによる付加価値(150)+Bの付加的投入

(仕入れ)コスト(5=110×50%−Bの付加価値〈50〉+A・Bの販売税(26.5) ………(c)

∴Cの 税 込 み 販 売 価 格(299.5)=付 加 価 値 総 額(225)+B・Cの 付 加 的 投 入(仕 入 れ)コ ス ト 総 額

(20.8)+A.Bの販売税(26.5)+Cの販売税(27.2) ………(d)

(Cの税込み販売価格−付加価値総額=74.5)(販売税総額〈53.7〉=付加的投入(仕入れ)コスト総 額(20.8:付加価値総額の9.2%) ………(e)

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

0(530

(12)

税回避のための機会を生み出す。……最初の販売と最終消費者への販売の間の価格差は,多くの場合に 100% あるいはそれ以上とみられている。ある州から集められた情報は,若干の消費財にとって,最初 の時点販売価格と第2の時点販売価格間のギャップが前者の4%〜300% 以上と,様々であることを示し ている」(17)

中央販売税(CST)と 税の輸出 :CSTは,州間で登録取引業者によって売買され る財に課せられる税である。第

6

次憲法改正(1956年)まで,財の州間取引に対する 州政府の課税権限は,海外輸出の場合と同様に憲法(第

301

条,286条)によって認め られていなかった。換言すれば,州間で売買される財への販売税の課税は,仕向け地原 則に基づいて,その財が輸入州内で再!販売される場合にのみ,輸入州政府に認められ た。しかし税制調査委員会(Taxation Enquiry Commission, 1953)の勧告に基づいて,1956 年に上記の憲法改正がなされ,「議会によって法律で州間取引・商業において特別な重 要性を持つと宣言された財の販売あるいは購買への課税」条項が第

286

条に挿入され,

財の州間取引(新聞を除く)への課税は中央政府の権限として 連邦リスト (92 A)

に加えられた。次いで中央政府は,上限税率(当初

1%。その後,段階的に 4% まで引

上げられた)を条件として,CSTの課税・徴税・充当権限を諸州へ移譲した。このよ うにしてインド領内で他州向けに販売される財への課税は,原産地原則に基づく課税

(輸出州政府による)へと転換された。

この理由について次のように指摘されている。CSTの当初の目的は「財の移動における州間取引を追 跡すること」にあったが,「十分に発展した情報システムと州間取引をモニターする諸州の力量の欠如」

の下で,州販売税を逃れるために「州内販売が(無税の−A. N)州間販売としてカムフラージュされた ので,大規模な脱税が生じた。これに対抗するため,多くの州は非居住者である業者から税を徴収する ためのシステム」として,つまり当初の目的から逸脱し,「歳入を高める1手段として,より重要なこと であるが,非居住者に対して税負担を輸出するための1手段として利用されたき

13

た。

こうして原産地原則に基づく

CST

の課税は,現行間接税システムにおいて最終的に 消費財・完成資本財に降りかかる税と販売価格への段ばく(累積)的効果──投入財へ の税の上に税(tax on tax)⇒税に基づく値上げ(mark-up on tax)⇒値上げ額への課税(tax

on mark-ups)──を,州間売買を通じて輸入州へと波及・増幅させる媒介をなすのみな

らず,州産出高(SDP)からみて高所得州から低所得州へ税を輸出する(前者の税収を 増加する)手段となっている。第

4

表によれば,インド

25

州の総人口(約

10

億,1991

年)の

20%,総 SDP(1990−91

年度,経常価格)の

30% を占める高所得州は,各州に

よって徴収された

CST

総額(1988−91年度平均)の

45% を占めている。これに対し

────────────

M. Rao, Reform in Central Sales Tax in the Context of VAT,Economic & Political Weekly(以下,EPW 略称),Feb. 15, 2003, p. 629.

インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 531)1

(13)

て,総人口と

SDP

総額のそれぞれ

44% と 33% を占める低所得州は,CST

総額の

20%

程度の徴収に止まっている。高所得州では,旺盛な州外販売(マハーラーシュトラとグ ジャラートにおける工業製品,パンジャーブとハリヤーナに於ける食糧にみられるよう な)を反映して,総販売税収入に占める

CST

の比重が州内一般販売税(GST)収入の 比重より高い。低所得州はその逆である。低所得州は,ビハールとマデイヤ・プラデー シュのような原料(鉱物・タバコ葉)輸出州を含めて純輸入州(CSTの純支払州)で ある(29)。

M.

ラオ(M. Govinda Rao)は,州間における 税の輸出 による負担分担パターン の

1

指針として,各州における家計消費支出と政府消費(政府による賃金・報酬支払額 を除く)の総額(各州の課税ベースを示す)が

14

州全体の消費額に占める比率漓と,

各州における販売税(GST+CST)徴収額の同徴収総額に占める比率滷との差(滷−

漓)に着目して,その推定結果(1999−2000年度時点)に基づいて次のように指摘して いる。「一般的に,諸州における税のシェアーと消費シェアーの間における差異が,1

4 州別人口,州産出高(SDP),販売税収入(%)

** 人口(1991年) SDP@ G. S. T* C. S. T* A.高所得州

1.マハーラーシュトラ 2.グジャラート 3.ハリヤーナ 4.パンジャーブ

小計 B.中所得州

5.アーンドラ・プラデーシュ 6.カルナータカ

7.ケーララ 8.西ベンガル 9.タミル・ナードゥ

小計 C.低所得州

10.ビハール

11.マディヤ・プラデーシュ 12.オリッサ

13.ウッタル・プラデーシュ 14.ラージャスターン

小計

D.特別範疇州(11州)

小計

9.46 4.95 1.97 2.43 18.80 7.97 5.39 3.49 8.15 6.69 31.68 10.35 7.93 3.79 16.66 6.27 44.00 5.51

15.30 6.81 3.12 4.72 29.95 8.31 5.89 3.17 8.73 6.86 32.95 6.01 6.36 2.74 13.27 4.85 33.23 3.86

17.37 9.57 2.13 3.09 32.16 8.82 7.28 5.57 6.75 11.47 39.89 4.25 4.22 2.21 9.88 4.39 24.95 3.00

21.78 11.89 6.19 5.22 45.08 5.07 7.84 2.87 8.82 9.71 34.31 5.22 6.85 0.56 4.15 1.32 18.10 2.52

25州合計 100.00 100.00 100.00 100.00

注:@SDPは,1990−91年度経常価格での速算値。

G. S. T(一般販売税)とC. S. T(中央販売税)は1988−91年間の平均.

**州分類は第9次財政委員会レポートに拠る.

資料:National Institute of Public Finance and Policy,Reform of Domestic Trade Taxes in India : Issues and Options, Report of a Study Team,p. 30.

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

2(532

(14)

人当たり

SDP

のレベルと共に増大することを示している。その差異は,マハーラーシ ュトラ(5.6ポイント)において最高であり,タミルナードゥ(4.0),グジャラート

(3.0),アーンドラ・プラデーシュ(2.4)とカルナータカ(2.1)がこれに続いた。対照 的に,消費のシェアーは低所得州において税のシェアーより高い。ウッタル・プラデー シュ(−8.0ポイント)が最高の差異を持ち,ビハール(−3.77),マーディア・プラデ ー シ ュ(−2.92),ラ ー ジ ャ ス タ ー ン(−1.56)と オ リ ッ サ(−1.08)が こ れ に 続 い

14

た」。上記滷と漓の差は,各州における実効税率(販売税徴収総額/消費総額×100)の 差に反映している。例えば,タミルナードゥ(14.35%),グジャラート(14.50%),マ ハーラーシュトラ(13.92%)に対して,マディア・プラデーシュ(5.73%),ウッタル

・プラデーシュ(4.98%),ビハール(4.86%).M.ラオは,実効税率における州間差異 が(衢)免税と名目税率における差異;(衫)税行政・実施上の効率の差異;(袁)税負 担の州間輸出に起因するとした上で,「行政的不効率または名目税率・免税の何れか が,制度的に

1

人当たり

SDP

のレベルに関係していると考える理由はない」として,

「段ばく的な税制と結びついた市場の不完全性」に基づく税の輸出にその差異の主要因 を求めてい

15

る。

CST

税制は,それを通じて税収を高める目的で,各州政府による商業・産業誘致政 策を促がし,州間における 税競争(あるいは 税戦争 。各州における販売税率の引 下げ,免税を含むその他の税優遇上の競争)という「ネガティーブ・サム・ゲーム」

(このゲームの敗者は,財政基盤が弱体で商業・産業的インフラの不十分な低所得州で ある)に拍車を掛けた。このような税競争による恣意的な税の操作は,調和のとれた 統一的・中立的な税構造の形成を阻み,また

CST

税制と共に州間所得格差の拡大を助 長し,インド共同(国内)市場の発展にとって重大な桎梏となってきた。

州販売税の引き下げは周辺州から買物客を誘因するため,あるいは州外ショッピングによる税収の喪 失を止めるためにもなされた,ということである(29)

税制改革の現状と課題:インド経済のグローバル化に適合するための経済改革の内

で,税制改革に求められている不可避な基本的課題は,現行の段ばく型の原産地原則ベ ースの間接税制を統一的・中立的で透明性のある単純かつ合理的な消費型付加価値税制 へ転換することである。消費型付加価値税システムにおいて,最終消費財(例えば,綿 織物)の生産・販売段階に先立つ生産・販売段階から購入した投入財(例えば,綿布)

に課せられた税は,最終消費財(綿織物)の販売価格に込められ,当該財の付加価値

(貸金+利潤)部分への税と共に当該財の購入者(例えば,綿織物の卸売り業者あるい

────────────

Ibid.,p. 630.

Do.

インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 533)1

(15)

は小売業者,または直接に最終消費者)から徴集される。このように徴集された税の 内,投入財に支払われた税は,投入財の販売者によって販売時に購入者宛に発行された 送り状(invoice)に基づいて払戻(rebate)される。最終消費財の生産・販売段階に先 行する諸段階においても,同様の方法で投入財(製造において利用された原料,中間投 入財・部品)と完成資本財(機械・設備)へ課せられた税(最終消費財の卸・小売業者 の場合,仕入れ価格への税)がリベートされれば,全体として徴収される税は付加価値 税(VAT)に等しく,付加価値総額=最終消費財価値(総消費支出)であるから,VAT 総額は最終消費財価値×VAT税率に相当する。このように消費型付加価値税制は,イ ンボイスに基くリベート方式(invoice based rebate method)によって最終消費財価値を 課税ベースとする間接税制である。今日,インドにおいて消費型

VAT

の導入について 各界の大枠における合意がなされている。

しかし,VATを中央

VAT

として一本化するか,諸州それぞれが州

VAT

を導入する かについては,インド連邦政体の在り方に関る問題であるだけに,中央と州の間での合 意形成は極めて困難である。また中央と州の両者が課税ベースを共有する共時

VAT

制 度の場合においても,財政政策スタンスの相違により税率の設定,特定税率適用品目・

適用税率のレンジなどをめぐって中央と州の利害対立が生じる恐れがあ

16

る。上記「NIPFP の研究」は,「現行憲法の枠組みの内で,二つのレベルの政府によってそれぞれ別個に

VAT

が課せられる二重システムが,唯一可能な選択肢である」(59)として,中央

VAT

と州

VAT

の二重

VAT

制を提案している。それによれば,この制度は,財とサービス を含む課税ベースに基づく最終的に均一税率の設定,減免税措置・CSTの廃止と共 に,「物品税システムを通じて今日運営されている修正付加価値税(MODVAT)が十全 の製造業者の

VAT(full-fledged manufacturers’ VAT)に変えられ,州もまた今日運営さ

れている無秩序な販売税の替わりに仕向け地ベースの調和のとれた

VAT

システム

(destination-based harmonized system of VAT)を採用するならば,可能となるだろう」

(同上)とされる。以下では,二重

VAT

制を念頭において論述を進める。

物品税の製造業者

VAT(Indirect Taxation Enquiry Committee 1976〈Jha Committee〉

によって構想された

MANVAT)への転換の方向を目指して,中央レベルにおいて若干

の品目を除いて

MODVAT

の包摂範囲の拡大がなされ,事実上,全製造部門がここに 含まれるに至った。1994年以降,資本財に支払われた物品税に対するリベートが認め られた。リベートは,今日,以前には利用できなかった多数の投入財に対して認められ てい

17

る。VAT税率の品目別区分は

9

種目まで引下げられ,課税免除の通達数もまた大

────────────

6 付加価値税(VAT)制とインドにおけるVAT導入をめぐる諸議論について,佐藤隆広『経済開発論―

インドの構造調整計画とグローバリゼーション』世界思想社,35−69ぺージ,参照。

A. Bagchi, Taxation of Goods and Services in India-An Overview, Sudipto Mundle,op. cit.,pp. 129−30.

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

4(534

(16)

幅に引下げられた(しかし尚,それは

200

件を超え

18

る)。

ところで,二重

VAT

制度を通じて中央

VAT

と州

VAT

の統一的な税制度を構築す る前提は,州販売税の州

VAT

への転換と同時に,原産地原則に基く

CST

が廃止さ れ,仕向け地原則に基く

VAT

が導入されることである。これ無しには,現行憲法の枠 内において,中央と州また州相互の間で調和のとれた統一的な財とサービスの課税制度 は見出し得ない。諸州でそれぞれ別個に州

VAT

制度を導入しても,州間売買において

CST

制度が残存する場合,次のように税のカスケージングは解消しない。州外販売

(輸出)州において製造業―輪出業者は,輸出財の生産に利用された投入財に対して支払 った税を輸出販売価格(付加価値+投入財価値+投入財への税)の中に込め,これに

4

%の

CST

を上乗せして販売先(輸入)州で販売する。製造業―輪出業者によって支払わ れた投入財への税に対して,製品の輸出によって製造業―輸出業者が得た当該税分相当 額が彼らへリベートされる。原産地ベースの課税制度の下で州間売買に何らの課税権限 も無い販売先(輸入)州では,輸出州へ支払われた投入税・CST(投入財への税の上に 課せられた税を含む)が,輸入州で再販売する輸入業者へリベートされるメカニズムを 持たない(これらの税は輸入州で購買者から徴収され輸出州へ流出〈spillover〉する)。 言い換えれば,投入税・CST・投入税の上に税という仕方で,輸入州において輸出州へ 支払われる税と輸入価格のカスケードに貫献する)。現行の間接税制度の下では,州政 府は州内再販売額に販売税を課す権限を持つ。この場合にはカスケージングが増幅され る。しかし,州販売税に代えて州

VAT

が適用される場合,再販売される財が投入財で その購買者が製造業者であれば,彼らは投入税のリベートを受けるので,この限りにお いて税のカスケージングは生じない。

これに対して仕向け地原則に基づく場合,海外からの輸入の場合と同様に,州間売買 によって州外から購入される財への州

VAT

は,0税率の適用(輸入額〈または州外 販売額〉×0税率=0)によって無税となる。したがって税のカスケージングは生じな い。即ち,0税率の適用は仕向け地ベース

VAT

の運用メカニズムであり,3者は一体 となって二重

VAT

制度の核を構成している。第

5

表は,州

VAT

と二重

VAT

制度の 運用メカニズムの概念図を示している。

「NIPFPの研究」においてなされた二重

VAT

制度の勧告に注目して,諸州の財務相 の会合において販売税を

VAT

へ転換する合意がなされた。引続いて

9

州の財務相から なる委員会(Empowered Committee)が設立され,同委員会は

2003

4

月から

VAT

を 実施することを決定し,中央政府もまた同様の決定をした,といわれてい

19

る。インド経

────────────

Sukumar Mukhopadhyay, Indirect Taxes-Accounting Exercise, Not Structural Reform,EPW, May 9, 2002, p.

903.

M. Rao, Reform in Central Sales Tax. . . ,op., cit.,p. 627.

インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 535)1

(17)

済のグローバル市場経済化に適合する統一的な連邦

VAT

システムの構築にとって,現 在直面している核心的課題は,原産地原則に基くカスケージング型販売税(CST・州販 売税)を仕向け地原則に基く消費型

VAT

へ転換することである。これによって,現行 間接税制度下で生じてきた経済的歪みが是正されるのみならず,税行政が単純化され,

その透明性,中立性,効率性が保障される。

第 73 次憲法改正法と 農村自治

憲法改正法と農村自治制度(パンチャーヤティ・ラージ):中央政府によるインド経 済のグローバル市場化戦略の推進と並んで,1992年

12

月に第

73

次・74次憲法改正法 案が連邦議会で可決された。本稿で取上げる第

73

次改正法(以下,改正法と略称)に よって,官制(トップ・ダウン)の農村行政機関を農村住民参加型の農村自治機関(the

institutions of panchayati raj〈PRIs〉あるいは panchayats)として機能させるための制度

(農村自治制度〈panchayati raj〉)の枠組みが規定された(改正法第Ⅸ編,パンチャーヤ ト)。改正法は次のような基本的・概念的要素から構成されている。

漓 農村自治制度は,それぞれが開発行政上の自治権限を持つ

3

層のパンチャーヤト

―村落(1村落または複数の村落)・中間(郡)・地区(県)レヴェルのパンチャーヤト

―からなる(243−B条)。それぞれの自治機関の全議席は,人口規模との釣合に配慮し て,それぞれの地域(パンチャーヤトの領域)内の地域選挙区における

5

年毎の直接選 挙によって選ばれた人々によって占められる(243−C条)。社会的公正の観点から,

「社会的弱者」層が開発行政へ直接参加できるよう,指定カースト(SCs)・部族(STs)

に対して,当該パンチャーヤト地域の人口に占めるそれぞれの人口比率に応じて,彼ら

5 仕向け地ベースVTシステムのメカニズム−例示−

消費財製造業者/

卸・小売業者

販売額

(課税前)

CVT*

(10%) 州外販売税 SVT*

(10%)

B州内販売額

(税込) 付加価値額

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)

A州製造業/

州外販売業者 B州卸売業者 B州小売業者

100 160 250

10 0

5.0 7.4

110 176 275

100 50 74

10 0 12.4 224

*CVT(中央付加価値税),SVT(州付加価値税)

販売経路:A州製造業/州外販売業者→B州卸売り業者(課税前販売額+CTV=110);B州卸売 業者→B州小売業者(課税前販売額+SVT=176);B州小売業者→B州消費者(課税前販売価額+

SVT=275)

CTV+SVT=22.4=付加価値額×10%.

B州卸・小売業者の付加価値=販売額(課税前)−仕入額

同志社商学 第56巻 第5・6号(25年3月)

6(536

(18)

のために議席を留保する。直接選挙によって選ばれる全議席数の

3

分の

1

以上を女性の ために留保する(243−D条)。

滷 州議会は,憲法の諸条項に従い法律によって,第

11

付則(第

6

表,参照)に挙 げられている事項を含めて,「パンチャーヤトが自治機関として機能できるために必要 な権限と権能をパンチャーヤトへ移譲することができる」(243−G条)と規定してい る。「地方政府」は,各州の管轄事項として憲法第

246

条第

7

付則の「州リスト(5)」 に挙げられている。それ故,現行連邦政体の枠組みを前提として改正法は,何れの州行 政権限(事業分野)がパンチャーヤトへ移譲されるかに関して,第

11

付則による大ま かな例示に止めて,それらの細目の決定は州議会の裁量に委ねている(後述するよう に,同付則に挙げられている事業分野は,第

7

付則の連邦・州政府の共同リストに挙げ られている多くの分野と重複している)。ただし,州議会・政府の裁量は,パンチャー ヤトがそれぞれのレヴェルで地域住民の必要を考慮して社会的・経済的事業を計画し実 施する環境(例えば,専門家,計画作成者,データ収集員の存在のような)を整えるこ

6 憲法改正法 11付則

(第243−G条)

1)農業・農業普及事業

2)土地改良,土地改革の実施,耕地の統合と土壌保全 3)小規模灌漑,水利管理と流域開発

4)畜産,酪農と養鶏 5)漁業

6)社会植林事業と農園植林 7)小物森産品

8)小規模工業(食品加工業を含む)

9)カーディー,農村家内工業 10)農村住宅供給

11)飲料用水 12)燃料と飼料

13)道路,暗渠,橋,フェリー,水路,その他の交通手段 14)農村電化(配電を含む)

15)非伝統的エネルギー源 16)貧困緩和計画

17)教育(小・中学校を含む)

18)技術訓練と職業教育 19)成人と非公式教育 20)図書館

21)文化活動 22)市場,市

23)保健衛生(病院,初等保健センター,診療所を含む)

24)家族福祉 25)女性と児童の開発

26)社会福祉(身体障害者と知的障害者の福祉を含む)

27)弱者部門,特に指定カースト・部族の福祉 28)公的配給制度

29)コミュニティ資産の保全

インド経済のグローバル化と財行政改革(西口) 537)1

参照

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