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論理的に考え,書きことばで書く中級作文の授業 小池 恵己子

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Academic year: 2021

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97 1.本科目のねらい

 本科目は日本語中級レベルの学生のための作文の授業である。大学生にとってレポート などの論理的な文章を書くことは習得しなければならない技能だが,作文の授業の受講者 全員が日本語でレポートを書く必要があるわけではない。日本語で将来論文やレポートを 書く必要がある人はクラスのおよそ

5

分の

1

の日本語専攻の学生であった(2017年度春 学期)。一方で,将来日本語で書く可能性はないが,日本語で書けるようにしたい,意見 を作文に表したいという希望を持つ学生もいる。将来仕事をする上で日本語を書くことが 必要になると考えている人も多い。日本語でレポートを書かない学生であっても,論理的 に考えて言いたいことを文章にまとめることは中級レベルでも必要なことだと考える。

 本科目では,あるテーマや問題点について,学生自身が自分の意見や考えを論理的な構 成で書きことばを使って文章に表現できることを目指している。また,学生同士が作文の 内容を理解し合い,情報交換をして考えを深めることをもう一つのねらいとしている。

2.授業の概要

 授業ではレポートは書かないが,レポートなどで使われる書きことばに慣れることは 重要なので,自己紹介文以外は普通体で文章を書く。中級学習者は会話によく使われる

「じゃない」「けど」などを使いがちなため,書きことばの定着までには時間がかかる。縦 書き・横書きの句読点や拗音表記などの位置を確認し,また漢字を習得するため,提出は 原稿用紙に手書きを勧めている。

 授業は中級教科書『留学生の日本語②作文編』を主に使用して進めている。作文の提出 は

12

回(課題作文は各回

400

字)で,最後は各自が自由なテーマで意見文(600〜

800

字)

を書く。句読点の打ち方,段落の役割,中心文と支持文の関係などを学んだ後の,課題作 文一回についての授業の流れは基本的には次のとおりである。①作文でポイントとなる文 法事項を復習し,短文を書いて練習する。②課題を理解し,内容を考える。課題によって は話し合うこともある。③翌週の授業で,宿題で書いてきた作文をお互いに読み合い,内 容等を確認する。④学生が書いた作文は教師が添削して翌週返却する。⑤文法や語法など で共通の問題点があればクラス全体で振り返る。⑥学生は作文を見直し,翌週再提出する。

 チェックポイントを事前に確認してから書く意見文は,グループで読んで内容を確認し 合い,さらに,ペアで読んで相手の作文を引用してコメントを書く活動を行っている。

早稲田日本語教育実践研究 第 6 号 【実践紹介】

論理的に考え,書きことばで書く中級作文の授業

小池 恵己子

  科目名:論理的な文章を書くための作文入門   レベル:初級 1・2 /中級 3・4 ・5 /上級 6・7・8   履修者数:31 ~ 35 名

(2)

早稲田日本語教育実践研究 第 6 号/ 2018 / 97―98

98

 作文のテーマには,前掲教科書の「国の特別なもの」,「私が日本へ来るまで」,「ゴミの リサイクルについて」,「日本人について理解できないこと」などがある。これらのテーマ はそれぞれ,助詞相当語,理由・経緯の説明,定義,間接疑問の文法のポイントと対応し ている。最後の意見文は自由テーマで,例えば,日本人の働き方,日本人の曖昧な言動,

電車やバスの中のマナー,なぜ女性客が少ない外食の店があるのかなどがあり,学生は日 本の生活で疑問に思ったことを自国の文化,習慣,考え方と比較して,その理由や意見を 述べていた(2017年度春学期)。

 文章の論理的な展開には段落構成や文と文の関係が重要なポイントになる。教科書の課 題作文は基本的な

3

段落の構成で,テーマによって段落の展開が決められている。学生は 課題と段落構成を理解した上で内容を考え,意見や提案などを文章にまとめている。

 作文で最も気をつけなくてはならないのが引用である。学期の前半では,自分自身や自 国のことなど,ネットなどから引用しなくても済む身近な話題を作文の課題としている。

しかし,学期の後半では,引用は避けて通れない課題であるため,中級段階で引用の意味 を理解し,使い方を学んでおくことは重要である。文末の「〜といえる」「〜といわれて いる」「〜と述べている」を間違えるとだれの意見かわからなくなってしまう。そこで,

授業では例文を読み,事実か意見か,他者が考えたことか筆者の意見か,あるいは一般的 な見方かを区別する練習をしている。その上で,複数のジュニア新書などの文章から,各 自好きなテーマを選び,原文を引用して意見を書く練習を行っている。

3.学生の学びと今後の課題

 自己紹介文以外は,文末を普通体で練習するので,学生は普通体で書くことに次第に慣 れていく。全課題を提出した学生はレポートなどで使われる文体に慣れ,書きことばを 学んだという実感があるようだ。また,教師が添削で細かくチェックするのは役に立つと いった声もある。教師は学生の表現意図を探りつつ添削を行っているが,文法に関する修 正だけでなく,文の順序や段落構成にも注意を促し,必要があれば他の表現を紹介し,簡 単なコメントを加えている。添削は,学生が文脈に合った適切な単語や表現を見出せない 場合や,添削された箇所を自分で再考して書き直した場合に効果があるのだと思う。添削 は教師から学生への一方的な伝達になるため,学生との話し合いの場が必要である。しか し,多人数のクラスでは一人一人に十分な検討の時間を取るのが非常に難しい。その一方 で学生同士で作文を読む過程で学生自身がミスに気づいて修正することもある。学生が自 己修正できる力をつけられるように,学生の振り返りを促す工夫を今後の課題としたい。

 今後も,学生が引用の仕方を理解し,適切に使えるようにしていきたい。作文を書き,

相互に読むことで,学生には柔軟な思考と多様な見方を身につけてほしいと願っている。

参考文献

アカデミック・ジャパニーズ研究会(2015)『改訂版

大学・大学院留学生の日本語②作文編』アルク

(こいけ えみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)

参照

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