都 市 の 「隙間」 に住 ま う
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都 市 の 「隙 間 」 に住 ま う
一 名古 屋 市 にお け るホ ー ム レス の居 住 実践 に 関す る一考 察 一
二文字屋 脩
さあ痩 よ ラ 夢 の 中 でぱ っ 釧 作:沢 野 健 草
[ビ ッ グイ シ ュー 日本 編 集 部(編)2010:85]
1序
c
1「 路 上 に住 ま う」 とい う こ と
本 稿 は、 愛 知 県 名 古 屋 市 で の実 地 調 査 を も とに 、 一 般 的 に 「ホ ー ム レス 」 と呼 ばれ る人 び との 日常 生 活 の重 要 な一 側 面 を構 成 す る居 住 実践 につ い て 考 察 す る も の で あ る。 また 本 稿 で は、 近 年 の動 向 で あ る 「ホ ー ム レス の不 可 視 化 」 も視 野 に 入 れ 、 居 住 実 践 の 基 本 的 特 徴 とそ の変 容 につ い て考 察 す る。
1990年 代 初 頭 、 い わ ゆ る 「バ ブ ル経 済 崩 壊 」 に直 面 した 日本 で は 、 多 くの 労 働 者 が 職 を失 い、 住 居 を失 っ た 。 だ が 「ホー ム レス」1)と い う言葉 が 指 し示 す 路 上 生 活 者 な る存 在 は、 何 も90年 代 以 降 に特 有 の 存 在 で は な く、 そ れ以 前 は 「浮 浪 者 」 や 「ル ンペ ン」 とい っ た 言 葉 が 一 般 的 で あ り、 「ホ ー ム レス 」 は単 に そ れ らの 言 い 換 え に過 ぎな い[西 澤1997:79]。 ま た社 会 学 者 の 中根 が 指摘 す る よ う に、 「ホ ー ム レ ス」 とは 、 そ れ ま で の 「浮 浪 者 対 策 」 や 「寄 せ 場 対 策 」 の劣 悪 さ を隠 蔽 す る た め に設 け られ た社 会 問題 カ テ ゴ リー で も あ り[中 根1998;1999;
2002]、 決 し て 「新 しい 問題 」[東 京 都 企 画 審 議 室1995]で は な い2)。 む しろ こ の よ うな 存 在 は、 資本 主 義 社 会 の所 産 で あ り[青 木1989:108]、 貧 困 の 主 要 な 一 タイ プ と され る[岩 田2007:99] 。
ホ ー ム レス に と って 、公 園 や 駅 舎 、地 下 道 、河 川 敷 、高 架 下 とい っ た 「路 上(the street)」は主 要 な起 居 の場 で あ り、重 要 な 「生 存 ニ ッチ(survivalniche)」[Hopper 1991]で あ る。 そ れ は都 市 的 空 間の 一 部 を構 成 して お り、都 市 に散 在 して い るが 、 ホ ー ム レス に とっ て 「路 上 」 は、 社 会 生 活 の基 点 とな る重 要 な空 間 で あ る 。 しか しそ こは住 ま うに は 安 定 的 な空 間 で は ない 。 なぜ な ら 「路 上 」 とは本 来、 私 有 化 す る こ との 許 され な い 公 共 空 間 だ か らで あ る。 と くに都 市 的空 間 か らの 「追 い 出 し」 とい っ た ホ ー ム レス の空 間 的 排 除 は、 「住 ま う」 こ とで 成 立 す る社 会 生 活 を
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都市 の 「隙 間」 に住 まう奪 う もの で あ る。 したが っ て、ホ ー ム レス の居 住 実践 は 、「移 転(displacement)」
の 可 能性 を常 に抱 えて お り、 故 に 「路 上 」 と は様 々 な ポ リテ ィク ス がせ め ぎ合 う 場 で あ る とい え よ う[中 根1998]。
「住 ま う」 とい う行 為 は 、 まず もっ て 居 住 地 の選 択 か ら始 ま る。 また そ の選 択 要 件 は、 「温 い/涼 しい」 や 「人 気 が 少 ない 」、 「仕 事 に 好 都 合 」 とい っ た、 生 活 の安 全 性 や利 便 性 を優 先 とす る もの で あ る。 確 か に、 一 見 す る とこ れ らは一 般 的 な 「住 まい探 し」 と何 ら変 わ らぬ もの で あ るが 、 ホ ー ム レス を取 り巻 く社 会 環 境 が 「他 者 の場 所 」 と して の 「路 上 」 で あ る とい う こ とが 、 ホ ー ム レス の居 住 実 践 を強 く規 定 して い る。 しか した とえ そ こが 「路 上 」 で あ ろ う と も、 生 きて い くた め に は住 ま わ な け れ ば な らな い。 した が っ て 問 わ れ るべ き は、 空 間 的 排 除 とい う 潜 在 的 危 機 に晒 され なが ら も、 どの よ うに して 「路 上 」 に住 ま うの か とい う問 い で あ り、本稿 は これ に 答 え よ う とす る もの で あ る3)。 そ こで 本稿 は、 ド・セ ル トー が 概 念 化 した こ と で広 く知 られ る 「戦 略(strategy)」 と 「戦 術(tactics)」 の 二 つ の 概 念 を手 が か りに、 ホー ム レス を取 り巻 く社 会 環 境 と、 そ こで の ホ ー ム レス の 居 住 実 践 を分析 す る。
ド ・セ ル トー の い う 「戦 略 」 と は、 意 志 と権 力 を もっ た主 体 の 「もの の や りか た 」 をい う[ド ・セ ル トー1987:25‑27]。 そ れ は社 会 環 境 か ら独 立 した 主 体 が 、
自己 に 「固 有 の 場所 」 で そ の 権 力 を行 使 す る こ とで あ り、 したが っ て本 稿 に お い て 「戦 略 」 とは 、 法 的 正 当性 を付 与 され た 「行 政 」 とい う主 体 に よ る、 空 間 的排 除 を め ぐる権 力 の行 使 を指 す4)。 そ して一 方 の 「戦術 」と は、固有 の場 所 を持 た ず 、 他 者 の場 所 で機 会 が あ れ ば 有益 な もの を得 よ う とす る 「もの の や りか た」 を い う [ド ・セ ル トー1987:25‑27]。 これ は大 抵 の 日常 的 実践 を構 成 し、 制 度 的 な重 圧 の な か に あ っ て、す な わ ち 「他 者 の 場 所 」(戦 略 的 主 体 に と って の 「固 有 の 場 所 」) に あ っ て 、 組 み換 え操 作(operation)を 行 い な が ら他 者 の 意 図 を ず ら し行 わ れ る実 践 で あ る。 したが っ て こ こ で の 「戦 術 」 とは 、「固有 の場 所 」 を もた な い ホ ー ム レス が 、 「路 上 」 とい う 「他 者 の 場 所 」 に お い て 居 住 を 可 能 にす る た め に 行 う 諸 実 践 を指 して い る。
しか し なが ら、 本 稿 が 注 目す るの は、 こ れ ら二 つ の概 念 そ れ 自体 で は な く、 両 者 の 関 係 性 で あ る。 なぜ な ら 「戦 術 」 は 「戦 略 」 との 関係 性 に お い て 初 め て 意 味 を もつ概 念 で あ り、 「戦 略 」 を支 え て い る知 とそ の 行 使 に 対 して 、 「戦 術 」 が如 何 な る実 践 を創 発 的(ポ イ エ テ ィー ク)に 紡 ぎ 出 して い る の か と問 うこ とが、 ホ ー ム レス の 生 の 具体 的 諸相 を捕 捉 す る重 要 な契 機 と な る と考 え られ る か らで あ る。
そ こで 本 稿 で は、次 節 に て、本 稿 で用 い る 「ホ ー ム レス 」概 念 を分 析 的 に 考 察 し、
また調 査 地 につ い て簡 単 に紹 介 した 上 で 、 次 章 にて 、 名 古 屋 市 行 政 に よ る ホ ー ム レス の空 間 的排 除 とそ の論 理 を事 例 に 、「路 上 」 にお け る 「戦 略 」 を考 察 し、ホ ー
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ム レス の 居 住 実 践 を 取 り巻 く社 会 環 境 の基 本 的特 徴 を 明 らか に す る(egll章)。
そ の う え で、 ホ ー ム レス の居 住 実践 に つ い て 、 フ ィー ル ド ・デ ー タ を基 に明 らか に し、 考 察 を進 め る(第 皿章)。 なお 、 本 稿 の 事 例 は、 名 古 屋 市 の ほ ぼ 中 心 に位 置 す る 中 区、 東 区 、 昭 和 区 で の、2007年8月 か ら9月 の約 一 ヶ 月 間 の 住 み 込 み 調 査 と、 そ れ 以 後 か ら現 在(2011年1月)に 至 る ま で の 、 計30回 に わ た る 短 期 の 住 み 込 み 調 査(各 調 査 期 間 は五 日間 か ら一 週 問程 度)か ら得 た もの で あ る。 ま た、調 査 中 は 支援 活 動 に 部 分 的 に関 わ って い る もの の、これ らの 調 査 は す べ て 、「学 術 調 査 」 と して調 査 対 象 者 の承 諾 を得 て行 っ た もの で あ る 。
2「 ホ ー ム レ ス 」 概 念 の ジ レ ン マ
既 に 一 般 用 語 化 し た 「ホ ー ム レ ス 」 を 、 有 益 な 分 析 概 念 と し て 構 築 し 直 す こ と は 非 常 に 困 難 な 作 業 で あ る 。 そ れ は ま ず も っ て 、 概 念 定 義 が 通 文 化 的 に 多 様 で あ り、 ま た そ の 実 態 も 一 語 で 片 付 け ら れ る ほ ど単 純 な も の で は な い か ら で あ る 。 そ こ で 本 節 で は 、 日 本 と 欧 米 の 「ホ ー ム レ ス 」 概 念 を 簡 単 に 比 較 し、 「野 宿 者 」 を 用 い る 日 本 の 社 会 学 的 研 究 の 議 論 を 踏 ま え つ つ 、 こ の 概 念 の ジ レ ン マ に つ い て 若 干 の 考 察 を 試 み た い 。
「ホ ー ム レ ス 」 の 輸 入 元 で あ る 欧 米 に お い て,'ho〃zelessPeoPle"は 、 日 本 の そ れ よ り も広 い 意 味 を 持 つ も の と し て 一 般 的 に 使 用 さ れ て い る 。 そ も そ もt'home"
を 否 定 す る"home‑less"と い う 形 容 詞 は 、 「ホ ー ム レ ス 状 態(homelessness)に あ る 人 び と」、 つ ま り安 定 し た 住 居 を 持 た ず 、 身 の 安 全 を 脅 か さ れ て い る 人 び と の こ と を 指 す 。 し た が っ て 路 上 生 活 だ け で な く、 シ ェ ル タ ー 生 活 や ト レ ー ラ ー 生 活 、 友 人 宅 で の 居 候 な ど も、 こ の 言 葉 は 包 括 し て い る[小 玉 ほ か2003]。 ま た 、 例 え ば イ ギ リ ス で は 、"homelessPeoPle"の う ち 、 単 身 の ホ ー ム レ ス を"single homeless"と 呼 び 、 そ の 一 形 態 で あ る 路 上 生 活 者 を"アoughsleePer"と 呼 ぶ よ う に 、 そ れ は 日本 の 「ホ ー ム レ ス 」 の よ う な 単 層 的 な 概 念 で は な い 。
し か し な が ら 、 こ れ ら 「ホ ー ム レ ス 」 を め ぐ る 多 様 な 概 念 と そ の 定 義 は 、 何 も 欧 米 全 体 で 統 一 的 な も の で は な く、 何 を 「ホ ー ム 」 とす る か に つ い て も一 様 で は な い 。 た だ 、 少 な く と も 「都 市 公 園 、 河 川 、 道 路 、 駅 舎 そ の 他 の 施 設 を 故 な く起 居 の 場 所 と し、 日常 生 活 を 営 ん で い る 者 」(第 二 条)と い う 「ホ ー ム レ ス の 自 立 の 支i援等 に 関 す る 特 別 措 置 法 」(平 成14年 法 律 第105号 。 以 下 、 「自 立 支i援法 」
とす る)の 定 義 は 、 欧 米 に 比 し て 非 常 に 狭 い も の と 言 え る 。
寄 せ 場(労 働 者)研 究 な い し野 宿 者 研 究 の 代 表 的 論 者 で あ る 青 木 が い う よ う に 、
「形 成 過 程 や 存 在 様 式 、抱 え る 問 題 の 性 質 に お い て 、野 宿 者 は 、欧 米 や 途 上 国 の ホ ー ム レ ス と は 異 な る 」[青 木2000:102]。 し た が っ て 日 本 の そ れ に は ネ ッ トカ フ ェ 難 民 や 飯 場 生 活 者 、 施 設 入 所 者 、 無 料 低 額 宿 泊 所 利 用 者 な ど は 含 ま れ ず 、 「ホ ー
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都 市 の 「隙間 」 に住 ま うム レス」 概 念 の み に依 拠 した 単純 な 通 文 化 的研 究 は困 難 か つ 、 あ ま り生 産 的 な も の で は ない 。 なぜ な ら、 「ホ ー ム レス 」 は 「日本 の 野 宿 者 の 分 析 概 念 と して あ ま り用 を な さな い」[青 木2000:102]か らで あ る。
そ こ で 日本 の 社 会 学 的研 究 に お い て は 、 も っ ぱ ら 「野 宿 者 」 が 分 析 概 念 と し て用 い られ て い る。 こ れ に関 して再 び 青 木 を 引用 す れ ば、 「結 局 一 番 肝 心 な こ と は、 野 宿 を強 い ら れ て い る 問 題 の核 心 を ど う考 え る か とい う こ と にあ る」[青 木 2000:104]。 この 一 文 に は、社 会 学 的研 究 の も っ と も基 本 的 な態 度 が 認 め られ る が 、
同 じ頁 で 青 木 は、 「野 宿 の 背 景 と中 身 の 多 様 性 をで き る だ け 豊 か に取 り出 す 道 を 確 保 して お きた い 」[青 木2000:104]と い う理 由 か ら、 「野 宿 とい う現 前 の事 実 」
とい う一 点 にお い て 「野 宿 者 」 を定 義 づ け て い る5)。 だが 「ホ ー ム レス 」 と呼 ば れ る 人 び と の 「生 き られ た経 験(livedexperiences)」 に 、 よ り強 い 関 心 を示 す 人 類 学 に とっ て 、 「野 宿 者 」 を 「ホ ー ム レ ス」 に代 わ る分 析 概 念 と して用 い る こ と は、 か え って この 概 念 に投 影 され た 「現 実 」 を看 過 す る こ とに な る よ う に思 わ れ る。 な ぜ な ら 「ホ ー ム レス 」 は、 そ の よ うに呼 ば れ る人 び とに よっ て も用 い ら れ る、 「生 きた 概 念 」 だ か らで あ り、 彼 らの 日常 的 経 験 を解 釈 す る 上 で 重 要 な 鍵 概 念 だ か らで あ る[cf二 文 字屋2011]。
至極 当 然 の こ とだ が 、 あ らゆ る概 念 は言 語 的 拘 束 を受 け る。 例 え ば、 英 語 で い う と こ ろ の"home"は 、 一 般 的 に 「家 庭 」 や 「家 庭 生 活 」 と い っ た社 会 学 的 意 味 を もち 、 一 方"house"は 「家 屋 」、 「住 宅 」 とい った 建 築 学 的 意 味 を もつ 。 そ の意 味 で"homelessPeoPle"と は 、 単 に住 居 の 喪 失 を 意 味 して い る だ け で は な く、 家 族 や 親族 との血 縁 的紐 帯 をは じめ とす る、 他 者 と社 会 関係 を築 い て い く基 点 とな る場 の喪 失 を も意 味 して い る の で あ る[岩 田2000]6)。 しか し 日本 語 の 「ホ ー ム 」 は そ う した 現 在 の英 語 的 意 味 合 い を含 み つ つ も、 「ホ ー ム レス」 の 「ホ ー ム」 に 限 っ て は、"house"に 近 い 意 味 で 認 識 され て お り、 そ の 点 で 、 英 語 で い う と こ ろ の"home"と は ニ ュ ア ンス が 大 き く異 な る 。 つ ま りこ の概 念 の 使 用 に伴 う ジ レ ン マ とは、 英 語 の意 味論 的拘 束 と、 日本 語 の 語 用 論 的 拘 束 との 間 に ズ レが あ る の で あ る。
だが 英 語 に よ る思 考 型 が 必 ず し も人類 社 会 全 体 の 説 明 や 概 念 化 に適 して い る わ け で は な い と い う リ ーチ の 問題 提 起 を 思 い起 こせ ば[リ ー チ1974]、 「ホ ー ム レス 」 の 語 源 を英 語 的 思 考 型 に求 め る必 要 は必 ず し もな い 。 した が って 「住 居 を喪 失 し た人 び と(つ ま り、 野 宿 して い る人 び と)」 と して 口本 社 会 で流 通 して い る 以 上 、 英 語 か ら日本 語 へ の 変 換 に は成 功 した が 、翻 訳 に は 失 敗 した 「ホ ー ム レス 」 そ れ 自体 が 概 念 と して 妥 当 か ど うか を 問 い、定 義 を試 み る こ と よ り も、この 概 念 を 「誰 が どの よ う な意 味 で どの よ う に使 用 して い る の か 」 と問 う こ とが 重 要 と な る。 と くに 「ホ ー ム レス 」 と呼 ばれ る人 び とを 中心 的 な対 象 とす る 人類 学 に と って 重 要
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な の は、 「ホ ー ム レス で あ る こ と」 の 経 験 とそ の解 釈 にお い て 、 これ を分 析 概 念 と して 定 置 す る こ とで あ る。 なぜ な ら、 「社 会 人 類 学 の い か な る 〈分 析 概 念 〉 も、
そ の 概 念 を生 成 し所 有 す る民 族 の言 語 的、 文 化 的知 識 の特 質 を ぬ きに して成 立 す る こ と はで き ない 」[渡 邊1990:77]か らで あ る。
も ち ろ ん概 念 と現 実 は必 ず しも一 致 す る もの で は な い。と くに「ホ ー ム レス」は、
既 に様 々 な社 会 通 念 が 付 与 さ れ た、 手 垢 のつ い た概 念 で あ る 。 しか しあ え て こ の 概 念 を用 い る こ とで 、 そ の文 脈 にお い て 「ホ ー ム レス」 概 念 の 実体 的側 面 を照 射 し、 ホー ム レス を取 り巻 く社 会 環 境 と、 ホ ー ム レス の経 験 世 界 を 明 らか に して い くこ とが 、 「ホ ー ム レス の 人 類 学 的研 究 」 に は 必 要 で あ る よ うに 思 わ れ る。 そ の ため 本 稿 で は、 路 上 生 活 な い し野 宿 生 活 とい っ た客 観 的側 面 と と もに、 自己 同一 性 の 一 部 と して 「ホ ー ム レス で あ る こ と」を 自認 す る主 観 的 側 面 の 二 つ を重 視 し、
「ホ ー ム レス 」 を 分析 概 念 と して 用 い る こ と とす る。
3調 査 地 概 要
愛 知 県 の 県 庁 所 在 地 で もあ る名 古 屋 市 は、 東 京 都 と京 都 府 の 問 に あ る こ とか ら
「中 京 」 と も呼 ば れ る、 中部 地 方 の 中枢 都 市 で あ る。JR名 古 屋 駅9)南 側 に は名 古 屋 中公 共 職 業 安 定 所(通 称:中 職 安)が あ り、 ドヤ街 の な い 「笹 島 」 と呼 ば れ る 寄 せ 場 が あ る7)。
現 在 は大 阪 ・釜 ヶ崎 や 東 京 ・山谷 、 横 浜 ・寿 とい っ た他 の寄 せ 場 と同様 に 、 日 雇 労 働 者 の活 気 に満 ち た雰 囲気 な どは な く、 二 、 三 人 の 手 配 師 が 、 毎朝 歩 道 で 数 人 の 日雇 労 働 者 の就 労 を仲 介 して い る だ け で あ る。 また簡 易 宿 泊所 が軒 を 連 ね る ドヤ 街 が な い こ とか ら、 名 古 屋 市 で は他 市 に比 べ て ホ ー ム レス が広 範 囲 に散 在 し てお り、名古 屋 市 で は と くに 若 宮 大 通 公 園 や 久 屋 大 通 公 園 、鶴 舞公 園 、中村 公 園 、 名 城 公 園 、 名 古 屋 駅 、 金 山地 区周 辺 、 熱 田神 宮 とい っ た都 市 中心 部 に 、 ホ ー ム レ ス が 多 く居 住 す る(図1)。
2002年 の 自立 支 援 法 の 公 布 ・施 行 を 受 け て 、 「ホ ー ム レス の 実 態 を把 握 す る た め の全 国 調 査 」 が 翌 年2003年 に 実 施 され 、 全 国 で 確 認 され た25296人 の う ち、
名 古 屋 市 で は大 阪 市 、 東 京 都23区 に 次 ぐ、1,788人 が 確 認 さ れ た[厚 生 労 働 省 2003]。 また こ の全 国 調 査 は、 自立 支 援 法 の 政 策 評 価 の た め2007年 に も行 わ れ 、 そ の 後2008年 か ら2010年 ま で に計3回 の概 数調 査 が行 わ れ て い る 。 これ らの調 査 に よ れ ば、 名 古 屋 市 の ホ ー ム レス 数 は 、2007年 に741人 、2008年 に608人 、 2009年 に641人 、2010年 に502人[厚 生 労 働 省2007;2008;2009;2010]が 確 認 され 、そ の 数 は減 少 傾 向 に あ る こ とが示 さ れ て い る8)。 ま た これ らの 調 査 で は、
ホ ー ム レス 数 の 減 少 傾 向が 指 摘 さ れ る と同 時 に、 ホ ー ム レス の 高齢 化 や居 住 地 の 変化 、 野 宿 期 間 の 長 期 化 が 指 摘 さ れ て い る。 全 国調 査 の調 査 結 果 を 総 じて い うな
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都市 の 「隙 間」 に住 ま う金山地区熱田神宮 名城公園
図1名 古 屋 市 内、 と くに 中心 部 に お ける ホ ー ム レス の 主 な居 住 地
らば 、近 年 の ホ ー ム レス の諸 相 は 、一 般 的 な イ メ ー ジ で あ る 「単 身 の 中 高年 男 性 」 に大 方合 致 す る もの の 、 野宿 生 活 の 長 期 化 とそ れ に よ る高 齢 化 が 進 ん で い る。 さ 、 ら に これ に加 え、社 会 運 動 家 の 笠 井 が 「ニ ュ ー ・ホ ー ム レス 」[笠 井1995]と 呼 ん だ 、寄 せ 場 とい う特 殊 な労 働 市 場 を経 由 して い な い ホ ー ム レス が増 加 して お り、
特 に近 年 で は 「派 遣切 り」 な ど に よ る失 業 者 の ホ ー ム レス 化 が 目立 つ 。 名 古 屋 市 に居 住 す るホ ー ム レス も また 、こ う した状 況 と大 体 に お い て合 致 す る とい え よ う。
IIホ ー ム レ ス と 都 市
本 章 で は 「戦 略 」 の 具体 的 諸 相 をみ てい く。 と くに 自立 支 援 法 に基 づ き策 定 さ れ た 名 古屋 市 の ホ ー ム レス 対 策 と、 そ れ に準 拠 して行 わ れ る行 政 に よ る空 間 的排 除 につ い て 論 じ、 ホ ー ム レス の 居 住 実 践 を取 り巻 く社 会 環 境 につ い て 明 らか にす
る。
1名 古 屋 市 の ホ ー ム レス対 策
自立 支援 法 の 制 定 を受 け て 、 名 古 屋 市 は市 内 の実 情 に応 じた 自立 支 援 の実 施 計
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画 を策 定 す る こ と と な り、2004年7月 、5年 間 を計 画期 間 とす る 「名 古屋 市 ホ ー ム レス の 自立 の 支 援 等 に 関 す る実 施 計 画 」(以 下 、 「実 施 計 画 」 とす る)[名 古屋 市 役 所2004]を 策 定 した。 当 計 画 は現 在 、 第2期 目 と し て継 続 中 で あ る[名 古 屋 市 役 所2009]。
しか し名 古 屋 市 で は、 自立 支i援法 の 制 定 に 先 立 ち、2001年 に 「名 古 屋 市 ホ ー ム レス 援 護 施 策 推 進 本 部 」 が 設 け られ る な ど、 既 に ホ ー ム レス対 策 が行 わ れ て い た 。 ま た、2002年 秋 に は 白川 公 園 及 び若 宮 大 通 公 園 に住 む ホ ー ム レス を入 所 対 象 者 と した 「白川 公 園 前 宿 泊 所 」(定 員150名 、5年 間 限 定 の 設 置 の た め2007年
に廃 止)が 中 村 区 に、 そ して 「自立 支 援 セ ン ター あ つ た 」 が 熱 田 区 に 設 置 され て い る。 これ ら は民 間 社 会 福 祉 法 人 に運 営 が 委 託 さ れ た施 設 で あ り、 前 者 は 「公 園 等 で 起 居 して い るホ ー ム レス 」 を対 象 に 「保 護 」 と 「公 正 」 を 目的 と した もの で あ るの に対 し、後 者 は 「就 労 意欲 及 び 能 力 を有 す るホ ー ム レス 」 を対 象 に 「自立 」
を 目 的 と した もの で あ る。 さ ら に こ れ ら両 施 設 に加 え 、2004年 春 に は 名 城 公 園 と久 屋 大 通 公 園 に住 む ホ ー ム レ ス を対 象 に 「名 城 公 園 宿 泊 所 」(定 員200人 、 運 営 期 間 を2013年 ま で延 長)が 、そ して 中村 区 に 「自立 支 援 セ ン ター な か む ら」(定 員72名)が 設 置 さ れ、 現 在 で も運 営 され て い る。
実 施 計 画 は 現 在 、 こ う した 施 設 を活 用 しつ つ 、 自立 支 援 法 に則 っ た 支援策 を試 み て い るが 、 そ こで 目指 さ れ て い る の は 、 「就 労 に よ る 自立 」 と 「福 祉 等 の援 護 に よ る 自立 」 で あ る。 実 施 計 画 は こ れ らを 軸 に、 「住 ま い の確 保 」 「雇 用 の確 保 」
「心 身 の健 康 回 復 」、 「ホ ー ム レ ス に対 す る相 談 ・援 護 」 「ホ ー ム レ ス の 人権 擁 護 」
「地 域 にお け る生 活 環 境 の改 善 」 「国 ・県 ・経 済 団 体 等 との 連 携 及 び市 民 との 連 携 」 を 実 際 的 な取 り組 み と して 提 示 して い る[名 古 屋 市 役 所2004]。
この よ うに 見 て み る と、 名 古 屋 市 で は ホ ー ム レス対 策 が十 全 に行 わ れ て い る よ うに 思 わ れ る 。 しか し主 と して 「就 労 に よ る 自立 」 が 目指 さ れ な が ら も、施 設 入 所 期 間 は い ず れ も原 則6ヶ 月 と短 く、 ま た何 よ り も就 労 自体 が 困難 な 昨今 の経 済 状 況 にお い て、 「就 労 に よ る 自立 」 が 十 分 に達 成 され て い る とは 言 い 難 い。 とい うの も、 「自立 」 に含 ま れ る具 体 的 な就 労 形 態 や、 自立 的 生 活 の 基 盤 が 確 保 さ れ た そ の後 の状 況 な どが 正確 に把 握 され て お らず 、 ま た 「自立 」 の定 義 が不 透 明 で あ り、統 計 デ ー タの 信 愚 性 は低 い か らで あ る 。 実 際 に 、行 政 の援 助 を受 け たが 諸 々 の 理 由 で 路 上 生 活 に 戻 っ た ホ ー ム レス が い る こ とか ら も、 「自立 」 が ど こ ま で達 成 さ れ た か に つ い て 、 そ の 不 明 性 は依 然 と して拭 い去 れ な い。
2ホ ー ム レス対 策 の 二 面性
名古 屋 市 の 実 施 計 画 に示 さ れ た ホ ー ム レス の 自立 支 援 は 、 「自立 」 に よ る 「社 会 生 活 へ の 復 帰 」 を 目指 す もの で あ る。 した が っ て 、 実 施 計 画 で は住 居 や仕 事 、
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都 市 の 「隙 間」 に住 ま う健 康 とい っ た、 経 済 的 基 盤 に 由 来 す る基 本 的 な 生 活 基 盤 を有 して い な い こ とに 、 ホ ー ム レス が 「ホ ー ム レス」 で あ る こ との 理 由 が 求 め られ て い る わ け だが 、 これ は逆 に 言 え ば、 就 労 を 通 じた 経 済 的 自立 に よる 住 居 の 確 保 こそ が 、 「社 会 生 活 へ の 復 帰 」 とみ な され て い る とい う こ とで もあ る。
ホ ー ム レス 対 策 は 基 本 的 に 「包 摂 」 と 「排 除 」 の 二 面 性 を もつ[北 川2005]。
例 え ば 自立 支 援 の 中心 的 施 策 で あ る 緊急 一 時宿 泊 施 設(シ ェル ター)と 自立 支 援 事 業 施 設 で は、 稼 働 能 力 が あ り、 かつ 就 労 に よる 自立 の 意 思 が あ る と され た 該 当 者 は 「就 労 に よ る 自立 」 に向 け た支 援 を受 け る こ とが で き るが(=包 摂)、 他 方 、 非 該 当 者 は支 援 の 対 象 か ら外 さ れ、入 所 期 間が 終 わ る と路 上 生 活 へ と戻 さ れ る(=
排 除)。 また 社 会 学 者 の 妻 木 が 指 摘 す る よ うに 、 自立 支 援 事 業 施 設 へ の 入 所 を拒 否 して 路 上 生 活 を続 け る とい う行 為 は 「社 会 生 活 の拒 否 」9)と み な され 、矯 正 な い し排 除 の 対 象 と な る[妻 木2003]。 つ ま り 「保 護 」 や 「支 援 」 に対 して路 上 生 活 を続 け る とい う選択 は 「非 合 理 的 」 と して、 市 民 社 会 か らの 「逸 脱 」 とみ な さ れ る の で あ る。 そ して 「社 会 生 活 を拒 否 す る 者 」、 す な わ ち 自 立 支 援 を受 けず に 路 上 生 活 を続 け る ホ ー ム レス は 、 「追 い 出 し」 の対 象 と して 空 間 的排 除 を受 け る こ と とな る。 「追 い 出 し」と は、「路 上 」に設 置 され た テ ン トや 小 屋 を撤 去 して ホ ー ム レス を空 間 的 に排 除す る こ とで あ り、 行 政 代 執 行 に よ る強 制 撤 去 な ど もこ れ に 含 ま れ るIo)。
「追 い 出 し」 が 拠 り所 とす るの は、 「都 市 公 園 そ の 他 の 公 共 の 用 に供 す る施 設 を 管 理 す る者 は、 当該 施 設 を ホ ー ム レス が起 居 の 場 所 とす る こ と に よ りそ の 適 正 が 妨 げ られ て い る と きは、(中 略)法 令 の 規 定 に基 づ き、 当 該 施 設 の適 正 な 利 用 を 確 保 す るた め に必 要 な措 置 を と る もの とす る」 とい う 自立 支 援 法 の 第 十 一 条 で あ る[厚 生 労 働 省2002]。 「他 に住 む とこ ろ が な い 」 と は極 端 な物 言 い で は あ るが 、 しか しホ ー ム レス に とっ て住 む こ との で き る場 所 が 「路 上 」 で あ る 以 上 、 「追 い 出 し」 は 何 よ りも まず 生 存 の 危 機 を意 味 す る。
で は 「追 い 出 し」 は 如何 な る論 理 を以 って して行 わ れ る の だ ろ うか 。 こ こで は 2008年2月25日 に 、 名 古 屋 市 で も一 際 ホ ー ム レ ス が多 く居 住 す る若 宮 大 通 公 園 で の緑 政 土 木 局緑 地管 理 課 と中 土 木 事 務 所(以 下 、 両 者 を あ え て 区別 せ ず に 「緑 政 土 木 局」 とす る)に よる 「追 い 出 し」 を事 例 に見 て い きた い(写 真1)。
2008年1月31日 、緑 政 土 木 局 は 若 宮 大 通 公 園 に住 む ホ ー ム レス ら に対 し 「2 月半 ば に植 栽 工 事 をす る」 と通 知 し、2月18日 に は突 然 、 「25日 に南 側 の植 樹帯 の植 栽 工 事 をす る」 と具 体 的 な 日時 と工 事 場 所 を通 知 した 。 通 知 の 方 法 は、 工 事 の対 象 区 画 に あ る ホ ー ム レス の テ ン トや荷 物 に貼 り紙 をす る とい う も の で あ る 。 当事 者 と支 援 者 は こ れ を 「追 い 出 し」 で あ る と して す ぐ さ ま反 応 し、 工 事 予 定 日
!で あ る25日 に若 宮 大 通 公 園 に 集 ま り、抗 議 活 動 を行 っ た。
都 市 の 「隙 間」 に住 ま う
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抗 議 に対 して緑 政 土 木 局 は、 植 栽 工 事 は行 政 事 業 の一 環 で あ り、 また そ の 目的 は 「公 共 施 設 や 公 共 空 間 の 利 用 適 正 化 と美 化 」 で あ る と して施 工 の 正 当性 を 強調 し、 「そ もそ も公 共 空 間 で あ る公 園 内 に私 物 を置 き、 テ ン トを 設 置 す る こ とは不 当 で あ る」 と最 後 に付 け 加 えた 。 そ して こ れ に対 し抗 議 の声 が 上 が る と、 す ぐ さ ま、 「だ か ら行 政 側 と して は 、 シ ェ ル ター や 自立 支 援 セ ン ター を設 置 し、 み な さ ま に入所 を勧 め て い る」 と、 行 政 の ホ ー ム レス対 策 が整 備 され て い る こ と を強 調 した 。 そ の後 数 十 分 に わ た る抗 議 の 末 、 「植 栽 工 事 」 と称 した 「追 い 出 し」 は 当 面 中 止 とな り、 まず はそ こ に居 住 す る ホ ー ム レス と今 後 の予 定 に つ い て 十 分 な 話 し合 い を もつ とい う こ とで 、 緑 政 土 木 局 側 が 妥 協 す る に至 っ た 。 そ もそ も支援 者 らが植 栽 工事 を 「追 い 出 し」 で あ る とみ な した根 拠 は、 工 事 の対 象 区 画 が ホ ー ム レス の テ ン トや荷 物 が あ る場 所 と丁 度 重 な る、局所 的 な もの で あ っ たか らで あ る。
「公 園 の 利 用 適 正 化 と美 化 」 と称 した 緑 政 土 木 局 に よる 「追 い 出 し」 は 、 空 間 的排 除 の も っ と も顕 著 な ひ とつ の現 れ で あ り、と くに そ れ を支 え て い る の が、(主 に就 労 に よる)「 自立 」 や 「保 護 」 とい っ た支 配 的 な価 値 観 で あ る。 だ が こ う し た価 値 観 は同 時 に、「非 自立 」 と 「非 保 護 」を必 然 的 に生 み 出 し、「自立 」な い し 「保 護 」 に相 応 しい 者 とそ うで な い者 と の選 別 を前 提 と して い る 。 そ の た め 支 援 を受 け ず に路 上 生 活 を続 け る こ と は 「社 会 生 活 の拒 否 」 とみ な され 、 そ の よ う なホ ー ム レス は、 「追 い 出 し」 の 主要 な対 象 と な るの で あ るII)。
「追 い 出 し」 は 自立 支 援 法 第 十 一 条 に よ っ て そ の 正 当性 を担 保 さ れ て い る 。 だ が 実 際 に は、 そ れ が 明確 な形 で 提 示 され る こ と は な い 。 「追 い 出 し」 で は な く、
あ くまで 「公 園 の 利 用 適 正 化 と美 化 」 と緑 政 土 木 局 が 言 い 張 るの は 、 「追 い 出 し」
とい う空 間的 排 除 が 「人 権 」 に 関 わ る 問題 事 項 だ か らで あ る。 つ ま り 「人 権 」 に 関 わ る の は も っ ぱ ら健 康 福 祉 局 で あ り、 緑 政 土 木 局 の 業 務 の性 格 上 、 「人 権 」 を 考 慮 す る な らば健 康 福 祉 局 を含 め た 三 者 間(ホ ー ム レス/支 援 者 ・緑 政 土 木 局 ・ 健 康福 祉 局)の 問題 とな る。 だ が緑 政 土 木 局 と っ て こ う した事 態 は歓 迎 され な い 。 縦 割 り式 の行 政 組 織 とそ の制 度 上 、あ る事 業 に 関 わ る行 政 組 織 を 限 定 す る こ とで 、 業 務 遂 行 が 容 易 に な る か らで あ る 。
そ こ で 緑 政 土 木 局 が持 ち 出 す の が、 「就 労 に よ る 自立 」 とい う支 配 的 な価 値 観 に依 拠 した 、 「シ ェ ル タ ー」 や 「自立 支 援 セ ン ター 」 へ の 入 所 で あ る 。 と くに こ う した 施 設 入 所 へ の勧 誘 は、 「行 政 は ホ ー ム レス に対 して 無 関心 で は な く、 適 切 な対 応 策 を用 意 して い る」 とい う こ と を含 意 して い る。 しか し既 に指 摘 した よ う に、 行 政 側 が 用 意 す る対 応 策 は あ く まで 限 定 的 な 「社 会 的 自立 」 を 目指 した も の で あ り、 と くに 「包 摂 」 と 「排 除 」 の;面 性 を もつ 対 応 策 は、 ホ ー ム レス た ち の
「希 望 」 に沿 う もの で は必 ず しも な い。
事 例 で み た 「追 い 出 し」 は 、 支援 団 体 らの 働 きか け も あ っ て、 当面 の とこ ろ見
72 都ll∫の 「隙 間llこ 住 ま う
写 真1若 宮 大 通 公 園 での 「追 い 出 し」 に対 す る抗 議 (2008年2月25日 、 筆 者 撮 影)
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写 真2「 追 い 出 し」 後 に 設 置 され た バ リケ ー ド
都 市 の 「隙間」 に住 ま う
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送 られ た もの の 、 しか し 「植 栽 工 事 」 と い っ た 公 的 事 業 の 名 目 の 下 に、 「路 上 」 か ら退 去 させ られ た ホ ー ム レス は多 い 。居 住 空 間 を失 った ホー ム レス は、 新 た な 居 住 地 を 求 め て 移 動 す る か 、 行 政 の用 意 し た施 設 に 入 所 し、 「自立 」 の機 会 を窺 い つ つ も、 「そ の場 しの ぎ」 の 生 活 を送 る こ と と な り、 「自立 支援 不 適応 者 」 と見 な され れ ば、 再 び 「路 上 」 へ戻 され る こ と と な る。 しか し 「追 い 出 し」 後 に は、
今 後 新 た に ホ ー ム レス が 住 め ぬ よ う、 「小 屋 が け禁 止 」 と書 か れ た 看 板 が 張 られ て バ リケ ー ドが 設 置 され 、 も はや 居 住 に適 した場 所 は そ こ に は な い(写 真2)。
3ホ ー一一ム レス の不 可視 化
名 古 屋 市 の ホ ー ム レス 数 は 、2003年 に行 わ れ た全 国 調査 で1,788人 と発 表 され た が 、 そ の 後 の概 数 調 査 で は年 々 数 が 減 り、2010年 の 全 国 調 査 で は、 三 分 の 一 ほ どの502人 で あ っ た[厚 生 労働 省2010]。 しか し統 計 上 は 「減 少 」 して い る も の の、 そ れ は 「見 え る」 ホ ー ム レス の数 が 減 っ た と い う こ と に 過 ぎ な い12)。つ ま り先 にみ た 「公 共 空 間 の適 正 化 と美 化 」 と称 した 「追 い 出 し」 を は じめ とす る 排 除 の 結 果 、 「見 え る 」 ホ ー ム レス は 減 少 した が 、 そ の 一 方 で、 「見 えな い 」 ホ ー ム レス は増 加 して い るの で あ る。
「見 え な い」 とは、 文字 通 り、 「視 覚 的 に認 識 す る こ とが で きな い 」 とい う こ と で あ る。 した が って 「『見 え な い』 ホ ー ム レス が 増 加 した 」 と は、都 市 住 民 に とっ て は そ の存 在 を認 識 す る こ とが で き ない が 、 そ れ は ホ ー ム レス が減 少 した の で は な く、不 可 視 化 した とい う こ とで あ り、 従 来 と は異 な る形 で都 市 空 間 に存 在 して い る とい う こ とを 意 味 して い る 。
都 市 で生 活 して い る者 な ら誰 で も、 経験 的 に知 っ て い る よ う に、 「ホ ー ム レス 」 とは まず もっ て視 覚 的 に認 識 され る存 在 で あ る。 そ れ は 「ホ ー ム レス 」 と い う カ テ ゴ リーが 、視 覚 的 な諸 記 号 と結 び付 け られ て認 識 さ れ て い る か らに他 な らな い 。 視 覚 的 記 号 とは、 具 体 的 に い え ば、 公 園 の端 に あ る ブル ー シー トや 地 下 道 に組 み 立 て られ た ダ ンボ ー ル、 ア ル ミ缶 を 山 の よ うに積 ん だ 自転 車 や リヤ カー 、 無 造 作 に伸 び た髭 や 汚 れ た衣 服 とい っ た もの で あ る。 そ して これ らは 「不 自然 な も の」
と して 、 また ホ ー ム レス に 「特 有 の もの」 と して解 釈 され る 。 この こ と を裏付 け る よ うに、 事 実 、 先 の 全 国調 査 で の ホ ー ム レス 数 の調 査 方 法 は 目視 調 査 で あ り、
また 自立 支 援 法 で は視 覚 的 に 把 握 す る こ とが で きる情 報 に拠 っ て 「ホ ー ム レ ス」
が 定 義 され て い る。
だ が こ う した視 覚 的 諸 記 号 を も っ た ホ ー ム レ ス が、 今 日、 不 可 視 化 して い る。
そ れ は先 の 「追 い 出 し」 に 大 き く起 因 して い るが 、 それ が 意 味 す る と ころ は、 居 住 地 の周 辺 化 、 居 住 形 態 の 簡 易 化 な い し流 動 化 で あ る13)。つ ま り 「追 い 出 し」
とい う空 間 的排 除 に よっ て 、都 市 中 心 部 に 新 た な小 屋 や テ ン トを常 設 す る こ とが
Jノ
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KISIIiの 「隙 間 」 にf1三ま う難 し くな っ た結 果 、 屠 住 地 を 都 市 周 辺 部 へ と移 動 す る か 、 あ るい は居 住 形 態 を、
随 時携 帯 可 能 な ダ ンボ ー ル な ど に簡 易 化 し、 か つ 居 住 地 を頻 繁 に変 え る か とい う 二 者 択 一 を迫 られ 、 ホ ー ム レ スが 不 可 視 化 した の で あ る。 前 者 の場 合 、 地 理 的 に 遠 く隔 た る た め 、 当 然 都 市中 心 部 で は不 可 視 とな り、 一 方後 者 の場 合 、 地 理 的 に は 近 隣iにあ りな が ら も そ の 存 在 が 視 覚 的 に 把 握 し きれ な い た め に不 可 視 と な る。
した が っ て 、 全 国 調 査 に示 され た 「ホ ー ム レス の減 少 傾 向」 の背 景 に は 、都 市 周 辺 部 で の 「見 え る」 ホ ー ム レスの 増 加 と、 都 市 中心 部 で の 「見 え な い」 ホ ー ム レ ス の 増 加 が あ る。 で は こ う した 近 年 の 動 向 を踏 まえつ つ 、 ホ ー ム レス の居 住 実 践 を どの よ うに 捉 え る こ とが で き る だ ろ うか 。次 章 で そ の 具 体 的 諸 相 を明 らか に し、
考 察 した い 。
なお 、本 稿 で取 り 上げ る 事 例 は す べ て 名 古 屋 市 の 中心 部(11収 、東 区 、昭 和 区) で の フ ィー ル ド調 査 に よ る もの で あ り、 周 辺 部(例 え ば 天 白 区 や 名 東 区 な ど)に お け るホ ー ム レス の 居 住 実 践 を扱 う もの で は な い こ とは 予 め留 意 され た い 。 また 本 稿 で は便 宜 上 、 都 市 中心 部 にお け る ホ ー ム レス の 居 住 形 態 を、 「見 え る」 ホ ー ム レス に代 表 され る 定住 型 と、 「見 え な い」 ホ ー ム レ ス に代 表 され る移 動 型 の 二 つ に大 別 し、 半移 動 型(な い し半定 住 型)を そ の 中 間 に あ る居 住 形 態 とす る。 こ れ ら居 住 形 態 の 分 類 はあ くまで 相 対 的 な もの だ が 、 この場 合 、 定 住 型 と は、 公 園 や 河 川 敷 、 高 架 下 な どに テ ン トや 小 屋 を常 設 す る もの で 、 基 本 的 に は一 年 を通 じ て春 夏 秋 冬 の 気 候 に耐 え う るベ ニ ヤ板 や トタ ン板 、ブ ル ー シー トとい っ た材 料 が、
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写 真4移 動 型 の テ ン トの例
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都市 の 「隙 間」 に住 まう小 屋 の 建 材 と し て使 わ れ る(写 真3)。 ま た 、 移 動 型 と は、 定 住 型 の よ う に あ る 特 定 の 場 所 に 恒 常 的 な 居 住 空 間 を もた ず 、 可 搬 性 が 高 く、 また 入 手 が 簡 単 な ブ ル ー シ ー トや ダ ンボ ー ル 、新 聞紙 を用 い て 、寝 所 を設 置 す る もの で あ る(写 真4)。
と くに特 定 の 住 居 を もた ない 移 動 型 の ホ ー ム レス の場 合 、就 寝 時 に だ け特 定 の 空 間 を一 時 的 に 占有 す る に過 ぎず 、 一 日の大 半 は市 立 図書 館 や公 園 、駅 構 内 とい っ た 場 所 で 時 間 を 過 ごす こ とが 多 い(写 真5)。 そ して 半 移 動 型 は 、 定 住 型 ほ ど構 造 的 に 堅 固 な小 屋 を持 た ない が 、移 動 型 ほ ど頻 繁 に寝 所 を変 え る こ とは ない た め 、 特 定 の居 住 空 間 を持 ち つ つ も、 定 住 型 よ りも居 住 地 を変 え る こ との多 い居 住 形 態
で あ る。
III都 市 に 住 ま う
本 章 で は 「戦 術 」 の具 体 的諸 相 に つ い て み て い く。 と くに こ こで は三 つ の 異 な る居 住 形 態 を、 ホ ー ム レス の 居 住 実 践 の 事 例 と して 提 示 し、 「戦 略 」 の 圏域 で あ る 「路 上 」 にお け る居 住 実 践 の考 察 を試 み る。
1空 間 に住 ま う一 定住 型
示 一 ム レズ ア ク み み"ア折 と 」甕臓 ク 作:沢 野 健 草 [ビ ッ グ イ シ ュ ー 日本 編 集 部(編)2010:112]
筆 者 は2007年8月 、 名 古 屋 城 外 堀 公 園 に あ る小 屋 を 間借 り し調 査 を 行 って い た。 そ の小 屋 は生 活 保 護適 用 に よ り出 て 行 った(元)ホ ー ム レス の もので あ っ た が 、 そ こ を使 用 す る許 可 を くれ た の が 、 す ぐ隣iに小 屋 を もつ 本 田 さん(仮 名 、 当 時49歳)で あ る 。
本 田 さ ん の小 屋 は、2005年 に建 て られ た後 、 約3年 の 月 日 を経 て 二 つ の 部 屋 が 増 築 され た 、 気 密 性 が 高 く温 度 調 整 の しやす い ツ ーバ ー フ ォー 工 法 に よっ て 建 て ら れ た3DKの 小 屋 で あ っ た。 あ る 支 援 者 の協 力 の 下 、 車 で廃 材 を集 め、 コ ン ク リー ト ・ブ ロ ッ ク を基礎 に して プ レハ ブ の建 材 を使 っ て骨 組 み を作 り、外 壁 を ベ ニ ヤ板 と トタ ン板 で 囲 っ て い る。 す ぐ脇 に立 つ 木 のせ い で、 本 田 さん の小 屋 は 一見 す る とそ の奥 行 きが 分 か りづ らい が、 実 際 中 に入 っ て み る と、 天井 は や や低 い もの の、 奥 行 きの あ る 空 間 が広 が って い る。 当 初 リ ビ ン グ兼 キ ッチ ン と寝 室 し か なか っ た小 屋 は、 そ の後 、 知 り合 い の ホ ー ム レス や 支 援 者 が 訪 れ た と き に、 彼 らを いつ で も招 くこ とが で きる よ う、 談話 ス ペ ー ス を設 け る こ と と な り、 拡 張 さ れ た 。
都市 の 「隙 間」 に住 ま う
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鍵 付 きの ドア を 開 け る と畳 敷 きの リ ビ ン グ兼 キ ッチ ン(約 四 畳 半)、 そ の奥 に 一 段 高 く作 られ た 寝 室(約 四畳)が あ り、漫画本 や ビデオが積 まれている。 また リ ビ ン グ兼 キ ッチ ンに は、 多 種 類 の 調 味 料 や鍋 、 フ ライパ ン、 まな板 な どの調 理 器 具 が 備 え られ て お り、 手 洗 い や 調 理 の 際 に用 い る水 が 、2.52の ペ ッ トボ トル 数 本 に常 にス トッ ク され て い る。 また 、 車 の 使 用 済 みバ ッテ リー に イ ンバ ー ター (電力 変換 装 置)を つ け て 電 力 を確 保 し、 卓 上 ラ イ トや 扇 風 機 、 テ レ ビ な どを動 か して い た 。 だ が 冷 蔵 庫 は電 力 を大 量 に消 費 す る た め、 冷 却 ボ ック ス に氷 を買 っ て きて は入 れ 、 ビー ル や キ ムチ 、 肉 な どを保 存 す る。 用 を足 す 時 は公 園 内 に設 置 され た 公 共 トイ レ を使 用 し、 生 活 を支 え る水 は公 園 の水 道 か ら調 達 す る。 また冬 場 は銭 湯 を利 用 す るが 、夏 場 は公 園 の水 道 を使 っ て 、拾 っ て きた ホ ース に シ ャ ワ ー
の 頭 を付 け て即 席 シ ャ ワー を作 る。
本 田 さん が 名 古 屋 城 外 堀 に小 屋 を建 て た の は 、5年 前 で あ る が 、 そ れ 以 前 は 中 村 公 園 に テ ン トを張 っ て 住 ん で い た 。移 り住 ん だ理 由 は 、近 隣住 民 と揉 め事 が あ っ た こ と、 そ して 行 政 か らの 「嫌 が らせ 」 が あ っ た こ とに よ る。 「嫌 が らせ 」 とは 、 公 園 巡 回 中 の行 政 職 員 が 「こ こ に住 ん で は い け な い」や 「近 隣…住民 の邪 魔 に な る」
とい っ た発 言 を 執拗 に続 け る とい っ た 類 の もの で あ る。 そ こで 「生 活 を邪 魔 され た くな い 」 と本 田 さん が 次 な る 居 住 地 と して 選 ん だ の が 、名 古 屋 城 外 堀 で あ っ た。
木 々 が多 く、 す ぐ後 ろ は雑 草 が 生 い 茂 った 堀 が あ り、 そ こ に年 中水 が 溜 ま って い るせ い か 、 夏 は蝉 が 鳴 き、 蚊 に 悩 ま され る。 しか し名 古 屋 高 速 都 心 環 状 線 の 下 を 走 る外 堀 通 りが す ぐ 目の 前 を通 る そ の 場 所 は、 車 の 通 行 量 が 多 く騒 が しい が 、 歩 行 者 は 非 常 に少 な く、 行 政 の 監 視 の 目が 他 の 場 所 に 比 べ て厳 し くな か っ た た め、
本 田 さ ん の 次 な る居 住 地 とな っ た 。
だ が 手 の 込 ん だ本 田 さん の小 屋 も、2008年 に は行 政 に よ っ て取 り壊 さ れ る こ と とな っ た。 そ の理 由 は 、 名古 屋 城 の 観 光 化 推 進 に よ る 「公 園 の 利 用 適 正 化 と美 化 」 で あ る。 とい うの も、名 古 屋 城 外 堀 に は 、都 市 中 心 部 に は珍 し く蛍 が 生 息 し て い る。 そ こ で行 政 側 は 、観 光客 誘 致 の た め に外 堀 周 辺 を整 備 し直 し、 これ を機 に、 本 田 さ ん を は じめ とす る名 古 屋 城 外 堀 公 園 に住 む ホ ー ム レス た ち を一 斉 に追 い 出そ う と した の で あ っ た。 ホ ー ム レス で あ る と同 時 に 支 援 者 で もあ っ た 本 田 さ ん は、 「自分 の こ と よ り 『ナ カマ 』14)の こ と」 とい って 、全 員 が 何 らか の 「保 護 」 を受 け る こ とが で きる よ う行 政 側 と交 渉 し、全 員 が 去 っ た 後 、 自 ら も生 活 保 護 を 受 け、 目に涙 を浮 かべ な が ら小 屋 を捨 て た 。
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都 市 の 「隙間 」 に住 ま う2時 間 に住 まう一 移動型
ダ ンボLル3樋 でぱ 痴 が家 か な 作:麺 好 司
[ビ ッグ イ シ ュ ー 日本 編 集 部(編)2010:77]
2007年8月 、 九 州 ・長 崎 出 身 の 山 口 さ ん(仮 名 、63歳)が 寝 所 と して い た の は栄 地 区付 近 の地 下街 で あ る。 寝 所 は主 に地 下 街 に軒 を連 ね る商 店 の前 だが 、 開 店 前 の朝6時 半 〜7時 に は起 き、荷 物 を整 理 して 地 下 街 を出 る。 就 寝 時 に は店 が 完 全 に閉 ま り、 辺 りが 静 か に な る11時 ご ろ に ダ ン ボ ー ル と寝 袋 を持 っ て 地 下 街 に入 る。 ダ ンボ ー ル は近 くの ス ーパ ー か ら貰 って きた もの で 、 寝 袋 は あ る 団地 の
ゴ ミ置 き場 か ら拾 っ て きた もの で あ る 。
山 口 さん が就 寝 す る 時 間帯 に い る の は 、 地 下街 を通 過 して 駅 に向 か う酔 っ払 い ・ や、 同 じ く地 下 街 を寝 所 とす る他 の ホ ー ム レス ぐらい で あ る。 しか し以 前 は住 み や す か っ た そ の 場 所 も、2007年 当 時 は 警 備 員 か ら注 意 を 受 け て 追 い 出 さ れ る な ど、 寝 所 を確 保 す る の に苦 労 す る よ うに な っ た 。 また 、 時 折 酔 った都 市 住 民 か ら 誹 諺 中傷 を受 け る こ と もあ り、 ひ どい 時 に は ゴ ミを投 げ つ け られ る こ と も あ る。
そ こで 山 口 さ ん は、 な るべ く人 気 の な い場 所 を探 し、完 全 な静 寂 に包 まれ る深夜 ま で読 書 に耽 る。 だが 寝 所 は毎 回 同 じで は な い 。基 本 的 に は 地 下街 が 山 口 さん の 寝 所 であ るが 、 熟 睡 した い と きに は人 気 の少 な い公 園 や 、路 地 裏 な ど を寝 所 とす る。 しか しま た、 寝 所 は天 候 や 季 節 に よっ て 臨機 応 変 に 決定 され る 。
調 査 時 の 数 ヶ月 前 、 山 口 さ ん は 中 区 に あ る 白川 公 園付 近 で 定住 型 の 生活 を して いた が 、 冬 場 は地 下 街 の 方 が 「暖 か い」 こ とを地 下 街 に寝 る知 り合 い の ホ ー ム レ ス に教 えて も らい 、 移 動 型 へ と居 住 形 態 を変 え た。 夏 場 は公 園 の ベ ンチ で寝 た こ と もあ った が 、 数 年 前 か ら、 ベ ンチ に手 す りが 付 け られ、 横 た わ る こ とが で きな い よ う にな っ た 。 一 方 冬 場 は暖 か い寝 所 が 必 要 に な る。 時 折 暖 房 の排 気 ロ近 くに 寝 所 を構 え るが 、 しか し熱 風 に長 時 間晒 され て い る と、 朝 に は喉 が 渇 き、 疲 労 が 溜 ま る。 そ こで 、 主 に地 下 街 に寝 所 を構 え る よ うに な っ た。 廃 品 回収 な どで 日銭 を稼 い だ と きに は 、暖 房 の効 い た24時 間 営 業 の フ ァー・・一ス トフ ー ド店 で 一杯 の コー ヒー を片 手 に 眠 りに つ き、 ま た 財 布 に 余 裕 が あ る と き に は、6時 間1000円 の 深 夜 パ ック を利 用 して 漫 画 喫 茶 で シ ャ ワー を浴 び、就 寝 す る 。ま た あ る 時 は大 型 ス ー パ ー な どに 設 置 され て い る 多 目的 トイ レ を利 用 して、タオ ル を濡 ら して 体 を拭 き、
歯磨 き、 髭 剃 り、 洗 濯 な ど を す る 。 こ う した場 所 を利 用 す るの は、 「誰 に も迷 惑 か け な い し、 誰 も俺 の こ と を気 にす る人 はい ない 」 か らで あ る。
夕 食 を済 ませ る と、 顔 見 知 りの ホ ー ム レス を 訪 ね て酒 を飲 み 、 夜 が深 ま る と、
い つ も荷 物 置 き場 に し て い る歩 道 沿 い の植 木 に 隠 し た ダ ン ボ ー ル と生 活 用 品 が
都 市 の 「隙 間」 に住 ま う
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入 っ た カバ ン を取 り出 し、 地 下 街 に向 か う。 近 くで寝 て い る ホ ー ム レス と挨 拶 を 交 わ し、 ダ ンボ ー ル を敷 布 団 の よ う に広 げ、 カバ ン を枕 に して新 聞紙 を布 団代 わ り掛 け る 。 だ が 、 眠 りは 浅 い 。都 市 住 民 か らの 嫌 が らせ が 怖 い か らで あ る。 罵 声 に加 え 、 空 き缶 や タバ コ を投 げ つ け られ 、 ひ どい 時 に は石 や 自転 車 が 地 上 の入 り ロ か ら投 げ入 れ られ る 。今 で も腕 や足 に残 る傷 はそ う して で きた もの で あ る。 そ の た め 山 ロ さん は 地 下へ と続 く階段 の 踊 り場 で は な く、 地 下 鉄 駅 構 内や 地 下 街 の 商 店 前 な どに寝 所 を確 保 す る よ う に な りた 。 た だ 、 ど こで で も寝 る こ とが で きる わ け で は な い。 あ る種 の 「な わ ば り」 が あ り、 知 らず に寝 てい る と 「そ こ は俺 の 場 所 だ」 とい わ れ、 揉 め る こ と もあ る 。 そ の た め 山 口 さ ん は移 動 型 へ と居 住 形 態 を シ フ トして か ら、 よ り周 囲 の環 境 に気 を配 る よ う に な った 。
山 口 さ ん の一 日の移 動 距 離 は長 く、 また季 節 や 天 候 、 そ の 時 の 社 会 環 境 に よ っ て寝 所 を頻 繁 に変 え る。 実 際 、 筆 者 は 山 ロ さん の就 寝 時 間 を狙 って 山 口 さん を探 そ う とす るが 、 毎 回小 一 時 間 ほ ど栄 地 区付 近 を歩 か なけ れ ば 山 口 さん に会 う辺 と は で きな か っ た。 そ こ で 筆 者 は、 「明 日 の ×時 に○ ○ で会 う」 とい う約 束 を取 り 付 け よ う とす るが 、 「明 日は ど こ に 行 くか 分 か らん よ。 た ぶ ん ○ ○ に お る け ど、
そ れ も微 妙 や な」 とい っ た曖 昧 な答 え しか得 る こ とが で きな か った 。 当 初 、 筆 者 はそ の よ う な答 え を、 山 口 さ ん の放 浪 癖 ゆ え の もの で あ る と考 えて い た が 、 しか し実 際 はそ れ だ けで は ない こ とに気 づ か さ れ た。 そ れ は あ る 日の深 夜 、 ダ ンボ ー ル と寝 袋 を も って 昨 夜 と 同 じ寝 所 に 向 か う山 口 さん に 同行 した と ころ 、 地 下街 の 入 り口 で 警 備 員 を見 か け、 山 口 さ ん は 「こ こ は あ か ん」 とい っ て す ぐ別 の場 所 に 向 か っ た とい う、 あ る出 来 事 にあ る。 筆 者 が 「警 備 員 が ど こか い く まで待 っ て い れ ば い い ん じ ゃ ない の」 と聞 く と、 「い や 、 せ っ か く寝 た の に 叩 き起 こ さ れ た ら た ま らん 。 こ こは 今 日は あ か ん 。 別 の 場 所 にす る」 と山 口 さん は答 え た。 そ して 別 の 寝 所 に着 く と、 「わ し は な、 誰 に も干 渉 さ れ た く ない の よ。 人 様 に迷 惑 か け た くな い っ て の もあ るが 、 自分 も迷 惑 をか け られ た くな い。 迷 惑 が られ た ら終 わ りや 。 わ しが 警備 員 に 注 意 され て 、 同 じと こ ろで 寝 て い る他 の ホ ー ム レス も追 い 出 され た ら大 変 や ろ 。 そ れ が こ こで 上 手 く生 きて い くこ と。 わ し らの礼 儀 作 法 っ て い うや つ よ」 と語 っ た 。
3時 空 間に住 ま う一 半移 動型
アル ミカ ン 潔 乙求 め で 三 理 作:沢 野 健 草
[ビ ッグ イ シ ュ ー 日本 編 集 部(編)2010:103]
冨 田 さ ん(仮 名 、当 時49歳)の 居 住 形 態 は、半 移 動 型(な い し半 定住 型)で あ る。