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目次 序章... 3 第一章黒田日銀の金融政策の概要... 第一節黒田総裁以前の金融政策... 第二節黒田総裁のもとでの金融政策... 9 第三節黒田総裁の金融政策による実物経済への影響 第四節物価安定目標を 2 % とした背景 第二章金融政策と国債市場 第一節国

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1 5 1 0 1 5 2 0 2 5

平 成 3 0 年 度 証 券 ゼ ミ ナ ー ル 大 会

第 4 テ ー マ ブ ロ ッ ク

「日本銀行の金融政策と証券市場」

明治大学 勝ゼミナール 守吉班

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目次

序 章 . . . 3 第 一 章 黒 田 日 銀 の 金 融 政 策 の 概 要 . . . 5 第 一 節 黒 田 総 裁 以 前 の 金 融 政 策 . . . 5 第 二 節 黒 田 総 裁 の も と で の 金 融 政 策 . . . 9 5 第 三 節 黒 田 総 裁 の 金 融 政 策 に よ る 実 物 経 済 へ の 影 響 . . . 1 1 第 四 節 物 価 安 定 目 標 を 2 % と し た 背 景 . . . 1 6 第 二 章 金 融 政 策 と 国 債 市 場 . . . 1 9 第 一 節 国 債 と は . . . 1 9 第 二 節 日 本 銀 行 に よ る 国 債 買 い 入 れ の 現 状 . . . 2 0 1 0 第 三 節 各 国 と の 比 較 . . . 2 5 第 四 節 日 本 銀 行 に よ る 国 債 買 い 入 れ の 問 題 点 . . . 3 0 第 三 章 金 融 政 策 と E T F . . . 3 2 第 一 節 E T F の 概 要 . . . 3 2 第 二 節 日 本 銀 行 に よ る E T F 買 い 入 れ の 現 状 . . . 3 4 1 5 第 三 節 日 本 銀 行 に よ る E T F 買 い 入 れ の 問 題 点 . . . 3 6 第 四 章 金 融 政 策 と J - R E I T . . . 4 1 第 一 節 R E I T と は . . . 4 1 第 二 節 日 本 銀 行 に よ る J - R E I T 買 い 入 れ の 現 状 . . . 4 2 第 三 節 デ ー タ 分 析 に よ る 日 本 銀 行 の 成 果 分 析 . . . 4 5 2 0 第 四 節 日 本 銀 行 に よ る J - R E I T 買 い 入 れ の 問 題 点 . . . 4 6 第 五 章 出 口 政 策 へ の 提 言 . . . 4 8 第 一 節 国 債 の 銘 柄 シ フ ト . . . 4 8 第 二 節 E T F ・ J - R E I T の 売 却 、 買 い 入 れ の 縮 小 . . . 4 9 第 三 節 マ イ ナ ス 金 利 の 解 消 . . . 4 9 2 5 終 章 . . . 5 1 参 考 文 献 . . . 5 2

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序 章

日 本 経 済 は 1 5 年 以 上 に わ た る デ フ レ で 中 長 期 的 に 停 滞 し 、 デ フ レ 脱 却 が 政 策 上 最 も 優 先 す べ き 課 題 と な っ た 。 か か る 状 況 で 日 本 銀 行 は 包 括 的 な 量 的 緩 和 政 策 を 2 0 0 1 年 よ り 導 入 し 、 ま た 2 0 0 8 年 の リ ー マ ン シ ョ ッ ク 以 降 は 国 際 金 融 5 資 本 市 場 で の 緊 張 が 著 し く 高 ま る 状 況 に お い て 、 我 が 国 の 金 融 市 場 の 安 定 を 確 保 す る こ と が 中 央 銀 行 と し て な し 得 る 重 要 な 貢 献 で あ る と の 認 識 の も と 、 流 動 性 供 給 面 で の 様 々 な 措 置 を 迅 速 か つ 果 断 に 実 施 し て き た 。 さ ら に 、 2 0 1 2 年 1 2 月 に 発 足 し た 第 二 次 安 倍 政 権 で の ア ベ ノ ミ ク ス で は 3 本 の 矢 の 一 つ と し て 、 黒 田 新 総 裁 の も と 日 本 銀 行 は 非 伝 統 的 金 融 政 策 を 断 行 し 、 1 0 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 政 策 、 マ イ ナ ス 金 利 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 政 策 、 長 短 金 利 操 作 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 政 策 と い っ た 今 ま で に な い 金 融 政 策 を 打 ち 出 し た 。 一 方 で 、 米 国 連 邦 準 備 制 度 理 事 会 は す で に 量 的 緩 和 政 策 を 終 了 し 、 現 在 ま で 7 回 に わ た る 利 上 げ に 着 手 し 、 ま た 、 欧 州 中 央 銀 行 も 2 0 1 7 年 1 0 月 末 の 理 事 1 5 会 で 量 的 緩 和 政 策 の 大 幅 縮 小 へ 向 か っ て い る 。 日 本 で は ア ベ ノ ミ ク ス の も と で 非 伝 統 的 金 融 政 策 を 強 力 に 推 し 進 め た 結 果 円 安 ・ 株 高 が 示 現 し 、 企 業 業 績 の 改 善 や 、 個 人 消 費 の 拡 大 な ど か ら 近 年 で は 名 目 G D P が 大 幅 に 増 大 し 、 デ フ レ 脱 却 に 向 か っ て い る 。 実 質 G D P 成 長 率 、 有 効 求 人 倍 率 、 完 全 失 業 率 な ど の 経 済 変 数 も ア ベ ノ ミ ク ス 前 と 現 在 と を 比 較 す る と 大 2 0 き く 改 善 を 見 せ て い る 。 最 新 の 2 0 1 8 年 7 月 3 1 日 の 金 融 政 策 決 定 会 合 で は 金 融 緩 和 継 続 の た め の 枠 組 み を 強 化 し 、 政 策 金 利 の フ ォ ワ ー ド ガ イ ダ ン ス の 導 入 、 政 策 金 利 残 高 の 見 直 し 、 お よ び E T F の 銘 柄 別 の 買 い 入 れ 額 の 見 直 し が 行 わ れ る こ と と な っ た 。 こ う し た 政 策 の 結 果 、 日 本 銀 行 の 保 有 す る 国 債 、 E T F 、 お よ び J - R E I 2 5 T の 保 有 比 率 が 急 増 し て お り 、 こ の ま ま で は 買 い 入 れ を 行 う に も 限 度 が 来 て し ま う 。 ま た 、 保 有 し て か ら も 売 却 し な け れ ば 市 場 が 動 か な く な っ て し ま う だ ろ う 。 そ れ ら を 防 ぐ た め に は 、 今 後 の 日 本 経 済 に お い て 銘 柄 簿 シ フ ト や 段 階 的 な 減 額 措 置 も 考 え る 必 要 が あ る 。 こ う し た こ と か ら 我 々 は 、 日 本 銀 行 は 当 面 出 口 政 策 を 行 う 予 定 で は な い が 、 3 0

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4 将 来 的 に は 行 わ ざ る を 得 な い の で 、 経 済 へ の 影 響 を 最 小 限 に す る た め に ど の よ う に 対 処 す べ き か 考 え た い 。 本 稿 で は 、 第 一 章 で 我 が 国 の 現 在 の 金 融 政 策 に 至 っ た 経 緯 を 概 観 し 、 そ れ ら を 踏 ま え 、 金 融 政 策 に よ る 影 響 を 考 察 す る 。 そ し て 、 そ の 政 策 の 必 要 性 に つ い て 詳 し く 述 べ て い く 。 第 一 章 を 基 に 第 二 章 、 第 三 章 、 第 四 章 で は 、 国 債 、 E T F 、 J - R E I T そ れ ぞ れ に つ い て 検 討 し た 上 で そ れ 5 ら を 保 有 す る 目 的 、 変 遷 、 現 状 を 把 握 す る 。 そ の 上 で 現 在 の 問 題 点 を 挙 げ 、 出 口 政 策 に 向 け て の 経 済 へ の 影 響 を そ れ ぞ れ 考 察 す る 。 最 後 に 、 第 五 章 で は 現 行 政 策 を 維 持 し つ つ も 、 経 済 の 流 れ を 止 め な い た め に 国 債 銘 柄 の シ フ ト 、 E T F や J - R E I T の 買 い 入 れ を 段 階 的 に 減 額 、 マ イ ナ ス 金 利 の 解 消 と い っ た 出 口 政 策 を 提 案 し て い き た い 。 1 0

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第 一 章

黒 田 日 銀 の 金 融 政 策 の 概 要

本 章 で は 、 本 論 を 述 べ る 前 の 前 提 知 識 と し て こ れ ま で 金 融 政 策 を 順 に 述 べ る 。 第 一 節 で は リ ー マ ン シ ョ ッ ク か ら 現 在 の 金 融 政 策 を 順 に 追 う 。 第 二 節 で は そ れ ら の 政 策 が 現 在 の 日 本 経 済 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る か を 解 説 す る 。 そ し て 第 5 三 節 で は 現 在 日 銀 が め ざ す 物 価 安 定 目 標 を 2 % に し た 背 景 を 述 べ る 。 な お 、 こ こ で の 金 融 政 策 と は 『 公 開 市 場 操 作 ( オ ペ レ ー シ ョ ン ) な ど の 手 段 を 用 い て 、 金 融 市 場 に お け る 金 利 の 形 成 に 影 響 を 及 ぼ し 、 通 貨 お よ び 金 融 の 調 節 を 行 う こ と 』1と す る 。 1 0

第 一 節 黒 田 総 裁 以 前 の 金 融 政 策

( 1 ) 長 引 く デ フ レ と 量 的 緩 和 第 一 節 で は 、 1 5 年 間 に わ た っ て 続 い た 日 本 の デ フ レ か ら 話 を 始 め る 。 日 本 で は 、 1 9 8 0 年 代 末 か ら 9 0 年 代 初 め に か け て 、 大 規 模 な 資 産 バ ブ ル が 発 生 し た 。 こ の 資 産 バ ブ ル が 破 裂 す る 過 程 で 、 経 済 の 大 幅 な 減 速 と イ ン フ レ 率 の 低 下 1 5 が 続 き 、 1 9 9 0 年 代 末 に は 、 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が マ イ ナ ス の 領 域 に 落 ち 込 み 、 そ の 後 、 1 5 年 間 に わ た り 、 例 外 的 な 一 時 期 を 除 い て 、 物 価 は マ イ ナ ス 圏 か ら 抜 け 出 す こ と が で き な か っ た 。 デ フ レ が 長 期 間 に わ た っ て 継 続 す る 要 因 に つ い て 、 経 済 理 論 は 2 つ の 可 能 性 を 指 摘 し て い る 。 第 一 の 仮 説 は 自 然 利 子 率 の 低 下 、 第 二 の 仮 説 は イ ン フ レ 予 想 2 0 の 低 下 で あ る 。 自 然 利 子 率 と は 、 あ る 国 の 経 済 に と っ て 景 気 を 加 速 も 減 速 も さ せ な い 中 立 的 な 実 質 金 利 の 水 準 の こ と で あ り 、 学 術 的 に も 様 々 な 議 論 が あ る が 、 そ の 水 準 は 潜 在 成 長 率 に よ っ て 概 ね 規 定 さ れ る と 考 え ら れ て い る 。 名 目 政 策 金 利 に は ゼ ロ % と い う 下 限 が あ る た め 、 潜 在 成 長 率 や イ ン フ レ 予 想 が 低 下 す る と 、 自 然 利 子 率 に 比 べ て 実 質 金 利 が 高 止 ま り し て し ま い 、 十 分 緩 和 的 な 金 融 環 境 を 2 5 実 現 で き な く な る 。 そ の 結 果 、 デ フ レ か ら の 脱 却 が 困 難 に な る と い う わ け だ 。 デ フ レ 期 の 日 本 で は 、 自 然 利 子 率 と イ ン フ レ 予 想 の 双 方 が 低 下 し て い た と 考 1 日 本 銀 行 「 金 融 政 策 の 概 要 」 < h t t p s : / / w w w . b o j . o r . j p / a b o u t / o u t l i n e / i n d e x . h t m / > 2 0 1 8 年 1 0 月 1 5 日 ア ク セ ス

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6 え ら れ る 。 企 業 や 金 融 機 関 な ど 、 多 く の 経 済 主 体 が バ ブ ル 崩 壊 の 後 始 末 に 追 わ れ る 中 、 グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン や I T 化 の 進 展 な ど の 大 き な 環 境 変 化 へ の 対 応 が 遅 れ 、 1 9 9 0 年 代 初 め に は 4 % 程 度 で あ っ た 日 本 の 潜 在 成 長 率 は 、 1 9 9 0 年 代 末 に 1 % 程 度 ま で 低 下 し た 。 2 0 0 0 年 代 も 、 主 要 国 に 先 駆 け て 少 子 高 齢 化 が 進 行 す る も と で 、 潜 在 成 長 率 の 低 下 に 歯 止 め が か か ら な か っ た 。 こ の 間 、 イ ン フ 5 レ 予 想 も 、 実 際 の 物 価 上 昇 率 が 小 幅 の マ イ ナ ス を 続 け る 中 、 趨 勢 的 に 低 下 し て い っ た も の と み ら れ る 。 ( 2 ) リ ー マ ン シ ョ ッ ク 後 の 金 融 政 策 と 包 括 的 量 的 緩 和 策 次 に 、 こ れ ま で の 金 融 政 策 を リ ー マ ン シ ョ ッ ク 後 か ら 要 点 を 整 理 す る 。 リ ー 1 0 マ ン シ ョ ッ ク が 起 こ る と 、 米 国 、 ユ ー ロ 圏 、 英 国 は 政 策 金 利 を 1 % 以 下 の 低 水 準 に 引 き 下 げ 、 非 伝 統 的 な 金 融 政 策 を 実 施 し た 。 特 に ア メ リ カ は Q E 1 と し て 2 0 0 8 年 1 1 月 か ら 2 0 1 0 年 6 月 ま で に 米 国 債 、 M B S 、 そ の 他 証 券 に 合 計 1 兆 7 2 5 0 億 ド ル も の 金 融 緩 和 を 実 施 し た 。 膨 大 な 額 の 資 金 供 給 を 行 っ た が ア メ リ カ 国 内 の 失 業 率 は 約 1 0 % で 高 止 ま り す る な ど あ ま り 大 き な 効 果 は 得 ら れ な か 1 5 っ た 。 話 を 国 内 に 戻 す と 、 も と も と 日 本 も 金 利 は 低 位 で あ っ た が 、 2 0 0 8 年 1 0 月 に 政 策 金 利 の 誘 導 目 標 を 0 . 5 % か ら 0 . 3 % に 引 き 下 げ 、 更 に 1 2 月 に は 0 . 1 % に ま で 引 き 下 げ た 。 同 年 1 0 月 3 1 日 に 日 銀 が 発 表 し た 金 融 市 場 調 節 方 針 に 関 す る 公 表 文 は 以 下 の 通 り で あ る 。 「 日 本 銀 行 は 、 国 際 金 融 資 本 市 場 で の 緊 張 が 著 し く 高 ま る 状 況 に お い て 、 わ 2 0 が 国 金 融 市 場 の 安 定 を 確 保 す る こ と が 中 央 銀 行 と し て な し 得 る 重 要 な 貢 献 で あ る と の 認 識 の も と 、 こ れ ま で 、 流 動 性 供 給 面 で の 様 々 な 措 置 を 、 迅 速 か つ 果 断 に 実 施 し て き た 。 さ ら に 、 本 日 の 政 策 委 員 会 ・ 金 融 政 策 決 定 会 合 に お い て は 、 以 下 の と お り 、 政 策 金 利 を 引 き 下 げ る と と も に 、 金 融 調 節 面 で の 対 応 力 を 強 化 す る こ と を 通 じ て 、 緩 和 的 な 金 融 環 境 の 確 保 を 図 る こ と が 必 要 と 判 断 し た 。 』 2 5 2 2 日 本 銀 行 「 金 融 政 策 の 変 更 等 に つ い て 」 < h t t p s : / / w w w . b o j . o r . j p / a n n o u n c e m e n t s / r e l e a s e _ 2 0 0 8 / k 0 8 1 0 3 1 . p d f > 2 0 1 8 年 1 0 月 1 5 日 ア ク セ ス

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7 同 資 料 で は こ の 引 き 下 げ の 目 的 は 緩 和 的 な 金 融 環 境 の 確 保 で あ る こ と が 明 記 さ れ て い る 。 こ の 後 世 界 は 金 融 危 機 を 脱 し 、 マ イ ナ ス 成 長 だ っ た 日 本 の 景 気 状 況 も 底 を 打 っ て 持 ち 直 し た 。 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 前 後 の 株 価 お よ び 長 期 金 利 の 動 向 が 下 の 図 表 1 , 2 で あ る 。 株 価 に お い て は , や は り 9 月 を 境 に 大 幅 に 下 落 し て い る 。 3 月 に な る と 各 国 若 5 干 の 上 昇 傾 向 が 見 ら れ た が , こ れ は ア メ リ カ 金 融 機 関 の 決 算 公 表 に よ る 景 気 不 安 が 和 ら い だ こ と に よ る 。 長 期 金 利 に お い て は , リ ー マ ン シ ョ ッ ク 直 後 に 一 時 上 昇 し た が す ぐ に 低 下 傾 向 へ 推 移 し た 。 年 が 開 け る と 各 国 の 財 政 政 策 も 相 ま っ て 上 昇 傾 向 に 転 移 し た 。 1 0

【 図 表 1 】 国 内 外 の 株 価 の 動 向

出 典 : 内 閣 府 ( 平 成 2 1 年 度 ) 「 年 次 経 済 財 政 報 告 書 」P. 1 0 4 よ り 引 用 H T T P: / /W W W5 .C A O.G O.J P/J-J/W P/W P-J E0 9 /P D F/ 0 9P0 2 0 1 1 1 5

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【 図 表 2 】 国 外 の 長 期 金 利 の 動 向

出 典 : 内 閣 府 ( 平 成 2 1 年 度 ) 「 年 次 経 済 財 政 報 告 書 」P. 1 0 5 よ り 引 用 H T T P: / /W W W5 .C A O.G O.J P/J-J/W P/W P-J E0 9 /P D F/ 0 9P0 2 0 1 1 5 2 0 1 0 年 に は 「 包 括 的 な 金 融 緩 和 政 策 」 が 始 ま っ た 。 大 き な 柱 は 、 無 担 保 コ ー ル レ ー ト を 0 ~ 0 . 1 % ほ ど に 推 移 す る よ う 促 す こ と 、 「 中 長 期 的 な 物 価 安 定 の 理 解 」 に 基 づ き 実 質 ゼ ロ 金 利 政 策 を 継 続 す る こ と 、 E T F や J - R E I T な ど の 金 融 資 産 買 い 入 れ の た め バ ラ ン ス シ ー ト 上 に 基 金 を 創 設 す る こ と の 3 点 の 措 置 で あ る 。 こ れ ら の 目 的 は 金 融 緩 和 を 一 段 と 推 進 す る た め で あ る 。 そ の 効 果 は 1 0 以 下 の 3 点 で あ る 。 短 期 金 利 低 下 効 果 は 1 年 以 内 の 金 利 は 効 果 が あ っ た こ と 。 長 期 金 利 安 定 に 関 し て は , 日 本 国 債 な ど の 利 回 り , レ ー ト が 上 昇 し て い る の で 効 果 は 認 め ら れ な か っ た こ と 。 資 産 呼 び 水 効 果 は リ ス ク プ レ ミ ア ム 低 下 位 よ る 資 産 価 格 上 昇 効 果 が 認 め ら れ た こ と 。 た だ し 、 イ ン フ レ 期 待 は 依 然 と し て 低 位 に あ っ た た め 、 大 き な 効 果 は 得 ら 1 5 れ な か っ た 。

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【 図 表 3 】 包 括 緩 和 政 策 の 効 果

出 典 : 伊 藤 隆 康 ( 2 0 1 0 ) 「 日 銀 の 包 括 緩 和 政 策 に 関 す る 短 期 的 な 効 果 の 検 証 」 『 新 潟 大 学 経 済 論 集 』 第 9 0 号 p . 2 4 2 よ り 引 用 。 5

第 二 節

黒 田 総 裁 の も と で の 金 融 政 策

日 銀 は 2 0 1 3 年 1 月 に 「 物 価 安 定 の 目 標 」 を 消 費 者 物 価 の 前 年 比 上 昇 率 2 % と し た 。 4 月 に 黒 田 東 彦 が 日 銀 総 裁 に 就 任 す る と , 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 政 策 が 開 始 さ れ た 。 こ こ で の 大 き な 転 換 点 は , 金 融 市 場 調 節 方 針 の 操 作 目 標 が 無 担 保 コ ー ル レ ー ト か ら マ ネ タ リ ー ベ ー ス に 変 更 さ れ た こ と で あ る 。 1 0 詳 細 な メ カ ニ ズ ム は 以 下 の 通 り で あ る 。 ① 巨 額 の 国 債 買 い 入 れ に よ っ て イ ー ル ド カ ー ブ 全 体 を 押 し 下 げ る こ と , ② そ れ に よ っ て 実 質 金 利 を 押 し 下 げ る 。 ③ 上 記 ① , ② に よ っ て 実 質 金 利 を 押 し 下 げ る 。 ④ 実 質 金 利 の 低 下 効 果 が 民 間 需 要

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10 を 刺 激 す る こ と に よ り 景 気 が 好 転 し , 需 給 ギ ャ ッ プ が 改 善 さ れ る 。 ⑤ 需 給 ギ ャ ッ プ の 改 善 は , ① の 人 々 の 予 想 物 価 上 昇 率 の 上 昇 と あ い ま っ て , 現 実 の 物 価 上 昇 率 を 押 し 上 げ る 。 ⑥ 現 実 の 物 価 上 昇 率 の 上 昇 が , 人 々 の 予 想 物 価 上 昇 率 を さ ら に 押 し 上 げ る 。 ⑦ こ の 間 , 金 融 面 で は , 株 価 や 為 替 相 場 な ど の 資 産 価 格 が , 上 記 の よ う な 経 済 ・ 物 価 の 動 き を 反 映 し , あ る い は そ の 動 き を 先 取 り す る 形 で 5 形 成 さ れ る 。 ⑧ さ ら に , 投 資 家 が リ ス ク 性 資 産 へ の 選 好 を 高 め る ( ポ ー ト フ ォ リ オ ・ リ バ ラ ン ス 効 果 ) 結 果 , リ ス ク 性 資 産 の 価 格 に 対 す る プ ラ ス の 影 響 の ほ か , 金 融 の 量 的 側 面 で も , 貸 出 の 増 加 な ど が 期 待 さ れ る 。 2 0 1 4 年 1 0 月 に は 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 拡 大 を 決 定 し た 。 具 体 的 に は , マ ネ タ リ ー ベ ー ス が 年 間 約 8 0 兆 円 ( 約 1 0 〜 2 0 兆 円 追 加 ) に 相 当 す る ペ ー ス 1 0 で 増 加 す る 様 金 融 市 場 調 節 を 行 う こ と , 長 期 国 債 の 保 有 残 高 が 年 間 約 8 0 兆 円 ( 約 3 0 兆 円 追 加 ) に 相 当 す る ペ ー ス で 増 加 す る よ う 買 い 入 れ を 行 う 。 そ し て E T F お よ び J - R E I T に つ い て , 保 有 残 高 が , そ れ ぞ れ 年 間 約 3 兆 円 ( 3 倍 増 ) , 年 間 約 9 0 0 億 円 ( 3 倍 増 ) に 相 当 す る ペ ー ス で 増 加 す る よ う 買 入 れ を 行 う , と い う 施 策 を 打 ち 出 し た 。 1 5 さ ら な る 物 価 安 定 目 標 達 成 の た め 日 銀 は 2 0 1 6 年 1 月 に 「 マ イ ナ ス 金 利 付 き ・ 量 的 質 的 金 融 緩 和 」 を 導 入 し た 。 そ の 内 容 は 「 金 融 機 関 が 保 有 す る 日 本 銀 行 当 座 預 金 に ▲ 0 . 1 % の マ イ ナ ス 金 利 を 適 用 す る 。 今 後 , 必 要 な 場 合 , さ ら に 金 利 を 引 き 下 げ る 。 具 体 的 に は , 日 本 銀 行 当 座 預 金 を 3 段 階 の 階 層 構 造 に 分 割 し , そ れ ぞ れ の 階 層 に 応 じ て プ ラ ス 金 利 , ゼ ロ 金 利 , マ イ ナ ス 金 利 を 適 用 す る 。 貸 2 0 出 支 援 基 金 , 被 災 地 金 融 機 関 支 援 オ ペ お よ び 共 通 担 保 資 金 供 給 は , ゼ ロ 金 利 で 実 施 す る 。 」 と い う も の で あ っ た 。 更 に 同 年 9 月 に は 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 と 「 マ イ ナ ス 金 利 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 を 強 化 す る 形 で 「 長 短 金 利 操 作 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 を 導 入 し た 。 そ の 枠 組 み は 金 融 市 場 調 節 に よ っ て 長 短 金 利 の 操 作 を す る 「 イ ー ル ド カ ー ブ ・ 2 5 コ ン ト ロ ー ル 」 と 消 費 者 物 価 上 昇 率 の 実 績 値 が 安 定 的 に 2 % を 超 え る ま で マ ネ タ リ ー ベ ー ス の 拡 大 方 針 を 継 続 す る 「 オ ー バ ー シ ュ ー ト 型 コ ミ ッ ト メ ン ト 」 の 2 つ か ら 成 り 立 っ て い る 。 今 年 7 月 に は 金 融 緩 和 政 策 を 続 け る 観 点 で 政 策 金 利 の フ ォ ワ ー ド ガ イ ダ ン ス を 導 入 す る こ と に よ り 物 価 安 定 目 標 の 実 現 に 対 す る コ ミ ッ ト メ ン ト を 強 め る と 3 0

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11 と も に 「 長 短 金 利 操 作 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 持 続 性 を 許 可 す る 措 置 を 決 定 さ せ た 。 具 体 的 に は 長 短 金 利 の 水 準 を 維 持 さ せ る こ と , イ ー ル ド カ ー ブ ・ コ ン ト ロ ー ル と し て 短 期 金 利 に は ▲ 0 . 1 % の マ イ ナ ス 金 利 適 用 , 長 期 金 利 に は 1 0 年 物 国 債 金 利 が ゼ ロ % 程 度 で 推 移 す る よ う 長 期 国 債 の 買 い 入 れ を 行 う 。 資 産 買 い 入 れ 方 針 に 関 し て は E T F お よ び J - R E I T の 保 有 残 高 が そ れ ぞ れ 年 5 間 約 6 兆 円 , 年 間 約 9 0 0 億 円 に 相 当 す る ペ ー ス で 増 加 す る 様 に 買 い 入 れ さ れ る こ と と な っ た 。

第 三 節 黒 田 総 裁 の 金 融 政 策 に よ る 実 物 経 済 へ の 影 響

( 1 ) 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 政 策 に よ る 経 済 へ の 影 響 1 0 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の に お い て 、 ① 予 想 物 価 上 昇 率 の 引 き 上 げ 、 ② イ ー ル ド カ ー ブ の 押 下 げ 、 ③ ポ ー ト フ ォ リ オ ・ リ バ ラ ン ス 効 果 の 三 つ の 波 及 経 路 が あ る と 考 え ら れ る 。 こ れ ら の 波 及 経 路 を 通 じ て 、 企 業 の 資 金 調 達 コ ス ト は 低 下 し 、 そ れ に 伴 っ て 資 金 需 要 も 増 加 し て 、 企 業 活 動 は 活 発 化 す る 。 こ れ ら に よ っ て 実 際 ど の よ う に 効 果 が 出 た か 挙 げ て い く 。 1 5 ま ず 、 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 に つ い て 予 測 期 間 に 分 け て 確 認 す る 。 ま ず 、 短 期 の 動 き を 確 認 す る と 、 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 導 入 後 2 0 1 4 年 前 半 に か け て 、 エ コ ノ ミ ス ト や 市 場 参 加 者 な ど い ず れ の 主 体 に お い て も 予 想 物 価 上 昇 率 が 上 昇 し て い る ( 図 表 4 ) 。 2 0 1 4 年 後 半 以 降 は 、 原 油 価 格 下 落 に よ る 下 押 し 圧 力 も あ り 、 市 場 参 加 者 の 予 想 物 価 上 昇 率 は 低 下 傾 向 に あ る も の の 、 2 0 1 4 年 1 0 月 2 0 の 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 拡 大 が 決 定 さ れ た こ と も あ っ て 、 家 計 、 エ コ ノ ミ ス ト で は 、 低 下 は 限 定 的 と な っ て い る 。 中 長 期 の 動 き に つ い て は 、 原 油 価 格 下 落 に よ る 下 押 し 圧 力 が あ る 中 、 予 想 物 価 上 昇 率 は 、 お お む ね 同 水 準 を 維 持 し て い る ( 図 表 5 ) 。 こ の よ う に 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 は 予 想 物 価 上 昇 率 の 上 昇 に 効 果 を 発 揮 し た も の と 考 え ら れ る 。 2 5

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【 図 表 4 】 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 短 期 ( 1 年 )

出 典 : 内 閣 府 ホ ー ム ペ ー ジ ( 2 0 1 5 ) 「 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 」 を 基 に 筆 者 作 成 h t t p : / / w w w 5 . c a o . g o . j p 5

【 図 表 5 】 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 長 期 ( 5 ~ 1 0 年 )

出 典 : 内 閣 府 ホ ー ム ペ ー ジ ( 2 0 1 5 ) 「 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 」 を 基 に 筆 者 作 成 h t t p : / / w w w 5 . c a o . g o . j p 1 0

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13 次 に イ ー ル ド カ ー ブ の 変 化 を み る と 、 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 導 入 前 と 比 較 し て 、 長 期 ・ 超 長 期 ゾ ー ン を 中 心 に カ ー ブ 全 体 が 押 し 下 げ ら れ 、 フ ラ ッ ト 化 し て い る ( 図 表 6 ) 。 企 業 の 資 金 調 達 環 境 に つ い て 確 認 す る と 、 ま ず 、 長 期 金 利 に つ い て は 、 総 じ て 低 下 基 調 に あ り 、 2 0 1 5 年 1 月 に は 一 時 的 に 0 . 1 % 台 ま で に 達 す る な ど 歴 史 的 な 低 水 準 と な っ て い る 。 ま た 、 市 場 関 係 者 に 対 し て 月 次 で 5 行 っ て い る ア ン ケ ー ト 調 査 に よ り 、 債 券 市 場 関 係 者 が 注 目 す る 金 利 変 動 要 因 を み る と 、 「 短 期 金 利 / 金 融 政 策 」 と 「 債 券 需 給 」 が 金 利 低 下 要 因 と し て 意 識 さ れ る 度 合 い が 大 き く 、 市 場 関 係 者 の 多 く は 日 本 銀 行 の 国 債 買 入 れ に よ る 需 給 の タ イ ト 化 を 金 利 低 下 要 因 と み て い る 。 実 質 金 利 の 動 き を み る と 、 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 導 入 後 、 長 期 金 利 は 安 1 0 定 し て 低 下 傾 向 に あ る も の の 、 2 年 物 金 利 や 1 年 物 金 利 に つ い て は 、 2 0 1 4 年 央 以 降 、 予 想 物 価 上 昇 率 の 下 落 に 伴 い 上 昇 し て い る 。 た だ し 、 い ず れ の 年 限 に お い て も マ イ ナ ス 圏 内 で 推 移 し て お り 、 緩 和 的 な 金 融 環 境 が 続 く 中 、 企 業 の 資 金 調 達 コ ス ト は 低 下 し て い る と 考 え ら れ る 。 1 5

【 図 表 6 】 イ ー ル ド カ ー ブ の 動 向

出 典 : 内 閣 府 ホ ー ム ペ ー ジ ( 2 0 1 5 ) 「 イ ー ル ド カ ー ブ の 動 向 」 を 基 に 筆 者 作 成 h t t p : / / w w w 5 . c a o . g o . j p 2 0

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14 3 番 目 の 波 及 経 路 で あ る ポ ー ト フ ォ リ オ ・ リ バ ラ ン ス 効 果 を 確 認 す る と 、 日 本 銀 行 以 外 の 主 体 に よ る 投 資 フ ロ ー を み る と 、 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 導 入 後 、 全 体 と し て 国 債 保 有 を 減 ら し 、 貸 出 や 対 外 投 資 、 株 式 ・ 投 信 へ の 投 資 を 増 加 さ せ る 動 き が 強 ま っ た 。 ま た 、 前 後 の 国 債 の 主 体 別 保 有 シ ェ ア の 推 移 を み る と 、 生 損 保 や 海 外 が 一 定 の シ ェ ア を 維 持 す る 中 で 、 国 内 銀 行 の シ ェ ア が 低 下 し て い 5 る 。 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 導 入 後 、 国 内 銀 行 の 国 債 の 保 有 割 合 が 低 下 し 、 日 銀 当 座 預 金 の 割 合 が 増 加 し て い る 。 国 債 ・ 日 銀 当 座 預 金 以 外 を み る と 、 貸 出 金 や 海 外 資 産 ( 海 外 店 の 貸 出 金 及 び 有 価 証 券 ) を 中 心 に 増 加 が 続 い て お り 、 国 内 銀 行 で は 、 緩 や か な が ら ポ ー ト フ ォ リ オ ・ リ バ ラ ン ス は 進 ん で い る と み ら れ る 。 1 0 ( 2 ) 長 短 金 利 操 作 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 政 策 に よ る 経 済 へ の 影 響 消 費 者 物 価 は 、 2 0 1 6 年 前 半 の 為 替 の 円 高 方 向 へ の 動 き 等 を 反 映 し た 耐 久 消 費 財 価 格 の 下 落 な ど も あ り 、 2 0 1 6 年 初 め か ら 横 ば い で 推 移 し て い る 。 こ う し た 中 、 日 本 銀 行 は 、 早 期 の 2 % の 物 価 安 定 目 標 の 実 現 に 向 け 、 2 0 1 6 年 1 月 に 1 5 は 金 融 機 関 の 日 銀 当 座 預 金 の 一 部 ( 政 策 金 利 残 高 ) に マ イ ナ ス 0 . 1 % の 金 利 を 適 用 す る こ と を 含 め た 「 マ イ ナ ス 金 利 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 導 入 を 決 定 し た 。 こ れ に よ り 、 イ ー ル ド カ ー ブ は 全 体 的 に 押 し 下 が り 、 一 時 、 新 発 2 0 年 債 が マ イ ナ ス の 利 回 り を 付 け る 場 面 も あ っ た 。 企 業 金 融 や 個 人 向 け の 住 宅 ロ ー ン の 金 利 も 、 こ う し た 動 き に 沿 っ て 低 下 し 、 銀 行 の 貸 出 は 、 個 人 や 非 製 造 業 向 2 0 け を 中 心 に 増 加 し た 。 こ の よ う に 金 融 緩 和 の 効 果 は 着 実 に 実 体 経 済 に 波 及 し た 。 一 方 、 イ ー ル ド カ ー ブ の フ ラ ッ ト 化 が 進 む こ と で 、 銀 行 の 短 期 調 達 、 長 期 貸 出 に よ る 利 鞘 が 縮 小 し て い る 。 こ う し た 金 融 環 境 の 変 化 は 、 金 融 機 関 に ポ ー ト フ ォ リ オ ・ リ バ ラ ン ス を 促 す こ と で 、 リ ス ク 資 産 へ の 投 資 が 進 み 、 経 済 全 体 の 成 長 を 促 す 効 果 が 期 2 5 待 で き る が 、 イ ー ル ド カ ー ブ の フ ラ ッ ト 化 が 進 み 過 ぎ る と 金 融 機 関 が 利 鞘 を と れ な く な り 、 そ の 結 果 、 金 融 機 関 の 適 切 な リ ス ク テ イ キ ン グ 行 動 を 阻 害 し 、 金 融 仲 介 機 能 へ 影 響 が 出 る 可 能 性 も あ る 。 こ う し た こ と か ら 、 日 本 銀 行 は 、 2 0 1 6 年 9 月 に 「 長 短 金 利 操 作 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 を 導 入 し 、 長 短 の 金 利 水 準 を 金 融 市 場 調 節 方 針 の 操 作 目 標 と し 3 0

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15 た 。 本 施 策 の 導 入 後 の イ ー ル ド カ ー ブ を み る と 、 短 期 金 利 が マ イ ナ ス を 維 持 す る 中 、 ス テ ィ ー プ 化 も 図 ら れ て お り 、 1 0 年 よ り 長 い と こ ろ で は プ ラ ス と な っ て い る 。 日 本 の 景 気 は 、 所 得 か ら 支 出 へ の 前 向 き の 循 環 メ カ ニ ズ ム が 働 く も と で 、 緩 や か に 拡 大 し て い る 。 海 外 経 済 は 、 総 じ て み れ ば 着 実 な 成 長 が 続 い て い る 。 そ 5 う し た も と で 、 輸 出 は 増 加 基 調 に あ る 。 国 内 需 要 の 面 で は 、 設 備 投 資 は 、 企 業 収 益 や 業 況 感 が 改 善 基 調 を 維 持 す る な か で 、 増 加 傾 向 を 続 け て い る 。 個 人 消 費 は 、 雇 用 ・ 所 得 環 境 の 着 実 な 改 善 を 背 景 に 、 振 れ を 伴 い な が ら も 、 緩 や か に 増 加 し て い る 。 住 宅 投 資 は 弱 含 ん で 推 移 し て い る 。 こ の 間 、 公 共 投 資 は 高 め の 水 準 を 維 持 し つ つ 、 横 ば い 圏 内 で 推 移 し て い る 。 1 0 以 上 の 内 外 需 要 の 増 加 を 反 映 し て 、 鉱 工 業 生 産 は 増 加 基 調 に あ り 、 労 働 需 給 は 着 実 な 引 き 締 ま り を 続 け て い る 。 日 本 の 金 融 環 境 は 、 き わ め て 緩 和 し た 状 態 に あ る 。 物 価 面 で は 、 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 、 以 下 同 じ ) の 前 年 比 は 、 1 % 程 度 と な っ て い る 。 予 想 物 価 上 昇 率 は 、 横 ば い 圏 内 で 推 移 し て い る 。 1 5 ( 3 ) 予 想 イ ン フ レ の 上 昇 と 経 済 へ の 影 響 ア ベ ノ ミ ク ス は 大 胆 な 金 融 政 策 、 機 動 的 な 財 政 政 策 、 民 間 投 資 を 喚 起 す る 成 長 戦 略 の 三 本 の 矢 と な っ て い る 。 そ こ で 、 日 経 平 均 株 価 、 対 ド ル 為 替 レ ー ト 、 完 全 失 業 率 、 有 効 求 人 倍 率 、 年 率 の 実 質 G D P に 注 目 し た 。 ア ベ ノ ミ ク ス が 始 ま る 前 と 後 と を 比 較 す る と 全 て に お い て 良 い 方 向 に シ フ ト し て い る こ と が 分 か 2 0 る 。 フ ィ ッ シ ャ ー 方 程 式 に よ り 、 名 目 金 利 が ゼ ロ で も 、 予 想 イ ン フ レ 率 が 上 昇 す れ ば 実 質 金 利 が 低 下 す る の で 、 経 済 全 体 に 好 影 響 を 与 え た と 考 え ら れ る 。 と り わ け 為 替 レ ー ト に つ い て は 、 期 待 イ ン フ レ 率 の 上 昇 が 購 買 力 平 価 の も と 円 安 を 示 現 さ せ 、 円 安 傾 向 が グ ロ ー バ ル 企 業 の 収 益 を 円 建 て で 押 し 上 げ た こ と も あ り 、 2 5 株 価 は 2 0 1 3 年 以 降 急 激 に 上 昇 し た 。 す な わ ち 、 円 安 と 株 価 上 昇 が 大 き く 相 関 し て 進 み 、 所 得 効 果 や 輸 出 の 数 量 ベ ー ス で の 増 大 、 企 業 収 益 の 増 大 を も た ら し 、 経 済 を 活 性 化 さ せ た と 言 え る 。 こ の よ う に 企 業 収 益 は 好 調 に 推 移 し 株 価 は 上 昇 、 雇 用 の 改 善 が 続 い て い る こ と は 前 向 き に 評 価 で き る 。 た だ し 、 企 業 の コ ー ポ レ ー ト ガ バ ナ ン ス 強 化 の も と 、 3 0

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16 賃 金 上 昇 よ り も 内 部 留 保 の 増 大 を も た ら し 、 賃 金 上 昇 が 個 人 消 費 上 昇 に つ な が る 波 及 効 果 が な い こ と が 、 日 本 経 済 の 課 題 と し て 依 然 と し て 残 っ て い る ( 図 表 7 ) 。

【 図 表 7 】 ア ベ ノ ミ ク ス 前 と 後 の 効 果 比 較

5 出 典 : 総 務 省 統 計 局 ホ ー ム ペ ー ジ ( 2 0 1 8 ) 「 統 計 デ ー タ 」 を 基 に 筆 者 作 成 h t t p : / / w w w . s t a t . g o . j p / d a t a /

第 四 節 物 価 安 定 目 標 を 2 % と し た 背 景

1 0 ( 1 ) 物 価 安 定 目 標 が 参 照 す る 指 標 主 要 国 の 中 央 銀 行 は 、 物 価 安 定 目 標 と し て 消 費 者 物 価 指 数 を 使 っ て お り 、 日 本 銀 行 で も C P I を 用 い て い る 。 そ の 一 方 で 、 欧 州 中 央 銀 行 は 、 各 国 が 独 自 の 基 準 で 作 成 す る C P I よ り も 、 E U 基 準 消 費 者 物 価 指 数 で あ る H I C P ( ユ ー ロ 加 盟 国 の イ ン フ レ 率 を 加 重 平 均 し た も の ) に 注 目 し 、 F R B で は 個 人 消 費 支 1 5 出 デ フ レ ー タ ー を 重 視 し て い る 。 主 要 中 銀 の 物 価 安 定 目 標 は 2 % 程 度 に 収 斂 し て い る 。 E C B で は 、 1 9 9 8 年 の 設 立 当 初 に 「 2 % 未 満 」 と 定 義 し た 。 当 時 の ド イ ツ で は 、 東 西 ド イ ツ の 統 合 後 の 最 初 の 4 ~ 5 年 間 は イ ン フ レ 率 が 4 ~ 5 % 程 度 と 高 め で 推 移 し て い た が 、 1 9 9 7 年 頃 に は 2 % 以 下 に な っ て い る の に あ え て 2 % を 目 指 す の は 高 す ぎ る と 意 2 0 見 が あ り 、 そ れ を 踏 ま え て 2 % 未 満 と し た 。 し か し 、 2 0 0 3 年 に ユ ー ロ 圏 で デ ィ ス イ ン フ レ 懸 念 が 高 ま っ た 時 期 に 、 1 % 程 度 を 容 認 し て い る と の 誤 解 が み ら れ た た め 、 誤 解 を 払 拭 す る た め に 2 % 近 傍 を 挿 入 し て 「 2 % 未 満 、 2 % 近 傍 」 と 定 義 を 明 確 化 し て い る 。 こ の 定 義 は 1 . 8 ~ 1 . 9 % 程 度 と 広 く 認 識 さ れ て い る 。

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17 米 国 で は 2 0 1 2 年 に P C E デ フ レ ー タ ー を も と に 、 長 期 イ ン フ レ ゴ ー ル と し て 2 % を 掲 げ て い る 。 た だ し 、 そ れ 以 前 か ら イ ン フ レ 率 が 平 均 2 % 前 後 で 推 移 し て き た た め 、 2 % 程 度 の イ ン フ レ 率 の 実 現 を 意 識 し た 金 融 政 策 運 営 が な さ れ て き た 。 5 ( 2 ) 2 % を 目 指 す 理 由 物 価 安 定 と は 「 物 価 が 上 昇 も 下 落 も し な い 状 態 で 、 イ ン フ レ が ゼ ロ % 程 度 で 推 移 す る 状 態 」 を 指 し て い る 。 そ れ で も あ え て 2 % を 掲 げ る 理 由 は 、 デ フ レ は イ ン フ レ よ り も 望 ま し く な い の で 、 デ フ レ に 陥 る リ ス ク を 減 ら す た め に そ の 程 度 の イ ン フ レ が バ ッ フ ァ ー と し て 必 要 で あ る と の 見 方 が 、 世 界 で 共 有 さ れ て い 1 0 る た め で あ る 。 2 つ 目 に 2 % を 目 指 す 理 由 は 、 将 来 の 景 気 後 退 局 面 に 備 え て 金 融 政 策 に よ る 対 応 力 や 機 動 性 を 高 め て お く た め 。 あ る 程 度 の イ ン フ レ が あ る と 、 短 期 金 利 が 高 く な る の で 、 将 来 の 引 き 下 げ 余 地 が 大 き く な る と の 認 識 が あ る か ら 。 世 界 金 融 危 機 後 、 主 要 中 銀 が 短 期 金 利 を 何 度 も 引 き 下 げ て き た 結 果 、 ゼ ロ % 程 度 に 近 1 5 づ き 、 こ れ 以 上 引 き 下 げ 余 地 が ほ と ん ど な い 状 態 に 陥 っ た 。 そ こ で 、 ゼ ロ 金 利 制 約 を 回 避 す る た め に 2 % 程 度 の 目 標 を も っ と 引 き 上 げ る べ き と の 見 解 も 聞 か れ て い る 。 ま た 、 世 界 金 融 危 機 以 前 は 2 % 程 度 の イ ン フ レ 目 標 で あ れ ば ゼ ロ 金 利 制 約 に 陥 る 可 能 性 は 低 い と 考 え ら れ て い た が 、 最 近 で は そ の 程 度 の 目 標 で は 高 い 頻 度 で 発 生 し や す い と 指 摘 す る 研 究 も み ら れ る 。 そ う し た 議 論 を 背 景 に 、 2 0 ベ ン ・ バ ー ナ ン キ 議 長 は ゼ ロ % 近 傍 で 設 定 す れ ば デ フ レ リ ス ク が 生 じ 、 ま た 名 目 金 利 が 低 す ぎ る た め F R B が 景 気 後 退 に 対 応 し に く く な る 。 2 % は こ う し た リ ス ク と イ ン フ レ が も た ら す 費 用 の バ ラ ン ス が ち ょ う ど と れ た 水 準 と な っ て い る 。 3 つ 目 の 理 由 は 、 世 界 の 主 要 中 銀 の 物 価 安 定 目 標 が 2 % 程 度 に 収 斂 し て い る 2 5 中 で 、 日 銀 だ け が そ れ よ り 低 い 目 標 を 目 指 す と な る と 、 長 期 的 に は 円 高 傾 向 が 強 ま る 可 能 性 が 示 唆 さ れ る 。 企 業 の 経 済 活 動 に と っ て 為 替 の 持 続 的 な 安 定 が 望 ま し い と す れ ば 、 2 % 程 度 の 物 価 安 定 目 標 を 目 指 し た ほ う が 良 い と 考 え ら れ て い る 。 以 上 の 3 点 か ら 日 本 の 物 価 安 定 目 標 は 2 % と さ れ た と 考 え ら れ る ( 図 表 8 ) 。 3 0

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【 図 表 8 】 物 価 安 定 目 標 2 % の 理 由

出 典 : 白 井 さ ゆ り ( 2 0 1 6 ) 『 超 金 融 緩 和 か ら の 脱 却 』 p p . 5 6 - 5 9 を 基 に 筆 者 作 成

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第 二 章 金 融 政 策 と 国 債 市 場

本 章 で は 、 国 債 の 発 行 目 的 と 買 入 目 的 を 理 解 し た 上 で 、 こ れ ま で の 金 融 政 策 の 変 遷 と と も に 国 債 の 買 入 状 況 に つ い て 述 べ る 。 ま た 、 そ れ ら の 国 債 を 通 じ た 金 融 政 策 が ど の よ う に 経 済 に 影 響 を 与 え た の か を 分 析 す る 。 そ し て 諸 外 国 の 中 5 央 銀 行 と 日 本 の 中 央 銀 行 の 国 債 保 有 率 の 比 較 を 行 い 、 日 本 の 国 債 取 引 に つ い て の 問 題 点 を 言 及 し た い 。

第 一 節 国 債 と は

( 1 ) 国 債 1 0 国 債 と は そ の 国 の 政 府 が 発 行 し 、 債 券 の 元 本 と そ の 利 息 の 支 払 い を 国 が 補 償 し て い る 債 券 で 、 正 式 名 称 は 「 国 庫 債 券 」 で あ る 。 国 債 は 発 行 目 的 に よ り 名 前 が 異 な る 。 財 政 法 第 4 条 に 基 づ き 公 共 事 業 の 財 源 を 調 達 す る た め に 発 行 さ れ る 建 設 国 債 、 建 設 国 債 を 発 行 し て も な お 歳 入 が 不 足 す る と 見 込 ま れ る 場 合 に 歳 出 に 充 て る 財 源 を 調 達 す る こ と を 目 的 と し て 発 行 さ れ る 特 例 国 債 、 震 災 な ど か ら 1 5 の 復 興 の た め の 施 策 に 必 要 な 財 源 と な る 税 収 が 入 る ま で の つ な ぎ と し て 発 行 さ れ る 復 興 債 な ど が あ る 。 そ の 他 に も 利 払 い 方 式 に よ っ て 分 類 さ れ た 利 付 き 国 債 や 割 引 国 債 な ど 多 く の 種 類 が あ る 。 本 章 で は 、 国 債 に つ い て 日 本 銀 行 が 買 入 オ ペ レ ー シ ョ ン の 際 に 買 い 入 れ 対 象 と し て い る 償 還 期 間 に よ っ て 分 類 さ れ た 中 期 国 債 、 長 期 国 債 と 超 長 期 国 債 、 ま た 変 動 利 付 債 と 物 価 連 動 債 を 対 象 と す る 。 2 0 ( 2 ) 格 付 け 債 券 の 代 表 的 な リ ス ク の 一 つ に 「 信 用 リ ス ク 」 が あ る 。 債 券 を 発 行 し て い た 企 業 が 倒 産 し た 場 合 な ど に 債 務 不 履 行 に な る リ ス ク が あ る た め 、 債 券 を 購 入 す る 際 は 発 行 者 の 状 態 を し っ か り チ ェ ッ ク し て お く こ と が 必 要 だ 。 そ の 時 に 参 考 2 5 に な る の が 格 付 け で あ る 。 格 付 け 会 社 と し て は 、 米 国 の ム ー デ ィ ー ズ 社 や ス タ ン ド & プ ア ー ズ 社 、 日 本 で は 格 付 け 投 資 情 報 セ ン タ ー な ど が あ げ ら れ る 。 格 付 け は 「 A A A 」 「 A A 」 と い う よ う に ア ル フ ァ ベ ッ ト や + - 記 号 を 用 い て 表 記 さ れ る の が 一 般 的 で 、 格 付 け が 低 い 債 券 ほ ど 、 信 用 リ ス ク が 高 く 債 務 不 履 行 に な る 可 能 性 が 高 い と い え る 。 3 0

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20 日 本 国 債 の 格 付 け は 、 1 9 9 2 年 ま で A a a だ っ た が 2 0 0 1 年 ご ろ か ら 格 下 げ が 続 い て い る 。 2 0 0 7 年 、 ム ー デ ィ ー ズ 社 の 格 付 け で は A 1 ま で 下 が り 、 2 0 0 9 年 に A a 2 ま で 格 上 げ さ れ た も の の 、 2 0 1 4 年 に 現 在 の A 1 ま で 格 下 げ さ れ て い る 。 こ の 評 価 は 中 級 の 上 位 で 、 上 位 の 格 付 け に 比 べ る と 信 用 リ ス ク が 低 い と 判 断 さ れ る 債 務 に 対 す る 格 付 け で あ る 。 各 国 で 比 較 す る と 評 価 の 高 い 国 債 は A a a の ド 5 イ ツ や オ ラ ン ダ 、 デ ン マ ー ク な ど の ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 で 、 日 本 は 中 国 に 次 い で 2 3 番 目 に あ た る 。

第 二 節 日 本 銀 行 に よ る 国 債 買 い 入 れ の 現 状

( 1 ) 日 本 銀 行 1 0 日 本 銀 行 は 、 物 価 の 安 定 を 図 る こ と を 通 じ て 国 民 経 済 の 健 全 な 発 展 に 資 す る こ と を 理 念 と し て 金 融 政 策 を 運 営 し て い る 。 金 融 政 策 と は 中 央 銀 行 が 世 の 中 へ の 通 貨 供 給 量 を 調 整 す る こ と に よ っ て 経 済 に 影 響 を 与 え る も の で あ る 。 中 央 銀 行 は 景 気 変 動 の 波 を 小 さ く す る た め 銀 行 の 銀 行 と い う 働 き を 通 し 、 通 貨 供 給 量 を コ ン ト ロ ー ル し な け れ ば な ら な い 。 景 気 と い う の は た だ 好 景 気 が 続 け ば い い 1 5 も の で は な く 、 景 気 の 行 き 過 ぎ に よ る 物 価 の 上 昇 は 過 度 な イ ン フ レ を 引 き 起 こ す 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 そ の た め 、 そ れ を 抑 え る た め に 行 わ れ る の が 売 り オ ペ で あ る 。 売 り オ ペ と は 中 央 銀 行 が 市 中 銀 行 に 債 券 を 売 る こ と で 市 中 銀 行 か ら 通 貨 を 吸 収 し 通 貨 供 給 量 を 減 ら す 。 こ れ は 金 融 引 き 締 め と 呼 ば れ る 。 そ れ に 対 し て 買 い 2 0 オ ペ は 景 気 を 刺 激 す る こ と を 目 的 と し 、 中 央 銀 行 が 市 中 銀 行 か ら 債 券 を 「 買 う 」 政 策 で あ る 。 こ れ に よ り 通 貨 供 給 量 が 増 加 し 、 貨 幣 需 給 の 差 が 発 生 す る た め 市 中 銀 行 で 通 貨 が 余 る こ と に な る 。 す る と 金 利 が 低 下 し 企 業 は 銀 行 か ら 融 資 を 受 け や す く な る 。 そ の 結 果 設 備 投 資 や 住 宅 投 資 が 増 え る こ と で 経 済 全 体 の 投 資 は 増 加 し 景 気 を 刺 激 す る 効 果 が あ る 。 こ の よ う に 金 融 緩 和 の た め に 売 買 さ れ る 債 2 5 券 の 代 表 が 国 債 で あ る 。 ( 2 ) 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 日 本 で は 2 0 0 1 年 か ら 2 0 0 6 年 ま で 国 債 買 い 入 れ 額 を 増 加 す る 量 的 金 融 緩 和 が 行 わ れ て い た 。 2 0 1 3 年 4 月 、 黒 田 東 彦 が 総 裁 に 就 任 後 初 め て と な る 金 融 政 3 0

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21 策 決 定 会 合 で 2 % の 物 価 目 標 を 2 年 程 度 で 実 現 す る た め に 日 銀 が 供 給 す る マ ネ タ リ ー ベ ー ス を 2 年 間 で 2 倍 に す る な ど の 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 に 踏 み 切 っ た 。 こ の 会 合 で 決 ま っ た 大 き な 柱 は 以 下 の 二 つ で あ る 。 ① マ ネ タ リ ー ベ ー ス コ ン ト ロ ー ル の 採 用 5 金 融 政 策 に お け る 操 作 の 対 象 を 、 無 担 保 コ ー ル レ ー ト 翌 日 物 と い う 金 利 か ら マ ネ タ リ ー ベ ー ス に 変 更 し た 。 マ ネ タ リ ー ベ ー ス 残 高 を 2 0 1 2 年 末 実 績 の 1 3 8 兆 円 か ら 、 2 0 1 3 年 末 に 2 0 0 兆 円 、 2 0 1 4 年 末 に は 2 7 0 兆 円 ま で 増 加 さ せ る 。 ② 長 期 国 債 買 い 入 れ 額 の 増 加 と 年 限 の 延 長 1 0 長 短 含 む 金 利 全 般 を 低 下 さ せ る た め に 、 長 期 国 債 の 保 有 残 高 が 年 間 5 0 兆 円 に 相 当 す る ペ ー ス で 増 加 す る よ う 買 い 入 れ を 行 う 。 ま た 、 長 期 国 債 の 買 い 入 れ 対 を 4 0 年 債 含 む 全 年 限 と し 、 保 有 国 債 の 平 均 年 限 を 、 現 状 の 3 年 籍 か ら 7 年 程 度 ま で 、 こ れ も 2 倍 程 度 に 延 長 す る 。 1 5 こ の 政 策 が 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 と 呼 ば れ る 所 以 は 、 マ ネ タ リ ー ベ ー ス の 残 高 を 拡 大 さ せ る こ と で 従 来 の 金 融 緩 和 で も 見 ら れ た 「 量 」 を 追 求 す る と と も に 、 残 存 期 間 の 長 い 国 債 と 上 場 投 資 信 託 な ど の リ ス ク 性 資 産 を 購 入 し 、 買 い 入 れ る 債 券 の 種 類 を 広 げ る こ と で 「 質 」 に も 配 慮 し て い る か ら で あ る 。 以 下 の グ ラ フ に よ る と 、 こ の 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 策 が 導 入 さ れ る 直 前 の 2 0 2 0 1 3 年 3 月 時 点 の 日 銀 の 国 債 残 高 に お け る 保 有 率 は 1 3 % で 保 有 残 高 は 1 0 6 兆 3 4 6 9 億 円 で あ る 。 保 有 残 高 の 内 訳 は 2 0 年 債 が 3 0 % を 占 め 、 約 3 1 兆 円 保 有 し て い て 、 次 い で 多 い の が 1 0 年 債 で 約 2 9 兆 円 で あ る 。 ま た 、 こ の 時 点 で は 民 間 金 融 機 関 の 国 債 保 有 率 は 日 銀 の 保 有 率 を 大 き く 上 回 っ て い た こ と が わ か る 。 し か し 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 の 導 入 後 、 国 債 の 日 銀 保 有 残 高 が 右 肩 上 が り に 増 加 2 5 し て 債 券 市 場 で 日 銀 の 存 在 感 が 強 ま っ て き た 。 3 0

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22 【 図 表 9 】

2 0 1 3 年 3 月 2 9 日 時 点 で の 保 有 国 債 の 銘 柄 別 残 高

出 典 : 日 本 銀 行 ホ ー ム ペ ー ジ ( 2 0 1 3 ) 「 日 本 銀 行 関 連 統 計 」 を 基 に 筆 者 作 成 h t t p s : / / w w w . b o j . o r . j p / s t a t i s t i c s / b o j / o t h e r / m e i / r e l e a s e / 2 0 1 3 / i n d e x . h t m / 5

【 図 表 1 0 , 1 1 】 日 本 銀 行 の 国 債 と そ の 保 有 者 別 比 率

出 典 : 日 本 経 済 新 聞 「 国 債 保 有 、 日 銀 が 3 分 の 1 超 す 買 い 取 り 限 界 論 も 」 2 0 1 6 年 6 月 1 8 日 号 よ り 引 用 h t t p s : / / w w w . n i k k e i . c o m / a r t i c l e / D G X L A S G F 1 7 H 0 N _ X 1 0 C 1 6 A 6 E E 8 0 0 0 / 1 0

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23 2 0 1 3 年 に 導 入 さ れ 、 2 0 1 4 年 1 0 月 に 拡 大 さ れ た 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 で は 、 日 銀 の 長 期 国 債 保 有 残 高 が 年 間 8 0 兆 円 に 相 当 す る ペ ー ス で 増 加 す る よ う 買 入 れ を 行 う こ と と さ れ た 。 ま た 、 買 い 入 れ 平 均 残 存 期 間 に つ い て は 2 0 1 4 年 1 0 月 の 拡 大 時 に 「 7 ~ 1 2 年 程 度 」 と さ ら に 長 期 化 さ れ る こ と と な っ た 。 2 0 1 5 年 、 日 本 の 国 債 保 有 残 高 が 初 め て 3 0 0 兆 円 を 突 破 し た 。 大 規 模 な 金 融 5 緩 和 で 長 期 国 債 を 大 量 に 購 入 し て い る こ と が 要 因 だ 。 日 銀 が 8 月 2 4 日 発 表 し た 2 0 日 時 店 の 国 債 保 有 額 は 3 0 1 兆 9 1 4 4 億 円 で 、 こ の う ち 8 割 強 を 長 期 国 債 が 占 め た 。 2 0 1 6 年 9 月 に 行 わ れ た 金 融 政 策 決 定 会 合 で は 以 下 の 2 点 が 変 更 さ れ た 。 1 0 ① 1 0 年 債 金 利 が 現 状 程 度 で 推 移 す る よ う 長 期 国 債 の 買 い 入 れ を 行 う ② 平 均 残 存 期 間 の 廃 止 上 記 の 2 点 に よ り 「 長 短 金 利 操 作 付 き 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 と い う 金 融 緩 和 の 新 し い 枠 組 み が 発 表 さ れ た 。 2 0 1 6 年 1 0 月 7 日 に 長 期 国 債 と 国 庫 短 期 証 券 を 1 5 合 わ せ た 日 銀 の 国 債 保 有 残 高 が 4 0 0 兆 3 0 9 2 億 円 と な り 、 初 め て 4 0 0 兆 円 を 突 破 し た 。 こ れ は 国 債 発 行 残 高 の ほ ぼ 4 割 に 達 す る 。 2 0 1 8 年 9 月 1 9 日 の 金 融 政 策 決 定 会 合 で は 以 下 の 2 点 が 決 ま っ た 。 ① 日 銀 当 座 預 金 の う ち 政 策 金 利 残 高 に - 0 . 1 % の マ イ ナ ス 金 利 を 適 用 す る 。 2 0 ② 1 0 年 物 国 債 金 利 が ゼ ロ % 程 度 で 推 移 す る よ う 、 長 期 国 債 の 買 入 れ を 行 う 。 買 入 れ 額 に つ い て は 保 有 残 高 の 増 加 額 年 間 約 8 0 兆 円 を め ど と し つ つ 弾 力 的 な 買 入 れ を 実 施 す る 。 こ の 金 政 策 決 定 会 合 で は 7 月 の 会 合 で 導 入 さ れ た フ ォ ワ ー ド ガ イ ダ ン ス に 変 2 5 更 は な く 、 景 気 判 断 に つ い て 、 「 緩 や か に 拡 大 し て い る 」 と し 物 価 は 「 横 ば い 圏 内 で 推 移 し て い る 」 と 前 回 会 合 の 判 断 を 据 え 置 い た 。 以 下 の グ ラ フ を 見 る と 2 0 1 8 年 Q 2 時 点 の 日 銀 国 債 保 有 率 は 4 4 . 6 % で 保 有 残 高 は 4 4 5 . 9 兆 円 に も の ぼ り 黒 田 東 彦 が 総 裁 に 就 任 し た 2 0 1 3 年 に 比 べ る と 4 倍 以 上 と な っ て い る こ と が わ か る 。 3 0

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【 図 表 1 2 , 1 3 】 日 本 の 長 期 国 債 保 有 者 別 内 訳

出 典 : ガ ベ ー ジ ニ ュ ー ス 「 日 本 の 国 債 の 保 有 者 内 訳 を グ ラ フ 化 し て み る 」 よ り 引 用 h t t p : / / w w w . g a r b a g e n e w s . n e t / a r c h i v e s / 2 1 2 6 5 0 3 . h t m l 5 日 銀 が 保 有 す る 国 債 4 4 5 . 9 兆 円 の 内 訳 は 以 下 の 通 り で あ る ( 2 0 1 6 年 6 月 末 現 在 ) 。 1 0 年 債 が 一 番 多 く 4 0 % を 占 め 、 次 い で 5 年 債 が 2 5 % を 占 め て い る 。 類 似 点 は 2 0 1 3 年 時 も 比 較 的 高 い 割 合 を 占 め て い た 1 0 年 債 が 現 在 も 高 い 割 合 を 占 め て い る こ と が あ げ ら れ る 。 こ れ は 債 券 市 場 に お い て 新 発 1 0 年 物 国 債 の 利 回 り が 長 期 金 利 の 指 標 と さ れ 、 長 期 金 利 を 0 % 程 度 で 推 移 さ せ る た め だ と 考 1 0 え る 。 次 に 一 つ 目 の 相 違 点 と し て は 、 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 策 を 導 入 し た た め 買 入 れ る 債 権 の 種 類 が 増 え 、 4 0 年 債 の 買 入 れ が 始 ま っ た こ と で あ る 。 4 0 年 債 と い う 償 還 期 限 が 長 い 長 期 国 債 を 買 い 入 れ る こ と で 長 い 期 間 市 中 に 通 貨 を 供 給 で き 、 金 融 緩 和 が よ り 効 果 的 に な る と 考 え ら れ る 。

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25 二 つ 目 は 先 ほ ど も 触 れ た が 、 日 銀 の 保 有 残 高 が 4 4 5 . 9 兆 円 と 大 き く 膨 れ 上 が っ た こ と で あ る 。 こ れ は 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 が 導 入 さ れ た 2 0 1 3 年 の 1 0 6 兆 円 に 比 べ る と 4 倍 以 上 で あ る 。

【 図 表 1 4 】 2 0 1 8 年 1 0 月 2 3 日 時 点 で の 保 有 国 債 の 銘 柄 別 残 高

5 出 典 : 日 本 銀 行 ホ ー ム ペ ー ジ ( 2 0 1 8 ) 「 日 本 銀 行 関 連 統 計 」 を 基 に 筆 者 作 成 h t t p s : / / w w w . b o j . o r . j p / s t a t i s t i c s / b o j / o t h e r / m e i / i n d e x . h t m /

第 三 節 各 国 と の 比 較

1 0 第 二 節 で は 日 銀 の 国 債 保 有 の 現 状 に つ い て 述 べ た 。 本 節 で は す で に バ ラ ン ス シ ー ト の 縮 小 や テ ー パ リ ン グ を 始 め て い る F R B と E C B を 中 心 に 比 較 し て い き た い 。 2 0 0 7 年 夏 の サ ブ プ ラ イ ム ロ ー ン 住 宅 ロ ー ン 危 機 に 端 を 発 す る 世 界 金 融 危 機 以 降 、 世 界 各 国 の 中 央 銀 行 は 、 金 融 シ ス テ ム の 安 定 化 と 物 価 の 安 定 を 目 的 と し 1 5 て 大 胆 な 金 融 政 策 を 実 施 し て き た 。 欧 米 に お い て は こ う し た 金 融 緩 和 政 策 を 縮 小 し 、 徐 々 に 正 常 化 に 向 か う 動 き が 出 始 め て い る 。 米 国 に お い て は 、 2 0 1 4 年 1 月 に テ ー パ リ ン グ を 開 始 し 、 そ の 後 2 0 1 5 年 1 2 月 に は ゼ ロ 金 利 政 策 も 解 除 さ れ 、 利 上 げ に 着 手 し 、 今 後 3 ~ 4 年 間 で バ ラ ン ス シ ー ト の 規 模 を 4 . 5 兆 ド ル か ら 2 ~ 3 兆 ド ル の 水 準 ま で 縮 小 す る 見 込 み で あ る 。 2 0 欧 州 に お い て は 経 済 の 回 復 を 下 支 え す る 目 的 で 、 2 0 1 1 年 以 降 数 回 に わ た り

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26 銀 行 に 対 す る 長 期 資 金 供 給 が 実 施 さ れ た 。 2 0 1 5 年 に は 国 債 を 含 む 資 産 購 入 が 開 始 さ れ 、 E C B 圏 の 中 央 銀 行 の バ ラ ン ス シ ー ト は 拡 大 傾 向 が 見 ら れ た が 、 2 0 1 8 年 6 月 の E C B 総 会 で 「 資 産 買 い 入 れ の 減 額 」 さ ら に 「 資 産 買 い 入 れ を 1 2 月 末 で 終 了 」 と の 見 解 を 発 表 し た 。 こ の よ う に 主 要 先 進 国 で は 米 国 に つ づ い て 欧 州 が 金 融 政 策 の 正 常 化 を 進 め る 5 段 階 に あ る 。 我 が 国 に お い て は 足 元 の 景 気 は 緩 や か に 回 復 し て い る も の の 、 物 価 目 標 の 2 % へ は ま だ 遠 い こ と な ど を 理 由 に 出 口 の 対 応 に は 至 っ て い な い 。 以 下 の グ ラ フ は 対 G D P 比 の 債 務 残 高 の 国 際 比 較 で あ る 。 日 本 の 国 債 発 行 残 高 は 1 0 0 0 兆 円 に も の ぼ り 、 国 債 等 残 高 対 名 目 G D P 比 は 2 3 6 % と 先 進 国 最 悪 の 水 準 と な っ て い る 。 日 銀 の バ ラ ン ス シ ー ト で 資 産 に お け る 国 債 は 約 4 6 5 兆 円 で 、 1 0 資 産 の 合 計 の 約 8 4 % に あ た る 。 こ れ は G D P 比 で は 8 3 % ほ ど で あ る 。 そ れ に 対 し て F R B の バ ラ ン ス シ ー ト で は 資 産 に お け る 国 債 は 約 2 5 8 兆 円 で 資 産 の 合 計 の 約 5 4 % に あ た る 。 G D P 比 で は 1 2 % ほ ど で し か な い 。 中 央 銀 行 の 国 債 保 有 額 と し て は こ の 二 国 は 上 位 で あ る が G D P 比 に な お す と 差 が 歴 然 で 日 本 の 国 債 保 有 額 の 多 さ が 理 解 で き る 。 1 5

【 図 表 1 5 】 債 務 残 高 の 国 際 比 較

出 典 : 財 務 省 「 債 務 残 高 の 国 際 比 較 」 よ り 引 用 h t t p : / / w w w . z a i s e i . m o f . g o . j p / p d f / 0 4 - k 0 2 . p d f 2 0

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27 図 表 1 6 は 各 国 の 国 債 保 有 比 率 を 表 し た グ ラ フ だ が 、 日 本 は 諸 外 国 に 比 べ 中 央 銀 行 の 国 債 保 有 率 の 高 さ が 目 立 っ て い る 。 ま た テ ー パ リ ン グ を 始 め た 米 国 や E U で は 海 外 中 央 銀 行 の 国 債 保 有 が 2 割 ほ ど あ る こ と が 見 受 け ら れ る 。 日 本 の 国 債 保 有 比 率 を み る と 海 外 部 分 に 関 し て は 、 恒 常 的 な 経 常 黒 字 と 安 定 的 に 国 債 を 保 有 す る 国 内 金 融 機 関 の 存 在 に よ っ て 、 必 ず し も 海 外 投 資 家 に 依 存 5 す る 必 要 が な い た め 海 外 保 有 比 率 は 1 0 % と 他 国 に 比 べ て 低 い 。 米 国 国 内 部 門 で は 家 計 金 融 資 産 の う ち 現 預 金 の 割 合 が 低 く 、 ま た 銀 行 の 預 貸 比 率 が 1 0 0 % 前 後 と 高 い た め 、 銀 行 の 保 有 比 率 は 約 1 0 % と 低 く な っ て い る 。 海 外 部 門 で は 海 外 中 央 銀 行 の 保 有 比 率 が 2 0 % 前 後 と 他 国 と 比 べ て 高 い 。 こ れ は 海 外 の 中 央 銀 行 が 外 貨 準 備 と し て 基 軸 通 貨 で あ る 米 ド ル 建 て の 資 産 を 選 択 す る 傾 1 0 向 が あ る こ と が 考 え ら れ る 。 英 国 の 国 内 部 門 で は 他 国 と 比 べ て 国 内 銀 行 の 保 有 比 率 が 1 0 % 未 満 と 低 い の に 対 し て 、 非 銀 行 部 門 の 保 有 比 率 が 高 い 。 こ れ は 英 国 の 家 計 金 融 資 産 は 保 険 ・ 年 金 の 割 合 が 約 6 0 % と 高 い た め 、 保 険 会 社 を 中 心 と す る 銀 行 以 外 の 金 融 機 関 の 保 有 額 が 大 き く 、 非 銀 行 部 門 の 保 有 比 率 を 押 し 上 げ て い る た め で あ る 。 1 5

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【 図 表 1 6 】 投 資 家 グ ル ー プ 別 の 各 国 に お け る 国 債 保 有 比 率 の 推 移

出 典 : ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 「 先 進 国 の 国 債 等 の 保 有 構 造 に つ い て 」 よ り 引 用 h t t p s : / / w w w . n l i -r e s e a -r c h . c o . j p / -r e p o -r t / d e t a i l / i d = 5 7 5 0 3 & p n o = 3 ? s i t e = n l i 5 国 に よ っ て 海 外 保 有 比 率 の 水 準 は 大 き く 異 な っ て い る 。 海 外 保 有 比 率 の 水 準 に 影 響 を 与 え る 要 因 と し て 、 財 政 収 支 と 経 常 収 支 が 考 え ら れ る 。 貯 蓄 ・ 投 資 バ ラ ン ス が マ イ ナ ス の 場 合 、 政 府 は 国 債 の 発 行 等 に よ っ て 資 金 を 調 達 す る 。 こ の 際 、 経 常 収 支 が 赤 字 と な っ て い る 場 合 国 内 だ け で は 賄 う こ と が で き な い た め 海 1 0 外 資 金 に 依 存 せ ざ る を 得 な い 。 ( 図 表 1 7 )

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【 図 表 1 7 】 各 国 の 経 常 収 支 と 国 債 等 の 海 外 保 有 比 率

出 典 : ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 「 先 進 国 の 国 債 等 の 保 有 構 造 に つ い て 」 よ り 引 用 h t t p s : / / w w w . n l i -r e s e a -r c h . c o . j p / -r e p o -r t / d e t a i l / i d = 5 7 5 0 3 & p n o = 3 ? s i t e = n l i 5 保 険 会 社 は 、 保 険 金 の 支 払 い を 確 実 に 行 う た め 、 資 金 運 用 に よ っ て 一 定 の 利 回 り を 確 保 す る 必 要 が あ る 。 そ の た め 確 実 性 の 高 い 国 債 を 選 択 す る 傾 向 が 見 受 け ら れ る 。 預 金 取 扱 機 関 も 受 け 入 れ た 預 金 を 運 用 し な け れ ば な ら な い た め 、 優 良 な 貸 出 先 を 見 つ け る こ と が で き な け れ ば 消 去 法 で 国 債 を 保 有 す る こ と が あ る 。 1 0 貯 蓄 傾 向 が 見 ら れ る 日 本 で は 当 然 預 金 取 扱 機 関 の 国 債 保 有 が 多 い と い え る 。 一 方 海 外 投 資 家 は 外 国 政 府 な ど の 公 的 機 関 が 外 貨 準 備 運 用 の 対 象 と し て 、 流 動 性 の 高 い 日 本 国 債 へ 投 資 を 行 う ケ ー ス が あ る 。 し か し 日 本 の 低 金 利 を 受 け 海 外 で の 日 本 国 債 需 要 が 低 下 し て い る こ と も 日 本 の 国 債 等 の 海 外 保 有 比 率 に 影 響 を 与 え て い る と 考 え ら れ る 。 1 5 巨 額 の 経 常 収 支 の 赤 字 が あ る 米 国 で は 、 家 計 部 門 の 過 剰 消 費 が 原 因 に な っ て い る と い わ れ 、 生 産 す る 以 上 に 消 費 を し て い る 国 で あ る 。 し か し 経 常 収 支 の 赤 字 は 外 国 か ら の 借 入 れ や 投 資 の 増 加 に よ っ て フ ァ イ ナ ン ス さ れ 、 こ れ ら の 借 金 に よ っ て 米 国 は 成 長 を 続 け て い る 。 F R B の 資 金 循 環 表 に よ れ ば 、 2 0 1 3 年 は 米 国 債 発 行 額 8 0 0 0 億 ド ル の う ち 7 割 2 0 近 い 5 4 0 0 億 ド ル を F R B が 購 入 し た 。 い う ま で も な く 量 的 緩 和 で あ る 。 2 0 1 4 年 1 0 月 に 量 的 緩 和 が 終 了 し た こ と で 、 2 0 1 5 年 以 降 は F R B の 米 国 再 購 入 額 は 低 下 し て い っ た 。 ト ラ ン プ 大 統 領 の 予 算 教 書 に よ れ ば 、 2 0 1 8 年 度 の 米 財 政 赤

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30 字 は 8 7 0 0 億 ド ル へ の 拡 大 が 予 想 さ れ て い て 、 ま た 、 F R B は 保 有 す る 米 国 債 を 2 5 0 0 億 ド ル 程 度 減 ら す 見 通 し と さ れ て い る 。 1 . 2 兆 ド ル の 米 国 債 が 市 場 に 放 出 さ れ る 計 算 で 、 こ れ は 2 0 1 7 年 の 約 2 倍 で あ る 。 米 国 債 は そ の 安 全 性 や 流 動 性 の 高 さ か ら 国 外 か ら の 需 要 も あ り 、 中 国 を 筆 頭 に 多 く の 国 が 米 国 債 を 保 有 し て い る 。 5

第 四 節 日 本 銀 行 に よ る 国 債 買 い 入 れ の 問 題 点

第 三 節 で は 、 諸 外 国 に 比 べ 中 央 銀 行 に よ る 国 債 の 買 い 入 れ が 著 し く 多 い こ と を 述 べ た 。 本 節 で は 中 央 銀 行 に よ る 国 債 の 買 い 入 れ に よ っ て 何 が 起 こ る の か 、 中 央 銀 行 が 国 債 を 買 い 入 れ る こ と に よ っ て 生 じ る 問 題 点 に つ い て 考 え た い 。 1 0 ( 1 ) 国 債 市 場 の 流 動 性 低 下 問 題 点 の 一 つ 目 と し て 挙 げ ら れ る の は 、 国 債 市 場 の 流 動 性 の 低 下 で あ る 。 か つ て 日 本 国 債 市 場 で は 商 業 銀 行 や 生 命 保 険 会 社 な ど の 金 融 機 関 が 主 体 と な り 、 2 0 1 2 年 に は 国 債 保 有 率 が 約 6 3 % を 超 え て い た が 現 在 は 3 9 % に 減 少 し た 。 日 銀 1 5 の 口 座 に 眠 る 国 債 は 市 場 に 流 通 す る こ と な く 、 日 本 国 債 市 場 は い ず れ 買 う 国 債 が な く な る 事 態 に 陥 る 可 能 性 が あ る 。 ( 2 ) 国 債 の 金 融 仲 介 機 能 が そ が れ る 商 業 銀 行 や 年 金 保 険 機 関 は 国 債 を 担 保 に し た 資 金 調 達 や 資 本 経 営 が で き な く 2 0 な り 、 日 銀 の 強 制 介 入 や 利 回 り の コ ン ト ロ ー ル に よ っ て 国 債 の 持 つ 金 融 面 の 機 能 が 消 滅 し た 。 ( 3 ) 金 融 機 関 の 財 政 悪 化 問 題 点 の 三 つ 目 は 、 国 債 の 利 回 り が 下 が る と 銀 行 の 貸 出 金 利 も 低 下 し 、 銀 行 2 5 の 収 益 を 圧 迫 し て い る こ と で あ る 。 中 央 銀 行 が 国 債 を 買 い 入 れ る こ と に よ っ て 生 じ る 主 な 問 題 点 と し て 、 上 記 の 三 つ を 挙 げ た が 、 こ れ ら の 他 に も 以 下 の 問 題 も 存 在 す る 。 金 融 緩 和 を や め る と 金 利 が 上 昇 す る 。 す る と 日 銀 保 有 国 債 に 巨 額 の 損 失 が 発 生 す る 。 損 失 の 程 度 は 国 債 保 有 額 、 償 還 ま で の 残 存 期 間 、 そ し て 金 利 上 昇 幅 に 3 0

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31 よ る 。日 本 銀 行 の 黒 田 東 彦 総 裁 は 、 2 0 1 7 年 5 月 1 0 日 の 衆 議 院 財 務 金 融 委 員 会 で 、 「 長 期 金 利 が 1 % 上 昇 し た 場 合 、 日 銀 が 保 有 す る 国 債 の 評 価 損 が 2 3 兆 円 程 度 に 達 す る 」 と 答 え た 。 金 利 上 昇 幅 が 2 % で あ れ ば 、 4 6 兆 円 と い う こ と に な る の で あ る 。 仮 に 日 銀 の 目 標 ど お り に 消 費 者 物 価 上 昇 率 が 2 % に 上 昇 し た 場 合 に は 、 短 期 5 金 利 も 2 % 以 上 に な る だ ろ う 。 長 期 金 利 は そ れ よ り 高 く な る の で 、 3 % に な る 可 能 性 が 十 分 あ る 。 仮 に 3 % だ と す れ ば 、 保 有 国 債 の 評 価 損 は 、 6 9 兆 円 と い う 驚 く べ き 額 に な る 。 上 記 の 総 裁 答 弁 に あ る の は 評 価 損 な の で 、 売 却 し な け れ ば 実 現 し な い 。 国 債 を 保 有 し 続 け れ ば 損 失 は 含 み 損 に と お ま る 。 日 銀 は 国 債 が 召 喚 さ れ る ま で 保 有 し 続 け る 可 能 性 が 高 い だ ろ う 。 1 0

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第 三 章 金 融 政 策 と

ETF

第 三 章 で は E T F に つ い て 論 じ た い 。 近 年 、 日 銀 の E T F 購 入 に 関 し て 世 間 が 沸 き 上 が っ て い る が 、 各 国 の 中 央 銀 行 の 中 で 金 融 政 策 の 一 環 と し て E T F を 政 策 保 有 目 的 で 購 入 し て い る 中 央 銀 行 は 日 本 銀 行 を お い て ほ か に 存 在 し な い 。 5 そ の た め E T F に 関 し て 、 日 銀 と 他 の 中 央 銀 行 と を 比 較 す る こ と は で き な い が 、 こ れ ま で 日 銀 が 買 い 入 れ た E T F の 変 遷 や E T F の 現 状 、 日 銀 に よ る E T F 買 い 入 れ の 問 題 点 な ど 、 あ ら ゆ る 角 度 か ら E T F に つ い て 考 え て い き た い 。

第 一 節 E T F の 概 要

1 0 ( 1 ) E T F と は E T F と は E x c h a n g e T r a d e d F u n d s の 略 で 、 証 券 取 引 所 に 上 場 し 、 株 価 指 数 な ど に 代 表 さ れ る 指 標 へ の 連 動 を 目 指 す 「 指 数 連 動 型 上 場 投 資 信 託 」 で あ る 。 E T F の 代 表 的 な 商 品 と し て 、 「 東 証 株 価 指 数 ( T O P I X ) 」 に 連 動 す る E T F が あ る 。 T O P I X と は 、 東 京 証 券 取 引 所 に よ っ て 発 表 さ れ る 、 東 1 5 証 第 1 部 の 全 銘 柄 の 動 き を 反 映 し た 株 価 指 数 の こ と で あ り 、 こ の T O P I X に 連 動 す る E T F は 、 T O P I X の 値 動 き と ほ ぼ 同 じ 値 動 き を す る よ う に 運 用 さ れ る 。 つ ま り こ の E T F を 保 有 す る こ と で 、 T O P I X 全 体 に 投 資 を 行 っ て い る の と ほ ぼ 同 じ 効 果 が 得 ら れ る の で あ る 。 な お 一 部 、 投 資 信 託 の 仕 組 み を 用 い て い な い 商 品 や 、 日 本 の 法 律 で は な く 外 2 0 国 の 法 律 に 基 づ い て 組 成 さ れ た 外 国 籍 E T F も 、 日 本 の 市 場 に 上 場 し て い る が 、 そ れ ら も 総 称 し て E T F と 呼 ば れ る こ と が あ る 。 ( 2 ) 日 本 銀 行 に よ る E T F 購 入 の 目 的 日 銀 は 「 物 価 の 安 定 を 図 る こ と を 通 じ て 、 国 民 経 済 の 健 在 な 発 展 に 資 す る こ 2 5 と3」 を 理 念 と し て 掲 げ て い る が 、 日 本 は 物 価 上 昇 率 が マ イ ナ ス と な る デ フ レ に 長 年 苦 し ん で き た 。 そ の た め 日 銀 は デ フ レ か ら の 脱 却 と 経 済 発 展 の た め 、 2 0 1 3 年 4 月 に 「 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 」 の 導 入 を 決 定 し 、 物 価 上 昇 率 が 前 年 比 3 日 本 銀 行 「 日 本 銀 行 の 概 要 」 < h t t p s : / / w w w . b o j . o r . j p / a b o u t / o u t l i n e / i n d e x . h t m / > 2 0 1 8 年 1 0 月 1 9 日 ア ク セ ス

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33 2 % と な る こ と を 目 指 し て い る 。 そ う し た 中 で 日 銀 は 国 債 買 い 入 れ の 拡 大 な ど を 行 っ て い る が 、 E T F の 買 い 入 れ は こ う し た 国 債 の 購 入 や 金 利 の 引 き 下 げ に つ ぐ 、 金 融 市 場 へ の 資 金 供 給 を 目 的 と し て 行 わ れ る 金 融 緩 和 策 の ひ と つ で あ る 。 E T F の 買 い 入 れ が 行 わ れ る と 、 そ の E T F を 構 成 す る 現 物 株 の 株 価 が 上 昇 5 し 、 ま た 株 価 が 下 落 局 面 と な っ た 場 合 に も 、 日 銀 の 買 い 支 え の 予 測 か ら 下 落 幅 は 限 ら れ た も の と な り 、 景 気 へ の 悪 影 響 を 防 ぐ こ と に な る 。 金 融 緩 和 政 策 の 目 標 は イ ン フ レ 率 2 % 到 達 で あ る が 、 仮 に イ ン フ レ が 過 剰 に 進 ん で し ま っ た 場 合 に は 買 い 入 れ た E T F を 売 却 し て 通 貨 供 給 量 を 減 ら す こ と で 金 融 市 場 を コ ン ト ロ ー ル す る こ と が で き 、 金 融 緩 和 を 行 う 上 で E T F は 非 常 に 大 き な 役 割 を 果 た 1 0 し て い る の で あ る 。 ( 3 ) E T F の 種 類 日 銀 が 買 い 入 れ を 行 っ て い る E T F は 、 主 に 4 種 類 に 分 類 さ れ る 。 先 ほ ど 例 に 挙 げ た T O P I X 連 動 型 E T F の ほ か に 、 日 経 平 均 連 動 型 、 J P X 日 経 4 0 0 、 1 5 そ し て 設 備 人 材 E T F な ど で あ る 。 こ れ ら 4 種 類 の 株 価 の 特 徴 は 以 下 の 通 り で あ る 。 日 経 平 均 株 価 東 京 証 券 取 引 所 第 一 部 上 場 銘 柄 の う ち 、 取 引 が 活 発 で 流 動 性 の 高 い 2 2 5 銘 柄 が 選 定 さ れ 、 ダ ウ 平 均 株 価 を 基 に し た 計 算 方 法 で 算 出 さ れ る 株 価 の 値 。 T O P I X 東 京 証 券 取 引 所 第 一 部 上 場 株 式 銘 柄 全 て を 対 象 と し て 時 価 総 額 を 勘 案 し て 算 出 さ れ る 株 価 の 値 。 J P X 日 経 4 0 0 J P X グ ル ー プ ( 日 本 取 引 所 グ ル ー プ お よ び 東 京 証 券 取 引 所 ) と 日 本 経 済 新 聞 社 が 、 2 0 1 4 年 1 月 6 日 か ら 公 表 を 始 め た 新 た な 株 価 指 数 「 J P X 日 経 イ ン デ ッ ク ス 4 0 0 」 の こ と 。 資 本 の 効 率 的 活 用 や 株 主 を 意 識 し た 経 営 な ど 、 グ ロ ー バ ル な 投 資 基 準 に 求 め ら れ る 諸 要 件 を 満 た す 「 投 資 者 に と っ て 投 資 魅 力 の 高 い 会 社 」 4 0 0 社 か ら 構 成 さ れ 、 東 証 に 上 場 す る 全 銘 柄 か ら 、 過 去 3 期 以 内 に 債 務 超 過 や 営 業 赤 字 が な い こ と や 、 3 年 平 均 R O E ( 株 主 資 本 利 益 率 ) な ど の 基 準 を も と に 、 銘 柄 選 定 が 行 わ れ る 。 設 備 人 材 E T F 設 備 ・ 人 材 投 資 に 積 極 的 に 取 り 組 ん で い る 企 業 の 株 で 構 成 。 出 典 : 日 経 イ ン デ ッ ク ス フ ァ ン ド 「 日 経 平 均 、 T O P I X 、 J P X 4 0 0 に つ い て の 比 較 ま と め 」 を も と に 筆 者 作 成 h t t p : / / w 7 3 t . c o m / n i k k e i - t o p i x / 2 0

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 第I節 腹腔内接種實験  第2節 度下接種實験  第3節 経口的接種實験  第4節 結膜感染實験 第4章 総括及ピ考案

 第二節 運動速度ノ温度ニコル影響  第三節 名菌松ノ平均逃度

第一章 ブッダの涅槃と葬儀 第二章 舎利八分伝説の検証 第三章 仏塔の原語 第四章 仏塔の起源 第五章 仏塔の構造と供養法 第六章 仏舎利塔以前の仏塔 第二部

 第1節計測法  第2節 計測成績  第3節 年齢的差異・a就テ  第4節 性的差異二就テ  第5節 小 括 第5章  纏括並二結論

 そこで,今回はさらに,日本銀行の金融政策変更に合わせて期間を以下 のサブ・ピリオドに分けた分析を試みた。量的緩和政策解除 (2006年3月