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アトピー性皮膚炎患者由来黄色ブドウ球菌は表皮角化細胞のリソソームに蓄積し、Toll様受容体9を介してインターロイキン1-αの産生を促進する

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Academic year: 2021

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(1)

論 文 内 容 要 旨

Staphylococcus aureus

from atopic dermatitis skin

accumulates in the lysosomes of keratinocytes with

induction of IL-1α secretion via TLR9

(アトピー性皮膚炎患者由来黄色ブドウ球菌は表皮

角化細胞のリソソームに蓄積し、

Toll 様受容体 9 を介

してインターロイキン

1-α の産生を促進する)

Allergy, in press.

主指導教員:秀 道広 教授

(医歯薬保健学研究科 皮膚科学)

副指導教員:川上 秀史 教授

(原爆放射線医科学研究所 分子疫学)

副指導教員:田中 暁生 准教授

(医歯薬保健学研究科 皮膚科学)

森脇 昌哉

(医歯薬保健学研究科 医歯薬学専攻)

(2)

背景:アトピー性皮膚炎(AD)は皮膚炎の増悪と寛解を繰り返す慢性疾患で、病態の全容は依然 解明されておらず、根治方法も確立していない。AD 患者の皮膚には黄色ブドウ球菌が常在して いることが知られている。皮膚細菌叢の解析により AD の病勢と黄色ブドウ球菌の占有率に関連 があることが報告され、黄色ブドウ球菌の AD の病態への関与が疑われるが、その機序は解明さ れていない。我々は AD 患者の皮膚由来の黄色ブドウ球菌株(AD 株)がヒトランゲルハンス細胞 に与える影響が黄色ブドウ球菌株(標準株)とは異なることをこれまでに報告しており、今回我々 は AD 株と標準株を用いて、黄色ブドウ球菌の株による性質の違いをヒト表皮角化細胞である HaCaT 細胞を用いて検討した。 方法:死菌処理した黄色ブドウ球菌株と表皮ブドウ球菌で HaCaT 細胞を刺激し、サイトカイン産 生を ELISA 法で解析した。また蛍光免疫染色法を用いて形態学的な解析を施行した。 結果:AD 株で刺激した場合、標準株や表皮ブドウ球菌と比較して有意に多くの IL-1αの産生を 誘導した。一方、IL-6 の産生はどの黄色ブドウ球菌株でも差は認められなかった。また、HaCaT 細胞の蛍光免疫染色による形態学的観察では、AD 株は細胞内に多く取り込まれ、リソソームに 蓄積していた。一方、標準株ではこの現象は認められなかった。以上より黄色ブドウ球菌 AD 株 は IL-1αの産生を誘導し HaCaT 細胞のリソソーム内に蓄積する特徴を有することが明らかとな った。

リソソーム内には toll like receptor 9(TLR9)が発現しており、TLR9 は黄色ブドウ球菌の CpG DNA を認識する。次に IL-1α産生と TLR9 の関連について解析した。TLR9 の阻害剤である inhibitory ODN 及び TLR9 の siRNA を用いて TLR9 を阻害すると、AD 株により誘導される IL-1α の産生が有意に減少した。以上よりリソソーム内に蓄積した黄色ブドウ球菌の AD 株は TLR9 を介 して IL-1αの産生を惹起することが明らかとなった。 また本実験では死菌化した黄色ブドウ球菌を用いており、これらの AD 株の免疫応答は AD 株に 特異的な表面構造に起因することが予測された。そこで、AD 株をプロテイナーゼ K で処理して 表面蛋白を除去すると、従来見られていた AD 株のリソソームへの蓄積と IL-1α産生を誘導する 特性が失われた。 黄色ブドウ球菌は食作用により細胞内に取り込まれることが知られており、この経路には菌表 面のタンパク質が関与している。ブドウ球菌株の表面タンパク質を用いてウエスタンブロット法 で fibronectin binding protein (FnBP) の発現量を解析すると、AD 株は多くの FnBP を発現し ていた。また、抗 fibronectin 抗体を用いて fibronectin を阻害するとブドウ球菌の取り込みが 抑制された。 考察:IL-1αは炎症性サイトカインであり、種々の免疫反応を賦活化する作用をもつ。マウスモ デルでは表皮に IL-1α を過剰発現させると、AD 様の皮膚炎を起こすことが知られている。また、 一部の AD 患者の皮膚では健常人と比較して多くの IL-1α が発現していることが報告されており、 過剰な IL-1αが皮膚炎を惹起・増悪すると考えられる。今回の結果からは特定の黄色ブドウ球 菌(AD 株)が定着することで IL-1αの誘導を介して AD の発症・増悪に関与する可能性が示唆さ れた。

(3)

また、表皮角化細胞は TLR 等のパターン認識レセプターを介して黄色ブドウ球菌をはじめとす る病原体を認識する。黄色ブドウ球菌は主に細胞表面に発現する TLR2 で認識されるが、黄色ブ ドウ球菌の CpG-DNA はエンドソームやリソソ-ムに発現する TLR9 にも認識されることが知られ ており、樹状細胞のリソソ-ム内の黄色ブドウ球菌は TLR9 を介してサイトカイン産生を誘導す ることが示されている。今回申請者は AD 患者皮膚由来の黄色ブドウ球菌株が表皮角化細胞のリ ソソームに蓄積し、TLR9 を介して IL-1αの産生を誘導することを示した。また、AD 株の表層タ ンパクを除去することでこれらの特性が失われたことから、AD 株の特性は表層タンパクの違い に由来することが明らかとなった。 また、黄色ブドウ球菌の表面には皮膚への接着等に関与する種々のタンパクを発現している。 なかでも FnBP は皮膚への接着および、fibronectin を介して細胞の食作用を誘導することが知 られている。黄色ブドウ球菌 AD 株は標準株と比較して多くの FnBP を発現し、fibronectin を阻 害することで黄色ブドウ球菌 AD 株の取り込みが一部阻害された結果からは、FnBP を多く発現し ていることが黄色ブドウ球菌 AD 株の特性に寄与していると考えられる。しかし、fibronectin の阻害の効果は限定的であり、他の表層タンパクも関与しているものと考えられた。 今回の我々の結果からは特定の黄色ブドウ球菌が皮膚に定着することで AD が発症/増悪する 可能性が示唆された。

参照

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