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汗の主要抗原であるMGL_1304 に、肥満細胞や好塩基球を活性化することなく結合するヒトモノクローナルIgE 抗体の同定

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Academic year: 2021

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(1)

別記様式第 6 号(第 16 条第 3 項,第 25 条第 3 項関係)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

博士の専攻分野の名称 博士( 医学 ) 氏名 石井 香 学 位 授 与 の 条 件 学位規則第 4 条第 1・

2 項該当 論 文 題 目

A human monoclonal IgE antibody that binds to MGL_1304, a major allergen in human sweat, without activation of mast cells and basophils

(汗の主要抗原である MGL_1304 に、肥満細胞や好塩基球を活性化することなく結 合するヒトモノクローナル IgE 抗体の同定) 論文審査担当者 主 査 杉山 英二 印 審査委員 菅野 雅元 審査委員 竹野 幸夫 〔論文審査の結果の要旨〕 【背景・目的】 汗はアトピー性皮膚炎(AD)の増悪因子として知られており、コリン性蕁麻疹(ChU) では発汗刺激により膨疹が出現する。我々は、これまで多くのAD および ChU 患者がヒト 汗に対して即時型アレルギーを示し、その主要抗原がヒト皮膚に常在するMalassezia globosa が分泌する MGL_1304 であることを同定した。また、汗中の MGL_1304 と血清中 の抗MGL_1304-IgE の定量は、患者 IgE で感作された好塩基球もしくは肥満細胞によるヒ スタミン遊離試験(HRT)および抗 MGL_1304 マウスモノクローナル抗体と精製 MGL_1304 を用いたELISA により行ってきた。しかしこれらの方法では、IgE 濃度は標準患者血清を 基準とした相対的濃度で表すしかなく、また汗中のMGL_1304 を検出するためには感度が 不十分であった。 本研究では、市販されているヒトモノクローナル IgE の一つ(ABS-IgE)が MGL_1304 に 特 異 的 に 結 合 す る こ と を 証 明 し 、 そ の エ ピ ト ー プ や 結 合 特 性 を 調 べ る と と も に 、 MGL_1304 および抗 MGL_1304-IgE の測定に応用した。 【方法】 ABS-IgE の MGL_1304 に対する生化学的結合特性は、ELISA、ドットブロット、ウェス タンブロット、および表面プラズモン共鳴により解析した。MGL_1304 のヒスタミン遊離 活性に対する中和活性は、AD 患者由来好塩基球を用いた HRT により検討した。また、 ABS-IgE のヒト高親和性 IgE 受容体(FcRI)に対する感作能は、健常人由来好塩基球と、 ヒトFCERI 遺伝子を導入、発現させたラット肥満細胞株(RBL-48 細胞)を用いて検討した。

【結果】

(2)

ルIgE を用いた検討では、ABS 社製の 1 クローン(ABS-IgE)のみ IgE および MGL_1304 の各濃度依存性に結合した。またウェスタンブロットでは、ABS-IgE は MGL_1304 に一致 する分子量の蛋白を認識し、MGL_1304 のリコンビナント蛋白断片を用いたドットブロッ トからは、ABS-IgE は MGL_1304 の 46〜183 番目のアミノ酸配列を含む高次構造を認識す ることが示唆された。さらに表面プラズモン共鳴を用いた解析では、MGL_1304 に対する ABS-IgE の結合解離定数(KD 値)は1.99 nM で、かなり親和性の高い結合であることが示 された。 次に、患者血清中のMGL_1304 特異的 IgE 量を、標準 AD 患者血清(1000 U/ml)に対す る相対値から、IgE 重量濃度で表記するために ABS-IgE をスタンダード IgE とする ELISA を構築し、これまで標準AD 患者血清に含まれる抗 MGL_1304-IgE 濃度を 32 ng/ml と算出 した。 MGL_1304 量の測定では、従来 ELISA プレートに直接コートした MGL_1304 を抗 MGL_1304 マウスモノクローナル抗体により定量していたのに対し、本研究では抗 MGL_1304 モノクローナル抗体をプレートにコートし、ABS-IgE を検出抗体として用いる サンドイッチELISA を構築し、約 10 倍高い検出感度を得た。その結果、ヒト汗中に含ま れるMGL_1304 量をほぼ正確に定量することができ、9名のボランティアから採取した汗 中には0.6~8.0 ng/ml (3.76±2.64 ng/ml, mean±SD)の MGL_1304 が含まれることを確認し た。 さらにMGL_1304 を ABS-IgE とプレインキュベーションすると、ヒト汗中の 3 ng/ml の MGL_1304 のヒスタミン遊離活性の 50%以上が 30 ng/ml の ABS-IgE により抑制された。一 方、乳酸処理により内因性IgE を除いた健常人由来ヒト好塩基球、およびヒト FcRI 発現 ラット肥満細胞株のRBL-48 細胞を ABS-IgE で感作すると、いずれも抗 IgE 抗体には反応 してヒスタミンを遊離したが、予想に反してMGL_1304 刺激には反応しなかった。 以上の結果から、本論文はABS-IgE は、単体で MGL_1304 に特異的に結合し、 MGL_1304 のヒスタミン遊離活性を中和するのみならず、好塩基球や肥満細胞の FcRI に 結合した状態でMGL_1304 に曝露されても細胞を活性化しないというユニークな性質を持 つこと、そして、この特性は、高感度にMGL_1304 を測定するサンドイッチ ELISA、およ びヒト血清中の抗MGL_1304-IgE 濃度測定のための標準物質として利用できるとともに、 今後、MGL_1304 の関与するアレルギー疾患治療薬のプロトタイプとして使用できる可能 性を示した。以上の知見はアレルギー疾患の治療の進歩に寄与するところが大きいと評価 される。よって審査委員会委員全員は、本論文が著者に博士(医学)の学位を授与するに 十分な価値あるものと認めた。

参照

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