患者さまのしおり
ステントグラフトによる
胸
きょうぶだいどうみゃくりゅう
目次
はじめに1
大動脈の解剖2
動脈瘤とは何ですか?3
胸部大動脈瘤による症状にはどのようなものがありますか?4
胸部大動脈瘤に対して現在どのような治療が行われていますか?4
腹部大動脈瘤による症状にはどのようなものがありますか?5
腹部大動脈瘤に対して現在どのような治療が行われていますか?5
開胸術とは何ですか?6
開腹術とは何ですか?7
開胸術のリスクにはどのようなものがありますか?8
開胸術に代わる治療法はありますか?8
開腹術のリスクにはどのようなものがありますか?9
開腹術に代わる治療法はありますか?9
胸部(もしくは腹部)ステントグラフト内挿術を受けられますか?10
次のようなことを担当医師に訊ねてみましょう10
禁忌とは何ですか?1 1
胸部ステントグラフト内挿術はどのように行われますか?12
腹部ステントグラフト内挿術はどのように行われますか?14
ステントグラフト内挿術のリスクにはどのようなものがありますか?16
ステントグラフト内挿術の利点にはどのようなものがありますか?18
ステントグラフト内挿術後、どのようなことが予想されますか?18
内挿術後の経過観察19
はじめに
本冊子は、胸
きょうぶ部もしくは腹
ふくぶだいどうみゃくりゅう部大動脈瘤を治療する上で「ステント
グラフト内
ないそうじゅつ挿術」が患者さまに適した治療なのかを判断するに
あたり、役立つように作成されたガイドブックです。
本冊子をよくお読みいただき、疑問に感じられたことは担当医師
とよく話し合うことをお勧
すすめします。ステントグラフト内挿術が、
患者さまにとって一番適した治療法なのかどうかを判断できるの
は医師だけです。
本文中に出てくる医学用語の内、太字になっているものは21〜23
ページの用語集で解説していますのでご覧ください。
大動脈の解
かいぼう剖
大動脈は、体の中で最も太い動脈です。心しんぞう臓からの血液を運ぶ血けっかん管を、動脈 と呼びます。胸部大動脈は、心臓から押し出された血液が体内を循じゅんかん環する際、 最初に通っていく血管です。胸部大動脈は、大動脈の一部であり胸のなかにあ ります(図1を参照)。 胸部大動脈には、血液を心臓から頭部、 両りょうわん腕 、および脊せきずい髄へと送るいくつかの 重要な血管があります。胸部大動脈の直径は、通常約2〜3センチになります。 この直径は人によって異なり、また年齢と共に若干太くなります。 胸部大動脈には、 胸きょうぶじょうこうだいどうみゃく部上行大動脈 、 大だいどうみゃくきゅう動脈弓 、胸きょうぶかこうだいどうみゃく部下行大動脈の3つの 主要部分があります(図1を参照)。大動脈は心臓から上に向かってカーブして おり、血液は頭部に向かって流れます。大動脈はその後、下へとカーブし、血液 は 両りょうあし脚 の方へと流れ循環します。 腹部大動脈は、大動脈の一部であり腹部にあります(図1を参照)。 心臓 胸部下行大動脈 胸部上行大動脈 大動脈弓 腎動脈 腎臓 しんぞう きょうぶかこうだいどうみゃく ふくぶだいどうみゃく きょうぶじょうこうだいどうみゃく だいどうみゃくきゅう じんどうみゃく じんぞう 図1動
どうみゃくりゅう脈瘤 とは何ですか?
動脈瘤とは、血管の弱くなった部分が 瘤こぶじょう状 もしくは風船のように膨らんだもので す。通常、動脈瘤は動脈にゴムのような 弾だんりょくせい力性 を与えるタンパク質が壊こわれることで 生じます。また動脈瘤は、血けっかんへき管壁を弱くする遺伝や外傷、あるいは他の疾しっかん患が 原因で形成されることもあります。動脈瘤により薄く弱くなった血管壁は、血圧 によって破は れ つ裂する可能性があります。動脈瘤が破裂すると、大量の内出血を引き 起こすことがあり、緊急の処置が必要になることや死に至ることもあります。 胸部を走る大動脈の一部に形成される動脈瘤は、胸部大動脈瘤と呼ばれます (図2を参照)。この用語はよく「 TティーエーエーA A 」と略されます。 下か こ う行大動脈の罹り か ん患部分の直径が、正常な部分の1.5倍以上ある場合や、罹患部分 の直径が約4.5センチ以上になる場合は、動脈瘤である可能性が考えられます。 腹部に形成される動脈瘤は腹部大動脈瘤と呼ばれます(図2を参照)。この疾患 はよく「AトリプルエーAA」と略されます。腹部大動脈の罹患部分の直径が、正常な部分の 1.5倍以上ある場合や、罹患 部分の直径が約4.5センチ以上になる場合は、動脈 瘤である可能性が考えられます。 大動脈瘤が起きるリスクは年齢とともに高くなります。一般的に、50歳以上の人 に起こりやすく、女性よりも男性に多くみられます。その他のリスクとしては喫き つえん 煙 や高こうけつあつ血圧があります。大動脈瘤の家か ぞ く れ き族歴がある患者さまはリスクが高いため、 医師の診察を受けることをお勧めします。 図2 心臓 動脈瘤 腎動脈 腎臓胸部大動脈瘤による症状にはどのようなものがありますか?
ほとんどの人は胸部大動脈瘤による自じかくしょうじょう覚症状がありません。症状があるとすれば、 背 は い ぶ つ う 部痛、 胸きょうつう痛 、声がかれる(嗄さ せ い声)、食べた物が飲み込みにくくなる(嚥え ん げ こ ん な ん下困難) もしくは血けったん痰等があります。 ほとんどの場合、医師が別の理由での検査(胸部レントゲン写真、 CシーティーT や M エムアールアイ R I 等)を行った際に、動脈瘤が見つかります。動脈瘤が大きくなるほど破裂 する可能性も高くなります。このような破裂は、 動どうみゃくりゅうはれつ脈瘤破裂 と呼ばれています。 大動脈が破裂すると血液が血管の外に流出し、主要臓ぞ う き器に行き渡らなくなり、 死につながることがよくあります。動脈瘤が破裂するおそれがあると医師が判断 した場合、胸部大動脈瘤に対して治療が推奨されます。胸部大動脈瘤に対して現在どのような治療が行われていま
すか?
全ての胸部大動脈瘤に手術が必要なわけではありません。担当医師は胸部大動脈 瘤の内科的治療を試みることもあります。 しかし内科的治療は、動脈瘤を治療するものではなく、罹患血管に対するスト レスを軽減しようとするものです。一般的な内科的治療には、以下のものがあり ます。 • 動脈瘤が小さい場合、担当医師は注意深く経過を観察し、変化があるか どうかを見ることがあります。 • 血圧が高い場合、血圧を下げる薬剤が処方されることがあります。 • 喫煙者は、禁煙するよう担当医師からアドバイスを受けることがあります。 • 担当医師が食事や運動などの生活習慣を変えるようアドバイスすることも あります。 動脈瘤が破裂するおそれがあると担当医師が判断した場合、以下の2種類の腹部大動脈瘤による症状にはどのようなものがありますか?
ほとんどの人は腹部大動脈瘤による自覚症状がありません。症状がある場合は、 腹 ふくつう 痛、背部痛、胸痛などがあります。痛みは軽度から重度まで多た き岐にわたり ます。中には動脈瘤を腹部に脈みゃくう打つような塊かたまりとして感じる人もいます。腹部 大動脈瘤は、動脈瘤とは関連のない別の健康上の理由で検査した際に発見される ことがよくあります。担当医師は触診により腹部の膨らみや脈みゃくはく拍(脈打つような 感じ)を発見することがありますが、ほとんどの場合、CTや超ちょうおんぱ音波等の医学的 検査で見つかります。腹部大動脈瘤に対して現在どのような治療が行われていま
すか?
全ての腹部大動脈瘤に手術が必要なわけではありません。担当医師は腹部大動脈 瘤の内科的治療を試みることもあります。 しかし内科的治療は、動脈瘤を治療するものではなく、罹患血管に対するスト レスを軽減しようとするものです。一般的な内科的治療には、以下のものがあり ます。 • 動脈瘤が小さい場合、担当医師は注意深く経過を観察し、変化があるか どうかを見ることがあります。 • 血圧が高い場合、血圧を下げる薬剤が処方されることがあります。 • 喫煙者は、禁煙するよう担当医師からアドバイスを受けることがあります。 • 担当医師が食事や運動などの生活習慣を変えるようアドバイスすることも あります。 腹部大動脈瘤が破裂するおそれがあると担当医師が判断した場合、以下の2種類 の動脈瘤治療のうち、いずれかを勧められることが考えられます。 • 開かいふくじゅつ腹 術 • 腹部ステントグラフト内挿術開胸術とは何ですか?
開胸術とは、動脈瘤を形成している血管の一部を「グラフト」という人じんこうけっかん工血管と 置き換える従じゅうらい来の治療法です。開胸術は全ぜ ん し ん ま す い か身麻酔下で行われ、通常4〜8時間 かかります。 外げ か い科医は胸部を切せっかい開し(図3を参照)、動脈瘤を切せつじょ除します。この作業は大動脈 を流れる血液を止めて行います。最後に、動脈瘤のあった血管はグラフトを適切 な位置に縫ぬい付けることで置き換えられます。 通常、患者さまは手術後集中治療室で1日程度過ごし、 合がっぺいしょう併症 がなければ3〜 8週間程度の入院生活となります。患者さまが手術前のQOL(Quality of Life: 生活の質)を取り戻すまでには、通常3〜6ヵ月程度かかります。手術を受けた 患者さまには1年後まで経過観察が行われ、その時点で問題がなければ、通院 の必要がなくなることもあります。 開胸術は、胸部を切開するため、全ての患者さまがその手術に十分に耐えられる とは限りません。 開胸術による切開 動脈瘤 図3開腹術とは何ですか?
開腹術とは、動脈瘤を形成している血管の一部を「グラフト」という人工血管に 置き換える従来の治療法です。開腹術は全身麻酔下で行われ、通常3〜5時間 かかります。 外科医は腹部を切開し(図4を参照)、動脈瘤を切り開きます。この作業は大動脈 を流れる血液を止めて行います。次に、動脈瘤のあった血管はグラフトを適切な 位置に縫い込むことで置き換えられます。 通常、患者さまは手術後集中治療室で1日程度過ごし、少なくとも1〜2週間の 入院生活となります。患者さまが手術前のQOL(生活の質)を取り戻すまでには、 通常1〜2ヵ月程度かかります。手術を受けた患者さまには1年後まで経過観察 が行われ、その時点で問題がなければ、通院の必要がなくなることもあります。 開腹術はその安全性・有効性が確認された治療法ですが、腹部を切開する ため、全ての患者さまがその手術に十分に耐えられるとは限りません。 腹部大動脈瘤を治療するために 開腹された状態 図4開胸術のリスクにはどのようなものがありますか?
動脈瘤を外科的に治療することは、集中治療室での長期滞在や長期入院が 必要になる可能性の高い複雑なプロセスです。この治療方法が患者さまに適して いるかどうか、担当医師とよく話し合ってください。 開胸術による合併症には主として以下のものがあります。 • 神経系合併症(例、 脳のうそっちゅう卒中 や対つ い ま ひ麻痺) • 心しんぱい肺系合併症(例、心し ん ぞ う ほ っ さ臓発作や呼こきゅうふぜん吸不全) • 腎じ ん ふ ぜ ん不全 • 多た ぞ う き ふ ぜ ん臓器不全 • 創そうしょうちゆ傷治癒に関連する合併症 • 出血 • 感染開胸術に代わる治療法はありますか?
開胸術に代わる治療法として、胸部ステントグラフト内挿術があります。金きんぞくせい属製 の骨ほ ね ぐ組みに支えられたグラフト(図5を参照)を、周しゅうへんそしき辺組織を外科的に切開する ことなく、動脈瘤の長さの範囲内に留りゅうち置します。胸部ステントグラフトは、弱く なった血管壁を内側から補ほきょう強し、動脈瘤が破裂するのを防ふせぎます。 ポリエステル製の筒 「グラフト(人工血管)」 金属製の骨組み 「ステント」 図5 胸部ステントグラフト開腹術のリスクにはどのようなものがありますか?
動脈瘤を外科的に治療することは、集中治療室での長期滞在や長期入院が 必要になる可能性の高い複雑なプロセスです。この治療方法が患者さまに適して いるかどうか、担当医師とよく話し合ってください。 開腹術による合併症には主として以下のものがあります。 • 腸管虚きょけつ血 • 創傷治癒に関連する合併症 • 出血 • 感染開腹術に代わる治療法はありますか?
開腹術に代わる治療法には、腹部ステントグラフト内挿術があります。金属製 の骨組みに支えられたグラフト(図6を参照)を周辺組織を外科的に切開する ことなく、動脈瘤の長さの範囲内に留置します。腹部ステントグラフトは、弱く なった血管壁を内側から補強し、動脈瘤が破裂するのを防ぎます。 ポリエステル製の筒 「グラフト(人工血管)」 金属製の骨組み 「ステント」 図6 腹部ステントグラフト胸部(もしくは腹部)ステントグラフト内挿術を受けられますか?
ステントグラフト内挿術を検討するためには、以下の条件が満たされる必要が あります。 • 1〜3時間の手術を受けることができる。 • 術後、最低年1回の通院も含め、定期的に予定される診察や検査のために 通院することができる。 • 外科的治療術と比べた際のステントグラフト内挿術の不利益と利益について 十分な説明を受けている。 非常に大きな動脈瘤もしくは、屈くっきょく曲や石せ っ か い か灰化の多い血管を持つ患者さまは、 ステントグラフト内挿術に適していないことがあります。本冊子だけでは「ステントグラフト内挿術」が患者さまに
適しているかどうかの判断はできません。
また、担当医師の判断に代わるものでも
ありません。
本冊子をよくお読みになった上で、担当
医師とご相談ください。
次のようなことを担当医師にたずねてみましょう。
• 動脈瘤に対する治ち り ょ う せ ん た く し療選択肢には、どのようなものがあるのか全て教えて 欲しい。 • ステントグラフトは、私にとって適切な治療法か? • ステントグラフトの使用に伴う、大動脈瘤破裂のリスクはどのようなものか? • ステントグラフト内挿術を受けて、何らかの症状がでることがあるのか? • 術後、どのくらい通院する必要があるのか? • 経過観察では、どのような検査を受ける必要があるのか? • ステントグラフトによる治療後も、動脈瘤が大きくなり続けている場合どう したらいいのか?禁
き ん き忌とは何ですか?
禁忌とは、治療を行うと患者さまにダメージを与えたり、治療の効果を失ったり するおそれの大きいもののことをいいます。すなわち、特定の薬物の投と う よ与、 処置、あるいは手術をその患者さまに行ってはいけない状況のことです。 以下のような患者さまにはステントグラフトは禁忌となっています。 • 全身性感かんせんしょう染症の患者さま • ステントグラフトの材料1 に対してアレルギーのある患者さま • 抗こうぎょうこざい凝固剤または造ぞうえいざい影剤に対して過か び ん敏もしくは使用が禁忌である患者さま • 出血傾向および凝固障害の既往がある、または輸血を拒否する患者さま • ステントグラフトのデリバリーカテーテルおよび併用カテーテル類を挿そうにゅう入 するための適切なアクセス血管を確保することができない、またはアクセス 血管から安全にカテーテルを挿入できないと思われる患者さまステントグラフト留置に際しての注意事項
• 「ステントグラフトによる動脈瘤治療術」を受けた全ての患者さまは、ステ ントグラフトと動脈瘤の状態を診断するため、必ず定期的に画が ぞ う像診し ん だ ん け ん さ断検査 を受けてください(画像診断とは、 Xエックス線、CT、MRI、あるいは他の技術を 使用して体内を画像化し観察する検査と定義します)。 •ステントグラフトを使用する際には、画像診断用の造影剤を投与する必要 があります。腎じんぞう臓に問題のある患者さまは、内挿術後に腎不全のリスクが高く なる可能性があります。 •長期間にわたる血けっかんぞうえいほう管造影法によるリスクについては、これまでのところまだ 確立していません。 • カテーテルを使用する処置は、どのようなものであっても血管の穿せんこう孔(穴が あくこと)や解か い り離(血管の層が剥はがれること)が起きる危険性があります。 大きいサイズのカテーテルを使用すると、この危険性が高くなります。胸部ステントグラフト内挿術はどのように行われますか?
内挿術は、局きょくしょますい所麻酔あるいは全身麻酔下で行われます。術前に数種類の検査 を行い、それによって医師が動脈瘤およびその周し ゅ う へ ん ぶ い辺部位を確認します。これらの 検査は、通常CT等の画像診断を用いて行います。CTは、X線を用いて動脈瘤や 近 きんせつ 接する血管の画像を作り出す画像診断法です。 「ステントグラフト内挿術」準備のために鼠そ け い ぶ径部(脚のつけ根)を小さく切開し、 ステントグラフトのデリバリーカテーテルが大だうたいどうみゃく腿動脈内に挿入できるようにし ます。鼠径部の動脈が小さすぎて器具(シース)を挿入できない場合、医師は 骨盤にある大きめの動脈から挿入したり、同動脈に外科用グラフト(導管)を 取り付けて使用することもあります。 医師は、血管造影法(X線を使ってビデオ画像を見るようなもの)を使って、鼠径部 の血管内を進むカテーテルの動きを確認します。胸部下行大動脈の動脈瘤上 に、グラフトの位置を正しく合わせる際にも血管造影法を使用します(図7を 参照)。 デリバリーカテーテル ステントグラフト 動脈瘤 鼠径部 胸部大動脈 図7デリバリーカテーテルを適切な位置まで進めると、胸部ステントグラフトは、 デリバリーカテーテルから大動脈内へとゆっくりと 放ほうしゅつ出 されます。ステントグラ フトは放出されると、適切な大きさに自動的に 拡かくちょう張 し(図8を参照)、動脈瘤 への血流を完全に遮しゃだん断します。 動脈瘤の形や大きさによっては、追加のステントグラフトを使うこともあります。 それにより、確実にステントグラフトが動脈瘤の全長をカバーし、血液が動脈瘤 内に流れ込まないようにします。その後、医師は血管造影法を行って、ステント グラフトが適切な位置に留置されたかどうかを確認します。内挿術は通常1〜3 時間かかります。 患者さまは、胸部を切開する必要がないため術後3〜5日で退院できる場合が 多く、ほとんどの場合には数週間以内に正常なQOL(生活の質)を取り戻す ことができます。 胸部ステントグラフト 胸部大動脈 動脈瘤 図8
腹部ステントグラフト内挿術はどのように行われますか?
内挿術は、局部、局所もしくは全身麻酔下で行われます。術前に数種類の検査 を行い、それによって医師が動脈瘤およびその周辺部位を確認します。これらの 検査は、通常CT等の画像診断を用いて行います。CTは、X線を用いて動脈瘤 や近接する血管の画像を映し出す画像診断法です。 「ステントグラフト内挿術」準備のために鼠径部(脚のつけ根)を小さく切開し、 ステントグラフトのデリバリーカテーテルが大腿動脈内に挿入できるようにします。 医師は、血管造影法(X線を使ってビデオ画像を見るようなもの)を使って、鼠径部 の血管内を進むカテーテルの動きを確認します。腹部大動脈の動脈瘤上に、 グラフトの位置を正しく合わせる際にも血管造影法を使用します(図9を参照)。 患者さまの大腿部に挿入されている デリバリーカテーテル 腹部ステントグラフト 図9デリバリーカテーテルを適切な位置まで進めると、腹部ステントグラフトは、 デリバリーカテーテルから大動脈内へゆっくりと放出されます。ステントグラ フトは放出されると、適切な大きさに自動的に拡張するので、動脈瘤への血流 を完全に遮断します(図10を参照)。その後、デリバリーシステムは体内から 取り出されます。 動脈瘤の形や大きさによっては、追加のステントグラフトを使うこともあります。 それにより、確実にステントグラフトが動脈瘤の全長をカバーし、血液が動脈瘤 内に流れ込まないようにします。その後、医師は血管造影を行って、ステント グラフトが適切な位置に留置されたかどうかを確認します。内挿術は通常1〜2 時間ほどかかります。 患者さまは、腹部を切開する必要がないため術後3〜5日で退院できる場合が 多く、ほとんどの場合は2週間程度で正常なQOL(生活の質)を取り戻すことが できます。 動脈瘤内の 腹部ステントグラフト 図10
ステントグラフト内挿術のリスクにはどのようなものがあり
ますか?
ステントグラフト内挿術によるリスクはいくつかあります。全てのリスクについて、 担当医師とよく話し合ってください。ステントグラフトの使用に関連する合併症 には、以下のようなものがあります。 • エンドリーク:エンドリークとはグラフト周囲の血液が動どうみゃくりゅうのう脈瘤嚢内に漏もれる ことです。エンドリークはCTによって発見することができます。何らかの治療 を必要とするかどうかは担当医師が判断します。 • ステントグラフトのマイグレーション(移動):年数を経るとともにステント グラフトが元の位置から移動してしまうことをいいます。これはCTのような 画像診断技術を用いて確認することができます。何らかの治療を必要とするか どうかは担当医師が判断します。 • 医い り ょ う き き ゆ ら い療機器由来の問題(例:ステントグラフトの縫ほ う ご う し合糸や金属部分の破は そ ん損): 医療機器由来の問題はX線等の画像診断技術を用いて発見することができ ます。何らかの治療を必要とするかどうかは担当医師が判断します。 • 動脈瘤の拡大または破裂 • 追加の内挿術または手術が必要となることがあります。 • 画像診断のために造影剤を使用します。患者さまの腎機能に問題がある 場合には、腎機能不全になるリスクがあります。 • 鼠径部の感染や痛み • 吐き気や嘔お う と吐 • 発熱および炎症 • カテーテルを挿入した血管に穿孔(穴が開くこと)や裂れっしょう傷等の合併症が おきる場合があります。カテーテルの径が大きいほどリスクが高くなります。 • 血液が本来の動脈から毛細血管へと流れず、直接動脈から静脈へ流れる 動 どうじょうみゃくろう 静脈瘻が形成される可能性があります。• 動脈または静脈に血けっせん栓(血液の固まり)ができることにより、臓器や下肢 への血流を妨げることがあります。 • 錯さくかんかく感覚、脳卒中、一い っ か せ い の う き ょ け つ ほ っ さ過性脳虚血発作、対麻痺、不全対麻痺、麻ま ひ痺を含む 下肢または全身の神経合併症 • 血管もしくはデバイスの閉へいそく塞(詰まること) • 肝かんぞう臓の合併症 • 腎臓の合併症 • 肺の合併症 • 麻酔の合併症および関連事象 • 心臓の合併症および関連事象 • リンパ系の合併症および関連事象 • 血管系合併症 • アレルギー反応(造影剤、抗血小板療法、ステントグラフト原材料) • 漿液腫 • 放射線の過剰照射/不適切な照射 • 感染および組織の壊死を含む泌ひ にょうき尿器系の問題 • インポテンス • ショック • 組織損傷 • 精神状態の変化 • 浮腫 • 死亡
ステントグラフト内挿術の利点にはどのようなものがあり
ますか?
ステントグラフト内挿術の利点には、以下のものがあります。 • 低ていしんしゅうしゅぎ侵襲手技である • 局きょくしょますいか所麻酔下で手術を行うことができる • 外科手術に比べて手術による合併症を起こす割合が低い2 • 外科手術に比べて死亡リスクが低い3 • 術中の失しっけつりょう血量が少ない2 • 術後の集しゅうちゅうちりょうしつたいざいじかん中治療室滞在時間が少ない2 • 外科手術に比べて回復が早く、入院期間が短い2 , 4ステントグラフト内挿術後、どのようなことが予想されますか?
内挿術後の最初の数日間は、不ふ か い か ん快感が生じることが報告されています。術直後 の4〜6時間は、挿そうにゅうようせっかい入用切開による鼠径部(脚のつけ根)の傷の治癒を早める ため、横になっているよう指示されることがあります。 鼠径部の切開による傷に軽度の不快感を感じることがありますが、この不快感 は通常2日程度で解消されます。1〜3日間は、鼠径部の切開部の腫れ、脚のしびれ、 悪お し ん心、嘔吐、脚の痛み、またはズキズキとする感じ、食欲不振、発熱、便秘等の 副 ふ く さ よ う 作用が生じることもあります。内挿術後の経過観察
通院計画
経過観察は、ステントグラフトによる治療が成功したかどうかを判断するのに 重要です。担当医師は1ヵ月後、半年後、1年後、それ以降は毎年1回、経過観察の ための通院の予定を組みます。 各通院予定日には、ステントグラフトの状態を診断するために、画像診断(血管 造影、CT、MRI等)検査を行います。腎機能がよくない場合、造影剤の使用に ついては必ず担当医師に確認してください。 CTの画像診断によって、エンドリークが発見される患者さまもいます。エンド リークとは、内挿術後もまだ少量の血液が動脈瘤内に流れ込んでいることを 言います。エンドリークを治療する必要があると担当医師が判断した場合、追加 のステントグラフト内挿術によって治療できることもよくありますが、それができ ない時は、外科手術によって治療しなければならない場合もあります。特
と く て い い り ょ う き き と う ろ く よ う し定医療機器登録用紙について
ステントグラフト内挿術後、患者さまの名前や連絡先などをあらかじめ登録して おき、必要なお知らせをする場合に、主治医を通じて登録された連絡先などに 情報の提供を行います。そのために担当医師は特定医療機器登録用紙に必要 事項を記入します。写しの1部は本人用、もう1部は担当医師用、そして3枚目の 写しはステントグラフトの販売元の会社にて保管されます。この登録用紙には、 大動脈に留置したステントグラフトのモデル番号、シリアル番号と本数等が記載 されています。担当医師に連絡した方がよい症状にはどのようなものが
ありますか?
以下の症状が1つでもある場合には、担当医師に連絡してください。 • 痛み、しびれ、冷感、 脱だつりょくかん力感 、あるいは脚の感覚がない • 何らかの背部痛、胸痛、腹痛、あるいは鼠径部(脚のつけ根)の痛み補足情報
日本メドトロニックの患者さま向け情報 特定の体調・症状やステントグラフトに関してご質問がある場合は、担当医師に ご連絡ください。当社のステントグラフト製品についてさらにご質問がありまし たら、日本メドトロニックまでお気軽にEメール、お電話またはFAXにてご連絡 ください。 ストラクチャラルハート&エンドバスキュラー事業部 本社:〒105-0021 東京都港区東新橋2-14-1 TEL:03-6430-2015 FAX:03-6430-7120 http://www.medtronic.co.jp 疾患サイト(大動脈瘤.com) http://mdtendovascular.com 大動脈瘤に関して、実施施設等の詳細はこちらのサイトを参照ください。 「大動脈瘤のはなし」 日本ステントグラフト実施基準管理委員会 http://stentgraft.jp/用語集
CT(コンピュータ断だんそうさつえい層撮影): 一連のX線を用いて動脈瘤や近接する血管の 画像を作り出す画像診断技術。 M エムア−ル R Cコ ン デ ィ シ ョ ナ ルonditional: 指定された一定の条件下(本品の場合、3T以下の強度の 磁じ ば場)で、MRI検査が危険をもたらさないことが実証されていること。 MRI(磁じ き き ょ う め い が ぞ う ほ う気共鳴画像法): 磁場を用いて体の内部構造の画像を作り出す画像 技術。 T ティーエーエー A A: 「胸部大動脈瘤」を参照。 エンドリーク(漏ろうしゅつ出): ステントグラフト内挿後に血液が動脈瘤内に流れ込む こと。 開 かいきょうじゅつ 胸 術 : 患者は全身麻酔を受け、医師が患者の胸部を切開して動脈瘤に アクセスする手技。その後、グラフトを適切な位置に縫合し、動脈瘤のあった 血管と置換する。 開腹術/開腹による外科的治療術: 患者は麻酔を受け、医師が患者の腹部を 切開して動脈瘤にアクセスする手技。その後、グラフトを適切な位置に縫合 し、動脈瘤のあった血管と置換する。 解 かいぼうがく 剖学: 体の構造や体の器官に関する学問。 画 が ぞ う し ん だ ん 像診断: X線、CT、MRI、あるいは他の技術を使用して体内を画像化して観察 する検査。 胸 きょうぶかこうだいどうみゃく 部下行大動脈: 血液が両足の方へと流れている胸部大動脈の一部分。 胸 きょうぶじょうこうだいどうみゃく 部上行大動脈: 心臓に最も近い大動脈の一部分。 胸 きょうぶ 部ステントグラフト: つつじょう筒状の金属製の骨組み(ステント)に支えられたポリ エステル織布製の筒(人工血管/グラフト)、PTFE製のものもある。ステントグラ胸 きょうぶ 部ステントグラフト内ないそうじゅつ挿術: 罹患血管の周辺組織を外科的に切開すること なく、筒状のステントグラフトを罹患血管の内側に留置する低侵襲手技。患者 には局所麻酔あるいは全身麻酔が施ほどこされる。医師は患者の鼠径部(又は下腹部) に切開を入れ、そこから動脈瘤へとアクセスする。 胸 きょうぶだいどうみゃく 部大動脈: 胸部を走る大動脈。 胸 きょうぶだいどうみゃくりゅう 部 大 動 脈 瘤: 胸部大動脈の弱くなった部分が瘤状または風船のように 膨らんだもの。「TAA」と略されることが多い。 禁き ん き忌: 患者に害を及ぼすおそれがあるため、薬物、処置、あるいは手術を用いる べきではない特定の状況。 血 けっかんぞうえいほう 管造影法: モニター上でリアルタイムに確認することができるX線画像診断 技術。 血管内(Eエ ン ド バ ス キ ュ ラ ーndovascular): 血管の内側 血管内ステントグラフト内挿術: 罹患血管の周辺組織を外科的に切開すること なく、筒状のステントグラフトを罹患血管の内側に留置する低侵襲手技。 遮断する/遮断: 主要な部分から血流を切り離すこと、あるいは排除する こと。 大 だいたいどうみゃく 腿 動脈: 鼠径部から大腿の筋肉内にある大きな動脈。通常、ステントグラフト のデリバリーシステムは、大腿動脈を介して挿入される。 大 だいどうみゃく 動 脈: 体の動脈系の主要血管。 大 だいどうみゃくきゅう 動 脈 弓: 大動脈の一部で、頭部や両腕へと走る血管が分岐している。 超 ちょうおんぱ 音波: 高周波音波を使用することによって画像を作り出す画像診断技術。
導 どうかん 管: 主要血管に縫い付ける繊せ ん い せ い維性の管くだで、ステントグラフトデリバリーシス テムを挿入できない際の代替方法となる。大腿動脈が小さすぎて挿入できない 場合に使用される。 動 どうみゃく 脈: 心臓から体内のその他の部分へと血液を運ぶ血管。 動 どうみゃくりゅう 脈 瘤 : 血管の弱くなった部分が瘤状または風船のように膨らんだもの。 動 どうみゃくりゅうのう 脈瘤嚢 : 動脈瘤によって血管内に作られた袋または膨らみ。 動 どうみゃくりゅうはれつ 脈瘤破裂: 血管の弱くなった部分が、瘤状または風船のように膨らんだ箇所 (胸部大動脈瘤)、あるいはその近くの血管壁が裂けること。 破 は れ つ 裂: 「動脈瘤破裂」を参照。 腹部ステントグラフト: 筒状の金属製の骨組み(ステント)に支えられたポリエス テル織布製の筒(人工血管/グラフト)、PTFE製のものもある。ステントグラフト は、周囲組織を外科的に切開することなく、腹部大動脈瘤の内側に留置される。 腹部大動脈瘤(AトリプルエーAA): 腹部大動脈の弱くなった部分が瘤状または風船のように 膨らんだもの。「AAA」と略されることが多い。 マイグレーション(移動): グラフトが望ましい位置から移動してしまうこと。 罹り か ん ぶ ぶ ん患部分: 病状がある部分
30mm 原寸
28mm 原寸
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